2025年6月4日水曜日

AIを装った人力詐欺:Builder.aiの破綻と技術の虚偽が暴く政治の闇

まとめ
  • 技術の虚偽による破綻:Builder.aiはAIを装った人力作業で売上水増しが発覚、2025年に破産。東芝やJDIも技術・財務の虚偽で危機に陥った。
  • 政治利用の暗部:DeepSeekはデータ送信疑惑で信頼を失い、中国の監視体制と結びつく。石破首相の消費税減税「1年」発言は誇張と批判され、財政優先の意図が疑われる。
  • 過去の類似事例:Cambridge Analytica、Theranos、ドットコムバブルのPets.comやWebvan、AIスタートアップのOlive AIなどが、技術誇張で失敗。
  • 対策の鉄則:個人は情報源検証、技術学習、批判的思考、迅速な対応を。企業は監査、透明性、専門家雇用、リスク管理を徹底。ドラッカーの「覚醒のショック」で他者を真実に導く。
  • 教訓:技術の虚偽は商業的・政治的不信を招く。歴史は繰り返す。真実を見抜くには検証と行動が不可欠だ。
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技術の虚偽が招く破綻
英AIスタートアップBuilder.aiは、Microsoftやカタール投資庁から4億4500万ドル以上を集め、2023年に15億ドルの評価額を誇った。しかし、2025年5月、破産申請に追い込まれた。AIでアプリを自動開発する「Natasha」を謳ったが、実際はインドとウクライナの700人以上のエンジニアが手作業でコードを書き、AIは表向きの看板にすぎなかった。2019年のウォール・ストリート・ジャーナルがこの「AIウォッシング」を暴き、批判が殺到した。2024年の売上高は2億2000万ドルと予測されたが、実際は5500万ドル。300%の水増しだ。債権者のViola Creditが3700万ドルを差し押さえ、残高500万ドルでは運営が続かず、600人近い従業員の8割を解雇。米国司法省とSECが証券詐欺の疑いで調査を開始した。元従業員の告発や顧客の怒り(「65,000ドルを無駄にした」との声)が、信頼の崩壊を加速させた。

人力AIのイメージ AI生成画像

日本の事例も衝撃的だ。2015年、東芝は1520億円の利益水増しが発覚。PCや半導体事業の損失を隠し、監査法人と癒着していた。株価は暴落、経営陣は辞任に追い込まれた。ジャパンディスプレイ(JDI)は、Apple向けディスプレイ技術を誇張し、政府系ファンドから巨額の資金を得たが、技術の遅れで2019年から経営危機に陥った。これらは、技術の誇張と不透明なビジネスモデルの危険性を突きつける。
政治利用の闇
テクノロジーの虚偽は政治にも及ぶ。2016年のCambridge Analyticaはデータ分析を誇張し、選挙操作を謳った。2023年には、ディープフェイクが米国選挙で偽動画を拡散。中国のDeepSeekは、2025年に生成AIの低価格モデルで注目されたが、データプライバシーの疑惑が噴出。米ABC(2025年2月4日)は、コードに中国移動通信のサーバーへ個人情報を送信する機能が隠されていたと報じた。台湾は著作権違反や思想検閲のリスクで全面禁止を決定(ロイター、2025年2月5日)。韓国も外務省や銀行が接続を遮断(朝鮮日報、2025年2月8日)。OpenAIからのデータ不正入手疑惑も浮上(ブルームバーグ、2025年1月30日)。中国の社会信用システムは「公共の安全」を名目に市民監視を強化。DeepSeekの疑惑は、国家によるデータ悪用の危険性を示す。

日本でも、2025年5月21日、石破茂首相が党首討論で「消費税減税にはレジシステム変更に1年かかる」と発言。減税を避ける姿勢が透ける。しかし、産経新聞(2025年5月30日)は、小売店経営者が中小では「1日でできる」大手で「3カ月で対応可能」と反論したと報じた。コロナ禍でドイツなど30カ国が迅速に減税した事実とも矛盾する。朝日新聞(2025年5月31日)は「ほぼ正確」と擁護したが、産経新聞(2025年6月1日)は「事実と乖離し、国民の不信を招く」と批判。財政健全化を優先する政治的意図が疑われる。

石破首相はとにかく消費税減税したくないようだ

2000年のドットコムバブルでは、Pets.comが3億ドルを溶かし、Webvanが8億ドルを無駄にした。2010年代のTheranosは血液検査技術を偽り、9億ドルを集めたが2018年に解散。米国のOlive AIは医療AIを謳い10億ドルを集めたが、効果の乏しさで2023年に事業停止。Inflection AIは生成AIで15億ドルを調達したが、独自技術の不足で2024年に崩壊。Ghost Autonomyは自動運転AIで2億2000万ドルを得たが、非現実的な計画で2024年に終焉。
騙されないための鉄則
虚偽に騙されない方法は明確だ。個人は、情報源を多角的に検証する。海外メディアや産経新聞を参照し、Builder.aiやDeepSeekの疑惑を見抜く。AIやシステムの基本を学び(例:CourseraのAI講座)、石破発言のような誇張を判断する。批判的思考を磨き、「革新的」との主張に根拠を求める。Redditで専門家の意見を聞く。迅速な対応も不可欠だ。明らかな間違いには、細かな検証を後回しにしても即座に対処する。DeepSeekの禁止措置は、台湾や韓国が迅速に行動した好例だ。

「デューデリジェンス」は日本語で「適正評価」や「事前調査」と訳される。文脈によっては「詳細な調査」や「リスク評価」とも表現される。

企業は、デューデリジェンスを徹底し、技術や財務の第三者監査を要求。透明性を確保し、専門家を雇い、リスク管理を強化する。東芝やJDIの失敗は、こうした対策の欠如が招いた。他者が虚偽に騙されている場合、ピーター・ドラッカーの言葉を借りれば、「覚醒のためのショック」が必要だ。ドラッカーは、誤った前提に囚われた者には、場合によっては劇的な事実やショックが意識を変えると説いた(『マネジメント』)。Builder.aiの破綻やTheranosの詐欺を周囲に伝え、過剰な期待を打ち砕く。時には、内部告発者のように勇気ある行動が真実を浮き彫りにする。

Builder.aiの人力AI詐欺、DeepSeek、石破発言は、技術に関する誇張がもたらす危険を突きつける。ドットコムバブルからAIブームまで、歴史は繰り返す。目を覚まし、検証を怠るな。それが、真実を見抜く唯一の道だ。

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