2023年5月17日水曜日

ウクライナが「キンジャール」6発撃墜と発表、ロシアが迎撃不可能とうたう極超音速兵器―【私の論評】全ての防空システムを貫通できるとロシアが豪語していたキンジャールの性能は否定された(゚д゚)!

 ウクライナが「キンジャール」6発撃墜と発表、ロシアが迎撃不可能とうたう極超音速兵器



 ウクライナ軍は、極超音速ミサイル「キンジャール」6発を含むロシアのミサイル18発を迎撃したと発表した。この発表が事実なら、ロシアがかつて迎撃は不可能な「超兵器」と豪語していたキンジャール(ロシア語で「短剣」の意)ミサイルに対する、新たに配備された西側の防空網の有効性を示すことになる。

 キンジャールミサイルとはどんな兵器で、その撃墜は何を意味するのだろうか。

 これは、ミサイルの残骸が落下した現場を撮影したとされる写真。残骸落下に伴い3人が負傷したという。


 キンジャールは音速の10倍で飛行できるとされ、それゆえ極超音速ミサイルと呼ばれている。一方ロシア国防省はキンジャールが、ウクライナに最近配備された米国製のパトリオット防空システムを破壊したと主張している。

 ロシアのプーチン大統領は、キンジャールを北大西洋条約機構(NATO)に対抗できる「次世代兵器」だとたびたび述べている。射程は2000マイルで、核弾頭または通常弾頭を搭載することが可能だ。

 キンジャールが初めて公開されたのは2018年。ロシア国防省が公開したこの映像は、戦闘機から発射される様子を写したものだ。ロシアは、昨年ウクライナで初めて使用したとしているが、使用を認めたのは数回しかない。

 ウクライナ側は今月、パトリオットを使ってキンジャール1発を初めてキーウ上空で迎撃したと発表していた。これまでパトリオットによるキンジャールの迎撃は理論上のものでしかなかった。一度に6機を撃墜したことは、単にまぐれではなく、信頼できる防衛手段になり得ることを示唆している。

 ロシアが保有する極超音速兵器はキンジャールだけではない。海軍の艦船に搭載可能なツィルコンと呼ばれる極超音速巡航ミサイルも保有している。

【私の論評】全ての防空システムを貫通できるとロシアが豪語していたキンジャールの性能は否定された(゚д゚)!

ウクライナが「キンジャール」6発撃墜が事実ならパトリオットによる迎撃は「まぐれ」ではなく、全ての防空システムを貫通できると豪語していたキンジャールの性能は否定されたことになります。

ロシアがキンジャールは全ての防空システムを貫通できると豪語したことに対して、疑義を挟む人々はたくさんいます。代表的な人物をいくつか挙げます。

スウェーデンの防衛研究所の研究員であるミカエル・ペルソンは、「キンジャールは複雑なミサイルであり、迎撃が難しいことは事実です。しかし、不可能ではない」と述べています。

英国の王立国際問題研究所の研究員であるマーク・ガノンは、「キンジャールは非常に高速で機動性の高いミサイルですが、無敵ではありません。迎撃できる防御システムは存在します」と述べています。

米国の戦略国際問題研究所の研究員であるジェフリー・ルイスは、「キンジャールは脅威には違いありませんが、壊滅的な兵器ではありません。迎撃できる防御システムは存在します」と述べています。

これらの専門家は、キンジャールは確かに脅威ではありますが、無敵ではないと考えています。キンジャールは迎撃が難しいミサイルですが、不可能ではないし、壊滅的な兵器でもありません。キンジャールを迎撃できる防御システムは存在し、ウクライナ軍はキンジャールを撃墜できることを今回証明したのです。

キンジャールミサイルと従来の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の主な違いは、その推進システムと運用特性にあります。

キンジャールを搭載したMIG31

推進装置: 従来のICBMが液体燃料または固体燃料エンジンを使用しているのに対し、キンジャールミサイルは固体燃料ロケットエンジンを搭載しています。

発射プラットフォーム: キンジャールミサイルはMiG-31のようなロシアの戦闘機から空中で発射されるのに対し、従来のICBMは地上のサイロや移動式発射台から発射されます。

作戦範囲 :キンジャールは、従来のICBMに比べ、比較的短い運用距離です。従来のICBMが数千キロメートルの大陸間射程を持つのに対し、キンジョールは数百キロメートルまでの短距離精密攻撃用として設計されています。

速度:キンジャールも従来のICBMも超音速に達することができますが、具体的な速度はミサイルの種類と設計によって異なります。

ロシア北西部のプレセツク宇宙基地から発射される大陸間弾道ミサイル「サルマト」=2022年4月20日

つまり、キンジャールミサイルは空から発射され、射程が短く、精密な攻撃を目的とし、従来のICBMは地上から発射され、射程が長く、主に戦略的抑止のために使用されます。

キンジャールははるかに高速で飛行するため、従来の防空システムでは迎撃が困難とされてきました。また、キンジャールのもう1つの特徴は、非常に機動性が高いことです。キンジャールは、急旋回や急降下などの複雑な機動を行うことができるとされ。これにより、迎撃がさらに困難とされました。

ウクライナ軍がロシア軍のキンジャールを撃墜したことは、ウクライナ軍がロシア軍の最新兵器に対する防御力を備えていることを示しています。無論、これには米軍などの協力もあるでしょう。米軍などの哨戒機は日々ポーランドの上空などを飛行しウクライナの情報を収集しているでしょうし、監視衛星も情報収集し、これらをウクライナ側に伝えていることでしょう。

今回の撃墜はこうした米国などの支援も含めた結果によるものでしょうが、ウクライナがロシアの侵略に抵抗する能力を高めるという意味で、軍事的に大きな意味があります。

ウクライナ軍がキンジャールを撃墜できたことは、ウクライナ軍の士気の向上にもつながる可能性があります。ウクライナ軍は、ロシアの侵略に対して大きな苦戦を強いられており、兵士の士気が低下しているという報告もあります。キンジャールを撃墜できたことは、ウクライナ軍がロシア軍に立ち向かうことができることを示しており、士気の向上につながる可能性があります。

さらに、ウクライナ軍がキンジャールを撃墜できたことは、ロシアがウクライナに対して核兵器を使用できない可能性、使用したとしても撃墜される可能性を示しています。これは、ロシアがウクライナに核兵器を使用することを思いとどまらせるのに役立つ可能性があります。

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