2021年5月14日金曜日

経済制裁に「資源の呪い」、上向かぬロシア経済―【私の論評】日米・EUは対露経済制裁でロシア経済を疲弊させ、プーチンを退陣に追い込め(゚д゚)!

経済制裁に「資源の呪い」、上向かぬロシア経済

岡崎研究所

 アンダース・アスルンド(大西洋評議会シニアフェロー)が、4月22日付のProject Syndicateに、「ロシアの下を向く経済」との論説を寄せ、ロシア経済がいかに良くないかを解説している。


 ロシア経済は、2014年以来、実質成長ゼロである。プーチンは、経済停滞の責任を、「外部の力」、すなわち世界的な石油価格などに負わせているが、不健全な経済政策と西側の制裁は彼自身以外の誰の過ちでもない。

 2008年ー2013年と2014年ー2019年では、1年の外国直接投資の平均流入はGDPの3.1%からGDP の1.4%に減少した。(2014年のロシアによるクリミア併合に対する西側の制裁も影響しているのだろう。)

 4月21日、プーチンは年次演説で「マクロ経済の安定とインフレーションの封じ込めは確実に達成される」と約束した。しかし、マクロ経済の安定はそれ自身目的ではなく、継続的な成長のための手段であって、経済政策の目的は、市民の福祉を最大化することである。しかしプーチンの明示的目的は、彼の独裁的権力を最大化することである。

 米国の制裁によるコストは見た目より大きい。ロシアがドルでの取引ができないことは、その投資機会を厳しく制約し、その成長を阻害する。プーチンとその極端な緊縮政策のおかげで、ロシアの生活水準は最近の7年間で11%低下した。

 上記アスルンドの論説は、ロシア経済の苦境を数字の面で裏付けるとともに、プーチンが自らの行動により招いた西側からの制裁、保守的な経済政策、腐敗などにその原因を求めている。的を射た論説であるが、石油価格の低迷も大きい影響を与えている。

 ロシアのGDPは、IMF統計で今は韓国以下で、世界第11位である。日本の3分の1にもならない。プーチンの治政下、ロシアは衰退してきたと何度も指摘してきたが、そのことは今や誰の目にも明らかになっている。

 石油価格は脱炭素化の中、今後は低くなっていくことが確実である。石油依存経済からの脱却はロシアでも言われているが、うまくいっていない。国際政治の用語で「資源の呪い」という言葉があるが、資源国は資源頼りになり、製造業を発展させられないことを言うが、ロシアはその典型である。

 さらに、プーチンのマクロ経済の安定とインフレ封じ込めへのこだわりがある。これが健全財政政策につながっている。今世界では、金融の緩和、財政出動による景気刺激策が主流であるが、プーチンは保守的でそういう政策を採用していない。そもそもプーチンはエリツィンの後継者としてあらわれたが、エリツィン時代はマクロ経済は安定せず、インフレはひどかった。プーチンは石油価格の上昇にも支えられ、エリツィン時代の混乱を抑え、安定の時代を作り出し、それ故に国民の支持も得た。彼がマクロ経済の安定とインフレ封じ込めを言うのはその成功体験による。

 しかし時代は変わるのであって、時代の要請には気を配り、変えるべきものは変えなければならないが、それが出来ていない気がする。それに、対西側対決路線は経済的には制裁などの不利をもたらしている。

 プーチンは2036年まで政権の座にとどまれることになっているが、時代に合わない指導者になっており、とても2036年まで務められるとは思えない。そうすることはロシアにとってよい結果をもたらさないと思われる。

【私の論評】日米・EUは対露経済制裁でロシア経済を疲弊させ、プーチンを退陣に追い込め(゚д゚)!

ロシア連邦統計局が1月1日発表した同国の20年GDP(国内総生産)・速報値は前年比3.1%減となりました。新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)による国内経済への悪影響やロシア産原油への需要低下、原油価格の急低下が影響し、11年ぶりの大幅減少となりました。

ただ、市場予想の3.7%減やロシア経済発展省の予想(3.9%減)ほどは落ち込みませんでした。また、スペインの11.0%減、フランスの8.4%減、ドイツの5.0%減など、欧州各国に比べると下落幅は抑えられました。

強気にみえるプーチンだがマクロ経済についてはかなり疎いようだ

20年GDPがマイナスとなったのは、主に、ホテルやレストランなどの観光業や運輸業、文化・スポーツ・レジャー業などでの大幅な落ち込みが要因です。また、産油国であるロシアにとって、GDPに占めるウエートが高い原油輸出が昨年3月初めの原油価格の急低下で減少したことも響きました。

主な内訳は製造業が前年比横ばいとなった一方で、鉱業は同10.2%減、運輸・倉庫業も同10.3%減、ホテル・レストラン業は同24.1%減、文化・スポーツ・レジャー業も同11.4%減と、大きく落ち込んだ。また、支出面から見たGDPのうち、個人消費は同8.6%減、輸出は同5.1%減でした。
 
経済発展省は、21年のロシア経済の見通しについて、4-9月期は前年比で伸びが急低下したあと、10-12月期に前年比7.4%増と急回復し、21年全体で同3.3%増になると予想しています。ちなみに、パンデミック前の20年1-3月期は同1.6%増でした。

以前から述べているように、韓国やロシアの経済は東京都よりも多少大きいくらいです。確かに東京都の経済は都市としては大きいですが、これが独立して国になり、軍備を整えたにしても、できることは限られています。

ただ、以前からも述べているように、ロシアはソ連の軍事・宇宙・核開発技術の継承者でるため、決して侮ることはできませんが、それにしても、我々日本人はロシアを等身大でみていく必要があります。


先日も、このブロクで述べたように、ナヴァリヌイに対する毒殺未遂、その帰国直後の拘束、執行猶予判決の実刑化、ナヴァリヌイ釈放要求デモに対する取り締まりなど、ロシアの現状は西側のパートナーになりうる国ではなく、西側との対決を選んだ国であるといえます。

そうして、社会の安定が続くためにも、ロシア経済は成長の持続可能性を高めていく必要があります。 ロシア経済が今後10年で活力を取り戻すためには、引き続き資源国として歩み続けるにせよ、産業構造の多角 化を図るにせよ、外資の一段の導入が不可欠です。

そのためには、ビジネス環境の一段の整備に努めると同 時に、やはり欧米との関係改善も大きな課題となるはずでした。

産業政策と外交政策を両立させるためには、政治の安定が必要条件になります。つまるところ、プーチン政権から権 力がスムーズに移行されるかどうかが、今後のロシア経済のカギを握ることになるはずです。となると、ロシア経済の回復は絶望的とみるべきでしょう。

昨年のロシア経済は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で深刻な景気減速に見舞われたが、後半以降は底入れしてきた。国内の新規感染者数は昨年末を境に頭打ちするも、死亡者数は拡大が続くなど依然事態収束にほど遠い状況にあります。政府はワクチン接種を呼び掛けるも足下では目標を下回るなか、プーチン大統領は秋の集団免疫獲得に向けて国民に積極的な接種を呼び掛けていますが、その実現は依然見通せません。

欧米諸国との関係が急速に悪化するなか、その一因となっているナワリヌイ氏の処遇を巡っては全土に抗議デモが広がりをみせる一方、欧米の制裁強化懸念に対してプーチン大統領は強硬姿勢を示すなどけん制しています。

収監中のナワリヌイ氏

他方、金融市場では欧米との関係悪化がルーブル相場の重石となるなか、中銀は先月利上げ実施に追い込まれました。さらに、ロシアの財政政策の基本は、自立した国家運営を確保するため、均衡財政を維持することを目的としているようです。景気回復が道半ばのなかでの金融引き締めは景気に冷や水を浴びせるのは確実です。

緊縮財政は経済の低成長につながることは必至です。プーチン大統領は18年、景気対策をうたい約27兆ルーブル規模の国家事業計画を打ち出したものの、その進捗は既に「不透明な状況に陥っています。ロシア政府が緊縮財政に動けば、推進は一層困難になります。

このブログでも述べているように、コロナ禍等による景気の落ち込みにおいて、政府が実施すべきは、大規模な積極財政と、金融緩和です。世界の多くの国々で、そのような政策を実行する中で、ロシアだけがそうではないとすれば、ロシア経済は確実に落ち込みます。

プーチン大統領の強気姿勢が凶と出るのは間違いありません。

現状では、EUや日米は、経済安保で経済が落ち込みつつあるロシアをさらに、締め上げるという行き方が、最も妥当であると考えられます。その先に、ロシア経済のさらなる弱体化、プーチンの退陣、そうして西側のパートナーになりうるロシアがみえてくることになります。

そのときになってはじめて、日本はロシアとまともに北方領土交渉ができるようになるでしょう。

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