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2020年1月31日金曜日

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」―【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」

米国ウィルパー・ロス商務長官

<SARSにアフリカ豚コレラ、新型コロナウイルスと続き、感染症は企業が中国に進出する際の深刻なリスク要因だということがはっきりした、とロスは言う>

アメリカのウィルバー・ロス商務長官は1月30日、インタビューに答えて、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大のおかげで、北米に雇用が戻ってくるかもしれない、と語った。

トランプ政権発足直後から商務長官の職にあるロスは、FOXビジネスの番組で、新型コロナウイルスが中国経済に及ぼす影響について問われた。世界各国は現在、ウイルスの侵入を食い止めるため、中国に出入りする渡航に制限をかけている。

ロスはまず、ウイルスの被害に遭った人たちへの同情を表した。「まず何よりも、アメリカ国民は新型コロナウイルスの犠牲者に対して追悼の気持ちを持たなければならない」

さらに「とても不幸でとても悪質な感染症が、(自分たちに)幸いしたなどとは語りたくはない。しかし事実として、外国企業は部品調達網の見直しを行う際、感染症のリスクを考慮せずにはいられないだろう」と続けた。

「まずはSARS(重症急性呼吸器症候群)、そしてアフリカ豚コレラもあった。今回は新型コロナウイルスで、これは人々が考慮せざるをえない新たなリスク要因だ。結果として、北米への雇用回帰は加速すると思う。アメリカだけでなく、メキシコにも雇用は戻るだろう」と語った。

中国の感染者数は1万人近くにまで増加

今回の新型コロナウイルスは、昨年12月に人口約1100万人の中国湖北省・武漢で発生し、中国本土を中心に世界各国へと拡大している。

米疾病対策センター(CDC)が公表した情報によると、新型ウイルスは肺炎による重度の呼吸器症状を引き起こす可能性がある。当初、感染源は武漢の海鮮市場と言われていたが、市場や、そもそも武漢に行っていない人からも感染者が出始めたことから、今ではウイルスは人から人への感染力を持ったと見られている。

中国当局は、1月24日から30日までの春節(旧正月)の期間に感染が拡大することを恐れていた。春節には、武漢の住民を含む多くの中国人が、故郷に帰ろうと大移動をするからだ。

中国当局の発表によると、31日時点で確認された新型コロナウイルスの中国国内の感染者数は9692人、死亡者数は213人に上っている。また、ウイルス感染はすでに日本を始め、韓国、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど世界約20カ国・地域に拡大している。

【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

ロス長官の見方は、妥当だと思います。無論短期においては、混乱はみられるものの、長期的(3年から5年)のうちには、確かに米国にも雇用が戻ってくることでしょう。

2020年1月28日に、中国中央部の湖北省の武漢の通りに沿って、消毒剤を散布する城管

実際、中国を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車や電子機器メーカーから観光関連企業に至るまで、世界中の企業が供給網や収益への影響について不安を募らせています。

ウイルス流行の中心地となっている中国湖北省武漢は、欧米や日本の自動車メーカーや電子部品メーカーの製造拠点です。ところが各国は現在、自国民を退避させるため航空機を手配しています。

一方、中国当局は、武漢以外の複数の都市でも封鎖などの措置を取っており、数百万人に影響が出ています。1週間の春節(旧正月)休暇が延長される中、企業への負の影響は避けられないです。

■自動車メーカー
自動車大手の米ゼネラル・モーターズや仏PSAグループ、仏ルノー、日産自動車、ホンダなどは武漢周辺を合弁企業の拠点としており、各社は状況を注意深く見守るとしています。

トヨタ自動車は、自社の従業員だけではなく、中国国内の部品メーカーなどの間でも混乱が生じる可能性を考慮し、少なくとも2月9日までは中国での製造を停止すると発表しています。

■電子機器メーカー
台湾の富士康科技集団(フォックスコン)は29日、中国本土の工場を2月中旬まで閉鎖すると発表しました。

同社は、米アップルのiPhone(アイフォーン)や薄型テレビ、ノートパソコンなどさまざまな機器を製造しており、この決定は世界中の取引先企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

アップル自体は28日、2020年1~3月期の売上高について、新型ウイルス流行が及ぼす影響は不透明だとして、異例に広い幅を取った予想を発表しました。

■観光
中国では現在、国外への団体旅行が禁止されています。そのため、高級ブランドや高級小売店が数多くある仏パリや伊ミラノなどの都市は、神経をとがらせています。航空各社も中国行きの便を大幅に減らしています。

オランダ金融大手INGグループの中国経済専門家アイリス・パン氏は、新型ウイルスの流行が中国からアジア各国、欧州、北米へと広がっていることにより、今年の世界全体の旅行者数は昨年比30%減となる見通しを示しました。

■小売りチェーン
米コーヒーチェーン大手スターバックスは、新型ウイルスの流行により状況が目まぐるしく変わっていると述べるにとどめ、売上高についての詳細な見通しは示していません。

中国本土はスターバックスにとって世界で2番目に大きい市場で4000店舗以上を展開していますが、新型ウイルス流行により、現在はその半数が休業しています。

米ファストフードチェーンのマクドナルドと米宅配ピザ大手ドミノ・ピザも、世界全体の売上高に占める割合から見ると同じく中国で大きな存在感を示しています。

一方、スウェーデンの家具大手イケアは29日、中国本土に展開する店舗のほぼ半数に当たる30店舗を一時休業すると発表しました。イケアは先週の段階で武漢の店舗を休業していました。

長引く混乱は今後、他の産業分野にも影響を及ぼす可能性があります。例えば中国は、欧米の製薬会社が多くの救命治療用にリパッケージしている医薬品の有効成分の生産で、世界首位を誇っています。

中国に拠点のある世界中の企業が今や供給網や収益への影響について不安を募らせているのです。

これが、今回だけのことならまだしも、SARSや豚コレラ、アフリカ豚コレラの問題もありました。中国では過去だけではなく、これからもこの種の問題は発生しうると考えられます。

そもそも、これらの問題は一時的なものではなく、中国の構造的な問題に根ざしています。その構造的な問題とは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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NBAのバスケット・ボールの試合中にフリー・チベットの活動をする他人事

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から少し長いですが一部を引用します。
不公正取引で先進諸国に「寄生」した新・悪の帝国 
 現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えている。 
 また、知財を盗むコピペ経済でもある。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛ける。 
 たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。 
 それでも彼らが儲かっているうちはまだいいが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になる。 
 そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊であった。 
 実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国であった。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告している。 
 共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請した。 
 その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できなかった。 
 やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTO(GATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのだから、15年間も交渉したことになる。 
 この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けた。 
 だが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権である。 
 米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じているであろう。
米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。
まさに、 中国に拠点を置く、米国企業や、他国企業もそれでも彼らが儲かっているうちはまだ良いのですが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になります。まさに、新型肺炎でそのような状況になりつつあるのです。

しかも、中国の感染症は、これも社会構造に根ざしたものであり、中国が社会構造変革をしなければ、改善されることはありません。

そうして、これらの企業は、中國の感染症によって、サプライチェーン等が不安定になることを嫌い、中国の拠点を自国に戻すか、中国以外に拠点を移すでしょう。

そうして、この動きは、当初は混乱もあり、世界経済に悪い影響を与えるかもしれませんが、長期的には世界経済に良い影響を与えることになるでしょう。

バーナンキ氏

現在の世界経済は、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したように、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

中国は、自国内だけではなく、一帯一路構想などで、海外でも過剰生産を繰り返しています。結局、中国の企業は国営、国有、民間企業でも政府の厳しい管理下にあり、管理下にあるということは、よほどのことがない限り、倒産することはなく、先進国なら、とうに倒産しているような会社がゾンビ企業となりさらに、過剰生産を繰り返すということになるのです。

この過剰生産が、供給過剰、貯蓄過剰を生み出し、それが先進国では高インフレや高金利が生じなくなった原因です。このような状態になった直後には多くの先進国が、デフレに悩まされましたが、ここ数年では各国がこの状況に気づき、大規模な積極財政や金融緩和に踏み切るようになりました。

そのことにまだ気づいていないのは世界では、日本くらいなものになりました。そのため、日本の財務省は、デフレから抜けきっていないのに、増税をするとか、日銀も物価目標すら達成もしていないのに、イールドカーブコントローなどの抑制的な金融政策を採用する有様です。

いずれにしても、このような中国から各国が拠点を移し、中国国内で減産モードに入ると世界はどうなるかといえば、過剰生産とそれにともなう貯蓄過剰はなくなるわけです。

米国はこのようなことを企図して対中国冷戦で実行しようとしていたのですが、ここにきて中国の新型肺炎問題が起こり、これが加速されることになると考えられます。

これを見越したからこそ、米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」と発言したのてしょう。これは、無論米国だけのことではなく、日本も含めた先進国もそのようなことになるでしょう。

そうして、何よりも世界経済にとって良いことは、世界の国々が過剰生産に悩まされることがなくなることです。無論、中国以外の新興国は、これからも過剰生産を継続するでしょうが、規模的には中国のそれよりもはるかに小さく、世界経済に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。

以前もこのブログで述べたように、中国としては、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、もっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を根本的に変えなければできないことです。

中国が社会構造改革を本気で進めれば、また拠点を中国に戻す企業も出てくるかもしれません。しかし、それにはかなり長い時間を要することでしょう。

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2018年2月19日月曜日

無理筋だった韓国の五輪外交、北の時間稼ぎに利用される ぶれていない米国の強硬姿勢―【私の論評】長期では朝鮮半島から北も韓国も消える可能性も(゚д゚)!


平昌冬季五輪の開会式で韓国の文在寅大統領(左)と握手する北朝鮮の金与正氏=9日
 平昌五輪の開会式に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、与正(ヨジョン)氏らが出席し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が融和姿勢を示した。これによって核・ミサイル開発をめぐる米朝関係に何らかの影響が出てくるのだろうか。

 米国は、ペンス副大統領を平昌五輪に派遣し、「北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄するまで同国を経済的、外交的に孤立させ続ける必要があるとの認識」を強調した。ペンス氏は「問題は言葉でなく行動だ」と、北朝鮮の非核化に向けた具体的な行動を文氏に求めた。

 ペンス氏の行動ははっきりしていた。9日、文氏が主催した事前歓迎レセプションを事実上、欠席した。

 実は、ペンス氏と安倍晋三首相は、レセプション開始時刻を10分も過ぎて到着した。その後、ペンス氏はレセプション会場に入っても主賓の席に座らず、北朝鮮高官代表団団長の金永南(キム・ヨンナム)氏を除く要人と握手して、立ち去ってしまった。

レセプション場を着席することもなくわずか5分で出ていったペンス副大統領 
 韓国としては、レセプションの座席配置も米朝の了解を得ていたつもりで、同じテーブルでペンス氏と金永南氏が同席するだけでも絵になるともくろんでいた。しかし、米国がそれを認めるはずもなく、ペンス氏は、北との接触を回避するというより、平然と無視していた。

 一連のおぜん立ては文氏の平和演出であろうが、これは無理筋だ。北朝鮮側の事実上トップだった金与正氏は、米国の制裁対象者でもあり、米国としては無視するのは当然だ。

ペンス氏は、文氏に「米国は、北朝鮮が永久的に不可逆的な方法で核兵器だけでなく弾道ミサイル計画を放棄するその日まで、米国にできる最大限の圧迫を続ける」と伝えた。訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談でも、「近日中に北朝鮮に最も強力かつ攻撃的な制裁を加える」と明らかにしたという。

ペンス米副大統領が、訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談
 マティス米国防長官は、平昌パラリンピック(3月9~18日)の後に、軍事演習を再開することを明言している。

 一方、金永南氏は、文氏との会談において、米韓軍事演習などを中止し、訪朝を最優先とすることを要請したようだ。金正恩氏は、9月9日の北朝鮮建国50周年までに南北首脳会談を実現したい意向と伝えられている。

会談する韓国の文在寅大統領(右から3人目)と北朝鮮の金与正氏
(左から2人目)、金永南氏(同3人目)=10日午前、韓国大統領府
 はっきりいえば、これは北朝鮮の時間稼ぎである。北朝鮮の核・ミサイル技術はロシア製なので、進展度合いを技術的に読むことが可能だ。米国に到達する弾道弾について、実戦配備可能な技術的な時期はあと3カ月から6カ月以内というのが通説である。

 米国は、やられる可能性があれば、その前にやる国だ。平昌五輪前日、北朝鮮では軍事パレードを行い、「火星15」とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)も披露したという。これは、米国人にとって「不穏な動き」と見られなくはない。北朝鮮に対し、「核を放棄せよ、さもないと叩く」という米国の姿勢は全くぶれていない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】長期では朝鮮半島から北も韓国も消える可能性も(゚д゚)!

平昌五輪という一大イベントを契機に南北関係が改善すること自体は、一見して評価して良いかのようにもみえます。しかし、露骨な政治利用が続くことに「もはや“平壌五輪”なのでは」といった声も聞こえてくるのが実情でした。そうして、この背後には、北朝鮮の並々ならぬ危機感がみてとれます。

そもそも、韓国と北朝鮮が融和したところで朝鮮半島危機は終息しません。重要なのは北朝鮮の非核化です。また、今回のアプローチは北朝鮮主導で行われており、仮に南北統一が実現するとしても、このままいけば北朝鮮が主導権を握ることになります。核を持つ北朝鮮と、アメリカに見限られかねない韓国を比較すれば明らかです。北朝鮮のほうが立場は上です。

これまで、日米は韓国を「反共の壁」として利用してきました。中国やロシアとの間の緩衝地帯であると同時に、日本海の安全を守るための橋頭堡という位置付けです。その代わりに、日本は韓国に膨大な資本投下や技術移転を行うことで発展を支え、いわば「自由社会のショーケース」として共存してきました。

しかし、韓国が北朝鮮に懐柔されるかたちで統一すれば、これらはすべて無駄になります。
地政学的に見れば、韓国は日本にとって非常に重要な位置にあり、日本海を軍事的対立線にしないための役割も担っています。しかし、韓国の国民が北朝鮮主導による南北統一を選ぶのであれば、日本にそれを阻止する手段はないに等しいです。ただし、米国は黙ってはいないでしょう。

かつて、日本の保守勢力と韓国の政界は深い関係を持っており、韓国の内政に日本の影響力を行使することもできました。しかし、現在はそうした人脈が失われつつあります。

すでに、世界は「平昌五輪後」の情勢を見据えています。欧米メディアからは「五輪が終わるまでは……」というフレーズが多く聞かれ始めています。振り返ってみれば、2014年のロシアによるクリミア侵攻もソチ五輪の閉幕直後でした。前述したアメリカの独自制裁も含め、五輪後に北朝鮮情勢に新たな動きがあったとしてもおかしくありません。

ロシアによるクリミア侵攻
平昌五輪終了後の半島情勢は以下のようなシナリオが考えられます。ただし、このシナリオ内でも大きなバリエーションのあるものになりそうです。

①北朝鮮の崩壊と新体制の確立 ②現状維持 ③朝鮮半島の合意一体化の3つです。②と③は北朝鮮の実質勝利です。日本や中国を含む多くの国は目先②を望むのでしょうが、それは案外、可能性が低い選択肢かもしれません。なぜなら、②は単なる北朝鮮の時間稼ぎに利用されるだけだからです。

ただ、現状維持とはいっても様々な事態が予想されるかもしれません。たとえば、米は経本格的に海上封鎖することになるかもしれません。それも中途半端なことはせずに、海上に機雷を敷設して完璧に封鎖ということも十分考えられます。場合によっては、北と中国の間の鉄橋などを破壊するかもしれません。こうなると、もう戦争状態です。

中国が描くシナリオは③である可能性が高いです。その場合、いったん韓国を左派色に染めて北朝鮮との色の差を薄くし、アメリカと韓国との色の差を強調するかもしれません。

一方、中国にとって日本は戦略的に重要な立場になるため、南京事変といった歴史問題は当面横に置いておき、日本とのコミュニケーションをスムーズにしておくことを推し進めるかもしれません。

日本の報道では日中関係改善と報じられていますが、外貨不足の中国による日本からの外貨誘導のための改善かもしれません。実質的には巧みに計算された政策です。日本政府ももちろん、それは理解していることでしょう。

仮に③のシナリオとなった場合、韓国の中で右寄りの思想の人たちが日本に渡ってくる可能性は大いにあります。

ただし、同じ③でも、米国主導により、北朝鮮・韓国の現体制抜きで、半島全体に新たな秩序をつくりだすということも考えられます。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日韓合意検証発表】交渉過程の一方的公表を韓国メディアも批判「国際社会の信頼低下」―【私の論評】北だけでなく朝鮮半島全体に新レジームが樹立されるかもしれない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
現在の文在寅政権は、かなり親北的です。これは、日米からみると、北が米国の圧力に屈したり、武力攻撃で崩壊したしたにしても、韓国にその勢力が残存することになり、実質半島全体が北朝鮮になってしまうかもしれません。これはかなりやっかいなことになります 
中露からすれば、北朝鮮が一方的になくなれば、いずれ韓国が北の領域も併合することになるかもしれないという危機感があります。そうなると、今までは日米との間に北という緩衝地帯があったにもかかわず、それがなくなることを意味します。 
これは、日米中露にとっては良いことではありません。であれば、朝鮮半島全域を日米中露と他国をも含めた国連軍などで統治した後に、ここに日米寄りでも、中露寄りでもない中立的な新国家を設立するというのが最も望ましいかもしれません。 
しかし、北の後には、韓国を何とかしなければならないという機運は、日米中露の間で高まるのは間違いないものと思います。ただし、これはすぐにということではなく、北朝鮮崩壊後数年から10年後ということになるでしょう。
このように、長期では、半島全体に北朝鮮や韓国とは全く異なる、中立的な新国家を樹立ということになる可能性も十分あると考えられます。

また①のシナリオ、つまり斬首作戦はアメリカがどういう分析をしているかによるでしょう。仮に金一族を否定することが北朝鮮国民のマインドを喪失させるのか、かつての日本のように180度転換できるのか、その場合、誰かリーダーになれる人はいるのか、疑問だらけではあります。

つまり首を取るのは簡単でもその後の2500万の残された国民の対応は、結局のところ未だわかりません。ただし、今の国民は体制のことを考えることすら許されていません。であれば、それを考えることが許される体制への変化は受け入れやすいかもしれません。それに、リーダー足り得る人も存在すると思います。

平昌五輪・パラリンピック終了後の4月頃には米韓合同軍事演習や文大統領の来日も予定されていますが、今は春に向けて政治的駆け引きが活発化しています。

かつて、太平洋戦争前の1941年11月に「ハル・ノート」と呼ばれる交渉文書がアメリカから日本に提示されました。これは日本に中国およびインドシナからの撤退などを求める内容で、事実上の最後通牒とみなされています。

そして、要求をのめなかった日本は開戦へと突き進むことになったわけですが、今回の日米首脳の訪韓は、ある意味で韓国に向けた「現代版ハル・ノート」といえるのかもしれません。

かつて、アメリカの国務副長官リチャード・アーミテージが9/11直後、パキスタンが、アフガニスタンの盟友、タリバンを即座に裏切り、アメリカにアフガニスタン侵略の為のパキスタン内軍事基地の使用を認めなければ、「アメリカがパキスタンを爆撃して石器時代に戻してやる」とパキスタンの諜報機関ISI長官マフムード・アフメド中将を恫喝したとムシャラフは主張していました。

アーミテージ
今回もペンス副大統領がこれに近いことを文在寅に吹き込んだ可能性すらあるのではないかと私は睨んでいます。

そこまでいかなくとも、日米と中国との狭間で、どっちつかずのバランス外交をしていると、半島から北はもとより、韓国も消える可能性もほのめかしたしたかもしれません。そうして、それは日米だけではなく、中露も望んでいる可能性があります。

何しろ、ここ70年朝鮮半島は、各国にとって少しも良いことはありませんでした。今の状況は、北朝鮮は中露の同盟国とは言い切れない状況にあります。また、韓国が日米の同盟国ということも言い切れません。かといって、無論北朝鮮は日米の同盟国にはなり得ません。同じく、韓国が中露の同盟国となることも不可能です。

こんなことを考えると、日米中露が朝鮮半島全体に新たな秩序をつくりだすことには、それなりの意義と合理性があります。

いずれにしても、朝鮮半島には今までの常識では計り知れない何かがおこる可能性が大です。すべての可能性を除去することなく考えておくことによってのみ適切な対応が可能になるでしよう。これをきっかけに、日本も大きく変わる可能性もあります。

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2017年8月19日土曜日

【日本の解き方】景気拡大による人手不足、苦境に陥るのはブラック企業 労働者には賃上げの好機―【私の論評】長期と短期でみた雇用対策のありかた(゚д゚)!

【日本の解き方】景気拡大による人手不足、苦境に陥るのはブラック企業 労働者には賃上げの好機

このところの人手不足を深刻だと感じ、景気への悪影響を懸念する企業も少なくないようだ。ただ、人手不足は労働者や景気にとって本当に問題なのか。そして人手不足を解消するにはどのような方法があるのか。

 産経新聞社が7月下旬から8月上旬にかけて主要企業121社を対象に実施したアンケートによれば、4割近く(無回答を除く)の企業が人手不足を感じているという。人手不足は商機を逃す要因にもなりかねず、景気に悪影響を与えるとの懸念も6割に上った。

 これは、企業側からみた話である以上、当然ともいえる。企業にとって人手不足は、人件費を増やすコストアップ要因になるし、もし人手不足に対応できなければ企業の死活問題にもなる。

 ただし、人手不足になる要因は何かと言えば、景気拡大を受けた仕事の増加である。しかも賃金の上昇で対応するとしても、企業が倒産するまで賃金を上げることはもちろんなく、基本的には企業収益の範囲内である。つまり、景気拡大によってこれまで儲けた分と、今後儲ける分の一部を労働者に還元するだけのことだ。

 このように考えれば、企業の人手不足は、企業の担当者にとっては大変なことだろうが、その背景に仕事の増加があるので、うれしい悲鳴といったところだ。この意味では、人手不足が景気の悪影響になるというのは、大げさな表現であり、せいぜい人手不足に対応できない企業の経営が大変になるという程度の話である。

 もちろん、労働者から見れば、人手不足は、就職の選択肢が広がるという意味でありがたい話だ。

 11日のNEWSポストセブンで堀江貴文氏が「仕事で悩んでいるなら才能よりも環境を疑え」と興味深いことを書いている。仕事や人間関係で悩んでいたら「さっさと辞めたらいい」としているが、まったくその通りだ。

堀江貴文氏
 もっとも、アベノミクスの前の民主党政権時代は、そう気安く言える経済環境ではなかった。失業率が今よりも高かったので、会社を辞めても、次の仕事を確保するのが難しかったからだ。下手をすると、会社の仕事に悩んで自殺という最悪の結果になることもあった。

 ところが、今では失業率は低くなり、人手不足なので、新たな会社を探すのは難しくない。これは、自殺者数の減少という形で成果になっている。

 いずれにしても、原因として景気拡大による仕事の増加がある限り、人手不足は経済全体にとって良い話だ。

 一方、苦境になる代表格は、賃金切り下げで収益を上げてきたブラック企業だ。本コラムでも書いてきたが、デフレ時代には売り上げ減少の中、賃金カットを行うブラック企業が勝者になる。しかし、脱デフレ時代には、拡大する収益を労働者と分け合うような企業が勝者になるはずだ。

 企業が人手不足を悪者にするのは、ブラックな側面が出たとみるべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】長期と短期でみた雇用対策のありかた(゚д゚)!

人手不足の問題が深刻化する中、労働者派遣業界にもその影響が及びつつあるようです。帝国データバンクが8月8日に発表した「労働者派遣事業者の倒産動向調査(2017年上半期)」によると、労働者派遣業の倒産件数は2年連続で増加しています。本来、人手不足の状況は労働者派遣業の追い風となるはずですが、深刻な人手不足が派遣する人材の確保も困難にしている実態が明らかとなりました。

調査によると、2017年上半期(1月~6月)の労働者派遣業の倒産件数は37件となり、前年同期の33件から12.1%の増加となりました。上半期の倒産件数は2年連続となります。負債総額は前年同期比30.3%増の37億8300万円となり、こちらも2年連続の増加となっています。

派遣の仕組み
年ベースで見ると、倒産件数、負債総額共に2014年を境に2年連続の減少を続けており、2016年は倒産件数57件、負債総額39億9600万円でした。2017年は上半期を終えた時点ではありますが、共に増加に転じる可能性が高いです。帝国データバンクによると、2017年7月単月での倒産件数は6件となっており、通年では70件程度が見込まれています。また、負債総額に至っては、7月単月で4億7500万円となっており、1月から7月の累計で既に前年を上回っています。

本来であれば、人手不足が叫ばれる現在の環境は、労働者派遣業に追い風となるはずです。しかし、現在の深刻な人手不足は派遣する人材の確保も困難にしており、皮肉な事に人手不足が労働者派遣業界自体も苦しめているようです。

帝国データバンクによると、2017年上半期において、労働者派遣業界の景況感を示す景気DIは54.7と基準となる50を上回っています。国内平均が46.1と50を下回る中、業界としての景気は悪くないです。

問題は深刻な人材不足にあります。雇用の過不足を表す「雇用過不足DI」を見ると、労働者派遣業は非正社員で65.4と基準の50を大きく上回ります。国内平均は54.9となっており、業界の大きな課題となっています。また、正社員の「雇用過不足DI」も62.1となっており、こちらも基準の50や国内平均の57.4を上回ります。ここ数年、労働者派遣業の「雇用過不足DI」は高止まりしており、派遣スタッフや自社の正社員の確保に頭を悩ませている事が分かります。

労働者派遣業における人手不足の原因は、近年の雇用環境の改善が大きな要因となっています。厚生労働省が発表した2017年6月の正社員の有効求人倍率は1.01倍となり、2004年の調査開始以来、初めて1倍を超え、求人が求職者を上回る状態となっています。パートタイムを含めた全体の有効求人倍率は1.51倍となっており、こちらはバブル期の水準も上回り、高度経済成長末期以来の水準を叩き出しています。労働市場は売り手市場となっており、派遣スタッフを希望する労働者が減少していると見られます。

人手不足がのしかかる労働者派遣業ですが、その影響を大きく受けているのは中小零細業者であるようです。冒頭の調査によると、2017年上半期の倒産件数37件の内、負債総額5000万円未満のものは26件となっており、その比率は70.3%に上る。負債総額5000万円未満の倒産が全体の7割を超えるのは、調査を開始した2008年以降で初となります。

対する大手は国内全体の人手不足を追い風とした事業運営を行っています。業界最大手であるリクルートホールディングス <6098> が8月10日発表した、2018年3月期第1四半期決算によると、同社の国内人材派遣事業の売上高は前年同期比12.6%増の1257億円となっており、好調です。テンプホールディングスから社名変更したパーソルホールディングス <2181> の2018年3月期第1四半期決算でも、人材派遣事業の売上高は前年同期比10.4%増の1174億円となっています。

大手では派遣スタッフの人材確保に向け、賃金を上げる動きも進んでいます。また、一部では派遣スタッフの契約を従来の有期雇用から無期雇用に切り替える動きも出ています。大手が資金力や知名度を活かした人材確保に動く中、中小零細は非常に厳しい戦いを強いられています。人手不足の問題は簡単に解決する問題ではありません。労働派遣業は人材を確保出来た者のみが生き残れる消耗戦に入っていく可能性もあります。中小零細の人材派遣業者は特色を出していく等、生き残りに知恵を絞らなければならないでしょう。

株式会社ネオキャリアの女性スタッフ
たとえば、人材サービスを手がける株式会社ネオキャリア(東京・新宿区)は、45歳以上限定の労働者派遣サービスを今月中に始めます。

今の労働市場は、人手不足が深刻化しており、若い人にとっては「売り手市場」。一方で、1970年代半ばに生まれた「ロスジェネ世代」には、90年代後半の就職氷河期もあって、中年フリーターが増えています。こうした人材を活用する狙いがあるようです。

「派遣業界は今まで、45歳未満か、50歳以上のシニア層の募集が基本でした。45歳から50歳の“エルダー層”には求人がない状態だったのです。しかし、今の中高年は肉体的に若く、仕事に就くと定着率が高く、出勤率も良く、勤務態度もマジメだと派遣先企業からの評判がいい。それが、45歳以上のサービスを提供しようと考えたキッカケです」(ネオキャリア広報担当)

職種は、コールセンターやデータ入力などの事務職を中心に、清掃業務などもあるといいます。時給は1500円から2000円。失職中やフリーターの中高年にとって、文字通り“ネオキャリア”となるのかも知れません。人材コンサルタントの菅野宏三氏は「労働市場の実態に即したサービス」と評した上でこう続けます。

「これまで40代以上は求人が極端に少なく、仕事を探すのが困難な状況が続いてきました。しかし、若い働き手でなくても構わない職種がどんどん増え、企業サイドも中高年を積極的に受け入れるようになっている。人手不足を、コストと時間がかかる若い人材ではなく、45歳以上の中高年で補おうということでしょう。“苦肉の策”とも言えますが、方向性は正しいと思います」

なお、中高年の採用は“人柄重視”だそうです。若者とも和やかに働ける人が重宝されるらしいです。

今後人手不足がさらに続くと、さらに高齢者や女性に焦点があてられるようになるかもしれません。

一昔前の肉体労働者(実際ほとんどの労働者がこの範疇で、これらの多くは、モノ運んだり、つくったり、農業、漁業などの労働者であり、それが大勢を占めていた)であれば、55歳にもなればもう十分働いたという感覚であり、そこからさらに働きたいなどというものはほとんどいませんでした。多くの人が、50歳にもなれば、定年して引退生活することを心待ちにしていました。

一昔前のアメリカの肉体労働者
しかし、知識労働者は違います。彼らは、まだまだ、健康で頑丈であるばかりではなく、まだまだ働く能力が十分にあり、また、定年した後でもそうしたいと願っています。ただし、ここでいう知識とは仕事に適用できる知識を意味します。本や百科事典に書かれてあるようなものは、仕事に直接適用することはできず、単なる情報にすぎません。そうして、知識を仕事に適用するのが、知識労働者です。

そうして、現代ではこの知識労働が仕事の大部分を占めています。モノ運んだり、つくったり、農業、漁業などの労働者の労働者は、少数派になりました。それに、このような労働者ですら、知識を仕事に適用する場面が増えてきています。ここは勘違いしないでいただきたいと思います。

年金が破綻するかもしれないと思われている日本でも(実はさほど深刻ではないのですが、本日は本題から外れるので述べません)、おそらくアメリカの後を追い、いずれ定年が70歳まで、引き上げられるか、実質上の定年撤廃(働けるまで働く)という時代がやってくるかもれしません。

世界中の先進国や新興国では、少子高齢化で若者の数が少なくなっているため、雇うのが困難になりつつあります。さらには、若年層は、企業で再教育が必要ですが、高齢者、特に高学歴の知識労働者については、その必要もないです。

数年前までの雇用状況が悪化していた状況では、そのような必要はないですが、これから日本も高齢者を活用することを本気で考えなければなりません。いずれ、高学歴の高齢な知識労働者の奪いあいになることも十分に考えられます。

ただし、若年層はフル・タイムで働くことを前提とした人事・労務管理が行われてしかるべきですが、高齢者に関しては、臨時とか、契約、コンサルタントなど、多様な就労形態による人事・労務管理が重要になってきます。

しかし、今後さらに景気が上向き、さらに少子高齢化が進んだことも考え、上記のようなこと記憶にとどめておいて、手をうつべきと思います。

建築現場で働く女性
それにしても、雇用に関しては短期的展望と、長期的展望を持っておく必要があります。現状の人手不足は、2013年から始まった日銀による金融緩和に源があります。日本では、金融政策と雇用とが密接に結びついているという考えは一般的ではありませんが、欧米では常識です。簡単にいうと、金融緩和をすれば雇用は増え、引き締めをすると雇用は減ります。

一方、2014年4月からは、日本はデフレにから完全に脱却していなかったにもかかわらず、8%増税を実施してしまったため、個人消費が減退して、GDPが伸び悩みの状況でした。

しかし、その状況も金融緩和を継続して行っていたせいもあって、改善されつつあります。このブログでも先日掲載したように、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにます。

実際この記事にも掲載したように、8月14日に発表された2017年4-6月期のGDP速報値では、実質GDPの季節調整済前期比(年率換算)が+4.0%と、大きく上振れました。

しかし、この状況がいつまで続くかは保証の限りではありません。今後、過去のようにデフレ下で金融引締めや、増税などの緊縮財政をするようなことはなく、まともな金融政策や、まともな財政政策が実行されるかどうかを見極めるべきです。

それにしても、直近の人手不足は何とかしなければなりませんから、特に人手を必要とする小売・サービス業のような業態では、営業店舗などの現場では、過去のように新卒ばかりに頼るというのではなく、中高年の活用を積極的にすすめるべきです。この分野では、女性の活用も従来から進んでいますが、女性の活用もさらにすすめるべきです。

そうして、これから先日本でもまともな金融政策や、財政政策ができるようになると判断できた場合は、さらに雇用政策を変えていくべきです。運悪くもしそうならなければ、残念ながら、再度ブラック的になるしかありません。もちろん完全なブラックはいけませんが、デフレ期には企業がある程度ブラック的になるのはやむを得ません。それは、企業の責任ではなく、政府の経済対策のまずさのせいです。以下には、日本の金融・財政政策がまともになると判断された場合のみ記載します。

先に述べたように、現場だけではなく、会社の中枢である本部も含めて会社の様々な部署に高齢の知識労働者を配置することを考えるべきです。

そうして、このようなことを考慮しなければならない時代には、当然のことながらあらゆる市場もかなり大きく変わります。

日本では、過去デフレが続いたので、顕著ではなかったのですが、日本のように極端なな長期のデフレに見舞われなかった先進国においては、50歳未満と、それ以上の年代層の2つの異なる労働市場が併存しています。日本もそのようになります。日本はデフレだったために、この労働市場の二分化が進みませんでした。

若者が就職に苦しむような時代には、当然のことながら高齢者の労働市場など出来上がる余地もありませんでした。

このように2つに別れた市場に対応するマーケティングと、イノベーションが必要になりす。特に50歳以上の市場に対応するためには、若者では無理であり、高齢の知識労働者は欠かせなくなります。

いずれにせよ、このように労働市場がはっきり二分化する時代にはやくなってほしいものです。

さらに、労働市場だけではなく、あらゆる市場が多様化します。1920 年代、30 年代まで:あらゆる国が多様な文化と市場を有していました。  たとえは、農村市場、富裕市場などです。

 第2次大戦後は、あらゆる先進国が大衆向けの唯一の文化と市場を有する時代が続きました。 今日、再び市場の多様化の兆しがみられます。たとえば、ハイテク株のバブル市場(45歳未満)、長期投資市場(50歳以上)、高学歴者のための継続教育市場、そうして少子化がこれからも進みか つて4、5人の子供にかけていた総額を超える額を1人にかけるようになり若年市場ができあがります。

日本のように極端で長期のデフレに見舞われなかった他の先進国では、市場の多様化がかなり進みましたが、日本ではそうではありませんでした。今後、まともな経済対策が行われ、不況が数年続くようなことがあっても、デフレが長期にわたって続くことがなければ、このようなことが日本でも起こります。

このような市場の多様化に対処するためのもマーケティング(顧客の創造)、イノベーションは必要不可欠であり、特に高齢者の市場には若者だけでは対処できません。質量ともに、幅広い人材が必要になります。

とにかく、このような状況にはやくなって欲しいものです。そのためにも、政府はこれからまともな経済対策を実行して、数年間不況が続くようなことは仕方ありませんが、経済の癌ともいわれる異常事態のデフレに舞い戻るようなことだけはすべきではありません。

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