2023年5月15日月曜日

ウクライナ復興100兆円超必要―【私の論評】海外支援は気前よく、国内で何かするとなると、「財源=増税」というのは変という感覚は正しい(゚д゚)!

ウクライナ復興100兆円超必要

シュミハリウクライナ首相

 ウクライナのシュミハリ首相は4日、同国がロシアの侵攻で受けた被害の復興計画に必要な資金が「既に7500億ドル(約101兆7千億円)に上ると見積もられている」とし、資金源として各国が凍結したロシア政府や同国の新興財閥オリガルヒの資産を没収し、これを充当するよう訴えた。スイス南部ルガノで開かれた「ウクライナ復興会議」での演説で述べた。

 凍結したロシア資産をウクライナ復興に利用する案は、各国の法制度上の取り扱いなど解決すべき課題が多く、実現に向けたハードルは高い。

【私の論評】海外支援は気前よく、国内で何かするとなると「財源=増税」というのは変という感覚は全く正しい(゚д゚)!

岸田首相

政府は15日、ロシアの侵攻が続くウクライナの経済復興に向けた関係省庁による準備会議(議長・木原誠二官房副長官)の初会合を首相官邸で開いた。19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に先立ち、ウクライナ復興を重視する姿勢を内外に示す狙いがあります。

交通機関や電気、通信などのインフラ復旧、産業振興の具体策を検討。岸田文雄首相は冒頭あいさつで「復興は日本ならではの貢献の柱だ。ウクライナ復興には、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の未来が懸かっている」と強調しました。

岸田政権は、ウクライナ復興にかなりの額の支援もすることになるでしょう。100兆円を世界中の国々で分割して支援するしても、おそらく日本は数兆円程度の支援が求められることになるでしょう。

実際、岸田文雄首相は、就任以来、多くの国に支援を表明してきました。以下は、その一例です。
  • 2021年10月、岸田首相は、インド洋・太平洋地域における気候変動対策のために、5年間で1兆円を拠出すると発表しました。
  • 2021年11月、岸田首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国への支援強化を表明し、5年間で1兆円を拠出すると発表しました。
  • 2022年1月、岸田首相は、ウクライナへの人道支援として、1億ドル(約110億円)を拠出すると発表しました。
  • 2022年2月、岸田首相は、フィリピンへの支援強化を表明し、5年間で2,000億円を拠出すると発表しました。
これらの支援は、岸田首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想の一環として行われるものであり、日本が地域の安定と繁栄に貢献する姿勢を示すものです。また、岸田首相は、これらの支援を通じて、日本が世界的なリーダーとして発信力を高めていきたいと考えていることも明らかです。

しかし、これらの支援は、国内の課題を解決するために使われるべきだという批判もあります。実際、日本では、物価高騰や少子高齢化など、多くの課題が山積しています。そのため、岸田首相は、これらの支援をどのように説明していくのか、難しいかじ取りを迫られることになるでしょう。

私自身は、こうした支援自体を否定するつもりはありません。ただ、こうした海外への支援への拠出に関しては、気前よく行うのに、なぜか国内では、防衛増税とか子育て支援ということになると、すぐに「安定財源=増税」という言葉がでてくることには疑問を感じます。

「今後の海外支援をスムーズに行うため、増税を行うべきだ」という言葉等聞いたことがありませんし、もしそのようなことを言えば、さすがに国内から大バッシングを受けるのは必定でしょう。とこが国内の施策となると、必ずといっていいほど「財源はどうする」「財源は増税」ということになります。

無論海外支援と、子育て支援や防衛費の増額など国内の施策に用いられる資金を比較すれば、国内の施策のほうが金額は大きいです。しかし、海外に拠出する資金はドル建で行うでしょうし、拠出した資金は、海外にでていくわけですから、日本国内で行う防衛費増や子育て支援などのように、日本国内に還元されそれがまた税金として政府に戻ってくることはありません。

海外支援そのものは、直接的に日本に経済的メリットをもたらすものではありません。そのため、海外支援に関しては、たとえ少額であっても、負担は大きいはずです。

私が言いたいのは、海外支援に関しては、政府も野党なども「財源は」ということにはならないのに、子育て支援とか、防衛費増額となど国内のことになるとすぐにいわゆる「財源論」がでてきて、結局消費税の増税などが論議されることになります。

はなはだしい例は、あの復興税です。復興のための資金を、増税で賄ったなどというのは、古今東西を調べても、日本の復興税だけです。岸田首相は、「復興は日本ならではの貢献の柱だ」だと語っており、これには東日本大震災の復興が念頭にあるのでしょうが、復興を増税で賄ったという点では、これはウクライナ復興の参考にはなりません。

日本の復興税のように「ウクライナ復興」は増税で賄うべきなどと主張したら、世界中から失笑され、不興を買うのは目にみえています。ウクライナも当然反発するでしょう。世界では不興を買うようなことが、日本国内では平然と行われてきたといえます。

海外に対して岸田政権が気前よく拠出金を支出できるのには、それなりの背景があります。これは、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
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これは、今年4月29日の記事です。2022年度の税収は確実に予定より上ブレしそうです。しかも、6.8兆円の上ブレになりそうです。それに関する内容とグラフを以下に掲載します。
期防衛力整備計画の財源を毎年度予算で対処することは可能であり、しかも、国の一般会計税収が大幅に増加していることからこれは確実にできます。

さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。 
一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)
背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。
しかも、これは今年だけのことではなく、このブログの他の記事にも示したように、2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となり、2022年にはさらにこれを更新するのです。

この潤沢な税収により、岸田政権は気前よく海外支援金を拠出できるわけです。ただ、こうした状況ですから、増税などはしぱらくすべきではないです。

そもそも、高橋洋一氏の試算によれば、日本では、需給ギャップが20兆円はあるとされています。これは、内閣府の試算よりは、若干大きいですが、それにはカラクリがあります。ただ、ここでは、それは説明しません。興味のある方は、高橋洋一氏の記事などに当たって下さい。

需給ギャップ20兆円、今の日本は20兆円の需要不足があるわけですから、このギャップを埋める必要があるわけです。ということは、政府が20兆円の国債を発行し、それを日銀が買い取れば、政府は20兆円の資金を得ることができ、さらにそれを子育て支援や防衛費増税にあてたとしても、インフレになることはないのてす。

普通の感覚の人だと、海外支援は気前よくやって、国内で何かするというとすぐに「財源=増税」となるのはおかしいと思うに違いありません。この感覚は、全く正しいです。

破壊されたウクライナの建物

岸田政権が正しい政策をすれば、ウクライナに対して支援をしても国民から不満が出ることないでしょうが、国内で増税、ウクライナには気前よく支援ということになれば、国民の怒りは頂点に達することになるでしょう。

岸田政権は正しい経済運営を行い、ウクライナにも支援をして、日本が世界的なリーダーとしての発信力を高めていくようにすべきです。

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