半導体などサプライチェーンの強化で実質妥結 IPEF閣僚級会合
IPEFは14か国が参加し、中国の拡大する影響力に対抗するために昨年から4つの分野で交渉を行っています。日本からは西村経済産業大臣と山田外務副大臣が出席し、共同声明が採択されました。
合意内容としては、感染症や紛争などで重要物資の供給が途絶えた場合に参加国間で相互支援するなど、サプライチェーンの強化に関する協定が実質的に達成されたことや、水素の導入に向けた技術協力や供給網の構築に関する新たな枠組みが設けられることが合意されました。
アメリカの商務長官は、国際的な協定の成立が初めてであり、ビジネス環境の改善につながると述べ、成果を強調しました。残りの3つの分野である貿易やクリーン経済についても、早期の妥結を目指して交渉が続けられることが各国で合意されました。
西村経済産業相 |
西村経済産業大臣は記者会見で、世界初の多国間のサプライチェーン協定の重要性を強調し、危機時にお互いに協力する枠組みを作ることができると述べました。また、残りの分野の交渉についても日本が主導し、各国がメリットを感じられるように努力する意向を表明しました。
【私の論評】日本は米国と新興国との橋渡しをし、双方の信頼を勝ち得て、いずれ米国がTPPに復帰するように促すべき(゚д゚)!
IPEFが交渉しているのは、以下の4つの分野です:
サプライチェーン: IPEFは、半導体や医薬品などの重要な商品やサービスのサプライチェーンを強化することを目的としています。これにより、中国への依存度を下げ、サプライチェーンの混乱に対する耐性を高めることができます。
クリーンエネルギー: IPEFは、クリーンエネルギー技術の開発と普及を促進することを目的としています。これにより、温室効果ガスの排出を削減し、気候変動に対処することができます。
インフラストラクチャー: IPEFは、インド太平洋地域のインフラストラクチャー・プロジェクトに投資することを目的としています。これにより、経済成長を促進し、雇用を創出することができます。
税と貿易:IPEFは、インド太平洋地域における公正で開かれた貿易と投資を促進することを目的としています。これにより、企業や労働者にとってより公平な競争の場を作ることができる。
IPEFはまだ初期段階ですが、経済的・戦略的に大きなイニシアティブとなる可能性を秘めています。インド太平洋地域で影響力を強める中国に対抗し、よりオープンで包括的な経済秩序を促進するのに役立つ可能性があります。
米国が2017年に環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱後、アジア太平洋地域で低下した自身の存在感を回復する意味合いもあります。
今回の、多国間協定は、危機発生時に協力するための枠組みを提供することで、サプライチェーンの寸断リスクを軽減することができます。例えば、自然災害によって重要な製品の供給が滞った場合、協定によって他国が必要な製品を提供できるようにすることができます。
さらに、多国間協定は、地域のサプライチェーンを多様化することで、サプライチェーンをより弾力的なものにすることができます。例えば、ある国が重要な製品を中国に大きく依存している場合、協定は他の国が必要な製品を提供できるようにするのに役立ちます。
さらに、 このような多国間協定は、地域の重要製品の中国への依存度を下げるのに役立ちます。中国はその市場力を利用して他国に経済的圧力をかけているため、これは重要です。経済的威圧を強める中国を念頭に、公正な経済秩序の構築に向けたルールづくりで成果を打ち出せるかが焦点となります。
全体として、サプライチェーンに関する多国間協定は、インド太平洋地域に大きな影響を与えることができます。この協定は、サプライチェーンの途絶のリスクを減らし、この地域をショックに対してより強くし、この地域の中国への依存を軽減するのに役立つでしょう。経済的威圧を強める中国を念頭に、公正な経済秩序の構築に向けたルールづくりで成果を打ち出せるかが焦点となります。
IPEFの残りの交渉分野は以下の3つです。
貿易:関税、非関税障壁、知的財産権などの問題が含まれます。米国は労働者の権利や環境を保護する条項を盛り込むことを求めていますが、一部の新興国は、これらの条項によって米国への輸出が困難になることを懸念しています。
クリーンエネルギー: クリーンエネルギー技術の開発と普及、温室効果ガス排出量の削減などの問題が含まれます。米国はクリーンエネルギー技術の開発を促進する条項を盛り込もうとしていますが、一部の新興国は、この条項によって世界市場で米国と競争することが難しくなることを懸念しています。
インフラストラクチャー: インフラプロジェクトへの投資や、インフラに関する国際基準の策定などの問題が含まれます。米国はインフラへの投資を促進する条項を盛り込もうとしていますが、新興国の中には、この条項によって自国のインフラプロジェクトの資金調達が困難になることを懸念する国もあります。
日本は、米国と新興国の仲介役として、この困難な交渉に貢献することができます。日本は、米国やインド太平洋地域の新興国と緊密な経済関係を築いており、この2つの国の間の相違を埋めるのにふさわしい立場にあります。
また、日本はインド太平洋地域の国々が自国のサプライチェーン、クリーンエネルギー技術、インフラを開発できるよう資金援助を行うことでも貢献できます。このような貢献で得られた、知見・ノウハウ等をTPP協定にフィードバックすることもできます。
日本はこのような貢献をして、米国と新興国との橋渡しをし、米国と新興国双方の信頼を勝ち得て、いずれ米国をTPPに復帰するように促すべきです。
インド太平洋戦略の生みの親でもある、天国の安倍晋三氏も、そうなるように見守っておられるでしょう。西村大臣にはその期待に是非応えていただきたいものです。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿