2021年10月18日月曜日

米国内でも湧き上がるバイデンのTPP加盟申請の必要性―【私の論評】CPTPP加盟申請で、実は危険な領域に足を踏み入れた中国(゚д゚)!

米国内でも湧き上がるバイデンのTPP加盟申請の必要性

岡崎研究所

 ピーターソン国際経済研究所のジェフリー・ショットが、9月23日付の同研究所のサイトで、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請はバイデンに難しい対応を迫る、米国は11月のAPEC首脳会議でTPP復帰を明らかにすべきだと述べている。


 ショットは長い間日本とも関係の深かった国際貿易の専門家である。精緻な議論をしている。ショットは、(1)交渉には時間がかかる、中国は条件緩和ないし移行期間の猶予を求めるだろう、(2)バイデンは11月にニュージーランで開催されるAPEC首脳会議でTPP復帰を明らかにすべきだ、(3)米国はTPPに参加し協定の強化に努めていくべきだ、環境は米国・メキシコ・カナダ(米墨加)協定に倣って協定規定の強化をすればよい、データの規定強化も可能だろう、労働の規定強化は困難だろうがベトナム、マレーシアとの二国間合意は可能かもしれないなどと述べる。

 米国がTPP復帰を11月のAPECで打ち出すべきとの提案は、良い考えだ。それまでに目下難航している米下院でのインフラ法案(9月30日採決を10月末まで延期)と経済・社会福祉等対策法案の基本的問題が解決されていることを強く望みたい。

 米国のTPP復帰の戦略的重要性を強調し過ぎることはない。それに代わる他策は見当たらない。バイデン政権は、公式発言は兎も角、部内ではTPPの重要性を十分理解、検討し、問題はタイミング等政策実施の問題であることが今の状況であることを切に願わずにはおれない。

 9月16日の中国のTPP加盟申請から2週間余り、米国でのTPP復帰論は数少なく、心配になるほど低調だった。ところが、10月4日、USTRのタイが対中貿易政策再検討結果と対中交渉の開始につきCSISで講演し、それが非常に不評で、それへの批判をきっかけに、主要メディア等が大っぴらにTPP復帰論を主張するようになっている。

 悪いことではない。しかし、 10月4日のタイのTPP関連発言は依然として慎重のままだった。どうも彼女は執行型のプロかもしれないが、戦略マインドを持ったプロなのかどうか、やや不安になる。

 10月5日付ワシントン・ポスト紙(WP)、ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)も社説で、「もっとインパクトのある米国主導の中国対抗策は、TPPへの参加であった、バイデンはTPPへの復帰の兆しを示していないがそれを変えるべきだ」(WP)、「バイデンは中国の TPP加盟申請にどう対応するのか...大統領府は何処の国に対しても貿易戦略がない...何たる失望だ」(WSJ)とTPP復帰を強く求めている。

中国の狙いは台湾加盟の阻止

 中国の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加盟申請の意図については、①国内改革の梃に使いたい、②米国、台湾の参加を阻止したい、③TPPを支配したいことが挙げられる。しかし中国の最大の目的は、台湾加盟の阻止だったのではないだろうか。しかし実際には中国の申請が台湾の申請を誘発することになった。

 その後、王毅外相が関係国に頻りに話をしているようだが、何よりも台湾の加盟交渉を早期に進めないように働きかけているのではないか。中国にとって、望ましくない順列は、台湾が早期に単独で加盟、米国と台湾がほぼ同時期に加盟、中国と台湾の同時加盟ということではないだろうか。

 日豪越加墨等が協力して、米国に対してCPTPPへの加盟申請を働きかけるべきだろう。

【私の論評】CPTPP加盟申請で、実は危険な領域に足を踏み入れた中国(゚д゚)!

このブログの購読者であれば、ご存知のように、私は最近たびたび、台湾や米英のTPP加入をすすめることと、同時にTPPのルールをWTOのルールにすべきこと主張しています。

過去を振り返れば、先進国の「経済的に豊かになれば共産主義中国も『普通の国』として仲間入りができる」という誤った妄想が、中国の肥大化を招き傲慢な「人類の敵」にしてしまいました。 

その代表例が、2001年のWTO加盟です。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。 

この時にも、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところがが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。 

ところが、加盟後20年経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。

 香港再譲渡・返還では「50年間現状(民主主義体制)を維持」することを約束していたのですが、何の躊躇もなくその約束を反故にして、香港の人々を弾圧しています。


習近平は「朕は約束など守る必要は無い」と考えているのでしょうが、「約束を守らない国」を国際社会は受け入れるべきではありません。 

つまり、共産主義中国のCPTPP加盟問題以前に、「約束を守らない」彼らをWTOから追放すべきなのです。

しかし、そうはいっても、共産主義中国はすでに世界貿易にがっちりと組み込まれており、「WTO追放」はやり過ぎではないかという意見もあるでしょう。

しかし、それこそが共産主義中国の狙いなのです。我々は間違ってもCPTPPに共産主義中国を加盟させてはならないし、その「撹乱戦略」に惑わされてもならないのです。

中国の不動産開発会社中国恒大集団は、主力債権銀行少なくとも2行に対する9月20日期限の利払いを行いませんでした。そのため世界市場が「次のリーマンショックか?」と身構え、株価が下落しています。
中国恒大集団の本社ビル

現時点では、23日に期限が到来する利払いの一部は実施すると発表していますが、その方法はあいまいで、今後次々と期日が到来する利払いにどのような対応をするのかも不透明です。 

経営に危機が迫っている共産主義中国の不動産会社は中国恒大集団だけではないし、外資系企業だけでは無く、国内の民間企業にも圧迫を加える「習近平の中国」で経済が崩壊するのは間違いが無いでしょう。

上の記事では、「米商務省のタイは執行型のプロかもしれないが、戦略マインドを持ったプロなのかどうか、やや不安になる」としていますが、私もそう感じます。

私自身は、このブログでもかねてから主張してきたように、TPPを巡る中国の行動をうまく利用すれば、中国をWTOから脱退させることも可能になると考えています。

それについては、昨日もこのブログに掲載したばかりです。
世界医師会、台湾支持の修正案可決 中国の反対退ける―【私の論評】台湾のWHOへの加入は、台湾独立だけではなく大陸中国の国際社会から孤立の先駆けとなる可能性も(゚д゚)!
スイス・ジュネーブにある世界貿易機関(WTO)の本部 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
台湾がTPPに加入していれば、TPPのルールがWTOのルールになったとしても、台湾はWTOにとどまり続けることができます。

しかし、中国はTPPのルールを守れず、TPPには入れないです。そのため、TPPの国際ルールがWTOのルールになったとしたら、その時点で、中国はWTOのルールを守れないのは明らかです。

ルールを守れない国は、WTOにはふさわしくはないですから、WTO加盟国は一致協力して、中国を脱退させるべきです。

ただし、単に中国を脱退させるのではなく、条件をつけるべきです。その条件とは、香港の「一国二制度」を復活させ、香港を以前の状態に戻せば、香港のWTO加入は認めるというものです。 
そうして、香港に限らず中国が「一国二制度」を他の地域でも実施すれば、その地域に限っては、WTOへの加入を認めるようにすべきです。

これを実行すれば、どうなるでしょう。中国は「一国二制度」の復活などはしないでしょうから、中国はWTOから脱退して孤立するしかなくなります。

このようなこと、中国共産党は全く意識していないかもしれませんが、私のような者でもこのような戦略を思いつきます。それに、TPPのルールをWTOのルールにせよとの声は、以前からあります。

中国は、CPTPP加盟申請で実は、危険な領域に足を踏み入れたかもしれません。

孤立した中国は毛沢東時代の中国に戻るしかないでしょう。現状では、盤石に見える中国ですが、中国共産党に対して国際的な批判が強まるなかで、習主席の心中は穏やかではなく、恐怖心すら抱いているのかもしれないです。

攻撃的なナショナリズムの陰に潜む被害妄想が頭をもたげており、毛沢東の時代のような鎖国状態に逆戻りする可能性は排除できません。

昨年8月26日付米ラジオ・フリー・アジアは「海外移住や外国のパスポートを取得した中国高官は数百人どころではない。一般市民も海外移住を急いでいる」と報じました。このようなことは、随分前からいわれてきたことです。多くの中国の人々が「共産党の指導者の狂気につきあうことはできない。今逃げなければ間に合わなくなる」と語っているように、中国社会にはかつてない社会不安が覆っているのでしょう。

中国という超大型客船の底に少しずつ水が入り込み、「タイタニック号」のように沈没するのは時間の問題のようです。

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