2022年8月17日水曜日

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる

破れたリズ・チェイニー氏

 米国の中間選挙(11月8日投開票)に向け、ワイオミング州で16日、連邦下院選の共和党候補を決める予備選が行われた。複数の米メディアによると、昨年の連邦議会占拠事件を巡ってトランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になった。

 ワイオミング州は保守の牙城で、保守層に対するトランプ氏の影響力が依然として強固なことが示された。チェイニー氏は議会占拠事件を巡るトランプ氏の 弾劾だんがい 訴追決議に賛成した共和党議員10人の1人。事件を巡って下院が設置した特別調査委員会の副委員長としてトランプ氏の責任を追及するなど、党内の「反トランプ」の急 先鋒せんぽう だ。

 トランプ氏はチェイニー氏の対抗馬として弁護士のハリエット・ヘイグマン氏(59)を推薦した。

【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

エリザベス・リン・チェイニー(英語: Elizabeth Lynne Cheney, 1966年7月28日 - )は、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州出身の政治家、共和党員。愛称のリズ・チェイニーとも称されています。

セカンドレディ・リン・チェイニーとディック・チェイニー副大統領の長女で、ジョージ・W・ブッシュ政権下で国務副次官補(近東担当)などの要職を歴任しました。

2017年からはワイオミング州選出のアメリカ合衆国下院議員を3期務めています。2019年からは下院共和党で3番目に高い地位である共和党会議議長に選出されました。

ネオコンの主導的な政治家の一人であり、他国への介入を避けるトランプ政権のモンロー主義的外交政策には批判的態度を取ってきました。共和党の指導者でありながら、トランプ大統領の弾劾決議に賛成票を投じたため、トランプ支持者や共和党右派によって批判を受けています。2021年5月には党内の内部対立が原因で党会議議長を解任されました。

ハリエット・ヘイグマン氏

今回勝利した、ヘイグマン氏は弁護士で、共和党全国委員会の元メンバーでした。ヘイグマン氏は2018年のワイオミング州知事選に立候補したが敗れていました。13年には上院選に出馬したチェイニー氏のアドバイザーを務めてもいました。

ヘイグマン氏は2021年9月9日の声明で「多くの州民と同様、私は国政を目指したリズ・チェイニー氏を支持した」「しかしその後、チェイニー氏はワイオミング州を裏切り、国を裏切った。そして私をも裏切った」と述べていました。

7月26日、トランプは昨年1月の米大統領退任後、初めて首都ワシントンに戻り、自身を支持する政治団体の会合で演説しました。

「この11月、わが国の破壊を止め、米国の未来を救うために投票しよう」

11月の中間選挙を控え、トランプが矛先を向けるのは与党民主党だけでなく、エスタブリッシュメント(支配層)派と呼ばれる既得権益を持つ共和党内の支配層に近い議員たちです。先日もこのブログに掲載したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%がエスタブリッシュメントです。

このエスタブリッシュメントは、過去においては、大統領は無論のこと、連邦議員や、地方議員などの選挙にも大きな影響力を発揮してきました。この状況から、米国では大統領もエスタブリッシュメントの操り人形だと揶揄されてきたのです。


しかし、トランプは違いました。
実業家のトランプ氏はエスタブリッシュメントの資金ではなく、自ら選挙キャンペーン費用を調達し、大統領になりました。

トランプ氏はエスタブリッシュメント派を「腐敗した組織」と切り捨て、急進的な改革を志向する党内の「草の根派」の支持者らに自身への忠誠を求めました。

ここで言葉を整理しておきます。エスタブリッシュメントとは、先にも示したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%の実質上の米国の支配層のことです。エスタブリッメント派とは、エスタブリッシュメントに親和的な議員、大統領のことです。

トランプ氏は、大統領在任中にも反エスタブリッシュメント色を深めました し、大統領を退いてからは地方選の予備選にも、「刺客」の候補者を次々に送り込み、地方政治に深く関与するエスタブリッシュメントに脅威を与えています。

その象徴となったのは、5月に行われたアイダホ州知事選の共和党予備選でした。トランプの支持を受ける草の根派の現職副知事ジャニス・マクギーチン(59)が、エスタブリッシュメント派と目される現職知事ブラッド・リトル(68)に挑みました。

マクギーチンは副知事在任中、知事のリトルと激しく対立。リトルが出張で州外に出た隙を狙い、知事代理の権限で新型コロナウイルス対策のマスク着用義務やワクチン接種義務を独断で取り消したこともありました。こうした仕事ぶりが災いし、予備選の結果はマクギーチンが得票率で20ポイントも差をつけられる大敗でした。

連邦議会上下両院の予備選ではトランプの推薦が強く作用しますが、有権者の生活に直結する地方政治の代表は実績や好感度で選ぶというところがあります。こうした傾向は各地の地方選予備選で顕著に表れ、ジョージア州でも大物知事として知られる現職ブライアン・ケンプが、トランプの「刺客」候補を大差で破りました。ただ、反トランプ派の勝利はこれくらいのものでした。

そうして、共和党内では草の根派が着実に力をつけています。かつてエスタブリッシュメント派一色だった共和党は、10年の保守派運動「ティーパーティー(茶会)」で政治に関心のなかった層を取り込み、16年大統領選で当選したトランプがさらに大きなうねりを生み出しました。今やアイダホ州共和党の要職は大半が草の根派です。

中間選挙で与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がるなか、攻勢を強めてきたのが共和党のトランプ前大統領でした。

220人以上の候補者に推薦を出して勢力を広めつつ、共和党内の「反トランプ派」には「刺客候補」をぶつけて再選を阻んできました。近く、2年後の大統領選に向けた出馬宣言をするかどうかも注目されています。

昨年1月の議会襲撃事件を受け、民主党はトランプ氏の弾劾(だんがい)訴追を提案しました。これに共和党から賛成した下院議員が10人。これらの議員が「裏切り者」として狙い撃ちにされているのです。

10人のうち、予備選を勝ち抜いて11月の中間選挙に出馬できる議員は2人にとどまります。3人は予備選で「刺客」に敗れ、4人は不出馬を決めました。

そして最後の1人が、リズ・チェイニー下院議員でした。ブッシュ(子)政権の副大統領だったディック・チェイニー氏を父に持ち、自らも過去3回の選挙で圧勝してきました。

ところがトランプ氏を批判したことで状況は一変しました。16日に投開票されたワイオミング州予備選に向けて、世論調査では「刺客候補」にリードを許す苦しい展開となりました。

米連邦下院選のワイオミング州共和党予備選に向けた集会で、トランプ前大統領(右)の支持を受け、握手するハリエット・ヘイグマン氏=米ワイオミング州キャスパーで2022年5月28日

そうして、今回ワイオミング州では、トランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になったのです。

トランプ氏は6日にはテキサス州で開かれた保守系団体の集会で、「バイデン(大統領)をクビにする」と気勢を上げました

中間選挙で完全復権を果たし、24年の次期大統領選に向け道筋をつけるのかの、答えは3カ月後に出ます。ただ、今回リズ・チェイニーがトランプの刺客に敗北したことで、トランプ氏は、この道筋を着実につけつつあるといえます。

トランプ氏は、現在機密文書に関連して家宅捜査を受けたことなどが、報道されていますが、これに対して、私は米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わると断言しましたが、その見立ては正しかったと確信を深めました。

もし、これが本当だとすれば、今回のようにチェイニー氏がトランプ氏の刺客に敗北することなど考えられないからです。

日本のANNニュースも、このニュースを取り上げていました。そのニュースは以下のリンクからご覧いただけます。


このニュースでは、米CNNがコマーシャルを中断してまで、リズ・チェイニー氏が敗北したことを伝えていました。

そうして、最後のほうでは、アメリカを分断したトランプが共和党内でも、分断をはかっていると批判していました。

しかし、米国はもともと随分前から分断しており、オバマの頃から分断が激しくなり、それ故にトランプが登場したというのが現実です。実際オバマが大統領時代の米国を調べれば、分断が酷くなっていたことを確認できるはずです。

また、トランプが共和党を刺客を送ることにより、新たに分断したようなことを語っていますが、これも間違いです。

米国で最初の、反エスタブリッシュメントの大統領は、ケネディ大統領です。ですから、この頃から民主党はエスタブリッシュメント派とその反対派で分断していました。その頃から共和党も分断していました。

共和党にも、民主党にもエスタブリッシュメント派と反対派が存在し続けています。米国政治においては、共和党、民主党という党派の別があるとともに、エスタブリッシュメント派とその反対派が存在してきたのです。

その時々で、エスタブリッシュメント派が優勢であるとか、そうてもないときもありましたが、分断していたのは事実です。

ケネディ以後、はっきりと反エスタブリッシュメントを掲げた大統領は、民主党にも共和党にもいませんでしたが、トランプ大統領が反エンタブリュッシュメン派を掲げた大統領として登場したのです。これを理解しないと、メディアのネガティブな報道にも関わらず、トランプ人気がなぜここまで続くのか理解できません。

このあたりの事情も知らないで、トランプ氏が刺客を送ることにより、共和党内での分裂を招いたというのは、あまりにも浅薄な見方です。

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