2022年8月4日木曜日

中国経済の〝ゾンビ状態〟さらに悪化 若者の失業率40%超、住宅ローンの債務残高960兆円 地方のショッピングモールでは売り子があくび―【私の論評】今回ばかりは「変動相場制」に移行する等の改革をしなければ、中国経済は崩壊(゚д゚)!

心肺停止の中国

習主席の中国では、工期が遅れたり、建設がストップしたマンションが増えている

 「心肺停止」が、中国経済の現状診断である。経済の心臓部はカネの循環、血液にあたる。

 公務員の給与減額、遅配が顕著となった。地方公務員、教員の給与削減、ボーナスなしとなり、教職員が学校前で抗議集会を開いている。日本では、ほとんど報道されていない。

 地方銀行では取りつけ騒ぎ、河南省ではやくざと組んだ不正融資で8000億円が闇に消え、農民、庶民の銀行口座が凍結された。内モンゴル自治区や吉林省では、銀行の国有化という救済措置が取られた。

 コロナ禍によって、人の流れがとまった。恒大、碧桂園、世茂集団など、有名なデベロッパー(不動産開発会社)が、デフォルトの連鎖に陥った。建設現場でクレーンが止まり、労働者が消え、完成のめどがたたないまま風雨にさらされた。

 これは2019年からの中国各地の現象である。足で歩かないジャーナリストたちが公表データだけを頼りに、「中国各地のマンションは値上がりが続いている」と虚報を流していた。

 大手デベロッパーが軒並み倒産すると、下請けや孫請けには自殺も出る。若者の失業率は、実際には40%を超えているという。

 住宅ローンの債務残高は960兆円。当局は外債、米企業債、株式などの売却に転じた。ローンの支払いボイコットにより、中央銀行の損失は47兆円強(ブルームバーグ、8月1日)。

 中国のGDP(国内総生産)の30%を支える不動産ビジネスが壊滅状態となると、規制されていた「融資平台」(=地方政府傘下の投資・事業会社が発行する債券)が復活した。

 社会融資規模は6800兆円。新幹線累積赤字はすでに120兆円。それでも強気で新幹線を2035年に7万キロ達成だと呼号している。新たに73兆円が必要だ。財源をどうするかという議論は真剣になされず、経済政策をつかさどるのは国務院だが、李克強首相ら共青団幹部は冷笑しながら習近平国家主席の失敗をじっと待っている。

 消費者が敏感なのは、ショッピングモールの落日だ。全土に8000近い巨大ショッピングモールのテナントが3割以上埋まっていない。テナントの空きが20%を超えると、そのモールは経営が成り立たない。

 人口の少ない地方都市にも、大都市並みの豪華ショッピングモールができて、客がほとんどいない。売り子があくびしている風景が中国全土に展開されている。

あくびをする中国の売り子 写真はブログ管理人挿入

 「心肺停止」の次は?

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『歩いてみて解けた「古事記」の謎』(育鵬社)、『日本の保守』(ビジネス社)、『歪められた日本史』(宝島社新書)など多数。

【私の論評】今回ばかりは「変動相場制」に移行する等の改革をしなければ、中国経済は崩壊(゚д゚)!

ほぼ廃墟と化した青島宝龍楽園と呼ばれる巨大ショッピングモール

中国からの資本流出が加速するなか、それを助長する利下げや通貨供給拡大など金融緩和の余地はなくなりつつあるようです。

2022年前半には預金準備率や実質的な政策金利である最優遇貸出金利(LPR)などが引き下げられました。その後も金融緩和による景気の下支えが期待されたのですが、足元にかけて状況が急速に変わっています。

5月に実施された利下げは住宅需要の喚起(5年物LPRは住宅ローン金利の基準金利)に限定されました。人民銀行の易総裁(6月27日付Bloomberg News)と鄒貨幣政策局長(7月13日付Bloomberg News)は、実質金利はすでにかなり低いほか、国内銀行間市場の流動性は十分であることから、中国人民銀行が先行き利下げを実施する可能性が低いことを示しています。

足元にかけて中国経済は持ち直しているものの、ゼロコロナ政策によって大きなダメージを負っています。回復ペースを強めるためには、政策支援が必要です。

しかし、7月19日、李克強首相が「中国が大規模な刺激策を講じたり、通貨を過剰発行したり、あるいは過度に高い成長目標を誇示したりすることはない」とコメントしており、2022年の経済成長率目標「+5.5%前後」に必ずしもこだわらない意向が示唆されました。

以上を総じてみると、中国当局は資金流出が中長期的な経済発展に悪影響を及ぼす事態を回避すべく、当面、景気対策としての金融緩和は実施しないというよりも、緩和しても効き目がいどころか資本流出がさらに加速するだけなので、やりたくてもできないというのが実情のようです。

中国は「流動性の罠」にはまり込んでいるようです。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催―【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

中国共産党中央政治局は28日に会議を開催した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国共産党中央政治局は28日に会議を開き、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配したことを掲載しました。

以下にこの記事より一部を引用します。

この会議では、成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されませんでした。

それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。秋に異例の3期目続投を目指す習近平国家主席にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうです。

以下にこの記事の結論部分を引用します。

流動性の罠」にはまった現在、これを解消しようとして金融緩和をしても現状では効き目がなく、かといって金融緩和を継続し続けると、「国際金融のトリレンマ」によって、資本の海外逃避や、不況下のインフレ(スタグフレーション)が起こったりで、何らかの不都合が起こるため、それもできません。

今後、何かを根本的に変えないと、中国経済は低迷し続けることになります。少しうがった見方かもしれませんが、中国政府はすでにこのことに気付いているため、それをカモフラージュするため、「ゼロコロナ」政策に固執しているようにみせかけ、経済の落ち込みは主にこれによものとみせかけ、時間稼ぎをしているのかもしれません。

ただ、いくら時間稼ぎをしたとしても、何かを根本的に変えないと、中国経済は今後成長する見込みはなさそうです。

この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面しています。国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、経済は急減速し回復の見込みもなく、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進んでいます。

このような、情勢は第20回党大会で異例の3期目を迎えるであろう習近平総書記に、さまざまな試練を突き付けています。
中国が、「国際金融のトリレンマ」から抜け出し自国都合で自由に金融政策である「独立した金融政策」をできるようにするには、固定相場制から「変動相場制」に変えるか、「自由な資本移動」の禁止のいずれかを実行しなければなりません。

中国は現在のところ、中途半端な「資本移動規制」をして、急場をしのごうとしていますが、これは単なる弥縫策にすぎません。海外への資本逃避も含む「資本移動」をできなくすれば、独立した金融政策はできるようになるかもしれませんが、一帯一路などの海外投資もまともにできず、海外からの投資も期待できなくなります。

であれば、「変動相場制」に変えるしかないのですが、それも元がかなり安くなることが予想され、怖くて踏み切れないというのが実情なのでしょう。

しかし、このままでは、たとえコロナが終息したとしても、中国経済が回復する見込みはありません。「変動相場制」に移行するなどの、大胆な改革を行わない限り、金融緩和をしようにも何らかの不都合が起こることになりできないので、雇用は悪化しても対策を打てず、中国経済は「心肺停止」から「死」へと向かうしかありません。

過去には、中国経済は何とか中国政府の弥縫策によって乗り越えてきましたが、今回ばかりは、有効な弥縫策はないようです。このままいくとますば中国がデフォルトすることになるかもしれません。それでも根本的な改革をしなけば、中国経済は崩壊することになるでしょう。

それでも、中国は過去もそうだったように、国民を人民解放軍で弾圧して表向きは何もないかのように装うでしょうが、それにもいずれ限界がくることになるでしょう。

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