2018年4月3日火曜日

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 ―【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 

IOCのバッハ会長に笑顔をみせる金正恩氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、狡猾な「延命工作」を続けている。電撃訪中に続き、先月30日には、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長と、平壌(ピョンヤン)で会談したのだ。平和友好ムードを演出しているが、北朝鮮は「核・ミサイル開発」放棄を一切進めておらず、国際社会をダマしている。ドナルド・トランプ米大統領は魂胆を見抜き、「戦争内閣」を立ち上げ、米韓合同軍事演習も1日始まった。米朝首脳会談(5月予定)の開催場所と、正恩氏の「亡命準備」情報とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が核心に迫った。

 ご承知の通り、トランプ氏は先月、レックス・ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名した。続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定した。

マイク・ポンペオ氏(左)とジョン・ボルトン氏(右)

 以下、後任2人に関する関係者情報だ。

 「ポンペオ氏は、『正恩氏排除=斬首作戦』に賛成している。CIA内に初の北朝鮮専門部隊『朝鮮ミッションセンター』をつくった。結果、正恩氏の隣に協力者を構築し、反正恩一派が結成された。朝鮮人民軍の一部は命乞いを始め、クーデターを計画し始めた。正恩氏が一番憎む男だ」

 「ボルトン氏は、対北先制攻撃を公言している。ジェームズ・マティス米国防長官は3月末、国防総省でボルトン氏を迎えた際、『あなたは“悪魔の化身”だと聞いている』といった。イラク戦争(2003年~11年)時にも、北朝鮮とイランへの攻撃を強硬に主張した。正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2週間も地下に隠れて震えていた。『ボルトン』という言葉は、北朝鮮では『死神』と同じだ」

 トランプ氏が、対北強硬派2人を抜擢したのには、明確な意志がある。

 旧知の米情報当局関係者は「トランプ氏は『戦争内閣』を構築した。ポンペオ、ボルトン両氏を信頼し、対北朝鮮政策の最終形を組み立てている」「米国が要求する『核・ミサイル開発』放棄は、ボルトン氏がいう『リビア方式』だ。正恩氏は『武装解除だ』と激しく拒否している」「米国の要求を飲まなければ、5月の米朝首脳会談は、正恩氏への『死刑宣告=宣戦布告の場』になる」と語った。

 リビア方式とは、「アラブの狂犬」こと、リビアの独裁者、カダフィ大佐が03年、核放棄に合意し、査察団を受け入れ、06年に国交正常化した方法だ。「北朝鮮が先にすべての核兵器と核物質などを放棄し、その後に制裁解除などの補償を行う」というもの。

 ちなみに、カダフィ氏は11年、「ジャスミン革命」で、反政府勢力に捕まり、命乞いをするも、射殺された。

カダフィ氏

 正恩氏は間違いなく、自分をカダフィ氏に重ねて震えている。この間、何があったか。以下、複数の日米情報当局関係者から入手した情報だ。

 「中朝首脳会談(3月26日)は、ボルトン氏起用に慌てた正恩氏が、習近平国家主席に泣きついた結果だ。習氏に、リビア方式を否定してもらった。さらに、『韓米の平和・安定雰囲気の醸成=米韓合同軍事演習の中止・在韓米軍撤退』などを主張した。だが、手は震え、顔は哀れなほど、強張っていた」

 当たり前だ。正恩氏は最近まで「中国は千年の敵」と公言していた。屈辱的な命乞いといえる。さらに情報は続く。

金正恩(左)と習近平(右)

 「北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある」

 そして、結論はこうだ。

 「日米主導で進めてきた経済制裁が効いている。北朝鮮の人民と軍部は飢餓状態だ。数十万人の餓死者が出る恐れがある。正恩氏はまだ、圧力に屈して『核放棄の意思』を伝えたことを人民や軍の末端に隠している。公表すれば、人民と軍の怒りが爆発する」

 河野太郎外相は3月31日、高知市での講演で、「北朝鮮が新たな核実験に向けた用意を一生懸命やっている」と明言し、北朝鮮に核放棄の意思がないことを指摘した。北朝鮮はまた、国際社会を欺く気なのだ。

 安倍晋三首相は今月18日、トランプ氏と日米首脳会談を行う。

 米軍関係者がこういう。

 「南北首脳会談が同月27日に行われるが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『反米・反日・従中・従北』の裏切り者だ。何を話しても関係ない。すべては5月の米朝首脳会談だ。日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをする。リビア方式の確認や、日本人拉致問題。北朝鮮の運命が決まる。全世界が注目している」

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるように、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをします。その中ではリビア方式の確認や、日本人拉致問題も話し合われるでしょう。北朝鮮の運命がこの会議で決まることになります。

マスコミなどは、北朝鮮問題に関しては日本は蚊帳の外におかれているということを報道したりしていますが、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをするということから考えてみても、そんなことはあり得ないです。

日本蚊帳の外論に関しては、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、米政府関係者と北朝鮮当局者が昨年12月上旬に北京で極秘協議を行っていたことや、同じ時期にカナダ政府が日本政府に「対北圧力」方針の見直しを迫っていたことなどを根拠にしていたようです。

さらに、一連の動きの直後、ティラーソン米国務長官(当時)は北朝鮮との無条件対話に応じる考えを表明したため、トランプ政権内で対北融和派が巻き返しを図っているとみられたことも、その根拠のようです。

北朝鮮との極秘協議を主導したのは米国務省情報調査局のジョン・メリル=元北東アジア室長です。「トラック1.5」と呼ばれる官民合同の意見交換会の形をとったとされています。北朝鮮側の出席者ははっきりしませんが、対話の再開条件や枠組みなどについても協議したとみられます。

直後の12月12日にティラーソン氏は講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と発言しました。メリルらの報告を踏まえ、対話再開に向けたシグナルを北朝鮮側に送った可能性もあります。

米朝間では、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮外務省の崔善姫米州局長も度々接触しているとされています。

以上のことをもって、マスコミや一部の識者は、日本は蚊帳の外におかれているとしたのですが、その後ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定し、さらに米朝会談の前には、日米首脳会談が行われることから、日本は蚊帳の外に置かれているどころか、当事者である米国に最も近い、あるいは当事者そのものといって良いです。

ブログ冒頭の記事では、以下のような下りがあります。
北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある。
これも、注目に値する情報です。金ファミリーは、ロシアに亡命するかもしれないということが以前から言われていて、ロシア亡命受け入れ先と考えられていたのが、フインランドに近い、 スヴァールバル諸島なのです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下にに掲載します。
トランプ氏、正恩氏に亡命促す? 異例ツイートで“真意”注目、識者「行き着く先はロシアのプーチン大統領」―【私の論評】金ファミリーの亡命も選択肢の一つ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に引用します。
"
スヴァールバル諸島とは、北極海に浮かぶ群島です。第一次世界大戦の頃、ロシア、ノルウェーなど、多くの国が領有権を争ったため、大戦終結後のパリ講和会議で、スヴァールバル諸島を、永久非武装地帯としました。以下にその位置を地図で示します。


このスヴァールバル条約には、ロシアやアメリカなど40ヵ国以上が加盟していますが、島内にはロシア人居住地区があり、ロシアの法律が適用されています。ここには、世界でもっとも北端に位置するレーニン像があります。

スヴァールバル諸島の面積は、ちょうど九州と四国を足し上げたくらいの大きさです。夏は4〜6度くらいまで気温が上がりますが、冬は-12〜-16度にもなる極寒の島です。

大部分の島が永久凍土に閉ざされ、人が住める島は1つのみ。植物はほとんど生えていません。

「スヴァールバル条約」を批准している国の国民であれば、スヴァールバル諸島に「ビザなし」で住め、しかも「外国人の戸籍のまま商売」ができます。ちなみに、日本もこの条約を批准しています。

2012年時点で、2642人が島で暮らしています。大部分がノルウェー人ですが外国人も暮らしていて、439人のロシア人、10人のポーランド人、その他タイ、デンマーク、スウェーデンの人が暮らしています。

この条約は、今から100年近く前の条約ですが、1920年代から'30年代にかけて各国が加盟しました。ところが昨年になって突然、このスヴァールバル条約に、ロシアの後押しを受けて、北極海になど、何の縁もない北朝鮮が加盟したのです。これは朝鮮人労働者の受け入れの他は、金ファミリーの亡命目的以外には考えにくいです。

しかも現在、島内のロシア人居住地区で、大邸宅の建設が始まっていることまで分かっています。

スヴァールバルはスピッツベルゲン島という名前でも知られている。
今でもロシア人が生活している唯一のバレンツブルクという集落
これを知れば、なぜ金正恩委員長があそこまで強気でいられるのか、その理由が理解できます。いざとなればロシアが逃がしてくれるという「保険」があるのです。

プーチン政権は、核の技術もミサイルの技術も提供したあげく、亡命先まで用意したのです。金正恩にとってこれほど頼もしい庇護者はいません。

しかもプーチン政権には、シリアがあれほど激烈な内戦のさなかにあっても、6年半にわたってアサド政権を守り続けてきたという実績があります。

プーチン政権がそこまで金正恩政権に肩入れする理由としては、やはり極東におけるアメリカと中国という両大国への剥き出しの牽制だと考えられます。

米中露「3大国」とは言うものの、ロシアの経済力は米中に較べて圧倒的に脆弱です。ロシアの現在のGDPは日本の1/5程度であり現在の韓国と同水準です。ロシアの人口は日本よりわずかに多い、1億4千万人、そうして極東には600万人くらいしかロシア人が住んでおらず、強い危機意識を抱いています。だから「東アジアのシリア」を作りたいのです。

もう一つは、天然ガスのパイプラインを、韓国まで引きたいという野望があります。9月6日、7日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムに、プーチン大統領と韓国の文在寅大統領が揃って参加し、この話を詰めています。気をよくした文在寅大統領は、北朝鮮に800万ドルの人道支援を表明しました。

これも、人道支援を大義名分にしてシリアを支配したプーチン大統領の入れ知恵でしょう。

プーチンロシア大統領
ロシアから韓国に天然ガスのパイプラインを引く計画は、'08年に李明博大統領がロシアを訪問した際に盛り上がった話です。ロシアのハバロフスク、ハサンから北朝鮮の元山を経て、韓国の仁川まで約2000kmを結ぶ壮大な計画です。

北朝鮮にはパイプラインの通行料として年間1億ドルを支払う予定でしたが、韓国の命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算になりました。


2011年10月3日のボイスオブロシアによれば、ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、ロシアの半国営の天然ガス:PNG独占企業であるガスプロム Gazpromに対して、日本、韓国と中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう指示したとあります。

つまり、プーチンの頭の中には、日本、韓国、中国を巻き込んだ「国家成長プログラム」が出来上がったと言う事でした。

東北の大震災直後、当時民主党政権だった、日本政府は将来のエネルギー不足を見越してロシアの天然ガス取得に対して積極策に出ることをロシアに伝え、ロシアはこれを受け、一連の開発を前倒しにし、同時に韓国、中国への供給も早める対応を取りました。

これには、当時次期大統領を着々と狙う、プーチン首相の思惑が働いたとみるべきでしょう。恐らく彼は、日本の大震災を好機と取ったはずです。

すでに、サハリン州の天然ガス田から日本海側の港湾都市ウラジオストクを結ぶ全長約1820キロのパイプラインの完成式典が2011年9月8日ウラジオストクVladivostokで行われ、プーチン氏も参加しました。

次はこれを北朝鮮経由で韓国に送り込む事(2017年稼動予定で、その際には経由する北朝鮮内700kmに1億ドルの収入が見込まれる)の実現で、2011年8月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が9年ぶりに訪露し、協議の場でロシアは、北朝鮮の協力に対し食糧援助を約束し、これをロシアは2011年9月末に完了しました。

全ては着々と進行し、全てが完成したときに、ロシアは日中韓の経済を握るとの目論見だったのでしょう。しかし、この計画は日本では、民主党政権の崩壊とともに潰え、韓国でも、命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算となりました。

その計画を、9年ぶりにロシアと韓国、北朝鮮で復活させようというわけです。そんな「密談」が進んでいるところに、安倍首相が出かけて行って、プーチン大統領に「北朝鮮への圧力」を説いたのです。

これを考えると、文在寅の最近の不可解な動きも理解できます。米国は朝鮮半島周辺海域に、原子力空母3隻を集め、11~14日(ブログ管理人注:昨年11月)に米日韓3カ国の合同軍事演習を行い、北朝鮮に圧力をかける予定でした。ところが、韓国が突然『日本とやるのは嫌だ』と言い出し、米日、米韓とバラバラになったのです。北朝鮮やロシアは大喜びでしょう。

文在寅は、中国に踊らされただけではなく、裏ではロシアにも踊らされたというわけです。最近、米国のWSJ紙が韓国に対して痛烈な批判を行いましたが、背景にはこのようなこともあったのです。

文在寅とプーチン
さて、いざとなれば、ロシアが金ファミリーを亡命させるという選択肢があるということは、我々も認識しておくべきです。

これに関しては、当然のことながら、トランプ大統領、安倍総理、習近平も知っていることでしょう。その上で、ポスト北朝鮮危機後の世界をなるべく自分たちに有利になるように立ち回っているというのが、実体でしょう。
"
金正恩は、リビア方式での核廃棄を米国に確約しなければなりません。しかし、そうなると、後にカダフィーのような運命をたどることになるかもしれない恐怖に苛まされているに違いありません。

であれば、米朝首脳会談では、トランプ大統領にリビア方式での核廃棄を確約するとともに、その直後に家族もろともにロシアに亡命し、そのままスヴァールバル諸島に行くというシナリオも十分に考えられます。

それに向けての準備のため、金正恩は習近平に会ったのかもしれません。自分が亡命した後は、中国に近い人間を指導者とした新たな指導者をたてることなどを相談にいき、自らの亡命に賛同してもらったかもしれません。

それがその通りになるかどうかは別にして、金正恩とその家族はそれで延命をはかることはできるかもしれません。

そうして、その後の北朝鮮の運命に関しては、すでに日米中露の間で一定のコンセンサスに達している可能性があります。これについては、従来の日米中露の首脳会談等で話し合われ(この話あいを私はこのブログでは北朝鮮版ヤルタ会談と呼んでいます)、おそらく日米中露にとって譲れる範囲内のコンセンサスとなっていることでしょう。八方美人的で経済的にも軍事的にも重要ではない韓国は蚊帳の外でしょう。

日米首脳会談を直前に行うのは、このコンセンサスに向けての韓国抜きの同盟国としての最終的な準備に入ることと、拉致被害者問題の対処についての話し合いを行うためでしょう。

北朝鮮問題の解決は、マスコミ報道などとは全く異なったものになるかもしれません。

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2018年4月2日月曜日

テレビ局がそれでも「森友改ざん問題」を報じるときに疑うべきこと―【私の論評】テレビ局の執拗な安倍攻撃は、「放送制度改革」への反発である(゚д゚)!

テレビ局がそれでも「森友改ざん問題」を報じるときに疑うべきこと
あとは検察に任せるべきはずなのに
髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 プロフィール

支持率は下げ止まったのか

先週火曜日に開かれた佐川氏の国会証人喚問がどのように世論に影響したのか。注目の世論調査がでてきた。

共同通信社が3月31日、4月1日の両日に実施した世論調査によると、内閣支持率は42.4%(前回比3.7ポイント増)、不支持は47.5%(前回比0.7ポイント減)だった(なお、前回調査は3月17、18日だ)。また、佐川氏の証言に対して、納得できないとする回答は72.6%だった。

証人喚問に応える佐川氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


また、読売新聞社も同時期に世論調査を実施しており、内閣支持率は42%(前回比6ポイント減)、不支持率50%(前回比8%ポイント増)だった。やはり、佐川氏の証言に納得できないという人は75%である(なお、読売新聞の前回調査は3月9~11日だ)。

共同通信社と読売新聞社の調査は前回調査時点が異なっているので、前回比の動きがちょっと違う。佐川氏の辞任が3月9日。その後、急速に内閣支持率が下がっていったので、共同通信社の前回調査の方が内閣支持率が下がっていて当たり前である。

ということは、内閣支持率は下げ止まった可能性がある。もっとも、世論調査は各種のものを総合的に判断する必要があるので、断定はできないが。

一方で、佐川氏の証言に対して、納得できないという人はかなりの数に上っている。これは、刑事事件の捜査対象になっていることから、多くの場面で答弁を拒否したことが原因であろう。

もっとも、この点はあらかじめ予想されていたことである。議院証言法では、「証人は、自己……が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。」(第4条第1項)と定められているので、これを否定したら人権問題になる。もちろん、この点については、証人に告げられている(議員証言法第1条の5)。

一部の野党は「佐川氏は50回以上も証言拒否をした」というが、逆に言えば、その分だけ拒否されるのがわかっていた質問をしたわけで、まったく野党の議員には芸がないといわざるを得ない(議院証言法を理解していれば、こうして証言拒否をされることは分かっていたはずだ)。

さて、決裁文書改さんについては、佐川氏は「理財局内でやったこと」だとし、財務省の他局のみならず、官邸の首相、官房長官、補佐官、秘書官らの指示、協議などが一切なかったと証言した。これは、偽証罪に問われるかもしれない国会の証人喚問の場で出た新しい発言だ。

もし野党が理財局以外も関係しているというならば、「疑惑が深まった」と叫ぶだけでなく、佐川氏を偽証罪で告発すべきだ、となる。

ちょっと刺激的な言い方になるが、ハッキリ言えば元官僚の佐川氏であれば、国会での四時間程度の「尋問」を凌ぐことは楽である。国会議員の質問力がたいしたことないからだ。しかし、捜査当局が証拠を示しながら、1日8時間くらいの尋問を1週間くらいやられたら、さすがの佐川氏も音を上げるかもしれない。

が、もはや国会での「政治ショー」は必要ない。改ざん事件の真相解明は捜査当局に委ねた方がいいだろう。捜査当局も、国会証人喚問後に、佐川氏に事情聴取しているという。これから、財務省文書改ざん問題は刑事事件として捜査当局へ移っていくだろう。

「約8割が起訴」の衝撃

ところで、過去の国会証人喚問をみると、かなりの人が刑事訴追されている。過去30年間で、佐川氏を除くと延べ56回、45人の証人喚問が行われた。


この45人のうち、時期の前後を含めると起訴されているのは23人で5割以上である。1990年代前半の「証券損失補填問題」や「佐川急便問題」ではほとんど起訴されていないので、過去20年間でみると、述べ18回、14人の証人喚問が行われ、約8割の11人が起訴されている。

内容は、追及されている問題そのものであったり、国会での証言が偽証であった、などあるが、約8割とはかなりの確率である。捜査当局も、なんだかんだで世論の動きを見ているので、証人喚問までされた人物になにもしないままでいるわけにはいかないということで、こうした高い起訴率になるのだろう。

佐川氏の場合、悪質な改ざんではなく、文章の一部削除なので、刑事罰の適用は難しいという人もいるが、これまでの高い起訴率や「納得できない」という世論があることを考えると、事情聴取後、起訴される確率が結構あるように思える。

起訴された場合、文書改ざんを理財局内でやったことなのかどうかもわかるだろう。森友学園の案件そのものは、現場の近畿財務局がやったことなので、当初は理財局だけで処理していたのは間違いないだろうが、はたして理財局内だけで対応していたのかどうか。

さて、今後の「テレビ報道」はどうなるか

関係者からの事情聴取や、佐川氏の携帯電話等の通話記録などを捜査当局は調べることになるはずだ。そうした捜査情報は、今後たびたびリークされるだろう。そのたびに、財務省文書改ざん問題は盛り上がるかもしれない。しかし、傾向的には、徐々にトーンダウンしていくだろう。

というのは、どうやら先週火曜日の佐川氏の証人喚問、午前中の視聴率は高かったが、午後に入ると低下したと聞くからだ。テレビはなんとも現金なもので、視聴率が取れない問題については積極的には報じなくなる。

国会の証人喚問自体が盛り上がらず、佐川氏のキャラクターも(籠池夫妻とは異なり)地味なので、視聴率が取れないとテレビ関係者はいう。このため、ワイドショーも急速に佐川氏を取り上げなくなった。そうしたことが、内閣支持率の低下に歯止めをかけているのかもしれない。

テレビの取り上げ方ひとつで、一時的な内閣支持率が上下するとはなんとも情けない話だが、それも十分にあり得る話だ。これは、昨年から見られる傾向で、いくら筆者などが「真相はこれだ」といっても意味はなく、テレビがその問題をどれだけ報じるかで支持率が変わってしまうのは経験済みである。

テレビで一時的にネガティブに取り上げられても、そのうちネタ切れとなり、視聴者が飽きてしまい、視聴率が落ちてくる。そうなると、番組はますますその問題を取り上げなくなり、結局、下がっていた内閣支持率が下げどまる、というのは、これまで何度も見られたパターンだ。

今回はどうなるか。テレビもさすがに「この問題はしっかり報じよう」と、かなり踏ん張るかもしれない。というのも、いま、安倍政権側からメディアに対してカウンターパンチが出ているからだ。

そのカウンターパンチとは、「放送制度改革」のことである。その一部は、昨年12月11日付けの本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53787)で書いた電波オークションである。加えて、政府は「政治的公平」などを定めた放送法4条の撤廃方針や、ソフトとハードの分離などを打ち出したと報じられている

この話は、実は10年ほど前に検討されたことがある。筆者は官僚時代の2006年当時、総務大臣の補佐官を務めたことがある。そのとき筆者はもっぱら郵政民営化と地方財政を担当していたので、放送行政は担当外だったが、通信と放送の融合に合わせた放送制度改革が議論されていた。

放送法で規制されていることが、今後は通信技術の発展によって有名無実化するので、放送制度改革を急がなければならないというのは「常識的」なものであったが、実際には、放送の既得権益者(テレビ局など)が抵抗し、改革は全く進まなかった。

ブラックジョークか…?

総務省在籍当時、筆者の仕事部屋は大臣室の隣にある秘書官室だった。筆者とは面識のない多数の人が秘書官室に訪れ、名刺を配っていく。筆者も秘書官室の一員であったので、彼らの名刺をいただいた。それをみると、ほとんどがメディア関係の人たちだ。

その中には、「波取り記者」と呼ばれる人も含まれていた。「波取り記者」の「波」とは電波のことで、いわゆる「電波利権」を確保するために電波行政のロビイングをする人たちのことをこう呼んでいた(こうした人はテレビ業界だけでなく新聞業界にもいた)。

彼らの政治パワーは強力で、その結果として改革が全く進まなかった。これによって、日本の電波・放送行政が先進国で最も遅れることとなった。本来であれば、10年以上前にやっておくべきであったのだが、それが出来ずに、時間を無駄にしてしまった(で、結局今になって再度の提案となったわけだ)。

技術の進展は目覚ましく、インターネットを使っての「放送」は安価に誰でもできるようになった。筆者も私塾をやっているが、かつては講義内容をテキストにして配信していたが、今ではビデオ配信だ。その方がコストも安く、速報性にも優れている。いうなれば、いまや電波の希少性を超えて、誰でも「放送」ができるようになったわけだ(念のためだが、この「放送」は、放送法の範囲外である)。

これまでは、電波は希少性があるものなので、与えられる対象は少なくならざるを得ず、少数の既得権者は、公共のために放送法を遵守しなければならないという理屈だった。だが、電波の希少性という物理的な制約がなくなれば、放送法の規制は最小必要限度でよいことになり、様々な主体の参入を認めて、その競争に委ねるという政策が可能になる。ようやく放送制度改革の機が熟したと言えるだろう。

これはもはや世界の常識なのだが、放送業界は抵抗するだろう。例えば、放送法4条の撤廃については、早速「番組の質の低下をまねいたり、政治的に偏った番組が放送される懸念がある」という、反論が出ている。

番組の質の低下を心配するということは、いまの番組は質が高い、ということを前提としている。これについては、部外者から失笑が出ている。また、いま現在でも、政治的にやや偏っていると思われる番組が多いことを一般の視聴者は感じているので、放送業界の反論はブラックジョークに見えてしまう。

番組の質や政治的に偏向しているかどうかは、放送業界が上から目線で決めつけるのではなく、視聴者の判断に委ねるべき、というのが成熟した民主主義国のあり方ではないだろうか。もちろん、その前提として国際標準の規制の下で十分な競争があることが必要である。

いずれにせよ、視聴率が下がっているのに、なおこの改ざん問題が報じられるときは、「メディアの使命」を掲げてそれを続けているのか、あるいは「放送制度改革」への抵抗なのか、をよく見極める必要があるだろう。

【私の論評】テレビ局の執拗な安倍攻撃は、「放送制度改革」への反発である(゚д゚)!

佐川氏の証人喚問は、私の予想通りの結果になりました。結局、佐川氏は、核心的な部分に関しては、「私自身、刑事訴追のおそれがありますので、そこの答弁は控えさせて頂きたいと思います」として答えませんでした。

しかし、これは篭池氏の答弁でも核心部分化に迫ると同じような答えをしていたことから、十分に予想がついたことです。

こういうときに、効果的なのは、やはり現在まで公開されている資料をよく読み込み、さらには独自に調査をした上で、新たな事実ゃ、矛盾点を指摘するような方法をとれば、まだまともな証人喚問になったかもしれません。

テレビのワイドショーを主な情報源とする、ワイドショー民はシンプルな話を好みます。これは、政治の世界でも、小泉元首相が用いた「ワンフレーズ・ポリティクス」といわれる、『自民党を変えます』『日本を変えます』『構造改革なくして景気回復なし』という、すべて15秒以内のスローガンの羅列で政治を語るという手法がもてはやされるようになりました。

小泉元総理の「ワンフレーズ・ポリティクス」は日本の政局を動かした

広告業界では従来から15秒のコマーシャルの中で『ワン・コマーシャルでワン・メッセージでないと伝わらない』といわれており、これを聞いて小泉さんは、多言を弄するのではなく、ワン・メッセージで端的にいう大切さを悟ったと言われています。

いくらテレビで、安倍首相や昭恵夫人の「疑惑」を演出してみたところで、佐川氏などの証言から、シンプルに、誰にでもわかりやすく「疑念」が本当であることを「ワンフレーズで」立証してみせなけば、ワイドショー民はすぐに飽きてしまいます。

しかし、このようなことは、過去に何度もあり、その度に安倍首相や自民党の支持率が落ちたのですが、結局元通りになるといことを何度も繰り返してきました。

さらに、ワイドショー民には誰にでもわかる、悪役が必要です。時代劇でいえば、「越後屋と悪代官」のような存在が必要です。

ワイドショー民にはシンプルさと悪役が必要

野党やマスコミは、安倍首相や昭恵夫人を悪役に仕立てようとしたのですが、結局過去1年間いわゆる「疑惑」を追求し続けてきたのですが、結局何もでてきませんでした。

そうして、佐川氏の証人喚問でもシンプルで誰にでも簡単に納得できるような内容の証言はありませんでしたし、佐川氏や財務省を悪役に仕立てることもできませんでした。

これでは、さすがのワイドショー民も飽きてしまいます。今後、森友問題を政局に利用しようとしても無理があります。今後も森友問題の追求を続けることは、さらに野党を弱体化するだけになるでしょう。

後は検察の仕事であることはいうまでもありません。そもそも、野党には検察のような真似はできないことがはっきりしています。今後、森友問題にかかわりつづければ、野党はますます弱体化するだけです。

それこそ、ブログ冒頭の記事にもあるように「テレビで一時的にネガティブに取り上げられても、そのうちネタ切れとなり、視聴者が飽きてしまい、視聴率が落ちてくる。そうなると、番組はますますその問題を取り上げなくなり、結局、下がっていた内閣支持率が下げどまる、というのは、これまで何度も見られたパターン」を繰り返すだけで、野党の悪あがきは徒労におわるだけです。過去にこれを何度も繰り返してきて、未だに気づいていないようなので、情けないといえば情けないです。

政府が「放送制度改革」を検討しているのは、テレビ局が既得権化してしまっているからです。なぜ既得権益かしているかといえば、地上波放送事業への新規参入が実質的に不可能になっているからです。

総務省の認可を受けた場合にしかテレビ放送事業はできません。「放送法」によって免許制度になっているわけですが、このことがテレビ局を既得権まみれにしている最大の原因です。

はっきり言おう。「電波オークション」をやらないことが、テレビの問題なのです。電波オークションとは、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかけることです。

日本では電波オークションが行われないために、電波の権利のほとんどを、既存のメディアが取ってしまっています。たとえば、地上波のテレビ局が、CS放送でもBS放送でも3つも4つチャンネルを持ってしまっているのもそのためです。

電波オークションをしないために利権がそのままになり、テレビ局はその恩典に与っています。テレビ局は「電波利用料を取られている」と主張するのですが、その額は数十億円程度といったところです。もしオークションにかければ、現在のテレビ局が支払うべき電波利用料は2000億円から3000億円は下らないでしょう。現在のテレビ局は、100分の1、数十分の1の費用で特権を手にしているのです。

つまり、テレビ局からすると、絶対に電波オークションは避けたいわけです。そのために、放送法・放送政策を管轄する総務省に働きかけることになります。

その総務省も、実際は電波オークションを実施したら、その分収入があるのは分かっているはずです。それをしないのは、テレビ局は新規参入を防いで既得権を守るため、総務省は「ある目的」のために、互いに協力関係を結んでいるからです。

そこで出てくるのが「放送法」だ。昨今、政治によるメディアへの介入を問題視するニュースがよく流れてくるようになったので、ご存じの方も多いと思います。話題の中心になるのが、放送法の4条。放送法4条とは以下の様な条文です。

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

 一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二  政治的に公平であること。
 三  報道は事実をまげないですること。
 四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

これを根拠に、政府側は「放送法を守り、政治的に公平な報道を心がけよ」と言い、さらに電波法76条に基づく「停波」もあり得るというわけです。

一方で左巻きの人々は、放送法4条は「倫理規範だ」とする。つまり、単なる道徳上の努力義務しかない、と反論をしています。

しかしこれは、なんともつまらない議論です。

そもそも、世界ではそんな議論をしている国はないです。「放送法を守れ」「これは倫理規範だ」なんてつまらない議論をするのではなく、「市場原理に任せ、自由競争をすればいい」だけの話です。

電波オークションによって放送局が自由に参入して競争が起これば、質の高い報道や番組が生まれるはずです。おかしなことを言っていたら人気がなくなるし、人気があれば視聴者を獲得しスポンサーも付きます。そうやって放送局が淘汰されれば、放送法など必要ないはずです。

繰り返すしますが、電波オークションをやると一番困るのは既存の放送局です。だから、必死になって電波オークションが行われないように世論を誘導しているのです。

総務省はその事情を知っているから、「放送法」をチラつかせます。「テレビの利権を守ってやっているのだから、放送法を守れよ」というわけです。それはテレビ局も重々承知。言ってしまえば、マスコミは役所と持ちつ持たれつの関係になっているのです。

しかし、政府のほうとしては、このようや持ちつ持たれつの関係はやめて、「放送制度改革」をして、電波オークションを実施しようとしているわけです。そうなると、放送局としては死活問題です。

だからこそ、ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「いずれにせよ、視聴率が下がっているのに、なおこの改ざん問題が報じられるときは、「メディアの使命」を掲げてそれを続けているのか、あるいは「放送制度改革」への抵抗なのか、をよく見極める必要があるだろう」としているのです。

私自身は、そもそもテレビ局によるいわゆる「安倍攻撃」そのもの自体が、やはり「放送制度改革」への抵抗であると思います。だから、この抵抗を排除していただくため、そうして既得権で守られた放送局に活を入れて、もっとまともな番組を作らせるためにも何としても実行してもらいたいです。

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2018年4月1日日曜日

「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む―【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!

「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む

中国経済が抱える爆弾

ドクターZ

デタラメを暴く、ナンバー2

3月19日、中国の全人代(全国人民代表大会)は政府機能を担う国務院の副首相や閣僚を選出した。

中国副首相 左より 韓正、孫春蘭、胡春華、劉鶴 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。

この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。

これまで、経済政策は李克強首相が主導してきた。李氏は遼寧省の党委員会書記だったころ、「李克強指数」で有名になった。

これは、中国が発表するGDP統計は信頼できず、それよりも鉄道貨物の輸送量、銀行融資残高、電力消費の各統計から経済指数を導き出したほうが、信頼度が高いと発言したことに由来する。実際欧米のシンクタンクでは「李克強指数」を使って中国の経済の実力を測ろうとしてきた。

李克強氏

このエピソードが示すとおり、李氏は中国の経済の実態に通じていて、なかなか指摘しづらい政府のごまかしを率直に指摘してきた人物でもある。

しかし、劉氏の副首相起用で、李首相の影響力は一段と低下するだろう。筆頭副首相に共産党序列7位の韓正氏をあてたのも、政権運営で反抗分子となる存在を作らないためだと考えれば合点がいく。

「不良債権」問題

ところで、中国の経済問題として懸念されるのは、膨らみ続ける債務の問題である。ありていにいえば「不良債権」なのだが、中国政府の言い分では、「不良」ではなくあくまで「大き過ぎる」債務なのだそうだ。

欧米の不良債権問題への対応はシンプルで、回収可能性を国際的な会計基準から判定し、回収不能となれば債権償却する。このプロセスには裁量の余地は少なく、機械的に処理していくだけだ。

一方、中国の過剰債務に関する処理は国際基準から程遠い。そもそも中国は会計基準も国際的なものから遅れている。

たとえば証券市場には適切な会計基準が不可欠だが、中国の証券市場には根本的に根付いていない。証券市場では企業による自由な証券の売買が認められることが資本主義の常識だが、中国では「管理されるべきもの」との考え方が残っている。

また、証券市場の発展は国有企業の民営化をもたらすものなので、一党独裁かつ社会主義の中国では、なかなか国際標準化しないという事情もある。

きちんとしたGDPの統計も持たない中国では、当然会計基準も国際レベル未満だし、結果として正確な不良債権の額すら把握できていない。

中国の公式統計では、金融機関が保有する資産の2%程度が不良債権額としているが、海外のあるシンクタンクによればその10倍に膨れ上がっていると指摘される。

こうした中国経済のデタラメを暴く存在になるかもしれない李首相の封じ込めが、今回の全人代の人事には意図されているのだ。

『週刊現代』2018年4月7日号より

【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!

さて李克強指数と公に公表されている統計数値の比較によって最近の中国の経済成長をみてみます。



中国では2月の株価下落で市場が動揺しましたが、さほど大きな問題とはなっていないようです。しかし、今年に入って中国の内モンゴル自治区、天津市が域内GDP(域内総生産)の「水増し」を認めるという出来事がありました。

中国のGDP(国内総生産)統計に対する疑念は今に始まったことではありませんが、ほかの地域や国全体の統計にも少なからず不正があることでしょう。この疑念が強くなったのは上海株の暴落などによって景気が悪化していた2015年あたりからでした。

ここで注目すべきは、過去に水増しが行われていたことそれ自体ではなく、2015~2016年の水増しの影響が今も残っている可能性が高いという点です。この影響が、2018年の世界経済にとって思わぬリスクとなる可能性があるということです。

過去の水増しが残るというのは、たとえば2016年に1%ポイントだけ成長率が水増しされていたとすれば、成長率を計算する際の「発射台」がカサ上げされるため、2017年の成長率が低くなってしまうというテクニカルなものです。

本当の2017年の成長率は公式統計が示す以上に高かった可能性があります。さらに、このような過去の水増しによるテクニカルな影響だけでなく、「水増し分のつじつま合わせ」のために、各地域が2017年にあえて低い成長率を設定したとすれば、本当はさらに成長率が高かった可能性があります。

実際に、GDPと連動するといわれている李克強指数(鉄道貨物輸送量、電力生産量、銀行融資残高の前年比〈%〉を平均したもの)との連動性は2015年あたりから失われ、2015~2016年の公式GDPの伸び率は李克強指数よりも高かった一方、2017年はむしろ公式統計のほうが弱い結果となっていました。

実際の中国GDP成長率は、李克強指数が示すように2015年は2~3%台、2016年は4~5%台まで鈍化していた可能性があります。そして、2017年は逆に8~9%台まで成長率が加速していたとみられます。

なお、李克強指数もまた実際の経済成長率を反映できていないという批判があることには留意が必要です。一般に経済が成熟化すればサービス業のシェアが拡大するが、鉄道貨物輸送量ではサービス業の成長をとらえることができない、などの指摘があります

とはいえ、ほかに適当な指標もないことから、今回はこの李克強指数をベースに中国経済鈍化が世界経済に与える影響を探ってみます。

さて中国の2018年の経済成長率目標は2017年と同じ「6.5%前後」となる見込みです。公式統計を信じ、仮にこの目標どおりの成長を達成したとすれば2018年のGDP成長率は2017年の6.9%から0.4%ポイントの鈍化にとどまることになります。現状では世界経済全体に対して中国経済の動向があくまでもテールリスク(市場において、ほとんど起こらないはずの想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスク)としてしかみられていないのは、成長鈍化が小幅にとどまると予想されているからです。

しかし、李克強指数が正しいとすれば、0.4%ポイントではすまないことになります。数%は確実であり、これは予想範囲外ということになります。さらに、中国経済に不安が生じた場合に金融市場(特に2017年後半に急上昇した各国の株式市場)に与える影響もあり、これらを含めて考えれば、2018年の世界経済のリスクは一段と大きいことが予想されます。

胡錦濤派である李克強氏の封じ込めは、このようなことを中国内外に悟られないようにするための措置なのでしょう。ただし、いくら李克強氏を封じ込めてこうした危機がないかのように装ったとしても、実際に経済が落ち込めば、そのリスクは顕在化することになります。

ただし、来年には特に国内向けに、習近平にとって都合の良い形で、またGDPの数値が公表されることになると考えられます。ただし、そんなことをしても、国内外の市場関係者の中国に対する不信感を増幅させることになるだけのことです。

さらに、中国にはこの問題だけではなく、ブログ冒頭の記事にもあるように、不良債権の問題もあります。こちらのほうは、GDPよりもさらに分析しがたいものになっています。

なぜこのようなことがおこるのかといえば、中国では民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分になされていないからです。

北京の人民大会堂で、3月5日~15日まで開かれた第12回全国人民代表大会。
5日の開幕式に参加した習近平国家主席と李克強首相 

民主化ということでいえば、中国には選挙制度というものがなく、共産党の幹部を選ぶのも指名です。こういうことから、中国には正式には他の先進国などにみられる、政治家は存在しません。存在するのは、すべて官僚です。官僚だけが、中国を動かしているのです。

そうして、官僚組織でもある中国共産党は憲法よりも上に位置している存在です。結局気共産党の都合により何もかも共産党の恣意というか、現実的には共産党内の権力闘争の結果に帰するということです。

そうして、それは経済すらも例外ではありません。そのため、中国では政治と経済は分離されておらず、共産党が経済を管理します。しかし、一国の経済など管理しきれるものではありません。そのため、どんどん上記で述べたような矛盾が蓄積していくことになります。

さらには、先に述べたように、中国共産党は憲法より上の存在ですから、当然のことながら、法治国家化も十分ではなく、法律に基づいて行われるのは、共産党にとってそれが都合の良いときだけです。

ということは、共産党の管理により経済上の矛盾が蓄積したとしても、それを止める手立てはないということです。矛盾を解消するために、さらなる矛盾が蓄積していくことになり、ますますカオスの世界に突入するだけです。

それでも、中国が過去に崩壊しなかったのは、どれだけ矛盾が発生しても、共産党にとって都合が良くなるように、国家権力によって、むりやりにそれを解消してきたからです。

しかし、国内ではそれはできても、外国にまでそれを拡張することはできません。中国国内では、それができるのかもしれませんが、それを恐れて外国企業などは中国国内から資金を引き上げることになります。中国政府がそれを妨害したとしても、今度は海外からの投資はなくなることになります。

この中国共産党が外国でも、国内と同じように何でも共産党の思い通りにできるようすることを目指したのが、習近平の一帯一路であり、それを金融的に裏付けるものがAIIBなのですが、この試みも最初から頓挫するのが目に見えていることは、このブログでも何度か掲載してきましたので、ここでは詳しくは述べません。

このままだと、中国には社会的にも、経済的にも、ますます矛盾が蓄積していきます。さらに、この矛盾が海外にまで飛び火することになります。実際、南シナ海、尖閣諸島、インド国境その他多くの地域に飛び火しています。中国社会はすでに崩壊していますが、それは共産党が無理やりに繕って何とか機能させています。

しかし、経済・金融はそのようなわけにはいきません。中国の官僚は自由主義経済の本質などには無知ですから、中国経済・金融や対外関係を管理できるものとの幻想を抱いていますが、それは不可能です。いずれ、矛盾に矛盾が積み重なり管理不能の状態になります。何かの弥縫策を打ったとしても、今度は別の何かが悪くなり、それに対して弥縫策を打つと今度は別の何かが悪くなるというモグラたたきのようなことを繰り返すことになります。

もうその時期が近づいていると考えられます。過去のように共産党により無理やり繕って機能させることはできなくなります。いくら管理しようとしても、中国共産党の管理能力を超えた矛盾の蓄積はいかんともしがたいものになります。

今のままでは、習近平の独裁は10年持たずに崩壊します。この後には、中国共産党も統治の正当性を完璧に失い崩壊することになります。

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2018年3月31日土曜日

トランプ氏、次は米韓同盟破棄か 「反米・親中・従北」の文在寅政権への強い不信感 接近する中朝韓に対抗し「日米台連携」も―【私の論評】韓国より台湾のほうが日米のシーパワー強化拡張に有利(゚д゚)!

トランプ氏、次は米韓同盟破棄か 「反米・親中・従北」の文在寅政権への強い不信感 接近する中朝韓に対抗し「日米台連携」も

トランプ大統領

 ドナルド・トランプ米大統領は、衝撃の「外交カード」を切るのか-。5月に見込まれる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談で、恒久的な「朝鮮半島の非核化」を条件に、「米韓同盟破棄」を容認する可能性が指摘されている。背景に「反米・親中・従北」という韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権への強い不信感がある。26日の中朝首脳会談や、4月27日の南北首脳会談を横目に、米国は台湾への「軍事的プレゼンス」を高めるとの観測もある。「完全な非核化」のハードルは高いなか、接近する中朝韓に対抗し、「日米台連携」による東アジアの安全保障体制が構築される可能性もある。

 「北朝鮮が、完全で検証可能かつ不可逆的な方法で核放棄をすることと引き換えに、トランプ氏が在韓米軍の撤退に応じることはあり得る。その場合、日本が朝鮮半島と対峙(たいじ)する最前線となり、日米同盟の一層の強化が求められる」

 国際政治学者の藤井厳喜氏は、衝撃の予測事態を提示した。

 トランプ氏の文政権に対する不信は根強い。

 昨年9月の日米韓首脳会談直前、文政権は突然、北朝鮮に800万ドル(約8億9000万円)相当の人道支援目的の拠出を決定した。平昌(ピョンチャン)冬季五輪に際しては、米国が制裁対象としている正恩氏の妹、与正(ヨジョン)氏の開会式出席を容認したほか、期間中の米韓合同軍事演習の見送りも強く主張した。

 藤井氏は「米韓同盟の破棄は、日本にとって、必ずしも悪いことではない」と指摘し、続けた。

 「米国は、『従北』の韓国に配慮する必要がなくなり、日本との同盟関係を一層重視する。今後は、軍事的膨張を続ける中国に対抗し、日米両国が台湾の安全保障に協力する方向に進むだろう」

 日本と台湾の交流を進める「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長によると、同会は近く、「日米の安全保障に関する共同訓練に台湾を参加させるべきだ」と、日本政界に提言するという。

 実は、米国と台湾は最近、急接近している。

 米台高官らの相互訪問を促す「台湾旅行法」が16日、米国で成立した。すでに、アレックス・ウォン米国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)や、イアン・ステフ米商務次官補代理が訪台し、エド・ロイス米下院外交委員長(共和党)も27日、台湾の蔡英文総統と総統府で会談した。

 米台関係の強化を図る取り組みは、軍事レベルでも進んでいる。

 新しい大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に内定したジョン・ボルトン元国連大使は昨年1月、米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿した論文で「台湾への米軍駐留」を提言した。

 もし実現すれば、中国が軍事拠点化を進める南シナ海や、中国海軍が沖縄県・尖閣諸島周辺への進出を繰り返す東シナ海での有事に、迅速に対応することが可能になる。

 現在、台湾の米国大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)台北事務所が建て替え工事中だが、完成後、世界各国の大使館、領事館の警備を担当している海兵隊が警備を担当するとの情報もある。

 前出の柚原氏は「これが実現すれば、台湾も、主権国家並みの位置づけになる。AITの新たな台北事務所は今年6月に開所式が開かれるが、海兵隊は数百人規模になるともいわれている。米国の『台湾重視の象徴』となり、軍事や経済で脅威を増す中国への揺さぶりになるだろう」と話す。

 当然、米台の接近に、中国は神経をとがらせている。

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「習近平国家主席は『台湾統一』を成し遂げたい。正恩氏と会談したのも、『北朝鮮との関係悪化を解消し、台湾問題にシフトしたい』という意志のあらわれではないか」と分析し、続けた。

 「中朝首脳会談で『非核化』が議題になったと伝えられるが、そう単純ではない。習氏は、北朝鮮に『核・ミサイル』を開発させ、台湾牽制(けんせい)の拠点にすると伝えられた江沢民元国家主席時代の再来を狙っている可能性がある。日本は米国を通じて台湾と緊密に連携していく必要があるが、台湾の軍部には中国系スパイがはびこり、情報漏洩(ろうえい)のリスクがある。慎重な対応が必要だ」

 台湾は、日本と東アジアの平和と安定を確保するための「生命線」(藤井氏)だ。東アジア情勢は、さらなる変化を遂げそうだ。

【私の論評】韓国より台湾のほうが日米のシーパワー強化拡張に有利(゚д゚)!

米国が第二次大戦後、太平洋西部に配置した防衛線は、かつて「アチソンライン」と呼ばれました。アチソンラインはハリー・トルーマン大統領のもと、国務長官に就任したディーン・アチソンが共産主義を封じ込めるために考案したもので、アリューシャン列島から宗谷海峡、日本海を経て、対馬海峡から台湾東部、フィリピンからグアムにいたる海上に設定されました。

アチソン国務長官は、この防衛線を「不後退防衛線」と呼び、もし、共産主義勢力がこのラインを越えて東に進出すれば、米国は軍事力でこれを阻止すると表明しました。当時はランドパワーのソビエトが海洋進出を推し進めようとしていた時期であり、これを阻止するための米国の地政戦略がアチソンラインでした。

ただ、このアチソンラインには重大な欠陥がありました。朝鮮半島の韓国の防衛や台湾の防衛が明確にされておらず、むしろこれらの地域を避けるように東側に防衛線が設定されていたため、誤ったメッセージを発信してしまったのです。北朝鮮が、このアチソンラインの意味を読み誤り、米国が朝鮮半島に介入しないと解釈したことが朝鮮戦争の引き金をひくことになったというのが定説です。

このように、はなはだ評判の悪い防衛線ではありましたが、現代でも米国は海軍の艦艇をこのアチソンラインに沿った海域に定期的に展開させており、海上の防衛線と言う意味では、アチソンラインはいまだに米国の安全保障戦略の中に息づいていると言ってよいです。

ただ、現代では、韓国と台湾はいずれも米国の防衛の対象とされていますから、現代の「新アチソンライン」は、アリューシャン列島から宗谷海峡、朝鮮半島の中央を突き抜けて、東シナ海から台湾海峡を通り、南シナ海へ抜けるルートであると解釈すべきでしょう。実際、米国の海軍艦艇は、現代でも、この線の東側で活動するのが一般的であり、西側に進出することはほとんどないです。



一方、これに対抗して中国が1990年代に設置した防衛線が、第一列島線と第二列島線であす。第一列島線は、九州を起点として南西諸島、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至る防衛線であり、中国は有事の際、第一列島線より西側は中国が支配することを狙っているといわれています。一方、第二列島線は、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアに至る防衛線であり、中国は有事の際、第二列島線より西側に、米国の空母攻撃部隊を接近させない方針だといわれています。

つまり、米国の防衛線、新アチソンラインよりはるか東側に中国は二重の防衛線を設置していることになる。この米国の新アチソンラインと中国の2つの列島線に挟まれた海域こそ、日米と中国の利害が真っ向から衝突する海域ということになります。

そうして、この海域には、日本の生命線であるシーレーンが集中しています。シーレーンは中東方面から物資を日本に輸送する船が航行する海上交通路であり、日本の輸入する原油の90パーセント近くが、中東からシーレーンを通って運ばれてきています。

シーレーンは、インドネシア周辺のマラッカ海峡から南シナ海を経由して、バシー海峡から太平洋に入り、南西諸島の東側に至り、日本本土に達するルートか、もしくは、インドネシアのロンボク海峡から、フィリピンの東側の太平洋を北上して、南西諸島に通じる遠回りのルートの2つがあるが、いずれも南西諸島の東沖で合流し、日本本土へ達します。つまり、南西諸島の東側の海域は、日本のシーレーンが集中する海域であり、日本の死活的利益がここにあります。

そして、まさにその海域で米国の防衛線と中国の防衛線が向かい合っています。米国の新アチソンラインは南西諸島のすぐ西側を台湾海峡に向かって南下し、これに対する中国の第一列島線は、まさに南西諸島そのものに設置されています。

南西諸島は、日本の九州から台湾にかけて連なるおよそ1200キロに及ぶ長大な島嶼群ですが、そのほぼ中央に沖縄本島が位置し、そこに米軍基地が集中しているのです。つまり、日本の生命線の中心に米軍は駐留していることになります。

このように、地政学的に見た場合、沖縄を中心とした南西諸島周辺は、日本にとってシーレーンが集中する戦略的要衝であると同時に、米国と日本という太平洋の二大海洋国家・シーパワーと、中国という新興の内陸国家・ランドパワーのせめぎ合いの場であり、その中心に位置する沖縄がいかに日本や米国にとって重要な戦略拠点であるかはこれ以上の論を俟たないでしょう。

そうして、台湾も沖縄本島近くでありながら、第一列島線よりも左側にあり、より大陸中国に近い位置にあります。

韓国と台湾の違いは何かといえば、韓国は半島とはいいながら、大陸と陸続きです。大陸に属する国は、ランドパワーを蓄積することになります。台湾、沖縄、日本は島嶼です。島嶼に位置する国は、シーパワーを蓄積することになります。



ランドパワーとシーパワーのいずれが強いかということは、単純に比較することはできませんが、過去においては、欧州の大陸国家に長期間優位を保ち続けてきたイギリスをみれば、シーパワーのほうが強そうです。

そうして、それは現在でもそうです。明らかにシーパワーです。世界の勢力図を見れば明らかです。

そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換の概念です。米国は本来陸軍国でしたし、過去の日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーであって、シーパワーは、地理的要因によるものだけではありません。

シーパワー国家は海軍より先に、他国に比し突出した資本が存在していたのです。要するにもともと強い国。

ただ、島国の場合は、昔からシーパワーを蓄積してきた歴史があるということです。現在は中国がそれを目指して努力しています。ただし、シーパワーは資本を蓄積したからといってすぐに蓄積されるものではなく、長い間の経験とノウハウの積み上げが必要不可欠です。

シーパワー国家は自身が地域ナンバー1の強者なので、自分と同等に近い、大陸ナンバー1を仮想敵に据えます。すると何が起こるかというと、大陸ナンバー1の一国を相手にするだけで、周辺国をすべて味方にできます。その方が安全保障上も、通商上も都合が良いし、孤立せず常に大陸に影響力を発揮できるからです。

さて、このあたりを考慮すると、韓国のシーパワーは確かに脆弱です。そもそも、総合的な軍事力で脆弱なのですが、その中でも海軍力は脆弱です。とはいいながら、大陸に地続きであるといことから、ランドパワーをおろそかにすることはできません。となると、どうしてもシーパワーは中途半端にならざるを得ません。北朝鮮には核があるだけで、シーパワーは無きに等しいです。

台湾も、現状では軍事力が脆弱ですが、それでもボルトン氏が提唱するように、米軍が駐留するようになれば、話は違ってきますし、それに経済的にも大陸中国よりは一人あたりGDPも大きいわけですから、これからシーパワーを蓄積することも可能です。

台湾海軍

シーパワー国である、日米が韓国と台湾を比較した場合、どちらの同盟関係を強化したほうが良いかといえば、明らかに台湾のほうが、シーパワーを総合的に拡張するという面では有利です。

ただし、韓国はやはり、中国陣営と直接接するのでなく、緩衝地帯としての価値はあります。だから、すぐに韓国から米軍を撤退させるべきではないと思います。緩衝地帯があるとないとでは、かなり安全保証面での考え方が異なります。特に、日本にとっては、韓国という緩衝地帯があるということは重要でありなおざりにはできません。

ただし、台湾と韓国を比較すれば、明らかに日本にとっても、台湾のほうが価値が高いです。台湾を中国領にされることは、日米にとって、シーパワーの拡張の機会を失うことになります。

日米が、台湾との同盟を強化すれば、未だ脆弱な中国のシーパワーを封じ込めることにかなり有利になります。

やはり台湾は大陸中国から守り抜き、日米台の同盟を強化すべきでしょう。そうして、ブログ冒頭の記事に掲載されているように、"「完全な非核化」のハードルは高いなか、接近する中朝韓に対抗し、「日米台連携」による東アジアの安全保障体制が構築される可能性"も十分にあり得ます。

米国は、韓国から米軍を引き上げ、日米台の同盟を強化し、台湾には米海兵隊を駐留させるとともに、日米艦船が台湾に頻繁に寄港したり、駐留させることにより、中国のシーパワーを封じ込めることには、余程大きく寄与するかもしれません。

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2018年3月30日金曜日

中朝“血の同盟”にトランプ氏激怒 軍事オプションに障害…「核・ミサイル開発」時間稼ぎ許す恐れも―【私の論評】米による北核関連施設爆撃の可能性は捨てきれない(゚д゚)!

中朝“血の同盟”にトランプ氏激怒 軍事オプションに障害…「核・ミサイル開発」時間稼ぎ許す恐れも

急接近した習氏と正恩氏に、トランプ氏(写真)は警戒を強めている

 ドナルド・トランプ米政権が、中国と北朝鮮に冷徹な目を注いでいる。習近平国家主席と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による電撃的な中朝首脳会談で「朝鮮半島の非核化」が話し合われたが、北朝鮮には「核・ミサイル開発」を放棄する兆候がまったくないからだ。「中朝軍事同盟復活」と「在韓米軍撤退」の謀略とは。米国は、北朝鮮への不信感を高めており、さらに対北圧力を強化するとの見方もある。

金正恩夫妻と習近平夫妻 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 「昨晩、習氏から『正恩氏との会談は非常にうまくいき、正恩氏が私との会談を楽しみにしている』というメッセージを受け取った。ただ、残念ながら、それまでの間、最大限の制裁と圧力(maximum sanctions and pressure)は、何としても維持され続けなければならない!」

 トランプ氏は28日、自身のツイッターにこう書き込んだ。

マイク・ポンペオ氏

 中国と北朝鮮が急接近した背景には、米国主導の対北制裁が効果を発揮していることに加え、トランプ大統領が、次期国務長官にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、大統領補佐官(国家安全保障担当)にジョン・ボルトン元国連大使を内定するなど、軍事的選択肢を排除しない対北強硬派を抜擢(ばってき)したことが大きそうだ。

ジョン・ボルトン氏

 トランプ氏の投稿は、それを裏付けている。ツイッターでは「会談が楽しみだ!」と、対話による北朝鮮の「核・ミサイル開発」放棄にも期待を寄せたが、「最大限の圧力維持」という表現には、中朝の急接近への「警戒感」もうかがえる。

 現に、中国国営・新華社通信の記事で、習氏は「われわれ双方は『中朝の伝統的友誼』を絶えず伝承していくべきだと何度も表明している」といい、正恩氏は「金日成(キム・イルソン)主席と、金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓に従って、『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力することは、われわれの変わらない立場だ」と語ったと伝えられた。

 これは極めて危険だ。

 「中朝の伝統的友誼」とは、朝鮮戦争を通じて血で固められた「血の友誼(ゆうぎ)」を意味するとみられる。正恩氏の最高指導者就任後、中朝関係は冷却化した。中国では中朝友好協力相互援助条約の「参戦条項」の無効を主張する声もあったが、復活した可能性が高い。米国が軍事オプションを選択する際の大きな障害となるのは確実だ。中朝接近を示すかのように、会談では習氏の訪朝も決まった。

 「朝鮮半島の非核化」には、北朝鮮の「核・ミサイル開発」の放棄だけではなく、その延長上に「在韓米軍の撤退」も視野に入っている。正恩氏が5月の米朝首脳会議でこれを持ち出し、「従北」といえる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が支持しかねないのだ。

 「北朝鮮主導の朝鮮統一」もあり得る展開だが、正恩氏の発言は簡単には信用はできない。

 北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は中朝首脳会談は伝えたが、正恩氏の「『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力する」という発言には、まったく触れていない。

 そもそも、正恩氏は2012年に修正した憲法に「核保有国」と明記している。北朝鮮にとって核保有は「国是」である。国際社会との取引材料も「核」しかない同国にとって、核は体制維持の生命線なのだ。

 北朝鮮の核開発継続を示す動きもある。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は27日、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設にある実験用軽水炉(ELWR)の試験運用が始まった兆候が確認されたとする、商業衛星写真(写真下)に基づく分析を伝えた。



 中朝首脳会談をめぐる、北朝鮮と中国の思惑も、実に疑わしい。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮としては、南北首脳会談や米朝首脳会談に向けて、中国という『虎の威』を借りて自らの立場を強くする狙いだろう。中国は、米中貿易戦争の兆しもみえるなか、北朝鮮との太い関係を見せつけることで、『われわれ中国を敵に回せば、米朝首脳会談も思い通りにならない』という米国へのメッセージを示したのではないか」と話す。

 「対米けん制」で利害が一致した両国だが、北朝鮮に「核・ミサイル開発」の時間稼ぎを許す恐れもありそうだ。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「中国は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長国だ。中朝韓で『6カ国協議を再開するから、制裁を一部解除してほしい』と言い出す恐れも考えられる。ただ、(新しい米大統領補佐官の)ボルトン氏は『(北朝鮮の)非核化はリビア方式以外にはない』と公言している。リビア方式とは、情報機関の人間が入って核査察を実施することだ。これでリビアは核物質だけでなく、ミサイルと化学兵器物質も出した。対北強硬派がトランプ氏の側近に就くので、米国がだまされる可能性は減るだろう」と語っている。

【私の論評】米による北核関連施設爆撃の可能性は捨てきれない(゚д゚)!

北朝鮮は、これまで何度も核放棄をするといいつつ、騙してきたことは、先日もこのブログに掲載しました。以下に、北朝鮮による騙しの歴史をこの記事から引用します。

1994年:米朝協議
アメリカが軽水炉2基の建設を支持し、重油も提供。その代わりに、北朝鮮が核開発を凍結することで合意。ところが、北朝鮮は裏で核開発を続け、後に核兵器の保有を表明
2005年:6か国協議で北朝鮮が全ての核兵器を放棄することを約束
しかし、2006年10月に北朝鮮は初の核実験を実施
2007年:6か国協議で寧辺(ニョンピョン)核施設の閉鎖・封印を約束
しかし、北朝鮮は核実験・ミサイル発射など挑発行為を継続
2012年:米朝合意 ウラン濃縮や核実験の一時停止
しかし、2013年に北朝鮮は核実験を実施
北朝鮮は過去4回も、騙しています。2005年には、6カ国協議で寧辺核施設の閉鎖・封鎖を約束したにもかかわらず、北朝鮮は核実験・ミサイル発射の挑発行為を継続しました。そうして、ブログ冒頭の記事にもあるように、寧辺の核施設にある実験用軽水炉(ELWR)の試験運用が始まった兆候が確認されています。



このような状況で、米国がまた騙されるということは考えにくいです。そこで金正恩としては、今度は中国の保証を取り付けて米朝首脳会談に臨む作戦でしょう。

しかし、米朝首脳会談には間違いなく、ボルトン氏も随行するでしょう。

米国のラジオ自由アジア電子版は3月23日、ボルトン次期大統領補佐官( 国家安全保障問題担当)がインタビューで、米朝首脳会談を提案した北朝鮮について「非核化に真剣ではなく(核・ミサイル技術向上のための)時間稼ぎをしていると思う」と語ったと報じました。

ボルトン氏は「北朝鮮が非核化に向けた真剣な話し合いをする用意がないなら、首脳会談は短時間で終わるだろう」と述べ、核放棄を要求しました。インタビューはボルトン氏の補佐官起用発表前の19日に実施されました。北朝鮮への軍事攻撃について「誰も求めていない」とする一方で「北朝鮮に核兵器を持たせるのも誤りだ」と訴えました。

元米国国連大使で、超タカ派のネオコン(Neoconservatism、新保守主義〕ジョン・ボルトン氏は2年前、トルーマン元大統領の原爆投下について「トルーマンがしたことは、私からしてみれば、軍事的に正しかっただけではなく、道徳的にも正しかったのです」と明言し、波紋を呼んでいました。

ネオコンとは直訳すると、新保守主義者という意味ですが、これまでの保守主義が経済政策は産業保護、社会政策は伝統主義だったのに対して、経済政策は自由主義、社会政策は伝統主義というのが新保守主義と言われています。

ボルトン氏はイランや北朝鮮に対する軍事力行使を支持したタカ派で、ロシアに対しても強硬路線を主張しました。昨年は、在沖縄米軍の台湾への一部移転を提案しています。
69歳のボルトン氏がジョージ・W・ブッシュ政権時代に国務次官(軍備管理担当)を務めた際には、2003年のイラク侵攻を主唱。ここ数年は保守派の論客として北朝鮮の核問題に対して強硬姿勢をとるよう主張しているほか、15年のイラン核合意の破棄も訴えています。

ボルトン氏はワシントンでは乱暴な人物として知られ、官僚時代は内部闘争を繰り広げました。ジョージ・W・ブッシュ政権時代、国務省の彼の机の上には、信管を外した手投げ弾が置かれていました。


2007年に出版した回顧録のタイトルは、「Surrender Is Not An Option(降伏は選択肢にあらず)」。最も好む批判対象には、イランや北朝鮮、国連や欧州の各国政府、国際条約などが含まれます。

このネオコンは軍産複合体と結託して、攻撃的・好戦的なタカ派を形成しています。この新保守主義は、トランプの支持層でもある保守主義とは異なります。米保守主義では、米国がソ連と対峙していた日本を攻撃したのは間違いであり、だからこそその後ソ連の台頭をまねき、今日北朝鮮の核の脅威にさらされることになったり、中国の台頭を招いたとしています。

米朝首脳会談を伝える韓国メデイア

ボルトン氏の日本の見方はどのようなものなのか、気になるところです。ただし、中国に対しては強硬派であることは間違いないです。
米朝会談で、トランプ大統領に「核武装を放棄しろ」と言われれば「そうする」と金正恩委員長は答えることでしょう。しかし、横からボルトン大統領補佐官)が「証拠を見せろ」と迫れば「核関連施設に中国の査察を受け入れる。中国なら信用できるだろう」と言い返すことになるでしょう。

トランプ政権はそれで納得することはないでしょう。ただし、時間稼ぎにはなる可能性はあります。

しかし、新たに大統領補佐官に就任したボルトン氏も、国務長官に指名されたポンペオ氏も北朝鮮の手口は知りつくしています。容易には騙されることはないでしょう。

そもそも北朝鮮が時間稼ぎに利用してきた6カ国協議も、中国が主導しました。中国も「時間稼ぎ」の共犯者なのです。

中国を巻き込んだ「朝鮮半島の非核化」で米国を騙せるとの自信は北朝鮮にもないでしょう。軍事的な圧迫と経済制裁が強化される中で、金正恩はワラにもすがる気持ちで、最後のカードを切ったということだと考えられます。

この状況が変わらない限り、米朝首脳会談を開催したとしても、米国の北朝鮮への軍事攻撃、特に核関連施設に対する爆撃は大いにあり得るものと見ておくべきです。

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2018年3月29日木曜日

トランプ氏に面子つぶされた習氏 中国は過剰債務と高インフレの懸念、日本は漁夫の利得る可能性も―【私の論評】貿易赤字自体は問題ではない!問題の本質は別にある(゚д゚)!

トランプ氏に面子つぶされた習氏 中国は過剰債務と高インフレの懸念、日本は漁夫の利得る可能性も 高橋洋一  日本の解き方

トランプと習近平

 トランプ米大統領は、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして、通商法301条に基づき追加関税やWTOへの提訴、中国企業の米国投資制限などを打ち出した。中国も対抗措置を打ち出すとして一時、株価下落を招いたが、米中間の本格的な貿易戦争となるのか、ディール(取引)の一種なのか。

 トランプ大統領がディールの一種だと考えていたとしても、中国は面子(メンツ)の国である。特に、習近平国家主席の「独裁皇帝化」のスタート時にトランプ氏が仕掛けてきたわけで、習氏としても売り言葉に買い言葉ですぐに報復措置を打ち出した。当面は、米中間の貿易戦争の様相である。

 この貿易戦争の損得を考えてみると、経済的には中国の方が分が悪い。米国の対中輸入額は対中輸出額の4倍なので、米中の貿易が仮にゼロになったとすれば、中国経済への打撃は米国より大きいだろう。特にそれぞれの雇用に与える影響を考えると、中国の方が米国より雇用喪失の可能性が大きい。

 米国が中国から輸入しているものは、他国からの輸入で代替可能なものが多いが、中国が米国から輸入しているものは自国生産や他国からの輸入で代替できないものが多いので、この点からも中国への打撃は小さいとはいえない。

 この場合、日本は漁夫の利を得る可能性すらある。鉄鋼では当面米国の制裁対象となっているが、その他の製品では、米中が互いに貿易制裁すると、米中は日本との交易で米中間の貿易の減少を補おうとするからだ。

 しかも、政治的な観点でも、米国の方が中国よりメリットがある。というのは、トランプ氏は、大統領選の際の公約を実施しただけであり、公約を守る大統領としてトランプ支持層をしっかり捉えることで再選への道も開けるからだ。

 それに対して中国は習氏の新体制の出ばなをくじかれた格好となった。現在の中国の最大の懸念は、本コラムで紹介したように過剰債務問題である。これをうまく処理するには、生産の拡大が持続することが必要である。そのために、輸出によって国内の余剰生産を海外でさばくことが必須だ。それなのに、輸出の道を閉ざされたら、中国での過剰債務問題がいつ爆発しても不思議ではなくなる。

 米国以外への輸出増のためにも、中国は人民元の切り下げをしてくるだろう。まさに貿易戦争の兆しである。

 他の先進国では変動相場制でインフレ目標があるので、際限のない通貨の切り下げにはならない。しかし、中国は事実上固定相場であり、政府が通貨価値を管理する。しかも、インフレ目標もないので、通貨切り下げは結果として中国国内のインフレ率を高めるだろう。

 そうなると、過剰債務問題のはけ口としての外需拡大がどこまでできるか、インフレ率の上昇に国民がどこまで耐えられるか、中国政府にとってはギリギリのところだ。当分の間、世界経済は米中貿易戦争の混乱に巻き込まれざるを得ない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貿易赤字自体は問題ではない!問題の本質は別にある(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にも、米中の貿易戦争が、米国に有利なことを数字をもって、示されいましたが、その他にもこれを如実に占める数字があります。GDPに占める輸出の割合をみると、米国は数%すぎませんが、中国は30%を超えています。米国からみれば、そもそも輸出そのものが少ないわけですから、その中の対中国ということになれば、ほんとうにわずかな数字でしかありません。

さらに、中国の輸出先は香港が一位であり、米国は二位ですが、香港は統計上は中国とは別ですが、中国の一部のようなものであり、実質的には米国が第一位です。

これは、どう考えても、米中が本格的に貿易戦争に突入したとすると、中国には圧倒的に不利です。

さて、米国内では、2018年1月の米国の貿易収支統計がかつてないほどの注目を集めました。それは、トランプ大統領が、危険なほど断固とした口調で、鉄鋼とアルミニウムを対象とした輸入関税引き上げを表明した直後に発表されたからです。

2018年1月の米国の貿易赤字は、2008年10月以来、単月ベースでは過去最高の566億ドルに達しました。

米国の対中国輸出入金額(過去12ヵ月間合計)
出所:ピクテグループ、米国国勢調査局

また、「政策の争点」とも言えそうな対中国貿易赤字(季節要因調整前)は、2015年9月以来の水準である360億ドル、2018年1月までの12ヵ月間でも3,799億ドルとなりました。

問題は、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税引き上げに関するトランプ大統領の突然の表明がや、その他通商法301条に基づき追加関税やWTOへの提訴、中国企業の米国投資制限を打ち出したことなどが、秋の中間選挙を意識した、支持層の歓心を買うための政治的駆け引きに過ぎないのか、それとも、追加輸入課税(ならびに全面的な貿易戦争に発展するリスク)措置を伴う米国の通商政策の「本物の」レジーム・シフト(体制の急激な変化)を意味するものなのか、ということです。

トランプ大統領の助言役(経済政策の司令塔)だったコーン国家経済会議(NEC)委員長の辞任を含め、足元で政策のより大きなシフトが起こるリスクは増しつつありますが、大統領の表明は、選挙前の政治的駆け引きに過ぎないとも考えられます。

トランプ大統領は、貿易収支が重要だと信じ込んでおり、中国など、一部の国が貿易のルールを守らないのだから、赤字をなくすには輸入品からの保護が必要だと言って譲らないようです。

問題なのはトランプ大統領の見解が正しいか否かは別としても、増加の一途を辿る中国からの輸入は、大統領に輸入制限発動の更なる口実を与えるリスクにもなりかねないことです。

貿易赤字そのものは、このブログに掲載してきたように、家計の赤字のようにみなして、赤字そのものが悪いことのように言うのは間違いです。たとえば、通常景気が良いと輸入は増えます。

ある年の輸出総額が1000億だったとして、輸入総額が900億なら100億の貿易黒字です。次の年輸出が900億に落ち込み、輸入は1000億に伸びたので貿易収支は100億の赤字になったとします。

あるいは、次の年輸出が仮に1100億に伸びたとして、輸入も1200億に伸びていたら貿易収支は100億の赤字になります。

さて、貿易赤字は良いことでしょうか、悪いことでしょうか。正解は、「貿易収支だけを見ても分からない」です。

輸出が増えれば輸出企業が儲かります。輸入が増えれば輸入企業が儲かります。輸入エネルギーや輸入食料の高騰が貿易赤字の原因なら確かに貿易赤字は悪いことといえそうですが、それ以外の場合は、「貿易赤字=悪」とはいえません。一国の経済にとって、貿易赤字などよりも、重要なのは、景気が良いか悪いかということです。

貿易黒字が大幅に出ていても、景気が悪いとか、貿易赤字が大幅に出ていても景気が良いということはおうおうにしてあります。そのときどきで、良いか悪いかを判断すべきものであって、赤字だから悪い、黒字だから良いと単純に判断することはできません。

このことをトランプ氏は良く理解していないようです。このような基本的なことを理解していなければ、TPPなどの自由貿易協定も良くは理解できないでしょう。



そのためでしょうか、トランプ大統領は大統領選挙のときから、TPPを脱退すること公約にしていました。そうして、実際に大統領に就任すると、脱退しました。ところが、TPPに復帰する可能性があることを公表しました。

しかし、貿易赤字についてのトランプ大統領の認識からすると、TPPへの理解など覚束ないようではあります。中国は社会構造的にみてもとうていTPPに加入することはできないですし、結果として中国封じ込めにもなることに気づいたということだけかもしれません。

中国は知財を軽視する傾向にあることは確かですし、そもそも中国自体が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分なされておらず、労働者の権利など守らていないという現実があります。

そのため、労働者を不当な低賃金や、条件で働かせて、その結果他国の労働者の権利を守っている他の国々に比較すると、不当に低い価格で輸出する傾向があるのは否めないです。

たとえば、アップルの中国での生産現場がひどい環境にあることは以前から報じられていましたが、マイクロソフトも例外ではありません。

National Labor Committee(NLC)のレポートではマウス、ウェブカム、Xboxの周辺機器を製造する会社KYEでの劣悪な労働環境を告発しています。KYE社はマイクロソフトを筆頭にHP、ベストバイ、サムソン、Foxconn、エイサー、ロジテックにアスースなど名だたるメーカーへの納入実績があり、K-Martでは自社ブランドGeniusとして販売しています。

劣悪な労働環境で働く中国の労働者

上の写真は、KYE社のものですが、これを見るだけでも異様な雰囲気ですが、実態はさらに深刻でした。

工員は16歳くらいの勤労女子高生が多く、午前7:45から午後10:55までの長時間労働に加え、時給0.65ドル。食事代は天引きされて実質時給0.52ドルという凄まじいものでした。

これらは、米国の製品を組み立てる工場なので、明るみに出たものと考えられますが、中国の企業や、地方などでは、さらに酷い事例もあります。

トランプ大統領は、貿易赤字そのものが悪いなどというトンデモ理論は捨て去り、中国を批判するなら、このようなことで批判し、批判しても是正されないというのなら、これらを是正する方向で制裁を課すべきです。

貿易赤字だからといつて、それだけで相手を批判したり、制裁を課すのは、自由貿易を阻害するだけです。特に、中国よりははるかに労働者の権利を守ってる国々に対して、制裁をするのは間違いです。そのようなことをすれば、自由貿易を阻害するだけです。

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2018年3月28日水曜日

叩きたいあまり、反安倍以外のコメントはボツ 官僚を上げたり下げたり…ご都合主義なメディアの人々―【私の論評】政治とは政党と官僚との化かし合いという現実を忘れるな(゚д゚)!

叩きたいあまり、反安倍以外のコメントはボツ 官僚を上げたり下げたり…ご都合主義なメディアの人々  高橋洋一 日本の解き方



 左派系メディアでは、天下り問題で文部科学省の事務次官を引責辞任した前川喜平氏が正義のヒーローのように扱われている。今回の決裁文書の改竄(かいざん)問題でも、佐川宣寿前国税庁長官を官邸の圧力の被害者のように印象づける動きや、デモで「官僚がんばれ」という人までいる。結論ありきのコメントを求めるメディアも含め、そこにはご都合主義があるように筆者には思えるのだが、いかがなものだろうか。

 ちょうど1年前であるが、文科省による組織的な天下り斡旋(あっせん)が問題になっていた。天下り斡旋は、国家公務員法違反である。これは文科省の調査報告書にも書かれているが、その法律は第1次安倍晋三政権時に成立したものだ。筆者はその企画に関わったが、当時、安倍首相が国会を延長してまでも成立に執念を燃やしたものだ。当然のことながら、天下りの主要路を断たれた官僚からは怨嗟(えんさ)の声があがった。

 実は、筆者はそこで退官したが、この流れをくむ公務員改革は続き、自民党政権末期に、自公と民主が歩み寄って、内閣人事庁などの公務員改革基本法の骨子ができ、第2次安倍政権になって、内閣人事局創設に至った。これらの公務員改革を当時のマスコミは絶賛し、天下りを批判した。1年前の文科省による天下り斡旋についても、マスコミは非難し、その首謀者である前川氏も批判されていた。

 ところが、左派系メディアは、加計学園問題で「総理の意向」と書かれた文科省文書の存在を認めた前川氏が安倍政権批判を始めると、手のひらを返したように持ち上げ始めた。ちなみに前川氏は、メディアで問題とされた新国立競技場の高額発注の責任者でもあった。


 今回の財務省による決裁文書の改竄も、公文書改竄という刑法にも触れうる問題である。それなのに、「佐川氏が忖度(そんたく)せざるをえなくなった」「内閣人事局があるから官僚が萎縮していた」など問題の本質からずれるコメントが目立った。

 政治家から指示があれば、それは刑法違反の共犯にもなりかねないので問題だ。しかし、政治家で決裁文書のことを知っている人はまずおらず、知らなければ指示はできないだろう。

 そこで、忖度とか内閣人事局の問題とかで、なんとか官邸が問題だということに持っていこうとしているのだろう。

 筆者は元財務キャリアで、官邸勤務経験もあるので、官邸への忖度があったのではないかというコメントをしばしばメディアから求められる。しかし、本コラムで書いているように、「財務キャリアが官邸に忖度することはまず考えられない」と言うと、メディアでは使えないコメントして扱われる。メディアはまず結論ありきで、それに合った人のコメントしか扱わないと思った方がいいだろう。

 安倍政権を叩きたいあまり、「反安倍」の人には手のひら返しでも無条件に賛同する一方、エビデンスに基づく客観的な話でも、「反安倍に使えない」と断定して無視するのは、おかしいと思う。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政治とは政党と官僚との化かし合いという現実を忘れるな(゚д゚)!

官僚の果たしている役割とは何かといえば、政府の仕事を実行する事です。また、それを実行するための専門技術・能力を持っているのが官僚です。官僚制と言った場合は、政府全体の体型を指します。

官僚は、執行する側の人間ですから法律通りに前例通りに運営する事が至上命題です。これを、国民に代わり、「シビリアンコントロール」したり、官僚の命題である「法律」を新規に作ったり、改正したりするのが国民の負託と、立法権を持つ「政治家」です。

政治家は官僚をコントロールする為に官僚組織の長として君臨しますが、官僚のもう一つの指名「素人である政治家を補佐する」というものがあります。

素人であ政治家が国家百年の計を乱さないように、補佐するのも官僚の仕事なんですが、政治家が馬鹿だと、いわゆる官僚のレクチャーにより、官僚の都合の良いように政治家は洗脳されてしまいます。管理監督するはずの政治家が管理監督される側の官僚に管理監督されてしまうということがしばしば行われています。ただし、この方は政治家は楽であることはいうまでもありません。

この一番酷い事例は、財務省による増税路線でしょう。復興税、税と社会保障の一体改革による消費税の目的税化など、これらは理論的には破綻しています。

まずは、東日本大震災のような大きな自然災害があったときに、復興税で復興事業を実施するなどということは、古今東西に例をみません。

通常は、償還期間が100年程度の復興債で実施します。なぜなら、復興による工事により再建されたり新たなつくられるインフラなどは、震災を受けた世代だけではなく、後々の世代も使用するものだからです。負担を世代間で平等にわかちあうという趣旨で復興債を用いるのが普通です。

しかし、財務官僚は、ご説明資料などを用いて、政治家にレクチャーし、あたかも復興税がまともな政策であるかのように洗脳し、結局復興税を導入してしまいました。

税と社会保障の一体化による消費税の目的税化なども同じです。そもそも、税の目的税化など不可能です。たとえば、自衛隊が、税を払った人は防衛し、そうでない人は防衛しないとか、税を多めに払った人を優先的に防衛するなどということはできません。社会保険制度も同じことです。

こんなわかりきったことを曲げて財務省は、消費税を増税するために、これを正当化するご説明資料を作成し、政治家にレクチャーし洗脳しました。そのため、現状では、消費税を上げる必要性など全くないのですが、増税はしなければいけないと思い込む政治家がほとんどです。

証人喚問された元財務相理財局長だった佐川氏

ブログ冒頭の記事で高橋氏が批判している前川氏には、他にも多くの問題がありました。たとえば、前川氏は、平成27年9月に安保法制に反対した学生団体「SEALDs(シールズ)」などが国会前で行った集会に参加していたことを明かしていました。

前川氏は2時間近くに及ぶ講演の終盤近くになって、「ここだけ内緒の話ですけど」と前置きして「2年前の9月18日、国会前にいたんです」と切り出した。

前川氏は「集団的自衛権を認めるという解釈は成り立たない。立憲主義に反する」と主張。デモに参加した動機について「今日行かなきゃ、もうないと思ったんですね。その日は安保法制が参議院で成立した日ですから」と語りました。

当時、前川氏は文科省の審議官で翌年の6月、事務次官に就任した。公務員で、しかも省庁事務方のトップを担い、加計学園問題でも参考人招致を受け、今も積極的に発言している前川氏が、従来から安倍政権に批判的だったことを自ら認めた形です。人事院規則では国家公務員は政治的行為ができない事になっています。

一般職国家公務員の政治的行為の制限について

このようなことをして、平気の平左で、しかも自分から告白するような人物である、前川氏など、全く信用できないことはこのことだけでも、明らかです。

官僚は法律・体制の維持、その中での仕事の迅速制を追求します。政治家は法律の改正と、政策を実行するために官僚が立てた計画の変更することが仕事の本筋です。そのため、ある意味で政治家と官僚は、利益は相反する事ところがあります。

余程、政治家が自覚を持ち、勉強して動かないと良い意味でも悪い意味でも、官僚の専横を許してしまうことがあります。

また官僚は各省庁の組織の一員なので、政府の利益より、組織の利益を優先させたり、さらに悪い官僚の場合は、個人の利益を優先させたりすることになります。

これをシビリアンコントロールで排除するのが政治家の仕事なのですが、これができないと、全体的には政府全体が悪い方向へ行く場合もあります。

特に、三権分立の補完や監視が上手く行っていないとそうなります。ただし、官僚制そのものは民間でも広く使われている制度であるため、一概に官僚制度だけが悪いとはいえません。

では、日本の政治のどこが間違いなのでしょうか。それは、いくつもあるかもしれませんが、その中でも最大のものは立憲主義に基づいてた運営が行われていないということでしょう。

立憲主義の前提となるのが、政党の近代化です。それについては、以前このブログにも何度か掲載したことがあります。その典型的な記事のリンクを以下に掲載します。
立民、「首相の解散権制約」の不毛 民進“分裂騒動”の責任押し付けたいだけ 宇佐美典也氏緊急寄稿―【私の論評】立憲主義の立場からも首相の解散権は正しい(゚д゚)!
立憲民主党の枝野代表、実は彼こそ立憲主義とは何かを最も知らない人物かもしれません

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、近代政党に関する部分のみを以下に引用します。
近代政党には、三つの要素があります。 
綱領、組織、議員です。
明確な理念をまとめた綱領がある。綱領に基づいて全国組織が形成されます。全国の政党支部が議員を当選させます。その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決めます。選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下します。この条件に当てはめると、自民党は近代政党ではありません。無論、他の野党も、近代政党とは言い難い状況にあります。
自民党が有する最大のシンクタンクは官僚機構(実体は財務省主計局)ですが、ヨーロッパの政党は官僚機構に対抗できるシンクタンクを自前で揃えています。 
イギリスなどでは、自前でブレーンを用意して勉強した政治家だけが、党の出世階段を上ります。政治の世界の実体は、政党と官僚は化かし合いです。
イギリスの政党は、近代政党ですが、それでも失敗することもあります。たとえば、過去のイギリスでは、付加価値税(日本の消費税にあたる)を増税したのですが、その後若者雇用を忠信に雇用情勢がかなり悪化したため、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)が大規模な金融緩和を実施したのですが、景気はなかなか回復しませんでした。

そのような失敗もあることはあるのですが、時々NHKBSのワールドニュースを見ている限りにおいては、日本の国会よりもはかにまともな国会運営がなされています。

政党が近代化されていれば、日本でも政治家が官僚に恒常的に化かされるということはないかもしれません。

それにしても、日本でいますぐまともな政策を立案できるシンクタンクを機能させることは無理かもしれません。いまのところ、やはり政治家には官僚に化かされない程度の知識を身につけることが最優先課題だと思います。

私達、有権者はそのような政治家を選ぶべきです。そのために、官僚にいつも化かされてばかりの、政治家は選挙で投票しないことです。

特に、増税を手放しで賛成するような政治家には絶対に投票すべきではありません。しかし、そうなると、今の日本ではほとんど投票すべき政治がいなくなってしまうという恐ろしい現実もあります。

ただし、政治はそもそもが、「政党と官僚」の化かしあいということを理解すべきです。これを理解していないと、そもそも政治の本質がわからなくなります。

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