2024年12月23日月曜日

トランプ氏、プーチン氏との会談示唆-ウクライナ戦争終結に向け―【私の論評】トランプ政権とウクライナ戦争:和平への道筋とバイデン政権の戦略

トランプ氏、プーチン氏との会談示唆-ウクライナ戦争終結に向け

まとめ
  • ウクライナ戦争を「終わらせる必要」とトランプ氏-詳細には触れず
  • トランプ氏、ロシアによるウクライナ領の一部占拠も容認の意向示唆

プーチン露大統領とトランプ米大統領 2019年大阪G20サミット

 トランプ次期米大統領は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻に関する戦争の終結について、プーチン大統領との会談を行う意向を示唆した。プーチン氏は19日の年次会見で、トランプ氏が会いたいと思えば会う準備があると発言したが、具体的な日時については不明であり、彼とは4年以上話していないと語った。

 これを受けて、トランプ氏は22日にアリゾナ州フェニックスで開催された保守派のカンファレンスで、ウクライナでの戦闘によって多くの兵士が命を落としたと強調し、プーチン氏が早期の会談を望んでいると述べた。しかし、具体的な会談の詳細には触れず、明確にコミットすることはなかった。

 さらに、トランプ氏はロシアが占領した地域についてはあまりこだわらず、ウクライナ領の一部占拠を認めるような取引に応じる意向を示唆している。この発言は、11月の米大統領選挙におけるトランプ氏の勝利が、ロシアに対抗して占領地を奪還しようとするウクライナのゼレンスキー大統領の取り組みに対する米国の軍事支援にどのような影響を及ぼすかについて疑問を投げかけるものである。トランプ氏はゼレンスキー大統領に対し、「取引を行う準備をすべきだ」とコメントしており、今後の米国の外交政策に注目が集まっている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】トランプ政権とウクライナ戦争:和平への道筋とバイデン政権の戦略

まとめ
  • トランプ氏の政権移行チームとアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)は、ウクライナ戦争の終結に向けた提言や活動を行っている。
  • トランプ氏は、ロシアとの和平交渉を進める意向を示し、ウクライナへの軍事支援の撤回やNATO加盟の延期も提案している。
  • バイデン大統領はプーチン大統領との直接会談を避け、ウクライナへの支持を強化する戦略を取っていた。
  • ウクライナとロシアの国境はソ連時代に人為的に決められたもので、歴史的な経緯が現在の緊張に影響している。
  • ウクライナとロシアも最終的には朝鮮半島のように妥協が必要であり、トランプ政権はウクライナ和平を早期に進める意図があるのは間違いない。
トランプ氏の政権移行チームと、彼のシンクタンクともいえるアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)は、ウクライナ戦争の終結に向けてさまざまな活動や提言を行っている。トランプ氏の国家安全保障チームは、ホワイトハウスおよびウクライナ当局と協議を重ね、ロシアとの戦争を終結させる方法を模索している。具体的な和平案はまだキーウに提示されていないが、トランプ氏は就任前から戦争を終結させる意向を示しており、ロシアに対する平和的アプローチとウクライナへの軍事支援削減の可能性を示唆している。


一方、AFPIはウクライナへの軍事支援と平和的解決の両立を支持しつつ、追加支援には監視と政策目標との関連付けが必要であると提言している。また、NATOメンバーの貢献増加を求め、米国が和平交渉の条件を整える必要性を強調している。具体的な提案として、AFPIメンバーでありトランプ氏にウクライナ・ロシア担当特使に指名されたキース・ケロッグ氏は、両当事者に交渉を促すため、ウクライナへの軍事支援の撤回と、モスクワが交渉を拒否した場合の武器供給増加を提案している。この計画では、ウクライナのNATO加盟を最長10年間延期し、現在の前線を一時的に受け入れ、失地回復は外交的手段に限定するとされている。

さらに、トランプチームはロシアとの和平交渉を促すため、ウクライナのNATO加盟を無期限に禁止するか、特定期間制限する可能性も示唆している。これらの提案は、ウクライナの主権と安全保障を維持しつつ、ロシアとの交渉の余地を残すことを目指している。

バイデン大統領がウクライナ侵攻の直前にプーチン大統領と直接会談を行わなかったことは広く報じられている事実である。2021年12月、バイデン大統領はプーチン大統領とのオンラインサミットを開催したが、その後は直接的な会談は行われていない。

バイデン大統領がプーチン大統領と会談しなかった理由は、いくつかの要素が考えられる。まず、バイデン政権はロシアの軍事的動きに強い懸念を抱いており、対話よりも抑止力を重視する姿勢があった。プーチン大統領との直接会談が、ロシアの侵攻を正当化する口実を与える恐れがあったため、会談を避ける選択をした可能性がある。

また、バイデン政権はウクライナへの支持を強化し、「オレンジ革命」や「ユーロマイダン」といったウクライナ国内の民主化運動への関与も行っていた。これらの運動は、ウクライナの政治体制の改革や民主主義の確立を目指すものであり、バイデン大統領がプーチン大統領との会談を避けることで、ウクライナに対する支持を明確にし、民主化運動を後押しする姿勢を示すことができたとされている。

さらに、バイデン政権はNATOやEUとの連携を深め、国際的な支持を得ることを優先事項としており、ロシアとの直接的な対話がその戦略に反する可能性があった。このように、バイデン大統領がプーチン大統領との会談を避けた理由には、外交的な戦略やウクライナ国内の民主化運動への関与が背景にあると考えられる。これにより、ウクライナへの支援を強化し、国際的な連携を進めることが可能となったとされている。

ゼレンスキー宇大統領とバイデン米大統領

ウクライナとロシアの国境は、ソ連時代に人為的に決められたものである。ソビエト連邦は、多様な民族と文化を持つ広大な国家であり、各共和国の境界線は歴史的、政治的な要因によって設定された。このため、国境は民族の分布や地理的な要因と必ずしも一致していなかった。

特に、ウクライナとロシアの国境は、ソ連の内部行政区画に基づいて決定された。1922年にソ連が成立した際、ウクライナはウクライナ・ソビエト社会主義共和国として設立され、さまざまな地域が組み込まれた。その後、1930年代から1940年代にかけて、国境の調整や領土の移動が行われ、ウクライナとロシアの境界が形成された。

このように、ウクライナとロシアの国境は、歴史的な経緯やソ連の内部政治によって人為的に決められたものであり、現在の国境問題や民族的な緊張の背景には、このような歴史が影響している。国境が民族や文化の実態を反映していないため、現在でもさまざまな対立や摩擦が生じている。

朝鮮半島の38度線


一方、朝鮮半島は長い歴史の中でさまざまな王朝や勢力によって統治されてきたが、20世紀に入ると日本の植民地支配を経て、第二次世界大戦後に南北に分断された。1945年に日本が降伏した際、連合国は朝鮮半島を北緯38度線を境にソ連とアメリカで分割占領することを決定した。この38度線は、実際には地政学的な理由に基づいて引かれたものであり、民族的・歴史的な境界を反映したものではない。このため、国境が設定された時点では、明確な文化的・民族的な境界が存在せず、曖昧な部分が多かったと言える。

その後、1948年に韓国(大韓民国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がそれぞれ独立した国として成立し、1950年に朝鮮戦争が勃発した。この戦争の結果、38度線が事実上の国境として固定されたが、もともとの境界設定が曖昧であったため、現在でも南北間には緊張が残り続けている。

ウクライナとロシアもいつまでも戦争を続けられるわけではない。いずれ、朝鮮半島のように両国が妥協しなければならない時がやってくるのは確実である。その端緒をトランプが開こうとしていることは間違いない。トランプ政権としては、中国との対峙に専念できる体制を築くため、ウクライナ和平を早期に進めようとしているのは間違いないだろう。

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