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2018年11月24日土曜日

トランプ氏激怒!? 「ゴーン斬り」に隠れた国際事情…米仏一触即発か―【私の論評】仏国有会社ルノーの日産買収が成就すれば、中国を増長させる(゚д゚)!


トランプ大統領

日産自動車は22日、代表取締役会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反容疑で逮捕=の会長職を解いた。20年近い「ゴーン支配」は終わった。東京地検特捜部の捜査で、豪腕経営者による異常な守銭奴ぶりが明らかになっている。ただ、今回の「ゴーン斬り」には、単なる経済事件と思えない、国際的要因が絡んでいるとの指摘もある。ドナルド・トランプ米政権が、ゴーン容疑者率いるフランス自動車大手ルノーを警戒・激怒していたとの分析、米仏関係の悪化、米中経済戦争との関わりに迫った。

 《フランスの自動車大手ルノー、「アメリカの制裁に関係なくイランでの活動を継続」》

 イランのニュースサイト「Pars Today」(日本語版)は今年6月16日、このようなニュースを報じた。

 ルノーの最高責任者(CEO)のゴーン容疑者が、定時株主総会で、「わが社はイランでの活動の縮小を迫られても、イランからは撤退しない」と発言したという内容だった。

 トランプ大統領は前月、オバマ政権下で締結されたイラン核合意を「ひどい内容だ」として、離脱と経済制裁再開を発表した。だが、合意6カ国のうち、米国と距離がある中国とロシアだけでなく、NATO(北大西洋条約機構)の同盟国であるフランスと英国、ドイツも核合意を維持した。

ルノーにとってイランは、フランス、ブラジルに次ぐ、第3の販売市場という。ゴーン容疑者の発言は、約15%を保有する筆頭株主であるフランス政府の方針に沿ったものだが、日米情報当局関係者は「トランプ政権が、ゴーン容疑者とルノー、フランス政府に激怒し、警戒を強めても不思議ではない」と語る。

 現時点で、米メディアは「ゴーン容疑者逮捕」のニュースを淡々と伝えている。ただ、米国とフランスは最近、関係が悪化している。

 エマニュエル・マクロン仏大統領は今月6日、欧州の自主防衛のため、「欧州軍」創設を提案した。ドイツのメルケル首相も「欧州軍創設構想に取り組むべきだ」と賛同した。

 これに対し、トランプ氏はツイッターで「侮辱的な話だ」「欧州軍は、米国に対抗する欧州自衛の軍だ」「欧州側はまず(NATO分担金支払いの)義務を果たせ」などと激しく反発した。

 第一次世界大戦終結100年の記念式典が11日、パリで開催されたが、米国と欧州の安全保障をめぐる亀裂が鮮明となった。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ政権が、ゴーン容疑者の逮捕で、ルノーによる『日産支配』が弱まることを好感している可能性がある」といい、続けた。

 「当初、トランプ氏とマクロン氏の関係は良かったが、最近、米仏関係は完全にこじれている。加えて、米中経済戦争が激化していたなか、ゴーン容疑者は『中国は最も成長性のあるEV(電気自動車)市場だ』といい、ルノー・日産グループによる中国への投資を拡大していた。トランプ政権には『親中派』と映ったかもしれない。ルノーの取締役会は20日、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)職の解任を先送りした。これは、仏政府による対日戦略とともに、対米戦略とも言えそうだ」

ルノーは日産株の43%を保有する一方、日産はルノー株を15%しか保有していない。収益力や企業規模で大きく上回る日産が、資本関係ではルノーの下に置かれている。仏政府は、ルノーによる子会社化で日産への支配権を強めようとしていた。

 これは、日本側だけでなく、トランプ政権も警戒していたはずだ。

 トランプ氏は2年後の大統領再選を目指して、雇用改善や経済再生に取り組んでいる。もし、関係が悪化している仏政府が、米国内に多数の工場を持ち、多くの雇用を生み出している日産への支配権を強めることは、懸念材料を残すことになる。

 ゴーン容疑者の逮捕を受け、日産はルノーとの提携関係について、持ち株比率を含め、提携のあり方を検討するという。日本政府も「日産の独立性」を守る立場とみられ、トランプ政権にも好都合なのだ。

 前出の藤井氏は「9月の日米首脳会談後に出た共同声明で、『日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から、日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する』と明記された。トランプ政権としては、ゴーン容疑者の逮捕を受けて、日産が非市場志向型の中国から、米国に投資を振り向け、雇用もつくってくれると期待しているかもしれない」と語った。

【私の論評】仏国有会社ルノーの日産買収が成就すれば、中国を増長させる(゚д゚)!

フランス大統領のマクロンは日産を買収して工場や本社をフランスに移転したい意図をもっているようです。雇用や生産を日本から奪う計画のようですが、日本のマスコミは相変わらずピンボケで、これを伝えません。

日本の企業が外国に買収されるとは最終的に工場も本社も資本も一切を奪いつくすということです。日産を買収したルノーはフランス政府が出資する国有企業で、吸収されると日産はフランス政府の所有物になるのです。

ルノーというと、一時フランスの国営企業だった時代があります。創業者のルイ・ルノーが第二次世界大戦のときにナチスに協力したために処刑され、会社も国営化されてルノー公団になりました。この時に商品のラインナップも高額車中心から大衆車中心に変わりました。

詳しくはウィキペディアご覧になってください。1945年から1990年までは公団(≒国営企業)で、その後は国有化され、1996年には民営化されたことにはなっていますが、未だに国が株を所有していて、未だに完璧に民営化されているわけではありません。

それどころか、2015年仏政府は、ルノー株を買い増すと発表しました。フランスの自動車大手ルノーが2015年5月30日開いた株主総会で、株式を2年以上保有した株主に2倍の議決権を与える新ルールの導入が決まりました。

ルノーをめぐる関係は以下のような図式となりました。



この新ルール採用を後押ししたマクロン仏経済産業デジタル相は「長期保有の株主を優遇する資本主義を守れた」と歓迎しました。このマクロン仏経済産業デジタル相こそ、今日のマクロン仏大統領です。

筆頭株主である仏政府の経営への影響拡大を恐れるルノー・日産自動車連合は同ルール採用に反対したのですが、仏政府が導入を後押ししました。

発端は仏政府が同年5月8日、ルノー株を買い増すと発表したことでした。国内産業や雇用保護を目的に2014年に制定した通称「フロランジュ法」を適用する狙いでした。同法は株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与えると定めてあります。

ただ株主総会で投票者の3分の2が反対すれば適用されません。ルノー経営陣は株主総会に現行制度存続を求める議案を提出したのですが、仏政府はルノー株を一時的に買い増して否決に持ち込んだのです。

仏政府のルノーへの議決権は従来の15%から28%に増えることになりまし。かたや日産はルノー株を15%保有しながら議決権はゼロ。すでに大株主の座にある仏政府の影響力がさらに増すことは健全なことではありません。そうして関係者が懸念するのは、ルノーを通じて仏政府が日産の経営に影響を及ぼす事態です。

例えば日産が13年に発表したルノー工場での日産車の生産計画。欧州景気の悪化が続く中、国内の雇用確保を仏政府がルノーに強く訴えたことで日産が「支援」に動いたとされます。28%の議決権を持った仏政府が、日産が望まない事業対応をルノー・日産連合に求める可能性も否定できません。

ルノーが43.4%の日産株を、日産が議決権の無い15%のルノー株を保有する持ち合いの姿は、ゴーン元会長が、「アライアンスの成功の象徴」と賞賛していました。仏政府の議決権増に対応して日産に15%の議決権を与えるとの対抗案も浮上する。その場合は提携バランスに影響を及ぼしかねず、ルノーの日産への持ち株比率をどうするかも焦点となっていました。

これは何のことはない、フランス政府もっといえば、当時のマクロン仏経済産業デジタル相の日産乗っ取り計画の一環で行われたものです。無論これは、フランスでは合法であり、フランス人の中にはこのマクロンの行為を愛国的なものと評価する人も多く存在すると思います。

マクロン大統領

しかし、日産の幹部らは、あの時のマクロンへの怨嗟を忘れていなかったのです。この時の思いが、ゴーン会長退陣劇につながったのでしょう。

米国や各国は外国企業や政府の買収を監視し、審査したうえで拒否できる制度になっています。

ところが日本は外国政府が日本企業を買収する行為を禁止しておらず、ルノー買収に関してもあまり問題にしてきませんでした。

これだと例えば人民日報が朝日新聞を買収することもできるし(もう実質的にそうしているのかもしれないですが)、サムスンがソニーを買収して本社をソウルに移転する事もできることになります。

外国政府は敵対する国を滅ぼそうとするのであって、「トモダチ」でも無ければ、ビジネスでもありません。

外国政府や外国企業が日本企業を買収して、資産を奪うのを問題とすら思ってこなかった日本のマスコミや国会は異常です。

ところが、世界にはそれを大問題とする人物がいます。それは、他ならぬ米国のトランプ大統領です。

それについては、以前のブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復―【私の論評】ゴーンの逮捕劇は、米国による対中冷戦Ⅱと無関係ではない(゚д゚)!
工場を見学するカルロス・ゴーン容疑者
以下にこの記事より引用します。
 そもそも、日米は「国家が企業を支援するのはフェアではない」というスタンスだ。それは日米首脳会談やアジア太平洋経済協力(APEC)などでも繰り返し確認されていることであり、たとえば、9月の日米首脳会談後に発表された共同声明には、以下のような文言がある。
9月の日米首脳会談
 「日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」 
 これは主に中国を想定したものではあるが、必ずしも中国のみが対象というわけではなく、フランスのルノーも該当するということだろう。政府が筆頭株主である企業が提携関係にある他国の企業を支配しようという動きは、この文言に該当するのだと思われる。 
 仮に日産が日の丸資本に戻れば、欧州連合(EU)離脱の渦中で開発と生産の拠点があるイギリスとしては、「フランスよりこっちにおいで」という話がしやすいし、製造業を復権させたいアメリカにとっても同様にメリットがある。特に、マイク・ペンス副大統領の出身母体であるラストベルトにとって日本企業の誘致は必須であるため、日産と三菱自の生産工場の拡大などは願ったり叶ったりだ。また、フォード・モーターやゼネラルモーターズ(GM)も提携先を探しており、その選択肢としてもいい候補となるだろう。 
 つまり、日産のリスタートを機に、日米英としてはウィンウィンの関係を構築できるわけだ。そして、その裏にはフランスへの反発がある。
日米からみれば、仮にも自由主義陣営フランスによる私企業の国有企業化による歪み、さらには国有企業を通じて、外国企業を買収しようという試みは、中国の無法な振る舞いを助長するようなものであり、許容できるようなものではないです。

仮に、日産が仏国有企業に買収されてしまうようなことがあれば、日米はそれを見逃したと中国はみなすことになります。それを根拠にして中国は世界中の外国企業を買収しようとしたり、それができないのなら、技術の買収を活発化させるかもしれません。

そんな、中国の将来の巨大な大市場に目がくらみ、中国の姑息なやり口にのってしまう愚かな国々もでてくるかもしれません。

それでも、いずれ米国の対中国冷戦Ⅱは、中共を崩壊させることになりますが、それにしても、それまでの期間が伸びたり、手間が増えることは否めません。

そのようなことをさせるわけにはいきません。ここは、日本も、ルノーによる日産の買収を100%できないようにするように法改正などすべきです。また、日米英協同で、フランスというかマクロンに痛い目にあわせることも検討すべきです。

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2018年11月12日月曜日

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒―【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒

5月には日中韓ビジネス・サミットを開いた安倍晋三首相(中央)と
中国の李克強首相(右)、韓国の文在寅大統領

 米国との貿易戦争に苦しむ中国。いわゆる「元徴用工」をめぐる反日・異常判決を出した韓国は、露骨に北朝鮮寄りの姿勢を見せる。中韓両国と関係のある日本企業も危険な立場となりかねないと警告するのが国際投資アナリストの大原浩氏だ。寄稿で大原氏は、「自由」や「民主主義」とかけ離れている中国や、米国の制裁対象となれば経済の混乱が不可避の韓国との取引を考え直すべきだと訴える。

 トランプ米大統領は、米国が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を表明した。これによって、米中貿易戦争と呼ばれていたものが、世界を巻き込む「第二次冷戦」の始まりであることが確定した。

 そもそも、1989年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦の崩壊の後、世界中のだれもが共産主義の崩壊によって東西冷戦は終了したと思った。鎖国状態の共産主義国家群が「鉄(竹)のカーテン」を開けて自由主義経済圏と交流すれば、いずれ共産主義は消滅し、それらの国々にも「自由」と「民主主義」が広がると思ったのである。

 ところが、その考えは甘かった。中国を典型的例として、共産主義国家の大半(悪の帝国)は、西側の「自由市場」に参加してメリットを最大限に享受したにもかかわらず、国内の専制的支配に変化はなかった。それどころか、経済的に豊かになったことで、独裁政権が国民への締め付けを強化する事態すら招いた。

 こうしたなかで米中貿易戦争が勃発したのは、決してトランプ氏の気まぐれではない。日本企業だけではなく、中国に進出した米国企業も、無理やり先端技術を提供させられたり、当然認可されるべき申請を保留にされたりするなど数々の嫌がらせを受けてきた。

 しかし、被害企業は共産主義中国という巨大な相手とけんかできず、泣き寝入りしてきた。トランプ氏は、それらの企業の「声なき声」を代弁したに過ぎない。

 現在、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は悪の帝国の一画である北朝鮮の番犬になり下がり、制裁破りともとられかねない言動を繰り返している。トランプ氏は北朝鮮を手なずけようとしているが、「しつけ」をしている最中に、横からエサを放り投げられたら激怒するのも当然だ。韓国の銀行や企業に対して米国が制裁を発動する日も近いのではないだろうか。

 もちろん、そうなれば韓国経済は混乱するし、韓国企業と取引をする日本企業も危険な立場に立たされる。

 さらに大きな問題が「悪の帝国」の本丸である共産主義中国である。中国には相当数の日本企業が進出したり、取引を行ったりしている。しかし、共産主義中国がいまも人権無視の蛮行を続けていることが誰の目にも明らかにされつつある。

 サウジアラビア政府が関与した記者殺害事件では、体を切り刻むなどの残酷な手口で世界中の国々から激しい非難を受け、サウジからファンドに出資を受けているソフトバンクグループは窮地に立たされている。

 しかし、ウイグルでの中国政府の行いは、それとは比較にならないほど大規模で悪辣(あくらつ)である。

 今でこそナチス・ドイツは繰り返し批判されているが、第二次世界大戦が始まるまでは米国などの企業は好意的だった。米国を代表する企業のトップもヒトラーから勲章を受けていた。後に勲章を返還したため事なきを得たが、そうでなければその企業は存在できなかったかもしれない。

1938年、デトロイト駐在のドイツ領事(右)がヘンリー・フォード(中央)に
「ドイツ大鷲十字章」を贈り、ヒトラーの謝辞を伝えた

 これまでマスコミでもてはやされてきた中国だが、日本企業としては、取引を即刻中止するのが正しい「危機管理」であり、「コンプライアンス(法令順守)」ではないだろうか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

日本企業は、日中友好にぬか喜びしているようですが、台湾は政府ぐるみで中国から離れる政策をとりつつあります。本日は、現在の日本とは対照的な、台湾の状況を掲載します。

中国国内はすでに数年前から、経済成長の鈍化、債務急増問題、信用バブル、人民元安など様々な経済問題に直面していました。これらが主因で、現在中国からの資本流出が加速していました。それを阻止するために、中国当局は近年個人や企業に対して流出規制を強化しました。

ペンス副大統領は、中国に対して最後通牒とも受け取れる演説を行い、米国による「対中国冷戦Ⅱ」は中国の体制が抜本的変わるか、体制を変えないなら、経済的にかなり弱体化させ他国への影響をそぎ取るまで続けられることになりました。

そのような中、台湾企業ははここ数年中国から離れる、努力をしています。台湾金融監督当局である金融監督管理委員会の最新統計によると、昨年1~3月期に約9社の台湾企業が中国本土から撤退し、過去最多となりました。この傾向は、米国が対中国貿易戦争を開始してからますます顕著になっています。

多くの台湾企業が中国本土に進出しているのですが、その収益に占める本国送金比率は12%で、帳簿価値の5.4%にとどまります。主因は中国当局の資本流出規制だというのです。

1970後半~80年代にかけて改革開放に転換した中国当局には、資金が必要でした。このため、当局は台湾企業や香港企業を「外資企業」として積極的に誘致しました。「現在の中国経済発展には、台湾企業と香港企業が大きく貢献しました。しかし、いったん中国本土に入った台湾と香港の資本は中国からでることができないようです。

実は台湾などの多くの経営者たちは、中国当局が資金流出制限を強化しているため、資金を台湾や香港に送金ができなくなっていると知っています。台湾企業が大陸中国の本土で、投資等を通じて儲けがあったとしても、その収益をどうしても台湾送金できず、結局大陸中国本土に再投資するしかないようです。

1980~90年代、数多くの台湾企業などの進出で、当時中国の資金および技術の不足が解決されました。当局はその後、さらに欧米諸国との間で「手厚い」貿易協定を結び、中国経済がより大きく拡大しました。この結果、中国当局にとって、リーマンショックまで資金問題は存在しませんでした。

ではなぜ、台湾企業などの資金を中国国内に留まらせたのでしょうか。これは、中国当局の本質に関係があるようです。個人の資産を認めず、他人の財産を奪ってきた中国共産党は、もちろん台湾企業の資本を手に握りたいとの政治的な狙いがあったのでしょう。

中国共産党は政権を奪ってから今現在まで、数々の政治運動を起こし、「暴力」と「恐怖」で国民に対して圧制を敷いてきました。

とはいいながら、長期的に政権を維持していくには暴力だけではダメだと当局は心得ているようです。そのため、中国当局は経済成長を通して、国民に当局は『偉大』だと思い込ませ、中国共産党統治の当地の正当性を強調してきたのです。

そのため、中国当局は長年経済指標をねつ造してきました。この偽装された経済データで作り上げられた虚偽である「世界第2位の経済体(実体はドイツ以下ともされている)」に、多くの海外企業が引き付けられました。

しかし、外資企業が中国本土でビジネス展開を始めると、海外への送金を制限して、人民元を海外の本国通貨に自由に両替させないことで、資金が本国に戻ることを阻止しました。

また、当局は中国企業が外資企業の製品を模倣し、知的財産権を侵害するのを黙認し外資企業の技術を盗んできました。このように、当局が入手した外資企業の資金と技術を用いて、国有大手企業を扶養し大きく育ててきたのです。

現在中国経済は不動産バブル、株価大暴落、元安、企業や政府の債務急増問題など多くの難題に直面しており、ねつ造された「経済の繁栄」はまもなく消えます。最近の米国による対中国「冷戦Ⅱ」は、それを加速することでしょう。そうして、多くの投資家が「中国リスク」を認識し、中国市場から続々と撤退しています。

一部の台湾経営者の中で、中国本土と台湾は密な関係かあることから、中国経済が崩壊すれば、台湾経済も大きな打撃を受けると危惧しています。

中国当局は台湾政府に対して、長年経済に台湾企業を通じて圧力をかけてきました。しかし、台湾国民と政府は今その危機感を強めています。いわゆる台湾政府による「新南向政策」(投資先を中国本土から東南アジアにシフトする)で、台湾政府は中国経済に依存する現状を打破しようとしています。

「新南向政策」を示す台湾のチャート

今すぐにはその政策の効果が目に見えないとしても、中国経済への依存を断ち、中国共産党政権からの指図を受けないために、この政策を堅持していく必要があります。

このように、台湾は中国から離れる政策を政府が音頭をとりつつ、民間企業が協力して行っています。日本も、この台湾の姿勢を見習うべきです。

今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われます。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びています。

ただその反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことです。その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからです。

中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着しています。

互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものでした。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気です。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向です。

いったいなぜこんなことになったのでしょうか。

日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのですが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多いです。

では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善です。

その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられました。

だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいでしょう。

そうして、その理由は、蔡英文政権がマクロ政策を重視していないからです。積極的な金融緩和策、財政出動などで、台湾経済に協力にテコ入れするなどの政策は行わず、もっぱら「新南向政策」ばかりでは、国民の生活は改善されません。

ここは、金融政策で雇用を画期的に改善した日本の安倍政権を見習っていただきたいものです。

ただし、日本の安倍政権も、来年10月から消費税増税を実施する予定です。もし、これを実行してしまえば、せっかくの金融緩和策で改善された雇用等がまた後ずさりすることになります。

日本も台湾も、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済を浮揚するという両方を実行しなければならないのです。両政府とも、どちらが欠けても、うまくはいかないでしょう。

日本は、国内経済が良くなりさえすれば日本企業もその対応に追われ、危険な中国ビジネスへの関心は薄れることでしょう。

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2018年6月21日木曜日

ごまかし正恩氏にトランプ氏激怒 中国で「段階的非核化」主張、中朝へ制裁強めるか―【私の論評】いずれに転んでも、金正恩はトランプの対中国戦略の駒として利用される(゚д゚)!

ごまかし正恩氏にトランプ氏激怒 中国で「段階的非核化」主張、中朝へ制裁強めるか

中国メディアは、習主席が平壌に戻る前の金委員長と19日に続いて再び会談し、
昼食をともにする様子を報じた 写真はブログ管理人挿入 い 

 中国の習近平国家主席と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がまた、「北朝鮮の非核化」でごまかしを図っている。19日に3度目となる首脳会談を行い、正恩氏は「段階的な非核化」を主張したのだ。「米中貿易戦争」が指摘されるなか、ドナルド・トランプ大統領が激怒するのは必至とみられ、両国への制裁を強める可能性もありそうだ。


 中国国営新華社通信などによると、正恩氏は、米朝首脳会談(12日)の合意を段階的に履行すれば、「朝鮮半島の非核化は新たな重大な局面を切り開くことになる」と述べた。非核化の進展ごとに制裁解除などの見返りが得られる「段階的措置」を訴えたかたちで、習氏は正恩氏の訪中を「高く評価する」と語った。

 トランプ政権は「北朝鮮が完全に非核化したことを示すまで制裁を解除することはない」(マイク・ポンペオ国務長官)との立場を堅持している。今回の習-正恩会談は米国を牽制(けんせい)していることが明白といえる。

 中朝の「裏切り」に対し、トランプ政権は断固たる姿勢を貫いてきた。

 中国・大連で5月7、8日に行われた2回目の中朝首脳会談後、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と語った。

 「正恩氏直結の女」とも呼ばれる北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が同月24日に、マイク・ペンス副大統領を罵倒し、「核戦争」に言及する談話を発表した後には、米朝首脳会談を打ち切る書簡を送りつけた。これに狼狽(ろうばい)した北朝鮮は再び米国にすり寄り、米朝首脳会談にこぎつけた。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官

 当然、米国は北朝鮮の動向を監視している。

 河野太郎外相が17日にテレビ番組で明かしたように、非核化をめぐってトランプ米政権は、核や生物兵器、化学兵器、ミサイルなど47項目をリストアップしている。

 ポンペオ氏は18日の講演で、非核化の手順などについて話し合うため、「遠すぎない将来」に再訪朝する意向を示した。

 北朝鮮との協議で、中朝両国の後ろ向きな態度が明らかになった場合、米国はどう出るのか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「トランプ氏は、今月の日米首脳会談後の記者会見で『北朝鮮に対し、300以上の追加制裁を用意している』と話している。中国に対しては、大手銀行への金融制裁にまだ踏み込んでいない。そうしたカードを振りかざしつつ、中国と北朝鮮に対し、『本当の非核化をやれ』と圧力をかけていくのではないか」と話した。

【私の論評】いずれに転んでも、金正恩はトランプの対中国戦略の駒として利用される(゚д゚)!

三度目の中朝首脳会談は、金正恩が平城に戻る前の19日開催されたというのですから驚きです。米朝首脳会談の後、ほとんど間髪をおかずに中朝首脳会談を開催するということは、金正恩は中国もないがしろにはしないことを表明したものであり、今後正恩は米中を同時に相手にする二股外交を展開することを表明したも同じです。

私自身は、このブログで、何度か米朝首脳会談の開催直後(半年以内)に中朝首脳会談が開催されることになれば、トランプ氏は北を見限るだろうと予測していました。そのため、これだけ早い時期に三度目の中朝首脳会会談が開催されたことに、正直驚いています。

私自身は、中朝会談をすぐに開催するかしないかが、金正恩にとっての踏み絵になるのではないかと考えていたくらいです。すぐに開催しなければ、トランプ大統領は正恩が、米国の対中国戦略の駒になることを意思表明したものとみなし、北の存続を許容するだろうとみていたのです。

その逆に、すぐに首脳会談を開催すれば、トランプ大統領は北を見限るであろと考えていました。

なぜそのように考えたかといえば、トランプ大統領が一時、米朝会談の中止を宣言したときの経緯からです。

トランプ米大統領は先月24日、シンガポールで6月12日に予定されていた、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との「米朝首脳会談」を中止する意向を明らかにしました。北朝鮮が、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、「朝鮮半島の非核化」を目指す姿勢を示した直後の発表でした。

これに慌てた金正恩は韓国の文在寅大統領と急遽、板門店で首脳会談を行い、米朝首脳会談開催への「確固たる意志」を表明し、決裂回避に動き始めました。トランプ大統領はツイッターで、自身で表明した首脳会談の中止から一転して、今度は開催に前向きな姿勢を示しました。

結局、米朝首脳会談は当初の予定通り、シンガポールで6月12日に開催されました。私は、突如首脳会談中止を表明し、相手が慌てたところで「やっぱりやろう」と揺さぶったトランプ大統領に、「ディールの達人」の恐ろしさを見ました。そして、金委員長は、完全に逃げ場を失い、「袋小路」に追い込まれました。

「ディールの達人」トランプ大統領

トランプ大統領は「朝鮮半島の完全な非核化の実現」を一歩も譲らないでしょう。また、拉致問題の解決なども、日韓(実質的に日本)に北の支援を任せたことからも、拉致問題の解決に関しても一歩も譲らないでしょう。

日本としても、拉致問題が解決しなければ、北朝鮮に援助するなどは一部の野党は賛成するかもしれませんが、与党はもとより、国民の大多数の感情が許さないでしょう。

今後、北朝鮮が再度何らかの声明を発表したり、行動を起こして、「核の全面放棄に積極的な姿勢」を示さなければ、北朝鮮に対し、300以上の追加制裁措置が実行されることになるでしょう。その中には、当然米韓演習の再開も含まれているでしょう。

トランプ大統領は18日、2000億ドル規模の中国製品に対し10%の追加関税を課すと警告。500億ドル相当の中国製品に対する米国の関税発表を受けて中国が同規模の報復関税を決めたことへの対抗措置だと説明しました。これに対し中国も、米国は「極度の圧力や脅し」をかけていると非難し、「質的かつ量的な」措置で反撃すると表明しました。

トランプ大統領は、2000億ドルの中国製品に対する関税に対抗して中国が再び報復措置を発表すれば、米国はさらに2000億ドルの中国製品に関税をかけるとも警告。これまでに総額4500億ドル規模の中国製品に対して関税適用を警告したことになり、中国の対米輸出額5000億ドル強の大部分がターゲットになった形です。


ナバロ通商製造政策局長は、貿易戦争では中国のほうが失うものが大きいとの見方を示しました。私もそう思います。

同氏は記者団との電話会見で「中国はトランプ大統領の強い決意を過小評価していた可能性がある」とし、「(米国からの)輸入を幾分拡大するだけで、米国の知的財産権や技術を盗むことをわれわれが容認すると思ったなら誤算だ」と述ました。

これを「はったり」とか「ディールの一部」と見る向きもあるようですが、金正恩が中国寄りの、中途半端な姿勢を見せたことから、今後の米朝の実務者協議で、北が「段階的な非核化」を主張した場合、米国は北にはさらなる制裁の強化、中国には貿易戦争に加えて金融制裁に踏み切ることになるでしょう。

北が「段階的非核化」にこだわりつづけるなら、トランプ大統領はこれを好機ととらえ、金正恩の約束の反故とそれを高く評価する習近平を徹底的に非難しつつ、それを理由に中朝制裁に踏み切るでしょう。それでも、金正恩が翻意をしなければ、軍事的オプションも行使し、中国に対して最大限の圧力をかけるでしょう。

いずれに転んでも、金正恩は、トランプ大統領の対中国戦略の駒として利用されるのです。中米両国を手玉にとるつもりだった、金正恩はとんでもない人物を敵に回してしまったと後に後悔するでしょう。いや、後悔する暇(いとま)もないかもしれません。

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2018年3月30日金曜日

中朝“血の同盟”にトランプ氏激怒 軍事オプションに障害…「核・ミサイル開発」時間稼ぎ許す恐れも―【私の論評】米による北核関連施設爆撃の可能性は捨てきれない(゚д゚)!

中朝“血の同盟”にトランプ氏激怒 軍事オプションに障害…「核・ミサイル開発」時間稼ぎ許す恐れも

急接近した習氏と正恩氏に、トランプ氏(写真)は警戒を強めている

 ドナルド・トランプ米政権が、中国と北朝鮮に冷徹な目を注いでいる。習近平国家主席と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による電撃的な中朝首脳会談で「朝鮮半島の非核化」が話し合われたが、北朝鮮には「核・ミサイル開発」を放棄する兆候がまったくないからだ。「中朝軍事同盟復活」と「在韓米軍撤退」の謀略とは。米国は、北朝鮮への不信感を高めており、さらに対北圧力を強化するとの見方もある。

金正恩夫妻と習近平夫妻 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 「昨晩、習氏から『正恩氏との会談は非常にうまくいき、正恩氏が私との会談を楽しみにしている』というメッセージを受け取った。ただ、残念ながら、それまでの間、最大限の制裁と圧力(maximum sanctions and pressure)は、何としても維持され続けなければならない!」

 トランプ氏は28日、自身のツイッターにこう書き込んだ。

マイク・ポンペオ氏

 中国と北朝鮮が急接近した背景には、米国主導の対北制裁が効果を発揮していることに加え、トランプ大統領が、次期国務長官にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、大統領補佐官(国家安全保障担当)にジョン・ボルトン元国連大使を内定するなど、軍事的選択肢を排除しない対北強硬派を抜擢(ばってき)したことが大きそうだ。

ジョン・ボルトン氏

 トランプ氏の投稿は、それを裏付けている。ツイッターでは「会談が楽しみだ!」と、対話による北朝鮮の「核・ミサイル開発」放棄にも期待を寄せたが、「最大限の圧力維持」という表現には、中朝の急接近への「警戒感」もうかがえる。

 現に、中国国営・新華社通信の記事で、習氏は「われわれ双方は『中朝の伝統的友誼』を絶えず伝承していくべきだと何度も表明している」といい、正恩氏は「金日成(キム・イルソン)主席と、金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓に従って、『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力することは、われわれの変わらない立場だ」と語ったと伝えられた。

 これは極めて危険だ。

 「中朝の伝統的友誼」とは、朝鮮戦争を通じて血で固められた「血の友誼(ゆうぎ)」を意味するとみられる。正恩氏の最高指導者就任後、中朝関係は冷却化した。中国では中朝友好協力相互援助条約の「参戦条項」の無効を主張する声もあったが、復活した可能性が高い。米国が軍事オプションを選択する際の大きな障害となるのは確実だ。中朝接近を示すかのように、会談では習氏の訪朝も決まった。

 「朝鮮半島の非核化」には、北朝鮮の「核・ミサイル開発」の放棄だけではなく、その延長上に「在韓米軍の撤退」も視野に入っている。正恩氏が5月の米朝首脳会議でこれを持ち出し、「従北」といえる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が支持しかねないのだ。

 「北朝鮮主導の朝鮮統一」もあり得る展開だが、正恩氏の発言は簡単には信用はできない。

 北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は中朝首脳会談は伝えたが、正恩氏の「『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力する」という発言には、まったく触れていない。

 そもそも、正恩氏は2012年に修正した憲法に「核保有国」と明記している。北朝鮮にとって核保有は「国是」である。国際社会との取引材料も「核」しかない同国にとって、核は体制維持の生命線なのだ。

 北朝鮮の核開発継続を示す動きもある。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は27日、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設にある実験用軽水炉(ELWR)の試験運用が始まった兆候が確認されたとする、商業衛星写真(写真下)に基づく分析を伝えた。



 中朝首脳会談をめぐる、北朝鮮と中国の思惑も、実に疑わしい。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮としては、南北首脳会談や米朝首脳会談に向けて、中国という『虎の威』を借りて自らの立場を強くする狙いだろう。中国は、米中貿易戦争の兆しもみえるなか、北朝鮮との太い関係を見せつけることで、『われわれ中国を敵に回せば、米朝首脳会談も思い通りにならない』という米国へのメッセージを示したのではないか」と話す。

 「対米けん制」で利害が一致した両国だが、北朝鮮に「核・ミサイル開発」の時間稼ぎを許す恐れもありそうだ。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「中国は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長国だ。中朝韓で『6カ国協議を再開するから、制裁を一部解除してほしい』と言い出す恐れも考えられる。ただ、(新しい米大統領補佐官の)ボルトン氏は『(北朝鮮の)非核化はリビア方式以外にはない』と公言している。リビア方式とは、情報機関の人間が入って核査察を実施することだ。これでリビアは核物質だけでなく、ミサイルと化学兵器物質も出した。対北強硬派がトランプ氏の側近に就くので、米国がだまされる可能性は減るだろう」と語っている。

【私の論評】米による北核関連施設爆撃の可能性は捨てきれない(゚д゚)!

北朝鮮は、これまで何度も核放棄をするといいつつ、騙してきたことは、先日もこのブログに掲載しました。以下に、北朝鮮による騙しの歴史をこの記事から引用します。

1994年:米朝協議
アメリカが軽水炉2基の建設を支持し、重油も提供。その代わりに、北朝鮮が核開発を凍結することで合意。ところが、北朝鮮は裏で核開発を続け、後に核兵器の保有を表明
2005年:6か国協議で北朝鮮が全ての核兵器を放棄することを約束
しかし、2006年10月に北朝鮮は初の核実験を実施
2007年:6か国協議で寧辺(ニョンピョン)核施設の閉鎖・封印を約束
しかし、北朝鮮は核実験・ミサイル発射など挑発行為を継続
2012年:米朝合意 ウラン濃縮や核実験の一時停止
しかし、2013年に北朝鮮は核実験を実施
北朝鮮は過去4回も、騙しています。2005年には、6カ国協議で寧辺核施設の閉鎖・封鎖を約束したにもかかわらず、北朝鮮は核実験・ミサイル発射の挑発行為を継続しました。そうして、ブログ冒頭の記事にもあるように、寧辺の核施設にある実験用軽水炉(ELWR)の試験運用が始まった兆候が確認されています。



このような状況で、米国がまた騙されるということは考えにくいです。そこで金正恩としては、今度は中国の保証を取り付けて米朝首脳会談に臨む作戦でしょう。

しかし、米朝首脳会談には間違いなく、ボルトン氏も随行するでしょう。

米国のラジオ自由アジア電子版は3月23日、ボルトン次期大統領補佐官( 国家安全保障問題担当)がインタビューで、米朝首脳会談を提案した北朝鮮について「非核化に真剣ではなく(核・ミサイル技術向上のための)時間稼ぎをしていると思う」と語ったと報じました。

ボルトン氏は「北朝鮮が非核化に向けた真剣な話し合いをする用意がないなら、首脳会談は短時間で終わるだろう」と述べ、核放棄を要求しました。インタビューはボルトン氏の補佐官起用発表前の19日に実施されました。北朝鮮への軍事攻撃について「誰も求めていない」とする一方で「北朝鮮に核兵器を持たせるのも誤りだ」と訴えました。

元米国国連大使で、超タカ派のネオコン(Neoconservatism、新保守主義〕ジョン・ボルトン氏は2年前、トルーマン元大統領の原爆投下について「トルーマンがしたことは、私からしてみれば、軍事的に正しかっただけではなく、道徳的にも正しかったのです」と明言し、波紋を呼んでいました。

ネオコンとは直訳すると、新保守主義者という意味ですが、これまでの保守主義が経済政策は産業保護、社会政策は伝統主義だったのに対して、経済政策は自由主義、社会政策は伝統主義というのが新保守主義と言われています。

ボルトン氏はイランや北朝鮮に対する軍事力行使を支持したタカ派で、ロシアに対しても強硬路線を主張しました。昨年は、在沖縄米軍の台湾への一部移転を提案しています。
69歳のボルトン氏がジョージ・W・ブッシュ政権時代に国務次官(軍備管理担当)を務めた際には、2003年のイラク侵攻を主唱。ここ数年は保守派の論客として北朝鮮の核問題に対して強硬姿勢をとるよう主張しているほか、15年のイラン核合意の破棄も訴えています。

ボルトン氏はワシントンでは乱暴な人物として知られ、官僚時代は内部闘争を繰り広げました。ジョージ・W・ブッシュ政権時代、国務省の彼の机の上には、信管を外した手投げ弾が置かれていました。


2007年に出版した回顧録のタイトルは、「Surrender Is Not An Option(降伏は選択肢にあらず)」。最も好む批判対象には、イランや北朝鮮、国連や欧州の各国政府、国際条約などが含まれます。

このネオコンは軍産複合体と結託して、攻撃的・好戦的なタカ派を形成しています。この新保守主義は、トランプの支持層でもある保守主義とは異なります。米保守主義では、米国がソ連と対峙していた日本を攻撃したのは間違いであり、だからこそその後ソ連の台頭をまねき、今日北朝鮮の核の脅威にさらされることになったり、中国の台頭を招いたとしています。

米朝首脳会談を伝える韓国メデイア

ボルトン氏の日本の見方はどのようなものなのか、気になるところです。ただし、中国に対しては強硬派であることは間違いないです。
米朝会談で、トランプ大統領に「核武装を放棄しろ」と言われれば「そうする」と金正恩委員長は答えることでしょう。しかし、横からボルトン大統領補佐官)が「証拠を見せろ」と迫れば「核関連施設に中国の査察を受け入れる。中国なら信用できるだろう」と言い返すことになるでしょう。

トランプ政権はそれで納得することはないでしょう。ただし、時間稼ぎにはなる可能性はあります。

しかし、新たに大統領補佐官に就任したボルトン氏も、国務長官に指名されたポンペオ氏も北朝鮮の手口は知りつくしています。容易には騙されることはないでしょう。

そもそも北朝鮮が時間稼ぎに利用してきた6カ国協議も、中国が主導しました。中国も「時間稼ぎ」の共犯者なのです。

中国を巻き込んだ「朝鮮半島の非核化」で米国を騙せるとの自信は北朝鮮にもないでしょう。軍事的な圧迫と経済制裁が強化される中で、金正恩はワラにもすがる気持ちで、最後のカードを切ったということだと考えられます。

この状況が変わらない限り、米朝首脳会談を開催したとしても、米国の北朝鮮への軍事攻撃、特に核関連施設に対する爆撃は大いにあり得るものと見ておくべきです。

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