国有海運大手、中国遠洋海運集団の大型コンテナ船 |
中国海関総署(税関)は4月13日、1~3月期の通関統計に関する記者会見を開催。そのなかで、「一帯一路」の沿線諸国と中国の貿易総額が3兆4300億元(約66兆5135億円)に達し、前年同期比16.8%増加したと明らかにした。
(訳注:一帯一路は中国を起点にアジア、欧州、南太平洋などを結ぶ広域経済圏構想。習近平国家主席が2013年に提唱した)
なかでも好調ぶりが目立つのが、中国からASEAN(東南アジア諸国連合)への輸出だ。1~3月の中国とASEANの貿易総額は1兆5600億元(約30兆6389億円)と前年同期比16.1%増加したが、そのうち中国からの輸出は同28%の伸びを記録した。
「ASEANでは中国製のアパレル、ベビー用品、(スマートフォンなどの)電子機器、家電製品など幅広い商品への需要が伸びている」。貿易振興団体の中国国際貿易促進委員会で展示会部門の責任者を務める熊粲欣氏は、財新記者の取材に対してそう解説した。
中東や南アメリカとの貿易も拡大している。「わが社ではサウジアラビア、メキシコ、ブラジル、トルコなどの新興国向けの貨物輸送量が(前年より)3割以上増加した」。中国の物流大手、環世物流集団の創業経営者の林潔氏は、そうコメントした。
トルコ経由でロシアへの迂回輸出も
例えばサウジアラビアでは、(インフラ開発などの)大型プロジェクトに巨額の資金が投入されつつある。「中国から大量の設備や資材の輸入が必要になっている」と、あるシンガポールの市場関係者は話す。
海関総署の月次通関統計では、2022年12月に中国からサウジアラビアに輸出されたパワーショベルの総額が6792万ドル(約90億6400万円)に達し、過去最高記録を更新した。
貿易の動きの変化からは、ロシアのウクライナ侵攻の長期化による影響も読み取れる。前出の林氏は、トルコ向けの輸出が拡大している背景について「ロシアが輸送ルートを変更し、大量の貨物がトルコを経由して黒海沿岸のロシアの港に運ばれている」との見方を示した。
一帯一路の沿線諸国とは対照的に、アメリカやヨーロッパと中国の貿易は低迷が続いている。欧米の個人消費の回復が遅れているためだ。1~3月期の中国からアメリカへの輸出額は前年同期比17.0%、EU(欧州連合)への輸出額は同7.1%の減少となった。
中国で2つの異なる景気回復ペース、見通し巡り懸念強まる―【私の論評】中共はアベノミクスのような異次元の包括的金融緩和ができない!中国経済は、今後しばらく低迷し続ける(゚д゚)!
フォンデアライエンが語ったEUの中国リスク回避政策―【私の論評】中国が人権無視、貿易ルール無視、技術の剽窃等をやめない限り、日米欧の対抗策は継続される(゚д゚)!(訳注:一帯一路は中国を起点にアジア、欧州、南太平洋などを結ぶ広域経済圏構想。習近平国家主席が2013年に提唱した)
なかでも好調ぶりが目立つのが、中国からASEAN(東南アジア諸国連合)への輸出だ。1~3月の中国とASEANの貿易総額は1兆5600億元(約30兆6389億円)と前年同期比16.1%増加したが、そのうち中国からの輸出は同28%の伸びを記録した。
「ASEANでは中国製のアパレル、ベビー用品、(スマートフォンなどの)電子機器、家電製品など幅広い商品への需要が伸びている」。貿易振興団体の中国国際貿易促進委員会で展示会部門の責任者を務める熊粲欣氏は、財新記者の取材に対してそう解説した。
中東や南アメリカとの貿易も拡大している。「わが社ではサウジアラビア、メキシコ、ブラジル、トルコなどの新興国向けの貨物輸送量が(前年より)3割以上増加した」。中国の物流大手、環世物流集団の創業経営者の林潔氏は、そうコメントした。
トルコ経由でロシアへの迂回輸出も
例えばサウジアラビアでは、(インフラ開発などの)大型プロジェクトに巨額の資金が投入されつつある。「中国から大量の設備や資材の輸入が必要になっている」と、あるシンガポールの市場関係者は話す。
海関総署の月次通関統計では、2022年12月に中国からサウジアラビアに輸出されたパワーショベルの総額が6792万ドル(約90億6400万円)に達し、過去最高記録を更新した。
貿易の動きの変化からは、ロシアのウクライナ侵攻の長期化による影響も読み取れる。前出の林氏は、トルコ向けの輸出が拡大している背景について「ロシアが輸送ルートを変更し、大量の貨物がトルコを経由して黒海沿岸のロシアの港に運ばれている」との見方を示した。
一帯一路の沿線諸国とは対照的に、アメリカやヨーロッパと中国の貿易は低迷が続いている。欧米の個人消費の回復が遅れているためだ。1~3月期の中国からアメリカへの輸出額は前年同期比17.0%、EU(欧州連合)への輸出額は同7.1%の減少となった。
【私の論評】中国の一帯一路地域との貿易は速いペースで成長しているが、欧米との貿易の減少を完全に補うには十分ではない(゚д゚)!
上に提示されている数字からすると、中国の一帯一路沿線諸国との貿易は、減少している米国やEUとの貿易に比べ、確かに速いペースで伸びているように見えます。
2021年1~3月の中国の対米輸出額は904億2000万米ドルで、2020年の同時期から17%減少しています。一方、同期間の中国の対EU輸出額は853億1000万ユーロ(約1037億6000万米ドル)で、前年同期比7.1%減となりました。
一方、同期間の中国の一帯一路沿線諸国との貿易総額は3兆4300億元(約5288億ドル)に達し、前年比16.8%増となりました。
この成長率は素晴らしいものですが、注目すべきは、中国の米国とEUを合わせた貿易額が、一帯一路地域との貿易額をまだはるかに上回っていることです。2021年第1四半期において、中国の輸出総額のうち、米国とEUへの輸出が約30%を占めるのに対し、一帯一路地域への輸出は約14%でした。
したがって、中国の一帯一路地域との貿易は速いペースで成長していますが、米国とEUとの貿易の減少を完全に補うには十分ではないようです。米国とEUは中国の輸出にとって重要な市場であることに変わりはなく、これらの地域との貿易に大きな変化があれば、中国経済全体に大きな影響を与える可能性があります。
さらに、一般的に、米国とEUはハイテク製品の輸出入に制限を設けていますが、通常の商業製品の輸出入には制限を設けていないというのが実情です。
実際、私は2020年の大統領選に用いられた、トランプ応援用のハットを持っていますが、それには「Made in Chaina」のタグがついています。これは、米国内で製造すると高くなるので、中国から輸入しているのでしょう。
トランプ応援用のMAGAハットを被る女性 |
米国とEUはともに、特定の機密技術の他国への移転を制限することを目的とした輸出管理制度を有しています。これらの輸出規制は、国家安全保障を守り、大量破壊兵器の拡散を防ぐことを目的としています。
米国の輸出管理制度は、商務省、国務省、国防総省を含む複数の機関によって運営されています。米国の輸出管理制度は、半導体などのハイテク製品、暗号化技術、ある種のソフトウェアなど、広範な商品、ソフトウェア、技術を対象としています。
同様に、EUにも独自の輸出管理制度があり、欧州委員会によって管理されています。EUの輸出管理制度も、デュアルユース品(民生と軍事の両方に応用できる品目)、拷問などの人権侵害に使われる可能性のある品目など、幅広い商品、ソフトウェア、技術を対象としています。
しかし、これらの輸出管理制度は、すべてのハイテク製品の輸出入を制限しているわけではないことに注意が必要です。機密性が高く、軍事的な応用が期待できる特定の種類のハイテク製品だけが、こうした規制の対象となります。家電製品や家庭用電化製品などの一般的な商用製品は、一般的にこれらの輸出規制の対象とはならず、自由に輸出入することができます。
とはいいながら、スマホなどの半導体の最新のものは、デュアルユース品とみなされ、制限の対象になります。最新の半導体製造装置などもそうです。
ただ、これらの制限はハイテク製品に限らず、強制労働を使用して生産されたものを含む他の商品やサービスにも適用される可能性もあります。
例えば、2020年9月、米国は、ウイグル族のイスラム教徒に対する強制労働や人権侵害の懸念を理由に、中国新疆ウイグル自治区からの綿花やその他の製品の輸入を禁止しました。この禁止措置は、特に綿花の主要生産地であり、中国における強制労働の主要な発生源である新疆ウイグル自治区からの製品を対象としました。
綿花の摘み取り作業をするウィグル人の子ども |
同様に、EUも中国との貿易関係において、強制労働に対処するための措置を講じています。2021年3月、欧州議会は、特にソーラーパネルやその他の再生可能エネルギー製品の生産に関連して、中国における強制労働に対処するための対策強化を求める決議を採択しました。
同決議は、欧州委員会に対し、強制労働を使用して生産された商品に対する輸入制限を課すことを検討すること、および中国から商品を輸入する企業が人権侵害に加担していないことを確認するためのデューデリジェンス規制を導入することを求めました。
したがって、米国と欧州は中国とのハイテク製品の貿易に制限を設けていますが、これらの制限はハイテク製品に限定されるものではなく、強制労働を使用して生産された商品や人権侵害に関連する他の商品・サービスにも適用される可能性があります。
現状では、一帯一路の沿線国の貿易が伸びても、欧米との貿易を代替できるほどにはならないのは確かです。今でも欧米との貿易が減少することは、中国経済に悪影響を及ぼすことになります。
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