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2020年1月27日月曜日

習近平「新型肺炎対策」の責任逃れと権謀術数―【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!


中国で新型ウイルス肺炎拡大 各国で警戒

<新型肺炎の被害拡大を防ぐため、共産党政権は対策本部を急きょ設立した。だが、そのメンバー人事は予想外のものだった>

1月25日、中国共産党政治局常務委員会は新型肺炎に関する対策会議を開いた。昨年12月8日に新型肺炎が武漢で発見されて拡散して以来、共産党最高指導部がようやく開いた最初の対策会議なので、その中身が当然注目された。

まず今後の対策について、新華社通信が配信した対策会議の正式発表は冒頭からこう述べる。

「1月25日、中共中央政治局常務委員会は会議を開き、新型肺炎への対策に関する報告を聴取。疫情(疫病情況)の(拡大)防止・コントロール、特に患者の治療についての再研究・再手配・再動員を行なった」

つまり会議は、今後における新型肺炎の拡散防止と治療について、どういう措置をとるのかを研究し、実行のための手配や動員を行なった。ここで注目すべきなのは、「再研究・再手配・再動員」における「再」という言葉の連発である。

その意味するところは、共産党政治局常務委員会が事実上、今までの研究と手配と動員は不十分であることを認めた点にある。今までのやり方は不十分だったからこそ、「再研究・再手配・再動員」が必要となったのであろう。つまり政治局常務委員会は、今までの不手際を間接に認めた上で、対策の見直しや態勢の立て直しを図ろうとしている。

そこで態勢立て直しのためにとった重要な措置の1つが、党中央の「疫情対策指導小組」の設置である。

新型肺炎を防ぐ「指導小組」の疑問点

どういう組織なのかを理解するため、まず「小組」という言葉の意味を簡単に説明しておこう。中国共産党の中央指導部には多くの「小組」が設置されている。日本で言えば「統括本部」あるいは「対策本部」のようなものである。例えば「中央財経指導小組」は党と政府による経済運営・財政運営の統括本部であり、「中央外事工作指導小組」は即ち外交政策とその運営を統括する中国外交の最高司令塔である。

上述の「疫情対策指導小組」は、すなわち党中央新設の「新型肺炎対策本部」であり、党と政府と軍の全力を動員して疫病拡散の阻止や治療を行うという危機対策の司令塔なのである。

今になっての「対策本部」の設置はどう考えても遅すぎた感があるが、設置したこと自体は評価できよう。しかし、発表された「疫情対策指導小組」の中身やその布陣を見ていると、この「指導小組」は果たして、危機対策の司令塔の役割を果たせるのか、かなり疑問だ。

まず一つ不思議なことに、25日に新華社通信に配信された上述の共産党政治局常務委員会の正式発表は、「疫情対策指導小組」の設置を伝えたものの、誰かがこの「小組」の「組長」となっているかに一切言及してない。

何かの対策本部の設置を決めれば、同時にその長となる人事を発表するのは普通だ。事態が緊急である場合はなおさらである。しかし政治局常務委員会はどうやら、「疫情対策指導小組」の設置を決めておきながら、そのトップとなる人選を直ちに決められなかったようである。

「組長人事」はどうして迅速に決められなかったのか。考えられる理由の一つは、習近平国家主席自身を含めて中央指導部の誰もその役割を引き受けたくなかった、ということだ。

本来なら、習自身が「組長」の最適な人選である。国家の一大事への対処に当たって、共産党総書記・国家主席・軍事委員会主席として党国家の最高指導者・軍の最高司令官である彼こそ危機対策の司令塔の司令になるべきであろう。

実際、習は今まで前述の「中央財経指導小組」組長、「中央外事工作指導小組」組長のほかに十数の「組長」を兼任している。組長になることがこれほど好きな彼が今回の「疫情対策指導小組」の組長にならないのは、むしろ異例で筋が通らない。そして最高指導者の彼が進んで組長になろうとすれば、それを止める人も反対する人もいないはずである。しかし最高指導者の習は国家が存亡の危機に直面しているこの肝心な時に、先頭に立つことも全責任を負うことも拒否した模様である。

対策本部トップを引き受けた人物

最高指導者がこの有様では、共産党政権の新型肺炎対策はどこまで機能するか疑問だが、翌日の26日になると、疫情対策指導小組の組長人事がやっと判明した。李克強首相がそれを引き受けたのである。その日、李が組長として「疫情対策指導小組」の第1回目の会議を開いたと伝えられている。

新型肺炎対策本部のトップを押し付けつけられた?李首相(右)と押し付けた?習主席

この人事は普段なら「これでも良い」と思われようが、現在の重大なる緊急事態への対処に当たって決して強力な人事とは言えない。中国の場合、首相とはいっても、党総書記・国家主席・軍事委員会主席という三位一体の最高権力者よりはずっと弱い存在である。ましてや、「習近平一強」「習近平個人独裁」が確立されている現在、李が存在感の薄く権力も小さい、弱い首相であることは周知のとおりである。

この李が組長になっても、危機対策の司令塔としての役割を果たして果たせるかどうかは覚束ない。習ではなく李が組長となった時点で、疫情対策指導小組が強力な指導力を発揮することはもはや期待できなくなった、と言ってもいい。

これだけではない。さらに驚いたのは、李以外の疫情対策指導小組の布陣である。

まず、李の補佐役として指導小組の副組長となっているのは、政治局常務委員の王滬寧である。筆者はこの人事を人民日報で知ったとき、まさに狐に包まれたような異様な感じを受けた。

王は今、党内きっての理論家としてイデオロギーや宣伝を担当している。しかし、学者出身の彼は、地方や中央で政治の実務を担当した経験は一度もない。はっきり言って、理論家の王に今の危機で何らかの問題処理能力を果たすことは全く期待できない。副組長として実務面で李をサポートするはまずあり得ないが、その一方で政治局常務委員として、そして党内のイデオロギーの担当として、李の仕事に余計な口出しをしてくるのは必至だろう。王が副組長となったことで、ただでさえ無力な李はなおさら手足を縛られてしまう。

王を副組長に任命するこの人事を主導したのは当然李ではなく、王に近い習その人であると思われる。つまり習は、李に組長の大役を頼んでおきながら、安心して李に任せるのではなく、王を使って李首相を牽制したいのであろう。

副組長人事だけでなく、指導小組のメンバーの人選にも習の思惑が反映されている。

保健衛生の専門家がいない

新華社通信の発表で判明した指導小組の主要メンバーのうち、党中央弁公室主任の丁薛祥、党中央宣伝部長の黄坤明、北京市党委員会書記の蔡奇の3人がいずれも習の腹心の中の腹心であることは中国政界の常識である。上述の王滬寧を入れると、主要メンバーの半数が習近平派によって固められていることが分かる。

さらに奇妙なことに、主要メンバーには公安部長の趙克志や国務院秘書長の肖捷が入っているが、彼らと同じ大臣(閣僚)クラスの国家衛生健康委員会主任の馬暁偉や、衛生部長の陳竺の名前が見当たらない。

こうしてみると、危機の緊急対策本部としての疫情対策指導小組の人選は、実務重視・実行能力重視の視点から選ばれたわけでは決してなく、むしろ李への牽制という習の政治的思惑からの人事であることが一目瞭然である。

つまり習は国家の緊急事態に際し、自ら先頭に立って危機に当たる勇気もなければ責任感もなく、その責任を首相の李に押し付けてしまった。一方で、李に全権を委ねて李が思う存分仕事できる環境を作ってあげるのでもなく、逆に側近人事を行って李の仕事を牽制し、その手足を縛ろうとしている。

習のリーダーシップはもはや最悪と言うしかなく、この無責任さといい加減さで当面の危機を乗り越えられるわけはない。貧乏くじの役割を引き受けた李も要所要所で習の牽制を受け、きちんとしたリーダーシップを発揮できない。

このような指導体制で、今回の新型肺炎の事態収拾と危機克服は期待できそうもない。状況はまさに絶望的である。

【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!

新型肺炎に関して、WHO(世界保健機構)が非常事態宣言を出さなかった事が激しく糾弾されることになるでしょう。習近平は事態を把握できていなかった可能性もあります。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事が裏目に出たばかりか、台湾の締め出しも非難されることになるでしょう。日本としては世界の先頭に立って台湾のWHO加盟を訴えるべきです。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事については、以下の記事が詳しいです。
「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より、結論部分のみ引用します。
 たとえ「緊急事態宣言」を受けたとしても、パンデミックを起こさないことの方が遥かに重要だと思うが、それを選択できないところに中国の欺瞞的な構造がある。地方政府の危なさと共に、こういった所に「ポキッと折れるかもしれない」中国の脆弱性が潜んでいるのである。 
 このような国の国家主席と「責任を共にすると誓い」、国賓として来日させようとしているのが日本の安倍内閣だ。天皇陛下と握手する場面を全世界にばらまかせることによって、習近平政権のやり方に正当性を与えようとしている。 
 このような状況にあってもなお、習近平を国賓として招聘するなどということが、どれほど恐ろしい未来を日本にそして全世界にもたらすか、安倍内閣は真相を見る目を持つべきだ。 
 野党も何をしているのか。習近平の国賓来日が、どれほど危険な将来をもたらすか、そのことにも目を向けた大局的な国会議論を望む。
日本では、新型のコロナウイルスによる肺炎について、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

     新型のコロナウイルスによる肺炎について、衆議院予算委員会で
    「指定感染症」にする方針を明らかにした安倍総理

この中で、安倍総理大臣は「政府としては、感染拡大が進んでいることを踏まえ、これまでに関係閣僚会議を開催し、水際対策のいっそうの徹底、検査体制の整備、国民に対する迅速かつ的確な情報提供、日本人渡航者や滞在者の安全確保などについて関係省庁で連携して、万全の対応をとるよう指示を行った」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「感染者に対する入院措置や、公費による適切な医療等を可能とするため、今般の新型コロナウイルスに関する感染症を感染症法上の『指定感染症』などにあすの閣議で指定する方針だ」と述べ、今回の肺炎について、28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

また、安倍総理大臣は中国政府との調整を加速させ、民間のチャーター機などあらゆる手段を通じて現地に滞在する日本人の希望者全員を速やかに帰国させる方針を重ねて明らかにしました。

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」に含まれると、国内で感染が確認された場合、感染症法に基づいて強制的な措置をとることができます。

具体的には、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

指定の期間は原則1年間で、さらに最大で1年延長することができます。

指定感染症にはこれまでに平成15年に重症急性呼吸器症侯群「SARS」、平成25年にH7N9型の鳥インフルエンザなどが指定され、今回の肺炎が指定されれば平成26年の中東呼吸器症候群「MERS」以来、5例目となります。

指定までにかかる期間について厚生労働省は「過去には、2週間ほどかかった例もあったが、今回はそれよりも早く指定できるようにしたい」としています。

厚生労働省によりますと新型コロナウイルスによる肺炎については、指定感染症だけでなく検疫感染症にも指定される見通しです。

検疫感染症に指定されると、空港や港などの検疫所で感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察を指示できるようになります。

具体的には、空港や港などで入国者に症状が出ていないかを質問し、感染が疑われる症状があった場合は検査や診察を受けるよう指示できます。

さらに、入国時に感染の疑いがある人については、一定期間、健康状態について報告を求めることができます。

これらに従わない場合は罰則を課すことができます。

日本としては、WHOが非常事態宣言を考慮したのか、新型肺炎に関して対応が鈍かったようですが、ようやく動きはじめました。

            スイス・ジュネーブのWHO本部で開かれた新型コロナウイルスによる肺炎感染に
            関する記者会見で発言するテドロス事務局長(2020年1月22日)

WHOをが非常事態宣言を出さなかったことに考慮したとしても、万が一国内で、新型肺炎が蔓延するようなことにでもなれば、多くの人命が失われたり、経済活動もままなくなるのは明らかなので、このような措置に踏み切ったのでしょう。

2020年に入ってからの27日間で世界は中東戦争の危機、オーストラリアの山火事による大量絶命の危機、新型肺炎によりグローバルパンデミックの危機に直面しているのに、習近平は自らの保身に走ることで、本当に新型肺炎に対処しようとしてるのか、はなはだ疑問です。現在のWHOも自らの使命を果たすつもりがあるのか、疑問です。

世界中の他の国々も続々と、日本政府のような措置をすでにとったか、とりつつあります。WHOの緊急事態宣言がない中で、世界中の国々がこうした措置をとっているのですから、WHOと中国の動きはなんともお粗末というか、現実を直視せず、中国人民に対してだけではなく、他の国々に対する裏切り行為でもあります。

現在は、我が国をはじめ、世界の国々は当面はパンデミックを封じ込めることに集中すべきですが、これが収束した場合には、WHOや中国を徹底的に糾弾すべきです。糾弾するだけではなく、制裁すべきです。

SARS続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は糾弾されて当然です。それでも改めなければ、対中冷戦に本気で取り組んでいる米国のように、他国も中国に対して厳しい制裁を課すべきです。そうして、WHOにも厳しい措置をとるべきです。

中国とWHOがまともにならなければ、世界にはいつまでもパンデミックの危機を拭い去ることはできません。頭が19世紀か、もしかすると18世紀であるかのような両者をこのまま捨置くわけには絶対にいきません。両者とも、本当にかなり痛い目に合わせないと、いつまでも同じことを繰り返すことになるだけです。

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