JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ) |
午後2時から行われた会見では、JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ)が登壇し、経緯を説明。同氏によると、ロケットの自動カウントダウンシーケンスは予定通り開始され、メインエンジン「LE-9」が着火し正常に立ち上がったあと、ロケット下部(エンジン上部)に設置された1段制御用機器が異常を検知。SRB-3への着火信号を送らなかったことから、打ち上げ中止となった。なお、SRB-3側にも異常はなく、制御用機器が検知した異常そのものについては原因究明中という。
会見はJAXAの公式チャネルで配信されていたが、話題となったのが共同通信のとある記者の質問だ。「中止と失敗という問題についてもう一度確認したいです。ちょっともやもやするものですから」と切り出し、岡田氏に中止と失敗の違いについて質問した。以下はその一問一答だ。
共同 中止という言葉は、みなさんの業界でどう使われているかは別として、一般に意図的に止める、計画を途中で意図してやめる時に中止といいます。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないなという状況に見えますが、正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれませんが、意図しない異常による中断、中止ということだったのでは。意図的ではなく止まっちゃったよということは一般に言う失敗ではないかと思うのですが、どうですか?
岡田 こういった事象が時々ロケットにはあるのですが、その時に自分たちは失敗と言ったことがありませんので。やはり、われわれが非常識かもしれませんが。
共同 それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね。みなさんの中では失敗と捉えてないけれども、失敗と呼ばれてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか。どうですか?
岡田 どのような解釈をされるのかは、受け止めた方、受け止められ方はもちろんあると思いますので、そうではないですとは言い難いですけれども、ロケットというものは基本安全に止まる状態でいつも設計しているので、その設計の範囲の中で止まっている、つまり意図しないというのはその設計の範囲を超えて、そうじゃない状態になることは大変なことになると思いますが、ある種想定している中の話なので、そこに照らし合わせますと失敗とは言い難いと思います。
共同 わかりました。確認ですが、つまりシステムで対応できる範囲の異常だったけれども、考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まった。こういうことですね。
岡田 ある種の異常を検知したら止まるようなシステムの中で、安全、健全に止まっているのが今の状況です。
共同 わかりました、それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。
岡田 ありがとうございます。
今回のH3ロケットは、メインエンジンは着火したものの発射はしておらず、打ち上げが見送られた状態といえる。岡田氏は他の記者からの質問に対し、「失敗というのはいろんな定義もあると思うが、打ち上げにおいてカウントダウンシーケンスで止まったものは打ち上げ中止と思っている」と説明している。
誘導ともいえる質問に対し、YouTubeのコメントだけでなくそれを視聴していたTwitterユーザーも記者に対し苦言を呈した。特に最後の「それは一般に失敗といいます」という文言に言及するユーザーが後を絶たず、「ひどい質疑だった」「捨て台詞を投げてびっくりした」といったコメントが多く投稿された。また、共同通信が初報で「発射失敗」と報じてTwitter上で批判を浴びたことと質問を関連付けるユーザーも見られた。
「フェールセーフ」という考え方
機械には、いざという時のために「フェールセーフ」という概念がある。装置が故障した場合を想定し、安全に動作を止めることで周辺の被害を最小限に抑える設計手法だ。今回の場合は、異常は発生したものの、それを検知してシステムが正常に停止した。異常時でもロケットをコントローラブルな状態で維持できたのは、補助ブースターに着火信号を送らないという機構が正常に働いたためだ。
岡田氏も「ロケットがスタートして打ち上げるときは常に安全な状態を確保することが第一優先。そういう意味では安全に止まったということ。非安全な状態で止まったわけではない。異常を検知して安全に止まるシーケンスが正常に働いて安全に停止している状況。直前にLE-9エンジンも正常に立ち上がっているし、異常の検知も正常に行われていると理解している」と述べ、異常状態が制御下にあったと説明している。
「成功か失敗か」だけでいえば、正常な打ち上げ自体には失敗し、異常を検知して打ち上げ前に止めるシステムの稼働は成功したといえそうだ。部分を見れば成功も失敗もあるわけで、全体をまとめるのならばJAXAの言う通り「中止」が近いように感じる。いずれにせよ、最も大事なのは、機体や搭載していた衛星が損傷することなく、次に打ち上げられる機体が安全な状態で残っていることだ。岡田氏は「ものすごく悔しい」と会見で涙する場面もあったが、原因究明に努めつつ次の打ち上げに向けて挑むとしている。
フェールセーフとは、装置はいつか必ず壊れることを前提とし、故障時や異常発生時でも、安全側に動作させることで絶対に人命を危険に晒させないようにシステムを構築する設計手法です。
このように鉄道信号保安装置は常に安全で信頼できるシステムであるために、様々な手法を用いて構築されています。
フェールセーフを身近に体感できるのが、自動車のブレーキシステムでしょう。そのなかでも「停車する」という動作には、さまざまな安全が確保されています。
トラックなどのエア圧力式のブレーキを搭載する自動車は、エアの圧力低下を検知すると自動でブレーキがかかるというフェールセーフ設計が適用されています。
フットブレーキ機構は、ブレーキを主導的にコントロールする重要パーツであり、部材を含めてダメージトレランス(損傷許容設)が設計されています。車検時などに動作確認をして、定期的に交換するなどのメンテナンス対応を行います。
タイヤのブレーキパッドなどの部品は、1つが壊れても他のタイヤで停止できるのでフォールトトレランス (耐障害性)が利用された設計です。
こちら、北海道は札幌ですが、北海道ではガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒死事故あり2人の方がなくなっています。事故は1990年12月に帯広市で発生。湯沸かし器は不正改造され、排気ファンが動かない状態でした。
機械には、いざという時のために「フェールセーフ」という概念がある。装置が故障した場合を想定し、安全に動作を止めることで周辺の被害を最小限に抑える設計手法だ。今回の場合は、異常は発生したものの、それを検知してシステムが正常に停止した。異常時でもロケットをコントローラブルな状態で維持できたのは、補助ブースターに着火信号を送らないという機構が正常に働いたためだ。
岡田氏も「ロケットがスタートして打ち上げるときは常に安全な状態を確保することが第一優先。そういう意味では安全に止まったということ。非安全な状態で止まったわけではない。異常を検知して安全に止まるシーケンスが正常に働いて安全に停止している状況。直前にLE-9エンジンも正常に立ち上がっているし、異常の検知も正常に行われていると理解している」と述べ、異常状態が制御下にあったと説明している。
「成功か失敗か」だけでいえば、正常な打ち上げ自体には失敗し、異常を検知して打ち上げ前に止めるシステムの稼働は成功したといえそうだ。部分を見れば成功も失敗もあるわけで、全体をまとめるのならばJAXAの言う通り「中止」が近いように感じる。いずれにせよ、最も大事なのは、機体や搭載していた衛星が損傷することなく、次に打ち上げられる機体が安全な状態で残っていることだ。岡田氏は「ものすごく悔しい」と会見で涙する場面もあったが、原因究明に努めつつ次の打ち上げに向けて挑むとしている。
【私の論評】失敗とはその場で爆発、リフトオフ後に爆発、制御不能で爆破等を指す。今回は「中止」と呼ぶのが妥当(゚д゚)!
記者会見の動画を以下に掲載します。
ロケットや原発など、複雑で高価でしかも事故が起こればかなり危険なシステムの場合も、誤作動を起こすこともあることを前提として、その場合人名を危険にさらさないように、そうして、システム全体や大きな部分が毀損しないように、システムを構築する設計手法です。
簡単な例だと、踏切遮断機が故障した場合に、重力により自ら遮断管がゆっくり降りてくる(自重降下)機構により踏切通行者の安全を確保します。
列車検知装置が故障した場合、列車がいてもいなくても「在線(列車あり)」と判断し、「赤(停止)」を現示させることで衝突を防止します。
簡単な例だと、踏切遮断機が故障した場合に、重力により自ら遮断管がゆっくり降りてくる(自重降下)機構により踏切通行者の安全を確保します。
列車検知装置が故障した場合、列車がいてもいなくても「在線(列車あり)」と判断し、「赤(停止)」を現示させることで衝突を防止します。
このように鉄道信号保安装置は常に安全で信頼できるシステムであるために、様々な手法を用いて構築されています。
フェールセーフを身近に体感できるのが、自動車のブレーキシステムでしょう。そのなかでも「停車する」という動作には、さまざまな安全が確保されています。
トラックなどのエア圧力式のブレーキを搭載する自動車は、エアの圧力低下を検知すると自動でブレーキがかかるというフェールセーフ設計が適用されています。
フットブレーキ機構は、ブレーキを主導的にコントロールする重要パーツであり、部材を含めてダメージトレランス(損傷許容設)が設計されています。車検時などに動作確認をして、定期的に交換するなどのメンテナンス対応を行います。
タイヤのブレーキパッドなどの部品は、1つが壊れても他のタイヤで停止できるのでフォールトトレランス (耐障害性)が利用された設計です。
最近、自宅のガス給湯システム(風呂、暖房、床暖房)の当初の保守点検無料サービス期間が過ぎたので、メンテナンス契約をガス設備会社と結びました。点検に来た人が語っていましたが、給湯システムも現在ではフェールセーフ機能がついており、検知器が何らかの異常を検知すると、給湯システムは自動的に止まるようになっているそうです。
そのため、止まるときには、何か前触れがあるということはなく、いきなり止まるそうです。それによって安全が確保されるそうです。
自宅の給湯システムは、このガス湯沸かし器のメーカーのものを使っているわけではないのですが、この事故が記憶に残っていたので、安心のために、私は今回の給湯システムのメンテ契約では、価格に応じていくつかの種類があったのですが、その中で最高のものにしました。
ガス湯沸かし器の中毒事故でなくなった方の遺族 |
今回のH3ロケットの発射においても、まだ解明はされていないですが、何かのトラブルがあって、フェールセーフ機能が働き、途中でとまったということです。もし止まらなかったら、かなり危険なことになっていたかもしれないですし、高価で複雑なシステムが毀損して、大打撃を被っていたかもしれません。
それを未然に防ぐことができたのですから、良しとすべきです。上の共同通信の記者は、このようなことも思い浮かばなかったのでしょう。本当にお粗末です。こういう記者にはもう取材させないほうが良いです。
堀江貴文氏は今回の出来事に関して、動画を公表しており、これを失敗と呼ぶのは悪意を感じるとしていて、堀江氏自身は、中止と呼んでいます。その動画を以下に掲載します。
この動画などみていると、共同の記者の無知蒙昧には哀れみすら感じてしまいます。フェールセーフが働いて止まったのは予期しうる問題を検知して正しく安全に止まったというわけで、失敗とは言えないでしょう。
失敗とはその場で爆発とか、リフトオフした後に爆発とか、制御不能で爆破とか、そういうことをいいます。
これは、他国でも同じことでしょう。
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