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2018年11月24日土曜日

トランプ氏激怒!? 「ゴーン斬り」に隠れた国際事情…米仏一触即発か―【私の論評】仏国有会社ルノーの日産買収が成就すれば、中国を増長させる(゚д゚)!


トランプ大統領

日産自動車は22日、代表取締役会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反容疑で逮捕=の会長職を解いた。20年近い「ゴーン支配」は終わった。東京地検特捜部の捜査で、豪腕経営者による異常な守銭奴ぶりが明らかになっている。ただ、今回の「ゴーン斬り」には、単なる経済事件と思えない、国際的要因が絡んでいるとの指摘もある。ドナルド・トランプ米政権が、ゴーン容疑者率いるフランス自動車大手ルノーを警戒・激怒していたとの分析、米仏関係の悪化、米中経済戦争との関わりに迫った。

 《フランスの自動車大手ルノー、「アメリカの制裁に関係なくイランでの活動を継続」》

 イランのニュースサイト「Pars Today」(日本語版)は今年6月16日、このようなニュースを報じた。

 ルノーの最高責任者(CEO)のゴーン容疑者が、定時株主総会で、「わが社はイランでの活動の縮小を迫られても、イランからは撤退しない」と発言したという内容だった。

 トランプ大統領は前月、オバマ政権下で締結されたイラン核合意を「ひどい内容だ」として、離脱と経済制裁再開を発表した。だが、合意6カ国のうち、米国と距離がある中国とロシアだけでなく、NATO(北大西洋条約機構)の同盟国であるフランスと英国、ドイツも核合意を維持した。

ルノーにとってイランは、フランス、ブラジルに次ぐ、第3の販売市場という。ゴーン容疑者の発言は、約15%を保有する筆頭株主であるフランス政府の方針に沿ったものだが、日米情報当局関係者は「トランプ政権が、ゴーン容疑者とルノー、フランス政府に激怒し、警戒を強めても不思議ではない」と語る。

 現時点で、米メディアは「ゴーン容疑者逮捕」のニュースを淡々と伝えている。ただ、米国とフランスは最近、関係が悪化している。

 エマニュエル・マクロン仏大統領は今月6日、欧州の自主防衛のため、「欧州軍」創設を提案した。ドイツのメルケル首相も「欧州軍創設構想に取り組むべきだ」と賛同した。

 これに対し、トランプ氏はツイッターで「侮辱的な話だ」「欧州軍は、米国に対抗する欧州自衛の軍だ」「欧州側はまず(NATO分担金支払いの)義務を果たせ」などと激しく反発した。

 第一次世界大戦終結100年の記念式典が11日、パリで開催されたが、米国と欧州の安全保障をめぐる亀裂が鮮明となった。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ政権が、ゴーン容疑者の逮捕で、ルノーによる『日産支配』が弱まることを好感している可能性がある」といい、続けた。

 「当初、トランプ氏とマクロン氏の関係は良かったが、最近、米仏関係は完全にこじれている。加えて、米中経済戦争が激化していたなか、ゴーン容疑者は『中国は最も成長性のあるEV(電気自動車)市場だ』といい、ルノー・日産グループによる中国への投資を拡大していた。トランプ政権には『親中派』と映ったかもしれない。ルノーの取締役会は20日、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)職の解任を先送りした。これは、仏政府による対日戦略とともに、対米戦略とも言えそうだ」

ルノーは日産株の43%を保有する一方、日産はルノー株を15%しか保有していない。収益力や企業規模で大きく上回る日産が、資本関係ではルノーの下に置かれている。仏政府は、ルノーによる子会社化で日産への支配権を強めようとしていた。

 これは、日本側だけでなく、トランプ政権も警戒していたはずだ。

 トランプ氏は2年後の大統領再選を目指して、雇用改善や経済再生に取り組んでいる。もし、関係が悪化している仏政府が、米国内に多数の工場を持ち、多くの雇用を生み出している日産への支配権を強めることは、懸念材料を残すことになる。

 ゴーン容疑者の逮捕を受け、日産はルノーとの提携関係について、持ち株比率を含め、提携のあり方を検討するという。日本政府も「日産の独立性」を守る立場とみられ、トランプ政権にも好都合なのだ。

 前出の藤井氏は「9月の日米首脳会談後に出た共同声明で、『日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から、日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する』と明記された。トランプ政権としては、ゴーン容疑者の逮捕を受けて、日産が非市場志向型の中国から、米国に投資を振り向け、雇用もつくってくれると期待しているかもしれない」と語った。

【私の論評】仏国有会社ルノーの日産買収が成就すれば、中国を増長させる(゚д゚)!

フランス大統領のマクロンは日産を買収して工場や本社をフランスに移転したい意図をもっているようです。雇用や生産を日本から奪う計画のようですが、日本のマスコミは相変わらずピンボケで、これを伝えません。

日本の企業が外国に買収されるとは最終的に工場も本社も資本も一切を奪いつくすということです。日産を買収したルノーはフランス政府が出資する国有企業で、吸収されると日産はフランス政府の所有物になるのです。

ルノーというと、一時フランスの国営企業だった時代があります。創業者のルイ・ルノーが第二次世界大戦のときにナチスに協力したために処刑され、会社も国営化されてルノー公団になりました。この時に商品のラインナップも高額車中心から大衆車中心に変わりました。

詳しくはウィキペディアご覧になってください。1945年から1990年までは公団(≒国営企業)で、その後は国有化され、1996年には民営化されたことにはなっていますが、未だに国が株を所有していて、未だに完璧に民営化されているわけではありません。

それどころか、2015年仏政府は、ルノー株を買い増すと発表しました。フランスの自動車大手ルノーが2015年5月30日開いた株主総会で、株式を2年以上保有した株主に2倍の議決権を与える新ルールの導入が決まりました。

ルノーをめぐる関係は以下のような図式となりました。



この新ルール採用を後押ししたマクロン仏経済産業デジタル相は「長期保有の株主を優遇する資本主義を守れた」と歓迎しました。このマクロン仏経済産業デジタル相こそ、今日のマクロン仏大統領です。

筆頭株主である仏政府の経営への影響拡大を恐れるルノー・日産自動車連合は同ルール採用に反対したのですが、仏政府が導入を後押ししました。

発端は仏政府が同年5月8日、ルノー株を買い増すと発表したことでした。国内産業や雇用保護を目的に2014年に制定した通称「フロランジュ法」を適用する狙いでした。同法は株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与えると定めてあります。

ただ株主総会で投票者の3分の2が反対すれば適用されません。ルノー経営陣は株主総会に現行制度存続を求める議案を提出したのですが、仏政府はルノー株を一時的に買い増して否決に持ち込んだのです。

仏政府のルノーへの議決権は従来の15%から28%に増えることになりまし。かたや日産はルノー株を15%保有しながら議決権はゼロ。すでに大株主の座にある仏政府の影響力がさらに増すことは健全なことではありません。そうして関係者が懸念するのは、ルノーを通じて仏政府が日産の経営に影響を及ぼす事態です。

例えば日産が13年に発表したルノー工場での日産車の生産計画。欧州景気の悪化が続く中、国内の雇用確保を仏政府がルノーに強く訴えたことで日産が「支援」に動いたとされます。28%の議決権を持った仏政府が、日産が望まない事業対応をルノー・日産連合に求める可能性も否定できません。

ルノーが43.4%の日産株を、日産が議決権の無い15%のルノー株を保有する持ち合いの姿は、ゴーン元会長が、「アライアンスの成功の象徴」と賞賛していました。仏政府の議決権増に対応して日産に15%の議決権を与えるとの対抗案も浮上する。その場合は提携バランスに影響を及ぼしかねず、ルノーの日産への持ち株比率をどうするかも焦点となっていました。

これは何のことはない、フランス政府もっといえば、当時のマクロン仏経済産業デジタル相の日産乗っ取り計画の一環で行われたものです。無論これは、フランスでは合法であり、フランス人の中にはこのマクロンの行為を愛国的なものと評価する人も多く存在すると思います。

マクロン大統領

しかし、日産の幹部らは、あの時のマクロンへの怨嗟を忘れていなかったのです。この時の思いが、ゴーン会長退陣劇につながったのでしょう。

米国や各国は外国企業や政府の買収を監視し、審査したうえで拒否できる制度になっています。

ところが日本は外国政府が日本企業を買収する行為を禁止しておらず、ルノー買収に関してもあまり問題にしてきませんでした。

これだと例えば人民日報が朝日新聞を買収することもできるし(もう実質的にそうしているのかもしれないですが)、サムスンがソニーを買収して本社をソウルに移転する事もできることになります。

外国政府は敵対する国を滅ぼそうとするのであって、「トモダチ」でも無ければ、ビジネスでもありません。

外国政府や外国企業が日本企業を買収して、資産を奪うのを問題とすら思ってこなかった日本のマスコミや国会は異常です。

ところが、世界にはそれを大問題とする人物がいます。それは、他ならぬ米国のトランプ大統領です。

それについては、以前のブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復―【私の論評】ゴーンの逮捕劇は、米国による対中冷戦Ⅱと無関係ではない(゚д゚)!
工場を見学するカルロス・ゴーン容疑者
以下にこの記事より引用します。
 そもそも、日米は「国家が企業を支援するのはフェアではない」というスタンスだ。それは日米首脳会談やアジア太平洋経済協力(APEC)などでも繰り返し確認されていることであり、たとえば、9月の日米首脳会談後に発表された共同声明には、以下のような文言がある。
9月の日米首脳会談
 「日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」 
 これは主に中国を想定したものではあるが、必ずしも中国のみが対象というわけではなく、フランスのルノーも該当するということだろう。政府が筆頭株主である企業が提携関係にある他国の企業を支配しようという動きは、この文言に該当するのだと思われる。 
 仮に日産が日の丸資本に戻れば、欧州連合(EU)離脱の渦中で開発と生産の拠点があるイギリスとしては、「フランスよりこっちにおいで」という話がしやすいし、製造業を復権させたいアメリカにとっても同様にメリットがある。特に、マイク・ペンス副大統領の出身母体であるラストベルトにとって日本企業の誘致は必須であるため、日産と三菱自の生産工場の拡大などは願ったり叶ったりだ。また、フォード・モーターやゼネラルモーターズ(GM)も提携先を探しており、その選択肢としてもいい候補となるだろう。 
 つまり、日産のリスタートを機に、日米英としてはウィンウィンの関係を構築できるわけだ。そして、その裏にはフランスへの反発がある。
日米からみれば、仮にも自由主義陣営フランスによる私企業の国有企業化による歪み、さらには国有企業を通じて、外国企業を買収しようという試みは、中国の無法な振る舞いを助長するようなものであり、許容できるようなものではないです。

仮に、日産が仏国有企業に買収されてしまうようなことがあれば、日米はそれを見逃したと中国はみなすことになります。それを根拠にして中国は世界中の外国企業を買収しようとしたり、それができないのなら、技術の買収を活発化させるかもしれません。

そんな、中国の将来の巨大な大市場に目がくらみ、中国の姑息なやり口にのってしまう愚かな国々もでてくるかもしれません。

それでも、いずれ米国の対中国冷戦Ⅱは、中共を崩壊させることになりますが、それにしても、それまでの期間が伸びたり、手間が増えることは否めません。

そのようなことをさせるわけにはいきません。ここは、日本も、ルノーによる日産の買収を100%できないようにするように法改正などすべきです。また、日米英協同で、フランスというかマクロンに痛い目にあわせることも検討すべきです。

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