「中国に舐められてる!」トランプ陣営がバイデン政権を辛辣批判
「我々にはこんな態度はとらなかった」とトランプ氏米国アラスカ州で会談した米中高官(2021年3月18日) |
米国バイデン政権の対中政策は日本にも多大な影響を及ぼす。その政策は一見強硬であり、日本の識者の間では「トランプ前政権の対中政策を継続した」とする見解が広まっている。
だが、本当にバイデン政権の対中政策はトランプ政権の政策と共通性があるのか?
それを知る手掛かりの1つとなるのが、バイデン政権の対中政策をトランプ陣営がどのように見て、評価しているか、だろう。
では、実際にトランプ陣営がどう評価しているのかというと、「バイデン政権の対中政策は軟弱で融和的すぎる」という批判が明確なのだ。
「我々にはこんな態度はみせなかった」
まず、トランプ前大統領の最近の発言を紹介しよう。バイデン政権の中国への対処について述べた言葉である。
周知のようにバイデン政権のブリンケン国務長官らは3月18日、米国のアラスカ州で、中国の共産党政治局員で外交担当の楊潔篪氏らと会談した。会談は冒頭から激論となり、中国側が米側よりずっと長く語り、米国側の「人権弾圧」や「人種差別」を非難した。
トランプ政権は、政権発足当初からこの対中対話を否定した。多数あった対話を次々に中断し、中国との対決姿勢を示したのである。
「中国はイランだけでなくロシアとも手を組み、米国に対抗しようとしている。中国はさらに北朝鮮とも反米の連携を進めている。だが、バイデン政権は中国のそうした野心的な動きに口を閉ざしたままだ。このままではバイデン政権は中国が危険な新大国となることを座視するだけだろう・・・」
バイデン政権は3月下旬、CIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)からの安全保障やインテリジェンスに関する報告を基に、国際情勢の概要をまとめた報告書を発表した。ラトクリフ氏はその報告書の内容について、FOXテレビのインタビューに応じて次のように語った。
米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?
北朝鮮が5日強行した弾道ミサイルの発射は、米中首脳会談に衝撃を与えました。北朝鮮「単独解決」に傾いている米国と、中国のメンツを省みない北朝鮮の強硬姿勢の間で、習近平国家主席は窮地に立たされ会談に臨みました。当時シリア北西部イドリブ県の反政府勢力の支配地域が空爆され、子供を含む80人以上が死亡し、数百人が負傷した事件がありました(2017年4月4日)。両者は約1時間、双方の夫人と通訳のみで会談した後、夕食会を開きましたた。米政府関係者によると、会談でトランプ氏は習氏に対し、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に対し、圧力を強めるよう要求。中国が協力しない場合は、米政府が独自に北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象に加える新たな政策を検討していることを伝えたといいます。トランプ氏は夕食会の冒頭、習氏のそばで「我々はすでに長く話し合ってきているが、私はまだ何も得ていない。全く何もだ」と強調。トランプ氏の要請に対し、習氏が同調しなかったことにいらだちを見せました。
そうして、米軍のシリアへのミサイル攻撃が、米中首脳の夕食会とほぼ同時に行われたことで、習近平国家主席は、トランプ大統領との会談議題である北朝鮮の核・ミサイル開発阻止をめぐっても、同様の結末が中朝国境を流れる鴨緑江の対岸で現実に起き得ることを認識せざるを得なくなりました。
これを受けて、米国のトランプ政権は、シリア領内ヒムス市南東約40キロに位置する政府軍のシャイラート空軍基地に50発以上の巡航ミサイルによる攻撃を敢行したのです。
この攻撃は、同年1月に誕生したトランプ政権が初めて発動した軍事作戦であるだけでなく、シリア紛争が始まった2011年春以降で初めての米国による直接的な軍事介入となりました。
選挙戦の最終には、「米国ファースト」等と語っていたトランプ氏でしたが、いざ蓋をあけてみると、中国に対して厳しい要求をつきつけたり、制裁を発動するとともに、北朝鮮の金正恩 とはじめて日朝首脳会談を行うなど外交にも力をいれていました。
どうしてこのようなことを始めたかといえば、やはり外交問題を解決しなければ、当然のことながら「米国ファースト」になることはありえず、しかも、その中で最も最優先すべきは中国との対峙であることに気づいたからでしょう。
北朝鮮の問題に関しては、大統領就任の前後では、重要な問題とみなしていたのでしょうが、やはり最重要なのは、中国との対峙であり、その他の問題はこれに勝利するための制約要因にすぎないとみなすようになったのでしょう。
北朝鮮問題のみを単独で解消したとしても、中国の問題は何ら解消できないでしょうが、中国との問題が解消されれば、北朝鮮問題などさしたる問題ではないということに気づいたのでしょう。
さらに、北朝鮮の核ミサイルは米国を狙うだけではなく、無論中国も狙っています。ルトワック氏の語るように、北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島への浸透を防いできたという面は否めません。
良い悪いは別にして、これは事実です。米国が北を単純に軍事的に潰せば、新北、新中的な韓国文政権は一気に、中国に接近し、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶ状況になったかもしれません。
北朝鮮のミサイルは中国全土を標的にできる |
そのようなことは、日米もロシアも到底容認できません。だからこそ、現状維持すべきであるとの認識から、トランプ前大統領は北との接近も一時はかったのでしょうが、北朝鮮が何も良い材料を提供してこなかったので、その後何の進展もありませんでした。
そうして、中国との対決を最優先するように、大きく舵をきったのでしょう。このようなことは、既存の政治家にはなかなかできないことです。
既存型の政治家や、役人は、外交でも、国内政治でもあれもこれもと総合的な政策を実施し、結局何もできないという状況に陥りがちです。
しかし、トランプ氏のような実業家は、物事に優先順位をつけつつ、当面は最優先事項に取り組むのが普通です。なぜなら、どのような企業であっても、たとえ巨大企業であったにしても、使える資源は限られているからです。
世界をみまわしてみると、すでにロシアのGDPは日本の5/1でしかなく、人口も1億4千万人と、日本より2千万人多いていどす。東京都のGDPと同程度です。韓国も同水準です。北朝鮮は韓国、ロシアにはるかに及びません。中東諸国を全部あわせても、日本のGDPにはるかに及ばず、金持ち国だとみらているサウジ・アラビアもGDPでみると日本の福岡県などとあまり変わりません。
しかし、中国は違います。確かに、国民一人当たりのGDPは100万円前後ですが、それにしても人口が14億人と多く、全体ではかなり大きなGDPになります。こうしてみると、米国に対する最大の競争相手は中国です。
だかこそ、実業家であるトランプ氏は中国との対峙を当面の、最優先課題としたのでしょう。そうして、それは正しい選択といえます。なぜなら、今や世界で唯一の超大国である、米国でさえも、使える資源は有限だからです。
トランプ前大統領 |
このような外交を展開してきたトランプ氏からみれば、確かにバイデン政権のやり方は手ぬるいです。
バイデン米大統領が就任して以来、演説やインタビューで外交政策について発信してきました。中国に対して厳しい姿勢で臨むと語ったことが特徴です。2月4日の演説では中国を「最も手ごわい競争相手」と位置付け、「米国の繁栄と安全、民主的価値観は中国の直接的な挑戦を受けている」と語りました。同月7日放送の米テレビのインタビューでは、習近平中国国家主席について「彼を形づくるものの中に『民主主義』は含まれていない」と指摘しました。
バイデン政権は、「内政重視」へ偏っていると指摘される点を意識して、外交も重視し、同盟国との協調を目指す姿勢を示すねらいがあったのでしょう。
バイデン氏が中国に対峙すると語り、ブリンケン氏が警告を発し、トランプ前政権と同様に米海軍が台湾海峡や南シナ海で中国ににらみを利かせる構えをとったこと自体はいずれも歓迎できます。
バイデン氏は演説で「米国の国益に沿うのであれば(中国と)一緒に取り組む用意がある」とも述べました。気候変動問題などが念頭にあるのでしょう。
ジョン・ケリー気候問題担当特使 |
「中国について話しましょう。この政権は中国についてかなり厳しい態度を取っています」とアグラワルは強調した。「米国は中国がウイグルに対してジェノサイドを行ったと非難し、台湾を引き込みました・・・しかしこうした中で、バイデン政権は気候変動との戦いで中国の協力を本当に必要としてもいます。あなたはこの1つの課題―気候変動―を他の全ての競争分野とどのように区切りますか?」
ケリーは答えました。「米国は気候問題で中国の協力を得ないことから恩恵を受けません。我々は全く統制されています。経済のルールについて、サイバーについては相違があります。他に人権についても相違があります・・・しかしそうした相違は気候対策ほどの重大なことの妨げとなるべきではありません」
ケリーは、中国はすでに「誠意を持って」交渉しており、当初の対話が厳しいものだったにもかかわらず「合意と前進ができる場所と方法を何とか見出した」と述べました。
「中国は、市民が失敗によって大いに影響を受けているため、両国が気候危機を解決することができることに利益があると分かっているという気がします」とケリーは述べました。
さらにケリーは、難点は米国民に気候について何を行う必要があるのかを納得されることにあるのではなく、むしろ何かを実際に行わせるために議会での「政治的意思」を引き出すことにあるのだと述べ、バイデンはもっと多くの先進国に大きな責任を担うよう求める計画を支持するだろうと考えていると付け加えました。
中国は気候変動に影響を及ぼす要素に対する寄与を理由に必然的にそうした計画に加わるでしょう。環境防衛基金によると、中国は世界の汚染の25パーセントを生み出しており、全世界で使用される石炭の約半分を燃やしています。
習近平は昨年、世界最大の温室効果ガス排出国である中国が2030年までに二酸化炭素排出量のピークを迎え、60年までに排出量を実質ゼロにする計画を示しました。
バイデン氏の演説や発言で気にかかるのは、全体主義政権が世界第2位の経済力を持ち、軍事力を急拡大させているという「中国問題」が、米国のみならず世界の自由と繁栄を覆しかねない極めて深刻な問題だという認識が示されておらず、この点ではトランプ前政権とは対照的です。
「エコファシズム」は、権威主義的な政府が個人に対してその個人的利益を「自然の有機体全体」のために犠牲にするように要求する、理論上の政治モデルの一つです。一部の作家は、環境問題に対処するために極端なまたは「ファシスト」的な政策に頼る可能性のある未来のディストピア政府の架空の危険性を述べるためにこの用語を使用しました。
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