2024年12月7日土曜日

ウクライナで変わった戦争の性格 日本の専守防衛では対処困難 米戦争研究所ケーガン所長―【私の論評】日本の安全保障強化に向けたISWの指摘と憲法改正の必要性

ウクライナで変わった戦争の性格 日本の専守防衛では対処困難 米戦争研究所ケーガン所長

まとめ
  • ウクライナ戦争が従来の戦争の性格を変え、新型兵器の登場が日本の防衛姿勢を脅かしている。
  • ロシアの野望はNATOや米国主導の国際秩序の破壊に及び、これが日本やアジア太平洋地域に脅威をもたらす。
  • 新技術(AI、無人機、電子戦など)の導入により、従来の防御型国防態勢が脆弱化している。
  • 停戦交渉は困難で、ロシア軍は毎月3万~3万5千人の死傷者を出しており、その損害を増やすことが停戦を引き出す鍵となる。
  • 中国の軍事的野望が日本に対する脅威を現実化させており、「今日のウクライナは明日の台湾」との見解が示された。


 米国の「戦争研究所」(ISW)所長キンバリー・ケーガン氏が、ウクライナ侵略戦争に関する詳細な分析を行い、その影響について語ったインタビューが注目されている。ケーガン氏は、ウクライナでの戦闘が従来の戦争の性格を根本的に変え、致死性や攻撃性の高い新型兵器の出現が日本の専守防衛の姿勢を脅かしていると警告した。

 ISWは2007年に設立され、イラクやアフガニスタンの戦闘に関する独自の分析手法を用いて国際的な信頼を築いてきた。ウクライナ戦争については「世界で最も頻繁に引用される研究機関」として評価されている。ケーガン氏は、ロシアがウクライナを完全に制圧するだけでなく、NATOの価値観や米国主導の国際秩序を破壊しようとしており、これが日本の安全保障に直接的な影響を与えると述べた。特に、中国、イラン、北朝鮮がロシアの野望に同調している点を挙げ、これが日本やアジア太平洋地域の米同盟国にとって大きな脅威となることを強調した。
日本も専守防衛策では新たな軍事情勢への対処が難しいとして「日本も米国とともに臨戦態勢、戦時の精神構造を持つことが戦争への抑止になると思う」と語った。

 ウクライナ戦争では、AI、無人機、電子戦、サイバー攻撃といった新たな技術を駆使した兵器が広範に使用されており、これにより従来の戦車や大砲といった旧式兵器が劣位に置かれている。ケーガン氏は、戦争における攻撃性や殺傷力が劇的に高まっているため、従来の防御主体の国防態勢は弱体化していると指摘した。日本も米国との連携を強め、臨戦態勢を整える必要があり、戦時の精神構造を持つことが抑止力につながると述べた。

 また、習近平・中国国家主席の狙いについても言及し、ロシアとの連携を通じて米側の安保態勢を崩し、アジアにおける覇権を確立することを目指していると警告した。台湾の武力統一を国家目標としている点からも、日本への軍事的脅威が現実的であると強調し、「今日のウクライナは明日の台湾」という表現に賛同した。

 ウクライナ戦争の今後については、プーチン大統領が当初の目的を達成していないため、停戦交渉に応じる可能性は極めて低いとの見解を示した。ロシア軍は一部地域の占拠に成功しているものの、毎月3万人以上の死傷者を出しており、ウクライナは年間150万機もの無人機を製造して戦場に投入しているが、依然としてその数は不足していると述べた。ロシアを停戦交渉に応じさせるためには、戦場でのロシア側の損害をさらに増加させることが効果的であると結論づけ、戦争の行方に注目が集まる中、国際社会の対応が重要であると強調した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の安全保障強化に向けたISWの指摘と憲法改正の必要性

まとめ
  • ISWの分析が現実の国際情勢に即しており、その信憑性が高いと評価されていることは、日本の安全保障政策において重要な意味を持つ。
  • 自民党内の保守派が政権を担うことで、ISWの指摘に基づいた憲法改正や防衛政策の強化が迅速に進む可能性が高まる。
  • 保守派は国際的な安全保障環境に対する認識が一致しており、集団的自衛権の行使や自衛隊の役割強化に対する重要性を認識している。
  • 2024年の自民党内調査では、憲法改正を支持する意見が過半数を超え、より積極的な防衛政策を求める声が高まっている。
  • 憲法改正や防衛政策の強化を実現するためには、石破政権を早急に終わらせる必要がある。自民党内の保守派による政権樹立により、日本は強固な安全保障体制を構築し、国際社会における信頼性を高めることができる。



米国の「戦争研究所」(ISW)の指摘が正しかったことが確認された具体的な事例は、ISWの定評を裏付けるものだ。まず、ISWはウクライナ侵略の初期段階からロシアが無人機やサイバー戦術を積極的に使用することを予測していた。特に、ロシアがイラン製のドローンを利用してウクライナのインフラや軍事施設を攻撃する事例が多発した。2022年10月以降、ロシアのドローン攻撃は急増し、ウクライナのエネルギーインフラが大きな被害を受けた。この動きは、ISWの分析と一致し、戦争の戦術が新たな段階に入ったことを示している。

次に、ISWはロシア軍の損失数についても高く見積もっていた。彼らは、ロシア軍が毎月3万人以上の死傷者を出す可能性があると指摘し、2023年初頭にはロシアが累計で30万人以上の死傷者を出したとされる。この情報は、ウクライナ政府やさまざまな国際的な報告書によって裏付けられ、ISWの予測が実際の損失と一致していることが確認された。

また、ISWはウクライナが西側の支援を受けながら効果的に抵抗する能力を持つと予測していた。実際、ウクライナは米国やNATO諸国からの軍事支援を受けて反攻作戦を展開し、特に2022年後半から2023年にかけての反攻では、ハリコフ州やヘルソン州での領土回復に成功した。この成功は、ISWが指摘していたウクライナの戦闘能力の高さを証明し、国際社会の支援がその背景にあることも明らかになった。

さらに、ISWはウクライナ戦争がNATOや国際秩序に対する脅威を増大させると警告していた。ロシアの行動がNATOの団結を強化し、スウェーデンやフィンランドがNATO加盟に向けて動き出したことは、ISWの分析と一致している。この動きは、ロシアの侵略行為が逆に西側の結束を強める結果をもたらしたことを示している。


最後に、ISWは中国がロシアと連携してアジア太平洋地域での覇権を狙っていることを指摘していた。2023年における中国の軍事演習や台湾に対する圧力の増加は、ISWの分析と一致している。米国防総省の報告書でも、中国がロシアとの関係を強化し、地域の安定を脅かす可能性があると指摘されている。これらのエピソードは、ISWの分析が現実の国際情勢に即したものであることを裏付ける強力な証拠である。

このように信憑性のあるISWのトップが、「日本も専守防衛策では新たな軍事情勢への対処が難しいとして、米国とともに臨戦態勢、戦時の精神構造を持つことが戦争への抑止になると思う」と語ったことは、無視したり軽視したりできない重要な発言である。

「米国とともに臨戦態勢、戦時の精神構造を持つこと」という表現は、具体的には日本が米国と連携し、迅速に対応できる軍事的準備を整えることを指す。これには部隊の訓練や装備の近代化、共同訓練や情報共有を通じた同盟の強化が含まれる。また、国民の危機意識を高め、非常時に備えた意識改革を行うことも重要だ。さらに、突発的な事態に柔軟に対応できる政策の整備や、日本の国際社会における役割の再評価、国際平和維持活動への参加も求められている。これらはすべて、地域の安定を確保し、潜在的な脅威に効果的に対処するために不可欠な要素だ。

日本が米国とともに臨戦態勢を整え、憲法改正と法律の整備を実現するためには、石破政権を一刻も早く終わらせ、自民党内の保守派による政権を樹立する必要がある。石破茂氏は、従来の防衛政策を重視する一方で、憲法改正に対して慎重な姿勢を示しており、このため必要な改革が進みにくい状況が続いている。

石破総理

2023年の国際情勢の変化を受けて、特に中国の軍事的挑発や北朝鮮の核開発に対する危機感が高まっている。例えば、2023年の中国による台湾周辺での軍事演習や、北朝鮮のミサイル発射が続く中、日本政府も防衛費の増加や新型兵器の導入を進める方針を打ち出している。しかし、石破政権の下では、これらの重要な防衛政策が後手に回る可能性がある。

2024年の米国の国家安全保障戦略でも、日本に対してより積極的な防衛政策を期待する声が強まっており、特に日米同盟の強化が求められている。これに対して、石破氏の慎重な姿勢は、米国の期待に応えることが難しい状況を生む恐れがある。

自民党内の保守派が政権を担うことで、憲法改正や防衛政策の強化が迅速に進む可能性が高まる。保守派は、国際的な安全保障環境に対する認識が一致しており、集団的自衛権の行使や自衛隊の役割強化に対する重要性を認識している。2024年の自民党内の調査では、憲法改正を支持する意見が過半数を超え、より積極的な防衛政策を求める声が高まっている。

憲法改正や防衛政策の強化を実現するためには、石破政権を早急に終わらせ、自民党内の保守派による政権を樹立することが必要だ。これにより、日本はより強固な安全保障体制を構築し、国際社会における信頼性を高めることができるだろう。

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