2024年11月9日土曜日

ドイツの早期総選挙、金融市場で「ポジティブな材料」に-シティなど―【私の論評】ドイツの教訓を他山の石として、日本は原発再稼働をはやめ、増税はやめるべき

ドイツの早期総選挙、金融市場で「ポジティブな材料」に-シティなど

まとめ
  • 政局次第で法人税引き下げや規制緩和進む可能性に期待高まる
  • ドイツ経済、現政権下での経済低迷で幅広い業界が苦境

連立政権を解消したショルツ首相

 ドイツでの総選挙実施の意向が示されたことにより、欧州の株式市場は安定を取り戻すと予測されている。シティグループのストラテジストは、法人税の引き下げがDAX構成銘柄の1株当たり利益を増加させる可能性があると指摘しており、これが市場にとってポジティブな材料になると見込まれている。

 社会民主党(SPD)のショルツ首相が連立を解消した7日、ドイツ株価指数は上昇したが、翌日には世界的なリスク回避の影響を受けた。しかし、投資家は来年早々に行われる選挙が経済への必要な支援をもたらすと楽観視している。バークレイズのストラテジストも今回の早期選挙を「光明」と評価し、ドイツには財政的余裕があることから、早期選挙が欧州にとって前向きな影響をもたらす可能性があると述べている。

 一方で、企業の業績不振や中国の景気低迷、米大統領選挙による関税導入への懸念が高まり、欧州の株式市場はここ数週間、下押し圧力が強まっている。経済の不振は自動車メーカーや銀行、防衛、エネルギー、不動産などの業界に大きな影響を与えており、これに対する投資家の心理も悪化している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ドイツの教訓を他山の石として、日本は原発再稼働をはやめ、増税はやめるべき

まとめ
  • ドイツの「エネルギー転換」政策がエネルギーコストの上昇と供給の不安定さを招き、経済停滞を引き起こしている。
  • ドイツは再生可能エネルギーの導入を進めたが、発電コストが高く、天候に依存するため安定した供給ができない。
  • ドイツは化石燃料への依存が続き、特に電力源の70%が原子力によるフランスからの電力輸入に頼ることにより、矛盾と脆弱性を一層際立たせている。
  • ドイツ国内の政治的対立がエネルギー政策を混乱させ、企業や消費者の不安と負担を増幅させている。
  • 日本も同様に、再生可能エネルギーの依存と原発再稼働の遅れが経済停滞を招くリスクを抱えており、エネルギー政策の見直しが急務である。

ドイツの「エネルギー転換」政策はもはや誰の目からみても大失敗

ドイツ経済の停滞は、エネルギー政策を軽視した結果であり、その結末は予測できたものだった。ドイツは「エネルギー転換(Energiewende)」という壮大な構想のもと、全原発を段階的に廃止し、再生可能エネルギーへの転換を進めてきた。しかし、その過程で直面した数々の問題は深刻であり、エネルギーコストの急上昇と供給の不安定さを招いた。これが解消されない限り、欧州株式市場において一時株価が上がることはあっも、それが維持されることはないだろう。

ドイツは再生可能エネルギーの導入は進めたが、発電コストが高く、風力や太陽光は天候に左右されやすいため、安定した供給が確保できない。これがエネルギー価格の上昇を引き起こし、2022年には家庭の電力料金が過去最高の約40セント/kWh(同時期日本では約15〜23セント/kWh程度)に達し、2023年も依然として高止まりした。

そのため、再エネを進めながも、化石燃料への依存を継続せざるを得ず、それどころか石炭の使用は増加し、2021年には電力供給の約30%を占めた。また、再生可能エネルギーの発電量が不安定であったことも一因となり、ドイツはフランスからの電力輸入に頼る割合を増加させてきた。

しかし、フランスの電力の約70%は原子力であり、この依存度の高まりはドイツのエネルギー政策の矛盾と脆弱性を一層際立たせている。加えて、ロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー供給が大きく揺さぶられ、ガス価格の高騰や化石燃料の供給不安定性もドイツ経済にとって大きな打撃となった。

フランスでは56基の原発が稼働しているが、日本では稼働しているのは12基

政治的な面でも、ドイツのエネルギー政策は混乱を極めている。すで解消された連立政権の構成党の間で政策に対する見解の相違があり、与党社会民主党(SPD)や緑の党(Die Grünen)は、再生可能エネルギー推進と原発廃止を重視し、自由民主党(FDP)はその中で柔軟な対応を求める立場を取っている。

野党のキリスト教民主同盟(CDU)やキリスト教社会同盟(CSU)は、エネルギー供給の安定化と価格高騰への対応として原発再稼働を支持している。一方、このように、ドイツ国内のエネルギー政策を巡る対立は、予測可能性を欠き、企業や消費者の不安を増幅させ、経済全体の成長を妨げている。

さらに、AfD(ドイツのための選択肢)などの右派勢力は、移民問題やエネルギー政策を背景に支持を拡大しており、特に高騰するエネルギー価格と経済的不安定さがその後押しとなっている。もし次の選挙でAfDが連立政権に加わるような事態になれば、エネルギー政策の転換が進む可能性もあるが、それは不透明だ。いずれにせよ、現在のエネルギー政策が続けば、ドイツはこのまま高コストで不安定なエネルギー供給に苦しむことになるのは避けられない。

一方、日本もエネルギー政策において大きな岐路に立っている。福島第一原発事故を契機に、原発再稼働は慎重に進められてきたが、未だに多くの原発が稼働していない。再生可能エネルギーの導入が進み依存度が高まる一方で、その供給の不安定さが問題となっている。再生可能エネルギーは天候に左右されるため、発電の安定性が欠如しており、これがエネルギーコストの上昇を引き起こしている。

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さらに、防衛費の増加に伴う増税が検討されており、未だデフレから抜けきっていない日本においては、税負担が経済成長に与える影響は計り知れない。増税による消費の抑制とエネルギー価格の高騰が相まることになれば、企業や家庭に重圧をかけ、経済全体の活力を低下させるのは必定である。

日本がこのままのエネルギー政策を続け増税をするなら、ドイツと同様に高コストで不安定なエネルギー供給に直面し、さらにデフレが進行し経済全体の競争力低下が避けられなくなるだろう。連立政権のもとで進められたとしても、原発再稼働が遅れ、再生可能エネルギーへの依存が続けば、深刻なエネルギー危機と経済停滞が待っているのは明白だ。

ドイツの教訓を他山の石として、日本も今すぐにエネルギー政策を根本から見直し、安定したエネルギー供給を確保するために原発再稼働を迅速に進めるべきである。増税も控えるべきであり、それができなければ、日本もいずれエネルギー危機と経済停滞に直面し、ドイツのように後悔の念を抱えることになるだろう。

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