2023年2月22日水曜日

国民負担率47.5%で「五公五民」がトレンド入り「日本中で一揆が」「江戸時代とどっちがマシ」の声―【私の論評】財務省は昨年の国民負担率を高く見せ増税したいようだが、頭の回路が狂ったか(゚д゚)!

国民負担率47.5%で「五公五民」がトレンド入り「日本中で一揆が」「江戸時代とどっちがマシ」の声

岸田総理

 2月21日、財務省は、2022年度の「国民負担率」が47.5%になる見込みだと発表した。過去最大だった2021年度の48.1%をやや下回ったものの、国民所得のほぼ半分を占めている。

 「国民負担率」は、国民所得に占める税金や社会保険料(年金・医療保険など)の割合で、いかに公的負担が大きいかを国際的に比較する指標の一つ。2022年度は、税負担が28.6%、社会保障負担が18.8%で、合計で47.5%と見込まれている。

 国民所得のほぼ半分が公的負担に奪われる事態に、Twitterでは悲鳴にも似た声が多くあがり、《五公五民》がトレンド入りした。

 《五公五民やん。一揆起こさなあかんレペルですやん》

 《令和の時代に“五公五民”江戸時代とどっちがマシなのか》

 《日本は五公五民にまできた。防衛費倍増になると、六公四民か七公三民になりそう》

 「五公五民は、江戸時代の年貢率を表現した言葉で、全収穫量の5割を領主が取り、残り5割が農民の手元に残ることを示しています。江戸時代の初期は四公六民でしたが、徳川吉宗によって推し進められた享保の改革以降、五公五民に。

 大飢饉に見舞われた享保から天明年間には、村役人や富農の屋敷を破壊するような『百姓一揆』が増えたといわれています。

 国民負担率の統計が始まったのは1970年度ですが、実はこのときは24.3%しかなかったんです。20年前の2002年度でも35.0%でしたが、高齢化にともなう社会保険料の増加などで、2013年度に40%を超えました。今後も、大きく減る見込みはありません」(週刊誌記者)

 国民負担率の高さについては、2020年10月20日、参院予算委員会で、浜田聡議員が岸田首相の見解を問うている。

 「稼いだ額の半分を “お上” が召し上げる状況であると考えられます。国民の活力がなくなるのは当然だと思います。高すぎる国民負担率を下げて、国民が自由に使えるお金を増やしていく必要があると考えます」

 これに対し、岸田首相は、社会保障給付も負担も上昇傾向が続いているとしたうえで、こう答えた。

 「適正で負担可能な範囲にとどめ、同時に今後とも国民の活力を損なわないようにするため、社会課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済成長を実現することで、国民負担率の分母である国民所得を増やしていきたいと考えます」

 岸田首相の「国民所得を増やしていく」との発言に、浜田氏は「国民負担率半減計画」を提案し、「令和の所得倍増計画を実現することを切に願います」とした。

 実際のところ、分母となる「国民所得」が倍増するか、労働人口が激増でもしない限り、「五公五民」の状態は変わらない。岸田首相が掲げた「令和版所得倍増計画」は、いったいどこに行ってしまったのか。

【私の論評】財務省は昨年の国民負担率を高く見せたいようだが、それがなぜ増税に結びつくのか!頭の回路が狂ったか(゚д゚)!

上の記事で「国民負担率」は、国民所得に占める税金や社会保険料(年金・医療保険など)の割合で、いかに公的負担が大きいかを国際的に比較する指標の一つとされています。

ただ、今回財務省が出している「国民負担率」は正確にいうと、「潜在的国民負担率」です。数式で示すと以下のようになります。


そもそも国民所得はあまりなじみのない概念です。海外の標準的な国民負担の計算では、国内総生産(GDP)で割り算するのが普通なのですけれど、国民所得よりGDPの方が大きくて、国民所得はGDPの7割~8割です。その数字が、GDPで割り算すると0.7~0.8掛けになって、小さく出てしまうのです。


これは財務省による少し負担率を大きめの数字を出しておきたいという手でもあるようです。海外ではほとんど使われない数字です。今年度の潜在的国民負担率は47.5%ですが、少し前のコロナ体制のときは50%にかなり近くなっていました。これは、国債などを刷れば、国民の負担が増えるということを、訴えたいのでしょうか。

ただし、安倍元総理の『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)のなかに「コロナ対策をして、財務省が強調し過ぎているから皆さん誤解があるのですけれど」と書いてあって、「それは子や孫の負担にはなっていません」とされています。

安倍・菅両政権で合計で100兆円の補正予算を組んでコロナ対策を実施していますが、これは増税なしで、政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取る形で、財源としました。(下に、回顧録のその部分を引用しておきます。これは、おそらく財務省が最も嫌がる部分でしょう)

この安倍元首相の話しは、事実であって本当は国民負担ではないのですが、財務省はそれも入た「潜在的国民負担率」を計算してみせて煽るのです。

国民負担率にも様々な数字がありますが、多くの人はその意味合いがはっきりとはわからないで、財務省が自分たに都合が良いように、説明します。だから「潜在的国民負担率は47.5%もあります!半分近いてす。大変です!」という言い方をするのです。

ただ、上の記事を見ている限り、記事の中に出てくる人は、半分近くも負担があり大変という見方をしていて、面白いです。財務省としては、こんなに負担があるから大変だ、だから増税しないと、緊縮しないと駄目なんです、赤字国債などとんでもないとでももっていきたいのでしょうが、逆効果になっています。

財務省の説明や、それを垂れ流しするマスコミの報道でよく出てくるのが「国民1人当たりの借金」という言葉で、政府債務の残高を人口で割ったような数字です。。

これは、通常は民間会社でも実施しているバランスシートで考えると、日本政府も借金と資産が両方があり、しかも資産の方が大きいですから、実は借金は等ないのです。

本来はそういうことを示した上で、この数字をだすべきですが、財務省はそうしないので、この手の数字にはよく注意すべきです。

気をつけなければならないのは、諸外国と比較するときには、どんなもので行っても日本は(潜在的国民負担率が)下になりますから、「まだ増税の余地がある」と財務省は、印象捜査するのです。国民負担率が高い国においては、確かに税率が高かかったりしますが、それでも税金のかなりの部分が、政府を素通りして、生活困窮者に渡るようなシステムになっています。単純比較などできません。

それに、確かに財政赤字を加えると国民負担率の数字が大きくなるのですが、財政赤字があっても安倍さんが実施したように、財政負担にならない方法もあります。

財務省は様々なトリッキーな数字を出すので、騙されないようにしないと、いつの間にか騙されてしまいます。著名人や識者と言われる人の中にも、自分の専門分野では素晴らしい業績を残されているのですが、財務政策ということになると、財務省にすっかり丸め込まれたような人も多いです。

現実の負担感からすると、社会保険料は上がってきています。特に現役で給料から天引きされる人の負担は増えています。

ただ、数字を比較すると「もっと負担の大きい国は多くある」とも言えます。これは、北欧などと比較して話題に登ることが多いです。


社会福祉も各国で一様ではなく、北欧のような高負担・高福祉というパターンと、米国のような低負担・低福祉というパターンがあって、日本はどちらかと言うと平均より少し下です。

ただし、負担が大きければ大きい程良いということでもないですし、少なければ少ない程良いというもこともなく、結局国民の選択なのです。

財務省は、この手の話を増税に結びつけるのですが、税金と社会保障費を一緒に議論すること自体は正しいのですが、そうであば税金と社会補償費の両方を徴収する歳入庁のようなものを創設した方がより理にかなっているようにみえます。しかし、財務省はそれはしません。

財務省は、社会保険と税金の議論を一緒にすることもあれば、「税は税でしょう」と分けたり、「社会保障費は社会保障費」と分けて議論することもあります。何やら、その時々で使い分けているようです。

社会保障費も法的性格は税と一緒です。どちらも、政府が国民から徴収するものです。だから一緒に徴収しないのは非効率です。一緒に徴収すれば効率化されるのは間違いありません。効率化されてて、さらに保険料の取りっぱぐれもほとんどなくなります。でも、そういうことは絶対に議論しないわけです。縦割りで厚労省と財務省が、それぞれ「自分の管轄」と主張しているのです。

資産の把握や捕捉も国税庁のほうが良く把握しているのに、厚労省と財務省がお互いに持っているデータで整合性をとるということもないですから、社会保険料の取りっぱぐれも、実はかなりあるのは間違いないです。

にもかかわらず、なぜか税金と一緒に徴収するという議論はありません。まともに考えると、別の組織を内閣府の下につくればいいというのが解なのですが、厚労省も財務省も絶対に嫌がるのです。特に財務省は絶対に嫌がります。

だからこうやって互いに数字だけ出して、整合性をとるようなこともないので、誰かが「一緒にやれば」と提案しても「いやいやいや」と言うわけです。官僚は、ご都合主義で動くので、こういう数字は官僚の意図を読むという意味で、興味深いです。

ただ、負担率を高く見せて、どうして増税につながるのか、数式をみればさらに負担率があがるだけなのに、ここのところは良く理解できないです。

確かに、2021年度は、国債発行分も載せてあるので、若干高いので、これで国債の発行は国民の負担になるとみせたいのかもしれませんが、だからといって、とてつもなく負担が増えているわけでもなく、22年度が多少下がったからといって、国民の多くはそれで恩恵を受けたなどとは考えず、特に海外と比較することもなく、むしろ元々負担率はかなり高いとの印象を持っているようです。

あまりにも増税一辺倒できているので、頭の回路が常人とはかけ離れて、おかしくなったのかもしれません。財務省は、本来国民経済という観点から財政を行うべきなのに、省益を優先するあまり、様々なトリッキーな数字の使い方をするので、時々こうした綻びがでるということなのでしょう。

私たちは、財務省の出す数字、またそれを鵜呑みにして報道するマスコミのことなど信じないで、自ら数字を判断すべきです。そうしていくと、財務省のトリッキーな数字の裏に特定の意図がすけて見えてきます。

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