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2018年5月25日金曜日

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地―【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地

金正恩

   米朝首脳会談に向け、「いかなる核実験も必要がなくなった。核実験場も使命を終えた」との宣言を実行するかのように北東部、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。爆破直後のトランプ米大統領の反応はまさかの首脳会談の中止通告だった。自らが描いた行程表通りに事を進めていた金正恩氏だが、目算は完全に外れた。

 金正恩氏は1月の「新年の辞」で対米非難の一方、韓国に「緊張緩和のためのわが方の誠意ある努力に応えていくべきだ」と主張。以降、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮の期待に応じ続け、南北首脳会談を行い、「歴史的」な初の米朝首脳会談を控える段階にあった。

 今回の核実験場爆破を北朝鮮は、外国メディアに現地取材させ「核実験中止の透明性の確保」(4月20日の党中央委員会総会での政策決定)を誇示した。米朝首脳会談に向け非核化の意思を行動で示すことで、北朝鮮が米国に対し「一方的な廃棄要求には応じない」と相応の措置を求めてくるのは必至とみられていた。

 現に実験場廃棄の表明段階から、ロシアが米国と韓国に「適切に呼応する措置を取るべきだ」(露外務省の声明)と呼びかけるなどの“後押し”が金正恩氏を勇気づけた可能性もある。だが、トランプ政権の米国は、はるかにその上を行った。トランプ氏以下、米政府高官はこれまで「北朝鮮には二度とだまされない」と繰り返していた。

 北朝鮮は2008年にも海外メディアを前に寧辺(ニョンビョン)の核関連施設を爆破したが、その後も核実験を継続。最終的に金正恩氏が昨年11月末に宣言した「国家核戦力完成」に至った。

 今回爆破した実験場も「過去の実験で崩壊状態にあり、価値がない」(南成旭(ナム・ソンウク)高麗大教授)との見方が多い。6回の核実験を行った用済みで不要な核実験場を廃棄しただけの可能性もある。核開発中止の保証はなく、北朝鮮は核を廃棄せず保有している。

 「朝鮮半島非核化のためにわが国が主導的に講じている極めて有意義かつ重大な措置」と強調し核実験場爆破を見せた北朝鮮。金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官の16日の談話に続き、24日にも崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の談話で、米朝首脳会談の再考を警告した。

崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官

 譲歩の姿勢を見せる一方、要求が受け入れられないと交渉決裂を繰り返してきた北朝鮮。その裏切りの前例から疑念を捨てていない米国を、北朝鮮は甘く見ていた。金正恩氏にとって、米国の即座の反応は予想外だったに違いない。

 追い込まれた金正恩氏としては、3月以降、2度訪問し関係改善に努めている中国から手を差し伸べてもらうしかない。選択肢は限られ、北朝鮮が中国への傾斜を強めるのは必至とみられる。

 今年、平昌五輪を機に韓国に接近し、南北首脳会談で笑顔を振りまいた金正恩氏だったが、局面は一気に変わり、窮地に追い込まれた。同時に北朝鮮をめぐる“つかの間の春”は暗転し、朝鮮半島情勢は混迷と緊張が再現しそうな状況となった。

【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

今回の米国の反応は、予想どおりのものでした。これについては、以前何度か掲載してきした。一番新しいのは以下のものです。
米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!
文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ掲載させていただきます。
いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。
現在の米軍の北朝鮮対応力は1年前から比較すれば、格段に向上しています。昨年は、北朝鮮の海域に空母打撃群を3つも派遣しながら、結局攻撃しなかったのは、準備が整っていなかったからです。

そもそも、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりでしたし、米軍のほうは、オバマ政権による軍事予算の削減で、かなり弱体化していました。さらに、オバマ前大統領のいわゆる「戦略的忍耐」が追い打ちをかけ、米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせました。

「忍耐」と言えば、その背後に高尚な戦略、ないしは哲学が控えていると受け取る楽天主義者がいるかもしれませんが、オバマ氏の「忍耐」の場合、どうやらその文字のごとく、もっぱら黙ってきただけです。もしオバマ氏が戦略的「忍耐」ではなく、関与政策を実施していたならば、金正恩ものんびりと核開発に専心できなかったでしょう。
オバマ前大大統領

北は2006年に最初の核実験に成功しました。それから着実に核の小型化、核弾頭搭載可能の弾頭ミサイルの開発、プルトニウム爆弾だけではなくウラン原爆にも手を広げ、水爆実験も実施しました。

これらのことが全て事実とすれば、北は11年余りで、核計画を急速に進展させたことになります。その11年間のうち8年間はそっくりオバマ前政権下でした。北の核開発問題ではオバマ政権の責任が問われる理由はまさにここにあるわけです。

もちろん、オバマ大統領は国連安全保障理事会を通じて北に制裁を課してきましたが、その政策は終始中途半端でした。オバマ政権は北が核開発を急速に進めている中、米独自の軍事的圧力の行使は控えていました。

金正恩氏は父親から“金王朝”を継承した後、計4回の核実験を実施しました。そして北の過去6回の核実験のうち、4回はオバマ政権下でした。北側からオバマ政権は軽く見られていたことが推測できます。「オバマなら口で批判するが、何もしない。軍事制裁など全く視野にないだろう」と受け取られてきたわけです。

オバマ政権の8年間は北がその核開発を急速に進歩させた期間と重なります。
2006年10月 9日 1回目の核実験。プルトニウム型
09年 5月24日 2回目。プルトニウム型 (同年オバマ政権誕生)
13年 2月12日 3回目。小型化成功と主張  (同年オバマ政権二期目に入る)
16年 1月 6日 4回目。水爆成功と主張
9月 9日 5回目。核弾頭爆発実験成功と主張
17年 9月 3日 6回目。大陸間弾道ミサイル(ICBM)弾頭部に装着する水爆実験成功と発表。
18年 1月 トランプ政権誕生
(出所・時事通信)
繰返しますが、「核の小型化」、「核弾頭爆発実験」、「水爆実験」、「ICBM用の水爆実験」といった核開発計画の重要ステップはオバマ氏が忍耐している最中、北側が着実に達成していった技術的成果です。

クリントン米政権時代の国防長官を務めたウィリアム・J・ペリー氏は昨年初め、オバマ政権の対北政策「戦略的忍耐」について、「核・ミサイル開発はむしろ進み、状況は悪化した」と指摘している一人です。

いかなる軍事活動にもそれを指示した指導者の責任が問われる。北朝鮮の核問題では、オバマ氏は「忍耐」という名でその責任を回避してきた大統領だったといえます。

オバマ政権ではない政権が米国に誕生したという事実が、米国の対北朝鮮政策を根本的に変えたてのです。ただし、過去の1年間は、先に述べたように、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりであったこと、軍事予算の削減で米軍がかなり弱体化していたこと、オバマ前大統領の「戦略的忍耐」による負の遺産により米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせただけだったのです。

もしオバマ大統領が「戦略的忍耐」で責任を回避せず、本格的な制裁や、軍事制裁を検討していたとしたら、金正恩は今そこにある危機に対応するため、核兵器開発など後回しにし、通常兵力を強化していたに違いありません。

ところが、オバマの「忍耐」を良いことに、金正恩は通常兵器の強化は後回しにして、核兵器の開発に多くの資源を割当あてました。

そのため、現状の北朝鮮軍の通常兵器はかなり遅れています。まずは、防空体制ゼロといっても良いような状況になっています。北朝鮮のレーダーは40年前のもので、これでは現在のステルス機に対しては全くの無防備です。

戦闘機も、40年前からほとんど新しいものは導入されておらず、かつて中東上空や、ベトナム上空で米軍など先進国の空軍ととわたりあったこともある北の面影は今は全くありません。


たとえば、上は北朝鮮空軍の防空訓練の様子を撮影したとされる写真です。撮影日時、場所は不明です。写っている軍用機は、旧ソ連製のMIG21戦闘機とみられます。MIG21は1956年に初飛行し、東西冷戦時代には東側の主力戦闘機となった代物です。北朝鮮空軍ではこの古い機体が今でも使われています。

陸軍も、装備は貧弱で50~60年代のものが主力となっており、なかには第二次世界大戦で運用された兵器もあります。

個人装備もベトナム戦争で南ベトナム解放戦線(ベトコン)がアメリカ軍を相手に使ったAK-47が主力のようです。

ただし、数は多く、旧式といえども戦車だけでも3000両以上を保有しており、数だけならば自衛隊の定数300両を大幅に超えます。しかし、数が多くても、米韓軍の敵ではありません。

なぜこのようなことになったかといえば、核兵器の開発に力を奪われ、通常兵力の整備がおろそかになったからです。

実際に、通常兵力同士の戦いになったとしたら、北朝鮮には全く勝ち目はありません。頼みの綱の核兵器は、実際に使えば、米国に北核攻撃の格好の口実を与えることになり、おいそれと使えるものではありません。

それでも、国家破綻の淵に追い込まれれば、使う可能性もありますが、その兆候がみられれば、今や北朝鮮の情報に隅々まで精通した米軍により発射の前に叩かれてしまうことでしょう。叩きもらしも若干でるかもしれませんが、発射された核ミサイルも撃ち落とされる可能性は高いです。

金正恩は戦略を誤りました、昨年米軍が北を攻撃しなかったため、事態を軽くみてオバマが大統領だった1年前とは全く状況が違うということを見抜けませんでした。

一方米朝首脳会談が中止されたことで、アメリカは中国への圧力をさらに強めることになるでしょう。すでに貿易摩擦に発展している中興通訊(ZTE)への制裁に関しても、トランプ大統領は最大13億ドルの罰金を科すとともに経営陣の刷新を求める案を明らかにしています。

ウィルバー・ロス商務長官はアメリカ側が選んだ人物をZTEに送り込み、同社に法令順守部門を設置させる可能性も示唆しています。中国としては、アメリカによる査察体制の受け入れを許せば他業種にも波及する恐れがあるため、この条件はのみたくてものめないでしょう。

それに先立って行われた米中通商協議では、中国がアメリカの製品やサービスの輸入を大幅に増やすことで合意しましたが、アメリカが求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減については具体策な言及がなく、成果は乏しいものでした。

中国としてはZTEの制裁を緩和してもらいたいのはやまやまでしょうが、米議会が強硬に反対している以上は望み薄です。そこで、輸入拡大でお茶を濁しているという苦しい事情が見て取れます。

アメリカの国防権限法案には先端技術を保有する企業同士の買収を禁じる項目なども入っており、このままいけば、かつての対共産圏輸出統制委員会(ココム)のような仕組みがつくられる可能性もあるでしょう。

冷戦期に自由主義陣営を中心に構成されたココムは、共産圏諸国への軍事技術や戦略物資の輸出規制を目的とした組織です。すでにアメリカは知的財産権の侵害を理由に中国製品に対する制裁を進めていることからも、今後は中国を狙い撃ちにするかたちの21世紀版ココムがつくられたとしてもおかしくないです。

ココムというと、日本では東芝機械ココム違反事件が有名です。これは、1987年に日本で発生した外国為替及び外国貿易法違反事件です。共産圏へ輸出された工作機械によりソビエト連邦の潜水艦技術が進歩しアメリカ軍に潜在的な危険を与えたとして日米間の政治問題に発展しました。

習近平(左)と金正恩(右)

このような厳しい規制がさらに強化され制裁の次元に高まれば、中国経済はガタガタになります。そうなると、中国とて北朝鮮の後見をしたとしても、自国が苦しむだけになります。北朝鮮に肩入れすることはやめることになるでしょう。

いずれにしても、米中が本格的貿易戦争ということになれば、中国には全く勝ち目はありません。であれば、中国はいずれ北を完璧に見放すことになるでしょう。そのとき北朝鮮の命運は完璧に絶たれることになるでしょう。

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2018年5月16日水曜日

【激動・朝鮮半島】トランプ米政権、米朝首脳会談中止の可能性に言及した北の真意を精査 現時点では「開催予定に変更なし」―【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!


10日、米中西部インディアナ州で、支持者に応えるトランプ米大統領

 トランプ政権は、北朝鮮が朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したことに関し、安全保障担当の高官らを招集して北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の真意などについて分析作業に入った。

 サンダース米大統領報道官は15日、声明をめぐる報道に関し「承知している」とした上で、「米国として北朝鮮の発言内容を独自に精査し、同盟諸国と引き続き緊密に連携していく」と強調した。

 国務省のナウアート報道官は15日の記者会見で、米朝首脳会談について「引き続き準備を進める」と述べ、現時点で開催予定に変更はないとの認識を明らかにした。

 ナウアート氏はまた、「金正恩氏は以前、米韓が合同演習を続けることの必要性と効用について理解すると発言していた」と指摘。国防総省のマニング報道官も同日、一連の米韓演習は「毎年の定例」であり、「防衛的性格であることは何十年にもわたって明確にしてきており、変更もない」と強調した。

 マニング氏は演習の目的について「米韓による韓国防衛の能力を向上させるとともに、米韓の相互運用性と即応能力を高めるため」とした。

 北朝鮮が問題視している米韓共同訓練「マックス・サンダー」は定例の空軍演習で、今年は米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22やB52戦略爆撃機などが参加。既に始まっており、25日まで行われる。

【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!

マックス・サンダーに参加中のステルス戦闘機F22ラプター

以前もこのブログに掲載したことがありますが、北朝鮮には40年前のレーダーしかなく、実質上防空施設はないと考えて良いです。航空機も時代遅れのものが多く、米韓の航空兵力には全く太刀打ちできません。核ミサイルばかり注力してきたので、昔中東や、ベトナムで活躍した北朝鮮空軍の面影は全くありません。

このような北朝鮮ですから、米韓の航空機による普通の攻撃も脅威ですが、これに加えて、金正恩を恐怖に陥れる戦法もあります。

それは《電磁パルス(EMP)攻撃》や《地中貫通核爆弾》を用いた戦法です。

米軍による電磁パルス攻撃の模式図

EMP攻撃の方は、日本国内ではもっぱら北朝鮮が日本を筆頭に米韓に仕掛けるというパターンの報道が多いです。現に、北朝鮮がICBM搭載用水素爆弾の6回目実験を行った昨年の9月3日、北の朝鮮労働党機関紙・労働新聞がEMP攻撃を完遂できると強調していました。これは、おそらく本当でしょう。

韓国の公共放送KBSは昨年9月3日夜のニュースで、韓国がEMP攻撃に遭えば「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、全基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上『石器時代に戻る』」という専門家の声を紹介してもいました。

しかし、『石器時代に戻る』のは北朝鮮ではないでしょうか。

EMP攻撃は、高度30~400キロの上空での核爆発を起点とします。その時生じたガンマ線が大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子中の電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が発生するなどした結果、強力な電波の一撃であるEMPが地上に襲来します。「宇宙より押し寄せる津波」に例えられるゆえんです。

EMPは送電線を伝ってコンピューターといった電子機器に侵入。電圧は5万ボルトに達するので、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模停電にも見舞われます。

影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)のケースでは、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達っします。

現代社会は電気なしでは成り立たちません。大規模停電で公共インフラを支える電子機器が損壊すれば、都市機能はマヒします。携帯電話&電話&インターネットなどの通信やガス&水道の供給が停止。飛行中の航空機が操縦不能になり、電力を絶たれた原子力発電所が制御不能に陥ります。自衛隊・警察・消防の指揮・命令系統や金融機関も機能不全となります。 

EMP攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の超高熱から守る素材や突入角度制御に関わる技術は必要ありません。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけです。米国防総省では、北朝鮮が既に核弾頭の一定程度の小型化に成功し、EMP攻撃能力を備えたと確信しています。

この恐るべき兵器を米国は当然、研究・開発し、実戦段階まで昇華しています。

スターフィッシュ・プライム時にホノルルでみられたオーロラのような現象

実際、米国は1962年、北太平洋上空で高高度核実験《スターフィッシュ・プライム》を実施、高度400キロの宇宙空間での核爆発でEMPを発生させました。ところが、爆心より1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、予想通りの「魔力」が実証されました。
 
米国の専門家チームが近年まとめたシナリオでは、10キロトンの核爆弾がニューヨーク付近の上空135キロで爆発すると、被害は首都ワシントンが所在する米国東部の全域に及びます。損壊した機器を修理する技術者や物資が大幅に不足し、復旧には数年を要し、経済被害は最悪で数百兆円に達します。

EMP攻撃で、北朝鮮の核・ミサイル施設&基地を含む軍事拠点や各種司令部&各部隊間をつなぐ電子・通信機器=指揮・統制システムを不通にできれば、もはや戦(いくさ)はワンサイド・ゲームと化すことになります。

その上、EMP攻撃敢行のハードルは、核爆弾の直接攻撃に比べハードルが低いです。EMPの場合、核爆発に伴う熱線や衝撃波は地上には届かないです。EMPは被攻撃側の人々の健康に直接影響しません。

半面、食糧不足や病気などで数百万人単位もの死傷者は出ます。病院をはじめ、無線などの情報通信やテレビ・ラジオもマヒし、被害情報把握も救援・復旧活動も困難になります。信号機も突如消え、交通事故や火災で死者を増やし、大パニックに陥るためです。

こうした、一般の北朝鮮国民への被害をどう局限し、国際世論の批判をかわすか、米国は昨年、シミュレーションを繰り返していました。

もちろん、米国にとり最優先事項は人道ではなく、EMPの届きにくい地下坑道に陣取る北朝鮮・朝鮮人民軍の通常・核兵器による報復の芽を摘み取る点にあります。核施設の制御不能回避も大きな課題です。以上の課題も、米国昨年着々と解決しました。

ところで、北朝鮮の韓大成・駐ジュネーブ国際機関代表部大使は昨年9月5日、あろうことかジュネーブ軍縮会議で「米国が北朝鮮に圧力を加えようと無駄な試みを続けるなら、わが国のさらなる『贈り物を受け取ることになる』だろう」と演説しました。しかし、現実には『贈り物を受け取ることになる』側は、北朝鮮になるかもしれないです。

B2ステルス爆撃機とそれに搭載する地中貫通爆弾

さて次は、《地中貫通核爆弾》について論じます。 

バラク・オバマ政権は政権の最終盤に入って、ようやく北朝鮮の脅威に気付きました。一昨年11月の政権引き継ぎ会談で、当時のオバマ大統領は大統領選挙を制したドナルド・トランプ次期大統領に「米国の最大脅威は北朝鮮」だと、自戒を込めて伝えました。米国防総省も引き継ぎ直前、秘中の秘たる《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》の模擬弾投下試験を超異例にも公表。大統領選で激突していたトランプ候補とヒラリー・クリントン候補に、暗に覚醒を促しました。

大型貫通爆弾=MOPのパワー・アップ費&生産費や、MOPのプラットフォームとなるB-2ステルス爆撃機の改修費について、米国防総省は2000年代に入り近年でも頻繁に請求し認められています。 

対する北朝鮮の核・ミサイル施設は地下深く、鉄筋コンクリートや硬岩、鋼鉄などを巧みに組み合わせて構築されています。しかも、時間の経過とともに地下施設は補強され、強度を増しています。

このように、米国が「克服しなければならない課題」は多数残っています。しかし、「克服しなければならない課題」は昨年着実に「克服」されてきたのです。

30センチ以下の動く対象を捉える米国の偵察衛星は移動式発射台のワダチをさかのぼり、核・ミサイル格納トンネルを特定します。

軍事利用している衛星の種類には資源探査型があり、地質構造・地表温度を識別して、地下施設・坑道の構造や深度が一定程度判別可能です。

こうして長年蓄積し続けた膨大な量の偵察・監視資料を精緻に総合的に再分析します。すると、見えなかった地下施設が浮かび上がるのです。

例えば、地下施設建設前と建設後で、地上地形がどう変化していったか/地形変化のスピード/掘削機の能力割り出し/トラックで運び出される土砂の量/トラックで搬入されるセメント・鉄骨・鋼板などの量/労働者数…など。

地下施設といえども、兵器や技術者、軍人が出入りする出入り口は絶対に必要です。換気施設も然り。絶好の監視対象であり爆撃ポイントになります。 

金正恩の執務室があるとされる15号屋の衛星写真、地下150メートルには秘密居所があるされている

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の秘密居所は地下150メートルともいわれ、MOPですら荷が重い恐れがありますが、先述の《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》であれば確実に粉砕します

《電磁パルス(EMP)攻撃》と同様、地中貫通核爆弾B-61タイプ11は他の核搭載兵器に比べ、実戦投入のハードルは低いです。爆発威力を抑えれば、地下での起爆であり、一般国民の住む地上の被害を抑え、核汚染被害も局限できます。地下に蓄えられる朝鮮人民軍の生物・化学兵器も、核爆発力を抑えた「小さな核爆弾=ミニ・ニューク」が発する熱波で蒸発→無害化に一定程度貢献することでしょう。

やはり、「贈り物」が届く先は金正恩委員長が震えながら閉じこもる「地下のお住まい」のようです。

このような2つの贈り物で北朝鮮は「石器時代」に戻ることになるどころか、金正恩氏も蒸気になって跡形もなく消え去ることになりかねません。

石器時代に戻る北朝鮮?

マックス・サンダーでは当然のことながら、これら2つの兵器の訓練も行っているのでしょう。

金正恩からすれば、この訓練がいつのまにか本当の作戦行動になり、いつ北朝鮮が石器時代にもどり、自分がこの世から消えるかもしれいないという恐怖に苛まされているはずです。

北朝鮮は朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したといいますが、北朝鮮にそれを選択できる余地などありません。

米朝会談に主席するか、出席しないで、米国に北朝鮮攻撃の格好の理由を与えるかのいずれかのみです。

米朝会談に出席したとしても、米国の要求を飲まなければトランプ大統領は途中で退席することになるでしょう。まさに、金正恩の判断一つで北朝鮮は石器時代を迎えるかもしれません。

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2018年5月3日木曜日

米専門家の緊急警告「東京、大阪に北朝鮮のミサイル攻撃」―【私の論評】北は国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使う、これに日本が対処しなければ世界から爪弾きされる(゚д゚)!

米専門家の緊急警告「東京、大阪に北朝鮮のミサイル攻撃」

融和ムードに騙されたのか、日本メディアは朝鮮半島有事について真剣に論じようとしない。平和ボケ日本とは逆に、アメリカの専門家は緻密な情報分析に基づいて危機的状況に警告を発している。ジャーナリストの古森義久氏が報告する。

 * * *

 北朝鮮をめぐる軍事衝突が起きたとき、日本への軍事攻撃が考えられる。この想定は決して過剰反応ではない。日本の安全のため、戦争を防ぐためにはその戦争をも想定せねばならない。安全保障での抑止の鉄則だ。

 北朝鮮の日本への軍事攻撃シナリオはこれまでも各方面で研究されてきた。当事国の日本でよりもアメリカでの研究が多かった。いま私が取材活動を続ける首都ワシントンでは北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの脅威に対する懸念がかつてなく高まり、朝鮮半島での戦争という事態についても論議は盛んである。

 そんな中、北朝鮮のミサイルによる日本攻撃の危険について警告を発する書が3月に刊行された。『迫りくる北朝鮮の核の悪夢(The Coming North Korea Nuclear Nightmare)』と題した本の著者は、中央情報局(CIA)や国務、国防両省、さらには連邦議会で25年以上、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの動きを追ってきたフレッド・フライツ氏である。

フレッド・ライツ氏 写真・チャートはブログ管理人挿入 以下同じ

 同氏はいま民間研究機関「安全保障政策センター」の副所長を務めるが、トランプ政権の国家安全保障担当の大統領補佐官に新たに就任したジョン・ボルトン氏の国務次官時代に首席補佐官を務めたフライツ氏も政権入りが予想される。だからこの書もトランプ政権の政策を予測するうえで注目されるわけだ。

同書は北朝鮮のミサイルによる日本攻撃についてどう触れているのだろうか。

The Coming North Korea Nuclear Nightmareの表紙

 まず日本を射程内におさめ、しかもすでに照準を合わせているとみられるミサイルは次の通りだという。呼称はアメリカなど西側の国際基準を優先する。

 ▽短距離弾道ミサイル(SRBM)スカッド=射程300~800km。保有約100基(*)。

 ▽準中距離弾道ミサイル(MRBM)ノドン=射程1300km。保有約50基。

 ▽中距離弾道ミサイル(IRBM)ムスダン=射程3500km。保有約50基。

 ▽潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)ハンチャ=射程900km。開発中。

 【*各ミサイルの基数についてはフライツ氏は具体的にあげることを避けており、他の出所による。】

 このほかにアメリカにまで届くとされる長距離弾道ミサイルのテポドンなどがあるが、日本への脅威はこの4種類だという。

チャート上のBCのミサイルは日本に到達、DEは米国に到達する


 ◆「あらゆる手段をとるだろう」

 フライツ氏は北朝鮮が日本を激しく敵視する実態を北当局の「日本列島を核爆弾で海に沈める」という昨年9月の言明を強調し、攻撃がありうるとしている。最悪の場合、核攻撃の可能性も排除できないという。

 北朝鮮と日本は首都間の距離でも1200kmほど、九州となると平壌からわずか700kmである。日本海に自衛隊の艦艇が出動すれば、北の短距離ミサイルの射程にまで入ってしまう。

北朝鮮はミサイルを日本のどこに、どう撃ち込んでくるのか。日本国内の具体的な攻撃目標についてアジア安全保障の専門家である国防大学国家戦略研究所のジム・プリシュタップ上級研究員は、在日米軍基地がまず狙われるだろうと指摘する。

 「最も現実的なシナリオはアメリカと北朝鮮の間で戦闘が起き、北側が米軍の戦闘、兵站両面での後方基地となる日本国内の基地をミサイル攻撃で破壊しようとする可能性だろう」

 であれば米朝開戦へ介入度合いの高い米空軍や海兵隊の基地がある三沢、横田、岩国、沖縄が標的となる。

 歴代政権の国防総省高官だったブルース・ワインロッド氏は北朝鮮の行動は合理性に欠けることも多く、東京や大阪といった大都市をミサイル攻撃するという悪夢のようなシナリオも想像はできると述べた。

 この点、プリシュタップ氏も「北朝鮮が日本を攻撃するときは、米軍の全面反撃により北の国家が滅びるときだから、あらゆる手段をとるだろう」と論評した。

 北朝鮮が米軍と戦闘状態になく、日本だけを攻撃する可能性は極めて低い。そんな事態になれば日米安保条約により米軍が参戦する。いずれにせよ米軍の激しい攻撃が北に加えられるのだ。

 北朝鮮が国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使うとなると、ミサイルに化学兵器や細菌兵器の弾頭をつけて攻撃してくる危険さえ否定できない。米軍当局は北の核以外のこの2種の大量殺戮兵器の存在にも再三、警告を発している。

 ●こもり・よしひさ/慶應義塾大学経済学部卒業。毎日新聞を経て、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2013年から現職。2015年より麗澤大学特別教授を兼務。著書に『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』(飛鳥新社)、『トランプは中国の膨張を許さない!』(PHP研究所)などがある。

 ※SAPIO2018年5・6月号

【私の論評】北は国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使う、これに日本が対処しなければ世界から爪弾きされる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されている、フライツ氏は"The Coming North Korea Nuclear Nightmare"の中で、いまの日本が北朝鮮のこれほどのミサイルの脅威に対しても有効な自衛手段をまったく持たないことへの懸念を表明しています。以下に一部を引用します。
日本の現憲法は日本に向けての発射が切迫した北朝鮮のミサイル基地を予防攻撃することを許さない。アメリカに向けて発射されたミサイルを日本上空で撃墜することも認めない。憲法9条の規定により、日本領土外の敵は攻撃できず、同盟国を守るための軍事行動もとれないというのだ。日本は自国の防衛を正常化する必要がある。
憲法9条に根拠をおく専守防衛、そして集団的自衛権禁止という年来の日本の防衛態勢の自縄自縛が北朝鮮のミサイルの脅威によって明らかな欠陥をさらしているということです。

いまの日本では政府・自民党は北朝鮮のミサイルに対して敵基地攻撃能力の保持は憲法に違反しないという主張を表明し始めました。だが憲法9条の戦力の禁止や交戦権の禁止という明記を一読するとき、日本がいかに自衛のためとはいえ、外国への攻撃能力を持つことは禁止という意味にしか解釈できない。なにしろ憲法9条の不戦の精神をそのまま体現したような「専守防衛」という基本政策はなお健在なのです。

ただし、憲法学の京都学派の佐々木惣一氏は「憲法9条は自衛戦争まではは禁じていない」という見方をしていましたが、残念ながらこの見解は日本国内ではそもそも存在しなかったかのように、かき消されていしまっています。保守系の人でも知らない人も多いようです。そもそも、日本国内で現在ほとんど顧みられていません。

佐々木惣一

集団的自衛権の行使についても同様です。平和安保法制の発効で集団的自衛権はその一部が特定の条件下では行使できるというようになりました。しかしまだまだ二重三重の縛りがかかり、全世界の他の諸国が主権国家の自衛では自明の理とする自由な集団的自衛権の行使とは異なるのです。日本は憲法によって自国を守るという国運をかけた活動にさえ、厳しい制約を課しているのです。

日本の現憲法はいまから72年前の1946(昭和21)年、占領米軍によって書かれたものです。この当時、憲法9条が課題とした日本の防衛といえば、敵の地上軍が日本領土に上陸してきて初めて活動開始というのが前提の概念でした。現在のように遠方から飛んでくるミサイルが日本の防衛を一気に崩壊させうるという常識は夢想だにされていませんでした。

だから72年前の戦争や防衛という概念から生まれた規制をいまの国際安全保障情勢に当てはめることは、アナクロニズム(時代錯誤)の極致です。日本の憲法と防衛のそんな時代錯誤はいまワシントンで刊行された書によっても裏づけられたといえます。

今日は憲法記念日です。全国で、護憲派と改憲派が集会など開いていて、それぞれの主張をしています。

しかし、北朝鮮という国や、金正恩という独裁者の正体を知れば知るほど、いつ現行の日本国憲法の想定を超えた事態が始まってもおかしくないということは容易に想定できます。叔父を処刑したり、実の兄を殺害したり、

高射砲による処刑は金正恩委員長が最も気に入っているという

ブログ冒頭の記事にもあるように、北朝鮮が国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使うとなると、ミサイルに化学兵器や細菌兵器の弾頭をつけて攻撃してくる危険さえ否定できないです。

そのような時に、政府が緊急に国民の命と財産を守ろうとして何かの行動を起こした場合、それに対して合憲だ、違憲だと言っても、事態を変えることはできません。事態をかるには行動するしかありません。

政府としては、国民の命や財産が重大な危機にさらされるようなとき、憲法解釈を変えてでも、行動すべきと思います。それで、国民の命や財産を何もしなかったよりは、まもられればそれで良いと思います。

その後に憲法解釈をこのように政府が変えて行動したと表明して、危機が去った後に憲法解釈を巡って解散総選挙を行えば良いと思います。そのときに国民が妥当だと思えば、与党が勝つでしょうし、そうではないと判断すれば、与党側が負けることになります。

それよりも、何よりも、日本に向けての発射が切迫した北朝鮮のミサイル基地を予防攻撃することをしないで攻撃を許してしまうとか、同盟国アメリカに向けて発射されたミサイルを日本上空で撃墜することも認めないとか、憲法9条の規定により、日本領土外の敵は攻撃できず、同盟国を守るための軍事行動もとらないなどというような馬鹿な真似はするべきではありません。

そんなことをすれば、日本は世界から爪弾きにあいます。特に米国から爪弾きにあいます。

北朝鮮の特殊部隊

しかしそうなれば、米国の軍事力に頼れなくなった日本は、中国、ロシアが日本を格好の餌食とします。いずれ日本は米国・中国・ロシア等によって分割統治されることになります。まかり間違って北朝鮮が残っていたとしたら、北朝鮮も分割統治に加わるかもしれません。そうして、各国は日本の富を簒奪できるだけ簒奪します。

そうなってしまってから、護憲派が憲法を守れとか、憲法解釈を変えるななどと主張しようにも、その時には日本という国家は実質的になくなっています。国があってこその憲法なのです。

リベラル・左翼が「安倍辞めろ」ではなく、「金正恩辞めろ」、「習近平辞めろ」、「プーチン辞めろ」などと叫び声をあげれば、すぐに拘束されて、その後は命の保証など、当然のことながらありません。十中八九斬首されることになるでしょう。

そうならないためには、私たちは政府が憲法解釈を変えざるを得ない局面もあり得ることを認識しておくべきです。

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2018年3月7日水曜日

米国が憤るシリアと北朝鮮、サリン使用めぐり共犯関係 「核拡散ドミノ」に強い懸念 高橋洋一日本の解き方―【私の論評】米が本当に北を攻撃するとき、韓国は無視される(゚д゚)!

米国が憤るシリアと北朝鮮、サリン使用めぐり共犯関係 「核拡散ドミノ」に強い懸念 高橋洋一日本の解き方

2013年に北朝鮮を訪問したシリアの与党バース党幹部と金正恩
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 北朝鮮がシリアに対し、化学兵器の製造に使える材料を輸出していたことが国連の報告書で明らかになった。シリアと北朝鮮の関係や、北朝鮮がさらに核・ミサイル開発を進めることの危険性について考えてみたい。

 北朝鮮とシリアの国交樹立は1966年と古い。73年の第4次中東戦争を機に軍事交流もある。90年代には、北朝鮮は化学兵器をシリアに販売、サリン製造施設の支援もしている。2000年代も反米的なアサド政権と友好関係を維持している。北朝鮮とシリアは、相互に大使館を置いている。シリアは北朝鮮との友好関係があるので、韓国とは国交を結んでいない。

 そもそも、米国と北朝鮮との緊張関係は、昨年4月、米中首脳の夕食会の最中に、米軍が行ったシリア空軍基地へのミサイル攻撃が一つの契機になっている。

昨年4月、米中首脳の夕食会の最中に、米軍が行ったシリア空軍基地へのミサイル攻撃

 このミサイル攻撃は、シリア政府軍が自国内の反政府勢力に対して、化学兵器サリンを使ったためといわれていたが、このサリン攻撃が実は北朝鮮によるものという見方は当時からあった。北朝鮮とシリアは切っても切れない関係なので、北朝鮮を警告するために、米国はシリアをミサイル攻撃したわけだ。

 今回の国連の報告書は、そうした北朝鮮とシリアの共犯関係をあぶり出すものと考えたほうがいい。

 シリアは13年に化学兵器禁止条約に加盟して、約1300トンを申告して廃棄した。しかし、サリンを隠し持っていて、それを使ったのだろう。サリンは長期保存は難しいが、北朝鮮の技術、原料供給などによって使用に至ったというのが国際的常識である。そして、シリアのサリン使用は、それまでの米オバマ政権の弱腰も要因の一つとなったといえるだろう。

 この点、オバマ政権とは違うことを見せて大統領に就任したトランプ氏にとって、シリア問題は格好のアピール材料になる。それが、昨年4月のシリアへのミサイル攻撃である。このミサイル攻撃の命中率は驚異的に高く、ほぼ百発百中であった。同席していた習近平主席も驚き、北朝鮮も腰を抜かしたことだろう。

 しかし、その後、北朝鮮は、この米国の警告を無視して、核・ミサイル開発を進めた。

 米国が恐れているのは、米国本土への攻撃とともに核拡散である。これは、今の核不拡散体制への挑戦であり、核不拡散を守るという大義名分は、北朝鮮問題の鍵を握る中国やロシアにも有効である。

 さらに、現実的な懸念として、中東のイラン、シリアへ核が拡散すれば、それこそ中東は各国が核を持つ「核ドミノ」が避けられなくなる。

 北朝鮮がシリアに化学兵器を輸出していたということは、核・ミサイルでも同じことが起こるというわけだ。北朝鮮に対する米国の軍事オプションは、本コラムで繰り返しているように、公算が高まりつつある。2月23日に発表された北朝鮮への経済制裁とともに、また一つ外堀が埋まった感じがする。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米が本当に北を攻撃するとき、韓国を無視せざるを得ない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるように、北朝鮮による核やサリンの拡散の危険については、しっかり認識しておくべきでしょう。米国が北に執拗に圧力をかけるのは、このような問題が背後にあるからです。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2016年末から17年初頭にかけ、北朝鮮は中国の貿易会社を通じて5回にわたりシリアに物資を送っています。物資の搬送は数年間で何十回にも及んだとみられています。

同紙は、シリア政府の科学調査研究センター(SSRC)が多数のフロント(隠れみの)企業を使い、北朝鮮に対価を支払っていたと指摘しました。

ブログ冒頭の記事にでてきた国連報告書は、米紙ワシントン・ポストも同様に確認しています。

化学兵器の犠牲となったシリアの子供達

すでに公表済みの2017年9月の報告書で専門家パネルは、シリアと北朝鮮が「禁止された化学兵器、弾道ミサイルおよび通常兵器で協力しているとの情報について調査している」と述べていました。

当時の報告書は、国連加盟2カ国が押収したシリア向けの積み荷が、北朝鮮の主な武器輸出組織とSSRCのフロント企業による取引の一部ではないかとと、疑念を指摘していました。

国連のステファン・デュジャリック報道官は、報道された報告書が公表されるのかコメントしませんでしたが、ニューヨーク・タイムズに対し、「すべての加盟国に、実施中の制裁に従う義務と責任がある。これが全体としてのメッセージだろう」と語りました。

シリア政府は専門家パネルに対し、シリア国内にいる北朝鮮市民はスポーツのコーチや選手のみだと、説明したとされます。

シリアは化学兵器禁止条約の署名国で、2013年のサリンガスを使ったグータへの攻撃で多数の死者が出た際には、保有していると認めた化学兵器の破棄に同意しました。

それ以降も、シリアは2011年から続く内戦で、禁止された化学兵器を繰り返し使用したと非難されています。

このような危険な北朝鮮に対し韓国は、南北首脳会談を開催しようとしています。メディアや韓国は南北首脳会談の開催をあたかも大成果であるかのように喧伝していますが、話し合いそのものは手段であって話合いは目的でありません。今の韓国の状況は、受験勉強をしても合格しなくては意味がないにもかかわらず、勉強をして満足している駄目な受験生のようなものであり、これでは浪人確定です。

4月末に南北首脳会談が予定されているが・・・・・

頭のネジがずれた文大統領や韓国左派政権にすれば、南北首脳会談してかつての米国のオバマ大統領のようにノーベル平和賞が貰うことが目的なのかもしれません。

南北会談において、北朝鮮は核・ミサイル開発を断念するとはっきりとは一言も言っていません。そもそも、北朝鮮は2013年3月11日に、「朝鮮戦争の休戦協定を破棄する」と一方的に宣言しています。

休戦協定破棄の真意は、戦争を始めるのではなく、終わらせることです。休戦のまま継続されているている異常な状態を破棄するということであり、戦争をするという宣言ではなく、戦争を終わらせるということです。

はっきりと、朝鮮戦争はもう終わったということにして下さいと宣言しているわけです。戦争が正式に終われば、米国も北朝鮮軍と直接戦っていましたから、両国の間で平和条約が結ばれることになります。

休戦だと、休戦協定だけで戦争状態は続いていますが、戦争が終わったとなれば、米国は北朝鮮と、平和条約とか友好条約等の戦争後の条約を結ぶことになります。それをやって下さいと金正恩第一書記は、当時のオバマ大統領に向かって、実は呼びかけてるのがこの休戦協定の破棄でした。

北朝鮮としては、核保有のまま金正恩の独裁を認めて欲しいということを宣言したわけです。これは、虫の良い話しです。

そうして、金正恩休戦協定の破棄の意味するところは、韓国も、そうしてできれば中国も抜きで、米国と直接破棄について話をしたいという意思の現れでもあります。


そもそも、「朝鮮戦争休戦協定」の責任締結国は、「中国」「北朝鮮」「米国(国連軍代表)」であって、「韓国」は締結国ではありません。韓国は無理に理屈をつけて、韓国が締結国に含まれているように主張しますが、それは違います。実際に署名したのは、この三国です。

「朝鮮戦争休戦協定」とは、「国際連合軍司令部総司令官」と、「朝鮮人民軍最高司令官」および「中国人民志願軍司令官」との間で朝鮮戦争を終わらせた休戦協定です。

「国際連合軍」を代表してアメリカ陸軍のウィリアム・ハリソン中将と、「朝鮮人民軍」及び「中国人民志願軍」を代表して南日大将が署名したものです。

このようなことから、金正恩からすれば、本当は韓国など重要でも何でもなく、米国と話をする仲介としてしかみていません。文在寅は、この真意が全く見えていないようです。本当は、そうとうコケにされているということにも気づいていないようです。

北朝鮮芸術団の公演会場となったソウルの国立劇場で、文在寅韓国大統領(右)
と話す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹、与正氏(2018年02月11日) 

北はアメリカと対話する為に韓国を利用しただけなのに韓国は手放しで喜んでいます。五輪も北は参加すると言っただけで、その実際参加しても何も変わってないのに韓国は、南北融和と言い、北の楽団派遣や、挙げ句の果てに独裁者の妹が来ただけで、文在寅は、舞い上がり大騒ぎです。そうして、韓国の保守派の声も抹殺しました。今の韓国に何か言ってももう手遅れです。

韓国のこの体たらくをみていると、韓国にはおかいまなしに、北朝鮮に対する米国の軍事攻撃の可能性はますます高まったと思います。このまま韓国が、北に対する宥和政策を継続するなら、米国としては、北を軍事攻撃する際には韓国に知らせずに行う可能性もでてきました。

なぜなら、米国が北を攻撃することを韓国に事前に通知した場合、韓国から北にそれが伝わる可能性があるからです。あるいは、米国は偽の情報を韓国に送り、それを北側に伝えさせ、北朝鮮を撹乱するということになるかもしれません。それだけ、韓国は信用を失ったのです。

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2018年2月24日土曜日

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金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長
 北朝鮮が、米韓を挑発してきた。韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の閉会式(25日)に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の側近、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長らを派遣すると通知してきたのだ。英哲氏は、数々のテロ事件を実行した工作機関「偵察総局」のトップとして、米韓の制裁対象になっている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、英哲氏と会談する方針だが、長女のイバンカ大統領補佐官を閉会式に出席させるドナルド・トランプ米大統領はどう判断するのか。文氏の露骨な「従北」姿勢に、韓国の保守派から激しい反発が出ている。

 「北朝鮮で南北対話を総括する金英哲氏と直接対話することは、重要な意味がある」

 韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相は22日の国会で、こう強調した。

韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相
 文政権が、英哲氏との対話を重視するのは、対韓国政策を統括する党統一戦線部長を務めているためだ。

 一方で、英哲氏はかつて偵察総局長として、2010年に40人以上が死亡した哨戒艦「天安(チョナン)」撃沈や、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件などを主導した「テロの元締め」とみられている人物である。

 国際社会がテロ根絶に動くなか、いくら「平和の祭典」といっても、韓国だけが目をつぶっていいのか。犠牲者遺族の反発もある。

 保守系最大野党、自由韓国党は22日、「天安撃沈事件の主犯にあえて韓国の土地を踏ませてはならない」と厳しく批判した。

 野党・正しい未来党も「(英哲氏は)挑発の企画者であり、元凶だ。北朝鮮制裁を損ないながらも、代表団訪問を受け入れる政府の態度には極めて懸念を感じる」と抗議した。

 大統領府ホームページの掲示板には、「金英哲訪問反対」を訴える書き込みが相次いでいるという。

 こうした批判に対し、前出の趙氏は「責任の所在は確認が難しい」と国会で答弁した。大統領府高官も「いろいろな推測はあったが、実際に攻撃を誰が主導したかは明らかになっていない」と理解を求めたが、「従北」政権による“ごまかし”という印象は拭えない。

文在寅政権
 北朝鮮が、制裁対象の英哲氏らを閉会式に送り込む背景は、「従北」の文政権を籠絡し、「北朝鮮への圧力強化」で一致する国際社会の足並みを乱れさせる思惑があるとみられる。

 北朝鮮のテロや人権蹂躙(じゅうりん)を糾弾してきた、トランプ米政権と、南北対話を優先する文政権の分断を狙っていることも明らかだ。

 韓国大統領府高官は、英哲氏が制裁対象であることについて、「『五輪の成功』という大局的な見地から金英哲氏を受け入れる予定だ。米国とは協議中だ」と説明したが、五輪に「政治」を持ち込んで汚しているのは文政権ではないのか。

 文政権は批判を無視するように、対北傾斜を加速している。

 韓国・聯合ニュースによると、統一省は22日、南北会談の定例化を推進する一方、対話や関係国との連携に基づき、北朝鮮を「非核化」の交渉テーブルに着かせる方針を国会に報告した。韓国が南北関係の改善を主導し、北朝鮮と米国の対話を支援、牽引(けんいん)する考えも示した。

 北朝鮮の「核・ミサイル開発」の阻止を狙う米国はどう動くか。

 米当局者は、閉会式前の23日から訪韓するトランプ米大統領の長女、イバンカ氏ら代表団が、北朝鮮と接触する予定はないと説明した。

 イバンカ氏は23日、ソウルで文氏との夕食会に先立ち約35分、非公開の会談を行いトランプ氏からの「メッセージ」を伝えた。

文大統領と会食するイヴァンカ氏
 ただ、文政権が聞き入れるかどうかは不透明だ。それどころか、五輪期間中は延期している米韓合同軍事演習の再開中止などを米側に申し入れる恐れも指摘されている。

 韓国に精通するジャーナリストの室谷克実氏は、文氏の政治姿勢について「北朝鮮の要求は何でも受け入れる『対北朝鮮マゾヒズム』だ」と断じ、続けた。

 「日本では、文政権が推進する南北対話が『非核化のための手段』かのように報じられているが、実態はまったく違う。文氏は、北朝鮮の『核・ミサイル開発』の時間稼ぎに加担し、北朝鮮に核を放棄させないまま、南北統一を成し遂げようとしている。金英哲氏の受け入れは、韓国国内の『北朝鮮アレルギー』をなくすための布石だ」

【私の論評】北は金王朝存続のため核を手放さない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、「(金)英哲氏はかつて偵察総局長として、2010年に40人以上が死亡した哨戒艦「天安(チョナン)」撃沈や、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件などを主導した「テロの元締め」とみられている人物」と掲載されています。


2010年3月に、天安(チョナン)号が撃沈された事件では、46人が死亡。同じ年の11月に、延坪(ヨンピョン)島を攻撃された際には、4人死亡しているにも関わらず、韓国は反撃をしませんでした。

延坪(ヨンピョン)島砲撃事件
2010年ですから、天安号の撃沈事件があったのは、日本での東日本大震災の1年前です。そのため私達の記憶は薄れているところがありますが、しかしこれはつい最近起きた大事件です。

韓国の若者を中心に50人近くも殺されながら、全く何の反撃もしなかったのです。そうして、これは当時の李明博大統領の決断力の問題ももちろんあったかもしれませんが、一番大きかったのは当時アメリカが韓国が報復することを許さなかったのです。

もし韓国が反撃、あるいは報復攻撃をすると、朝鮮戦争がまた火を噴くから、そういうことを許さなかったのです。
しかし、2013年あたりから米国も変わりつつありました。このような攻撃があった時には、米国から反撃の許可が出て、米軍も攻撃に参加する可能性が高まったのです。それを象徴していたのが、B2ステルス戦略爆撃機の韓国への飛来です。

一方北朝鮮は、何をするつもりだったのか。それについては、2013年に当時にもうはっきりとわかっています。2013年あたりから、北朝鮮の挑発はエスカレートしましたが、一番心配されたのは実は、以下の表にある「朝鮮戦争の休戦協定を破棄する」との宣言です。

2013年当時の北朝鮮の挑発
無論、北朝鮮が一方的に休戦協定を破棄しても、協定を結んだわけではないので、正式に破棄できるわけでもありません。そうして現在は、朝鮮戦争の休戦状態です。

1950年の6月に朝鮮戦争は始まりました。そしてその後、北朝鮮・韓国の戦争だけではく、アメリカと、中国の戦争へと拡大してしまいました。

そしてお互いに一方的に相手に勝つ見込みなくなってしまったのと、そのままでは中国と米国との総力戦になってしまうおそれもあったため、1953年の7月に、休戦協定を結びました。何とその後70年間、ずーっと休戦のままという異常な状態が続いています。

それを金正恩が、それを破棄すると言い出したわけです。もう、休戦おしまいだと言ったのですから、多くの人は「では北朝鮮は、休戦を破棄して再度戦争に突入するつもり」であると受け取ったわけです。しかし、これは実は、話が真逆です。本当の、金正恩第一書記の意図は、戦争を終わらせるということです。
休戦協定破棄の真意は、戦争を始めるのではなく、終わらせることです。休戦のまま継続されているている異常な状態を破棄するということであり、戦争をするという宣言ではなく、戦争を終わらせるということです。

はっきりと、朝鮮戦争はもう終わったということにして下さいと宣言しているわけです。戦争が正式に終われば、米国も北朝鮮軍と直接戦っていましたから、両国の間で平和条約が結ばれることになります。

休戦だと、休戦協定だけで戦争状態は続いていますが、戦争が終わったとなれば、米国は北朝鮮と、平和条約とか友好条約等の戦争後の条約を結ぶことになります。それをやって下さいと金正恩第一書記は、当時のオバマ大統領に向かって、実は呼びかけてるのがこの休戦協定の破棄でした。

独裁を認めて欲しい。そして、全面戦争はない。この若い若い独裁者が、一人で支配する北朝鮮と、平和条約を結んで下さい、つまり核保有国のまま独裁を認めてほしいということを宣言していたのです。

北朝鮮としては、核保有のまま金正恩の独裁を認めて欲しいということを宣言したわけです。この頃から、北朝鮮の姿勢は現在も変わっていません。金正恩側からすれば、核は金王朝維持のための安全保証の唯一の切り札であり、到底手放すことはできないのです。

米国や世界に対して、金王朝が滅ぶときは、米国など(中国、日本も含む)が滅ぶ時であることを認識させた上で、金王朝が滅ばず、北の独裁体制が維持できれば、北には戦争の意思がないということを示したのです。

北にとって核は金王朝維持のための安全保障の切り札
しかし、さすがにオバマ政権もこの要求には応えられないと判断したからこそ、オバマ政権末期には、現在のトランプ政権と同じように、韓国にB2ステルス戦略爆撃機や、空母を派遣するなどのことをして、北朝鮮と対峙していたのです。

そうして、北朝鮮は、この状況下においては、かつての天安(チョナン)撃沈や、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件のような直接攻撃をした場合、米韓からの報復は必至であると判断したため、このような直接行動は控えて、ミサイル発射実験のみの挑発に切り替えたです。また、金正男氏暗殺は、金正恩の独裁体制の変更はしないし、中国の言うとおりにはならないとの意思表示でもあると考えられます。

韓国の文在寅は、北朝鮮のこうした意図ははっきりと理解した上で、米朝会談を目論んだのでしょうが、これは最初から無理筋というものです。

これは、韓国内でも反発を生んでいます。韓国党は22日、国会で金英哲訪問と関連して緊急議員総会を開き、「絶対に金英哲の訪問を受け入れることはできない」という党論を定めました。

金聖泰(キム・ソンテ)院内代表は議員総会後「金英哲は対南偵察総局責任者として天安(チョナン)艦砲撃、延坪島(ヨンピョンド)砲撃、木箱地雷挑発を主導した者」として「韓国の領土を踏むならば、緊急逮捕や射殺すべき」と話しました。

金聖泰(キム・ソンテ)韓国党院内代表
かつて、米国の許可がなければ韓国は北に反撃もできなかったわけですが、逆の側面からいうと、米国が北を攻撃した場合韓国も攻撃したり、それを補佐したりすることを米側から依頼されれば、それを断ることはできないわけです。

ただし、文在寅は一連の対北マゾヒズムで、米国の信頼を失っています。そのため、米が北に武力行使をするときでも、事前に日本には伝えても、韓国にそれを伝えることはないでしょう。

いずれにせよ、北は金王朝存続のため核を手放す気はありません。だとすれば、米国はいずれ少なくとも、北朝鮮の核関連施設を爆撃するなどの行動にでることは間違いありません。

そうして、その時に韓国があてにならないわけですから、日本に対する期待度はますます高まることになるでしょう。

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2018年2月19日月曜日

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平昌冬季五輪の開会式で韓国の文在寅大統領(左)と握手する北朝鮮の金与正氏=9日
 平昌五輪の開会式に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、与正(ヨジョン)氏らが出席し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が融和姿勢を示した。これによって核・ミサイル開発をめぐる米朝関係に何らかの影響が出てくるのだろうか。

 米国は、ペンス副大統領を平昌五輪に派遣し、「北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄するまで同国を経済的、外交的に孤立させ続ける必要があるとの認識」を強調した。ペンス氏は「問題は言葉でなく行動だ」と、北朝鮮の非核化に向けた具体的な行動を文氏に求めた。

 ペンス氏の行動ははっきりしていた。9日、文氏が主催した事前歓迎レセプションを事実上、欠席した。

 実は、ペンス氏と安倍晋三首相は、レセプション開始時刻を10分も過ぎて到着した。その後、ペンス氏はレセプション会場に入っても主賓の席に座らず、北朝鮮高官代表団団長の金永南(キム・ヨンナム)氏を除く要人と握手して、立ち去ってしまった。

レセプション場を着席することもなくわずか5分で出ていったペンス副大統領 
 韓国としては、レセプションの座席配置も米朝の了解を得ていたつもりで、同じテーブルでペンス氏と金永南氏が同席するだけでも絵になるともくろんでいた。しかし、米国がそれを認めるはずもなく、ペンス氏は、北との接触を回避するというより、平然と無視していた。

 一連のおぜん立ては文氏の平和演出であろうが、これは無理筋だ。北朝鮮側の事実上トップだった金与正氏は、米国の制裁対象者でもあり、米国としては無視するのは当然だ。

ペンス氏は、文氏に「米国は、北朝鮮が永久的に不可逆的な方法で核兵器だけでなく弾道ミサイル計画を放棄するその日まで、米国にできる最大限の圧迫を続ける」と伝えた。訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談でも、「近日中に北朝鮮に最も強力かつ攻撃的な制裁を加える」と明らかにしたという。

ペンス米副大統領が、訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談
 マティス米国防長官は、平昌パラリンピック(3月9~18日)の後に、軍事演習を再開することを明言している。

 一方、金永南氏は、文氏との会談において、米韓軍事演習などを中止し、訪朝を最優先とすることを要請したようだ。金正恩氏は、9月9日の北朝鮮建国50周年までに南北首脳会談を実現したい意向と伝えられている。

会談する韓国の文在寅大統領(右から3人目)と北朝鮮の金与正氏
(左から2人目)、金永南氏(同3人目)=10日午前、韓国大統領府
 はっきりいえば、これは北朝鮮の時間稼ぎである。北朝鮮の核・ミサイル技術はロシア製なので、進展度合いを技術的に読むことが可能だ。米国に到達する弾道弾について、実戦配備可能な技術的な時期はあと3カ月から6カ月以内というのが通説である。

 米国は、やられる可能性があれば、その前にやる国だ。平昌五輪前日、北朝鮮では軍事パレードを行い、「火星15」とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)も披露したという。これは、米国人にとって「不穏な動き」と見られなくはない。北朝鮮に対し、「核を放棄せよ、さもないと叩く」という米国の姿勢は全くぶれていない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】長期では朝鮮半島から北も韓国も消える可能性も(゚д゚)!

平昌五輪という一大イベントを契機に南北関係が改善すること自体は、一見して評価して良いかのようにもみえます。しかし、露骨な政治利用が続くことに「もはや“平壌五輪”なのでは」といった声も聞こえてくるのが実情でした。そうして、この背後には、北朝鮮の並々ならぬ危機感がみてとれます。

そもそも、韓国と北朝鮮が融和したところで朝鮮半島危機は終息しません。重要なのは北朝鮮の非核化です。また、今回のアプローチは北朝鮮主導で行われており、仮に南北統一が実現するとしても、このままいけば北朝鮮が主導権を握ることになります。核を持つ北朝鮮と、アメリカに見限られかねない韓国を比較すれば明らかです。北朝鮮のほうが立場は上です。

これまで、日米は韓国を「反共の壁」として利用してきました。中国やロシアとの間の緩衝地帯であると同時に、日本海の安全を守るための橋頭堡という位置付けです。その代わりに、日本は韓国に膨大な資本投下や技術移転を行うことで発展を支え、いわば「自由社会のショーケース」として共存してきました。

しかし、韓国が北朝鮮に懐柔されるかたちで統一すれば、これらはすべて無駄になります。
地政学的に見れば、韓国は日本にとって非常に重要な位置にあり、日本海を軍事的対立線にしないための役割も担っています。しかし、韓国の国民が北朝鮮主導による南北統一を選ぶのであれば、日本にそれを阻止する手段はないに等しいです。ただし、米国は黙ってはいないでしょう。

かつて、日本の保守勢力と韓国の政界は深い関係を持っており、韓国の内政に日本の影響力を行使することもできました。しかし、現在はそうした人脈が失われつつあります。

すでに、世界は「平昌五輪後」の情勢を見据えています。欧米メディアからは「五輪が終わるまでは……」というフレーズが多く聞かれ始めています。振り返ってみれば、2014年のロシアによるクリミア侵攻もソチ五輪の閉幕直後でした。前述したアメリカの独自制裁も含め、五輪後に北朝鮮情勢に新たな動きがあったとしてもおかしくありません。

ロシアによるクリミア侵攻
平昌五輪終了後の半島情勢は以下のようなシナリオが考えられます。ただし、このシナリオ内でも大きなバリエーションのあるものになりそうです。

①北朝鮮の崩壊と新体制の確立 ②現状維持 ③朝鮮半島の合意一体化の3つです。②と③は北朝鮮の実質勝利です。日本や中国を含む多くの国は目先②を望むのでしょうが、それは案外、可能性が低い選択肢かもしれません。なぜなら、②は単なる北朝鮮の時間稼ぎに利用されるだけだからです。

ただ、現状維持とはいっても様々な事態が予想されるかもしれません。たとえば、米は経本格的に海上封鎖することになるかもしれません。それも中途半端なことはせずに、海上に機雷を敷設して完璧に封鎖ということも十分考えられます。場合によっては、北と中国の間の鉄橋などを破壊するかもしれません。こうなると、もう戦争状態です。

中国が描くシナリオは③である可能性が高いです。その場合、いったん韓国を左派色に染めて北朝鮮との色の差を薄くし、アメリカと韓国との色の差を強調するかもしれません。

一方、中国にとって日本は戦略的に重要な立場になるため、南京事変といった歴史問題は当面横に置いておき、日本とのコミュニケーションをスムーズにしておくことを推し進めるかもしれません。

日本の報道では日中関係改善と報じられていますが、外貨不足の中国による日本からの外貨誘導のための改善かもしれません。実質的には巧みに計算された政策です。日本政府ももちろん、それは理解していることでしょう。

仮に③のシナリオとなった場合、韓国の中で右寄りの思想の人たちが日本に渡ってくる可能性は大いにあります。

ただし、同じ③でも、米国主導により、北朝鮮・韓国の現体制抜きで、半島全体に新たな秩序をつくりだすということも考えられます。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日韓合意検証発表】交渉過程の一方的公表を韓国メディアも批判「国際社会の信頼低下」―【私の論評】北だけでなく朝鮮半島全体に新レジームが樹立されるかもしれない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
現在の文在寅政権は、かなり親北的です。これは、日米からみると、北が米国の圧力に屈したり、武力攻撃で崩壊したしたにしても、韓国にその勢力が残存することになり、実質半島全体が北朝鮮になってしまうかもしれません。これはかなりやっかいなことになります 
中露からすれば、北朝鮮が一方的になくなれば、いずれ韓国が北の領域も併合することになるかもしれないという危機感があります。そうなると、今までは日米との間に北という緩衝地帯があったにもかかわず、それがなくなることを意味します。 
これは、日米中露にとっては良いことではありません。であれば、朝鮮半島全域を日米中露と他国をも含めた国連軍などで統治した後に、ここに日米寄りでも、中露寄りでもない中立的な新国家を設立するというのが最も望ましいかもしれません。 
しかし、北の後には、韓国を何とかしなければならないという機運は、日米中露の間で高まるのは間違いないものと思います。ただし、これはすぐにということではなく、北朝鮮崩壊後数年から10年後ということになるでしょう。
このように、長期では、半島全体に北朝鮮や韓国とは全く異なる、中立的な新国家を樹立ということになる可能性も十分あると考えられます。

また①のシナリオ、つまり斬首作戦はアメリカがどういう分析をしているかによるでしょう。仮に金一族を否定することが北朝鮮国民のマインドを喪失させるのか、かつての日本のように180度転換できるのか、その場合、誰かリーダーになれる人はいるのか、疑問だらけではあります。

つまり首を取るのは簡単でもその後の2500万の残された国民の対応は、結局のところ未だわかりません。ただし、今の国民は体制のことを考えることすら許されていません。であれば、それを考えることが許される体制への変化は受け入れやすいかもしれません。それに、リーダー足り得る人も存在すると思います。

平昌五輪・パラリンピック終了後の4月頃には米韓合同軍事演習や文大統領の来日も予定されていますが、今は春に向けて政治的駆け引きが活発化しています。

かつて、太平洋戦争前の1941年11月に「ハル・ノート」と呼ばれる交渉文書がアメリカから日本に提示されました。これは日本に中国およびインドシナからの撤退などを求める内容で、事実上の最後通牒とみなされています。

そして、要求をのめなかった日本は開戦へと突き進むことになったわけですが、今回の日米首脳の訪韓は、ある意味で韓国に向けた「現代版ハル・ノート」といえるのかもしれません。

かつて、アメリカの国務副長官リチャード・アーミテージが9/11直後、パキスタンが、アフガニスタンの盟友、タリバンを即座に裏切り、アメリカにアフガニスタン侵略の為のパキスタン内軍事基地の使用を認めなければ、「アメリカがパキスタンを爆撃して石器時代に戻してやる」とパキスタンの諜報機関ISI長官マフムード・アフメド中将を恫喝したとムシャラフは主張していました。

アーミテージ
今回もペンス副大統領がこれに近いことを文在寅に吹き込んだ可能性すらあるのではないかと私は睨んでいます。

そこまでいかなくとも、日米と中国との狭間で、どっちつかずのバランス外交をしていると、半島から北はもとより、韓国も消える可能性もほのめかしたしたかもしれません。そうして、それは日米だけではなく、中露も望んでいる可能性があります。

何しろ、ここ70年朝鮮半島は、各国にとって少しも良いことはありませんでした。今の状況は、北朝鮮は中露の同盟国とは言い切れない状況にあります。また、韓国が日米の同盟国ということも言い切れません。かといって、無論北朝鮮は日米の同盟国にはなり得ません。同じく、韓国が中露の同盟国となることも不可能です。

こんなことを考えると、日米中露が朝鮮半島全体に新たな秩序をつくりだすことには、それなりの意義と合理性があります。

いずれにしても、朝鮮半島には今までの常識では計り知れない何かがおこる可能性が大です。すべての可能性を除去することなく考えておくことによってのみ適切な対応が可能になるでしよう。これをきっかけに、日本も大きく変わる可能性もあります。

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2018年1月14日日曜日

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」―【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」
エドワード・ルトワック (米CSIS戦略国際問題研究所シニア・アドバイザー)
グアムから朝鮮半島にかけて行われた米韓合同軍事演習
<2年ぶりの南北会談はまたも問題先送りで終わるだろう。北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを完成させる前に、核関連施設を破壊すべきだ>
1月9日、韓国と北朝鮮による2年ぶりの南北高官級会談が行われているが、結果は今までと同じことになるだろう。北朝鮮の無法なふるまいに対し、韓国が多額の援助で報いるのはほぼ確実だ。かくして、国連安保理がようやく合意した制裁強化は効力を失う。一方の北朝鮮は、核弾頭を搭載した移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を複数配備するという目標に向けて着実に歩みを進めていくだろう。

北朝鮮の過去6回の核実験はいずれも、アメリカにとって攻撃に踏み切る絶好のチャンスだった。イスラエルが1981年にイラク、2007年にシリアの核関連施設を爆撃した時のように。いかなる兵器も持たせるべきでない危険な政権が、よりによって核兵器を保有するのを阻止するために、断固として攻撃すべきだった。幸い、北朝鮮の核兵器を破壊する時間的余裕はまだある。米政府は先制攻撃をはなから否定するのではなく、真剣に考慮すべきだ。

当然ながら、北朝鮮を攻撃すべきでない理由はいくつかある。しかしそれらは、一般に考えられているよりはるかに根拠が弱い。北朝鮮への軍事行動を思い止まる誤った理由の一つは、北朝鮮が報復攻撃をしてくるのではないかという懸念だ。

ソウルが火の海になっても

アメリカの情報機関は、北朝鮮がアメリカ本土に到達しうる核弾頭を搭載した弾道ミサイルをすでに開発したと言ったと伝えられる。しかし、これはほぼ間違いなく誇張だ。むしろ、将来の見通しとでもいうべきものであり、迅速な行動によってまだ回避できる。

北朝鮮が、長距離弾道ミサイルの弾頭に搭載しうる小型化可能な核兵器を初めて実験したのは2017年9月3日。そして、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の初の本格実験を行ったのは2017年11月28日。それから今までの短期間で核搭載のICBMを実用化することなど不可能だ。

北朝鮮を攻撃すれば、報復として韓国の首都ソウルとその周辺に向けてロケット弾を撃ち込む可能性はある。南北の軍事境界線からわずか30キロしか離れていないソウルの人口は1000万人にのぼる。米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ。

約40年前、当時のジミー・カーター大統領が韓国から駐留米軍を全面撤退すると決めた際(最終的には1師団が残った)、アドバイザーとして招かれた国防専門家たち(筆者自身を含む)は韓国政府に対し、中央官庁を北朝鮮との国境から十分に離れた地域に移転させ、民間企業に対しても移転のインセンティブを与えるよう要請した。

避難シェルター設置の義務化も促した。例えばスイスのチューリッヒは、新しく建築される建物は独自のシェルターを設置しなくてはならない。さらに今の韓国には、イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」を安く購入するという選択肢もある。アイアンドームは、人の住む建造物を狙って北朝鮮がロケット弾攻撃をしてきた場合、9割以上の確率で迎撃できる能力を持つ。

イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
しかし、韓国政府は過去40年にわたり、これらの防衛努力を一切行ってこなかった。ソウル地区には「シェルター」が3257ヵ所あることになっているが、それらは地下商店街や地下鉄の駅、駐車場にすぎず、食料や水、医療用具やガスマスクなどの備蓄は一切ない。アイアンドームの導入についても、韓国はそのための資金をむしろ対日爆撃機に注ぎ込むことを優先する始末だ。

北は軍事技術を売却している

今からでも北朝鮮によるロケット砲やミサイル攻撃に備えた防衛計画を韓国が実行すれば、犠牲者を大幅に減らすことができる。支柱や鉄骨を使ってあらゆる建物を補強するのも方法の1つだ。3257基の公共シェルター(避難施設)に生活必需品を備蓄し、案内表示をもっと目立たせることもそうだ。当然、できるだけ多くの住民を前もって避難させるべきだ(北朝鮮の標的に入るおよそ2000万人の市民は、南へ30キロ離れた場所に避難するだけでも攻撃を免れられる)。

とはいえ、長年にわたってこうした対策を怠ってきたのが韓国自身である以上、最終的に韓国に被害が及ぶとしてもアメリカが尻込みする理由にはならない。北朝鮮の核の脅威にさらされているアメリカと世界の同盟国の国益を考えれば当然だ。北朝鮮はすでに独自ルートでイランなど他国に弾道ミサイルを売却している。いずれ核兵器を売却するのも目に見えている。

アメリカが北朝鮮に対する空爆を躊躇する理由として、成功が極めて困難だから、というのも説得力に欠けている。北朝鮮の核関連施設を破壊するには数千機の戦略爆撃機を出動させる必要があり不可能だ、というのだ。しかし、北朝鮮にあるとされる核関連施設はせいぜい数十カ所で、そのほとんどはかなり小規模と見てほぼ間違いない。合理的な軍事作戦を実行するなら、何千回もの空爆はそもそも不要だ。

アメリカの軍事作戦の不合理さが露呈するのは、今回が初めてではない。米空軍は昔から、標的を絞った限定攻撃の代わりに、「敵防空網制圧」(SEAD)の実施を主張してきた。敵防空網制圧とは、米軍パイロットの身の安全を守るため、敵国の防空レーダーや地対空ミサイル、滑走路、戦闘機を余さず破壊するという、いかにも奇抜な作戦だ。北朝鮮の防空レーダーやミサイル、戦闘機はひどく老朽化し、電子機器もずいぶん前から交換されずに古いままであることを考慮すれば、米空軍が示した条件は何もしないための口実にすぎない。確かに限定攻撃だと手押し車の1台や2台は見逃すかもしれないが、今はまだ、北朝鮮には核弾頭を搭載したミサイルの移動式発射台が存在しない。叩くのは今のうちだ。

北朝鮮空軍のミグ21戦闘機

中国も北朝鮮を見放した

アメリカが北朝鮮への空爆を躊躇する唯一の妥当な理由は、中国だろう。だがそれは別に、中国がアメリカに対抗して参戦してくるからではない。中国がなんとしても北朝鮮を温存するという見方は、甚だしい時代錯誤だ。もちろん中国としては、北朝鮮の体制が崩壊し、北朝鮮との国境を流れる鴨緑江まで米軍が進出してくる事態を決して望まない。だが戦争行為の常套手段である石油禁輸を含め、中国の習近平国家主席は国連安保理で採択された対北朝鮮経済制裁の強化を支持する姿勢を見せており、核問題をめぐって北朝鮮を見放し始めている。アメリカが北朝鮮の核関連施設を先制攻撃すれば中国が北朝鮮を助けに行く、という見方は的外れだ。

今のところ、北朝鮮に対する先制攻撃という選択肢を米軍幹部が排除しているのは明らかに見える。だが、北朝鮮が核兵器を搭載可能な長距離弾道ミサイルを実戦配備するまでに残された月日でアメリカが北朝鮮を空爆すれば、果てしない危険から世界を救える。

インド、イスラエル、パキスタンの3カ国が核兵器を保有しているのは事実だが、今のところ破滅的結果を招いていない。3カ国は北朝鮮にないやり方で、自国の信頼性を証明してきた。北朝鮮のように、大使館でヘロインや覚醒剤などのいわゆる「ハードドラッグ」を売ったり、偽造紙幣で取引に手を染めたりしない。3カ国とも深刻な危機に見舞われ、戦争すら経験したが、核兵器に言及すらしなかった。ましてや金正恩のように、核攻撃をちらつかせて敵を脅すなどあり得ない。北朝鮮は異常だ。手遅れになる前に、アメリカの外交政策はその現実を自覚するべきだ。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

ルトワックの上記の提言に関しては、乱暴であるという意見も多いです。織田邦男元空将の意見はその典型的なものです。以下にその意見を述べている動画を掲載します。


上の動画は、日本の安全保障を考える上で、非常に参考になることが多いです。特に、米国ではなく、日本の安全保障については参考になることが多いです。しかし、ルトワック氏の提言は乱暴であると簡単に言うことができるのでしょうか。私自身は、腑に落ちないところがあります。

織田邦男元空将は、米国が現時点で北を攻撃することは、予防的攻撃になるとして、これは国際法違反であると断じています。そうして、先制攻撃は国際法に照らして合法ですが、予防的攻撃は違法だと断じています。しかし、私はそのようにきっぱりと割り切れるものではないと思います。

私自身は、現在米国が北を攻撃したとしても、予防的先制攻撃ということで国際法違反になるかどうかは別にして、多くの国々から批判を受けるということにはならないのではないかと思います。

結論から言って、国家元首が核で周辺国を脅し、兄を暗殺し、叔父を処刑し、国内での人権侵害は常軌を逸するレベルです。そんな国に核兵器を持たせたままで良いのでしょうか。

北朝鮮がもし完全な核兵器保有国となれば、韓国や日本はもちろん、全世界にとっても非常に危険な状態が生まれます。

そもそも、朝鮮民主主義人民共和国は、異常な国、無法の国です。先程は述べませんでしたが、日本国民の拉致事件もその一例です。政府が工作員を日本国内に潜入させ、罪のない日本人男女を冷酷に拉致して、そのまま長い年月の間むごたらしく拘束するという非人道的な行為を他のどの国家がするでしょうか。

核兵器についても、金正恩委員長は核を使用するという脅しを平然と語ります。国際社会の要請に逆らって核兵器を開発した国は北朝鮮だけではありません。しかし、たとえばインド、パキスタン、さらにはイスラエルなど、あるいは好戦的な対外姿勢をとる中国でさえも、国家首脳が核兵器の威力を外部に向けて宣伝して、威嚇の手段にするようなことはしていません。北朝鮮は異常です。異様な危険国家、犯罪国家です。だからその核武装は軍事手段に訴えてでも阻止すべきです。

それとともに、韓国に関するルトワック氏の見解ですが、これも一概に否定できないと思います。軍事でも経済でも韓国は強い力を持っています。しかしその力を使って、目前に迫った北朝鮮の核武装という重大危機を除去しようという国家的な意思がいまだにまとまっていません。それは韓国内で、自国の基本的なあり方をめぐって意見の分裂があり、国としての結束が決定的に欠けるからです。

韓国の文在寅政権に対しては、トランプ大統領自身も「appeasement」(宥和)という言葉を使い、軟弱すぎると非難したこともありました。「宥和」とは、第2次世界大戦前にイギリスのチェンバレン首相がドイツのヒトラーに対して必要以上の譲歩をしたときによく使われる表現です。その際のイギリスの過剰な譲歩がナチス・ドイツを増長させ、侵略へと駆り立てたとされています。

そうして、「国家としての結束の欠落」といった場合、最近では、「日韓合意」において韓国が日本に対してみせる態度の特徴であるようにもみえます。

韓国は、自分の首都すら守る意志がないにもかかわらず、日本に対する軍事攻撃の準備にだけは妙に熱 心です。

下の写真は去年6月15日に行われた竹島周辺を艦隊で通過する韓国海軍の訓練風景です。


もちろん、「訓練」と言う名の挑発行為です。駆逐艦や海洋警察の巡視船など7隻と、P3C哨戒機やF15K戦闘機など海・空軍機4機を投入した大規模なものでした。

わが国は、北の脅威も考慮に入れた上で冷静に対応したか良いようなものの国際常識では係争地でこんなまねをすれば開戦事由になりかねません。

この6月の前後は「週刊弾道ミサイル」といっていいような、北のミサイル実験が頻発していた頃です。 間違いなく、日米韓でもっとも緊密に協力すべき時期でした。なぜこの時期に、わが国にこのようなことを仕掛けたのか理解に苦しみます。

ルトワック氏は国際制裁が、韓国の裏切りによって破綻するだろうと予言していました。いくら国連決議を積み上げようと、制裁強化を叫ぼうと、韓国がそれをいっさい無効にしてしまうと読んでいます。

ブログ冒頭のルトワックの寄稿は、1月9日の板門店で開かれた南北会談以前に書かれたものでしょうが、まさにルトワックの観測どおりとなりました。

韓国は北の冬季五輪への参加の見返りとして、「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という凶悪なまでに間抜けな言質を与えてしまっています。

この条項は、国連制裁決議を韓国は破壊して、北の核ミサイル開発を間接に「支援」するという意思表示にほかなりません。これでは、文在寅は自由主義陣営に後ろ足で砂をかけて、北と一緒に「わが民族」の側に与すると宣言したに等しいです。

以上のようなことを考慮すれば、ルトワックがソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいと言うのも無理はないと思います。韓国のこの状況はこれからも変わらないでしょう。

ただし、私は北に「ソウルを火の海」とするような攻撃能力はないと思っています。詳述は別の機会に譲りますが、北の通常兵器による攻撃能力はとうに錆び付いて陳腐化しており、ほとんど使い物にならないと考えられています。

先日、マティスがソウルへの反撃については対処方法があると発言しましたが、米軍はMOABなどを使って38度線に張りついた北の砲撃部隊は、短時間で制圧できると考えているようです。

MOABはアメリカ空軍が開発した現在、通常兵器としては史上最大の破壊力を持つとされる爆弾
ルトワックはこのまま北の時間稼ぎを許せば、もう軍事的手段をとりようがない時期になると見ています。

それは過去の北の暴走に対して、米国がなすすべもなく「戦略的忍耐」という美名の不作為を重ねてきた結果として、現在のこじれきった状況があるからです。

ルトワックの真骨頂は綺麗事を徹底的に排して、リアリズムに徹するという思考型式です。 

ルトワックは著書『戦争にチャンスを与えよ』のなかで、欧米型民主主義の頭デッカチが、かえって中東に災厄をもたらしたと断じています。 

たとえばイラクです。独裁者フセインを排して民主主義を導入しようとした結果、スンニ派とシーア派の果てしなき宗教紛争の地獄の釜の蓋を開けてしまいました。 

イラクだけにとどまらず、米国はリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、パレスチナ、そしてシリアなどで、こんなことなら昔の独裁者が統治していたほうがましだった、と住民たち言われるような状況を生み出してしまいました。 

そしてとどのつまりISというモンスターを生み出し、テロリストを退治するためにロシアの中東介入を許すはめになっていきました。 

ルトワックは、イラクには介入するな、するなら今の世代が消えて新世代に替わる半世紀は駐屯する覚悟で介入しろと主張していました。 

また、善意のNGOがテロリストにいいように利用され、紛争をいっそう血生臭くしたことも厳しく批判しています。 

私は、朝鮮半島でも米国が中途半端なことをすれば、後々現在の中東と同じようなことになり、禍根を残すことになると思います。

それを考えれば、いまのままであれば、たとえ韓国や日本に被害が出たとしても、米国はルトワックが主張するように、北の核施設を爆撃するべきだと思います。

もし、今年中にも爆撃をせずに、北を放置しておけば、北の思う壺にはまり、米国は北の核を容認するようなことにでもなれば、米国はまた第二のISを生み出してしまうことになるかもしれません。オバマ流の綺麗事では、世界の混迷は深まるばかりだと思います。

今すぐ攻撃すべきかどうかは別にして、米国による北爆撃は選択肢としてはいつでも実行できるように準備しておくべき筋のものと思います。

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