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2018年5月23日水曜日

米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!


文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

 ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国の条件に応じなければ米朝首脳会談(6月12日)を中止すると通告した。ホワイトハウスで22日(米国時間)に行われた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談で明言した。文氏は「米朝の仲介役」として米国に乗り込んだが、完全失敗に終わった。

 「われわれは一定の条件を求めている。それがなければ、(米朝首脳)会談は行われないだろう。会談は北朝鮮と世界にとって素晴らしい機会になる。行われなければ、会談は延期され、別の機会に行われるのではないか」

 米韓首脳会談の冒頭、トランプ氏は記者団にこう述べた。

 北朝鮮は16日、トランプ政権が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を理由に、米朝首脳会談中止を示唆した。得意とする「揺さぶり外交」の一貫だが、トランプ氏は改めて、北朝鮮に「完全非核化」を突きつけた。

 トランプ氏の批判は、北朝鮮に急接近している中国にも及んだ。

 今月7、8日に中国・大連で行われた習近平国家主席と正恩氏による2回目の中朝首脳会談について、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と怒りを押し殺した。

 大連会談で、正恩氏は「関係各国が責任をもって段階的かつ同時並行的な措置を講じ、最終的に朝鮮半島の非核化を実現させることを希望する」と主張した。習氏は、米朝首脳会談で非核化合意に達した場合、中国が段階的支援に乗り出すことが可能との考えを示したとも報じられている。

 トランプ政権は、経済、軍事両面で「最大限の圧力」をかけ、正恩氏を対話に応じさせた。その努力を中国が台無しにしようとしているとするなら大問題だ。

 中国という「後ろ盾」を得て再び、米国への反発に転じた北朝鮮に対し、マイク・ペンス副大統領はクギを刺した。21日に出演した米FOXニュースの報道番組で、「北朝鮮は守る気のない約束で、米国から譲歩を引き出すようなまねはしない方がいい」と述べ、軍事的選択肢を行使する可能性を「一切排除していない」と語ったのだ。

 米国、北朝鮮、中国による駆け引きが続くなか、「米朝の仲介役」を自認し、米国に乗り込んだ文氏の存在感はまるでない。北朝鮮にも会談をキャンセルされるなど、「韓国パッシング」に見舞われている。

【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!

昨年米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」伝えるテレビの画面

米軍が北朝鮮を先制攻撃した場合、最新資料では北朝鮮は1日で壊滅するといわれています。その根拠となるのは、2017年12月4~8日に実施された米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」です。

日本では戦闘機や偵察機など米韓両軍で230機が参加したと伝えられていましたが、11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」発射したことを受けて260機に増強され、史上最大規模の軍事訓練となりました。

詳細はこれまで明らかにされてこなかったのですが、訓練内容を分析した文書を見ると本当に実戦さながらでした。米軍が本当に先制攻撃を仕掛けた場合、その攻撃力は想像を絶します。北朝鮮は報復攻撃さえできずに、早ければ1日で壊滅すると考えられます。

これまで米国が北朝鮮に対して先制攻撃を実行した場合、全面戦争に発展するのは避けられず、北朝鮮の報復攻撃によって日米韓は甚大な被害を受けることが予想されました。

特に非武装地帯(DMZ)の北方に配置された北朝鮮の多連装ロケット砲や長距離砲がいっせいに火を噴き、付近に展開している米陸軍第2歩兵師団が標的になるばかりか、ソウルが“火の海”に化す悲劇も現実味を帯びていました。

北朝鮮の長距離砲

過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがありました。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからです。

しかし、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧されました。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯がありました。

いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の実戦配置も終了したと考えられる、北朝鮮の“脅威”は当時の比ではありません。当然、米国本土も無傷では済まないはずです。

ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されました。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか、公開されている資料などから以下にまとめます。
攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといわれています。 
北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃します。 
F35A
むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩きます。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順です。
B-1B爆撃機
開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜めることになるでしょう。ところが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行します。
さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をします。 
E-8ジョイント・スターズ 
おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは考えにくいです。
仮に、北朝鮮が同時多発的な攻撃を企てたとしても、ほとんどのミサイルが液体燃料のため注入に1~2日かかります。その動向がキャッチされると戦争準備と認められ、米国にとってみれば先制攻撃の口実になります。
やる気になれば、米軍は韓国や日本に従来考えられていたほどの壊滅的な打撃を受けさせることなく、北朝鮮を蹂躙できるわけです。

金正恩として、金王朝存続のためトランプ大統領に北朝鮮の核保有を認めさせたいのでしょうが、トランプ大統領のほうはその気は全くありません。

米国は、北の完璧な核放棄がない限り、いずれ北に攻撃を仕掛けることになるでしょう。現在は、攻撃するにしても、どの規模で、どれくらいの期間攻撃するかを決めるため機会をうかがっているとみるべきでしょう。それでも、金正恩が核放棄に応じれば、別の道を用意する心づもりもあることでしょう。

いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。

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2018年3月31日土曜日

トランプ氏、次は米韓同盟破棄か 「反米・親中・従北」の文在寅政権への強い不信感 接近する中朝韓に対抗し「日米台連携」も―【私の論評】韓国より台湾のほうが日米のシーパワー強化拡張に有利(゚д゚)!

トランプ氏、次は米韓同盟破棄か 「反米・親中・従北」の文在寅政権への強い不信感 接近する中朝韓に対抗し「日米台連携」も

トランプ大統領

 ドナルド・トランプ米大統領は、衝撃の「外交カード」を切るのか-。5月に見込まれる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談で、恒久的な「朝鮮半島の非核化」を条件に、「米韓同盟破棄」を容認する可能性が指摘されている。背景に「反米・親中・従北」という韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権への強い不信感がある。26日の中朝首脳会談や、4月27日の南北首脳会談を横目に、米国は台湾への「軍事的プレゼンス」を高めるとの観測もある。「完全な非核化」のハードルは高いなか、接近する中朝韓に対抗し、「日米台連携」による東アジアの安全保障体制が構築される可能性もある。

 「北朝鮮が、完全で検証可能かつ不可逆的な方法で核放棄をすることと引き換えに、トランプ氏が在韓米軍の撤退に応じることはあり得る。その場合、日本が朝鮮半島と対峙(たいじ)する最前線となり、日米同盟の一層の強化が求められる」

 国際政治学者の藤井厳喜氏は、衝撃の予測事態を提示した。

 トランプ氏の文政権に対する不信は根強い。

 昨年9月の日米韓首脳会談直前、文政権は突然、北朝鮮に800万ドル(約8億9000万円)相当の人道支援目的の拠出を決定した。平昌(ピョンチャン)冬季五輪に際しては、米国が制裁対象としている正恩氏の妹、与正(ヨジョン)氏の開会式出席を容認したほか、期間中の米韓合同軍事演習の見送りも強く主張した。

 藤井氏は「米韓同盟の破棄は、日本にとって、必ずしも悪いことではない」と指摘し、続けた。

 「米国は、『従北』の韓国に配慮する必要がなくなり、日本との同盟関係を一層重視する。今後は、軍事的膨張を続ける中国に対抗し、日米両国が台湾の安全保障に協力する方向に進むだろう」

 日本と台湾の交流を進める「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長によると、同会は近く、「日米の安全保障に関する共同訓練に台湾を参加させるべきだ」と、日本政界に提言するという。

 実は、米国と台湾は最近、急接近している。

 米台高官らの相互訪問を促す「台湾旅行法」が16日、米国で成立した。すでに、アレックス・ウォン米国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)や、イアン・ステフ米商務次官補代理が訪台し、エド・ロイス米下院外交委員長(共和党)も27日、台湾の蔡英文総統と総統府で会談した。

 米台関係の強化を図る取り組みは、軍事レベルでも進んでいる。

 新しい大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に内定したジョン・ボルトン元国連大使は昨年1月、米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿した論文で「台湾への米軍駐留」を提言した。

 もし実現すれば、中国が軍事拠点化を進める南シナ海や、中国海軍が沖縄県・尖閣諸島周辺への進出を繰り返す東シナ海での有事に、迅速に対応することが可能になる。

 現在、台湾の米国大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)台北事務所が建て替え工事中だが、完成後、世界各国の大使館、領事館の警備を担当している海兵隊が警備を担当するとの情報もある。

 前出の柚原氏は「これが実現すれば、台湾も、主権国家並みの位置づけになる。AITの新たな台北事務所は今年6月に開所式が開かれるが、海兵隊は数百人規模になるともいわれている。米国の『台湾重視の象徴』となり、軍事や経済で脅威を増す中国への揺さぶりになるだろう」と話す。

 当然、米台の接近に、中国は神経をとがらせている。

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「習近平国家主席は『台湾統一』を成し遂げたい。正恩氏と会談したのも、『北朝鮮との関係悪化を解消し、台湾問題にシフトしたい』という意志のあらわれではないか」と分析し、続けた。

 「中朝首脳会談で『非核化』が議題になったと伝えられるが、そう単純ではない。習氏は、北朝鮮に『核・ミサイル』を開発させ、台湾牽制(けんせい)の拠点にすると伝えられた江沢民元国家主席時代の再来を狙っている可能性がある。日本は米国を通じて台湾と緊密に連携していく必要があるが、台湾の軍部には中国系スパイがはびこり、情報漏洩(ろうえい)のリスクがある。慎重な対応が必要だ」

 台湾は、日本と東アジアの平和と安定を確保するための「生命線」(藤井氏)だ。東アジア情勢は、さらなる変化を遂げそうだ。

【私の論評】韓国より台湾のほうが日米のシーパワー強化拡張に有利(゚д゚)!

米国が第二次大戦後、太平洋西部に配置した防衛線は、かつて「アチソンライン」と呼ばれました。アチソンラインはハリー・トルーマン大統領のもと、国務長官に就任したディーン・アチソンが共産主義を封じ込めるために考案したもので、アリューシャン列島から宗谷海峡、日本海を経て、対馬海峡から台湾東部、フィリピンからグアムにいたる海上に設定されました。

アチソン国務長官は、この防衛線を「不後退防衛線」と呼び、もし、共産主義勢力がこのラインを越えて東に進出すれば、米国は軍事力でこれを阻止すると表明しました。当時はランドパワーのソビエトが海洋進出を推し進めようとしていた時期であり、これを阻止するための米国の地政戦略がアチソンラインでした。

ただ、このアチソンラインには重大な欠陥がありました。朝鮮半島の韓国の防衛や台湾の防衛が明確にされておらず、むしろこれらの地域を避けるように東側に防衛線が設定されていたため、誤ったメッセージを発信してしまったのです。北朝鮮が、このアチソンラインの意味を読み誤り、米国が朝鮮半島に介入しないと解釈したことが朝鮮戦争の引き金をひくことになったというのが定説です。

このように、はなはだ評判の悪い防衛線ではありましたが、現代でも米国は海軍の艦艇をこのアチソンラインに沿った海域に定期的に展開させており、海上の防衛線と言う意味では、アチソンラインはいまだに米国の安全保障戦略の中に息づいていると言ってよいです。

ただ、現代では、韓国と台湾はいずれも米国の防衛の対象とされていますから、現代の「新アチソンライン」は、アリューシャン列島から宗谷海峡、朝鮮半島の中央を突き抜けて、東シナ海から台湾海峡を通り、南シナ海へ抜けるルートであると解釈すべきでしょう。実際、米国の海軍艦艇は、現代でも、この線の東側で活動するのが一般的であり、西側に進出することはほとんどないです。



一方、これに対抗して中国が1990年代に設置した防衛線が、第一列島線と第二列島線であす。第一列島線は、九州を起点として南西諸島、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至る防衛線であり、中国は有事の際、第一列島線より西側は中国が支配することを狙っているといわれています。一方、第二列島線は、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアに至る防衛線であり、中国は有事の際、第二列島線より西側に、米国の空母攻撃部隊を接近させない方針だといわれています。

つまり、米国の防衛線、新アチソンラインよりはるか東側に中国は二重の防衛線を設置していることになる。この米国の新アチソンラインと中国の2つの列島線に挟まれた海域こそ、日米と中国の利害が真っ向から衝突する海域ということになります。

そうして、この海域には、日本の生命線であるシーレーンが集中しています。シーレーンは中東方面から物資を日本に輸送する船が航行する海上交通路であり、日本の輸入する原油の90パーセント近くが、中東からシーレーンを通って運ばれてきています。

シーレーンは、インドネシア周辺のマラッカ海峡から南シナ海を経由して、バシー海峡から太平洋に入り、南西諸島の東側に至り、日本本土に達するルートか、もしくは、インドネシアのロンボク海峡から、フィリピンの東側の太平洋を北上して、南西諸島に通じる遠回りのルートの2つがあるが、いずれも南西諸島の東沖で合流し、日本本土へ達します。つまり、南西諸島の東側の海域は、日本のシーレーンが集中する海域であり、日本の死活的利益がここにあります。

そして、まさにその海域で米国の防衛線と中国の防衛線が向かい合っています。米国の新アチソンラインは南西諸島のすぐ西側を台湾海峡に向かって南下し、これに対する中国の第一列島線は、まさに南西諸島そのものに設置されています。

南西諸島は、日本の九州から台湾にかけて連なるおよそ1200キロに及ぶ長大な島嶼群ですが、そのほぼ中央に沖縄本島が位置し、そこに米軍基地が集中しているのです。つまり、日本の生命線の中心に米軍は駐留していることになります。

このように、地政学的に見た場合、沖縄を中心とした南西諸島周辺は、日本にとってシーレーンが集中する戦略的要衝であると同時に、米国と日本という太平洋の二大海洋国家・シーパワーと、中国という新興の内陸国家・ランドパワーのせめぎ合いの場であり、その中心に位置する沖縄がいかに日本や米国にとって重要な戦略拠点であるかはこれ以上の論を俟たないでしょう。

そうして、台湾も沖縄本島近くでありながら、第一列島線よりも左側にあり、より大陸中国に近い位置にあります。

韓国と台湾の違いは何かといえば、韓国は半島とはいいながら、大陸と陸続きです。大陸に属する国は、ランドパワーを蓄積することになります。台湾、沖縄、日本は島嶼です。島嶼に位置する国は、シーパワーを蓄積することになります。



ランドパワーとシーパワーのいずれが強いかということは、単純に比較することはできませんが、過去においては、欧州の大陸国家に長期間優位を保ち続けてきたイギリスをみれば、シーパワーのほうが強そうです。

そうして、それは現在でもそうです。明らかにシーパワーです。世界の勢力図を見れば明らかです。

そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換の概念です。米国は本来陸軍国でしたし、過去の日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーであって、シーパワーは、地理的要因によるものだけではありません。

シーパワー国家は海軍より先に、他国に比し突出した資本が存在していたのです。要するにもともと強い国。

ただ、島国の場合は、昔からシーパワーを蓄積してきた歴史があるということです。現在は中国がそれを目指して努力しています。ただし、シーパワーは資本を蓄積したからといってすぐに蓄積されるものではなく、長い間の経験とノウハウの積み上げが必要不可欠です。

シーパワー国家は自身が地域ナンバー1の強者なので、自分と同等に近い、大陸ナンバー1を仮想敵に据えます。すると何が起こるかというと、大陸ナンバー1の一国を相手にするだけで、周辺国をすべて味方にできます。その方が安全保障上も、通商上も都合が良いし、孤立せず常に大陸に影響力を発揮できるからです。

さて、このあたりを考慮すると、韓国のシーパワーは確かに脆弱です。そもそも、総合的な軍事力で脆弱なのですが、その中でも海軍力は脆弱です。とはいいながら、大陸に地続きであるといことから、ランドパワーをおろそかにすることはできません。となると、どうしてもシーパワーは中途半端にならざるを得ません。北朝鮮には核があるだけで、シーパワーは無きに等しいです。

台湾も、現状では軍事力が脆弱ですが、それでもボルトン氏が提唱するように、米軍が駐留するようになれば、話は違ってきますし、それに経済的にも大陸中国よりは一人あたりGDPも大きいわけですから、これからシーパワーを蓄積することも可能です。

台湾海軍

シーパワー国である、日米が韓国と台湾を比較した場合、どちらの同盟関係を強化したほうが良いかといえば、明らかに台湾のほうが、シーパワーを総合的に拡張するという面では有利です。

ただし、韓国はやはり、中国陣営と直接接するのでなく、緩衝地帯としての価値はあります。だから、すぐに韓国から米軍を撤退させるべきではないと思います。緩衝地帯があるとないとでは、かなり安全保証面での考え方が異なります。特に、日本にとっては、韓国という緩衝地帯があるということは重要でありなおざりにはできません。

ただし、台湾と韓国を比較すれば、明らかに日本にとっても、台湾のほうが価値が高いです。台湾を中国領にされることは、日米にとって、シーパワーの拡張の機会を失うことになります。

日米が、台湾との同盟を強化すれば、未だ脆弱な中国のシーパワーを封じ込めることにかなり有利になります。

やはり台湾は大陸中国から守り抜き、日米台の同盟を強化すべきでしょう。そうして、ブログ冒頭の記事に掲載されているように、"「完全な非核化」のハードルは高いなか、接近する中朝韓に対抗し、「日米台連携」による東アジアの安全保障体制が構築される可能性"も十分にあり得ます。

米国は、韓国から米軍を引き上げ、日米台の同盟を強化し、台湾には米海兵隊を駐留させるとともに、日米艦船が台湾に頻繁に寄港したり、駐留させることにより、中国のシーパワーを封じ込めることには、余程大きく寄与するかもしれません。

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