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経済快説経済政策が注目される岸田首相 |
自民党総裁選で選出された岸田文雄氏が首相に就任した。同党の派閥と個々の議員の利害を考えると予想できる結果だったが、世論調査では支持率が高かった河野太郎氏に大差をつけた。
河野氏は同僚である議員票が意外なまでに少なかった。日頃の「付き合い」や「面倒見」が悪かったのだろう。この結果を見て「社内の飲み会くらいは出た方がいいのかな」と思うサラリーマンがいるかもしれない。社内での出世がどれほど大切かは人によるだろうが、「社内の付き合いが悪い人は社長になれない」とは言えそうだ。
岸田首相に望みたい政策は、読者にも数多くあるのではないか。しかし、今回は一つに絞る。岸田氏は、アベノミクスを分かりやすく継承・強化することを望みたい。
今回の総裁選で岸田氏は、2%のインフレ目標を維持し、消費税を向こう10年間は上げない方針を述べた。いずれも、いわゆるアベノミクスを継承するものだ。しかし、昨年、菅義偉氏が選出された総裁選に挑んだ際の岸田氏はむしろアベノミクスの修正を唱えていた。
アベノミクスの内容をどう定義するかが問題だが、(1)インフレ率2%を目指し、そのために(2)金融緩和政策を維持し、(3)金融緩和の後押しとして拡張的な財政政策を行い、こうした環境の下に、(4)規制緩和などの成長戦略を投入する経済政策だ。具体的には(2)(3)(4)の実施なのだが、特に(1)の条件が満たされるまで(2)(3)の施策を継続することが重要だ。
今回の岸田氏の総裁選出に当たっては安倍晋三元首相の影響下にある自民党最大派閥の細田派の影響が大きかった。党役員や組閣にも同派への配慮が見られるので、安心していいのかもしれない。
当面、財政を拡張することが金融緩和を後押しする構造になっているので、緊縮財政に傾かないことが重要だ。「財政再建の旗は降ろさない」といった無意味な念仏を唱えて増税を招かないことがまずは大切だ。
やや長期的には2023年3月に予定されている日銀の正副総裁人事を、インフレ目標達成までの金融緩和政策の継続が確実視できるメンバーで行ってほしい。今や日銀の人事は、将来の金融政策を示唆する重要な「フォワード・ガイダンス」であり、重要な金融政策だ。
岸田氏は、今回の総裁選で「分配政策」の重要性を訴えた。アベノミクスは分配政策を欠いた政策パッケージだったので、分配面の施策でこれを補完する方向性は適切だ。決して緊縮財政に走らずに、有効な再分配政策を実施してほしい。 (経済評論家・山崎元)
一方、麻生太郎氏は、4日の退任にあわせ、記者会見を開き、アベノミクスでデフレ脱却宣言を出せなかった理由について「(2014~15年の)原油価格の下落が大きかった」と説明し、当時、日銀の黒田東彦総裁に2%の物価安定目標の引き下げを打診したことを明らかにしました。
この動画をみると日銀は、「物価の安定」だけでなく、FRBのように「雇用の最大化」も目的とすべきということがよくわかります。高市さんは、全く正しいです。
バブルの問題は投機目的で不動産や一部の金融商品の価格が異常に上ったというだけで、マクロで見れば、一般物価はあがっておらず、理想的な経済状態だったのです。ということは、インフレを起こさず、バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはあることになります。
高橋洋一氏が、マクロ経済政策を解説する場合には、高橋氏が作られた以下のグラフを思い浮かべていただきたいと思います。このグラフは過去にこのブログでも何度か掲載しましたが、以下に再掲します。
日銀はインフレ目標を2%としていますが、幅がある国も多いです。多くは目標プラスマイナス1%です。インフレ目標国は、このレンジに7割程度収まるのが通例です。
インフレ目標の数値自体は、失業率の下限であるNAIRU(インフレを加速しない失業率:ブログ管理人注:構造的失業率とも言われる。現状では2.5%程度と見積もられている)に対応するものとして設定されています。
インフレ目標の下限を設定するのはデフレを放置しないためです。そして上限は金融緩和で失業率を下げたいのですが、やりすぎて必要以上にインフレ率を高くしないように設定します。
マクロ政策のうち、財政政策は公的部門の有効需要へ直接働きかけるので即効性があるものの、持続性には欠けること、他方、金融政策は民間部門の有効需要へ実質金利を通じて働きかけるので、波及範囲は広いのですが、効果は即効的ではありませんが持続的であることを理解していれば、マクロ政策のほとんどは理解できます。
河野氏は同僚である議員票が意外なまでに少なかった。日頃の「付き合い」や「面倒見」が悪かったのだろう。この結果を見て「社内の飲み会くらいは出た方がいいのかな」と思うサラリーマンがいるかもしれない。社内での出世がどれほど大切かは人によるだろうが、「社内の付き合いが悪い人は社長になれない」とは言えそうだ。
岸田首相に望みたい政策は、読者にも数多くあるのではないか。しかし、今回は一つに絞る。岸田氏は、アベノミクスを分かりやすく継承・強化することを望みたい。
今回の総裁選で岸田氏は、2%のインフレ目標を維持し、消費税を向こう10年間は上げない方針を述べた。いずれも、いわゆるアベノミクスを継承するものだ。しかし、昨年、菅義偉氏が選出された総裁選に挑んだ際の岸田氏はむしろアベノミクスの修正を唱えていた。
アベノミクスの内容をどう定義するかが問題だが、(1)インフレ率2%を目指し、そのために(2)金融緩和政策を維持し、(3)金融緩和の後押しとして拡張的な財政政策を行い、こうした環境の下に、(4)規制緩和などの成長戦略を投入する経済政策だ。具体的には(2)(3)(4)の実施なのだが、特に(1)の条件が満たされるまで(2)(3)の施策を継続することが重要だ。
今回の岸田氏の総裁選出に当たっては安倍晋三元首相の影響下にある自民党最大派閥の細田派の影響が大きかった。党役員や組閣にも同派への配慮が見られるので、安心していいのかもしれない。
当面、財政を拡張することが金融緩和を後押しする構造になっているので、緊縮財政に傾かないことが重要だ。「財政再建の旗は降ろさない」といった無意味な念仏を唱えて増税を招かないことがまずは大切だ。
やや長期的には2023年3月に予定されている日銀の正副総裁人事を、インフレ目標達成までの金融緩和政策の継続が確実視できるメンバーで行ってほしい。今や日銀の人事は、将来の金融政策を示唆する重要な「フォワード・ガイダンス」であり、重要な金融政策だ。
岸田氏は、今回の総裁選で「分配政策」の重要性を訴えた。アベノミクスは分配政策を欠いた政策パッケージだったので、分配面の施策でこれを補完する方向性は適切だ。決して緊縮財政に走らずに、有効な再分配政策を実施してほしい。 (経済評論家・山崎元)
【私の論評】バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはある!それを令和日本で実現する鍵は「雇用」(゚д゚)!
岸田氏の主張する分配政策は、左翼政権がよく実施する政策なので、立憲民主党をはじめとする野党は岸田政権に対抗するのは難しいでしょう。立憲民主党が埋没せずに自己主張をするためには、さらに左よりになる必要があるのかもしません。そのせいでしょうか、最近の立民は共産党に接近しています。
なお、この分配政策はお隣韓国では、最低賃金をあげるという政策を実行しようとしましたが、金融緩和をせずに単純に最低賃金をあげてしまったので、雇用が激減して大失敗しました。
なぜ、このような失敗をするかというと、経済の中で一番重要なのは、雇用であることを認識していないからです。
この点に関しては、文在寅氏、枝野氏そうして、麻生氏、岸田総理も理解していないようです。
今回の総裁選で岸田氏は、2%のインフレ目標を維持すると語りました。そもそも、この考えが間違いです。インフレ目標の意味は他のところにあります。それは、雇用と密接に結びついています。
これも、大きな間違いです。物価目標とは、2%に達するためのものではなく、平たくというと金融緩和を加速すれば、インフレ傾向となり、雇用は改善されるのですが、ある時点をすぎると、雇用が伸びずにインフレだけが進んでいくことになります。そうならないようにするための、上限が2%ということです。
麻生氏も「雇用」こそが最も重要であるという認識が欠けているため、このような間違いを犯しているのだと思います。
これに関して、高橋洋一氏がYouTubeの動画でわかりやすく解説しています。その動画を以下に掲載します。
バブルの問題は投機目的で不動産や一部の金融商品の価格が異常に上ったというだけで、マクロで見れば、一般物価はあがっておらず、理想的な経済状態だったのです。ということは、インフレを起こさず、バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはあることになります。
高橋洋一氏が、マクロ経済政策を解説する場合には、高橋氏が作られた以下のグラフを思い浮かべていただきたいと思います。このグラフは過去にこのブログでも何度か掲載しましたが、以下に再掲します。
このグラフについて、説明します。これは、元々は経験則から作成されたものですが、これはいずれの国の経済にも当てはまります。いずれの国もこのような形になります。まずは、インフレ率と失業率は逆相関になります。無論、NAIRUやインフレ目標はそれぞれの国によって違います。ただ、これらの値が違ったとしても、いずれの国でも上のグラフ通りの動きをします。
日銀はインフレ目標を2%としていますが、幅がある国も多いです。多くは目標プラスマイナス1%です。インフレ目標国は、このレンジに7割程度収まるのが通例です。
インフレ目標の数値自体は、失業率の下限であるNAIRU(インフレを加速しない失業率:ブログ管理人注:構造的失業率とも言われる。現状では2.5%程度と見積もられている)に対応するものとして設定されています。
インフレ目標の下限を設定するのはデフレを放置しないためです。そして上限は金融緩和で失業率を下げたいのですが、やりすぎて必要以上にインフレ率を高くしないように設定します。
マクロ政策のうち、財政政策は公的部門の有効需要へ直接働きかけるので即効性があるものの、持続性には欠けること、他方、金融政策は民間部門の有効需要へ実質金利を通じて働きかけるので、波及範囲は広いのですが、効果は即効的ではありませんが持続的であることを理解していれば、マクロ政策のほとんどは理解できます。
マクロ経済政策について重要なのは、このグラフが頭に入っていることが必要だと思いますが、雇用が他の何にも増して重要だという事実です。
雇用が悪ければ、他の指標が良くてもマクロ経済政策は失敗といえます。民主党政権のときのように、実質賃金が良くても、雇用が悪ければ落第です。実質賃金が多少低くても、雇用が良いほうが、マクロ経済政策としては良いです。
雇用が確保されていれば、他の指標が悪くても、いずれ改善していく可能性はありますが、雇用が悪くて他の指標が良くても、いずれ他の指標も悪くなります。
これは、常識的に考えてみても、わかります。実質賃金がかなり高くても、失業者が大勢いる社会は不安定です。GDPが伸びていても、輸出が伸びていても、失業率が高ければ、社会は安定しません。失業がより少ないほうが、より安定した社会になります。
そうして、雇用がよくなり続ければ、人手不足となり、企業は人を採用するために、賃金を上げざるを得なくなります。それでも、人手不足で、従来は労働力となっていなかった、就職を諦めていた人、女性・高齢者・身体障害者の人々も労働力とみなされるようになります。ブラック企業は存在の基盤を失います。
新総裁はこのあたりのことを理解していないようですが、安倍氏、高市氏などが理解しています。岸田氏が雇用を無視したり、雇用を悪化させるような政策をとりそうなときは、これを正していただきたいです。
マスコミもこれを理解しておらず、雇用というと日銀ではなく、厚生労働省に聞きに行くと動画で高橋洋一氏が、揶揄していましたが、マスコミに限らず、このように考える人が日本にはまだまだ多くいます。
民主党政権だったころに、あるハローワークの女性職員が、「課長が、私は雇用というものがよくわからない」と発言していたのを聞いて驚いたというような発言をネットでしていたのを覚えています。世間においては、このような見方をするのかもしれませんが、これは大きな間違いです。
ハローワークは雇用の創出はできない、職の仲介はできても、職そのものを増やすことはできない |
この課長さんは、正直なのだと思います。厚生労働省の下部機関である、ハローワークの課長さんは、地元の雇用状況に関しては理解しているべきですが、雇用を創出することに関わることはできません。それができるのは、日銀です。
日銀が、2%インフレ率をあげると、他は何もしなくても日本なら数百万人分の雇用が他は何もせずともたちどころに生まれます。ただ、雇用が生まれただけでは、雇用のミスマッチが起こることもあります。これを是正するのが、厚生労働省であり、ハローワークなのです。無論これをやりすぎれば、先の述べたように、雇用は伸びず、インフレ率だけが上がるという結果を招くことになります。
厚生労働省は雇用に関してできることといえば、雇用統計をとりまとめることと、雇用のミスマッチを抑制できるくらいで、雇用そのものを主管しているわけではありません。雇用を主管しているのは本来日銀です。それが、世界の常識です。
しかし、これを周りの人に話したりすると、目を丸くして信じられないというような顔つきをする人が多いです。「金融と雇用」は関係ないと考える人が多いようですが、多いに関係あるるのです。それが世界の常識であり、それが常識になっていない日本は非常識です。
このことは、日本では総理大臣や元財務大臣でも知らないようですし、マスコミもほとんど理解していないようです。与野党の政治家も理解している人は少ないです。
このような有様では、いくら安倍元総理や高市早苗氏がこれを理解していて、総理がマクロ政策を間違いそうになってもそれを正すのは難しいかもしれません。
しかし、私達にもできることはあります。一人でも多くの人が、これを理解してマクロ経済政策に関する正しい世論を形成することです。そうして、それはさほど難しいことではありません。とにかく経済においては何をさておいても、「雇用」が何もよりも重要だという世論を形成すれば良いのです。これに、真っ向から意義を唱える人はあまりいないでしょう。
そうして、バブル崩壊から数十年という長い年月、高橋洋一をはじめとする、まともなエコノミストが、努力してきたおかげて、数十年前とは随分状況が変わっています。雇用の重要性への認識は、従来からみればかなり高まっています。
先程も述べたように、バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはあるのです。私達は、コロナによる経済悪化から回復だけではなく、あの当時の経済の水準にまで景気が良くなるまで、景気が良くなっても賃金が上がるまで「雇用が重要だ」と言い続けるべきなのです。その後も、「雇用が重要だ」と言い続けて、多くの政治家やマスコミの認識を変えてしまうべきなのです。そうなれば、日本経済も良くなります。雇用こそ、あらゆる経済局面において、最も重視されなければならなのです。
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