2021年5月27日木曜日

世界的に注目の経済安全保障 米中対立でも危機感薄い日本…まずはスパイ防止法から ―【私の論評】確かな安全保障のためには、「スパイ防止法」制定の議論は避けて通れない(゚д゚)!

世界的に注目の経済安全保障 米中対立でも危機感薄い日本…まずはスパイ防止法から 
高橋洋一 日本の解き方

バイデン大統領

 政府は新たな成長戦略の骨子として、経済安全保障を盛り込む方針だ。

 もともと「経済」と「安全保障」は異なる概念だ。重なるとしても、両国で経済関係が良好ならば、戦争になりにくいという意味で安全保障にもプラスという素朴な考えだ。

 しかし、経済というツールを使って戦争を行うという発想に立つと、違った見方ができる。今の米中両国の覇権争いは、軍事的な措置なしで行われているという前提だ。軍事の代わりに経済という武器を使った覇権争いということになる。

 米中の新冷戦でも実際に軍事力を行使するよりも、経済を武器としている公算が大きいので、経済安全保障は国際政治のキーワードになっている。

 典型例は、中国の「一帯一路」構想だ。これは、中国の経済圏を作るもので、中国が相手国に破格の条件で融資し、中国がインフラ投資を行い、中国の戦略拠点を作っていくものだ。融資がうまくいかない場合には、中国が戦略拠点を召し上げ、事実上の中国領とすることもあるので、中国にとって相手国への融資は進出の足がかりとの見方もできる。

 最近の米国による中国企業への締め付けも、米中が経済を武器にして覇権争いをしていると見ればスッキリする。経済安全保障の観点では、トランプ前政権がやっていたことをバイデン政権でもおおむね引き継いでいるのは当然である。

 日本では、経済と安全保障は別と思い込んでいる経営者が多いので、経済安全保障の観点から思わぬ余波に困惑している。例えば米国による中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する制裁の影響で、ファーウェイへ納品していた半導体メーカーなどは製品供給を停止せざるを得なくなった。

 政府も対応のための組織づくりをした。2013年12月に設置された国家安全保障会議(NSC)の事務局として国家安全保障局(NSS)があるが、昨年4月、同局に経済安全保障戦略を担当する「経済班」が新設された。財務、総務、外務、警察各省庁からの出向者が20人ほどいるという。

 ようやく日本でも経済と安全保障を表裏一体で考えて政策を立案する部署ができた。しかし、日本でのこの分野はやっとスタートしたばかりで、やるべきことが山積している。

 例えば、大学や企業での先端技術研究は軍事に直結するものもあるので、外国人研究者を関与させる場合、そのバックグラウンド情報は必須だが、日本ではほとんどその感覚がない。

 そもそもスパイ防止法という国家として当然の法律もないので、危機意識はまったく希薄だ。まずは、どこの国でもあるスパイ防止法の制定が第一歩ではないだろうか。その上で、サイバー対応も含めて先進国にキャッチアップしていくしか方法はないだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】確かな安全保障のためには、「スパイ防止法」制定の議論は避けて通れない(゚д゚)!

日本では、昨年も複数のスパイ事件が発覚しました。1月20日には、三菱電機防衛部門へのサイバー攻撃が発生、企業秘密が流出しました。1月25日には、ソフトバンク社員がアントン・カリニン・ロシア通商代表部元代表代理に機密情報を漏洩し、不正競争防止法違反で逮捕されました。

2月6日には、「神戸製鋼所が保有する潜水艦や魚雷の製造技術に関する情報が漏洩した可能性がある」と防衛省が発表しました。

今年入って、目立ったスパイ事件はありませんが、米国ではスパイの巣窟であるとされる孔子学院が日本ではそのまま手つかずにされているなど、問題は山積です。

現在も放置されている孔子学院

このブログにも何度か掲載してきたように、日本は、「スパイ天国である」といわれています。日本には最先端の科学技術や世界中の情報が集まる一方で、スパイ活動をしても捕まりにくく、捕まっても重刑を課せられないからです。

米国に亡命した旧ソ連KGBのレフチェンコ少佐は「日本はKGBにとって、もっとも活動しやすい国だった」と、韓国に亡命した元北朝鮮工作員は「昔から北朝鮮の工作員は日本に潜入し、在日朝鮮人をスパイに仕立て上げ、日本から多くの情報を吸い上げ、軍事強化に活用してきた。そうして、今もスパイ活動は継続されている」と証言しました。

レフチェンコ氏

初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は在職中、「我々は精一杯、多くのスパイを摘発してきた。しかし、いくら逮捕・起訴してもせいぜい懲役1年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実態だった。

どこの国にでもある『スパイ防止法』がないため、国家に対する重大犯罪であるスパイ活動などを出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法など刑の軽い特別法や一般刑法で取り締らされ、事実上、野放し状態だった」と回想しています。

世界各国には『スパイ防止法』が存在し、諜報機関を設けて取締りを強化しています。例えば米国ではCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、イギリスではMI5(保安局)やMI6(秘密情報部)、フランスではDST(国土監視局)やDSPD(国防警備保安局)、ロシアではGRU(連邦軍参謀本部情報総局)などがスパイの摘発を行っており、スパイ罪の最高刑として死刑や終身刑などの重い刑罰が課されています。

日本では1985年に『スパイ防止法案』が廃案になった経緯があります。国家の管理が強すぎると「戦前の特高警察のようになる」との戦時中の反省から、憲法が保障する表現や報道の自由に抵触する恐れがあるというのが、当時廃案となった理由でした。

その後、2014年12月、「特定秘密保護法」が施行されました。この法律は、我が国の安全保障に関する機密情報のうち、特に秘匿する必要のあるものを「特定秘密」に指定し、取扱者の適正評価や漏洩した場合の罰則を定めています。

主に「特定秘密」を取り扱う公務員を処罰の対象としていますが、公務員以外でも「特定秘密」であることを知っていたうえで、不当または不正に取得した場合にも処罰の対象となる法律であり、最高刑は10年以下の懲役および1,000万円以下の罰金が科せられます。

自衛隊でも、「特定秘密保護法」施行以前に情報漏洩事件が発生しています。2007年1月、神奈川県警は、海上自衛隊の護衛艦乗組員の中国籍の妻を入管難民法違反容疑で逮捕しました。

家宅捜索したところ、イージス艦の迎撃システムなど800項の機密情報を含むファイルが発見されました。中国人と結婚した自衛官は現在500人を超えており、その中には幹部自衛官も含まれているといいます。

また、同年2月に防衛庁(現防衛省)技術研究本部の元技官が在職中に潜水艦の資料を持ち出し、中国に情報を漏洩したことによる窃盗容疑で書類送検されました。

「スパイ防止法」は、国連憲章第51条で認められた独立国の固有の権利で、安全保障に関する国家機密を守り、他国のスパイ活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為とみなされています。

1985年当時のように「表現や報道の自由」に制約を受けるということが反対理由ならば、西側自由主義陣営の状況をみれば、それは明らか錯誤です。

あらゆる犯罪も事前に規定を決めておかなければ取り締まることはできません。法に定めがない=合法と見なされても仕方ないのです。そのために日本は「スパイ天国」などと揶揄される始末になっているのです。

スパイ防止法が日本に無いのは、的はずれな反対意見を持つマスメディアと特定の政党(政治家)が居るからでしょう。

しかし、特定秘密保護法がそうであったように、スパイ防止法が定められたからといって、普通に暮らしている人にとっては何の変化もありません。これを批判するのは、なにか思い当たる節があるからではないか勘ぐられても仕方ないと思います。

特定秘密保護法

特定秘密保護法成立時に反対派に回っていた党や政治家、マスメディアは要観察だと思います。

企業ですら「企業秘密」はあり、社員には「守秘義務」があります。企業秘密を守らなければ、企業は存続できず、新技術も新製品すらも出すことができません。

これと同じ論理で、国であっても国家機密はあるのが当然であって、それを漏洩するようなことがあれば罰せられて当然です。

こういった国家機密が漏洩されることを防止する法律に対して反対する勢力は、スパイなのでは、と疑われてしまっても仕方ないと思います。

当時の反対意見も論点がぶっ飛んでズレていたり、事実無根の内容で国民の不安を煽るなどと、議論の余地もないという印象でした。

特定秘密保護法が制定されてから、この法律のおかげて、普通の方で不利益を被った人はいません。不利益を被った人がいたとすれば、それは特定秘密情報を漏洩したり、漏洩しようとした人だけです。実際に不利益を被った人がいるというのなら、ぜひ教えてほしいものです。

また、この法律は特定秘密を「保護」することしかできないので、「スパイ行為」自体を取り締まることができる「スパイ防止法」も絶対に必要です。

これに反対する人々の中にこそ、スパイが居るのではないかとすら思ってしまいます。安全保障の次なる課題はスパイ防止法の早期制定ではないでしょうか。

経済安全保障体制を整えたにしても、まずはスパイ防止法がなければ、安全保障体制が万全になるとは、とても思えません。

的はずれな反対意見が出ないことを祈りつつ、国民の意識次第では議論再燃もあり得ると思います。いや、再燃してくれなけば困ります。

昨今の中国の覇権主義的な力による現状変更に対し、米国、英国をはじめインド、オーストラリア、ASEAN各国と連携を深め、今後ファイブアイズとの情報共有という事態にも備えて情報管理の信頼性を向上させるためにも、「スパイ防止法」制定の議論は避けて通れません。

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