2023年5月16日火曜日

電気料金、6月から14~42%値上げへ…平均家庭で月1000円超の負担増―【私の論評】電気料高騰は、誰にとっても身近な問題。岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱に(゚д゚)!

電気料金、6月から14~42%値上げへ…平均家庭で月1000円超の負担増

 経済産業省は16日、電力大手7社が申請した家庭向け電気料金の値上げについて14~42%の引き上げを認可する方針を固めた。各社は6月1日から料金を見直す見通しだ。平均的な使用量の家庭で7月請求分の電気料金は、6月分に比べて1000円を超える負担増となる見込みだ。

 政府が16日朝の物価問題を議論する関係閣僚会議で、東京電力など7社が申請した、家庭向け契約の多くを占める「規制料金」の値上げ幅を決める査定方針案を了承した。査定方針に基づき、西村経産相が今週にも値上げを正式に認可する。


 値上げは、中部、関西、九州の3電力を除く大手7電力が申請していた。経産省によると、値上げ率は、各社が当初申請した28~48%から4~14ポイント縮小した。経産省が有識者会議で値上げ幅の査定方法を議論した結果、燃料費や修繕費、業務委託費などを切り詰めた。また、申請当初に比べて値下がりした燃料価格も考慮した。

 西村経産相は16日の閣議後記者会見で、「前例にとらわれず極めて厳格な査定を行った」と述べた。

 実際の電気料金の値上げ幅は、各社が今後詰めるが、月1000円を超える見込みだ。

 一方、経産省は、電力各社が値上げを申請した昨年11月に比べると、料金負担は軽くなるケースが多いとしている。今年に入って以降、政府が電気料金を抑える負担軽減策などを講じているためだ。具体的には、平均的な使用量の家庭の7月請求分の電気料金は、北陸電力と沖縄電力を除く5社で、申請前の時点に比べて値下がりとなる。

 電力大手は、燃料費の高騰などに伴う経営環境の悪化を受けて、昨年11月以降、東北、北陸、中国、四国、沖縄が今年4月から、北海道、東京が同6月からの値上げを申請した。しかし、申請前後で、電力大手の間で顧客情報の不正閲覧問題や事業者向け電力販売でのカルテル問題など不祥事が相次ぎ発覚した。不信感の高まりを踏まえ、政府が電力会社に値上げ幅の再検討を要請したほか、消費者庁が経産省に厳しくチェックするよう求めていた。

【私の論評】電気料高騰は、誰にとっても身近な問題。岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱に(゚д゚)!。

東京電力など電力大手7社の家庭向け規制料金の値上げ申請を巡り、有識者が経済産業省に説明を求める会合が10日、消費者庁で開かれた。経産省側は、カルテルなどの不祥事が電力業界の高コスト体質に影響した可能性があるとの認識を示しました。

会合は3回目。有識者はこれまで、電力業界のカルテル問題や顧客情報の不正閲覧などの不祥事が値上げ幅に影響した可能性を指摘し、経産省に説明を求めていました。

この日の会合では、経産省側が、不正の影響があったとした上で「厳しい査定が必要」と説明しました。有識者は、認可後もコストの効率化や不正が電気料金へ与えた影響を検証するよう求めました。

経産省がカルテルなどの不祥事が電力業界の高コスト体質に影響した可能性があると認識した根拠は、以下のようなものです。

  • 2012年に発覚した電力小売業者の燃料費調整制度に関するカルテル事件。この事件では、電力小売業者9社が燃料費調整制度のルールを操作し、不当に利益を得ていたことが発覚しました。
  • 2013年に発覚した電力会社による顧客情報の不正閲覧事件。この事件では、東京電力を含む複数の電力会社が、顧客の個人情報を不正に閲覧していたことが発覚しました。
  • 2016年に発覚した電力会社による原子力発電所の安全対策費の不正計上事件。この事件では、東京電力を含む複数の電力会社が、原子力発電所の安全対策費を不正に計上していたことが発覚しました。
これらの不祥事は、電力業界における競争の不公正や、コストの不透明化につながり、電力料金の高騰の一因となったと考えられます。

また、電力業界は規制産業であり、新規参入が難しいことも、高コスト体質の一因となっています。

電力業界の高コスト体質を改善するためには、競争を促進し、コストの透明化を図ることが重要です。また、新規参入の規制緩和も必要です。

以下に主要国の電力料金の国際比較のグラフを掲載します。

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グラフでみてもわかるように、日本の電気料金は、世界でも高い水準にあります。

電気料金の高さは、日本経済に様々な影響を及ぼしています。まず、電気料金の高騰は企業のコスト増につながり、企業の収益を圧迫しています。また、電気料金の高騰は家計の負担も増やしており、消費の低迷につながる可能性があります。さらに、電気料金の高騰は、脱炭素化への移行を困難にする可能性もあります。

今後も日本の電気料金は高止まりが予想されています。これは、世界的なエネルギー価格の高騰や、再生可能エネルギーの導入コストの上昇などが原因です。電気料金の高騰は、日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があるため、政府は対策を講じる必要があります。

また、原発の稼働が進んでいないことにも原因があると考えられるでしょう。

2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本では原発の稼働が停止し、電力供給の一部を補うことができなくなりました。そのため、電力会社は石炭や天然ガスなどの他の燃料に切り替えざるを得なくなり、電気料金が上昇しました。

福島第一原発の制御室

また、原発は安定した電力供給源であるため、原発の稼働が停止したことで、電力供給の安定が悪化しました。これにより、電力会社は電力不足に備えて、電気料金に余裕を持たせざるを得なくなり、電気料金が上昇しました。

近年、日本では原発の再稼働が進められていますが、それでも原発が震災前の稼働率に戻るには時間がかかるでしょう。そのため、今後も日本の電気料金は高止まりが続く可能性があります。

具体的な稼働の遅れに関して事例をいくつかあげます。

  • 東北電力女川原発2号機:2012年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 関西電力高浜原発1号機:2015年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 九州電力玄海原発3号機:2016年に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処が立っていません。
  • 泊原発には、3基の原子炉があります。2013年7月に再稼働の申請を行ったものの、2023年現在も再稼働の目処がたっていません。

泊原発、再稼働すれば、北海道の電力供給の逼迫は確実に解消される

これらの原発は、いずれも新規制基準に適合していると認定されていますが、地元自治体の同意を得ることができず、再稼働が遅れています。また、原子力規制委員会による審査も厳格化されており、再稼働までに時間がかかっています。

岸田政権は、2021年にエネルギー基本計画を改定し、原発の再稼働を進める姿勢を打ち出しました。しかし、その後の状況を見ると、計画通りに進んでいるとは言い難い状況です。

まず、再稼働の申請が進んでいる原発の数は、計画した数を下回っています。計画では、2030年までに30基の原発を再稼働させるとしていました。しかし、現在、再稼働の申請が進んでいる原発は19基にとどまっています。これは、原発の再稼働に反対する声が根強く、地元の同意が得られないことが原因です。

また、再稼働が進んでいる原発についても、計画通りに再稼働できるかどうかは不透明です。例えば、関西電力高浜原発の再稼働は、2022年11月に地元の同意が得られました。しかし、原子力規制委員会の審査は遅れており、2023年中の再稼働は難しいと見られています。

このように、岸田政権の原発再稼働計画は、計画通りに進んでいるとは言い難い状況です。これは、原発の再稼働に反対する声が根強く、地元の同意が得られないことが原因です。また、原子力規制委員会の審査も遅れているため、原発の再稼働が遅れる可能性もあります。

これらの原発が再稼働すれば、日本の電力供給の安定に大きく貢献する可能性がありますが、現時点では再稼働の目処は立っていません。

私自身は、原発反対派が新しく既存のタイプの原子力発電所を設置することに反対することに関しては、ある程度理解できなくもありません。

しかし、すでに稼働していて、それを地震や津波などの被害で、一時的に稼働を廃止した原子炉についても、全部廃炉にしろというような意見には、とても同意できません。

なぜなら、原子力発電所は、廃炉を決定したとたんに安全になるわけではないからです。原子力発電所の廃炉を決定することは、施設の安全な閉鎖と解体を確実にするために、慎重に計画され管理されたプロセスの最初のステップに過ぎません。

放射性物質の存在に関連するリスクを軽減し、安全上の懸念に対処するための一連の行動や対策が含まれます。廃炉は複雑で時間のかかるプロセスであり、慎重な計画、実施、規制要件の遵守が必要です。作業員、公衆、環境を守るため、廃止措置の全過程において安全への配慮が重要であることに変わりはありません。

経済合理性から考えると、廃炉にしようが、しまいが危険であることには変わりなく、であれば、安全性が確保できたとみられる原発に限ってはすみやかに稼働させるべきと思います。電気料が高騰し続ければ、産業界からも国民からもこういう声が大きくなっていくことでしょう。

さらに日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。このような自然災害が発生した場合、電力供給が不足し、停電が発生する可能性があります。あるいは、電力需要が大きい時間帯には計画停電をせざるを得ない状況に追い込まれことも十分にあります。

2018年の北海道胆振東部地震では、北海道全域で停電が発生しました。この停電は、東大日本震災により原発の危険が認識され、安全点検などのため停止しされていたため、電力供給が不足したことが原因です。

もし、このまま原発の再稼働がされず、自然災害が発生した場合、全国各地で停電が発生する可能性があります。これは、日本は火力発電に依存しているため、自然災害によって発電所が停止すると、電力供給が不足するからです。

また、日本は人口密度が高く、送電線の整備が進んでいないため、停電が広範囲に及ぶ可能性があります。

全国各地で停電が発生すると、交通機関が停止し、生活に必要な物資が行き渡らなくなる可能性があります。また、病院や学校も停止する可能性があるため、人命にも危険が及ぶ可能性があります。

このような危機を回避するためには、原発の再稼働を進め、電力供給の安定化を図る必要があります。また、送電線の整備を進め、停電の拡大を防ぐ必要があります。

さらに、停電に備えて、家庭や企業が自家発電設備を導入することも重要です。自家発電設備があれば、停電時でも電気を供給することができるため、生活に大きな支障をきたすことを防ぐことができます。ただ、これも一時しのぎにすぎす、やはり安定的な電力供給をしていく必要があります。

岸田政権には、これらの課題に真正面から取り組み、電気料の問題をなるべくはやく解決していただきたいです。電気料に関しては、誰にとっても身近な問題であり、これに対して岸田政権が真摯にむきあわなければ、これが政権のアキレス腱になりかねないと思います。

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