2021年10月3日日曜日

甘利幹事長人事が持つ外交安全保障上の意味―【私の論評】間もなく日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まる(゚д゚)!

甘利幹事長人事が持つ外交安全保障上の意味


<幹事長の席に誰が座るのかは、日本政府の対外政策・国内政策の全てに影響を与えることになる>

岸田文雄新総裁・新総理が誕生し、党役員人事及び組閣が進んでいる。今回の人事で日本の行く末を左右する最も重要な人事は自民党幹事長だ。

自民党幹事長は党公認権や政党助成金の扱いに関して絶大な権限を持つ。したがって、幹事長の席に誰が座るのかは、日本政府の対外政策・国内政策の全てに影響を与えることになる。

 親中派として揶揄されてきた二階氏

日本の財界が自民党を支持していることは自明だ。そして、自民党幹事長が財界の意向を踏まえた意識決定を行うことは当然のことと言える。巨大な中国市場で鎬を削っている日本企業が反中姿勢を取ることは考え難く、米中対立が激化していく中、自民党幹事長は中国との適度な協力関係を維持する困難な仕事が求められてきた。

2016年から幹事長ポストは二階俊博議員によって長期間独占されてきた。二階氏は自民党幹事長に求められる役割をこなしてきた人物であり、それ故に同氏は親中派として揶揄される立場に置かれていたと言えるだろう。ただし、安倍政権時代のように官邸の保守色が強い場合、二階氏による党運営が対中政策でバランスを取ることは必然であったように思う。

 甘利新幹事長、日本の未来を変える出来事となる可能性

岸田総理の誕生によって、この幹事長ポストが二階氏から甘利明氏に受け渡されることになった。これは単なる権力の入れ替えというだけでなく、日中関係などに多大な影響をもたらすことになり、日本の未来を変える出来事となる可能性がある。

岸田総理は必ずしも対中姿勢で強い姿勢を取ってきた人物とは言えない。総裁選挙中に、岸田総理は中国の人権問題に対して強気の姿勢を示す発言をしていたが、言葉に真実味を帯びさせるだけの政治的の裏付けは十分ではない。

一方、甘利幹事長は自民党における経済安全保障の第一人者である。同氏は自民党で経済安全保障政策を主導する「ルール形成戦略議員連盟」会長として、対中サプライチェーンの見直しなどを積極的に打ち出してきた人物だ。同連盟は2017年に設立されて以来、感情的な反中議論ではなく、対中国を念頭に貿易・投資に関する法案策定や国際機関人事での競争力強化などを打ち出し、冷静かつ理知的に日本が国際社会でリーダーシップを発揮する動きを推し進めている。

甘利幹事長の誕生は経済安全保障議論を急速に加速させる可能性があり、日本が同盟国・友好国に対して同分野で主導権を発揮する動きが活発化になるだろう。財界の意向を考慮しつつも、安全保障上の観点から現実的な政策が党から打ち出されていくものと思う。

 今後は党側からの経済安全保障の政策提言の重みが増す

また、対中世論を喚起するため、保守強硬派からの支持が厚い高市早苗氏が政調会長ポストについたことから、自民党内の対中融和を求める声が大きく後退することは自明だ。この面でも党内に対中強硬政策を止める要素は減少していくことになる。

したがって、安倍・菅政権時代と異なり、岸田政権では日米同盟を基軸とすることは当然として、官邸は中国をある程度安心させながら、党が対中強硬策を主導する形に転換する形となると筆者は予測している。

そして、安倍・菅時代は日本の安全保障政策の方向性を見極めるためには主に官邸の動きを追うことが重要であった。外交安全保障上の重要な方針のフレームワークは官邸側から打ち出されてきたが、今後は党側からの経済安全保障の政策提言の重みが増す形となるだろう。

我々は頭のスイッチを切り替えて、日本の外交安全保障政策の政策形成過程の枠組みを捉え直す必要がある。今回の幹事長人事が意味する外交安全保障上の変化のシグナルを敏感に感じ取ることは、日本の未来を考える上で極めて重要なことだ。

【私の論評】間もなく日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まる(゚д゚)!

甘利氏が幹事長になったのは、要は的を射たまともな『経済安保を実施するための内閣と党の布陣』であり、日本の生き残り戦略のための政策を実行する政府与党をつくるための布陣です。 今まで何がそれを阻害してきたのか、その阻害をなくするには、どうすればよいのかを検討した結果による当然の帰結であるとみるべきです。

これが理解できなければ、上の記事にあるように、新政権の日本の外交安全保障政策の政策形成過程の枠組みを捉え直すことはできないでしょう。

今回の党内人事、最終決裁は無論岸田総裁ですが、岸田氏は、総裁選選挙の協力に答えるかたちで、安倍氏、麻生氏、甘利氏等にも打診し、無論すべてが彼らの思い通りになるはずもないですが、少なくとも許容の範囲であるということで、承諾したものとみなすべきです。


自民党甘利明幹事長は3日午前、フジテレビ番組に出演し、4日に発足する岸田文雄新政権が新設する「経済安全保障担当相」について「全省庁に対して指示が出せるポジションになる必要がある。経済インテリジェンスを含め、すべてに関与できる仕組みにすべきだ」と述べ、外交・安保の司令塔を担う国家安全保障局(NSS)も所管させる考えを示しました。

岸田総裁は、4日に発足させる新内閣で、新たに設ける経済安全保障を担当する大臣に二階派の小林鷹之氏を起用する意向を固めました。小林氏は初めての入閣です。

小林鷹之氏

小林氏は、衆議院千葉2区選出の当選3回で46歳。

自民党二階派に所属しています。

岸田総裁と同じ開成高校の出身で、財務省の職員を経て、平成24年の衆議院選挙で初当選し、これまでに防衛政務官などを務めています。

小林氏は、自民党の戦略本部で、座長を務めた甘利幹事長のもと、経済安全保障に関する法整備の必要性を盛り込んだ提言の取りまとめに当たりました。

岸田総裁としては、小林氏の高い実務能力を評価して、意欲を示す経済安全保障に関する法整備にあたらせるとともに、当選3回の小林氏を抜てきして、若手議員登用の象徴としたいねらいもあるとみられます。

二階氏

米国では、議会主導で議員による中国に対峙する法案が提出され、続々と成立してきましたが、日本でも二階院政が外れて、幹事長が甘利氏になり、自民党主導で様々な対中国法案が出されることになるでしょう。

岸田内閣の来年通常国会の目玉は「経済安全保障包括法案」と「人権問題」 つまり、甘利氏の経済安全保障包括法案(事実上対中国)とウイグル香港問題への対処日本版の「グローバルマグニツキー法」の成立ということになりそうです。

これを皮切りに、日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まることでしょう。

そうして、これは民意に沿っています。何しろ、昨年の米国ピュー・リサーチ・センターの調査では日本人の89%が中国に対してネガティブなイメージを持っていることが明らかになっています。

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