2024年12月25日水曜日

来年度予算案、税収70兆円台後半とする方針…6年連続で最高更新の見通し―【私の論評】日本の税収増加と債務管理の実態:財政危機を煽る誤解を解く

来年度予算案、税収70兆円台後半とする方針…6年連続で最高更新の見通し

まとめ
  • 政府は2025年度の一般会計税収見積もりを70兆円台の後半に設定し、2024年度の税収を上回る見通しで、6年連続で過去最高を更新する見込みである。
  • 2024年度の税収は物価高や企業業績の好調により増加しており、2025年度も定額減税の影響がなくなることで税収が増加する。


 政府は2025年度予算案で一般会計の税収見積もりを70兆円台の後半に設定する方針を固めた。この見積もりは、2024年度の税収(73.4兆円)を上回るものであり、これにより6年連続で過去最高を更新する見通しである。2024年度の税収は、物価高や企業業績の好調を背景に、昨年末の当初予算での見積もり(69.6兆円)を3.8兆円上回った。特に、所得税、法人税、消費税といった基幹税が好調に推移している。

 また、2025年度は今年6月に始まった定額減税による減収の影響がなくなるため、税収が増加する要因となる。政府は定額減税による2024年度の減収を2.3兆円と見込んでおり、これが2025年度の税収増に寄与する。

 この記事は、元記事の要約です。詳細はも、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の税収増加と債務管理の実態:財政危機を煽る誤解を解く

まとめ
  • 日本の税収は急増しており、2024年度には70兆円台後半に達する見込みで、コロナ前と比べて年20兆円近い増加が見込まれている。
  • 増税が進む中、日本の債務対GDP比は他の先進国と比較しても安定しており、新規国債の発行の大半は借り換えであるため、実質的な債務は増加していない。
  • 日本銀行(日銀)は国債を購入し、政府の債務の一部を吸収することで金融市場の安定を保ち、経済全体の負担を軽減している。
  • 個人の借金のような不安を煽ることは財務省の意図的な情報操作であり、国民に対して過剰な危機感を与えることがある。
  • 正しい財政政策を求めるためには、国民や野党が冷静に経済の実態を理解し、政府に対して積極的に働きかけを行う必要がある。
上の要約前の元記事の結論は、「24年度の歳入に占める新たな国債(国の借金)の割合を示す「公債依存度」は33%となる。25年度も税収が伸びても歳出を賄うことはできず、予算案でも巨額の国債発行は避けられない見通しだ」となっている、しかしこれは誤解を招くばかりでなく、薄弱な根拠で、多くの人々の不安を煽るものとなっているため、割愛した。割愛した理由を以下に述べる。


ここ数年、日本の税収は驚異的な伸びを見せている。来年の税収は70兆円台後半に達し、コロナ前と比べて年20兆円近い増加が見込まれている。この背景には、円安による企業業績の向上、インフレによる物価や所得の増加、そして税控除額を上げないことで生じた隠れ増税がある。特に、物価の上昇は消費税を押し上げ、税収を増加させる要因となっている。実際、2023年度の税収は73.4兆円に達し、これは過去最高の水準である。だが、この状況をただの好景気と捉えることはできない。マスメディアは知識不足から批判的視点を欠いており、真実を見逃しているのだ。



増税が進む中、日本の債務対GDP比は急速に改善している。国際通貨基金(IMF)やOECDのデータによれば、日本の債務対GDP比は他の先進国と比較しても相対的に安定している。新規国債の発行の大半は借り換えであり、一般企業が借入金を返すために新たに借入をするのと同じ構造だ。言い換えると、企業は借金返済のために、返済条件の良い借り換えを模索するのである。企業の資金調達手段として、既存の借入を返済するために新たな借入を行うことは珍しくない。このような企業の財務戦略は、政府にも当てはまる。政府が発行する国債の多くは、既存の国債を返済するためのものであり、実質的な債務は増加していない。 さらに、ここで重要なのは日本銀行(日銀)の役割だ。日銀は政府の国債を購入し、市場に流通する国債の量を調整することで金利を安定させている。日銀が国債を買い入れることで、政府の債務の一部は日銀のバランスシートに吸収され、実質的な負担は軽減される。これにより、金融市場の安定が保たれ、経済全体にとっての負担が減少する効果がある。実際、日銀の資産は2023年9月時点で約700兆円に達し、その大半が国債であることからも、政府の債務が日銀によって支えられていることが明らかだ。

しかし、企業と政府の財政は根本的に異なる。企業は利益を上げて返済する必要があるが、政府は税収や日銀の政策を通じて債務を管理することができる。ましてや、個人の借金とは全く異なる。個人は収入に基づいて返済しなければならないが、政府は国民からの税収や日銀の支援を受けて債務を持続的に管理している。これを、個人や、ほとんど個人に近いような小規模事業者の自転車操業のように考えるのは明らかな間違いである。



ここで注意が必要なのは、個人の借金のような不安を煽るのは、財務省の意向が反映されていることが多いということだ。財務省は、国民に対して財政危機を強調し、緊縮政策を正当化するための道具として「債務問題」を利用することがある。例えば、2020年の財務省の報告書では、債務の危機感を煽る内容が多く見受けられ、これが国民の不安を増幅させる要因となっている。


実際、国際的な比較においても、日本の債務はGDP比で安定しており、過剰な危機感を持つ必要はない。さらに、統合政府ベース(政府+中央銀行、中央銀行による債務隠しを防ぐという意味合いで、政府単体の財務指標より信頼できるのでEU加入各国共通の財務指標ともなっている)では、2020年度以降、日本の統合政府の収支は黒字に転じている。



結論として、現在の税収増加と政府の債務管理の仕組みを正しく理解することが重要である。個人の借金のような不安を煽ることは、財務省の意図的な情報操作に他ならない。私たちは冷静に、真実を見極める必要があり、経済の実態を理解した上で、正しい政策を求めていかなければならないのだ。


最近の国民民主党の「103万円」の壁議論は、野党による正しい政策を求める行動の一環であり、その点で評価するが、このようなことは実は他にいくらでも存在する。他の野党もこうした要求をすべきてあるし、何よりもまずは自民党内でこのような議論をして、政府が正しい財政政策ができるように率先して行動すべきである。そうしなければ、来年参院選では惨敗することになるだろう。


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