2024年5月17日金曜日

日本 アメリカ 韓国の海保機関が初の合同訓練へ 中国を念頭か―【私の論評】アジア太平洋地域の海上保安協力と中国海警局の動向

 日本 アメリカ 韓国の海保機関が初の合同訓練へ 中国を念頭か

まとめ

  • 日本、アメリカ、韓国の海上保安機関が来月上旬に日本海で初の合同訓練を行い、中国の海洋進出に対応するための連携を強化する。
  • この訓練は捜索と救助の手法や能力の確認を目的とし、3か国は将来的に東南アジアや太平洋島しょ国の海上保安機関とも連携していく方針です。
日米韓首脳会議

 日本、アメリカ、韓国の海上保安機関が来月上旬に初の合同訓練を日本海で行う予定です。

 これは、中国の海洋進出を念頭に置いた連携強化が目的です。訓練は福井県と京都府沖で行われ、日本の海上保安庁、アメリカの沿岸警備隊、韓国の海洋警察庁が参加し、捜索と救助の手法や能力を確認します。

 先月には3か国の海上保安機関が連携強化の文書に署名しており、今後も東南アジアや太平洋島しょ国への支援で協力する方針です。去年の首脳会談で「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力が確認されており、中国を念頭に置いた連携強化が進められています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】アジア太平洋地域の海上保安協力と中国海警局の動向

まとめ
  • 日本の海上保安庁は、アジア太平洋地域での国際的な捜索救助や海賊対策訓練に参加し、他国との協力を深めている。
  • 米国の沿岸警備隊は、南シナ海での航行の自由作戦や違法漁業対策、フィリピンやベトナムへの海上保安支援を行い、地域の安全保障に貢献している。
  • 韓国の海洋警察庁は、災害支援や国際共同訓練、不法漁業取り締まりを通じて、地域の海上安全保障と協力関係を強化している。
  • 中国海警局は、東シナ海や南シナ海での活動を活発化させ、準軍事組織として再編成され、他国との対立を引き起こしている。
  • 地域の対抗措置として、日米韓などの国々は海上法執行機関の活動を強化し、平和的手段で中国の現状変更の試みに対抗し、法の支配に基づく秩序維持を目指している。

日本の海上保安庁、韓国の海洋警察庁、米国の沿岸警備隊は、それぞれ自国の沿岸警備を主目的としていますが、合同訓練を行うことには大きな意義があります。

海上保安庁の巡視艦

まず、日本の海上保安庁について説明します。

同庁の艦船は、日本近海以外のアジア太平洋地域にも派遣されることがあります。例えば、他国の船舶や航空機が遭難した際には、国際的な捜索救助活動に参加するために艦船を派遣します。また、海賊対策や海上治安の向上を目的とした国際訓練や演習にも積極的に参加し、他国の海上保安機関との協力関係を深めています。これにより、海上保安庁は国際社会での海上安全と治安の維持に大きく貢献しています。

米国沿岸警備隊の艦艇

次に、米国の沿岸警備隊について見てみましょう。

米国の沿岸警備隊は、アジア太平洋地域におけるプレゼンスを大幅に強化しています。南シナ海での航行の自由作戦への参加や、太平洋の島しょ国での違法漁業対策の協力、フィリピンやベトナムなどの国々への海上保安能力構築支援などがその主な活動です。南シナ海では、中国の海洋進出や領土主張に対抗し、国際法に基づく自由な航行を実践しています。また、パラオ、フィジー、パプアニューギニアなどの島しょ国と協力し、違法かつ無報告無規制の漁業活動の監視と取り締まりを行っています。

フィリピンやベトナムでは、共同訓練や情報共有、捜索救助能力の向上を通じて現地の海上保安機関を支援しています。これらの活動により、米国の沿岸警備隊はアジア太平洋地域全体の海上安全保障、法の支配、持続可能な資源管理、域内協力の促進に大きく貢献しています。

韓国海洋警察の艦艇

韓国の海洋警察庁も同様に、アジア太平洋地域での活動を強化しています。

韓国の海洋警察庁は、自然災害支援や国際共同訓練、不法漁業取り締まりなどの活動を行っています。2013年のフィリピン台風災害時には救援物資の輸送と現地での捜索救助を支援し、RIMPAC(環太平洋合同演習)などの多国間合同訓練にも参加しています。

さらに、他国の海上保安機関と協力し、共同パトロールや情報共有を行うことで、地域全体での不法漁業対策と海洋資源保護にも貢献しています。これにより、韓国の海洋警察庁は、災害支援、訓練、取り締まり活動を通じて、アジア太平洋地域の海上安全保障と国際協力の強化に寄与しています。

中国の海警局の活動についても触れておく必要があります。

中国は、近年、東シナ海や南シナ海における領有権主張を強化し、海警局を準軍事組織として再編成しました。この改革により、中国海警局は人民解放軍海軍から装備や訓練、作戦指揮の支援を受けるようになりました。具体的には、中国海警局は国家移民管理総局から分離され、中央軍事委員会と公安部の共同統括下に置かれました。この改革の目的は、海上における法執行能力と軍民一体の対応力を強化することにあります。

中国海警局は、尖閣諸島周辺や南シナ海での活動を通じて領有権を主張しています。また、インドネシア周辺やマーシャル諸島近海でも活動しています。

例えば、2019年にはインドネシアの排他的経済水域(EEZ)内に中国海警局船が不法に入域し、操業中の中国漁船を護衛する事案がありました。2022年には、マーシャル諸島の排他的経済水域内で活動する中国海警局の船舶が確認されました。このように、中国海警局は自国近海に加え、東シナ海、南シナ海、インド洋、太平洋の広範囲で活動の場を広げており、他の沿岸国との対立が生じています。

これに対抗するため、アジア太平洋地域の国々は海上法執行機関の活動範囲を広げ、存在感を高めています。例えば、韓国は不法漁業対策を強化し、米国は航行の自由作戦を実施しています。これにより、中国の現状変更の試みに対抗し、地域の海上安全保障と秩序維持を目指しています。

つまり、中国海警局の活動が梃子となり、アジア太平洋諸国は地域に軍事的プレゼンスを高め、様々な協力を強化する必要に迫られているのです。日米韓などの国々が海上保安機関の活動範囲を広げ、地域での存在感を高めている主な目的は、中国による一方的な現状変更の試みに対抗することにあります。

ただし、こうした取り組みは、軍事的な侵攻や武力行使を意図したものではなく、共同訓練や海上パトロール、能力構築支援など、平和的手段による対応にとどまっています。アジア太平洋地域の国々の試みは、中国による武力的な一方的現状変更を抑止し、法の支配に基づく地域秩序を維持することを目指した、防衛的かつ抑制的な対応です。

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