2024年12月19日木曜日

財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も―【私の論評】これからの日本政治における野党の戦略と国民の役割

 高橋洋一「日本の解き方」

財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も

  • 年収103万円の壁の引き上げ協議: 自民、公明、国民民主の3党が、国会で「年収103万円の壁」の引き上げ幅を巡り協議中。国民民主党は178万円を求め、自民党は123万円を提案。

  • 合意文書の内容: 3党幹事長は、国民民主党の178万円を目指し、ガソリン税の暫定税率を廃止することに合意。しかし、自民党内では合意内容に対する不満が表明されている。

  • 財務省の戦略: 財務省は、補正予算組み替えによる所得税減税を避け、引き上げ幅を縮小する戦略を持っている。これにより、来年度の税制改正での議論が続く。

  • 増税の計画: 政府内では防衛増税や社会保険料の増加が既定路線となっており、これらは通常国会での法改正を通じて進められる予定。

  • 野党の影響力: 衆院で野党が多数を占めているため、税法や社会保険法の改正は否決される可能性がある。財務省はこの状況を利用し、予算修正を最小限に抑えて増税を行う狙いがある。


年収103万円の壁のイメージ AI生成画像

 自民、公明、国民民主の3党は、「年収103万円の壁」の引き上げについて国会内で協議を行っている。国民民主党は178万円への引き上げを求めているが、自民党は前回の協議で123万円を提案したため、意見の隔たりが大きい。国民民主党の古川税調会長は、協議の打ち切りも考慮する必要があると発言し、自民党の宮沢税調会長の「誠意を見せたつもりだ」という発言はSNSで批判を受けている。元内閣参事官の高橋洋一氏は、財務省や自民党税調が自らの立場を守るために動き出していると指摘している。

 3党の幹事長は合意文書を交わし、103万円の壁の引き上げを国民民主党の主張する178万円を目指すことや、ガソリン税の暫定税率を廃止することを決めた。しかし、自民党の森山幹事長は、1年で178万円への引き上げは困難とし、宮沢税調会長も合意内容に不快感を示している。公明党の赤羽税調会長は、合意が漠然としているため冷静な議論が必要だ。

 現時点で、所得税減税の実施時期は今年度が望ましいとされており、サラリーマンにとっては年末調整や3月の確定申告で減税が適用される可能性がある。ただし、財務省は補正予算の組み替えによる減税を避ける方針で、来年度の税制改正で再度議論される見込みだ。引き上げ幅を75万円から圧縮する狙いもあり、段階的な引き上げが検討されている。

 さらに、他の税目で増税を進める意向があり、防衛増税や社会保険料の増加が来年度の税制改正で順次行われる予定だ。しかし、これらの増税には各種法改正が必要で、来年1月からの通常国会で提出される見込みだ。衆院で野党が多数を占める現状では、これらの改正案が否決される可能性もある。

 このような状況下、各党は参院選を控え、政策実現に向けて足並みを乱す可能性が高い。財務省は、野党間の対立を利用して予算成立を図る狙いがあり、特定の野党に便宜を図ることで、予算修正を最小限にとどめる戦略が取られることが予想される。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】これからの日本政治における野党の戦略と国民の役割

まとめ

  • 国民民主党の注目: 経済政策や社会保障に関する具体的な提案、「国民の手取りを増やす」という公約を掲げ、他の野党と差別化を図った。

  • 財務省の狙い: 政府の財政運営を円滑に行う名目で、「減税圧縮・穴埋め増税、野党分断で予算修正阻止」を狙う行動を強化。

  • 野党の連携: 財務省や自民税調の悪巧みを防ぐため、野党間の連携を強化し、共通の政策目標を掲げることが重要。

  • 国民の声の重要性: SNSを通じて国民の意見を集め、政策決定過程に対する監視を強化し、国民の声を政策に反映させる努力が求められる。

  • 政治への関心: 私たち国民は政治に対する関心を高め、声を届けることで未来を自らの手で切り開く必要がある。


税法や社会保険法の改正は、決して単なる数字のゲームではない。これには必ず予算の修正が伴い、国民生活に直接影響を及ぼす重大な問題だ。日本の政治システムでは、予算は国会で承認されなければならず、その際、各政党は自らの政策を実現させるために強く主張する。しかし、来年の夏には参議院選挙が控えており、各政党は選挙を意識して自党の政策を目立たせようとするため、意見が一致せず、足並みが乱れることが容易に想像できる。

記者会見した国民民主党玉木氏 

この状況の中で、国民民主党が衆議院選挙で注目を集めた要因は何か?それは、特に経済政策や社会保障に関する明確な提案を行い、他の野党と差別化を図ったからだ。具体的には「国民の手取りを増やす」という公約を掲げ、税制改革や社会保障制度の見直しを通じて国民の可処分所得を増やすことを目指した。

このような具体的な政策提案は、物価高騰や生活費の上昇が問題視される中で、国民の関心を引きつけ、強力な支持を得る重要な要素となった。コロナ禍の影響に対する具体的な解決策を提示し、国民の期待に応えようとしたことで、国民民主党は新たな支持層を獲得し、存在感を高めることに成功した。

しかし、国民民主党の存在感が増すことで、他の野党は自党の主張が埋もれてしまうことを懸念し、さらなる対立を生む可能性がある。実際に、最近の選挙結果において国民民主党は議席を増やし、その影響力を強めていることが確認されている。

新川浩嗣財務次官


ここで注目すべきは、財務省がこの状況をどう利用するかだ。財務省は計画を進めるための「狙い目」を見出している。「計画を進める」とは、政府の財政運営を円滑に行うための戦略や政策を実行するという名目のもと、実際には「減税圧縮・穴埋め増税、野党分断で予算修正阻止」を狙っているということだ。財務省は予算の成立を確保し、必要な財源を確保するために、減税の幅を縮小し、新たな増税を進めようとしている。

しかも、財務省は政党間の対立を利用し、野党の分断を図ることで、予算修正を阻止しようとする。特定の野党に対して有利な措置を提供し、その支持を得ることで、他の野党との間に亀裂を生じさせる。特定の地域における公共事業や財政支援を優先的に行うことで、その野党の支持基盤を強化し、他の野党との対立を助長することも可能だ。

ここで重要なのは、財務省と自民税調の行動が「悪だくみ」として機能している点である。自民税調は、財務省の意向を受けながら税制に関する政策を検討し、与党としての立場を守る役割を果たしている。彼らは、財務省が提案する増税案に対して支持したり、修正を求めたりすることで、互いに利益を得る関係を築いている。こうした連携は、財務省が意図する「減税圧縮・穴埋め増税、野党分断で予算修正阻止」を実現するための重要な要素となる。

自民党税調

では、こうした財務省や自民税調の悪巧みを防ぐために、野党はどうすべきか?まず、野党間の連携を強化し、共通の政策目標を掲げて共同戦線を築くことが不可欠だ。これにより、財務省が意図する野党分断を防ぎ、より強力な抵抗を示すことができる。また、具体的な政策提案を通じて国民の支持を得る努力を続け、透明性のある議論を促進することで、財務省や自民税調の動きに対抗する力を高めることができる。さらに、SNSでの発信を通じて国民の意見を集め、政策決定過程に対する監視を強化し、国民の声を政策に反映させる努力も必要だ。

これまでの政治的動向からも、財務省は予算編成において強い影響力を持ってきた。例えば、2021年度の予算案では、コロナ対策や防衛費の増加が優先される一方で、他の社会保障政策が後回しにされる傾向が見られた。このような動きは、政策の優先順位を決定する上での政治的な駆け引きを反映している。

したがって、今後の税法や社会保険法の改正においても、財務省と自民党税調は互いに影響を与え合いながら動くことが予想される。財務省は政党間の対立を巧みに利用し、自らの意向を実現しようとし、一方で自民党税調は与党としての立場を守りつつ、財務省の提案に対して調整を行う。この状況は、単に税制改正の問題にとどまらず、日本の政治全体に影響を与える重要な要素となっている。

これは、国民にとって政治の壁ともいえるものだが、自公が衆院選で惨敗したことにより、この壁は揺らいでいる。私たち国民は、この動きを見逃してはならない。今こそ、政治に対する関心を高め、私たちの声を届ける時だ。現時点では、未来はかろうじて未だ私たちの手の中にある。 

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