2022年8月18日木曜日

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」―【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」


 台湾と米国の経済連携の強化に向けた新協議体「21世紀の貿易に関する台米イニシアチブ」の交渉が今秋、正式に開始する見通しだ。行政院(内閣)は18日、双方は「なるべく早期に具体的成果を出し、貿易協定を締結したいと願っている」と説明した。

 台湾と米国は今年6月、新協議体の始動を発表。貿易の円滑化やデジタル経済など11分野を柱とする。米通商代表部(USTR)が17日夜、報道資料を出し、今秋の協議開始について明らかにした。

 USTRのサラ・ビアンキ次席代表は、「台湾との貿易や投資における関係深化を促し、双方が価値を共有する貿易の優先事項の推進につながる」との考えを示した。

【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

米台の貿易交渉は、日米など14カ国が参加表明した経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に台湾が加われないため、米台イニシアチブを代替の枠組みとするとされています。 IPEFと他の貿易協定の関係を以下に掲載しておきます。


今月初めにナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問して以来、米中間の緊張が高まっています。

中国は台湾を、自国から分離した省とみており、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認しています。

アメリカは台湾を正式に承認していないですが、強力な関係を維持しており、台湾が自衛できるよう武器を販売しています。

これとは別に、ダニエル・クリテンブリンク米国務次官補(東アジア太平洋担当)は18日、中国政府の「威圧感の増大が(中略)台湾海峡の平和と安定を脅かしている」と発言。

「平和と安定を損なおうとする中国政府の現在進行形の動きに直面する中で、我々は長年の方針に沿って、平和と安定を守るために冷静かつ断固とした措置をとり続け、台湾を支援していく」としました。

中国は、台湾に対する軍事的威嚇だけではなく、経済的にも報復する姿勢を示しています。

中国は台湾産のかんきつ類や一部水産物の輸入と、天然砂の台湾向け輸出を一時停止しました。果物から害虫や殺虫剤を検出したことなどが理由というが、誰も信じないでしょう。強大な経済力で対立する相手に圧力をかける経済的威圧は中国の常套手段です。

指摘したいのは、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも7月末の日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)でも、中国を念頭に置き、経済的威圧に対処する考えを確認したことです。台湾が中国の圧力にさらされている以上、台湾に寄り添い、支えるのは民主主義国の責務です。

日本は当事国ではないから傍観するというのでは中国の振る舞いを黙認することになります。台湾と連帯するため日本が取るべき行動はあるはずです。手始めに、中国と台湾が昨秋、ともに申請したTPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明してはどうでしょうか。日本の同意がないと中国加盟の道は閉ざされます。いつまでも強権姿勢を改めない中国がTPPにそぐわないことを、まずははっきりさせるべきです。

そうして、IPEFには、問題があります。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ―【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻むことに(゚д゚)!
問題はIPEFの実効性です。米国の関税率引き下げが期待できず、自国の非関税障壁の縮小を迫られるならば、新興国にとりIPEFに参加するメリットは不透明と言えます。一方、日本政府は、TPP加盟こそが米国の本来採るべき道と考えているようです。萩生田光一経産相は、5月10日の閣議後会見で、IPEFに関し「加盟国のメリットが不明瞭」と率直に語りました。

米国もそうした指摘は十分に認識しているのでしよう。IPEFの交渉の柱とする「公正な貿易」、「サプライチェーンの回復」、「インフラと環境への投資」、「税制と腐敗防止」の4つの分野に関し、個々の国が全ての議論に参加する必要はなく、個別に選んで参加できる方式を導入する模様です。

それでも、今のところASEAN10ヶ国でIPEFへの参加が見込まれるのはシンガポールだけと言われています。トランプ前大統領がTPPから離脱したツケは、米国のインド太平洋戦略に大きなダメージを与えていると言えます。

このようなことがあるので、台湾は米国と貿易交渉をすること自体はやぶさかではないのでしょうが、IPEFに準ずる貿易協定になるため、あまり期待はしていないでしょう。

実際、ブログ冒頭の記事は、「フォーカス台湾」という台湾のサイトの記事なのですが、事実を淡々とは述べていますが、台湾側の期待などについては、触れられていません。

台湾はTPP協定を熱心に勉強していますし、大陸中国とは異なり、民主化が進み、市場は自由化し、変動相場制を導入しています。加入交渉に時間はかからないでしょう。台湾が高いレベルの協定を受け入れて中国ができないということになれば、中国のメンツは保てないです。

中国のTPP加入申請は、米国がTPPから離脱したために起こったものです。米国では自由貿易に反対する勢力も強いですが、中国に厳しい態度で臨むべきだとする勢力も強いです。米国が中国に対抗しようとするなら、TPPに復帰することが望ましいことを米国に働きかけるべきです。

TPP交渉を開始したオバマ政権の副大統領だったバイデン大統領なら、中国との関係でもTPPは重要であることを理解するでしょう。また、通商関係では、連邦議会は大きな力を持っています。

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務などにもTPPの重要性を訴えるべきでしょう。仮に復帰のために必要があると米国が要望するのであれば、米国が希望するTPPの環境章や労働章を見直してもよいと思います。

岸田首相が、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明し、最終的に台湾と米国をTPP に加入させることに成功すれば、世界が安倍元総理を注目したように、岸田首相を注目することになるでしょう。再び日本が、安倍総理時代の時のように、世界で自由貿易や、安全保障でリーダーシップを発揮する契機となることでしょう。

菅前総理は、安倍元総理のリーダーシップを継承しましたが、岸田総理はどうなのか、非常に疑問です。しかし今更これを継承しないというのなら、日本に存在感は地に落ちるでしょう。ましてや、親中派路線を強行することにでもなれば、日本も中国に並んで、世界から邪悪な存在とみなされかねません。

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