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2020年8月27日木曜日

中国、弾道ミサイル4発発射で南シナ海が戦場に…米国に“先に手を出した”代償―【私の論評】中国には、かつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ米国の様子をうかがい、あわよくば取引をしようとする暇もない(゚д゚)!

中国、弾道ミサイル4発発射で南シナ海が戦場に…米国に“先に手を出した”代償

文=渡邉哲也/経済評論家

中国の習近平国家主席

南シナ海をめぐるアメリカと中国の応酬が激化している。8月26日、ドナルド・トランプ政権は中国企業24社に事実上の禁輸措置を発動することを発表した。

 国有企業である中国交通建設の傘下企業などについて、南シナ海での軍事拠点建設に関わったとして、「エンティティー・リスト」に27日付で追加する。今後、対象企業にアメリカ製品を輸出する場合は米商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下されるという。

 中国交通建設は習近平指導部が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」に関わる企業であり、ほかにも、デジタル通信機器やGPS関連機器を手がける広州海格通信集団などが含まれており、今後大きな影響が出るものと予測される。

 ウィルバー・ロス商務長官は「(制裁対象企業が)中国の挑発的な人工島建設で重要な役割を担っている」と断定しており、南シナ海関連では初めてとなる経済制裁のカードをここで切ってきたことになる。ただし、今回の措置は「アメリカ原産技術の禁輸」であり、金融制裁を伴うものではない。そのため、警告の意味合いが強く、短期的には影響が限定されるだろう。

 また、米国務省も、南シナ海の埋め立てや軍事拠点化などに関与した中国人と家族に対して、入国拒否などのビザ(査証)制限を実施すると発表した。マイク・ポンペオ国務長官は、「アメリカは中国が南シナ海での威圧的行動を中止するまで行動する」と警告している。

 中国が南シナ海で人工島を建設するなど軍事拠点化する動きについて、7月には、ポンペオ国務長官が「完全に違法」「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」と明言し、アメリカが初めて公式に否定した。また、同月には南シナ海で米中が同時に軍事演習を行い、一気に緊張が高まったという経緯がある。

中国のミサイル発射で南シナ海が“戦場”に

 一方、中国は8月26日朝に南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発の発射実験を行ったことが報じられており、ミサイルは南シナ海の西沙諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾したという。しかも、そのうち「東風26」は米領グアムを射程に収めることから「グアムキラー」と言われ、同じく発射された「東風21D」とともに「空母キラー」と呼ばれる強力なものだ。

 中国は前日に軍事演習区域を米軍偵察機が飛行したことに対して「あからさまな挑発行為だ」と非難しており、アメリカを牽制する意図があることは明らかだ。しかし、あくまで威嚇的な行動であるとはいえ、これは事実上の宣戦布告と言っても過言ではない。南シナ海を舞台にした米中による戦争状態を加速させる動きであると同時に、中国がアメリカに対して先に手を出してしまったことの代償は大きなものになるだろう。

 すでに、アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中国の在留アメリカ人に対して帰国命令を出しており、残留者については保護の対象外としている。そのため、中国には保護すべきアメリカ人はいないということになっている。

 中国に対して強硬姿勢を取るアメリカは、台湾との関係を強化している。8月10日には、アレックス・アザー厚生長官が台湾を訪れ、蔡英文総統と会談を行った。これは、1979年の断交以来、最高位の高官訪問であり、中国に対する牽制の意味合いも多分に含まれているだろう。

 当初は8月末に予定されていたG7サミット(主要7カ国首脳会議)は11月に延期され、世界的な話し合いの場は先送りとなった。今後は、9月半ばに迎える、華為技術(ファーウェイ)や北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画アプリ「TikTok」に対する制裁期限、9月26日から実施される香港の貿易上の優遇措置廃止などが、事態が動くタイミングとなるのだろう。

 また、アメリカ大統領選挙の選挙戦が本格化する中で、中国共産党員のアメリカ資産凍結と入国拒否、アメリカからの退去命令などの、より強い制裁が発動されるのかも注目に値する。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】中国には、かつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ米国の様子をうかがい、あわよくば取引をしようとする暇もない(゚д゚)!

いよいよ、中国が本格的に北朝鮮化してきたようです。これから、中国は北朝鮮のように、ミサイルを頻繁に発射しつつ、核を開発し、様子をうかがいつつ米国との取引ができる状況になれば、ミサイルの発射を控えるということを繰り返すようになるのでしょうか。

いずれにせよ、中国が北朝鮮のようになることは十分に予想できました。中国共産党が「香港の1国2制度破棄」によって、引き返すことのできない、ルビコン川を渡ったのは明らかだらかです。習近平氏は従来から「毛沢東崇拝」を隠しもしませんでしたが、習近平政権の毛沢東化はついに「ルビコン川」を渡ったと言えるでしょう。

ルビコン川 川幅の身近いところは1mに満たない

「香港国家安全維持法」が6月30日に行われた中国全人代常務委員会で可決されましたが、施行されるまでこの法律の全文は公開されませんでした。さらに、中文のみで英語のものはありません。香港で施行される法律で英文がないものは初めてだろうと言われています。

しかも、この法律は中国共産党の統治下にはいない国外の外国人や組織にまで適用するという異常ぶりでした。

この時にすでに、中国は英語でいうところの"point of no return"(引き返せない地点)、すなわちルビコン川を渡ってしまい、かつてのナチス・ドイツと同じように、「殲滅すべき人類の敵」と民主主義国の国々から認識されたのです。

この「人類の敵」は、当時のナチス・ドイツと比較すれば、さほど強力ではないようです。特に核兵器に関しては、ソ連の核兵器を継承したロシアにも劣ります。さらに、人民解放軍は人民を抑圧するための組織であり、養わなければならない兵隊の数は多いがですし、長期にわたる一人っ子政策で、ほとんどが一人っ子ということもあり、外国と戦うための戦力としてはあてになりません。

ナチス・ドイツのV2ロケット

2隻の国産空母はほとんど戦力になりません。そうして、これは特に強調しておきますが、対艦哨戒能力に関しては、中国は時代遅れであり、日米とは比較にならないほど遅れています。また、潜水艦に関しても、ステルス性において、日米とは比較の対象にならないほど遅れています。

これは、何を意味するかといえば、日米の潜水艦は中国に発見されず、南シナ海や東シナ海、その他の海域を自由に航行できますが、中国の潜水艦はすぐに日米に発見されるということです。実際、最近では奄美大島の沖を中国の原潜が通過し、それを日本側がいちはやく発見し、河野防衛大臣が、それを公表しました。

ちなみに、日米の潜水艦は、南シナ海、東シナ海は無論のこと、中国の近海やもしかすると、港の中まで自由に航行しているでしょうが、それに関して中国のメディアが公表したことはありません。というより、中国側がそれを発見する能力がないです。

最近、サイトなどで中国の軍事力についての記事をみると、南シナ海で米中が戦えば米軍が負けるなどという、噴飯ものの記事をいくつか見ることもあります。

それらの記事には、対潜哨戒能力や潜水艦のステルス性については、なぜか一言も触れらておらず、その上で、ミサイルがどうの、航空機がどうのと、もっともらしく述べられ、結論として米国が負けるとしていました。

そういう記事には、「日米は南シナ海や東シナ海では潜水艦を使わないのですか?」と直截に質問をしてみましたが、返事がかえってきたためしはありません。痛いところを突かれたのでしょぅ。

特に、米国の原潜は、中国に発見されることなく、世界のすべての海域を自由に航行し、核を含めたあらゆるミサイルを発射することができます。日本の潜水艦も米国の潜水艦よりステルス性に関しては優れています。これでは、最初から勝負になりません。

要するに、南シナ海でも、東シナ海でも、いや世界中の海で、中国は米国に勝つ見込みはないのです。

世界最強の攻撃型原潜、米海軍のバージニア級 

さらに、米国の世界の金融支配は、中国としてはいかんともしがたく、世界金融市場をカジノにたとえると、米国がカジノの胴元とすれば、中国はいくら金をかなり使うとはいっても一プレイヤーに過ぎず、胴元に対抗しようとしても、対抗するすべがありません。胴元がプレイヤーに対して、カジノから出ていけといわれたらおしまいです。

あるとすば、中国国内にある米国企業や銀行の支店に対して、取引停止や資産凍結ができるだけです。それは、全体からみればほんのわずかなものに過ぎません。もし、中国がこれを大々的(とはいいながら最初から限界がありますが)に実施するなら、米国も国内で同じことを実行し、中国がさらに疲弊するだけです。

要するにも金融でも、軍事的にも米国は中国の敵ではないということです。そうして、米国は軍事衝突の前に、中国に対してあらゆる金融カードを切ることになります。そうされても、中国には対抗手段がほとんどありません。

では、今後中国がどのような道を選ぶことができるかというと、以下の二つしかありません。

1) 現在の北朝鮮のように、毛沢東時代の貧しい鎖国をする国になる。あるいは、北朝鮮やイラン、その他の少数の国々と経済圏をつくりその中で細々と貿易をする体制になる。
2)「人類の敵」として世界中の先進国から攻撃を受け滅亡する

中国が、ここ数十年驚異的な経済発展を遂げることができたのは「改革開放」という資本主義・自由主義的政策を共産主義に変わって、国家資本主義ともよべる体制を築き実行したからです。その中のほんの一部の自由の象徴が香港でした。

「改革開放」が存在しない中国大陸は、北朝鮮と何ら変わりがありません。習近平氏の運が良ければ、北朝鮮のように貧しい国で王朝を築くでしょうが、毛沢東時代と違って「自由と豊かさを知った」中国人民を押さえつけるのは至難の技でしょう。

ただ、現在の中国と北朝鮮とは根本的に異なることもあります。金正恩は、根本的に中国嫌いです。それが証拠に、中国に近いとされた、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長と、実の兄である、金正男氏を殺害しています。

金正恩にとって、最大の関心事は、金王朝を存続させることです。それを邪魔するのが、中国であり、北朝鮮内の親中派です。これを金正恩は許すことができないのです。

北朝鮮内の親中派はことごとく処刑すれば、それですむかもしれませんが、中国に関しては、そう簡単にはいきません。黙っていれば、中国はすぐにも朝鮮半島に浸透して、半島を我が物にしてしまうでしょう。

しかし、それを防いでいるのが、北朝鮮の核であり、ミサイルなのです。北の核は、無論韓国や日本に向いているのですが、中国に向けられているのです。ただ、金正恩にも、中国を無碍にできない事情もあります。現在厳しい制裁を受けているので、何かと中国の手助けが必要であるということです。だから、表だって中国に対する反抗的な態度をみせないだけです。

しかし結果として、北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるのです。このあたりを理解しているので、トランプ政権も現在のところは、北朝鮮を泳がせて様子見をしているというのが実情なのでしょう。

それに、米国(韓国は含まず)と中国、ロシア、北朝鮮とは、朝鮮戦争の直後の休戦協定で、38度線を互いにずらすことをしないという取り決めをしているので、みずからその現状維持を破るということはしたくないという考えもあるでしょう。

しかし、中国は、北朝鮮とは立場が異なります、中国は北朝鮮のように米国の大きな敵と対峙しているわけではありません。中国がかつての北朝鮮のように、ミサイルを頻繁に発射すれば、米国はどんどん金融制裁を推進し、最終的に人民元とドルの交換を停止したり、中国の所有する米国債を無効化する措置まで実行することになるでしょう。

そうなると、中国の選べる道をは上で示した二つしかなくなるのです。そうして、中国がどちらかの道を選べば、北朝鮮の将来もきまります。

一つは、他の国が入ろうが、入るまいが、北朝鮮が中国の経済圏の中に入り、他の経済圏からは切り離され、細々と生きていく道です。ただし、これは中国の浸透を嫌う金正恩がなんとか避けたいと思う道です。

もう一方の道は、中国が「人類の敵」として世界中の先進国から攻撃を受け滅亡し、全くの別の国、もしくは国々になった場合です。

この場合、中共が崩壊した後の新体制は、少なくとも米国とは対立するものとはならないため、北朝鮮と核の存在が朝鮮半島への浸透を防いできたという状況は消えるというか、必要がなくなります。そうなると、北朝鮮は滅ぶしかなくなります。特に、金王朝は滅ぶしかなくなります。

どちらの道も厳しいですが、北朝鮮が存続するためには、金正恩がいやがるかどうかは、別にして中国の経済圏の中で細々と生きていくしかありません。

米国としては、中国との対立の前には、北朝鮮は従属関数にすぎないと考えているでしょう。米国にとって、最優先は、中国です。

いずれにしても、中国にはかつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ、米国の様子をうかがい、あわよくば、取引をしようとする、暇もないようです。そうして、今の北朝鮮は中国の出方次第です。どちらの未来も明るくはありません。

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2020年5月6日水曜日

「金正恩氏重病」に振り回され……たまにある北朝鮮の「とびきり情報」には虚偽も―【私の論評】北朝鮮に限らず、世界中て観測気球が上げられるている事実に目覚めよ(゚д゚)!

「金正恩氏重病」に振り回され……たまにある北朝鮮の「とびきり情報」には虚偽も

中朝国境の様子。手前は中国吉林省集安、対岸は北朝鮮慈江道満浦(筆者撮影)

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の「重病説」に同調していた北朝鮮出身の韓国政治家2人が4日、謝罪の気持ちを表明し、今後の言行には慎重を期すとの考えを示した。一方で「重病説」を報じた米CNNテレビは自社報道に対する検証結果などは伝えず、釈明するにとどめた。北朝鮮をめぐっては裏付けの取れない“機密情報”が少なくなく、外部メディアはそれに振り回される。ただ、北朝鮮で厳しい情報統制が続く限り、その状況が変わるのは難しい。

◇脱北の韓国政治家とCNNのけじめ

 韓国の北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNK」が先月20日に「金委員長が手術を受けた」と報じ、CNNも「重体」と続けた。これに北朝鮮出身の韓国野党政治家である池成浩氏(未来韓国党)と太永浩氏(未来統合党)が反応し、それぞれ「99%死亡を確信」「自ら立ち上がれない状態」などと発言していた。

 北朝鮮国営メディアが今月2日、金委員長の健在ぶりを伝えたことから、韓国国内で2人に対する批判がわき上がり、2人は4日、謝罪表明に追い込まれた。

 太永浩氏は「この2日間、多くの叱責を受け、自分のひとことが及ぼす影響について、切実に実感しています。理由に関わらず、国民のみなさまにおわび申し上げます」と述べた。そのうえで「今度のことを契機に、より慎重で、謙虚な議員活動を展開してまいることを約束いたします」と誓った。

 池成浩氏は「国民のみなさまに深くおわび申し上げます」と謝罪。「過去数日間じっくり私自身を振り返ってみた」と明かしたうえ、先の韓国総選挙での当選と重ね合わせて「(国会議員という)ポストの重さを深く感じました。これから公人として慎重に行動します」と反省の弁を述べた。

 一方、CNNは、北朝鮮メディアが金委員長の動静を伝えた2日の時点では「写真の真偽と撮影日は確認されていない」と慎重な態度を見せてきた。だが、写真が捏造ではないことを確認すると、「北朝鮮には言論の自由がなく、国の最高指導者に関する情報はしばしば『光が目に届かない黒い穴』になる」と表現するだけだった。

◇北朝鮮「韓国で虚偽ニュース横行」

 北朝鮮側は、韓国政治家2人の発言を念頭に、対外宣伝媒体である「メアリ」が5日、「南朝鮮(韓国)で日増しに勢いを増す『虚偽ニュース』が、人々を混沌とした状態に陥らせている」と伝えた。

 メアリはこの「虚偽ニュース」を「一定の政治的・経済的目的により、特定の対象・集団に対する虚偽事実を意図的に捏造して流す世論操作行為」と定義している。

 ただし、メアリはこの報道の中で、金委員長の「重病説」には一切触れていない。「金委員長に健康問題に関連してデマが流された」と伝えるだけでも、住民らに動揺が生じる恐れがあるためだ。

◇“国境情報”

 北朝鮮情勢を取材していると、時々“国境情報”といわれるものに出くわすことがある。これは中国に潜伏する脱北者支援組織のメンバーらが、北朝鮮側にいる協力者と連絡を取り合うなかでやり取りされるものだ。

 北朝鮮の咸鏡北道や慈江道など、中国との国境付近では中国の携帯電話の電波が入るため、双方が中国のスマホを持っていれば、国境を隔てて文字情報や動画・写真などのやり取りが可能だ。

 またこのルートは「双方向」になっているため、北朝鮮側の協力者は国外の情報に触れることができる。ここから公式メディアが伝えない「重病説」などが逆流している可能性もある。

 北朝鮮の治安当局は時に、情報漏洩ルートをあぶり出すため、疑わしい複数の人物に、個別にそれっぽい話を握らせて、情報の流れを点検するとされる。たとえば、ある人物には「金委員長は3日前に死んだ」、別の人物には「金委員長の叔父が権力を握った」、残るひとりには「金与正氏が監禁された」といった、メディアが欲しがるような「故意の誤報」をあえて流し、どの人物に流した情報がどのようなルートを経て外部で報じられるようになるのかを確認するというものだ。こうした情報は絶妙なタイミングで流され、筆者もだまされて情報源を遮断された経験をもつ。


【私の論評】北朝鮮に限らず、世界中で観測気球が上げられるている事実に目覚めよ(゚д゚)!

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の健康状態について韓国の情報機関は6日、異常はなく、手術も受けていないと判断していることを明らかにしました。

北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長をめぐっては、先月、アメリカのCNNテレビが、「手術のあと重篤な状態になっているという情報がある」と伝え、健康状態に関心が集まっていました。

北朝鮮の国営メディアは今月2日になって、キム委員長が肥料工場のしゅんこう式に出席したと報じ、20日ぶりに公の場に姿を現したことが確認されました。

これについて韓国の情報機関、国家情報院は6日、国会の情報委員会に対し非公開で報告を行いました。出席した議員によりますと、この中で国家情報院は、キム委員長の健康状態に異常はなく、手術も受けていないと判断していることを明らかにしました。

その理由としては、手術を受けた場合、4週間から5週間程度は療養しなければならないと、専門家が指摘していることを挙げ、動静が伝えられていなかった間も、正常に国政運営を行っていたとする見方を示しています。

また、国家情報院は、ことしに入って公開されたキム委員長の活動が17回と、例年の同じ時期に比べておよそ3分の1にとどまっているとしたうえで、その背景には新型コロナウイルスの影響もあると指摘しました。

以上から、今のところ金正男氏は健康かどうかはわかりませんが、少なくとも生存しているのは明らかなようです。

では、死亡の噂が駆け巡ったのはどうしてなのでしょうか。北朝鮮をめぐるうわさは、今回だけではなく常に起きてきたし、30年前からの歴史的記録も残っています。北朝鮮国内にはいくつか、うわさの出どころとみられる場所もあります。

過去には、北朝鮮国内の外国貿易部門として知られる場所が、同国指導部に関する一部のうわさの出どころだと考えられてきました。資金やぜいたく品を調達して指導部へと送る朝鮮労働党39号室には、北朝鮮と海外を行き来する海外工作員が配置されています。

指導部とこの部門との間ではある程度のやりとりが交わされることから、大規模な工作員ネットワークの一部から発生したうわさもあると、長らく考えられてきました。こうした工作員ネットワークが存在するのは、私たちがみな知っていることです。

かつてそこで働いていた脱北者が証言しています。うわさの一部はやがて、日本や韓国のメディアへと流れていきます。

しかし、だからといって情報の性質はさほど変わりません。ゴシップに過ぎないわけです。

朝鮮労働党中央委員会の施設で働いていれば、井戸端会議もあるでしょう。金一族の生活には強い関心が向けられていると、かつて働いていた人たちが証言しています。ある話の3分の1がもととなった井戸端会議程度の話は、人々が思うより簡単に、北朝鮮国外へと伝わっていきます。

うわさやゴシップは北朝鮮のような全体主義体制の中でかなりはびこっています。1つの例が、2017年に殺害された金氏の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏の母方の伯母、成恵琅(ソン・ヘラン)氏の回顧録「藤の家」に記されています。

この中で成氏は、金一族に仕えるスタッフの1人から、金正恩氏の一家が有利な立場にあると聞かされた時のことを明かしています。特筆すべき点は、成氏が自分の情報源は「信頼できる」とわざわざ書いていることです。

繰り返しになりますが、情報のブラックホールの中では手に入るものを手に入れる、それが北朝鮮の仕組みです。戦場の霧(不透明な状況)の中ではそれほど多くの選択肢はありません。つまり、北朝鮮に関するゴシップに正当性を与えるのは不相応と言えます。

世界中の諜報機関もまた、オープンソースの情報を確認し、自分たちの手法で仮説を検証しようとするでしょう。

韓国には北朝鮮を監視する独自の方法があります。時には衛星を使うこともあります。そして韓国統一省は先週、北朝鮮の状況を頻繁に監視しているが特異な動向はみられないと明かしました。

米国が複数の偵察機を飛行させたことは、世界のメディアが報じたため公然の秘密となっています。偵察機で北朝鮮の状況を確認していたというわけです。

では、北朝鮮をめぐる話がうわさによるものなら、なぜ北朝鮮側はこうしたうわさを取り締まらないのでしょうか。この逆は違いますが、北朝鮮から韓国側へ連絡を入れるのは非常に簡単なのですから。

2008年ごろは、金氏に関する会話は密室で行われていたでしょうが、今日では携帯電話技術がその状況を一変させています。北朝鮮の指導者のうわさ話をする市民は、確実に追跡されるでしょう。

しかし、新たにそういう機会が生じるまでは取り締まりを受けることはないかもしれないです。金氏はこうした情報のまん延を制御できそうにはないです。ただし、金氏と近しいあるいは結びつきのある人物に関連したうわさをすれば、どうなるかは想像がつきます。

ごく一般的な北朝鮮国民は何も知らないということを留意しておくのは重要です。2016年に脱北した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使は、2017年の米議会公聴会で、ほとんどの北朝鮮国民は自分たちの指導者がスイスで教育を受けていたことすら知らないだろうと証言しています。

脱北した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使
太氏は、北朝鮮の一般市民が情報にアクセスできるよう、衛星の使用とマイクロチップの密輸を提唱していました。

実際には、金氏の健康状態に関する正確な情報にアクセスできる人はほんの一握りしかいないでしょう。だからといって、うわさが漏れないわけではないし、うわさが正しくない可能性もあります。

これまでも常にそうだった。1986年に金日成(キム・イルソン)主席が心臓発作を起こしたといううわさが流れました。当時、そう報じられていたにも関わらず、これはでたらめでした。

1990年から1992年には、金日成主席と金正日総書記が鉄道駅のプラットホームで軍によって銃殺されたとのうわさが流れましたが、全くそうではありませんでした。

咸鏡北道で朝鮮人民軍第6軍団によるクーデターが起きたとする証言が3つ存在します。第6軍団はその後解体されたままです。何かがあったということ以外、詳細はわかりません。金正日氏は2003年にすでに死亡していて、影武者が国を指揮していたといったうわさもあります。

世界のどこでもそうであるように、今でもゴシップは生まれ、うわさは広まっています。そしてほかのどんな場所とも異なっているのは、北朝鮮が望む通りにうわさを認めたり否定したりするという、その気まぐれさを、私たちはどうすることもできずにいることです。

ただ、私たちはこうしたことが、北朝鮮にだけ限ったことではないことを認識すべきです。たとえば、我が国においても、政府や、官僚、政治家などが、観測気球をあげることがしばしばあります。

たとえば、産経新聞には以下のような記事が掲載されました。
政府、緊急事態宣言に伴い首都圏での鉄道減便要請を検討 新幹線も対象
2020.4.6 13:23
 政府が7日にも発令する緊急事態宣言に伴い、首都圏などの対象区域で鉄道各社に対する減便の要請を検討していることが6日、分かった。対象は新幹線にも及ぶ見通し。不要不急の外出を抑制する狙いがあり、宣言が出れば来週以降、減便が始まる可能性がある。 政府がJR東日本などと検討しているのは、7日にも緊急事態宣言が出た場合、来週から当面の間、平日にも土日・祝日のダイヤを運用し、終電も繰り上げる。その後、通常の最大5割程度に列車の運行本数を間引きした臨時ダイヤに移行。新幹線は5割以上の減便も検討する。
鉄道減便は未だに実行されていません。これは、おそらく政府もしくは、国土交通省の官僚などによる、観測桔梗であると考えられます。ようする、何かの施策を実行するにしても、それが国民などに受け入れられやすいものなのかを確認するためのものです。

この記事に関しては、かなり批判的な意見が多く、ツイッターでは以下のような意見がみられました。
・おいおい、マジでこんなこと考えてるの? ニューヨークはそうやって感染拡大したんじゃなかったっけ?「通勤制限」「一部企業活動停止」せずに5割減便したら、朝から晩まで満員。感染爆発を引き起こすぞ
・現実を知らない政治家たちの愚かさに呆れる。朝夕の電車内は間違いなく3蜜
この他にも、困窮世帯に限った30万円の支給とか、減税に関するものなど、日本でも様々な観測気球がながれています。

新聞の記事や、テレビの報道など、ただ単純にながめていただけでは、それが観測気球であるかどうかすらわからないでしょう。

財務省なども、増税の前などには、観測気球を良くあげます。世論を読んで、その時時で増税できそうかどうかを確かめるのでしょう。日経新聞などには、良く財務官僚のものとおぼしき観測気球記事がみられます。

観測気球をあげるのは簡単です、さも重要な情報であるかのように、記者やその周辺にほのめかしたり、政府の発表や省庁による発表に尾ヒレ葉ヒレをつけることでできます。

北朝鮮の金正恩氏死亡説に関しては、最初からこのような観測気球なのかどうかは、わかりませんが、途中からは観測気球に変わった可能性が濃厚です。

金正恩もしくは、北の高官は、もっともらしい金正恩死亡説をすぐに取り消さなかったのは、これが一種の観測気球になると考えたからでしょう。

金正恩氏が、死亡した場合、たとえば中国はどのような出方をするのか、韓国はどうするのか、あるいは日米は、そうしてロシアはどうでるのか。あるいは、金正恩氏死亡の情報がどこから漏れて、どこに伝わったのか。

それに付随して、北朝鮮内部に金正恩氏の反対勢力は存在するのか、存在したとして、それは誰なのか、あるいはそれに協力する敵対勢力は外国勢力は存在するのか、等々です。

実際北朝鮮は、日米の確かな意思を明らかにすることができたかもしれません。これにつついては、先日このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
金正恩氏、新型コロナ感染!? 中国医療団が北朝鮮へ「ECMO」「アビガン」持ち込み情報 感染者は「国内にいない」としているが―【私の論評】米空軍と空自の日本海や沖縄周辺空域で共同訓練は、北朝鮮より中国と韓国を牽制するものと見るべき(゚д゚)!
金正恩氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日米の北有事の際の意思に関わる部分を以下に引用します。

言うまでもなく、文在寅大統領および与党「共に民主党」は、反日、反米、従北、親中を鮮明にする左翼革新政権です。 
今般の選挙結果を受けて、さらにその路線への傾斜を強めるのではないかと懸念され、日韓関係の改善は期待できないばかりか、「米韓相互防衛条約」を締結している同盟国・米国との関係にも亀裂拡大の恐れが指摘されています。

韓国総選挙で当選した与党「共に民主党」の李洛淵前首相(左)=ソウルで15日
このようなことを前提に考えると、米空軍と空自が22日、日本海や沖縄周辺空域で共同訓練を実施したことの意味がまた別の方向からみえてきます。 
まずは、この種の訓練には、従来なら韓国空軍も参加していましたが、今回は参加していません。これは、最早米国は、韓国を信用しておらず、朝鮮半島に危機があった場合は、日米が共同で事に臨むことはあっても、親中・従北の韓国は外すという明確な意思表示であることがうかがえます。 
そうして、この演習は、北朝鮮に向けての演習でもあるのでしょうが、それはサブの扱いくらいにすぎず、どこに向けての演習かといえば、それは中国でしょう。 
もし、中国が軍事的な意図を持って、北を脅かそうとした場合、米国としては何らかの軍事行動をし、中国の意図を挫く意思があることをみせつけ、牽制したとみるのが妥当です。それも、韓国抜きでそれを実行するという意思をみせつけたのでしょう。
金正恩氏もしくは、北朝鮮としては、日米の意思表示を確認することができたといえます。

このように観測気球は、日本でも、北朝鮮でも、そうして世界中の国々で様々な手段を用いて実施されているとみるべきです。

日本国内でも、新聞を読んだり、テレビの報道をみるときには、報道内容の中には、こうした観測気球が紛れ込んでいることを認識すべきです。

そうでないと、私たちは単に他人に操られる存在になるだけです。主体的にものを考えていくときには、観測気球の有無、観測気球をあげる人は誰なのか、その目的は何なのかをつねに主体的に考えていくべきなのです。

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“暴走”北朝鮮

金正恩氏

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の、健康不安情報が飛び交っている。「心臓手術説」や「重篤・脳死説」「療養説」などがあり、北朝鮮メディアは「根拠のないデマだ」と否定しているが、何らかの異変があった可能性は高い。中国の医療チームが、新型コロナウイルス対応の医療機器や薬を北朝鮮に持ち込んだとの情報もある。こうしたなか、米空軍と航行自衛隊が、朝鮮半島周辺で共同訓練を行ったことが注目されている。北朝鮮が国内の動揺を抑え、他国を牽制(けんせい)するために、弾道ミサイル発射を強行することなどを警戒しているようだ。


 「大体分かっている」「遠くない将来に、あなたたちも知ることになるだろう」

 ドナルド・トランプ米大統領は27日の記者会見で、健康不安説が浮上している正恩氏の状態について、こう語った。

 菅義偉官房長官も同日の記者会見で、「(正恩氏の動向と、北朝鮮によるミサイル発射の兆候などについては)重大な関心を持って常日ごろから情報収集、分析に努めており、米国を含む関係国とさまざまなやりとりを行っている」と語った。

 正恩氏については、米CNNが20日、正恩氏が手術を受けた後、重体に陥ったとの情報を報道。韓国の北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNK」も同日、正恩氏が心血管系の手術を受けたと報じ、ロイター通信は25日、「中国、北朝鮮に医療専門家などのチームを派遣」と伝えた。

 確かに、正恩氏は11日の党政治局会議に出席したと国営メディアが翌12日、写真とともに報じたのを最後に、視察活動などは明らかになっていない。北朝鮮最大の祝日であり、毎年必ず出席していた15日の「金日成(キム・イルソン)主席生誕記念日」にも姿を見せなかった。

 一連の健康不安報道に対し、北朝鮮の対外宣伝雑誌「今日の朝鮮」は28日までに、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」の公式アカウントで、「全く根拠のないデマだ」と非難した。北朝鮮の公的メディアが正恩氏の重体説を否定したのは初めてとみられる。

 北朝鮮の朝鮮中央通信も27日、正恩氏が同日、南アフリカの祝日である「自由の日」に際してシリル・ラマポーザ大統領に祝電を送ったと伝えた。ただ、正恩氏が健在ぶりを示さない限り、動揺は続きそうだ。

 CNNが衝撃報道をした直後、日米同盟が存在感を見せた。

 米空軍と空自は22日、日本海や沖縄周辺空域で共同訓練を実施し、米軍のB1戦略爆撃機1機とF16戦闘機4機、空自のF15戦闘機8機とF2戦闘機7機が参加したのだ。

 B1爆撃機は、全長約44メートル、全幅約41メートル。航続距離1万2000キロ。「死の白鳥」の異名を持ち、超音速で敵地に侵入し、精密誘導兵器で重要拠点を攻撃できる。

日本海や沖縄周辺空域で行われた日米共同訓練(航空自衛隊HPから)

 正恩氏は現在、東部元山(ウォンサン)に滞在しているとみられる。最新の衛星写真によると、21日以降、特別列車とみられる列車が金一族の専用駅に停車しているという。B1爆撃機は元山から約900キロ離れた上空を通過したとされる。

 米空軍は共同訓練の意義について、「われわれはこの地域の平和と安定への関与を続け、新型コロナが世界的に猛威を振るう状況下でも、世界のどの地域にでも同盟国と即応できる能力があると示した」と説明した。

 北朝鮮が今後、中・長距離弾道ミサイルを発射する可能性があり、米空軍と空自は警戒監視を続けている。

 中国の医療チームについても、興味深い情報が飛び込んできた。

 日米情報当局関係者は「中国の医療団が、新型コロナウイルスの重症患者に使用する人工心肺装置『ECMO』(エクモ)や、新型コロナウイルスへの効果が期待されるインフルエンザ治療薬『アビガン』を、北朝鮮に持ち込んだという情報がある」と明かす。

 北朝鮮は、世界保健機関(WHO)に対し、新型コロナウイルスの感染者が「国内にいない」と報告しているが、実は感染が広がっているとの見方は強い。

 エクモやアビガンが北朝鮮に持ち込まれたのが事実なら、正恩氏や党指導部の要人が罹患(りかん)したか、罹患した場合に備えたものと考えられそうだ。

 日米共同訓練を、識者はどう分析するのか。

 軍事ジャーナリストで評論家の潮匡人氏は「米空軍のB1爆撃機は、北朝鮮がこれまでミサイルを発射した場所や、元山も射程に入れて飛行したとの情報がある。これに対し、北朝鮮も戦闘機を飛ばして、つばぜり合いを演じたようだ。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米軍は、戦略爆撃機の配備をグアムから米本土に移した。抑止力低下が懸念されるが、米軍としては、不穏な動きをみせる北朝鮮と、東・南シナ海から西太平洋に進出しようとする中国に対して、『いつでも来るぞ』と強い意志を示したといえる」と語っている。

【私の論評】米空軍と空自の日本海や沖縄周辺空域で共同訓練は、北朝鮮より中国と韓国を牽制するものと見るべき(゚д゚)!

このブログでは、以前北朝鮮と北朝鮮の核が、結果として中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるということを何度か掲載したことがあります。北朝鮮のミサイルは、北京や上海なども目標にしうるので、これは当然といえば当然です。

それに、金正恩もその父親の金正日も、中国の干渉を極度に嫌うという点は一致していたようです。祖父の金日成のときは、ソ連の力が圧倒的に中国よりも強く、そのような心配はありませんでした。

金日成の時代には、ソ連の力が圧倒的に強く、朝鮮戦争が休戦になり、米中ソは、韓国などの意向とは全く関係なく、38度線を動かしたり、越境したりすることはせずに、現状維持をするということで、米・ソ・中・朝で休戦協定(韓国は関係なし)を結んでいます。

さらに、金日成、金正日、金正恩の三代の金一族の根底に流れているのは、金王朝の未来永劫の存続です。これだけは、現体制の北朝鮮は譲りたくないところです。

金日成時代の中国は経済的にはとるに足りない国であって、当時のソ連は世界第2の経済大国でした。そのソ連は経済で日本に追い越され、その後は、その日本を中国が国全体の経済では追い越しました。現在のロシアの経済は日本でいえば、東京都、国でいえば韓国と同程度の経済規模にまで落ちました。インドにも追い越されて、10位以下です。

ただし、経済の専門家は、中国の経済統計は全くの出鱈目で現実には、中国のGDPは未だに、ドイツ以下とするものもいます。それが事実だとしても、少なくとも国全体のGDPでは、ロシアや韓国よりははるかに大きいことは事実でしょう。


中国の経済が相対的に大きくなったこともあり、これに備えるためにも、金正日のときから核とミサイルを開発し始め、金正恩にもそれが引き継がれて、今日に至っています。

そうして、米国のトランプ大統領もそのような見方を最初はしていなかったのでしょうが、ここ数年は、そのような見方をしているようです。そのせいか、最近は北朝鮮が米国本土に到達することのない、中短距離ミサイルなどを発射しても強く非難することはなくなりました。

その背景には、韓国の反日、反米、従北、親中の姿勢もあったからでしょう。もし北に核がなかった場合には、もう相当前に朝鮮半島は、中国の覇権の及ぶ範囲になっていたかもしれません。

その傾向は近年ますます強まっています、韓国の4月15日の韓国総選挙(定数300)で、文在寅大統領率いる与党「共に民主党」が、系列の比例代表政党「共に市民党」と合わせて改選前の128議席から50議席以上伸ばし、180議席を獲得して圧勝しました。

与党が国会で法案処理が極めて有利になる5分の3の議席を占めるのは、1987年の大統領直接選挙導入以降初めてで、革新系政党が単独で過半数を得たのも2004年以来です。

言うまでもなく、文在寅大統領および与党「共に民主党」は、反日、反米、従北、親中を鮮明にする左翼革新政権です。

今般の選挙結果を受けて、さらにその路線への傾斜を強めるのではないかと懸念され、日韓関係の改善は期待できないばかりか、「米韓相互防衛条約」を締結している同盟国・米国との関係にも亀裂拡大の恐れが指摘されています。

韓国総選挙で当選した与党「共に民主党」の李洛淵前首相(左)=ソウルで15日

このようなことを前提に考えると、米空軍と空自が22日、日本海や沖縄周辺空域で共同訓練を実施したことの意味がまた別の方向からみえてきます。

まずは、この種の訓練には、従来なら韓国空軍も参加していましたが、今回は参加していません。これは、最早米国は、韓国を信用しておらず、朝鮮半島に危機があった場合は、日米が共同で事に臨むことはあっても、親中・従北の韓国は外すという明確な意思表示であることがうかがえます。

そうして、この演習は、北朝鮮に向けての演習でもあるのでしょうが、それはサブの扱いくらいにすぎず、どこに向けての演習かといえば、それは中国でしょう。

もし、中国が軍事的な意図を持って、北を脅かそうとした場合、米国としては何らかの軍事行動をし、中国の意図を挫く意思があることをみせつけ、牽制したとみるのが妥当です。それも、韓国抜きでそれを実行するという意思をみせつけたのでしょう。

さらに、この演習では、日本の最新鋭の戦闘機F35が参加していないのは、日本ではまだ導入したばかりなので、使いこなしがまた時を要するということで理解できるのですが、米国のB35も参加していません。

これは、韓国や中国に対して、手の内を見せないという意味があるものと考えられます。そのため、これは単なる意思表示という側面があるのかもしれません。

金正恩に何があったのかは、未だわかりませんが、今月の11日から消息が不明ということです。習近平も一時的に消息が不明になったことがありますが、1週間から、長くても10日でした。金正恩は、2週間以上も不明であり、何か金正恩の身にあったかもしれないということは、十分に想定されることです。

そのため、これは金正恩に何かあった場合に、中国がなんらかの動きを示した場合、それに対して米国側も動く可能性があることを、中国に対して示して、牽制したものと考えられます。

それにしても、日本人の中には、北朝鮮は中国の傀儡政権のような考えている人もいるようですが、それは完全な間違いです。金正恩は実の兄金正男を暗殺したとされていますが、金正男は中国に近いとされていました。処刑された、実の叔父である張成沢氏も、中国に近いとされていました。

もし、金正恩が死亡して、何らかの構造変化があり、北と中国の関係が強化されることでもあれば、半島の軍事バランスは一気に崩れる可能性もあります。そのことだけは、多くの人が記憶にとどめておくべきものと思います。

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2020年3月22日日曜日

中国「新型コロナ封じ込め」強権の行く先は北朝鮮化か、それとも…―【私の論評】『言論統制』の崩れは、中国の「すでに起こった未来」かもしれない(゚д゚)!

中国「新型コロナ封じ込め」強権の行く先は北朝鮮化か、それとも…
習近平とWHOは世界に謝罪すべきだ


テレビ・キャスターや中国人民は謝罪する必要がない

 中国中央テレビの邱孟煌キャスターがSNSに「我々は申し訳ないという気持ちを込めて柔らかい口調でマスクをしたまま世界に向けてお辞儀をし、『すみません、迷惑を掛けました』と言わなければならないのではないか」と投稿して炎上したと報道された。

 その後コメントは削除されたが、邱キャスターの気持ちはよくわかる。多くの日本人が「もし、日本発のウィルスで、しかも対応の不手際によって(人災で)世界の人々を混乱に陥れた」とすれば同じ感情を持つのではないだろうか? 

 ただ、「反省しすぎ」なのが日本人の欠点である。冷静に考えて、日本政府の対応の不手際によって、日本で発生したウィルスが拡散したとすれば、一番の被害者は日本国民である。日本国民はまず、政権や官僚・役人に対して怒るべきなのである。

 共産主義中国でも同じことが言える。キャスターも含めた人民は、共産党政権の「隠ぺい工作」によって、武漢肺炎ウィルスを中国全土のみならず全世界に広げた組織を糾弾すべきだ。

 「A級戦犯」は習近平氏と、それを支える共産党幹部、さらには人口のわずか数%である特権階級の共産党員である。

 武漢中心医院の眼科医、李文亮氏は、 12月30日に「海鮮市場で7件の重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た肺炎が確認された」とSNSに書き込んだ。ところが、この書き込みを発見した武漢市公安当局は李氏の書き込みを見つけ出し、事実でない書き込みであり「治安管理処罰法」に違反しているとして李氏を処罰した。そして、とても悲しいことに、李医師は2月7日に武漢肺炎によって亡くなった。

 その他にも隠ぺい工作が数え切れないほど行われ、世界中に感染が拡大した。謝罪すべきは、人災でウィルスを拡散した習近平氏と、その隠ぺい工作(責任逃れ)に加担した国連機関であるWHO事務局長のテドロス・アダノム氏である。

人民解放軍は中国共産党の「親衛隊」だ

 アドルフ・ヒットラーが率いた、ファシズム政党であるナチスはプロパンガダに秀でており、ヒットラー自身も、演説の前に鏡を見て身振りや手ぶりの練習をしたりした。今で言うイメージ戦略であり、その参謀が有名なヨーゼフ・ゲッペルスだ。

 しかし、中国共産党も負けてはいない。人為的飢饉による餓死者も含め、リンチ・拷問・処刑による死者をおよそ8000万人(西側推計)出した愚策を「大躍進」「文化大革命」と呼ぶだけではなく、機関銃で武装して無防備な人民を追い立てる組織を「人民解放軍」と名付ける。

 親衛隊は、ドイツ国軍とはまったく別個にナチス(ヒットラー)に忠誠を誓う私兵組織である(突撃隊も別途組織されていた)。人民解放軍も中国共産党に忠誠を誓う組織である上に、本当の意味での国軍が存在しない。共産主義中国では、ナチスの親衛隊が、国軍も兼ねているというような恐るべき状態なのだ。

 この「人民解放軍」という奇妙な名前の集団が、今回の「武漢封じ込め」でも存在感を見せた。もちろん、感染対策の基本、特に初動は「封じ込め」を中心にすべきであり、日本政府が共産主義中国の封じ込めを行わずに、早期に中国から日本への入国を全面的に規制しなかったのは誤った対応である。

 しかし、封じ込めは「より多くの人命を救う」という大きな効果があるとともに、封じ込められた人々にとっては「災難」という面もある。

 ハリウッド映画で、感染症あるいはゾンビが広がり始めた街を、軍隊が封鎖するというシーンがよくある。架空の話ではあるが、封鎖地域から逃れようとして、撃ち殺される人々もいる。共産主義中国や北朝鮮では実際に行われているという話も伝わってくる……

 実際、事実上の戒厳令が、病気で苦しむ中国人民を封じ込め、死に至らしめている。ウイグルやチベットの状況も心配だ。習近平氏が封じ込めようとしているのはウィルスではなく、「自由な言論」、すなわち「国民の声」である。

 米人権団体フリーダムハウスの2019年末の調査では、共産主義中国は4年連続でネットの「自由度」が世界最低だった(北朝鮮などを含まない65カ国中)。

 今回の武漢肺炎による封鎖は、ウイグルやチベットの「封鎖」で「隔離」されている人々に対して、収用所などでいったいどのようなことが行われているのか、世界中の人々が想像する材料を与えてくれた。

共産党発表の相手をしているのは国連と日本だけ

WHOの武漢肺炎に対する対応は、中国に忖度しているとしか思えないが、事務局長のテドロス・アダノム氏(エチオピア元保健相)の出身国にとって、中国からの投資は極めて重要である。2019年のエチオピアへの直接投資流入額の60%は中国によるものとされる。

WHOだけではない。ユネスコの世界記憶遺産に中国が登録申請していた、真偽のほどが検証されていない「南京大虐殺文書」を記憶遺産に登録するという暴挙が行われたことも記憶に新しい。

常任理事国は別にして、加盟国が平等に扱われる国連では、国家の数が多いアフリカの国々を「媚中派」としてコントロールすることによって、共産主義中国が運営を牛耳ることが可能だ。

また、「媚中派」である韓国の潘基文氏が、2007年から2016年の10年間、事務総長を務めた影響も大きい。

もちろん、このような共産主義中国の横暴を、大部分の先進国は不快に思っている。米国が拠出金の支払いをしばしば留保するのはその象徴である。

先進国の中でも経済的に困窮しているイタリアは、G7で初めて中国と「一帯一路」構想に関する覚書を締結したが、武漢肺炎が蔓延し全土の移動制限をしなければならなくなった現在はどうであろうか?

自らの失策を認めるどころか、「封じ込めに成功しつつある」と自画自賛する習近平氏と共産主義中国を見る目はかなり厳しいはずだ。

今や国連や共産主義中国をまともに相手にする先進国は、習近平氏の国賓招待を「秋に延期」などと言い続けている日本以外に存在しないと考えたほうが良いであろう。米国は、とっくの昔に見放している。

崩壊か? 北朝鮮化か?

習近平氏は、一度ついた嘘をつき続けるしかない。なぜなら、共産主義という全体主義(独裁主義)では、指導者は完璧な存在でなければならないからだ。特に毛沢東時代への回帰を目指している習政権では必須だ。

したがって、毛沢東の大躍進や文化大革命のように、「嘘に現実を合わせる」ことが必要である。

鋭い政権批判を行うことができる、良識ある知識人が今危険にされている。「文化大革命」の時にも、政府を論理的に批判できる良識的知識人が最大の攻撃対象にされた。

「大躍進」の際には、「先進国並みの鉄鋼生産を産実現する」という政府の嘘を実現するために、全土の田畑に「製鉄所」が建設された。

しかし、実のところ農家の納屋を改造した程度のものであるから鉄鋼の生産などできるはずがない。農家の貴重な鍋などの食器類、果ては鍬や鎌まで溶かして、「鉄鋼を生産しました」と報告したのである。

生産する農地を「製鉄所」に奪われ、鍬や鎌まで失った人々が食糧生産できなくなり、飢饉を招いたのも当然だ。

このような馬鹿げた行為が行きつく先は2通り考えられる

まず、中国人民自らの力による「悪夢の習政権」の打倒である。香港や台湾の状況は追い風だ。しかし、高度に武装した「親衛隊」を支配する中国共産党がすんなり国民に権力を禅譲するはずがない。

人民解放軍は、外国から国民を守るというよりも、国民から共産党を守るための組織である。国民が共産党を打倒すことができたとしても惨劇は避けられない。

もし国民が勝利すれば、新しい国家は台湾主導の「1つの中国」になるかもしれない。1つの中国は、結局、台湾主導で実現されるであろう。

米国は、すでにならず者の共産主義中国を見限っている。米国下院は、全会一致で台北法案を可決。この法案は、台湾の国際的地位を高めることを目的とする。

1979年の正式な米中国交正常化は、鄧小平だからこそ実現した。毛沢東ではあり得なかったといえる。

雪解けそのものは1971年のキッシンジャー、1972年のニクソンの訪中で行われたが、正式な国交回復は1976年の毛沢東の死去により鄧小平が実権を握ってから3年後に行われている。

鄧小平が、中国の発展に果たした役割の大きさは、2019年1月9日の記事「客家・鄧小平の遺産を失った中国共産党の『哀しき運命』を読む」を参照いただきたい。

つまり、鄧小平の遺産をひっくり返し毛沢東化している習近平氏を、米国は「ならず者」と認定し、1971年キッシンジャー訪中以前の「台湾が 1つの中国であった時代」に時計の針を巻き戻そうとしているのである。

1971年に採択されたアルバニア決議によって民主主義中国(中華民国・台湾)は国連安保理常任理事国の座を失い、共産主義中国(中華人民共和国)が国連安保理常任理事国と見なされたのだ。

さもなければ北朝鮮になる

現在の中国が示しているのは、「『共産党による一党独裁』と、『民主主義』『自由主義』にもとづく市場経済は結局両立しえない」ということである。

国民によって共産党が打倒されなくても、先進国を中心とした海外の共産主義中国に対する態度は激変するはずだ。

また、国民の「自由な言論」を封殺しなければ政権を維持できないから、ネットだけではなく、現実の海外との交流も極度に制限する北朝鮮のような状況に向かわざるを得ない。

友人の1人が、文化大革命が終了した直後の共産主義中国を訪問したことがあるが、旅行者はホテルに監禁され、外に出るときは機関銃を水平に構えた「護衛」が必ずついた。もちろん、この「護衛」は監視役である。このような、北朝鮮のような状況に戻る可能性もかなりある(これが2つ目のシナリオ)。

あり得ないのは「共産主義中国が再び発展に向かう」というシナリオである。

【私の論評】『言論統制』の崩れは、中国の「すでに起こった未来」かもしれない(゚д゚)!

上の記事で、人民解放軍は、先進国でいうところの国民の生命・財産を守る軍隊ではなく、共産党の私兵であるというのは本当で、さらに付け加えると、各地方軍にわかれていて、各地方の共産党に属し、さらに特異なのは、各々が様々な事業を展開しているということです。

そうして、地方軍の中には、核武装している軍もいるという有様です。わかりやすく説明すると、日本でいえば、商社のような組織が、軍隊並みの武装をしているということです。

この事実だけでも、中国は他国とは全く異なる異形の存在であることが、おわかりいただけると思います。

この異形の存在、中国が将来どうなるかについての、上の大原氏のシナリオでは、中国共産党の崩壊、もしくは北朝鮮化です。どうなるのかは、なんとも言えないところがありますが、大原氏の主張するように、私もあり得ないのは「共産主義中国が再び発展に向かう」というシナリオだと思います。


中国共産党の崩壊を予感させるようなことは現在でもあります。経営学のドラッカーは、「われわれは未来についてふたつのことしか知らない。ひとつは、未来は知りえない、もうひとつは、未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということである」(『創造する経営者』)と語っています。

ありがたいことにドラッカーは、ここで終わりにせず、続けて言っています「それでも未来を知る方法は、ふたつある」と。

一つは、自分で創ることでことです。成功してきた人、成功してきた企業は、すべて自らの未来を、みずから創ってきました。ドラッカー自身、マネジメントなるものが生まれることを予測する必要はありませんでした。自分で生み出したのです。

もう一つは、すでに起こったことの帰結を見ることです。そして行動に結びつけることです。これを彼は、「すでに起こった未来」と名付けています。あらゆる出来事が、その発生と、インパクトの顕在化とのあいだにタイムラグを持っています。

出生率の動きを見れば、少子高齢化の到来は誰の目にも見えたはずです。対策もとれたはずです。ところが、高齢化社会がいかなる社会となり、いかなる政治や経済を持つことになるかを初めて論じたのはドラッカーでした。

こうして東西冷戦の終結、転換期の到来、テロの脅威も彼は予見していました。

「未来を築くためにまず初めになすべきは、明日何をなすべきかを決めることでなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めることである」(『創造する経営者』)

中国共産とは、明日の中国を創るために、今日何をすべきなのかを決めているようです。しかし、彼らの中には、先進国がかつて先進的な主権国家になるために実行してきた、民主化、政治と経済の分離、法治国家家を実行していくというシナリオは、持ち合わせていないようです。

これらを実行せずに、技術革新などを実行し、現在の体制を維持しつつ、経済的に発展していこうというのが、彼らのシナリオのようです。しかし、これは、茨の道です。自分たちだけが、他国と全く異なるシステムで発展し続けようということにはかなり無理があります。事実上不可能です。

明治維新の以前の日本が、幕藩体制を維持したまま、欧米と対等にわたりあい、経済的に発展しようとすると同じようなものであり、到底無理です。日本は、明治維新により、体制を一新し、当時としては世界的にみてもかなり先進的であった大日本帝国憲法を制定し、国際法も重視しました。

幕藩体制

国際法を重視しすぎたことが、後に日本災いをもたらした面もあるのですが、それはさておき、国際関係では、欧米と同一歩調を歩む道を歩んだのです。

中国がこれから発展しようとした場合、表面面だけではなく、文字通りの自由貿易ができる体制を築かなければ、不可能です。そのためには、ある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しなければ無理です。

ちなみに、法治国家化をする前には、政治と経済の分離が必要不可欠です。そのたためには、その前に民主化が不可欠です。そうして、民主化のためには、言論の自由が不可欠です。

現在中国では、言論の自由に関わる出来事が、いくつか起こっていて、これらはドラッカー氏のいうところの、「すでに起こった未来」かもしれません。

中国政府は19日、新型コロナウイルス感染症を「原因不明の肺炎」といち早く警鐘を鳴らした湖北省武漢市の男性医師、李文亮さんを摘発し処分したのは「法執行手続きが規範に合っておらず不当だ」として、処分取り消しと関係者の責任追及を求めた。市公安当局は処分を撤回し遺族に謝罪することを決定しました。

李さんが2月7日に新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した際、国民から当局批判の声が上がった経緯があり、習近平指導部は処分取り消しに追い込まれた形です。

病床の李医師

李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスによる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日の段階で、「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染が確認された」などの情報をSNS上のグループチャットに発信しました。

同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚起するのが目的でしたた。

感謝されてしかるべき行為。しかし4日後の1月3日、李医師が受けたのは賞賛ではなく、地元警察からの呼び出しでした。

中国政府の最高の監察機関である国家監察委員会の調査チームが、李医師の死から1か月以上経った、昨日3月19日、調査結果を発表しました。調査は、実際に12月中に武漢市内の複数の病院で原因不明の肺炎患者が確認されていた事実などに触れました。

その上で、李医師の処遇について「警察が訓戒書を作ったことは不当であり、法執行の手順も規範に合っていなかった」と結論づけました。警察に対し訓戒書の取り消しと関係者の責任追及などを求めました。

この調査結果に対し、ネット上では「真相が明らかになった」「国家を信じ、調査結果を支持する。李先生安らかに」などと賛辞が寄せられています。もっとも中国では政府の判断に反対する意見がネット上に残るはずはないですが、人々の批判の矛先を逸らすには、まずまずの効果があったようです。

しかし、この調査結果は、重要な点に触れていません。李医師の発信が「社会の関心を集めた」などとしていますが、訓戒によって李医師が口をつぐんでしまった事態が招いた結果についての検証がされていないのです。

その結果とは「情報隠し」が引き起こした感染拡大です。特に、医療関係者の防疫が後手に回ったために、武漢では医療崩壊が起きました。

国営新華社通信が、李文亮医師の調査チームとの質疑を報じています。その中で、李医師の情報発信が、社会にどのような作用を与えたかとの質問に対して、調査チームは次のようにこう答えています。

「一部の敵対勢力は中国共産党と中国政府を攻撃するために、李文亮医師に体制に対抗する“英雄”“覚醒者”のラベルを貼っている。しかし、それは事実に全く合わない。李文亮医師は共産党員であり、いわゆる“反体制人物”ではない。そのような下心を持つ勢力が、扇動したり、人心を惑わせたり、社会の不満を挑発しようとしているが、目的を達せられないことは決まっている」

中国の現在の体制にとって感染症そのものよりも、対策で明らかな手落ちがあったとして民心が離れる事態の方が脅威なのでしょう。民心が完璧に離れてしまえば、習近平が現体制を維持しようしても不可能になります。

今回の調査結果の一番の狙いは、おそらくこれなのでしょう。

習氏は10日、新型コロナウイルスの感染拡大後、初めて武漢市入りし、「(感染状況に)前向きな変化があり、重要な成果が出ている」と強調し、感染が終息に向かっているとアピールしました。中国政府の発表では、湖北省でこれまでに5万8000人近くが治療を終えて退院。武漢市では今月中旬以降、1日あたりの新規感染者数が10人以下で推移しているといいます。

ただ、この「中国政府発表」が信用できないのです。

武漢市の隔離施設の医師が共同通信の取材に対し、武漢市の状況改善は欺瞞だと内部告発したのです。

この医師によると、習氏の視察以降、自身の担当患者に肺炎の所見が見られたにもかかわらず、感染症対策を担う当局の「専門団」の判断で隔離が解かれたといいます。このころから解除の判断が甘くなり「感染者の大規模な隔離解除が始まった」といいます。習氏への配慮から「対策成功アピール」のため治療中の患者数を意図的に減らしていると指摘しました。

中国政府は、武漢市で18日に新規感染者が0人になったと発表しましたが、医師は政府の集計は「信頼できない」と断言しました。

中国を代表する北京大学からも「異論」が飛び出しました。

北京大学の姚洋国家発展研究院院長は20日までに、中央集権の強権統治の下、圧力を感じた地方の当局者が「新規感染を1例も出してはならない」と萎縮していると批判する「異例の論文」を発表しました。

姚氏は「ミスを許容しない」中央の姿勢を受け、新規感染が出た際の処罰や失職を恐れて、地方当局者が経済復興に取り組めないと指摘。地方行政に自主性と実権を与えるよう訴えました。

共産党一党独裁の中国で、習政権の意向に逆らうような発信が相次ぐのは極めて稀です。

これまで中国共産党は言論を抑圧してきました。ただ、新型コロナウイルスは感染症のため、真実を発信しなければ、自らの命にもかかわる問題にもなりかねないです。

知識人の間で、当局のウソに耐えきれず、真実を発信していこうとする機運が高まり、『言論の自由』の重要性が意識され始めた大きな変化です。これが、権力闘争一環である可能性もあるとする日本の識者もいるようですが、仮にそうであったにしても、これはかつての中国にはみられなかった重大変化です。

この言論統制の崩れが、いずれ民主化に結びつくかもしれません。この民主化はやがて、政治と経済の分離、法治国家化に結びついていく可能性は否定できません。

今回の事態が、体制崩壊に直結するとは考えられないですが、共産党独裁体制の維持に不可欠な『言論統制』が崩れ始めていることから、長期的にみれば、体制崩壊の兆しが見え始めているといえるかもしれません。そうして、これは中国の「すでに起こった未来」なのかもしれません。

冒頭の記事で、大原氏は「共産党発表の相手をしているのは国連と日本だけ」としています。ところが、中国共産党が武漢肺炎が終息したような発表をした後でも、中国から入国制限を緩めるべきとの声はこ起こっていません。これは、親中派とみられる人々の間からも起こっていません。

従来なら、少なくと多少は起こっていたに違いありません。特に親中派からは起こっていたに違いありません。ツイッターなどでは、「親中派は中国の発表を真に受けて、中国からの入国制限を緩めろというかもしれない」というものは見かけましたが、実際に「緩めろ」というものはありませんでした。これは、日本の「すでに起こった未来」なのかもしれません。

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2020年3月6日金曜日

「銃器使用も辞さない」北朝鮮、新型コロナで中国に通告―【私の論評】北朝鮮は中国に厳しい要求をつきつける一方、韓国は反日に走る迷走ぶり(゚д゚)!


朝鮮人民軍の兵士たち

◯中国人がわが国(北朝鮮)の人民と接触しないようにしてほしい。

◯鴨緑江の周辺で中国人が活動できないようにしてほしい。

◯鴨緑江の山麓で汚物と動物の死体を捨てないようにしてほしい。

◯鴨緑江周辺と国境地帯から、わが国に向けて大声を叫んだり、写真を撮ったりしないようにしてほしい。

◯密輸と共に非法越境を幇助する行為を統制して欲しい。

◯動物の放牧を禁止し、もし動物がわが国の方に越えてきても、人は付いてこないようにしてほしい。

◯わが国の国境警備隊は、中国人が原則に従わない場合、最大限公正に処理する。(ただし、状況によって避けられない場合は銃器の使用も許可する)
わが国はこのような鴨緑江国境地帯において発生する現象に非常に遺憾に思い、中国の公安局と軍隊の厳しい調査と対策を要求する。


2020年2月29日

 朝鮮民主主義人民共和国国家保衛省

 
 これは、デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の情報筋が、国家保衛省(秘密警察)が中国の辺防部隊(国境警備隊)に送った「鴨緑江を含む国境沿線(地帯)の全地域における伝染病と関連し、中国人の行動を統制し、規則を尊守することについて」という、抗議の意を込めた通知文の要約だ。

 国家保衛省は先月29日、平安北道(ピョンアンブクト)、慈江道(チャガンド)、両江道(リャンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある、すべての税関を通じてこの通知文を伝達した。

 北朝鮮は、新型コロナウイルス対策の一環として国境を封鎖するなど、過剰とも取れる対策を取っているが、今回の通知文は人間、動物を問わず、中国との接触を完全にブロックしたいという北朝鮮当局の願望がよく現れた文章となっている。

中朝国境の鴨緑江

 中国との国境を流れる鴨緑江、豆満江の河原には、かつて北朝鮮側から多くの人が洗濯、水汲みなどで降りていたが、密輸や脱北を取り締まる名目で禁止されてしまった。一方で中国側では、羊や牛に水を飲ませるために河原に降りてくることが少なくない。情報筋は「おそらくこれに対する信訴(ブログ管理人注:中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭った国民が、そのことを権力中央に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなもの。元々は法制度の外で運用されていたものが、1998年に制定された信訴請願法で、法的根拠が与えられた)を受けた中央政府は、これ以上見逃せないと判断しているのでは」と見ている。

 (参考記事:北朝鮮「川接近禁止令」で住民の暮らしに支障

 「伝染病が先に広がった中国人が感染を広げる可能性が高いのに、わが国だけが徹底的に統制しても、中国人に川の周辺でウロウロされては病気を防げないという懸念が反映されたようだ」(情報筋)

 ここで注目すべきは「違反者には銃器の使用も辞さない」という強硬姿勢だ。北朝鮮は、金正恩氏の命令に基づき、密輸、脱北などに対して射殺を含めた厳しい対処を取ってきた。

 (参考記事:中朝国境の川で4人射殺…「金正恩命令」実行の一部始終

 2003年には、脱北者56人が射殺される事件すら起きている。ただし、中国人を射殺したとなっては外交問題になりかねないため、中国人への銃器の使用は控えられてきたようだ。

 (参考記事:中国公安の内部文書「鴨緑江に脱北者56人の射殺体」

 しかし、最高指導者が指示した「超特級防疫任務」を遂行するためには、このような強攻策も辞さない姿勢を見せることで、中国側に抗議の意を示したものと思われる。

 (参考記事:新型コロナ「平壌など23人死亡」…金正恩に極秘集計の衝撃情報

 情報筋によると、中国側は「共同の努力が必要だ」と共感を示しつつも、銃器使用については「絶対に反対する」と通知した。

 「中国側も国境管理の即時実行と徹底した統制に入るだろう。朝鮮と中国が有機的、持続的にコミュニケーションを取りつつ行われるため、当分の間は蟻一匹通さない厳戒態勢となるだろう」(情報筋)

 しかし、中国側の川べりには数多くの民家、交通量の激しい道路が存在する。北朝鮮側の要求どおりに統制を厳しくするにも限界があるのだ。
デイリーNKジャパン


【私の論評】北朝鮮は中国に厳しい要求をつきつける一方、韓国は反日に走る迷走ぶり(゚д゚)!

北朝鮮、とにかく北朝鮮に新型コロナウイルスが入ってこないように、必死になっていることがよくわかります。持てる力で、コロナウイルスの蔓延を食い止めようという金正恩の並々ならぬ決意がみられます。防疫体制も整っていない北朝鮮では、これが政府にとってできる精一杯のことなのでしょう。

それにしても、中国に対してもこのような厳しい要求をするのですから、やはり以前からこのブログに掲載してきた、北朝鮮とその核が、朝鮮半島への中国への浸透を防いでいるというのは正しいようです。私達は、北の核というと、韓国や日本、そうして米国を狙っていることは認識していますが、同じ北朝鮮の核が当然のことながら、北京等の中国の都市も狙っていることを忘れてしまいます。

日本の親中派には、このような厳しい要求は、できないことです。そうして、日本国内の親中派に配慮せざるを得ない、安倍総理もなかなかできないことです。

一方、韓国の文在寅大統領は、できないどころか迷走しています。

韓国大統領府 青瓦台

韓国大統領府は6日、国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開き、新型コロナウイルスで韓国からの入国を大幅制限する日本政府への対抗措置を検討する方針を決めたそうです。会議後、大統領府が「相互主義にのっとった措置を含む必要な対応策を検討する」と発表しました。日本政府に対して「事前の協議なく不当な措置を取ったことは納得しがたい」と強く反発したそうです。

大統領府は日本政府の防疫措置に対しても「不透明で消極的な措置により、国際社会から不信を持たれている」などと強い不満を示しました。韓国外務省は同日中に趙世暎(チョ・セヨン)第1次官が冨田浩司駐韓大使を呼び、抗議する予定だとしています。同省は日本訪問に際して注意を促す旅行警報の第1段階を発令中です。第4段階まである警報引き上げなどを検討しているとみられます。

一方、同省によると韓国からの入国禁止や隔離など、何らかの検疫強化策を取っている国・地域は6日時点で100に上っています。保健福祉省は同日、同国の感染者が前日より518人増えて6284人になったと発表しました。聯合ニュースは死者が計43人になったと報じました。

安倍晋三首相は5日に、新型ウイルスの感染が拡大する中国と韓国からの入国者を医療施設などに2週間待機するよう要請する措置を取ると表明しました。短期滞在向けのビザ(査証)の効力も停止します。

日本の措置は、防疫のためであって、政治的なものではありません。文在寅大統領のこれに対する、発言などは全く理解不能です。韓国からの入国禁止や隔離など、何らかの検疫強化策を取っている国・地域は6日時点で100に上っていますが、日本以外の国に対しては、どうするつもりなのでしょうか。

日本は、中国に対しても全域からの入国制限をしましたが、中国政府も人民レベルでも当然であるとの受け止め方がされていて、韓国のような異様な反応は示していません。

日本の防疫措置まで、反日にすり替えてしまうのですから、異常です。韓国が何をしても、日本にはさほど影響はないですし、そんなことより日本としては、防疫体制を整えることが最優先です。韓国はしばらく無視で良いです。

韓国外務省の趙世暎第1次官は6日夜、日本とのビザ免除措置を9日から停止すると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、日本政府が発表した韓国からの入国制限強化を受けた事実上の対抗措置としています。趙次官は「日本から流入する感染病を徹底して統制する」と強調したそうです。

6日、ソウルの韓国外務省で、康京和外相(右)と会う冨田浩司駐韓国大使

日本としては、韓国からの入国制限をしているくらいですから、よほどの例外を除いて、現在韓国に入国しようとする日本人などいないでしょう。これで、報復したつもりなら、何やら韓国政府はまるでピエロのようです。

北朝鮮は、拉致被害者問題があるので、これからも交渉など、関係を続けていくべきとは思いますが、韓国とはこれを機に断交で良いと思います。今回のコロナウィルスをめぐって、日韓はますます縁遠くなりそうです。

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2020年2月5日水曜日

新型コロナウイルスで北朝鮮崩壊の兆し―【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる【2】(゚д゚)!


外相交代などの人事から垣間見える金正恩体制の窮状

1月1日、北朝鮮の金正恩委員長が米国に対する警告と新型兵器について語るのをテレビで見るソウル市民

本稿は、中国で発生し、感染が拡大している新型コロナウイルスが、北朝鮮情勢に及ぼす影響について分析するものである。

 今回の中国発のコロナウィルス感染症の拡大が北朝鮮に及ぼす影響は、比喩的に申し上げれば、「弱り目に祟り目」と言ったところだろう。これが嵩じると「失明」に至る危険がある。

■ カミュの「ペスト」: 不条理が集団(都市)を襲った物語

 筆者は、新型コロナウイルスの感染拡大の様を見ていると、アルベール・カミュが書いた小説『ペスト』を思い出す。奇しくも出版は筆者の誕生の年の1947年だ。

 カミュは、中世ヨーロッパで人口の3割以上が死亡したペストを、不条理が人間を襲う代表例と考え「ペスト」で、不条理が集団(都市)を襲う様子を描いた。

 物語(当然フィクション)は、フランスの植民地であるアルジェリアのオラン市をペストが襲うという設定だ。

 ペストが蔓延する中、人々が何もコントロールできない無慈悲な運命を非情な語り口で描いている。

 新型コロナウイルスが発生し、感染が拡大している武漢市あるいは中国全土は「ペスト」の舞台となったのオラン市(面積は64平方キロで2006年時点の人口は68万3000人)とは面積・人口とも比べ物にならないが、相似性はある。

■ 新型コロナウイルスの感染拡大が継続

 2月2日現在、感染拡大が継続している。中国本土での患者は1万4300人を超え、死者は304人に達した。

 なお、香港大の研究チームは、武漢市の感染者が最大7万5800人に上っている可能性があるとの推計値を1月31日付の英医学誌ランセットに発表した。

 余談になるが、北朝鮮の金正恩氏はこの事態に臨み、習近平国家主席にお見舞いの書簡を送り「苦痛分かち合い、助けたい」と述べたという。

 それを見た習近平氏は金正恩氏が置かれた苦境を察知し、苦笑しているに違いない。

■ 北朝鮮に見られる異変

 北朝鮮の“宗主国”である中国が未曽有の危機に見舞われるのと相前後して、昨年末来、北朝鮮にも次のような異変がみられる。

 これらの異変が、なぜ起こったのか定かではないが、金正恩氏の健康問題や体制の揺らぎなども否定できず、今後注視する必要があろう。

 ●「人工衛星」状態だった金平一の帰国(昨年末)

 金正恩氏の叔父で駐チェコ大使だった金平一氏(65)が昨年末に、北朝鮮に帰国したと報じられた。

 金平一氏は、金正日氏の異母弟で金正恩氏の叔父だが、金正日氏との後継者争いに敗れ、まるで人工衛星のように30年間以上も海外を転々としてきた。

北朝鮮の駐チェコ大使を務めた金平一氏(2015年1月、プラハ)

 その風貌が金日成主席と似ていて軍内にも支持者が多く、一時は後継者に目されていた。

 2017年2月に金正恩氏の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害される事件の前には、欧州の脱北者団体が金平一氏を亡命政府の首班に担ぎ上げようとする動きがあったが、金平一氏は一貫して正恩氏に恭順の意を示してきたとされる。

 金平一氏がこの時期に帰国した真意については不明だが、筆者は金正恩氏が死亡するなどの不測の事態に備え、反体制派から次期首班などに担ぎ上げられるのを未然に防止するというシナリオを憶測している。

 ●6年ぶりに金正日氏の妹の健在を確認

 労働新聞によると、1月25日、金正日の実妹・金慶喜氏(正恩氏の叔母で、その夫の張成沢氏は正恩に粛清された)が旧正月を祝う記念公演の観覧に正恩氏と同席したという。

 慶喜氏の公開活動は約6年ぶりで、病持ちの老女が健在を示した形だ。

 金平一の帰国と相俟って、慶喜氏の登場は儒教国家の北朝鮮で寛容政策をPRし、何らかの事態に備えて内部結束や体制安定を図る狙いがあるのかもしれない。

 儒教文化の中で、若造の正恩氏がリーダーシップを握るのは苦労が多いものと見られ、伯父・叔母までも動員せざる得ない状況(体制不安)に追い込まれたのかもしれない。

 ●年末の党中央委総会は尻切れトンボ

 朝鮮中央通信によると、金正恩氏は党中央委の活動状況と国家建設、経済発展、武力建設に関する総合的な報告を行ったうえで、「革命の最後の勝利のため、偉大なわが人民が豊かに暮らすため、党は再び困難で苦しい長久な闘いを決心した」と述べ、報告を終えたと報じた。

 総会は開催以前から「重大問題や新たな闘争方向と方法などを討議する」と鳴り物入りで開かれ、異例の長期間(4日間)行われたものの、何ら新しいビジョンを打ち出すことができず、尻切れトンボ状態で終わった感がある。

 このことは、北朝鮮が米国のドナルド・トランプ大統領による「戦略的な遅滞作戦(制裁解除を匂わせながら合意・解決を先延ばしする作戦)」に翻弄される結果となり、金正恩氏が人民に「長期戦」呼びかけるだけで、その打開に行き詰っていることを物語るものであろう。

 金正恩氏が生き残りを懸けたはずの対米交渉カードは、核ミサイルの開発であるが、トランプ氏の「戦略的な遅滞作戦」により、それは北朝鮮自身の身を削る「壮大な浪費」になるだけである。

 金正恩氏の下では「明日」が見えず、人民は金王朝3代にわたる窮乏生活を強いられているが、それももはや限界に近づきつつあるのではないか。いよいよ追い込まれた感が否めない。

 ●ミサイルも発射せず:「クリスマスプレゼント」は反故に

 昨年末、金正恩氏は米国に「経済制裁の緩和をしてほしい。12月末がその限度だ」と一方的に期限を示し、その結果次第では米国に「クリスマスプレゼント」を贈ると予告していた。

 「クリスマスプレゼント」は弾道ミサイル発射である可能性が取り沙汰されていた。

 一方のトランプ氏は「ミサイルではなく花瓶かもしれない」と冗談を飛ばす余裕を見せた。メディアなどは、「この年末がまずは一つの大きな山場」と報じていた。

 結果は、金正恩氏は何もできなかった。

 やはり米国が怖いのだ。米国との貿易戦争を「休戦」したい中国から「余計なことをするな」とたしなめられた可能性もある。

 金正恩氏の狂ったような核ミサイル開発の加速は、米国の関心を惹き、安全保障をより確実なものにする意味では正しいだろうが、それによる「壮大な浪費」は、確実に人民を飢えさせ、「人民からの反感」を募らせる効果を持つことを無視している感がある。

 ●金正恩氏の「新年の辞」なし

 金正恩氏は2013年に政権が発足して以来、毎年発表してきた新年の辞を今年はやめた。これは異例である。

 その理由として昨年末の党中央委総会で7時間にも及ぶ長広舌がそれに代わるからだと言われている。本当にそうだろうか。金正恩氏の健康悪化や体制の不安定化などの疑惑も浮上する。

 いずれにせよ、前項でも指摘したように、北朝鮮は米国の制裁などで追い込まれ、新年の辞で新たなビジョンを打ち出すことができないのは事実であろう。

 金正恩氏が「新年の辞」をやめた事実は、彼の「元首」として指導が破綻したことを疑わせるものである。

 ●金正恩の健康を蝕むストレス

 昨年末、挑発を繰り返す北朝鮮に対して、在韓米軍は韓国軍と共同で特殊部隊により北朝鮮首脳部を攻撃し幹部を捕獲するといういわゆる「斬首作戦」の訓練映像を初めて公開した。

 また、1月3日には、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官がイラク・バグダッドで米軍のドローンから発射されたミサイルによって暗殺された。

 これは、型破りのトランプ氏が破天荒な決断をするという印象を改めて金正恩氏に示したことになる。

 本件は、トランプ氏の破天荒な決断のみならず、米国・米軍の情報能力がターゲットとなる要人をピンポイントで時々刻々フォローできることを内外に見せつけた。

 これに対して金正恩氏は、「新年の公式活動」と称して平安南道にある肥料工場建設現場を訪問・指導する様子を1月7日付の朝鮮中央通信で報道させた。

 金正恩氏は「強がり」を示したかったのだろう。だが、現実には自分が常に米軍に付け狙われていることを強く再認識し、恐怖感を募らせたであろう。

 金正恩氏は、夢の中で厳寒の平壌を、枕を抱えてドローンの追跡から逃げ惑う夢を見ているのかもしれない。

 独裁者の金正恩氏は、それでなくともストレスが多いのに、暗殺の恐怖はそれを倍加させることになろう。

 体重が130キロの金正恩氏は、肥満や糖尿病などの生活習慣病があると見られ、ストレスの増加は病状を確実に悪化させよう。

 ●人事の刷新:軍出身の李善権氏の外相就任

 朝鮮中央通信は1月24日、外務省が開催した旧暦の新年の宴会で、軍出身の李善権新外相が演説したと報じ、外相交代を確認した。


 李氏は核問題や米国との交渉に携わった経験がないため、李氏の外相任命は北朝鮮事情に詳しい専門家には意外感を持って受け止められた。

 米国務省のスティルウェル次官補(東アジア・太平洋担当)は李氏の外相就任について「変化があった。このこと自体が何かが起きたことを物語っている」と述べた。

 また、人民武力相(国防相に相当)に金正寛陸軍大将が任命されたことが1月22日に確認された。金正寛大将は、人民武力省副相兼中将からの格上げである。

 これら軍と外交のトップの交代(更迭)がいかなる意味があるのかは不明であるが、北朝鮮内部で何らかの異変が起こっているのかもしれない。

 ちなみに、李氏は対韓国政策分野の実力者の一人で、南北軍事実務会談の代表も務めた。

 2018年、南北首脳会談に合わせて平壌を訪れた韓国企業のトップらに「よく冷麺がのどを通るなあ」ときつい皮肉を言ったことが明らかになり、物議を醸した。

■ 新型コロナウイルスが及ぼす影響

 北朝鮮で上記のような異変がみられる中、中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大は北朝鮮にいかかる影響を及ぼすであろうか。

 ●中国の新型コロナウイルスの感染拡大は冷戦崩壊直後の悪夢と同じ

 中国が今次新感染症の拡大で大きなダメージを受け、一時的にせよ弱体化する事態は、北朝鮮の後ろ盾だったソ連が崩壊(1991年末)した事態に似ている。

 北朝鮮はその混乱の最中に金日成が死亡(1994年)し、若い金正日が待ったなしで政権継承することになった。

 このため、北朝鮮は体制崩壊の危機に瀕した。金正日が政権継直後の1995年から98年にかけて飢饉のために約300万人が餓死した。

 今次新感染症のダメージで、北朝鮮の唯一の後ろ盾である中国が弱体化すれば、そのダメージの程度にもよるが、北朝鮮はソ連崩壊と似たような困難な状況に直面せざるを得ないだろう。

【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる【2】(゚д゚)!

 北朝鮮は新型コロナウイルスの拡散を防ぐため中国やロシアとの国境を封鎖、海外との取引もほとんど絶たれており、国内経済への大きな打撃が懸念されています。経済発展を掲げる金正恩朝鮮労働党委員長にとって痛手は避けられない情勢です。

すでに近隣諸国との航空便や列車の運行を取りやめ、最近入国した外国人には数週間の強制検疫を実施、海外からの観光客受け入れも中止しており、国の閉鎖に拍車がかかっています。

北朝鮮ではこれまで新型コロナウイルスの感染は確認されていません。これは、同国が頼っている中国など経済的つながりが断絶され、あるいは極端に制限されていることも意味します。
今後北朝鮮の市場経済だけでなく、国の経済全体に大きな影響が及ぶでしょう。北朝鮮は国産を推奨していますが、菓子であれ衣服であれ原料は中国から輸入しています。
北朝鮮の経済的リスクの度合いは、閉鎖の長さにかかっていとみられます。数か月あるいはそれ以上になれば、相当な悪影響を与えることは確かです。

最近の韓国の貿易協会のリポートによると、2001年には17.3%だった北朝鮮の対外貿易に占める中国の割合は、去年91.8%に達しました。数千人の中国人観光客も大きな経済効果をもたらしています。

米国との非核化交渉が暗礁に乗り上げるなか、今回の新型ウイルス危機で北朝鮮の立場が弱まることも考えられます。

経済的苦境を埋め合わせるため、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射や核実験など挑発行為に出る可能性もあります。コロナウイルス問題がすぐに解決されなければ、北朝鮮の状況は今年一層厳しくなるでしょう。

新型肺炎による混乱が重なれば、国民の意識にどのような変化が生じるかわからないです。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1月29日、新型肺炎への対策は「国家存亡に関わる重大な政治的問題」であるとする記事を掲載しましたが、この表現は決してオーバーなものではといえます。


韓国も、コロナウイルス対策はそれなりには行っているようですが、このブログでも述べているように、文在寅政権は金融緩和することなく、最低賃金だけをあげるという、日本でいえば立憲民主党の枝野氏の主張するような、最初から見込みのない経済政策を実行して、予想通りに雇用が激減しています。

この状況でコロナウィルスの悪影響を受ければ、今年の大統領選挙では敗北する可能性も十分あります。

トランプ米大統領は4日の一般教書演説で、北朝鮮の核問題に言及しませんでした。トランプ氏が同演説で北朝鮮に触れないのは初めてです。11月の大統領選に向けた選挙活動が本格化する中、トランプ氏は打開の見通しの立たない北朝鮮との交渉には力を注がないのではないかという臆測を広げそうです。

トランプ氏は昨年2月の一般教書演説では、同月下旬にハノイで2回目の米朝首脳会談を開催すると発表。「金正恩(朝鮮労働党委員長)との関係は良好だ。朝鮮半島の平和に向け歴史的奮闘を続ける」と訴え、北朝鮮問題を優先課題に掲げました。

ところが、ハノイ会談は非核化の進め方をめぐり物別れに終わりました。正恩氏は昨年末、トランプ氏に中止を約束した核・ミサイル実験の再開を示唆して強硬路線に転じ
る姿勢もみえ、非核化協議再開のめどは立っていません。

トランプ氏は日本にも触れず、アジア政策では中国について、新型コロナウイルスによる肺炎をめぐる協力や、貿易交渉の成果に触れた程度でした。習近平国家主席を含む中国との関係は「恐らくこれまでで最も良い」と主張し、中国への厳しい姿勢は鳴りを潜めたようにもみえます。

ただし、中国に対して米国は「貿易交渉」において、このブログにも掲載したように米国は一方的な大勝利をしています。この交渉で米中には七つの合意事項がありましたが、一番最期の合意事項は、6つの合意事項について、米国が監視するというものです。

今年は年初から、コロナウィルスの中国での蔓延という特殊事情が米国との貿易交渉で一方的に大敗北した中国に追い打ちをかけています。トランプ政権としては、コロナウィルスによる、中国、北朝鮮、韓国などがどの程度影響を受けるのかを見極めつつ、大統領選機にもっとも有利な形になるよう、これらの国々の対応を決めていくことでしょう。

今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になるかもしれない・・・・

いずれにせよ、先日もこのブログに掲載したように、今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わることでしょう。この三者が表舞台から姿を消すということも十分あり得ます。

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2019年12月14日土曜日

北朝鮮はICBMを射つのか!? CIAが水面下で陽動作戦も… GSOMIA破棄騒動の韓国はいまや「カヤの外」 ―【私の論評】日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは現実的な対処法(゚д゚)!

北朝鮮はICBMを射つのか!? CIAが水面下で陽動作戦も… GSOMIA破棄騒動の韓国はいまや「カヤの外」 
北朝鮮のミサイル発射実験=10月2日

 北朝鮮が「非常に重大な実験」を行ったと発表するなど、米国との交渉期限を年末に設定するなかで、米国などへの牽制(けんせい)を続けている。再び大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験など強硬手段に踏み切れば、日本への影響も大きい。

 米朝首脳会談は膠着(こうちゃく)状態だ。初の会談は2018年6月にシンガポールで、2回目は19年2月にベトナムのハノイで開かれた。ハノイでは協議が決裂した。6月には両首脳が板門店で面会したが、米朝両国とも首脳会談ではないとしている。

 その後、年内の首脳会談を模索していたが、実務者協議で難航している。米国は、柔軟姿勢を示すためにボルトン大統領補佐官を9月に解任し、10月に北朝鮮との実務者協議をストックホルムで行ったが決裂した。その後、北朝鮮は一方的に交渉期限を年内に設定した。

 北朝鮮は北西部・東倉里(トンチャンリ)にある「西海(ソヘ)衛星発射場」で「非常に重大な実験が行われた」と8日、発表した。ICBMに使われるエンジン燃焼実験とみられている。これは、北朝鮮から米国への催促である。「年末」という期限の設定が本気であることを示すために「重大な実験」を行ったのだろう。次には、人工衛星と称しつつICBMの発射をほのめかしている。

 この発表を受けて、トランプ米大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国に対する敵意は、「全て」を失うことになると警告した。その直前には、トランプ氏は正恩氏との良好な関係を強調していた。

 正恩氏にとっても、トランプ氏との特別な関係を失うのは得策でないだろう。トランプ氏は軍歴も政治家経験もない民間人出身なので、軍事オプションよりもディール(取引)を望んでいるはずだ。米朝の緊張関係は、両首脳の個人的な関係でもっているので、もしこの個人的な関係が崩れたら、米朝首脳会談が行われていない2年前のように、ひょっとしたら軍事衝突もあり得るというくらいの緊張関係に戻るかもしれない。

 両首脳はまだお互いに信頼関係があるようだが、具体的な非核化プロセスについては両国でこれといった妙案もない。

 こうなると、北朝鮮はICBM発射に突っ走るのか、それともトップ級が会って仕切り直し、期限先延ばしを行うことも考えられる。あるいは米中央情報局(CIA)などが水面下で陽動作戦を行い、北朝鮮もサイバー攻撃を仕掛けるなど、表面上は軍事オプションに見えないまま水面下で攻撃するという可能性も出てくる。いろいろな展開が考えられるので、今のところ、米朝関係の先行きについて予測は難しい。

 日本としては、警戒態勢を取りながら、米国との連携をとるしかない。

 ここに至って、韓国は先般の日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄騒動が尾を引き、日米からの信頼は得られていない。米朝関係をめぐっても、「あまり関係のない国」になりつつある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


【私の論評】日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは現実的な対処法(゚д゚)!

北朝鮮のミサイルへの備えとしては、日本が「敵基地攻撃能力」持つことが最優先でしょう。

小西洋之参議院議員の「専守防衛」に関する質問主意書に対する平成27年10月6日付け政府答弁書(安倍晋三内閣総理大臣)では、

「専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、又、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛政策の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針である。」
と言っています。


この「専守防衛」に関する政府答弁書の見解によれば、要するに、「専守防衛」とは、日本は受動的な「自衛」に徹し、他国に対して「侵略戦争」をしない防衛戦略に過ぎないと解すべきです。なぜなら、「専守防衛」は、「侵略戦争」を放棄した憲法9条1項2項に基づく理念であり防衛戦略だからです。
したがって、侵略戦争のためではなく、「専守防衛」即ち自衛のための兵器の保有や自衛権の行使は禁止されないのです。
この政府の立場は、最高裁判例の立場とも完全に適合しています。砂川事件最高裁大法廷判決は、
「憲法9条は我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定したものではなく、憲法9条の平和主義は無防備無抵抗を定めたものではない。我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではない。9条1項はいわゆる侵略戦争を放棄したものである。」(昭和34・12・16刑集13・13・3225)
と判示しているからです。

このように、「専守防衛」とは、要するに、日本が、受動的な「自衛」に徹し、他国に対して侵略戦争をしない防衛戦略に過ぎないと解されますから、侵略戦争のためではなく、もっぱら、自衛のための「敵基地攻撃」や「敵基地攻撃能力」の保有は専守防衛とは矛盾せず、上記政府見解及び上記最高裁判例に照らして、憲法上も禁止されないことは明らかです。

即ち、「座して死を待つのが憲法の趣旨ではなく、攻撃を防御するため、他に手段がない場合にミサイル基地をたたくこと(敵基地攻撃)は、法理的に自衛の範囲である」(1956年鳩山一郎内閣)と言えるからです。

現在の政府見解では、第一撃を受けたり、ミサイルに燃料を注入するなど、敵が攻撃に着手した時点で敵基地攻撃が可能であるとしている。

以上の通り、「敵基地攻撃」及び「敵基地攻撃能力」の保有が「専守防衛」に反せず、憲法上も禁止されないから、近年の緊迫する北東アジアの安全保障環境の変化を考えれば、日本は、対中・対北朝鮮への抑止力を一層強化するため、「敵基地攻撃能力」を速やかに保有すべきです。

日本は、現在、海上配備型イージス艦及び地上配備型迎撃システムPAC3のミサイル防衛システムを保有していますが、ミサイル防衛にはかねてより技術的限界が指摘されており、弾道ミサイルの迎撃は決して完璧とは言えないからです。


地対空誘導弾ペトリオット PAC-3

日本が、抑止力として、「敵基地攻撃能力」を保有するためには、(1)高性能軍事偵察人工衛星の開発導入(2)イージス・アショアを含む高性能レーダー基地の増設整備(3)長距離巡航ミサイルの導入(4)長距離ステルス戦闘機の導入(5)多用途防衛型空母の保有(6)原子力潜水艦の保有(7)弾道ミサイルの保有(8)無人偵察機及び無人爆撃機の保有(9)宇宙・サイバー・電磁波を含む多次元統合防衛力強化(10)レーザー兵器等新兵器の開発促進(11)速やかな憲法9条解釈の変更もしくは改正、などが必要です。

前記の通り、「専守防衛」は、憲法9条に基づき、他国から攻撃されない限り攻撃しない防衛戦略です。しかし、核ミサイル技術が飛躍的に進歩した現代では、核保有国から先制核攻撃をされてから反撃するのでは最早手遅れです。

なぜなら、日本全土に対する同時数百発の核ミサイルによる先制核攻撃を受けた場合は、1憶2000万日本国民の多数が犠牲になり、日本国自体の人的物的消滅も否定できないからです。したがって、「専守防衛」を貫くためには、他国からの攻撃をあらかじめ抑止することこそが最も重要です。その意味で、「専守防衛」と抑止力強化は決して矛盾しないのでです。

したがって、抑止力、特に核抑止力を強化するためには、米国との同盟関係の一層の強化が不可欠であり、日本独自の核保有が当面困難であるとすれば、次善の策として、米国との「核共有」は必須です。

そして、抑止力を強化するため憲法9条の解釈の変更もしくは改正を急ぎ上記「敵基地攻撃能力」の保有は日本にとって強固な抑止力になります。日本が「敵基地攻撃能力」を持つことになれば、金正恩は今まで想定しなくても良かった日本の自衛隊の攻撃を想定しなければならなくなります。

北朝鮮の戦闘機

北朝鮮の防空能力は、何十年も前から更新されおらず、日本の航空機はステルスであろうが、なかろうが、北朝鮮のどこにでも行って爆撃をすることができます。時代遅れの航空機や、防空兵器しか持たない北朝鮮に迎撃されることは、滅多にありません。

対戦哨戒能力はゼロに近く、日本の潜水艦は北朝鮮の海域で自由に行動し、いずれの港にも妨害されることなく入ることができます。北朝鮮の海域の好きな場所から、北朝鮮のミサイル基地などを思い通りに攻撃することができます。その他の艦船にも、北は全く歯がたたないでしょう。

自衛隊の隊員や、戦車等も思いのままに送ることができるでしょう。北朝鮮の陸軍も自衛隊の敵ではありません。そもそも、北朝鮮の兵士らは、給料は無論のこと、食料ですら、まともに配給されていません。そのため、平均身長も日本や韓国に比較すると随分低いです。おそらく、まともな戦闘には耐えることができないでしょう。

左から米兵士,北兵士,韓国兵士

現在の北朝鮮は、核ミサイル開発のために、他のことをすべて犠牲にしています。ここが、北朝鮮の最大の弱点であり、ミサイル発射の兆候が見られた場合、すぐに行動して、発射基地などをピンポイント的に攻撃することは、十分可能です。決して夢物語でもなんでもなく、かなり現実的な対処法といえます。

そうして、これが北朝鮮に対する最大の抑止力なることはいうまでもありません。

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