2021年12月10日金曜日

安倍元首相「政治的メッセージ出すとき」 北京五輪外交的ボイコット、岸田政権に決断促す ウイグルの人権状況懸念で米・英が対中強硬姿勢強める―【私の論評】日本は、過去に瀕死の中共を2度助けたが、3度目はないという強力なメッセージに(゚д゚)!

安倍元首相「政治的メッセージ出すとき」 北京五輪外交的ボイコット、岸田政権に決断促す ウイグルの人権状況懸念で米・英が対中強硬姿勢強める

安倍元首相

 安倍晋三元首相が動いた。米国や英国などが、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧に抗議し、来年2月の北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を宣言するなか、岸田文雄政権に早期決断を促した。こうしたなか、米下院や英国の非政府組織は、対中強硬姿勢を強めている。


 「五輪はアスリートにとって夢の舞台。しっかり支援する立場には変わりない」

 安倍氏は9日、自身が率いる安倍派の会合でこう前置きして、同派所属の松野博一官房長官の前で、次のように続けた。

 「ウイグルでの人権状況について政治的な姿勢とメッセージを出すことがわが国には求められている」「日本の意思を示すときは近づいているのではないか」

 ジョー・バイデン米政権が宣言した「外交的ボイコット」に、オーストラリアや英国、カナダは賛同した。同盟国・日本の対応が注目されるなか、政界屈指の「親中派」である林芳正外相を起用した岸田首相は9日の衆院代表質問への答弁でも、「諸般の事情を総合的に勘案し、わが国の国益に照らして自ら判断したい」と述べるにとどめている。

 安倍氏は最近、岸田首相との距離が指摘される。ただ、6日の安倍派のパーティーで、安倍氏は「一致結束して岸田政権を支えていく」と語っており、抑えたトーンで早期の対応を求めたといえる。

 一方、米国や英国は、対中強硬姿勢を強めている。

 米下院本会議は8日、強制労働が疑われるとして、ウイグルからの物品輸入を原則禁止とする「ウイグル強制労働防止法案」を、超党派の賛成多数で可決した。さらに同日、安否が懸念される中国の女子テニス選手、彭帥(ほう・すい)への国際オリンピック委員会(IOC)の対応が、人権配慮の義務を怠っていると非難する決議を全会一致で可決した。

 弁護士や人権専門家らによる英国の非政府組織「ウイグル法廷」は9日、報告書を発表し、中国政府によるウイグルでの人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。習近平国家主席や中国共産党の高官らが人権侵害に関して「主要な責任を負っていると確信している」とも強調した。

【私の論評】日本は、過去に瀕死の中共を2度助けたが、3度目はないという強力なメッセージに(゚д゚)!

中国が、東京で開かれた夏季オリンピックを取り上げ、日本が相互主義に基づき、北京冬季オリンピックの「外交的ボイコット」に参加しないことを促しました。米国の同盟国が外交的ボイコットを続々と表明している中で、日本がどのような決定を下すのか注目されます。

 中国外交部の汪文斌副報道局長は9日、定例会見で「中国は、全面的に日本の東京オリンピック開催を支持した」とし、「今は当然、日本の基本的な信義を見せる番」と述べました。 

東京五輪には、中国は最初は副首相が出席するという話でしたが、防衛白書での中国に関する記述に反発してこれを見送りました

最終的に五輪に来たのは、国家体育総局の苟仲文局長でした。中国共産党のなかの序列を見ると、上に政治局員が25人いて、これは日本の閣僚に相当すると思いますが、苟仲文氏はそれ以下の中央委員に属する普通の官僚です。

国家体育総局の苟仲文局長

中央委員は200人くらいますが、苟仲文の序列はそのうちの150~160番目くらいです。政治的には中立といっても良いでしょう。そのため日本では、誰も名前さえも知りませんでした。日本も北京五輪には、同ランクの人を送れば良いです。実務者として文科省の課長レベルの人十分でしょう。

 米国は去る6日、北京冬季オリンピックに対する外交的ボイコットを公式的に表明しました。

中国は東京五輪を支援し参加してきたのだから、日本が北京冬季五輪をボイコットするなどということはできないと思っているようです。

事実11月25日の外交部定例記者会見で趙立堅報道官は以下のように述べています。
中国と日本は、互いの五輪開催を支援するという重要なコンセンサスがある。 中国は、東京五輪の開催にあたり、既に日本側を全面的に支持してきた。日本側には基本的な信義があるべきだ。
「重要なコンセンサス」が出来上がっていたということは即ち、日本は「こっそり」=「水面下で」、「すでに中国と固く約束を交わしていた」ものと解釈することができます。趙立堅は意図的というか、上層部からの命令で公にしたのでしょう。ただ、東京大会開催時に日本は中国と水面下で「互いに協力し支持し合う」と約束していたのは確かでしょう。

だから中国は日本に「約束を守れ」と「信義」を要求しているのでしょう。ただし、「重要なコンセンサス」は、どの部分でなされていたのかという問題もあります。自民党としたものか、自民党とはいってもたとえば二階幹事長等と交わしたものなのか、それとも日本政府(当時は菅政権)としての約束なのか、それによって今後の岸田政権の対応は変わってくるでしょう。

それにしても、苟仲文・国家体育総局長を東京五輪に送ってきたのですから、これが「重要なコンセンサス」といえるほどのものだったといえるのでしょうか。防衛白書に何が書いてあろうと、そのことは批判しても、「重要」と考えるのであれば、もっと上の人物を送り込むべきでした。

また、尖閣付近に連日のように艦艇等を繰り出し、さらにはロシアととも、複数の軍艦で日本列島を一周したりしておいて、「約束」「信義」を持ち出すのは筋近いというものです。

ただ「重要なコンセンサス」があったことをわざわざ表に出したということは、「日本が約束を破って、外交的ボイコットをすること」は中国、もしくは習近平政権には大きな痛手になるのでしょう。おそらくは、後者でしょう。

岸田首相は去る7日、記者に向け「日本はオリンピックの意味、われわれ外交の意味などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断する」と述べました。岸田首相が言葉を濁すのは、「重要なコンセンサス」を意識してのことかもしれません。


米国の外交的ボイコットに続き、ニュージーランドとオーストラリアが後に続きました。続いて英国とカナダが参加しました。

これにより、米国、英国、オーストラリアの外交安全保障三者協議体であるオーカス(AUKUS)諸国すべてが、北京冬季オリンピックに外交使節団を派遣しないことになりました。

ここにカナダまで加わり、米国の安保同盟であるファイブアイズ(Five Eyes)も、やはり不参加になりました。 ヨーロッパ諸国の不参加についても、さらに後に続く可能性があります。欧州連合(EU)は声明を通じて「どんな形でもオリンピック参加については、個別加盟国の決定」と明らかにしました。

Five Eyesが外交的ボイコットをするであろうことは、習近平政権には織り込み済みなのでしょうが、日本にはよほど「外交的ボイコット」してもらいたくないようです。

政治的メッセージとは、はやい話がプロパガンダのことです。広く触れ知らせること。宣伝。多く思想や教義などの宣伝をいいます。ただ、プロパガンダにはマイナスのイメージがついてしまっているので、安倍元総理は「政治的メッセージ」と語ったのでしょう。

日本としては、先に述べたように、中国に対する東京五輪への返礼として、北京五輪には文科省の課長レベルを送り、はっきりと「外交的ボイコット」と表明するのが相応しい対応です。


間違っても、閣僚級などを送れば、中国に舐められるだけです。岸田政権が課長級を北京五輪に送り込むことにし、それだけでなく「外交的ボイコット」を表明すれば、習近平政権にとっては大きな打撃になります。

中国共産党の人権侵害は絶対に許さないという強いメーセージとなります。そうして、これは、日本は過去に瀕死の中国共産党を2度助けたが、中国が人権問題を解決しない限り3度目はないという強力なメッセージとなります。これが、安倍元首相が語る「政治的メッセージ出すとき」 という意味だと思います。

一度目は、日本が国民党軍と戦いこれを弱らせたことで結果として、中共軍を救いました。これは、毛沢東も認めました。二度目は、天安門事件後当時の日本政府が、天皇皇后両陛下を中国に訪問していただいてまで、中国が国際社会に復帰できるように助けました。

現在の米中冷戦においても、日本が何らかの形で中国に助けの手を延べることを期待しているのでしょうが、「外交ボイコット」とはそれはないことを伝えるメッセージとなります。

この「政治的メッセージ」は中国共産党だけではなく、広く多くの中国国民に伝わることでしょぅ。人権侵害を受けている多くの中国国民に対しての強力なメッセージになることでしょう。

もし、岸田総理が瀕死の中国をまた助けようと考えているのなら、問題外です。であれば、岸田総理は国賊です。そのような、政権は挙党一致で退陣に追い込むべきです。

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