2021年5月22日土曜日

【日本の解き方】緊急事態宣言がGDPに悪影響 先進国では日本の落ち込みは軽微だが…ワクチン接種急ぎ経済正常化を―【私の論評】今年の秋から年末にかけて、消費のマグマはかつてない程の大爆発!東京五輪はそのファンファーレに(゚д゚)!

【日本の解き方】緊急事態宣言がGDPに悪影響 先進国では日本の落ち込みは軽微だが…ワクチン接種急ぎ経済正常化を

 1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が発表された。新型コロナ禍が始まって以来、経済への影響はどれぐらいの大きさになっているだろうか。

 1~3月期GDPの内訳を見ると、民間消費が1・4%減、住宅投資が1・1%増、設備投資が1・4%減、政府消費が1・8%減、公共投資が1・1%減、輸出が2・3%増、輸入が4・0%増だった。

 消費は昨年7~9月期が5・1%増、10~12月期が2・2%増だったが、今年1~3月期はマイナスに転じた。1月からの緊急事態宣言による影響だ。

 住宅投資は昨年7~9月期に5・7%減、10~12月期に0・1%増の後、持ち直しつつある。

 設備投資は昨年7~9月期に2・1%減、10~12月期が4・3%増。政府消費は昨年7~9月期が2・9%増、10~12月期が1・8%増。公共投資は昨年7~9月期が0・7%増、10~12月期が1・1%増だったが、それぞれ今年1~3月期にマイナスになった。

 ここで、実質GDPの実額の推移を見てみよう。マスコミでは前期比伸び率だけを報じるので、そもそもGDPがいくらなのかが分からない。

グラフはブログ管理人挿入

 2019年7~9月期の557兆円をピークに、同年10月からの消費増税で10~12月期に546兆円と減少し、20年1~3月期544兆円、4~6月期500兆円と落ち込んだ。7~9月期に526兆円、10~12月期に541兆円と反発したが、21年1~3月期に534兆円と再び落ち込んでいる。

 年度ベースでみると、20年度は525兆円で、19年度の551兆円に比べると4・7%減となり、最近ではリーマン・ショックのあった08年度の3・6%減を上回っている。

 ただし、世界と比べると、日本の落ち込みは軽微だ。先進7カ国(G7)の2020年(暦年)でみると、米国は3・5%減、英国が9・8%減、カナダが5・4%減、フランスが8・1%減、ドイツが5・0%減、イタリアが8・9%減で日本の落ち込みは少ない。失業率の低さも先進国でトップレベルだ。その理由は、財政出動したからだ。それでも、緊急事態宣言による経済自粛などで、経済の落ち込みは防げなかった。

 筆者はコロナ禍による死者と経済活動縮小による死者を合わせて極小化すべきだと主張してきた。そのためには巨額の財政支出が必要だとも言ってきた。

 後年の財政負担を気にする向きもなきにしもあらずだったので、「政府と日銀の連合軍」という表現で、政府の国債発行による財政出動とインフレ目標の範囲での日銀の国債購入を唱え、安倍晋三政権も菅義偉政権も補正予算はその趣旨で行ってきたと理解している。

 この戦略は、これまでのところ間違っていないと思う。後はワクチン接種を急ぎ、一刻も早く正常な経済活動をできるかどうかがポイントだ。

 私事であるが、筆者も接種券が届いたので自衛隊による大規模接種会場に申し込んだ。混雑しているかと思ったが案外すんなりと予約できた。2~3カ月の辛抱ではないか。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今年の秋から年末にかけて、消費のマグマはかつてない程の大爆発!東京五輪はそのファンファーレに(゚д゚)!

政府と日銀との連合軍とは、経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものです。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うのですが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行います。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをします。まさに大恐慌スタイルの経済政策です。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときです。

しかも、日本の長期金利はひところのマイナス寄りは上昇したとはいっても、以下のように現状でもかなり低い状況にあり、たとえ政府が大量の国債を発行したとしても、調達コストは無視できうるくらいです。


こうした状況では、さすがに財務省の事務方もすぐには財政再建や増税を言い出すべきではないのですが、先日もこのブログでも述べたように、その動きがみられます。しかし、本当に今後10年以内に消費増税などしてに出れば、財務省の信頼は地に落ちるでしょう。解体論もででくるでしょう。

経済政策において、一番重要なのは、雇用です。何をさておいても、失業率が低ければ、政府の経済対策は合格といえます。以下に失業率の国際比較をあげます。

完全失業率(月次、季節調整済、男女別、15~24歳/25歳以上)


いずれの国も、若年層の失業率は高いですが、日本以外ではかなり高いです。イギリス、フランスはかなり高いです。日本も若年層は高めですが、それにしてももともとの失業率が低いので、他国と比較すると低いです。

しかし、3度目の緊急事態宣言で事業継続が難しくなっている事業者も多いです。真に支援を必要とする企業や個人に向けた効果的な手立てを講じるべきです。

失業増を防ぐための雇用調整助成金の機能拡充など万全の安全網を構築すべきですし、時短営業の要請に応じた飲食店などへの協力金の支給も円滑かつ迅速に行う必要です。実情に応じて支給額を見直す柔軟さも求めたいところです。そのためにも、補正予算を編成すべきです。財源は、無論政府・日銀連合軍によるべきです。

手厚い、そうして効果的な財政・金融政策ができれば、後は日本経済の回復は、ワクチンが鍵を握りそうです。多くの国民がワクチン接種を済ませば、控えられていた外食や旅行などの需要が一気に戻り、個人消費が大きく回復する流れになるでしょう。

米国の21年1~3月期の実質GDPは、年率換算で前期比6・4%増でした。既に1億人以上が完了するなど急激にワクチン接種が進み、経済活動も順次再開しています。一方、1月からフランスやドイツなどで変異株による感染が広がった欧州連合(EU)は1~3月期はマイナス成長でしたが、ワクチン接種が進み、4~6月期はプラスに転じるとの見方が広がっています。

英オックスフォード大の研究者らが作るデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、5月16日時点で少なくともワクチンを1回接種した人の割合は英国が54%、米国が47%。これに対し日本は約3%と圧倒的に遅れてはいるのですが、日本は元々感染者数桁違いにが少ないため、現在までのワクチン接種により、ようやく日本なみになり、今後も順調に接種が進めば、収束に向かうでしょう。

この状況をマスコミは、日本はワクチン接種が遅れていると嘆くのみですが、台湾や日本が遅れているのは、元々感染者数や死者が他国に比較すると、桁違いに少なかったからです。感染症のワクチンなどは、感染がひどいところから優先するのが当然です。

そうして、日本の場合は欧米などと比較しても、経済的な落ち込み、特に失業率が低いわけですから、接種がすすめば個人消費が爆発して、経済の回復どころか、その後の躍進も期待できます。

一方5月20日時点で医療従事者のうち新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は80%で、2回の接種を終えた人は48%でした。一方、高齢者で少なくとも1回接種した人は4.7%と少なく、24日からの大規模接種を進めて7月末の接種完了をめざします。

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総務省と厚生労働省が12日公表した新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種時期に関する調査結果によると、政府が目標としている7月末までに接種が完了すると回答した自治体は全国1741のうち1490だった。高齢者人口の84.5%に相当する。もっとも、4月までの聞き取り調査では約1000程度にとどまっており、一定の改善は確認されました。

政府は7月末までに全国の高齢者3600万人に対する接種終了を掲げています。今回の調査では、7月末まで終了可能と回答した自治体の高齢者人口は3000万人となっています。

今後、健康上の理由などからワクチン接種ができない、あるいは意図してしない高齢者を除き、高齢者の8割〜9割程度のワクチン接種が終了すれば、状況は随分変わってくるでしょう。

そうなると、オリンピックが終了する8月に入れば、誰の目にもコロナが収束する時期がみえてくるでしょう。そうして、秋から年末にかけて、いままで様々な我慢していた分が爆発して、消費が爆発的に増えるでしょう。

いつまでもこの長いトンネルが永久に続くわけではありません。コロナが収束する日は目前に迫っています。それまでは、三密を守って心穏やかに過ごしていきたいものです。

今年の秋から年末にかけて、消費は大爆発!東京五輪はそのファンファーレとなることでしょう。それに合わせて今から準備をしている人たちも多いでしょう。今年のクリスマスは、いままでいないほど賑やかで、大爆発することでしょう。



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