2024年11月17日日曜日

トランプ氏の「お客様至上主義」マーケティングから学べること―【私の論評】真の意味でのポピュリズムで成功した保守主義者の典型トランプ氏に学べ

トランプ氏の「お客様至上主義」マーケティングから学べること

まとめ
  • トランプ元大統領は、テレビタレントとしての経験を活かし、有権者のニーズを理解した明確なメッセージを発信している。
  • 彼のマーケティング力とキャラクター演技力が、選挙戦での成功に寄与している。
  • 対立候補陣営は、高額なコンサートを開催するなど、有権者の生活実態を無視した行動を取った。
  • リベラル層は、低賃金労働者を利用しながら表面的な慈善活動に偏重し、国内の問題を軽視している。
  • こうした状況に対する反感が、トランプ氏への支持を強める要因となった。

テレビ番組「アプレンティス」に出演していた頃のトランプ氏

トランプ元大統領の次期大統領確定により、彼の卓越したマーケティング力が改めて注目を集めています。トランプ氏は「アプレンティス」というテレビ番組やプロレス団体WWEで人気を博したタレントとして知られ、「悪徳不動産屋」というキャラクターを巧みに演じてきました。日本の文脈で例えるなら、ハッスルのレイザーラモンHGに近い立ち位置と言えるでしょう。

トランプ氏は父親の不動産業を継いだ2世ビジネスマンですが、その本質はビジネスマンというよりもテレビタレントです。彼は優れたキャラクター演技力を持ち、WWEのリングで厳しい観客を前にエンターテインメントを提供してきました。プロレスファンなら、本場アメリカで観客を沸かせることの難しさをよく理解しているでしょう。

トランプ氏は、一般の俳優やミュージシャン以上に才能豊かな「テレビの人」です。テレビやラジオに出演経験のある人なら実感できると思いますが、視聴者や観客は非常に移り気です。特に、生の観客を前にした舞台や試合では、その場でうまくリアクションを取れなければ即座にブーイングの嵐に見舞われます。プロレスの観客は特に厳しく、スター性がなければすぐに出番がなくなってしまいます。

視聴率や観客動員数という数字で結果が出る世界で長年活躍し、実績を残すことは並大抵のことではありません。そうした厳しい世界で経験を積んだトランプ氏は、有権者が求めていることを非常によく理解しています。今回の選挙戦でも、非常にわかりやすい言葉で有権者が求めているメッセージを提供してきました。わかりやすいリズム、適切なタイミング、原稿を読まずにその場でリアクションを取る能力、表情豊かな顔芸など、まさに「お客様至上主義」と言えるでしょう。

一方で、対立候補陣営は選挙戦の終盤に30億円を投じて有名ミュージシャンを招いたコンサートを開催するなど、有権者の生活実態を考慮しない行動を取りました。医療費が払えずに命を落とす人や、意欲があっても大学に通えない若者が多いアメリカの現状を考えると、この大金を生活に苦しむ人々のために使うべきだったという批判が高まりました。

このような派手な「マーケティング」によって、有権者は「リベラルは自分たちの自己満足のために貴重な金を使ってお祭り騒ぎをしているだけだ」というイメージをさらに強めることになりました。コンサートや祭りの後に残されたゴミを拾うのは、低賃金で働く移民の清掃員や高卒のアメリカ人労働者です。

リベラル層の一部は、表面上は良い人間を装うために非営利団体のチャリティーマラソンに寄付をしたり、高価なグッズを購入したりしますが、その実態は自己満足に過ぎません。彼らのチャリティー活動は、海外の支援に偏重し、国内の貧困層や社会問題を軽視する傾向があります。

彼らにとって、国内には困っている人などいないことになっているのです。 この吐き気を催すような構造を「普通の人々」はよく知っているため、選挙戦の最終局面で派手なコンサートを行ったハリス陣営に対し、強い憎しみを抱いたのです。

この記事は、元記事を要約したものです。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】真の意味でのポピュリズムで成功した保守主義者の典型、トランプ氏に学べ

まとめ
  • 商談において「相手に半分話すと五分五分、全部話させると大勝利」という考え方は、相手のニーズを理解し有利な交渉を進めるために重要である。
  • トランプ氏は商業界や政治での経験を活かし、相手のニーズや感情を引き出す交渉術に長けている。
  • トランプ氏はエンターテインメント要素を取り入れたコミュニケーションスタイルを磨き、多くの有権者に訴求する能力を持っている。こうしたトランプ氏を日本のマスコミは「ポピュリスト」として批判しててきた。
  • しかし「ポピュリスト」という言葉は元来「人々の声を代弁する者」を意味し、特に中産階級の利益を代表するものであるが、日本ではネガティブに使われることが多い。
  • 現在、特に先進国では高学歴エリートによるリベラル政策への反発が高まり、元来の意味でのポピュリズムが台頭している。そのことに世界のリーダーたちは認識すべきである。

交渉では自分が語るより相手に語らせることのほうが重要だ

商談において「相手に半分話すと五分五分、全部話させると大勝利」という言葉がある。これは交渉やコミュニケーションのバランスを示している。相手が多くを語るほど、そのニーズや状況を理解しやすくなる。相手が自分の考えを多く話すことで、得られる情報が増え、より有利な立場で交渉を進めることが可能になるのだ。

「半分話すと五分五分」は、お互いの情報が対等に交換され、交渉が均衡する状態を指す。一方で「全部話させると大勝利」は、相手が自らの考えをすべて語ることで、こちらが相手の本音や真のニーズを把握し、より有利な条件を引き出すことができる状態を示している。この考え方は、商談や交渉において相手の話を引き出す重要性を強調している。

トランプ氏は、こうした交渉術に非常に長けている。彼は商業界や政治の場での経験を通じて、相手のニーズや感情を巧みに引き出す技術を身につけている。トランプ氏は、相手が多くの情報を話すよう促すことで、自らの立場を有利にする戦略を実践している。そのスタイルは鋭い質問や挑発的な発言を用い、相手の反応を引き出し、本音や真意を探ることにある。

また、トランプ氏のコミュニケーションには、印象的なフレーズを用いることで、支持者の心に響くメッセージを伝える能力も含まれている。このような交渉術は、ビジネスや政治で成功を収める要因の一つとなっている。彼は交渉の場において非常に効果的な戦略を持っていると言える。

ただし、選挙戦では有権者一人ひとりのニーズや感情を巧みに引き出すことは難しく、なるべく多くの有権者のニーズを掴み、それを代弁する能力が求められる。トランプ氏は、選挙戦や政治活動において多くの有権者のニーズを掴み、彼らを代表する能力を発揮した。彼は「アプレンティス」やWWEでの経験を通じて、エンターテインメントの要素を取り入れたコミュニケーションスタイルを磨いてきた。

「悪徳不動産屋」というキャラクターを巧みに演じることで、視聴者や支持者の心を掴む方法を学んだ。強い印象を与え、記憶に残るメッセージを伝える手段として機能している。トランプ氏は、こうした経験を活かして選挙戦で多くの有権者に訴求し、彼らの関心を引くことに成功した。

彼のエンターテインメント業界でのキャリアは、政治的な交渉やコミュニケーションにおいても大きな影響を与えている。彼は広範な有権者のニーズを理解し、それを代弁する能力を持ち、これが彼の政治的成功の一因となっている。

トランプ氏の政治的成功の要因を、日本のマスコミはポピュリズムとして印象操作してきた。彼をポピュリストとして批判してきたのだ。しかし、「ポピュリスト」という言葉の元来の意味は、一般的に「人々の声を代弁する者」であり、中産階級や労働者階級の利益を代表する政治的立場を指す。19世紀後半のアメリカにおける人民党はこの概念の典型例であり、農民や労働者の不満を背景にエリート層に対抗する姿勢を強調していた。ポピュリズムの本来の意味は「中産階級の代弁者」とも解釈され、一般市民のニーズや意見を重視することが重要視されていた。

ポピュリズム=全体主義として描いた絵画

しかし、現代において「ポピュリスト」という言葉は、日本ではしばしばネガティブな意味合いで使われるようになっている。この変化は、特に左翼系の活動家やメディアによる影響が大きい。彼らはポピュリズムを「感情的な扇動」や「分断を助長する政治」として描写し、特定の政治家や運動に対する批判の文脈で使用している。例えば、ポピュリズムを批判する際には、特定のリーダーが不正確な情報や感情的な訴えを用いて支持を得る様子が取り上げられ、これがネガティブなレッテルを貼る要因となっている。

一方で、アメリカの保守派では、ポピュリズムは元来の意味で使われることが多い。特にトランプ氏のような政治家は、一般市民の声を代弁する存在として自らを位置づけ、エリート層や主流メディアに対抗する姿勢を強調している。保守派の支持者はポピュリズムを「一般市民の利益を守るための正当な政治的手段」として捉え、この点は彼らの政治的アイデンティティに深く根付いている。トランプ政権下では「アメリカファースト」というスローガンが象徴的であり、これはポピュリズムの原則を反映している。

このように、ポピュリズムはその本来の意味を持ちながらも、時代や文脈によって異なる解釈がされている。特に日本ではネガティブな意味合いを持つ一方で、アメリカの保守派では依然として元来の意味で使われることが多い。トランプ氏はまさに、元来の意味でのポピュリストであり、彼の政策はその可能性を秘めている。

大統領選で最後まで「高学歴者エリート党」のイメージを払拭できなかった米民主

現在の世界は、特に先進国において高学歴エリートによるリベラル的な政策への反発が高まっている。元来の意味でのポピュリズムが台頭しつつあるのだ。ただし、トランプ元大統領は反エリート的なイメージが強い一方で、高学歴エリート層にも支持されていた。彼はペンシルベニア大学のウォートン・スクールで経済学を学び、これがビジネス界での成功につながった。大統領就任時には、元ゴールドマン・サックスのスティーブン・ムニューシン氏を財務長官に任命するなど、金融界からの支持を受けている。

また、トランプ氏の経済政策は企業経営者や投資家にとって魅力的であり、特に減税や規制緩和を評価する声が多かった。彼は教育背景や政策を通じて、保守派の高学歴エリート層にも受け入れられていたことが示される。

以上を踏まえると、トランプ氏はポピュリズム的な政治手法を駆使しながら、その根底は現実的な問題解決のための有効なアプローチとして、変化に対する慎重さと歴史からの学びを重視する保守主義者であり、現在の世界の潮流の根幹にも保守主義があると考えられる。このことを、世界のリーダーたちは学ぶべきである。無論、日本の自民党もそれを学ぶべきだ。

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