2016年6月29日水曜日

【恐怖の原発大陸中国】南シナ海の洋上で中国製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ―【私の論評】中国の原発輸出は頓挫するが、南シナ海浮体原発は甚大な危機!核兵器持ち込みも(゚д゚)!

【恐怖の原発大陸中国】南シナ海の洋上で中国製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ

★(下)

この記事の★(上)は以下のリンクをご覧になってください。

【恐怖の原発大陸中国】中国の危うき原発事情 厳しい言論統制で事故のほとんどは隠蔽

建設中の広東省台山原発1号機
不具合が判明し、導入を決めていた各国がプロジェクトの見直しを余儀なくされている新型原子炉。それにもかかわらず、中国は安全検査の期間を短縮してまで稼働を急いでいる。その裏には「世界一の原発大国」という確固たる目標がある。

今年3月に開催された全人代で採択されたシーサンウー(第13次経済5カ年計画)では、2020年までに原発による発電量を現在の2倍以上となる5800万キロワットに増加させる方針が盛り込まれた。さらに2030年までに原発の稼働数と発電能力の両面で世界一となることも見据えている。

現在、7省1自治区に計31基の原発を稼働中で、さらに23基が新設中という中国だが、計画遂行のために今後、年間7~8基を新たに稼働開始させることが必要となり、かなりの突貫作業が求められることになる。

中国の建築現場ではこれまで、突貫作業や、おから(手抜き)工事が横行し、数々の悲劇を招いてきた。しかし、手抜きの対象が原発建設ともなれば、これまでの規模とは比べものにならない大惨事となる危険性がある。

不安だらけの中国製原発が新設されるのは自国領土内ばかりではない。『環球時報』によると、国有企業の中国核工業集団は、南シナ海の洋上に、小型原子炉をはしけで浮かべる浮体原子力発電所を20基敷設する計画を進行させている。目的は、海底に眠る原油の掘削に必要な電力を賄うことだという。設置費用は1基あたり30億元(約500億円)で、19年までの運転開始を目指す。

安全性に疑問の残る中国製原発がやって来るとあれば、南シナ海に面したフィリピンやベトナムなどの隣国にとっても、人ごとではない。

周囲の不安をよそに、中国がこれほどまでに原発の新設を急ぐ理由について、大手証券の中国人アナリストはこう話す。

「イギリスやルーマニアが、中国製の原子炉『華龍1号』の導入を決めたばかりだが、中国は今後さらに原発輸出に力を入れていくとみられる。特に、将来的にはアフリカの原発市場を見据えており、ケニアやエチオピア、ナイジェリアなど中国と経済的につながりの深い国々とはすでに商談を開始している。中国の原発の増設には、電力の安定供給という目的のほかに、国際市場で通用する技術と実績を獲得したいという思惑もある」

国を挙げての巨大ビジネスの影に、中国原発の安全性や事故の実態はますます覆いかぶされることになりそうだ。 =おわり

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき)

【私の論評】中国の原発輸出は頓挫するが、南シナ海浮体原発は甚大な危機!核兵器持ち込みも(゚д゚)!

上記には主に中国の原発の3つの危機が掲載されています。一つは、中国が世界一の原発大国を目指すというものです。2つ目は、南シナ海の海洋に浮体原子力発電所を20基施設するという計画が進行中であることです。最後の一つは国をあげての原発輸出です。

このうち、最後の一つである、国をあげての原発輸出に関しては、私自身はかなり失敗する確率が高く、実質上不可能であると見ています。

その根拠としては、中国が、海外の高速鉄道建設で次々と挫折しているという事実があげられます。

最近、中国共産党は、内需の不振から外需の取り込みを図ろうとしていました。最近の中国では国内での投資が一巡して、もう有力な投資先がほとんどないことから、投資による内需の拡大が望めない以上、どうしても外需に頼らざるを得ません。

その典型が海外への中国高速鉄道売り込みでした。しかし、その中国高速鉄道の売り込みは頓挫の一歩手前です。以下に4つの失敗事例を掲載します。

バンドン郊外で開かれた高速鉄道の着工式典に出席したジョコ大統領(左から2人目)
と中国鉄道公司の盛光祖社長(中央)ら=1月21日、インドネシア
まずは、インドネシアです。昨2015年、中国はインドネシアで我が国と高速鉄道の受注をめぐって激しい競争を行いました。

中国は、インドネシアに高速鉄道の建設を事業費55億米ドルの全額融資する、政府の債務保証は求めない等の丸抱えで請け負うという破格の条件で約束しました。ジョコ政権が、中国に建設を依頼しようと考えたのも無理はありません。

昨年9月、中国がインドネシア高速鉄道敷設(ジャカルタ―バンドンの全長約140km)を受注しました。そうして、2019年の開業を目指していました。

ところが、インドネシア当局は、まず、中国から提出された書類が(英語やインドネシア語ではなく)中国語で記載されていたので、事業契約が調印できませんでした。

また、中国とインドネシアの合弁会社が、一転して、事業失敗の際の保証をインドネシア政府に求めたのです。そのため、インドネシア側に、将来、負担を押しつけられるのではないかとの懸念が芽生えました。

今年2月、インドネシア当局は、その合弁会社に対し、地震対策を強化し、鉄道の耐用年数を60年間から100年間にするよう求めました。当局は、もしそれが改善されない限り認可を出さない方針です。

中国には技術力に限りがあるため、たとえ短い距離であっても、インドネシアで高速鉄道建設が困難に陥っています。

廃墟のようになったベネズエラ・サラサの高速鉄道関連工場
次に、ベネズエラです。同国でも、2009年、中国がティナコ―アナコ間全長400kmで、高速鉄道敷設を手がけました。この建設計画は75億米ドルで契約が交わされ、2012年に完成する予定だったといいます。

しかし、すでに同国からは中国人スタッフが消え、習政権は、その建設を放棄しました。そして、現場に残された金目の物は、現地住民に持ち去られたと伝えられています。

もともと、ベネズエラは電力不足に悩まされていたため、同国で高速鉄道を走らせるのには無理があったのです。

タイ国鉄115周年のイメージが華々しく描かれた未来のタイ高速鉄道
3番目は、タイですが、初め、中国の借款で高速鉄道敷設(バンコクを起点に5線。特に、バンコク―ナコーンラーチャシーマー間)を計画していました。ところが、タイ側が急に、一部資金を自前で賄うことにしました。

タイは、巨額な建設費を理由にして、中国に借款の金利引き下げや投資増額を要求しました。これに対し、中国側はタイの要求をのみ、金利を2%に下げました。

にもかかわらず、タイは中国の譲歩を受け入れず、自己資金で一部路線の建設を決めました。タイの高速鉄道も、先行きが不透明です。おそらく、これから中国に受注することはないでしょう。

ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道の
建設計画、赤い点線の部分に高速鉄道が走るはずだった
最後に、習近平政権は、米国でも高速鉄道(ロサンジェルス―ラスベガス間全長370㎞)の敷設契約を締結していました。ところが、今月、その契約が破棄され、米高速鉄道は白紙に戻っています。

同路線は昨年9月、米エクスプレス・ウエスト社と中国の国有企業「中国鉄路総公司」が率いる中国企業連合の合弁事業として、今年9月にも着工予定でした。

しかし、エクスプレス・ウエスト社は6月8日、合弁解消を発表した。その理由として、(1)米国では、中国企業連合による認可取得が難しい、(2)すでに工事に遅れが生じている、(3)米連邦政府が高速鉄道車両は米国内での生産を求めている、などです。

2日後、中国企業連合は新華社通信を通じて、米国側の一方的な合弁事業解消は、無責任であり、反対するとの声明を発表しました。

このところ失敗つ次の中国の高速鉄道輸出は、中国の国家戦略です。そうして、中国の経済圏構想である「一帯一路」実現の手段でもあります。そのため、中国は、採算性を度外視しているところがあり、ビジネスとして成立しにくいのです。このような杜撰なビジネス手法では、習近平政権は、おそらく今後も失敗を重ねるだけになることでしょう。

そもそも、高速鉄道の技術は中国にはありませんでした。元々は日本の新幹線の技術のパクリです。技術力がないにもかかわらず、無理をして受注するので、うまくいかないという面も否定できません。

結局、外国で鉄道を建設するにおいても、中国国内でのやり方しか知らず、地元の人民の意向など関係なく自分の都合で押し付けをするため、失敗してしまうのです。中国のアフリカ投資も同じような理由から、ことごとく失敗しています。

そのような中国が原発だけは、まともに実施するとは考えられません。原発に関しても、中国には高度な技術はありません。元々は旧ソ連からのパクリです。だから、海外に導入しようとしても、結局高速鉄道と同じような理由から大失敗するのは目に見えています。

しかし、中国国内や、南シナ海は他国とはまったくお構いなしに、自分の都合で原発を建築することができます。

実は、中国による南シナ海での洋上原発開発については、以前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【緊迫・南シナ海】中国が「海上原発」建設を計画 人工島に電力を安定供給―【私の論評】核戦争瀬戸際までいったキューバ危機の再来になる可能性も十分にあり(゚д゚)!
ロシアの浮体原子力発電所概念図
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事で浮体原子力発電所の長所、短所などとともに、中国による南シナ海への設置の危険性についても掲載しました。

その部分を以下に引用します。
しかし中国では、まだ習近平失脚の報道はなされないところから、習近平と反習近平派の権力闘争の決着はついていないようです。

そうなると、習近平にしても反習近平派としても統治の正当性を強調するためには、東シナ海や、南シナ海の手詰まり状況を打開する必要があります。

おそらく、今回の「海上原発」は、どちらの派閥からでてきたものかは、わかりませんが、そういった流れの中の一つであると考えられます。

とにかく、「海上原発」を南シナ海に派遣して、電力供給に成功したということになれば、中国内の評価は高まります。計画を発表したり、実際に着手するだけでもかなり効果があるかもしれません。これは、海軍力では日米に比較して、圧倒的に劣る中国の窮余の一策であると考えられます。 
本格的な軍事衝突では、全く勝ち目がないので、「海上原発」の派遣と、南シナ海軍事基地への電力供給ということで、中国国内に向けた示威行動の一つということが考えられます。

しかし、これはすぐにできることではありません。それなりに時間のかかることです。

とはいいながら、これを許せば、南シナ海は中国の実効支配が成立することになります。日米ならびに周辺諸国は絶対にこれを許すべきではありません。

日米ならびに周辺諸国は、南シナ海の中国の軍事基地を艦船や潜水艦で包囲し、「海上原発」派遣ならびにその他の補給物資の供給を絶つべきです。それを妨げようとする艦船、航空機に攻撃を加え、撃沈、撃墜すべきです。

日本としては、直接攻撃には加わることはできませんが、世界トップ水準の対潜哨戒活動に参加し、中国の艦船、潜水艦の位置を把握し、中国海軍を丸裸にして、米軍や周辺諸国に強力すべきです。

いまのところ、「海上原発」の建造スケジューなどはっきりしませんので、あまりマスコミでも報道されていませんが、これを中国側が本当に実施するならば、第二のキューバ危機のような様相を呈することになるかもしれません。
キューバ危機の折にソ連の貨物船の上空を飛行するアメリカ軍のロッキードP-3(1962年10月25日)
キューバ危機(キューバきき、英: Cuban Missile Crisis、西: Crisis de los misiles en Cuba、露: Карибский кризис)は、キューバを舞台に1962年10月14日から28日までの14日間に亘って米ソ間の冷戦の緊張が全面核戦争寸前まで達した危機的な状況のことを指します。

中国が南シナ海に「海上原発」を派遣したり、さらに軍事力を強化すれば、さすがにアメリカも黙ってはいないと思います。

及び腰オバマはもう、すでにレームダック化していますが、アメリカ議会や次期アメリカ大統領はこのようなことを傍観することはないでしょう。
そうして、南シナ海での中国の浮体原発の設置を許してしまえば、さらに恐ろしいことが考えられます。それは、中国で浮体原発を開発し、それを南シナ海に曳航するときに、核兵器も密かに運びこむということが考えられるということです。

20もの浮体原発を一度に運ぶにしても、次から次に順番に運ぶにしても、それとともに核兵器を移動されても、米国などによっても、それを外から検知することは非常に難しいということです。

外からではわからないので、米軍などが臨検しようにも、中国側はそれを拒否することでしょう。そうなると、秘密裏に核兵器を持ち込まれる可能性も十分あるということです。

南シナ海に中国が核兵器を持ち込んだとしたら、中国の南シナ海の実効支配は確実なものになります。それどころか、南シナ海を中心に、核兵器を背景に西太平洋への強引な進出が始まることになります。

そうして、これは本当に第二のキューバ危機のような状況を招くことになります。それも、欧米と比較すれば、日本やアジア諸国にとって大きな危機となります。そのようなことは絶対避けるべきです。

私は、中国が南シナ海に浮体原発を設置するのは、まだ先のことだと思っていましたが、上の記事では、19年までの運転開始を目指すということですから、3年後のことです。

このような拙速なやり方では、ただでさえ技術力のない中国が、まだどの国も実用化していない浮体原発を南シナ海に設置するということですから、放射能漏れや核物質の海洋への大量廃棄等の危険性も十分考えられます。世界は、何らかの方法でこれを阻止しなければなりません。

南シナ海浮体原発は、それだけ危険なものであることを私達はしっかりと認識しなければなりません。゜

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2016年6月28日火曜日

【メデイアで報道されなかった事件】東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動―【私の論評】日本は、南シナ海の轍を踏むな(゚д゚)!

東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動

中国機のミサイル攻撃を避けようと、自衛隊機が自己防御装置作動

フィリピン海に展開した米空母ジョン・C・ステニス(2016年6月18日)
6月9日、中国海軍ジャンカイ級フリゲート艦1隻が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。これまで公船(海警)が接続水域や領海に侵入してくることは、しばしばあったが、中国海軍が尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは初めてである。

その6日後の15日、今度は中国海軍ドンディアオ級情報収集艦が口永良部周辺の領海を侵犯した。2004年、中国海軍漢級原子力潜水艦が先島諸島周辺の領海を侵犯して以来、2回目の事案である。

中国国防省は「トカラ海峡は『国際航行に使われている海峡』で、自由に航行できる」と正当性を主張している。だが日本政府「屋久島や奄美群島付近のトカラ海峡は国際的な船舶航行がほとんどなく、国連海洋法条約で定める『国際海峡』には該当しない」と反論し懸念を示した。

国際法上、領海内の無害通航は認められている。ただ中国は自国の領海においては、「無害通航」についても事前承認を求めている。今回はダブルスタンダードの非難を避けるために、あえて「国際海峡」を主張したものと思われる。

  一触即発の東シナ海上空

この時、日米印3カ国の共同訓練に参加するインド軍艦が航行しており、中国軍は共同訓練を監視する目的があったことは確かである。その翌日の16日、今度は沖縄・北大東島の接続水域に同じ中国海軍情報収集艦が侵入している。

これら海上の動きと合わせるように、東シナ海上空では、驚くべきことが起こりつつある。中国空海軍の戦闘機が航空自衛隊のスクランブル機に対し、極めて危険な挑発行動を取るようになったのだ。

東シナ海での中国軍戦闘機による米軍や自衛隊の偵察機への危険飛行は、これまでにもしばしば生起している。他方、中国軍戦闘機は空自のスクランブル機に対しては、一定の抑制された行動を取ってきたのも事実である。

武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内でまみえると、一触即発の事態になりかねない。そういうことに配慮してだろう、中国軍戦闘機は空自戦闘機とは一定の距離を保ち、比較的抑制された行動を取ってきた。

これまで中国軍戦闘機は東シナ海の一定ラインから南下しようとはせず、空自のスクランブル機に対しても、敵対行動を取ったことは一度もなかった。

だが今回、状況は一変した。中国海軍艦艇の挑戦的な行動に呼応するかのように、これまでのラインをやすやすと越えて南下し、空自スクランブル機に対し攻撃動作を仕かけてきたという。

攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという。

筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。まさに間一髪だったと言えよう。冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった。

日中共に戦闘機はミサイルを搭載し、機関砲を装備している。武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内で遭遇するわけである。戦闘機同士がいったん格闘戦に陥ると、空中衝突やミサイル発射に至る可能性は十分にある。

規律の厳格な空自戦闘機操縦者が先にミサイル発射することはまずあり得ない。だが中国空軍の戦闘機パイロットは経験も浅く、何をするか分からない。

2001年、海南島沖の公海上空を飛行中の米海軍EP-3電子偵察機に対し、中国空軍J-8戦闘機がスクランブルをかけ、挑発行動を取った挙句衝突したことは記憶に新しい。

  外交手段を取らない日本政府

今回の事例は極めて深刻な状況である。当然、政府にも報告されている。

だが、地上ではその深刻さが理解しづらいせいか、特段の外交的対応もなされていないようだ。だからニュースにもなっていない。問題は、こういった危険な挑発行動が単発的、偶発的に起こったわけでなく、現在も続いていることだ。

これら上空での状況は、海上での中国海軍艦艇の動きとは比較にならないくらい大変危険な状況である。政府は深刻に受け止め、政治、外交、軍事を含めあらゆる観点からの中国サイドに行動の自制を求めるべきである。

しかしながら、参議院選挙も影響してか、その動きは極めて鈍い。

なぜ今、中国は海上、航空の2つの領域でこういう挑発的な行動に出てきたのだろう。現段階で確たることは言えないが、偶発的事案とは言えないことだけは確かだ。

危機管理の要諦として「最悪」のシナリオを考えておく必要があるが、最悪のシナリオは、一言でいうと「中国が一歩踏み込んだ」ということだろう。

これまで中国は決して軍艦を尖閣諸島周辺の接続水域に侵入させたことはなかった。尖閣諸島の国有化以降、公船(海警)を侵入させて既成事実を積み上げてきた。

毎月3回、1回3隻の公船が尖閣諸島の領海を侵犯し、2時間居座った後、退去するという定型パターンを繰り返してきた。「3-3-2フォーミュラ」と言われるゆえんである。

「サラミ・スライス戦略」「クリーピング・エキスパンション」と言われるように、中国はこれまで、国際社会の批判を回避すべく、軍艦を出さずに、公船でもって既成事実を積み重ね、少しずつ少しずつ実効支配を我が物にしようとしてきた。

   狙いは空自戦闘機の駆逐

上空でも中国軍戦闘機によって抑制されてはいるが接近行動を繰り返してきた。だが、戦闘機による尖閣諸島の領空侵犯は一度もなかった。

ただこれを繰り返しても、国家の象徴たる軍艦や戦闘機を出さない限り、実効支配を完結することはできない。

いずれは、軍艦を尖閣諸島の領海に居座らせ、空自戦闘機を駆逐して中国戦闘機を自由に領空に留まらせることによって実効支配を完結させたいと機会を伺っていた。今回、その第1歩を踏み出す絶好のチャンスが到来したと判断したのではないだろうか。

G7が終わり、シャングリラ対話、そして米中経済戦略対話も終了した。いずれも南シナ海の埋め立てや領有権問題で中国は非難の矢面に立たされ、国際的に孤立した。この後、9月に北京で実施されるG20にはしばらく時間がある。この間を絶好のチャンスと捉えた可能性がある。

9月までに評判を回復すればいいのであって、今しばらくの間は、さらに国際的に非難されるような行動を取っても、大勢に影響はない。

また、フィリピンが提訴した国際常設仲裁裁判所の判断がまもなく示される予定である。中国はこの判断には従わない旨を既に公言している。だが、裁定が下されればさらに国際社会から糾弾を受けるだろう。

だが、100度の湯に100度の熱湯を加えても200度にはならないように、地に落ちた評判はそれ以上落ちることはない。失うものはないのであり、これは逆に絶好のチャンスでもある。

まさにピンチはチャンスとばかりに軍による領海侵犯、領空侵犯を常態化させる「最初の一歩」として、行動を開始したと考えたとしても不思議ではない。

もしこの最悪のシナリオが事実なら、今後、9月までの間、東シナ海の海上および上空で日中の小規模紛争が起きる可能性は極めて高い。事実、上空では毎日のように危険極まりない挑発的行動が続いているという。

自衛隊は引き続き毅然と対応しなければならない。だが、中国軍の挑発に乗ってはならない。また中国軍へ武力行使の口実を与えてはならない。

  中国の思う壺にならないために

さりとて、余計な刺激を避けようと、こちらが引くだけでは日本の弱腰を見透かされ、中国軍の行動はさらにエスカレートし、軍による実効支配が進んでしまう。まさに中国の思うつぼである。

2010年、中国漁船が海保巡視艇に衝突した際、時の民主党政権は漁船の船長を法律で裁くことなく国外退去させた。この結果、さらに中国の傍若無人な行動はエスカレートしたことを見れば分かる。

中国は今回、間違いなく一歩踏み出した。今、中国はこれらの動きに対する日本政府の反応を見ている。

上空での熾烈な戦いは今もなお続いている。もはや空自による戦術レベルの対応だけでは限界かもしれない。上空での中国軍の危険な挑発行動は、いち早くこれを公表し、国際社会に訴え「世論戦」に持ち込むことが必要である。

ことは急を要する。政治家はまず、ことの深刻さ、重要さを認識すべきである。今のまま放置すれば、軍による実効支配が進むだけでなく、悲劇が起きる可能性がある。

政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきである。英国のEU離脱への対応や参議院選挙も重要であろう。だが、この問題はそれと同等またはそれ以上に深刻なのだ。

【私の論評】日本は、南シナ海の轍を踏むな(゚д゚)!

上記の記事を読んでいるだけでは、日本は無防備のように感じられるかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、日本は日本なりにかなりの準備をしています。本日はそれについて掲載します。東シナ海および日本の南西諸島の防衛はどうなっているのかを以下に掲載します。

  南西諸島への備え

まずは、日本の南西諸島一体の地図を以下に掲載します。



南シナ海に滑走路を備えた人工島を造成する中国に対し、米海軍は艦船を派遣し、中国の海ではないとメッセージを送りました。しかし人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立しつつあるとの認識が広まっています。

1996年の台湾海峡危機の際、中国軍は急派された米空母の前に矛を収めざるを得ませんでした。その経験をもとに中国は、有事に米軍が戦力を投入できないよう、南シナ海、東シナ海、さらに西太平洋まで「内海化」することを狙っています。

中国の目標は南シナ海、さらに東シナ海で覇権を取ることだです。ここで、譲歩すれば中国の挑発的な行動を助長するだけになります。

このうち南シナ海が中国の勢力圏に入りつつある今、鹿児島県・大隅諸島から沖縄県・先島諸島を通り(日本の南西諸島)、マレーシアのボルネオ島まで連なる島々が、これまで以上に戦略的な重要性を帯びてきます。中国が「第一列島線」と呼び、米国に対する防御線と位置づけているラインです。
この地域にどのように自衛隊が配備されつつあるのか、以下に掲載します。
南西諸島への自衛隊配備計画 出展:米国議会調査局(2015年12月17日作成)
 上の表のように、南西諸島に監視部隊やミサイルを置いて抑止力を高め、有事には戦闘機や潜水艦などと連携しながら相手の動きを封じ込める戦略を、日本政府は「海上優勢」、「航空優勢」と表現している。しかし、安全保障政策に携わる関係者は、米軍の活動を制限しようとする中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否(Anti─Access/Area Denial、A2AD)」の日本版だと説明しています。

A2ADについては、詳細はここでは説明しません。詳細を知りたい方はwikipedia等をご覧になってください。

今後5、6年で第一列島線が日米同盟と中国の間の軍事バランスを左右することになるでしょう。


それまでに態勢を整備しようと、日本は第一列島線のうち、自国領内の南西諸島の軍事拠点化を進めています。 鹿児島県の奄美大島に550人、沖縄県の与那国島に150人、宮古島に700─800人、石垣島に500─600人の部隊を置く予定です。

これまで沖縄本島以南には、宮古島と久米島に航空自衛隊のレーダー基地がある程度でした。防衛省は、この空白地帯に警備部隊や監視部隊を編成することで、離島に侵攻された場合の初動態勢を整えると説明しています。

しかし、配備するのは警備や監視部隊だけではありません。奄美大島、宮古島、石垣島には対空・対艦ミサイル部隊も展開します。

旧ソ連の侵攻に備えて開発された射程180キロの地対艦ミサイルなら、沖縄本島と宮古島の間に横たわる350キロの宮古海峡もカバーできます。
中国が構築しているとされる軍事戦略・A2ADは、対空・対艦、弾道ミサイルを沿岸部や内陸に大量に配備。潜水艦や戦闘機などと連携し、有事に米軍の艦船や航空機を中国本土に近づけさせない、近づいても自由に活動させないことを狙っています。

人民解放軍は昨年9月の「抗日戦争勝利70周年」軍事パレードで、艦載機と合わせて50億ドルの米空母を破壊可能とされる対艦ミサイル「東風21D」を披露しました。

米議会は、中国が第一列島線を射程に収める短・中距離ミサイル1200発を保有していると分析しています。さらに中国は潜水艦を増強、レーダーを回避できる地上発射型の弾道ミサイルの開発にも取り組んでいます。

  航空優勢、海上優勢

南西方面の防衛力を強化する方針は、2012年末に発足した第2次安倍晋三政権にも引き継がれましたが、新たに策定された防衛大綱の中に「海上優勢」、「航空優勢」という単語が盛り込まれました。

この防衛大綱については以下リンクを御覧ください。

http://www.mod.go.jp/j/publication/kohoshiryo/pamphlet/taikou/taikou.pdf

敵の艦船や航空機の活動を制限した状態を指す軍事用語で、中国が構築を目指しているA2ADと同じ概念です。

日本は新型哨戒機や無人偵察機の調達のほか、潜水艦部隊を増強することを決定しました。ステルス性の高いF35戦闘機や新型輸送機オスプレイの取得、水陸機動団の新設も進めています。

平時の警戒監視を手厚くして軍事的空白を埋める一方、いざとなれば短時間で戦力を集中し、島に配備されたミサイル部隊と連携しながら、中国軍を東シナ海で自由に動けなくするのが狙いです。

中国海軍の動向を研究する米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授は、東シナ海から西太平洋にわたる海域で自衛隊が果たす役割の重要性を指摘しています。有事の際に中国軍の作戦を制限できれば、米軍の活動の自由度が増すだけでなく、米軍が来援する時間を稼げるとみています。

国防費を大幅に削減する一方、中東問題から抜け出せない米国が、一国で中国の膨張を止めることは難しくなりつつあります。アジア太平洋地域の友好国との関係強化が不可欠になっており、米海軍第7艦隊のアーコイン司令官は日本の動きについて、米軍の戦略を補完するものと指摘しています。

  運べなかったミサイル 

陸自の88式地対艦ミサイル
この構想は、今はまだ机上の構想にすぎません。1つ1つの島が小さな南西諸島には大規模な戦力を常駐させることはできないため、緊急時には本土から素早く部隊を移動させる必要があります。

輸送手段を持たない陸上自衛隊の部隊や装備を、航空自衛隊と海上自衛隊が効率的に運ぶ統合運用がカギを握ることになります。

昨年10月末から11月中旬に陸・海・空の統合訓練を行った自衛隊は、本土のミサイルを南西諸島に初めて空輸しようとしました。しかし、福岡県の築城基地から沖縄県の那覇基地まで、空自の輸送機が陸自の中距離ミサイルを運ぼうとしたところ問題が発生しました。

危険物の輸送方法を定める国連勧告に従い、陸自が空自に事前申請したのは燃料の入っていないミサイルだったのですが、実際に運ぼうとしていたのは燃料を搭載したミサイルでした。燃料入りのものを運ぶ準備をしていなかったため、カラのまま運ばざるをえなかったのです。

自衛隊は各地に部隊がいますが、輸送、ロジスティクス(兵たん)に問題があるようです。陸・海・空、それぞれ整備や給油の仕方が違います。陸だけで使っていれば不便ではなかったことが、共同使うと問題が出てくるようです。

一方、中国軍が第一列島線を抜けて西太平洋に出ていく動きは常態化しつつあります。昨年11月下旬には爆撃機と情報収集機、早期警戒機が宮古海峡の上空を、12月上旬には駆逐艦、フリーゲート艦、補給艦が大隅海峡を通過しました。

そうして、今年に入ってからの、中国海軍の艦船の初の接続水域等への侵入です。

日本は常に国会対応ばかりに終始して、安全保障の本質的な議論をすることすらタブーな国でした。そのツケが今日まで回ってきているようです。

中国としては、日本が完璧に以上で掲載した自衛隊の配備計画を実現してしまっては、後から自由に動きまわるのはほぽ困難になるとみているでしょう。

(南西諸島の島々に配備された、対艦・対空ミサイル)+(航空自衛隊の戦闘機)+(海上自衛隊の艦船+潜水艦)により、南西諸島に堅固な防衛網ができてしまっては、海軍力ではいまのところ数段下の中国にはなすすべがありません。

空軍力も、実力的にはまだまだ下です。対潜哨戒能力と潜水艦の能力は、日本は世界一であり、中国は世界の中では低い水準にあります。

このような状況で、日本の南西諸島に堅固な防衛網ができてしまっては、中国はなすすべもありません。さらに、南シナ海では米軍が中国の動きを封じ込めようとしています。

しかし、先ほども掲載したように、南シナ海では中国は人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立したものとみなしています。

中国は日本の南西諸島でも同じことを目論でいるかもしれません。南シナ海のように、東シナ海の尖閣諸島を奪取し、軍事基地化する。あるいは、東シナ海の日本との国境沿いに構築したリグなどを軍事基地化するなどして、それを既成事実化して、西太平洋の出口を確保しようとするかもしれません

これを防ぐための手段は、政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきであるとともに、実際に中国軍がどのような行動をとれば、日本が武力を用いて中国軍を排除するに至るかをはっきりさせ、それを中国および世界の各国に向かって予め周知しておき、中国軍がそのような動きを見せれば実行することです。

さらに、これを実行に移すには、ルトワック氏の著書『中国4.0』にある提言が参考になると思います。

どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に個々の組織が対応するべく準備せよというものです。

日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。

たとえば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。

陸海自衛隊による島嶼防衛訓練
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。

各機関が独自に動けば、初期の対応はかなり迅速にできるはずです。無論、海上自衛隊も、マニュアルに従い、独自に動き、尖閣有事の際には、別行動をしている海上保安庁の巡視船の行動を見守り、それではとても歯がたたないまでに、事態が悪化した場合、迅速対応するという形になるでしょう。

そうして、中国側は、日本の迅速な対応に拒まれ、結局何もできないうちに、なし崩しになって終わってしまうということになると思います。

こうした、迅速な初期対応が終わった後に、その後の対応に関して、各機関が綿密に共同して行動すれば、良いということです。とにかく迅速さが一番ということだと思います。多少拙速であったにしても、中国側に既成事実を作られるよりは、遥かに良いということです。

ルトワック氏の提言があるなしにかかわらず、日本としては、尖閣有事の際のシナリオと、そのシナリオに対応したマニュアルは作成しておき、迅速に行動して、中国に全く付け入る隙を与えないという姿勢を貫くべきです。

日本は、南シナ海の轍を踏むべきではありません。確かに南シナ海では、周辺諸国は中国の環礁の軍事基地化を阻止する力はありませんでした。軍事基地化されてしまった後にアメリカが「航行の自由作戦」などで、中国を牽制しています。

しかし、日本は米国の助けがなくても、日本だけで東シナ海での中国横暴を阻止する力があります。

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海自が米・インドと共同訓練、中国にらみ沖縄の東方で―【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!




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2016年6月27日月曜日

英国離脱「リーマン級の経済危機」を避けるために、いま日本政府がすべき5つのことを示そう―【私の論評】投票のときの候補者見極めの方法をはこれだ(゚д゚)!

英国離脱「リーマン級の経済危機」を避けるために、いま日本政府がすべき5つのことを示そう


高橋 洋一



 参院選。各党の実力を見極める3つのポイントはここ

選挙期間中は、メディアも街中も政策のウィンドウショッピングと化す。どの政党がどのような政策を我々国民に売ってくれるのか、国民はどの政党の政策を買うのか。もちろん、すべての政策が一致する政党はまずないだろう。すると、どの点に力点を置くのか、になるが、これは個人の問題となる。

選挙ではいろいろな政策を見なければいけないが、大きなポイントは、安全保障と経済である。選挙公約を見ても、いろいろ書いてあるから、判断に迷ってしまうだろう。

そこで、安全保障と経済について、単純な質問を三つ考えてみよう。それらについて各党がどう考えるかを見ることで、どの政党に投票すべきかが簡単にわかる。各党によるテレビ討論では、そうした疑問に答えてくるときもあるので、それを参考にしてもいい。

まず、安全保障では、「自衛隊について合憲か違憲かのどちらと思うか」という質問がいい。高校や大学で憲法を習うと、自衛隊は違憲であると教わることが多い。

実際の憲法学者の大半は、自衛隊は憲法違反であるとしている。筆者が学生時代にも自衛隊は憲法違反であると習った。

しかし、社会人になったら、自衛隊は合憲であることを前提として社会の仕組みができていることがわかった。もし自衛隊が違憲であれば、将来は自衛隊をなくすべきだ。しかし、自衛隊が合憲であれば、このまま自衛隊があっていい。

ちなみに、自民、公明、おおさか維新は自衛隊を合憲としている。共産は一貫して自衛隊は違憲という立場だ。民進は自衛隊が合憲という立場である。民進は共産とこの参院選では共闘しているので、両党から推された候補者は股裂き状態になる。

具体的には、個別的自衛権の行使についてである。民進党は自衛隊合憲、個別的自衛権の行使も問題ないとしている。ただし、共産は自衛隊違憲としているので、個別的自衛権も行使できない、という立場だ。となると、両党は、一体国防をどのように行うのだろうか。

 安保も経済も、民進党はまったくなってない

26日のフジテレビの「報道2001」で、共産党の藤野政策委員長は「自衛隊は憲法違反」と明言した。NHKの「参院選特集」では、藤野氏は「軍事費は戦後、初めて5兆円を超えた。人を殺すための予算ではなく、人を支え育てる予算を優先する改革が必要だ」と述べた。

NHK日曜討論「参院特集」より

この発言には驚いたが、事実を言うなら、他国の軍隊と日本の自衛隊は異なり、人殺しはしない。むしろ、災害救助を中心に行っているので、人助けである。

人殺し防衛費というのは、共産の本音が出たのだろうが、さすがにこの発言は酷いので、これからも藤野氏が出てくるかどうかわからない(編集部注:藤野氏は後日発言を取り消した)。この共産の暴言に対して、自民、公明、おおさか維新などは良識的な反論をしていた。

次に、経済では「新卒者の就職率を高める政党はどこか」がいい質問だ。経済はいろいろな角度から見ることができるが、雇用の確保が最も重要である。雇用の確保ができないと格差問題も解決しない。職がない人と職がある人では格差が最も大きくなるからだ。

雇用の確保が大切といい、就業者数が増えていることや全国各地で有効求人倍率が1を超えているというと、すぐ非正規が増えているだけとか、賃金がまだ上がっていないという人がいるが、その人たちの意見は争点そらしであるから、注意しよう。

非正規でも増えているほうがいい。なぜなら、非正規になる前は無職だからだ。

それに「賃金、賃金」というが、無職から有職になってもはじめの賃金は低い。そのために平均の賃金を見ると下がって見えるが、いままでと同じ賃金の人がほとんどで、そこに無職で賃金なし、ではなく、平均より安い賃金の人が増えているので、下がって見えるだけだ。

このあたりの経済理論からの説明は、2015年12月21日の本コラム「民主党は雇用政策のキホンすら知らないのか…安倍政権批判のつもりが、自らの経済オンチっぷりを露呈」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47022)を読んでいただきたい。

 イギリス離脱のインパクトをどう見積もるか

最後に、経済分野ではここをみよ、という点を。「イギリスのEU離脱に対してどのような政策をするか」という質問は、各党の危機管理能力を示す質問だ。

まず、現状認識としては、先週の本コラムに書いたように、英国離脱が経済に与える影響は、リーマンショック級と思ったほうがいい(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48953)。

EU離脱というかつてない事態がイギリスで起こるわけで、今後のEU離脱交渉の中で予想外のことが起こるたびに、ポンドや株が売られ、円高が進みかねない。

離脱の手続きの行方はまったくわからない。EUに通知してから、2年を原則として正式に離脱が決まるが、EU側は速やかに通知すべきとする一方、肝心のイギリス側は、誰がそれを決めるのかさえ明らかでない。

キャメロン首相は10月までに辞めるが、次期首相候補とされるボリス氏は「離脱交渉を急がない」としている。この不透明感は、あらゆるビジネスを停滞させる。その停滞が不況をもたらす可能性があるのだ。

さらに、その過程の中で、EUの緊縮財政に反対する国、たとえばスペイン、イタリア、ギリシャなどの、さらなるEU離脱を誘発しかねない。そうなったら、それこそ金融混乱は繰り返して起こることとなる。

かつて、リーマンショックの際に「ハチに刺された程度」と対策を怠り深刻な円高不況を招いた過去を忘れてはいけない。

イギリスEU離脱は連鎖反応を起こし、アメリカ経済、日本経済、世界経済を悪くする可能性がある。その二の舞を避けるためには、その影響度はリーマンショック級と見ておくほうがいい。これはあくまで危機管理上の問題なので、そう見るしかないわけだ。

 「雇用」「賃金」の読み解き方

雇用は、正規雇用などの既得権のコア部分ではその変化はわかりにくく、新卒者などの既得権がなく限界的なところでの変化に顕著に表れやすい。

大学の就職率は、文科省・厚労省方が公表しているが、2016年は97.3%と、統計を取り始めた1997年以来で一番高い数字だ。実は、大学の就職率は前年の失業率に依存している(下図)。




前年の失業率が1%低下すると、就職率は3%程度上昇するという関係になっている。景気と失業率の間には、逆相関の関係がある(オークンの法則)から、これは景気がいいと新卒者の就職が楽になるという単純な事実だ。

なお、民主政権時代の2010~2012年の就職率は91~93.6%であった。データから見れば、安倍政権のほうが就職率は高くなっている。

もちろん、就職率なんてどうでもいいという人もいる。一流大学であれば、景気に関係なく就職はあまり困らないし、就職できるかどうかは景気より個人の能力と考える人は、就職率は考慮対象にしていない。

26日のテレビ討論では、自民は雇用の成果を強調したが、民進は、雇用ではなく賃金に話をすり替えた。これでは、経済政策の基本がわかっていないことが明白になってしまう。

 イギリス離脱のインパクトをどう見積もるか
最後に、経済分野ではここをみよ、という点を。「イギリスのEU離脱に対してどのような政策をするか」という質問は、各党の危機管理能力を示す質問だ。まず、現状認識としては、先週の本コラムに書いたように、英国離脱が経済に与える影響は、リーマンショック級と思ったほうがいい(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48953)。
EU離脱というかつてない事態がイギリスで起こるわけで、今後のEU離脱交渉の中で予想外のことが起こるたびに、ポンドや株が売られ、円高が進みかねない。

離脱の手続きの行方はまったくわからない。EUに通知してから、2年を原則として正式に離脱が決まるが、EU側は速やかに通知すべきとする一方、肝心のイギリス側は、誰がそれを決めるのかさえ明らかでない。

キャメロン首相は10月までに辞めるが、次期首相候補とされるボリス氏は「離脱交渉を急がない」としている。この不透明感は、あらゆるビジネスを停滞させる。その停滞が不況をもたらす可能性があるのだ。

さらに、その過程の中で、EUの緊縮財政に反対する国、たとえばスペイン、イタリア、ギリシャなどの、さらなるEU離脱を誘発しかねない。そうなったら、それこそ金融混乱は繰り返して起こることとなる。

かつて、リーマンショックの際に「ハチに刺された程度」と対策を怠り深刻な円高不況を招いた過去を忘れてはいけない。

イギリスEU離脱は連鎖反応を起こし、アメリカ経済、日本経済、世界経済を悪くする可能性がある。その二の舞を避けるためには、その影響度はリーマンショック級と見ておくほうがいい。これはあくまで危機管理上の問題なので、そう見るしかないわけだ。

 イギリス離脱対策。私ならこうする

その意味で、2017年度からの消費増税の見送りは日本にとっては正解だった。

その判断の前提であった安倍首相の「ひょっとしたらリーマンショック級のことが世界に起こりうるリスクがある」というのは(発言当初はさんざんと非難されたが)、結果として慧眼であったといえよう。もし消費増税を決めた後で、イギリスがEU離脱になったら目も当てられないことになっていたはずだ

筆者の考える危機対応策は以下の通りである。

1. 消費増税は延期ではなく、凍結にすべき。

2. 日銀の政策決定会合を臨時で開催して、量的緩和30兆円

3. 参院選後の補正予算で、財政支出 60兆円(20兆円×3年)。財源は、埋蔵金、財投債、国債。支出対象はインフラ整備、減税+給付金。

4. 事実上無制限の為替介入。そのために、今の介入枠を参院選後の補正予算で引き上げる。

5. 1と2、1と3はセット。前者がヘリコプターマネー、後者は非不胎化介入となって効果がある。

26日のテレビ討論では、英国ショックについて、自民の稲田政調会長から「安定政権、国際協調」、民進の山尾政調会長から「円安、株高に依存したアベノミクスからの転換」、共産の藤野政調会長から「アベノミクス転換、内需を強く」、公明の石田政調会長から「国際協調、政治の安定」、おおさか維新の下地政調会長から「大型補正予算、大型金融対策、為替介入の明確化」という対応策が出された。

正直言って、自公からの対応策は抽象的で、日本として何をやるのかが明確でない。民共はアベノミクスの否定であるが、第一、第二の金融政策、財政政策を否定したら、リーマンショック後の対応より酷い、無策である。この両党は危機管理能力がないと言わざるを得ない。おおさか維新だけが及第点をあげられる、と現時点では言っておこう。

【私の論評】投票のときの候補者見極めの方法をはこれだ(゚д゚)!

いつもながら、素晴らしい高橋洋一氏の分析です。来る参院選において、私達が誰に投票すれば良いのかを判断する上で、上の記事を読んでいるかいないかでは、大きな差がでてしまうことと思います。そんなこともあるので、上の記事長いのですが、全文引用させていただきました。

さて、上の記事に関しては特段付け加えることもないのですが、皆さんにより良くこの記事をご理解いただき、選挙のときの判断材料の縁としていただくために、若干説明を加えておきます。

特に、一番最後のほうのイギリス離脱対策に関する部分に関して若干の説明を加えようと思います。

1. 消費増税は延期ではなく、凍結にすべき。

高橋洋一氏は、凍結にすべきということを主張していますが、今後の政治日程などを考慮に入れると、今回の増税延期は実質上の凍結に近いものです。そのことに関しては、以前このブログでも掲載しましたので、その記事のURLを以下に掲載します。
次の消費増税にむけて財務省が打った「布石」〜「給付型奨学金」をめぐる唐突な態度変更の理由―【私の論評】負けたふりの安倍総理!年内衆院解散でデフレ根絶か?


詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に今回の増税は実質的な凍結に近いものであることのみを以下に引用します。
一部の経済学者など、日本は成長しないという人もいますが、これ暴論です。過去の日本がデフレでないにもかかわらず、経済成長しなかったのなら、この話も理解できまが、デフレのまっただ中では、成長しないのが当たり前です。
いずれの道を選ぶべきかといえば、当然のことながら、本当は財務省にとっても、景気が上向くまで、積極財政を実行することです。 
しかし、現在の財務省はそんなことはおかまいなしに、とにかく何が何でも増税するという姿勢は崩していません。
そのことは、安倍総理の「増税見送り」という言葉にも現れています、結局のところ未だ財務省は全面敗北はしていないので、「増税凍結」とはならなかったのです。ただし、これは実質的には、「凍結」と同じです。安倍総理は、「負けたふり」をしているのです。 
なぜなら、増税予定だった17年4月から2年半後の2019年10月といえば、安倍首相の自民党総裁任期である18年9月を過ぎてしまいます。実務的にも19年10月から増税しようとすれば、ぎりぎり19年3月ごろまでに決断すれば良いことになります。 
いずれにせよ安倍首相の任期が終わった時点なので、10%への増税をするかどうか本当に決めるのは、安倍総裁の任期が延長され首相に留任しないかぎり、次の首相という話になります。次の首相が誰になるか分からないのに加えて、次期首相が安倍首相の約束を守るかどうかもわかりません。 
いまの衆院議員の任期は18年12月です。それまでに衆院選があればもちろんですが、任期満了で総選挙になったとしても、選挙結果次第で、最終決断する19年3月時点では自民党政権が続いているかどうかさえも分かりません。 
つまり2年半後の政権が決まっていないのだから、増税がどうなるかは当然、分かりません。結局、はっきりしているのは「いまの安倍政権が続いている間は増税しません」という話だけなのです。 
延期というなら、次は実施できる条件がそろっていなくてはならないはずですが、そんな条件はいま安倍政権の手元にはありません。だから、これは再延期というより実質的には「安倍政権による凍結」というべきです。
 さて、安倍総理はこの記事でも述べたように"負けたふり"をしていると考えられるわけですが、これはかなり良いやり方です。はっきり凍結と言ってしまえば、財務省も身構えて、あるゆることで非協力的になるかもしれませんが、「延期」という言葉を使っているので、財務省の面目も保たれるわけです。

以下の2つの政策を合わせて、高橋洋一氏はヘリコプターマネーとしています。

1. 消費増税は延期ではなく、凍結にすべき。

2. 日銀の政策決定会合を臨時で開催して、量的緩和30兆円

ヘリコプターマネーとは、あたかもヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行あるいは政府が、対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策のことをいいます。米国の経済学者フリードマンが著書「貨幣の悪戯」で用いた寓話に由来しています。中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行などがこれにあります。


中央銀行は通常、市場に資金を供給する際、対価として民間金融機関が保有する国債や手形などの資産を買い入れます(買いオペレーション)。ヘリコプターマネーの場合、そうした対価を取らずに貨幣を発行するため、中央銀行のバランスシートは債務だけが増え、それに見合う資産は計上されず、債務超過の状態になります。その結果、中央銀行や貨幣に対する信認が損なわれる可能性があるため、平時には行われません。

ただし、現在の日本は8%増税の悪影響で、個人消費が落ち込み、GDPの伸び率が低い状況にあります。インフレ率もかなり低いです。さらに、英国のEU離脱などの悪影響も見込まれるため、とても平時といえるような状況ではありません。であれば、当然のことながら、ヘリコプターマネーを実施すべきです。

日本がデフレから完全脱却を目指し、しかももう20年近くデフレ傾向なのですから、そこから完璧にしかも素早く脱却することを目指すなら、今こそがヘリコプターマネーの実施どきです。しかも、国債の信任はあつく、ほとんど金利がゼロです。今をのがして一体いつ実行するというのでしょうか。

以下の2つの政策を高橋洋一氏は、"非不胎化介入となって効果がある"としていますが、これについての説明がないので以下に解説しておきます。

1. 消費増税は延期ではなく、凍結にすべき。

3. 参院選後の補正予算で、財政支出 60兆円(20兆円×3年)。財源は、埋蔵金、財投債、国債。支出対象はインフラ整備、減税+給付金。

そもそも「非不胎化」という日本語は、「非」と「不」の二重否定が「胎化」に被さっており、こなれていません。もともと「不胎化」は、sterilizeの経済学での訳語です。sterilizeとは、無力化するとか無効化するという意味である。「非不胎化」は、その否定でunsterilizeの訳です。

これらの英語で議論されていたころは、固定相場制が当たり前であり、いずこの政府も中央銀行の資金を使って、為替介入をしていました。



何やらこの解説だと消化不良をおこしてしまう方もいらっしゃるかもしれません、結局どういうことかといえば、ざっくり言えば1.3.の政策を実行することにより、政府や日銀は特段為替介入など何もしなくても、円安傾向にもっていけるということです。

以上高橋洋一氏の記事に解説を加えました。

以上のことを良く理解した上で、各候補者の声を聞けば、誰がまともなことを言っているのか、良くご理解いただけるものと思います。特に、経済に関してはそうです。

以上のことを良く理解しないで、投票すれば、良かれと思って投票した結果が、とんでもないことになりかねません。そんなことのないように、皆さんには是非上の内容を熟知した上で、投票をしていただきたいと思います。

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2016年6月26日日曜日

「防衛費は人を殺す予算」 共産・藤野政策委員長がNHKで 他党議員は発言取り消しを勧めたが…―【私の論評】共産党を他野党と同列とみなすのは、中国を他国と同列とみなすのと同じくらい危険(゚д゚)!

「防衛費は人を殺す予算」 共産・藤野政策委員長がNHKで 他党議員は発言取り消しを勧めたが…

共産党の藤野保史政策委員長
 共産党の藤野保史政策委員長は26日出演したNHK番組で、防衛費が初めて5兆円を超えた平成28年度予算を念頭に「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」と述べた。

これに対し、自民党の稲田朋美政調会長は「それは言い過ぎだ。(防衛費は)日本を守るためだ」と即座に反論。公明党の石田祝稔、おおさか維新の会の下地幹郎両政調会長は「人を殺すための予算」の取り消しや訂正を勧めた。

日本のこころを大切にする党の和田政宗政調会長も「政治家の発言としてまずい。国民の命を守るために国防がある」とたしなめたが、藤野氏が番組中に応じることはなかった。

【私の論評】共産党を他野党と同列とみなすのは、中国を他国と同列とみなすのと同じくらい危険(゚д゚)!

上の記事にも掲載されている、問題発言が掲載されている動画を以下に掲載します。これは、NHK の日曜討論という番組です。この動画近いうちに削除されるかもしれません。ご覧になってないかたは早めにご覧になってください。


以下にこの動画を含んだツイートを掲載します。ツイートはよほどのことがないと削除されないので、上記の動画が削除された場合には、以下のツイートをご覧ください。
この発言はあまりに酷過ぎです。しかし、番組の中では他の人達から「取り消すべき」と何度もいわれながら、結局撤回しませんでした。

しかし、藤野氏は今夕、党広報部を通じて文書で「不適切であり取り消す」と発言を撤回しました。藤野氏はコメントで、「発言は、安保法制=戦争法と一体に海外派兵用の武器・装備が拡大していることを念頭においたものでしたが、テレビでの発言そのものはそうした限定をつけずに述べており、不適切であり、取り消します」と釈明しました。

このニュース驚いたことに、産経と時事通信以外は報道していません。朝日新聞は撤回したことは、伝えましたが、発言の報道自体はしていません。

安倍晋三首相は26日午後、長野県茅野市のJR茅野駅前で演説し、共産党の藤野保史政策委員長が同日のNHK番組で防衛費に関して「人を殺すための予算」と発言したことについて、「泥にまみれても、雨にぬれながらも頑張っている自衛隊に対して極めて失礼な侮辱だ」と強く非難しました。

有権者らとの写真撮影に応じる安倍晋三首相=26日、長野市
また、志位和夫委員長らが、自衛隊を憲法違反とし、将来的な解消を主張していることについて「こんなことが通るわけはない。あまりにも無責任、失礼な発言だ。この共産党と民進党は、まさに一体となってこの選挙区でも戦いを進めている」と批判しました。

日本の自衛隊は他国の軍隊とは違い設立以来一人も人を殺していません。本当に共産党は、自衛隊に対して無礼な政党です。

共産党は自衛隊は違憲、綱領に自衛隊の解消(=廃止)を掲げている。民進党と選挙協力する中、表に出ないようにしてきたが本音が出たのでしょうか、それとも日頃「安保法制は戦争法案」などと嘘をつきまくっているのでつい「防衛予算を人を殺すための予算」とか言ってしまったのかもしれません。いずれにしても、共産党も嘘も本当に怖いです。

参院に自民党から出馬した、青山繁晴氏は、まるで本日の出来事を暗示するような選挙演説をしていました。
詳細はこの動画をご覧いただくものとして、この動画では、青山氏は「阪神淡路大震災の時、瓦礫にはさまっている人達を助ける為に海自の護衛艦に陸自の救出部隊を載せ向かったが、神戸港に接岸出来なかった。神戸市民から『戦争の船は来るな!』と言われたのです」 と語っていました。

無論、神戸市民全員がそのようなことを言ったわけではないのでしょうが、阪神淡路大震災の頃というと、まだまだ左翼勢力が大きく、このような声も大きかったのだと思います。

こんな馬鹿なことが許されて良いはずがありません。藤野保史政策委員長の発言は、阪神淡路大震災のときの左翼勢力の発言と本質的には同じです。助かる命も見捨てろと言っているのと何も変わりありません。本当に恐ろしいことです。

しかし、さらに恐ろしいことがあります。それは、共産党は最近ではソフト路線をとって、一見いかにも他の野党などとあまり変わりないように未だに暴力革命の方針を堅持すしているということです。

これに関しては、警察庁による公文書である、『警備警察50年 ◆元寇警察法施行50周年記念特集号◆』をご覧になってください。


さらに、公安調査庁による公文書である、『国内情勢4 ◆国内情勢4 共産党 内外情勢の回顧と展望』をご覧いただけると、さらに共産党について良くご理解いただけるものと思います。


共産党を他の野党と同じように考えるのは、中国を他の国と同じように考えるのと同じで根本的な間違いです。

安保法案を戦争法案として反対し、防衛予算を人殺しの予算として、防衛費削減もしくはゼロにすることを目論でいる共産党です。共産党によるこの目論見が実行され、しかも自分たちは暴力革命の方針を堅持しているわけです。

そうなれば、自分たちは暴力によって政権の座を獲得するつもりなのです。その本音があるので、「防衛費は人を殺す予算」という発言になってその本性を顕にしたのです。

そもそも、自分たちは革命を起こすためには、人を殺すことも含む暴力を否定しないという本性が顕になったのです。共産党は、現状では革命など起こる可能性など全くないので他の野党と同じような政党であると見せかけつつ、いずれ世の中が乱れたり、とてつもない危機に陥ったときが来るのを待って、暴力革命を実行しようと虎視眈々と狙っているです。

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2016年6月25日土曜日

「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き―【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!

「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き

オランダの極右・自由党のウィルダース党首=2015年6月、ブリュッセル
    英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたショックは24日、瞬く間に欧州全土に広がった。戦後の欧州統合が台無しになりかねない事態に身構えるEU当局者らとは対照的に、「反EU」「反移民」をスローガンに掲げる各地の極右・新興政党は「英国に続け」と気勢を上げている。

  「EUのエリートたちは敗北し、新たなスタートを切る時が来た」。オランダの極右・自由党のウィルダース党首は英国民投票の結果を手放しで歓迎し、次は自分たちの番だと訴えた。

オランダは1952年、フランスや西独とEUの前身に当たる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立した「原加盟国」。しかし、急速な統合強化には反対の立場で、英国と良好な関係を保ってきた。自由党は来春の総選挙に向けて支持率トップを走る。

今月公表された世論調査結果によると、「オランダでも国民投票でEU加盟の是非を問いたい」との回答は54%に達した。ウィルダース党首は声明で「われわれは国、カネ、国境、移民政策を自らの手で管理する必要がある」と強調した。

反EUのうねりは北欧でも脈打っている。デンマークやスウェーデンの極右政党は、EU残留か離脱かを問う英国同様の国民投票を要求。欧州債務危機でドイツとともに緊縮財政路線を張ったフィンランドでは、ユーロ圏からの離脱を問う国民投票の実施を求める声が出ている。

イタリアの新興政党「五つ星運動」も、ユーロ離脱の国民投票の実施を目指している。19日のローマ市長選では、同党候補が当選を果たした。

昨年7月、財政危機のギリシャはEUとの金融支援協議のさなか、国民投票を突如実施。EUが要求する財政緊縮策に「ノー」を突き付けた。EUに対する国民の不満が爆発した点は英国民投票と同じだが、ギリシャ国民の大半はEUやユーロ圏からの離脱までは望まなかった。結局、チプラス首相は民意に逆らって緊縮策を受け入れ、国家破綻を免れた。

ロイター通信によると、チプラス首相は英国がEU離脱を選択したことは欧州にとって「マイナス」と指摘。EU加盟各国は「より良い欧州」の実現へ協力していく必要があると語った。

金融危機、ギリシャ危機、ウクライナ危機、難民危機と何年もほぼ途切れなく非常事態が続く欧州。EUは、存在意義そのものが問われる重大な試練に直面している。

【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!

私は、英国のEU離脱は、EU崩壊の最初の序曲になるのではないかと思います。上の記事のオランダの極右・自由党のウィルダース党首の発言などその兆候であると思います。

私自身は、EUは元々無理な組織であり、いずれ崩壊するものと思っていました。それについてはこのブログでも随分前から掲載していました。その記事の典型的なもののリンクを以下に掲載します。
第2四半期ユーロ圏GDP、初のマイナス成長-黄昏EUの始まりか?
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にEUに関する部分を一部転載します。
黄昏EUの始まりか?
さて、EUに関しては、もともと無理が相当ありました。私は、いずれEUは没落していくと思います。その理由は以前のブログにも掲載したことがありますが、要点は以下のようなものです

1.各国の経済レベルなどが異なりすぎる
人為的にたとえ一つの経済圏を作ったとしても、それを構成している各国の経済レベルがあまりにも違います。少し考えれば判ることですが、ポルトガルとスゥエーデンの経済はかなり異なります。ポルトガルの経済は未だ労働集約的ですが、イギリス、ドイツ、イタリアなどの先進国では資本集約的な経済になっています。

今回のスペインや、イタリアの景気減速は、土地バブルの崩壊によるところが大きいですが、ドイツでは土地バブルの上昇はなく、輸出の不振が大きく響いてるなど、同じ不振といっても原因がまちまちです。

そのため、EU圏内で、不振対策をしようということになると、ごく標準的なものにならざるを得ず、一旦不況に陥れば、回復するまで結構時間がかかるものと思います。

EUのように、ヨーロッパ全体が団結して、大きな影響力を持とうという試みは、大昔からありました。その起源はローマ帝国にまで遡ります。ローマ帝国が栄えていたころは、現在のイギリス、スペイン、フランス、ドイツなど現代のEU圏にある経済大国がすべてローマ帝国の版図に編入されていました。

だから、ヨーロッパの人たちには、大昔からローマ帝国への憧憬の念や、憧れの念がありました。そのため、ローマ帝国滅亡より、機会があれば一致団結しようとしました。これは、古くは神聖ローマ帝国にまで遡ります。


その後いろいろ、試みられましたが、結局は成立しませんでした。では、かつてのローマ帝国のように一国による他国への侵略による統一も考えられましたが、ナポレオンのヨーロッパ征服、ヒトラーのナチスドイツによるヨーロッパ征服なども、ことごとく失敗しました。

しかし、これらの試みはすべて失敗して水泡に帰しました。おそらく、これからも無理だと思います。だから、私は、EUも結局は成功しないと思います。長い間には必ず失敗し没落していくものと思います。

2.地球温暖化二酸化炭素説に呪縛されている
最近では、EUは、いわゆる「地球温暖化二酸化炭素説」という、科学というよりは宗教の教義のようなものに呪縛されています。地球温暖化二酸化炭素説は、全くの間近いであり、それを信奉して、道徳律などを説くうちはいいのですが、それを現実世界の市場や産業に適用すれば、全くの徒労に終わります。

確かに、地球温暖化二酸化炭素説などは全く別にして、化石燃料・森林資源などの限りある炭素を含む資源を大事にしようということには意義があります。しかし、度を過ぎれば、単なる中世の魔女狩りのようになってしまいます。

北海道、瀬棚町の風車のある風景。北海道新幹線を風力発電で走らせようとしたら一体何基の風車が必要になるのだろうか?

たとえば、エネルギー効率の悪い太陽光発電や、風力発電がco2を排出しないクリーンエネルギーだからといって、それだけで、新幹線を走らせることができますか?もし、無理に走らせようとしたらな、一体どれだけの太陽光発電パネルや、風車が必要になると思いますか。太陽光パネルを作るには、化学薬品が必要になりますが、それを大量につくると、かえって環境汚染につながるかもしれません。それに風車の場合、遠隔地に設置するなら良いですが、民家の近くに設置すると、いわゆる低音公害が発生します。風車は、あまり音を立てないとおもわれがちですが、人間の耳にはほとんど聞こえないような低い音波を発生するので人体に害があるといわれいます。

だから、太陽光や風車はあくまで補完的な役割を果たすに過ぎないと思います。基幹部分は未だ化石燃料に頼り、ただし、なるべく省エネをして無駄遣いをしないようにして、少しずつ代替エネルギーに変えていくというのがまともなやり方だと思います。それに、CO2を排出しないからといって、原子力発電にすべて切り替えていったらどうなりますか?放射能漏れなどのリスクがかなり高くなってしまいます。いったん事故が発生したら、すべての産業活動が止まってしまうというのではとんでもないことになります。やはり、今は化石燃料などに頼りつつ、複数の代替エネルギーも実験的に使いつつ、次への展開を図ることが穏当だと思います。

EUでは、排出権取引など推進して、CO2を次世代の通過にしようなどという試みも熱心に行っています。しかし、これとて、実際どうなるのか?排出権の取引をしたとしても、実質上はさほど効果は得られなと思います。それよりも、何よりも、この取引の根本となっている地球温暖化二酸化炭素説が間違いなのですから、いくらCO2を削減したとしても、単なる気休めにしかならず、実効的な効果は何もうみだしません。ドイツなどでは、巨大なCO2貯留施設など設立していますが、これなど、全くの徒労です。実際昨年は、EUでは、CO2削減はできませんでした。これについて、いろいろ理由をつけていますが、私は3年後、5年後になっても削減できないと思います。でも、そうなれば、おそらく、何らかの方法で、無理やり数字あわせなどやることになると思います。

宗教裁判などのあった、中世ヨーロッパでは、なかなか産業などが発展せず、ルネッサンス以降に発展していったという歴史があります。以上に述べたEUのおかしな行動は、これと同じことです。ヨーロッパは何か間違えています。EUを経済共同体ではなく、教育期間、人的資本を速やかに動かすための機関として、EU内の教育レベルがある一定以上になって、しかも人的資本の流動がかなり高くなったときにはじめて経済統合するなどのことをする、さらに地球温暖化二酸化炭素説の呪縛から逃れることになれば、話は違ってきます。しかし、現状みているかぎりではそのような動きは微塵もみられません。

上記2点より、EUは、いまのままでは、いずれ没落するのは明らかです。今回のユーロ圏GDP初のマイナス成長は、黄昏EUの前触れかもしれません。
この記事は、EUが統合依頼初めて、経済成長がマイナスになったときのものです。

この記事にも掲載したとおり、EUの各国の経済、文化、伝統、国柄はことごとく個々にあまりにも違い過ぎます。

それに過去のローマ帝国は、強力なローマ軍団による他国に抜きん出た軍事力があったからこそあれだけ版図を広げて、維持することができたのであり、現代では過去のローマ帝国の再現など単なる幻想に過ぎません。

それと、 現在のEUは過去のローマ帝国とは違い、意思決定にあまりにも時間がかかりすぎます。ローマ帝国の意思決定は、ローマ帝国の元老院(皇帝による場合もあった)によって行われました。しかし、現在のEUは欧州会議によるものです。元々は別の国だった数々の国の代表者からなる会議を運営するのは至難の技です。

ローマ帝国の重装歩兵
さらに、経済対策も、EUの経済対策は、必ずしも個々の国にとって良いことばかりではありません。しかし、EU全体の経済という考え方で行うため、この経済対策では経済が良くならない国には、不満が鬱積することになります。

それと、現在のEUは地球温暖化二酸化炭素説に呪縛されています。私自身は、地球温暖化二酸化炭素説に関しては現在でもかなり懐疑的です。世界的にみても、ドイツをはじめEU諸国はどちらかというと、他地域に比較して地球温暖化二酸化炭素説に立脚した長期政策を多く実行しています。私自身は、たとえ地球温暖化二酸化炭素説が正しかったにしても、現在EUで行われている、温暖化防止策が本当に的を射たものなのか非常に疑問です。

このように排出されたCO2を何とかするとか、風力、太陽光発電などというカルト的なことをするくらいなら、日本の省エネ技術のように、元々の化石燃料をあまり使用しない機器を製造したり、システムを開発するほうがよほど理にかなっていると思います。これによって、明らかに石油などの化石燃料を節約することができます。

それに現在のように、原油価格が低落すると、ほとんどの代替燃料はほとんどペイしないというのが実情でしょう。そんなときに、排出されたCO2に拘泥していては、経済にも悪影響が出るし、有能な人材を無駄なことに使ってしまうという危険をおかすことにもなってしまいます。

さらに、ドラッカー氏は国民国家について以下のように語っています。
産業革命の初期以来、経済的相互依存は政治的情熱を凌駕するだろうと主張され続けてきた。これを最初に語ったのはがカントだった。南北戦争の直前、1860年の穏健派も、サムター砦で最初に銃声が轟くまでそう考えていた。オーストラリア=ハンガリー帝国の自由主義者たちも、最後の瞬間まで、分裂するには経済的な結びつきが強すぎると考えていた。明らかに、ミハイル・ゴルバチョフも同じように考えていた。 
しかし、この200年を見る限り、政治的な情熱と国民国家が、経済的な合理性と衝突したときには政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている。
1997年、「フォーリン・アフェアーズ」 

これは現在でもそのままあてはまっています。経済的な合理性よりも、政治的な情熱と国民国家のほうが勝利するということです。まさに、イギリスの政治的な情熱と国民国家のほうが、EUという経済相互依存に勝ったわけです。

今後、国民国家への希求はますます強まり、いずれEUは崩壊することになります。国民国家を構成する、歴史、文化、伝統の重みは経済合理性よりも優るのです。そうして、最終的には経済相互依存ばかり強調するグローバリズムは破綻します。

このドラッカーの予言は、サブプライム問題に端を発する金融経済の崩壊とオバマ政権の社会保障への志向をみれば、その予言は見事に的中したといえます。極端にグローバル化に邁進してきた韓国の現状をみてもわかります。結局国民国家の経済をあまりにも過小に扱い大失敗しています。中国も同じです。現在でもまともな世界の日本などの先進国は、GDPの6割以上が国民の個人消費が占めています。アメリカにいたっては7割です。
結局、中韓のようにグローバル化を進めても、内需が低迷すれば、経済も低迷するのです。ちなみに、中国の個人消費はGDPの35%程度です。韓国は、50%です。

今後EUでも、国民国家への回帰を求める声が広まり、いずれEUは現在よりももっとゆるい連合体のようになり、国民国家が復活することになるでしょう。

今回の英国のEU離脱はその予兆となるものだと思います。

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