2021年5月18日火曜日

〝イスラム教徒の幻滅〟がイスラム過激派を衰退させた―【私の論評】そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退する(゚д゚)!

〝イスラム教徒の幻滅〟がイスラム過激派を衰退させた

岡崎研究所


 オサマ・ビン・ラーデンが2011年5月2日の米軍による「ネプーチュンの槍」作戦で殺害されてから丁度10年を迎えた。この間、ほとんどのイスラム・テロは、米国と西側を標的とするグローバルな脅威から、ローカルな活動しかなし得ない存在へと変わった。アフガンのタリバン、ナイジェリアのボコハラム、アフリカの角のアル・シャバーブなどである。また、アルカイダは今や中心的な司令部もイデオロギーもない民兵組織に分散してしまったし、資金力のある「イスラム国」も作戦し得る場所としてはモザンビークなどの不安定な場所しかない。

 2001年の9・11同時多発テロが与えた衝撃は大きく、米国をはじめ、パニックに見舞われた状況であった。その中で、本来はそうではないはずのイスラムのテロが、戦略的脅威であるかのように見られるようになっていた。しかし、イスラム過激派によるテロは、かつては国際政治の中心的な課題であったが、今はそうではなく、若干の国において、その国の問題としてくすぶっているような問題になったと言ってよい。したがって、バイデン大統領がアフガンからの米軍の9月撤退を決めたのも是認される状況であると思われる。

 イスラム過激派の脅威がこのように小さくなったのは、米国を先頭に各国がその抑え込みに努力したことも大きいが、政治的イスラムの自壊という側面も大きいように思われる。ワシントン・ポスト紙コラムニストのファリード・ザカリアは、イスラム過激派のテロがローカルな存在に縮小した原因について、4月30日付けの同紙コラム‘Ten years later, Islamist terrorism isn’t the threat it used to be(10年経ち、イスラム・テロはかつてのような脅威ではない)’において、政治的イスラムが一部のイスラム教国の国家権力の一部分になったが実績が芳しくなく大多数のイスラム教徒を幻滅させたためである、という説を紹介している。このザカリアの論説には賛成できる。

 ザカリアは、「政治的イスラムを育てた土壌、現在の政権への不平、不満と宗教指導者への盲目的信頼は急速に減少した」、「今あるのはローカルな問題、不満であるが、これは世界的な運動の一部ではない」などとも指摘する。その通りであろう。
 
 アラブ諸国が今後どう発展していくのか、そこで近代化とイスラムがどう折り合っていくのかは難しい問題である。宗教の自由を尊重する自由民主主義は、一つの回答になり得ると思われる。

 なお、ザカリアは、米国には脅威を誇張する伝統があるが、それは避けるべきである、と言っている。これ自体は適切な指摘であるが、対中政策を念頭に置いてそう言っているのであるとすれば異論がある。米国の今の対中脅威認識は誇張されているとは思われない。香港の1国2制度は国際条約で2047年まで続くことになっていた。この条約を破った上に、香港政策はすべて中国の内政事項という主張は全く認められないことである。台湾への武力行使も内政問題ではありえない。米国の現在の対中政策は、脅威の誇張とは評価しがたい。

【私の論評】そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退する(゚д゚)!

上の記事を読んで、私自身は、イスラム教徒の幻滅自体がイスラム過激派を衰退させたわけではないと思います。もちろんその側面は大きいですが、それだけではありません。やはり、大きいのは統治の正当性を失ったというか、元々それがなかったことが大きいと思います。

無論、イスラム教徒の幻滅がイスラム過激派の正当性を失わせたという側面も否めないですが、それだけではないでしょう。


あらゆる組織のリーダーには、正当性が要求されます。政府や大企業の本部などにも統治の正当性が求められます。それを失えば、すべての組織が瓦解します。

ドラッカーはリーダーの正当性について以下のように語っています。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
企業、政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することです。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることです。

さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることです。

しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとしています。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないといいます。

ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性です。ドラッカーは
「正統性とは曖昧なコンセプトである。厳密に定義することはできない。しかし、それは決定的に重要である」としています。

かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使されました。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されています。

しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だといいます。

社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えないというのです。一応、説明はしてくれます。だが、それだけでは不足なのです。腹の底から納得はされないのです。

マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされるというのです。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
強みを生かすことは組織特有の機能です。ドラッカーは、組織における権力の正統性の基盤も、この人の強みを生かすという組織の機能に置くべきであるとまでいっているのです。

それは、国も同じことです。人の弱みではなく、強みを活かすことができる社会を構築しなければならないのです。そのために、政府がすべきことは、まずは民主化です。民主化されていない社会では、人の強みを活かすことなどできません。

さらに、政治と経済を分離することです。これができなければ、政府が経済に直接介入することになり、人は組織の強みを脅かし続けることになります。これでは、人や組織の強みを活かすことはできません。

そうして、法治国家です。法のもとで、万民が法のもとで平等でなければ、人や組織の強みを活かすことはできません。

これらが成就されて、はじめて、人やその集まりであるあらゆる組織の強みを活かすことができるのです。

組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することはでません。しかし、組織は人の弱みを意味のないものにすることができます。

これらができて、はじめて富裕層だけではなく、星の数ほどの多数の中間層が生まれ、これらが自由に社会経済活動ができるようになります。

そうして、彼らが自由に活動して、あらゆる地域、あらゆる階層において、イノベーション(ドラッカーは、技術革新ではなく、社会を変革するのが真のイノベーションであるとしています)を成し遂げます。かつて、これを成し遂げた国だけが、先進国になることができました。

それ以外の国は、たとえ経済成長したとしても、一人あたりの所得が100万円前後で止まってしまいました。これを中所得国の罠と呼んでいます。これには、サウジアラビアなどのほんの僅かの例外しかありません。また、発展途上国から先進国になったのは、日本だけです。それとは、逆に先進国から発展途上国になった国は、アルゼンチンだけです。

現在まで、順調に経済成長してきた中国の一人あたりのGDPは現在100万円前後になっています。ここから先は中国は中所得国の罠にはまって経済成長はとまってしまうでしょう。

3月18日 米中外相会談

3月18日米国と中国の外交のトップ会談で激しい言葉の応酬がありました。中国側は「中国共産党の地位は人民が選んだものだ」と述べ、米国側に共産党による指導の正当性を強調しました。

中国国営の新華社によりますと、会談で中国側は台湾問題に触れ、「いかなる妥協の余地もない」と述べ、米国が進める政府高官の台湾訪問や武器売却の中止を求めました。

香港を巡っては「選挙制度の変更は内政問題だ」として民主派の排除を進める愛国者による統治の決定を尊重するよう要求しました。

また、米国がウイグル族への弾圧をジェノサイド(大量虐殺)と認定したことには「今世紀最大の嘘だ」と反発しました。

こうした主張に先立ち、中国側は「中国共産党は人民が選び14億人に心から支持されている」と述べ、共産党体制を正当性を強調しました。

中国の王毅外相は米国を強く牽制(けんせい)したと明らかにし、外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)政治局委員は会談は有益だったとしつつ、「双方に重要な相違点がある」とも指摘しました。

さて、中国共産党政権には、統治の正当性があるのでしょうか。私は、そうではないことが、今後中国が経済成長しないことによって立証されると思います。無論、中国の経済統計はほとんどデタラメなので、中国政府は政治的メッセージとして、これからもデタラメな統計を出して、他国を幻惑し続けるでしょうが、真実を変えることはできません。

他国に比較して、ほとんど変動しない中国の不思議な経済成長率

たとえば、貿易統計をみていると、当該国が成長しているかどうかをかなりの程度まで推測できます。一般にどの国でも、景気が良いと輸入が増えます。これによって、当該国の景気が良いのか悪いのかかなりの程度まで推測できます。しかも、輸出・輸入統計は相手国があるため、相手国の統計をみればわかります。それ以外にも多くの経済学者らが、中国の真のGDPを知るてがかりを得つつあります。

現在、中国は近い将来米国の経済を追い抜くなどと予測する識者もいるようですが、それは全くの間違いです。それは、現在の中国経済をみていてもわかりますが、中国共産党の統治の正当性は、わざわざ米中外交のトップ会談で大声で主張しなければならないほど低いことからも、容易に理解できます。

本当に正当性があるなら、それをわぞわざ、外国に来てまで主張することはありません。正当性があるなしは、本来中共が主張するものではなく、中国の多くの人民が決めるべきものです。民主化、政治と経済の分離、法治国家化がされていない中国では、多くの人民が中共の正当性を認めているるとは、とても思えません。

もし、中共が認めているとするなら、それは武力を背景に無理やりそういわせているか、人民が他の世界の社会制度こを熟知していないからにすぎないです。

そうして、そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退していくでしょう。

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