中国の空港の国内線のゲート |
新型肺炎と2003年に拡大を見せたSARS発生時と現在との大きな違いは、中国及びその他地域からの訪日観光客の急増。2002年と2019年の間に、中国からの訪日観光客数は21.2倍、訪日観光客数全体では6.1倍にも増加しているため、NRIでは、新型肺炎によって訪日観光客が減少し消費額が落ち込んだ場合、日本経済に与える悪影響はSARSの発生時よりも格段に大きくなる可能性があるとしている。
SARSの影響による訪日観光客数の減少分として2003年1月時点での訪日観光客数の前年同月比と2003年全体の訪日観光客数の前年同月比との差を比較すると、訪日中国人観光客数は-13.0%、訪日観光客全体では-15.4%となる。
新型肺炎の影響によって、2020年の訪日観光客数がこれと同じ割合で減少すると仮定した場合、中国からの訪日観光客数の減少は2020年の日本のGDPを2650億円押し下げ、訪日観光客数全体では7760億円押し下げると試算した。後者については、GDPを0.14%押し下げる計算になる。
2003年5月単月の数字を見ると、中国からの訪日観光客数は前年同月比-69.9%、訪日観光客数全体では同-34.2%とかなり深刻な影響が生じたが、SARSが訪日観光客数に影響を与えたのは数か月程度と比較的短期間にとどまった。仮にそれと同程度の影響が1年間続くと仮定し、同様に計算をしてみると、新型肺炎の影響で日本のGDPは2兆4750億円、0.45%も押し下げられる計算となる。
この試算は2020年1月27日に発表されたもの。 NRIでは、日本人の個人消費悪化の影響、企業の生産活動停滞の影響、海外経済減速の影響なども加わってくる可能性があるとしている。
新型肺炎がインバウンド需要の減少を通じて日本経済に与える影響試算
【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!
インバウンド消費を過大に評価する人がいて、中には日本経済の発展≒インバウンド消費の拡大などと言い出す識者もいて、本当に噴飯ものといわざるをえないところがあります。
これについては、以前のこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!
麻生財務大臣 |
平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。
日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。
なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。
少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。
インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。
インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。新型肺炎の問題が起こるまでは、インバウンド消費が徐々に増えるだろとうということで、観光産業などを中心にこれに期待するむきも多かったのですが、もはやその期待は打ち砕かれたとみるべきです。
こちらは、札幌です。もう少しで「さっぽろ雪まつり」が開催されます。今年は、2月4日から開催の予定ですが、今年は新型肺炎により、観光客が大幅に減ることが予想されます。
「さっぽろ雪まつり」にも毎年、海外から観光客が訪れていますが、今年は期待できないでしょう。
「さっぽろ雪まつり」に限らず、今年は様々なイベントで国内外の観光客が激減するのは、はっきりしています。
最近の新型肺炎の広がりかたのスピードは、増しているようです。そうして、どうなら人から人への感染も広がっているようです。今のところとどまるところを知らないようです。
であれは、わたしたちとしても、最悪を想定しておくべきです。最悪の場合は、中国の習近平の国賓としての訪問は当然のことながら、中止されるか延期されるでしょう。オリンピックもそうなる可能性は否定できません。
札幌では、東京オリンピックのマラソンが観戦できるものと、期待していましたが、それもなくなるかもしれません。
インバウンド消費が、かなり冷え込むことは最早明らかです。
そうして、これに対する最も単純ですぐにできる対策があります。それは、昨年10月に10%にあげた消費税を元に戻すか、5%に減税すことです。
現状は、危急存亡の時と言ってもよいくらいです。このときくらいは、このような手段を用いるべきです。そもそも、日本では税金というものは、増税の一方方向しかないと思われているようですが、それ自体が間違いです。
その時々の経済の状況に応じて、増税(景気が加熱した場合)したり、減税(景気が悪くなった場合)するというのが、まともなやり方です。
そうなると、個人消費は回復するどころか、伸びます。インバウンド消費の減少を補ってあまりあるほどになるはずです。
無論、日本国内でも新型肺炎の脅威が消えさらなければ、減税しても当初は消費の伸びは鈍いかもしれませんが、少なくとも日本国内での感染が終息すれば、景気はもりもり回復することでしょう。
今の日本にとって重要なのは、国内での新型肺炎の感染を終息させ、海外からの感染者をシャットアウトし、減税により、経済を良くすることです。
インバウンド消費が倍になるよりも、日本国内個人消費が数%でもあがったほうが、日本経済への影響はよほど大きいです。
さらに、個人消費があがれば、当然のことながら、日本の国内旅行での消費額や、旅行回数なども増えることが予想されます。新型肺炎前に、海外にいっていた人たちが、国内旅行に回帰する可能性が大きいからです。そうなると、観光業も日本人観光客により潤うことが予測されます。
SARSと、今回の新型肺炎により、私達は、インバウンド消費に頼ることが、いかに脆いことが学んだはずです。外国からの観光客は、来るもの拒まずという姿勢は崩さなくてもよいですが、まずは国内の消費を拡大し、国内観光客数や消費額を増やすことが先決です。それによって、安定した基盤をつくり、海外で今回の新型肺炎のようなことがあっても、余裕をもって対処できるようにしたいものです。
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