2023年5月11日木曜日

中国、外資系コンサル摘発強化 「機微な情報」警戒―【私の論評】機微な情報の中には、実は中国の金融システムの脆弱性が含まれる可能性が高い(゚д゚)!

中国、外資系コンサル摘発強化 「機微な情報」警戒

習近平主席


 中国の国家安全当局が、外資系コンサルティング会社や調査会社の摘発を活発化させている。米欧が対中抑止のために、コンサル会社を使って中国の機密情報を不正に入手しているという見方を強めているためだ。習近平政権は、7月に改正反スパイ法の施行を予定するなど「国家安全」の強化を急いでおり、中国でビジネスを行う外資企業は懸念を強めている。

 中国メディアは11日までに、中国の国家安全機関が、米ニューヨークと中国・上海に拠点を置くコンサルティング会社「凱盛融英(キャップビジョン)」の中国国内の拠点を調査したと報じた。同社の従業員が共産党や政府機関、国防企業の関係者などと接触し、高額な報酬を渡して中国の「デリケートなデータ」を得ていたと伝えた。

 中国国営中央テレビは、「海外の組織」がコンサル会社などを使い、「わが国の重点分野の国家秘密や情報を盗み取っている」という当局の見方を強調した。

 ロイター通信によると、3月には米企業調査会社「ミンツ・グループ」の北京事務所が家宅捜索を受け、4月には米コンサル会社「ベイン」の上海事務所が従業員の聴取を受けている。外資系コンサル会社などへの摘発をキャンペーン的に進めているもようだ。

 中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は9日の記者会見で、キャップビジョンへの調査について「正常な法執行であり、業界の健全な発展を促し、国家の安全と発展の利益を守ることが目的だ」と主張した。

 コンサル会社や調査会社は、企業が事業判断を行うのに必要な現地情報を収集している。その中には軍事関連など政権にとって機微な情報も含まれているとみられ、こうした情報が米国などに流れることを当局は警戒しているもようだ。

 習政権は、米国など西側諸国との対立長期化を視野に入れ、「国家安全」を重視する姿勢を強めている。7月1日に施行される改正反スパイ法は、スパイ行為の定義を広げており、当局の恣意(しい)的な判断で外国人も摘発対象になる可能性が増すと懸念されている。

 3月には、中国の当局者や企業幹部と交友が深かったアステラス製薬の現地法人幹部が、反スパイ法などに違反した疑いで北京で拘束された。

 習政権は「ゼロコロナ」政策で傷んだ中国経済を回復させるため、外資企業の呼び込みも同時に進めているが、北京の日系企業幹部は「安心して新規投資ができる状況ではない」と困惑する。

■中国の反スパイ法 習近平政権が2014年に施行した。今年4月には中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が反スパイ法の改正案を可決し、7月1日に施行することが決まっている。現行法はスパイ行為の定義を「国家機密」の提供などとしているが、改正法では「国家の安全や利益に関わる文献やデータ、資料、物品」の提供、窃取、買い集めも盛り込んだ。「国家安全」の定義はあいまいなため、当局の恣意的な摘発がさらに増えることが懸念されている。


【私の論評】機微な情報の中には、実は中国の金融システムの脆弱性が含まれる可能性が高い(゚д゚)!

中国の国家安全当局が摘発している外資系コンサルティング会社や調査会社は、主に以下の分野の機微な情報を入手していると考えられています。

  • 軍事関連:軍事技術、兵器システム、軍事戦略など
  • 先端技術関連:人工知能、半導体、量子技術など
  • 経済関連:経済政策、企業情報、貿易情報など
  • 政治関連:政府機関の内部情報、政権の政策方針など

これらの情報は、中国の安全保障や経済に大きな影響を及ぼす可能性があるため、中国政府は機密扱いしています。しかし、米欧のコンサルティング会社は、中国の企業や政府機関と取引する際に、これらの機密情報を不正に入手しているという疑いを持たれています。

具体的な事例としては、2022年に中国の国家安全当局が摘発した米系コンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」が挙げられます。ベイン・アンド・カンパニーは、中国の通信大手・華為技術(ファーウェイ)の内部情報を不正に入手したとして、中国政府から罰金を科されました。

中国政府は、外資系コンサルティング会社や調査会社による機密情報の不正入手に対して、厳しい取り締まりを行っています。今後も、このような摘発が活発化していくと考えられます。

ただ、中国の軍事技術や先端技術が欧米由来であるため、進展度合いに凸凹があります。たとえば、中国はステルス戦闘機や弾道ミサイルなどの最先端兵器の開発に成功したようですが、対潜戦争や電子戦などの分野では依然として欧米に遅れをとっています。

対潜戦争は、潜水艦を探知、追跡、撃沈する能力を必要とする複雑な分野です。中国海軍は、この分野で経験が不足しており、必要な能力を獲得するために努力しています。電子戦は、敵の電子機器を妨害または無効にする能力を必要とする分野です。中国海軍もこの分野で経験が不足しており、必要な能力を獲得する必要があります。

ロサンゼルス級原子力潜水艦の上空を飛行するオライオン対潜哨戒機

対潜戦は、海洋の戦いでの勝敗を決める決定的な要素です。電子戦はすべての戦いでの勝敗を決める決定的な要素です。

中国は軍事技術の分野で急速に進歩していますが、欧米に追いつくにはさらに時間がかかります。すでに確立された研究をもとに開発は進んでいるものの、次世代の研究は欧米から比べると遅れている可能性があります。

いわゆる先端技術もこれと似たような状況にあると考えられます。このようなことから、欧米が中国から軍事技術や先端技術を手に入れるというよりは、どの段階にまだ達したかという情報を入手している可能性はあります。

私自身は、軍事・先端技術情報よりも、経済関連に関しての情報に注目しています。

現在中国は国際金融のトリレンマに直面しています。国際金融のトリレンマとは、金融政策の独立性、為替相場の安定性、資本移動の自由化の3つは、同時に達成できないというものです。正式名称は、不可能の三角形(Impossible Trinity)です。米国の経済学者であるロバート・マンデルとアラン・テイラーによって提唱されました。これは、経験則によっても、数学的にも確かめられています。

中国は、金融政策の独立性と為替相場の安定性を重視しているため、資本移動の自由化を制限しています。しかし、資本移動の自由化が制限されていることで、中国の金融システムは脆弱になっています。


中国が独立した金融政策を実施できないことを示す具体的な兆候がいくつかあります。1つの兆候は、中国人民銀行が為替レートを安定させるためにしばしば介入していることです。これは、人民銀行が為替レートを操作する能力に制限があることを示しています。もう1つの兆候は、中国人民銀行が金利を引き上げることに消極的であることです。これは、人民銀行がインフレを抑制する能力に制限があることを示しています。

先程述べたように、国際金融のトリレンマにより、国境を越えて資本が自由に移動できる場合、中央銀行は為替レートの安定、低インフレ、金融政策の独立の3つをすべて達成することはできません。

これは、中国の金融システムの脆弱性を高める可能性があり、中国人民銀行が経済の安定を維持するための十分な柔軟性を持たないことを意味しています。

たとえば、中国人民銀行がインフレを抑制しようとする場合、為替レートの安定化や金融政策の独立を犠牲にすることになります。これは、中央銀行が金利を引き上げると、国内の金利と世界的な金利の差が生じ、資本が国内に流入する可能性があるためです。資本流入は、為替レートの上昇と金融政策の独立の喪失につながる可能性があります。

この脆弱性は、中国の金融システムがショックやストレスにさらされた場合に、金融危機につながる可能性があります。たとえば、米国が中国に制裁を課した場合、中国人民銀行は為替レートを安定させるために大量のドルを購入することを余儀なくされる可能性があります。これは、中国人民銀行の外貨準備を枯渇させ、金融危機につながる可能性があります。

さらに、中国人民銀行が金利を引き上げることに消極的であれば、インフレが制御不能になる可能性があります。これは、中国の経済成長の減速と金融危機につながる可能性があります。

全体として、国際金融のトリレンマにより、中国人民銀行が独立した金融政策を実施できないことは、中国の金融システムの脆弱性を高める可能性があります。この脆弱性は、中国の金融システムがショックやストレスにさらされた場合に、金融危機につながる可能性があります。

米国は、中国の金融システムの脆弱性を把握し、金融制裁をより効果的にするために、米欧のコンサルティング会社等による金融システムに関する機密情報の不正入手を行う可能性があります。これは、諜報活動の一般的な手法であり、米国が過去に使用した手法でもあります。

中国は、米国が過去にサイバー攻撃やスパイ活動を通じて中国の機密情報を盗んだ実績があるため、米国が中国の金融システムに関する機密情報を不正に入手する可能性を懸念していると考えられます。

全体として、中国は米国が中国の金融システムに関する機密情報を不正に入手する可能性を懸念しており、それに対処するための措置を講じています。その一つが、上の記事にも述べられているように、改正反スパイ法です。


改正法では「国家安全」の定義はあいまいなため、当局の恣意的な摘発がさらに増えることが懸念されています。

改正反スパイ法に関しては、当局の恣意的な摘発の問題が指摘されることが多いですが、それだけではなく中国での投資環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

「国家安全」の定義があいまいなため、当局は、「国家安全」を理由に、企業や個人を恣意的に摘発することができる可能性があります。これは、投資家や企業にとって大きな不確実性を生み、中国への投資を思いとどまらせる可能性があります。

また、改正反スパイ法は、中国の金融システムや市場の不透明性を高める可能性もあります。これは、投資家にとってリスクが高まり、投資を思いとどまらせる可能性があります。

最後に、改正反スパイ法は、中国の国際的な評判を傷つける可能性もあります。これは、中国への投資や貿易を思いとどまらせる可能性があります。

全体として、改正反スパイ法は、中国での投資環境に悪影響を及ぼす可能性があります。投資家や企業は、これらのリスクを認識し、中国への投資を慎重に判断する必要があります。

これだけ弊害がありながら、中国政府が外資系コンサルタントの摘発を強化するのは、いくつか理由があるのでしょうが、やはり中国の金融システムの脆弱性を隠したいという意図もあるのではないでしょうか。それだけ、中共はこの脆弱性を表には出したくないのではないかと思われます。

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