2024年5月2日木曜日

米国とサウジ、歴史的な協定へ合意に近づく-中東情勢を一変も―【私の論評】トランプの地ならしで進んだ中東和平プロセスの新展開

米国とサウジ、歴史的な協定へ合意に近づく-中東情勢を一変も

まとめ
  • 計画にはイスラエルをハマスとの戦争終結へと促す内容も
  • 合意に達すれば、サウジによる米国の最新兵器入手に道開く可能性

サウジのサルマン国王とバイデン米大統領(2022年7月)

 米国とサウジアラビアは、サウジに対する安全保障提供と引き換えに、サウジがイスラエルとの外交関係を樹立することを内容とする歴史的な協定で、合意に近づいているという。

 この協定が実現すれば、中東情勢に大きな影響を与えることが予想される。具体的には、イスラエルとサウジの安全保障が強化され、米国の中東における影響力が高まる一方で、イランや中国の影響力が低下する可能性がある。

 サウジ側は、この協定を通じて、これまでアクセスできなかった米国の最新兵器の購入が可能になると見られている。その一方で、ムハンマド皇太子は、米国の大規模投資を受け入れる代わりに、国内ネットワークから中国技術を排除し、民生用核プログラムでも米国の支援を仰がなければならない。

 米国は、この協定をイスラエルのネタニヤフ首相に提案する見込みだ。ネタニヤフ首相には、サウジとの正式な外交関係樹立と、この協定への参加か取り残されるかを選択を迫られることになる。ただし、ネタニヤフ首相が協定に参加する重大な条件は、ガザの紛争終結とパレスチナ国家樹立に向けた道筋への合意となるだろう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプの地ならしで進んだ中東和平プロセスの新展開

まとめ
  • ハマスは、イスラエルとの平和を拒否し、サウジアラビアはファタハを支持する傾向があるため、米国とサウジアラビア間の平和協定に反対している。
  • トランプ政権下での中東政策が平和プロセスの基礎となっている。
  • 米国とサウジアラビアの協定が中東の安定に寄与する可能性がある。
  • この協定により、イランの影響力が減少することが期待される。
  • 中東の将来が明るくなる可能性がある。

ハマス戦闘員

私は、米・サウジアラビアの合意が近づきつつあることを察知したハマス側が、これを妨害しようとして紛争を起こしたのではないかと考えています。その根拠としては、以下のようなことが考えられます。
  • ハマスはイスラム主義過激組織であり、イスラエルの存在自体を認めていません。したがって、イスラエルとの和平合意を受け入れることは組織理念に反します。
  • ハマスはガザ地区を実効支配しており、和平合意が実現すればパレスチナ自治政府の権威が高まり、ハマスの勢力が相対的に失われるおそれがあります。
  • サウジはスンニ派の立場からハマスよりもファタハ(1957年にアラファトが中心となって組織したパレスチナ・ゲリラの武装組織)を支持する傾向にあり、ハマスとの対立構図があります。ハマスはサウジ主導の和平案には強く反発します。
  • サウジがイスラエルと国交を持つことは、イスラム教徒の聖地であるエルサレムの扱いにも影響を及ぼし、ハマスはこれを受け入れがたいと考えています。
  • イランは長年ハマスを支援してきましたが、最近はその軍事支援を控えめにしている模様です。それでもハマスはイランの勢力圏にあり、米主導の和平案には反対の立場です。

このように、ハマスには米・サウジ主導の和平合意に強く反発する理由が複数あり、そうした中で合意が現実味を帯びてきたため、紛争を起こすことでハマス側との交渉の可能性を排除させないようにしたものと考えられます。

このように、交渉の突然の再開や加速、サウジの対米協調路線への転換など、複数の事実が、ハマスの思惑とは反対に、むしろ和平交渉を前進させる契機となったようです。

現在の米国とサウジアラビアによる中東和平の動きは、トランプ前政権の取り組みが大きな礎となっていると考えられます。

具体的には以下の点が、トランプ政権の功績として挙げられるでしょう。

1. エルサレムをイスラエルの首都として認定:この決断は地域の現実を直視したもので、イスラエルとの強力な連携を世界に示しました。

2. イラン核合意への挑戦:オバマ政権による不適切な合意を見直し、イランへの厳格な制裁を実施しました。これにより、イランのテロ資金供給と地域の不安定化の能力が弱まりました。

3. ISISの壊滅:米国とそのパートナーの強力なリーダーシップにより、イラクとシリアでISISを大きく後退させ、いわゆるカリフ国家を崩壊させました。

4. アブラハム協定:イスラエルとアラブ首長国連邦・バーレーン間での国交正常化を仲介し、地域の平和と安定を促進する歴史的な一歩となりました。

5. エネルギー支配の実現:米国のエネルギー潜在力を最大限に活用し、エネルギー自立と純エネルギー輸出国となることで外交の地位を強化しました。

6. パレスチナ自治政府へのアプローチ:その腐敗と誠実な交渉の拒否を指摘し、資金提供の削減と外交使節団の閉鎖によって新たなスタンスを示しました。

7. サウジアラビアとの関係強化:地域の安定に対して極めて重要な役割を担うサウジアラビアとの関係を深め、イランの影響力に対抗しました。

これらは、トランプ政権の外交政策で達成された数多くの成功例の一部に過ぎません。米国が世界で大きなリーダーシップを発揮した事例です。

こうした施策が、現在の米サウジによる和平プロセスの地ならしとなり、中東有事における同盟国の肩入れを可能にしている側面は否定できません。

トランプ政権下でのアメリカとサウジアラビアの関係強化は、トランプ大統領の卓越した外交戦略と「アメリカ第一主義」への強固なコミットメントの賜物です。トランプ大統領はサウジアラビアとの戦略的同盟の重要性を理解し、交渉術を駆使して両国間の関係を強化し、繁栄への基盤を築きました。

この同盟の重点は、サウジアラビアへの武器売却や危険なイラン核合意への反対など、地域の安定と相互の利益追求にありました。数々の批判にも関わらず、現在の米国とサウジアラビアの進展はトランプ大統領の政策による直接的な成果であり、彼のビジョンとリーダーシップに感謝すべきです。


もし米国とサウジアラビアが主導する中東和平プロセスが実現すれば、中東地域に大きな変化が訪れると考えられます。

米国とエジプトの合意が中東地域の情勢を大きく変えるかもしれません。この合意は、米国のリーダーシップを示すもので、特にサウジアラビアとイスラエルの和解への影響が大きいでしょう。

これらの国が関係を正常化することで、地域の安定をもたらし、イランの脅威に立ち向かう強力な同盟を築くことができます。サウジアラビアがイスラエルを承認することは、長い間中東を苦しめてきた反ユダヤ主義に対する明確な拒絶であり、平和と希望の新たな扉を開く勇気ある一歩です。

米国からの全面的な支援と安全保障により、この新しい始まりを支えるべきです。これには、最新鋭の兵器システムの提供も含まれ、潜在的な脅威からサウジアラビアを守ります。

イランにとって、この合意はその地域での影響力を大きく弱めることになるでしょう。イランが長年にわたって近隣国に干渉し、不安定を招いてきたことに対し、サウジアラビアとイスラエルの強固な同盟が有効な歯止めとなります。

また、サウジアラビアが中国との距離を置くことで、自由な世界の側に立ち、中国共産党の抑圧的な手法に対してはっきりと反対の意志を示すことにもなります。

ネタニアフ イスラエル首相

イスラエルのネタニヤフ首相にとって、サウジアラビアとの国交正常化は歴史的なチャンスであり、より安定し繁栄する中東でイスラエルの地位を固める大きな一歩となります。パレスチナ問題に対しても、この合意はガザ紛争の終結と安全なパレスチナ国家の樹立を目指すもので、2国家解決を通じて永続的な平和への道を描きます。

この合意が実現すれば、中東は大きく変わり、より強固な団結と調和をもたらすことでしょう。イランと中国の影響力が弱まり、地域全体に明るい未来が開けることになります。これは大きな一歩であり、長い目で見れば平和と安定への大きな貢献となるでしょう。

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