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2017年7月1日土曜日

文在寅大統領への「ホメ殺し」 人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中にブレーキ―【私の論評】文在寅大統領が失脚したとき韓国は北朝鮮に飲み込まれる(゚д゚)!

文在寅大統領への「ホメ殺し」 人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中にブレーキ 

韓国の文在寅大統領=6月28日、ワシントン
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)・新大統領が米国を訪問中だ。彼はワシントンに到着した日、まず米海兵隊博物館にある朝鮮戦争(1950~53年)を記念する米韓友好のモニュメントを訪れた。これが戦争で最激戦地の一つだった「長津湖(チャンジンホ)戦闘」を記念するものというところが興味深い。

「長津湖」は北朝鮮東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)のケマ高原にある地名。北朝鮮支援で攻め込んできた中国の大軍に米軍(国連軍)が包囲され、大打撃を受けたことで知られる。

朝鮮戦争は北朝鮮軍の奇襲侵攻でソウルが陥落した後、米軍(国連軍)の支援で盛り返し、ソウルを奪還した米韓軍は北上して平壌を占領。さらに北上したため中国軍が北方から大軍で介入し、米韓軍を南に押し戻したという経緯がある。

長津湖戦闘記念碑を訪問した文在寅大統領が28日(現地時間)、米バージニア州海兵隊博物館で
スティーブン・オルムステッド元米海兵隊中将(右側)と一緒に、長津湖戦闘記念碑を見学している
 したがって朝鮮戦争は途中から“米中戦争”の様相となった。なかでも「長津湖戦闘」は米軍が中国の大軍に押しまくられ、東海岸の咸鏡南道・興南港から大量の避難民とともに南への撤退を余儀なくされた「興南撤収作戦」につながる苦闘の象徴として知られる。

この時の「興南撤収」で北朝鮮から逃れ釜山港にたどり着いた北朝鮮の住民に文在寅氏の両親もいた。文氏はその後、釜山近郊で生まれたが、歴史的な意味では彼はいわば「長津湖戦闘」の“申し子”なのだ。

1950年12月9日から24日まで続いた興南撤収
 その彼が訪米の第一歩に「長津湖戦闘記念碑」訪問を選んだことを韓国メディアはこう書いている。

「あの時、米軍が大きな犠牲を払って中国軍の南下を阻止したおかげで、文大統領の父母をはじめ20万人の興南撤収が可能になったのだ。(記念碑訪問は)韓米血盟にからむ文大統領の家族史を通じ、同盟外交の第一歩を踏み出す象徴的な歩みである」(6月29日付、東亜日報社説から)

左派系の革新政権である文在寅政権の外交姿勢については内外で懸念する声がある。文氏が自ら秘書室長など参謀を務めた師匠の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(2003~08年)が「米国を怒らせることがあってもいいではないか」などと公言し、いわば「米・中等距離外交」で米国離れを目指した“前科”があるからだ。

盧武鉉大統領(右)秘書室長職を務めていた文在寅(左)
 今回、文大統領の訪米直前には政権の外交参謀が北朝鮮の主張に歩調を合わせるように「米韓軍事演習縮小論」を公言。政権内部に「自主外交派」を布陣し、対北政策における米韓協調路線を手直しするような動きが見え隠れしている。

このため不安が強い保守派を中心に国民は大統領の初訪米を固唾をのんで見守っているのだが、そのスタートが「長津湖戦闘記念碑」訪問だったから保守派はとりあえずホッとしている。

先の新聞社説はそうした国民心理の反映といっていい。あえて解説すれば「文在寅さん、あなたのルーツは反北、反中、親米だったのではないですか。それを忘れては困りますよ」というもので、彼の人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中に傾かないようブレーキをかけているのだ。一種の“ホメ殺し”である。

ついでにもう一つホメると、文在寅氏はすでに息子を米国に娘は日本に留学させるなど家庭は十分に国際的で現実的なのだ。自らのルーツと韓国が置かれた現実的な国際環境からすれば反米、反日など出てこないはずだが。

【私の論評】文在寅大統領が失脚したとき韓国は北朝鮮に飲み込まれる(゚д゚)!

現在韓国は、結局北朝鮮に飲み込まれてしまうと説と、そうはならないだろうという説とが真っ二つに別れているようです。

北朝鮮に本当に飲み込まれるかどうかは、別にして、飲み込まれるとしたらこのようなシナリオになるだろうということについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【痛快!テキサス親父】韓国はまさに「赤化危機」 完全な日韓合意違反、国際的信用は失墜した―【私の論評】韓国の赤化で、半島全体が支那の傀儡になる?
金正恩
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、韓国が北朝鮮にのみこまれるシナリオの部分を以下に引用します。
赤化した韓国は、THAADの導入を拒否するか、導入した後に撤去することになるかもしれません。そうして支那は、それを促すため、北朝鮮と韓国に平和条約を結ぶよう勧告するでしょう。そうして、支那は韓国に平和条約を結すべばTHADDの導入は必要ないことを強調することでしょう。

THAAD導入で支那から制裁を受け、経済面に苦しい韓国は、THAADを導入を断念すれば、韓国制裁を解くといわれれば、赤化した韓国は拒否できないことでしょう。軍事境界線に配備した長距離砲の撤去など、非核化した北朝鮮が韓国の要求をのめば、平和条約が締結される可能性はかなり高くなると思います。

平和条約締結後の韓国には、在韓米軍が存在する意義がなくなくなります。韓国は、米軍の撤退を要求するかもしれません。それに呼応して、在韓米軍は大幅に削減され、いずれ撤退することになるかもしれません。
次のステップは「南北連邦国家形成」ということになるでしょう。支那の意を受けた北朝鮮の工作員が「今こそ悲願の統一だ」と民族感情を刺激し、すでに赤化している韓国の人々は「一国・二政府・二体制での統一」という建前に熱狂することでしょう。そうして「南北朝鮮民主連邦」が実現することになります。

そして、最終段階が「北朝鮮体制での完全統一」です。支那傀儡の北朝鮮は「一国二体制は非効率だ。一方の体制に統一しよう」と国民投票を韓国側に呼び掛けることでしょう。人口が2倍いる韓国は「北朝鮮をのみ込める」と踏んで、これに応じることでしょう。

しかし、北朝鮮は約2000万人の有権者全員が北の体制を支持します。一方、韓国側の約4000万人の有権者はそうはいきません。仮に、投票率80%とすると投票者は約3200万人。うち、600万人以上が北の体制を支持すれば、北朝鮮側の勝利となります。
大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の人口の推移
「財閥を潰して社会格差を無くせるなら」「地獄の生活苦から抜け出せるなら」など、韓国には国全体をガラガラポンしたい衝動に駆られる住民が大勢存在します。
国民投票で選ばれるのは、恐らく北朝鮮側の体制でしょう。そうなれば、韓国は北朝鮮にのみ込まれて「支那の属国」と化し、人々からすべての人権が剥奪されることになります。その時韓国は、真実の「HELL(地獄)のKOREA(韓国)」となるのです。 
このようなシナリオは十分に成り立つものと思います。しかし、現在のところ韓国が北朝鮮に飲み込まれる可能性は五分五分だと思います。

私自身は、五分五分に近いものの、北朝鮮に飲み込まれない可能性のほうが高いと思っています。

ブログ冒頭の記事にもあるように、文在寅大統領は、訪米初日にボスニア州の米海兵隊国立博物館にある長津湖戦闘記念碑を訪問しています。

長津湖戦闘記念碑を訪問した際当時参戦した海兵に興南撤退の
写真を見ながら説明を受けている文在寅大統領(手前左)
そうして、以下のように述べています。

「長津湖(チャンジンホ)の勇士たちがなかったら、興南(フンナム)撤収作戦の成功がなかったら、私の人生は始まっていなかったはずであり、今日の私もいないはずです」

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日(現地時間)、米国訪問初の日程としてワシントンの米海兵隊博物館にある長津湖戦闘記念碑に献花しました。長津湖の戦いは1950年の冬、蓋馬高原(ケマゴウォン)にある長津湖一帯で、中国軍7個師団に包囲された米海兵1師団が悪戦苦闘の末、中国軍の南進を遅らせた戦闘で、連合軍の興南撤収に決定的な貢献をしたと評価されています。

文大統領は、ロバート・ワーク米国防総省副長官やロバート・ネラー海兵隊司令官のほか、興南撤収作戦に関わった関係者と家族らが参加した中で開かれた献花式で、「長津湖の勇士たちの驚くべき闘魂のおかげで、10万人以上の避難民を救出した興南撤収作戦も成功することができた。その時、メレディス・ビクトリー号に乗り込んだ避難民の中には私の両親もいた」とし、長津湖戦闘と興南撤収作戦にまつわる家族史を紹介しました。

文大統領は、「皆さんの犠牲や献身に対する感謝の気持ちはどんな言葉でも言い表せない。緊迫した瞬間に、多くの避難民たちを北朝鮮から脱出させてくれた米軍の人類愛に深い感動を覚える」として、心から感謝の意を伝えました。

文大統領はさらに、「大韓民国は皆さんと両親の犠牲や献身を記憶している。韓米同盟はそうして戦争の砲火の中で血で結ばれ、両国国民一人ひとりの人生と強くつながっており、『さらに偉大で強い同盟』に発展するだろう」と強調した。ネラー司令官は記念演説で「文大統領の家族は我が海兵、特に、海兵1師団と個人的な縁を持っている。その縁を大切に思ってくれたことに感謝する」と話した。

記念演説直後、近くに山査子を一本植えた文大統領は「韓米同盟はこれからさらに生い茂った木のように成長し、統一された朝鮮半島という大きくて充実した実を結ぶだろう」と話しました。同日の行事は米海兵隊のフェイスブックを通じて生中継されました。中継映像には文大統領の到着と献花、文大統領とネラー司令官の記念演説シーンなどがそのまま流れました。動画は1日で22万人が視聴しました。

文在寅氏は当然のことながら、両親からこの話を受け継いだのでしょう。その際に、当時の北朝鮮の酷さや中国のやり口についても受け継いだと思います。その大統領がやすやすと、北朝鮮に飲み込まれるようなことはしないと考えられます。

興南撤収に関しては、韓国民であれば誰でも知っていることであるし、米人でも知っている人は多いです。これは、2015年度の韓国映画『国際市場であいましょう(Ode to my father)』にも描かれています。

『国際市場で逢いましょう』(こくさいいちばであいましょう、原題:국제시장)は、2014年の韓国映画。家族を守るために、朝鮮戦争やベトナム戦争といった激動の時代を生き抜いた男の生涯を描いた映画。第52回大鐘賞では作品賞を始め10部門を受賞しました。観客動員数は1300万人を突破し、韓国映画の歴代観客動員数2位につけています。


58秒くらいのところに、江南撤退のシーがあります。

「興南撤退」は、朝鮮戦争当時、中共軍の攻勢で戦況が不利になると、咸鏡道(ハムギョンド)北東部戦線で作戦中だった米軍が、興南港で「メロディス・ビクトリー号」に約1万4千人の避難民を乗せて撤退した作戦です。「メロディス・ビクトリー号」は1950年12月23日に興南を経ち、24日に釜山(プサン)を経て25日に巨済島(コジェド)に着いて避難民を降りました。これは「クリスマスの奇跡」とも呼ばれています。この1万4千人の避難民の中に在文寅氏の両親も含まれていたのです。

映画「国際市場であいましょう」から。咸鏡南道興南港で「メロディスビクトリー号」に
積んでいた武器を捨て、代わりに約1万4千人の避難民を乗せて撤退した「興南撤退」のシーン
2015年に、この映画が米国で放映されたときの模様については、以下の記事をご覧になって下さい。
韓米の老兵を泣かせた「国際市場」、「今でもその日を忘れられない」 
文在寅氏は、このような家族史を持ち、息子を米国に娘は日本に留学させるなど家庭は十分に国際的で現実的な感覚を持っているはずです。

文在寅氏は1953年、韓国南部の慶尚南道・巨済島で2男3女の長男として生まれました。両親は北朝鮮の咸鏡南道出身。朝鮮戦争で避難を余儀なくされた一家は巨済へ逃れ、その後、釜山へ転居します。避難民の集まる貧民街で練炭配達などをして生計を立てました。生活は貧しく苦しい日々でしたが、それによって自立心が育てられたと振り返っています。

成績は良く、中学・高校と名門校に進学しましたが、裕福な学友との違いに直面し、友達ができませんでした。図書館に籠って、本ばかり読んでいたといいます。

高校に入ると社会への反抗心が芽生え、酒やタバコにも手を出し、4回停学処分を受けました。このため「文在寅(ムン・ジェイン)」という名前をもじって「問題児(ムンジェア)」のあだ名がつけられました。

慶熙大学時代には学生運動に積極的に参加。3年生だった1975年、朴正煕政権反対デモを主導して逮捕・収監され、大学を除籍されました。

釈放された文氏は強制徴兵され、特殊部隊に配属されます。パラシュート降下訓練、夜間行軍、水中浸透、暴動鎮圧など、多様な訓練を経験しました。過酷な訓練によって同僚が命を落とす場面にも遭遇したといいます。文氏自身、「パラシュート降下訓練で空中を飛ぶのが気分爽快だった」と話しています。

特殊部隊に所属していたときの文在寅氏
北朝鮮に融和的と指摘される文氏ですが、北朝鮮有事の際には「前線で戦う」と明言。特殊部隊での経験を誇りにしています。

妻との出会いは大学でした。学園祭のパートナーとして過ごし、「好感をもった」。しかし、その後はデートをしたことがなかったといいます。

そんな彼女が突然、拘置所まで文氏の面会に来たのです。文氏は驚きました。彼女が持参したのは、文氏の出身校が高校野球で優勝したというスポーツ新聞の記事。文氏の野球好きを覚えていたのです。

「刑務所で母校の高校野球優勝の記事を読むなんて」

文氏はおかしくなりましたが、そんな彼女をかわいい、と思ったといいます。

軍隊、司法修習所、刑務所と、文氏の行く先々に彼女が面会に訪れる。2人は長い「面会の歴史」を経て、出会いから7年後、結婚したのです。

除隊後は猛勉強の末に司法試験に合格。2次試験の合格通知は再び収監された刑務所の中で受け取りました。判事を志望しましたが、学生運動の経歴があるため叶わず、釜山で弁護士生活を始めます。

この時、のちに大統領になる盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏と運命的な出会いを果たします。共に労働運動の弁護に取り組み、盧氏が大統領に当選した後は、政権発足から終了までを共にしました。激務のため歯が10本抜けたとのエピソードがあるほどです。

盧武鉉氏の死後は政界とは一線を画していましたが、政権交代の声に押されて復帰。国会議員当選を経て、2012年の大統領選に出馬し、朴槿恵氏に僅差で敗れました。

「大統領に就任したらアメリカより先に北朝鮮に行く」
「核の完全廃棄と朝鮮半島の非核化を議論できるなら、金正恩と首脳会談する」
選挙戦の初期にはこう述べていた文氏。

その後は「早いうちにアメリカを訪問して米韓同盟を再確認する」「金正恩が最も恐れる大統領になる」と方針転換しました。

文在寅氏は、本心では北朝鮮に韓国を飲み込ませようなどという考えは毛頭ないものの、大統領選に勝利するため、親北派と反日を利用したのだと思います。

というより、これは朝鮮の歴史をみているとよくわかるのですが、とにかく外国を自分の国の内乱などに利用すという、朝鮮のお家芸の発露なのではないかと思います。

しかし、ミイラ取りがミイラになるという格言もあります。大統領になるために、親北派を利用したものの、北の考えに感化されしまうということもありえます。あるいは、自らは本当は親北派ではないものの、親北派を味方につけないと政権を維持できない状況に追い込まれ、結局行動は親北派のようになるということも考えらます。

あるいは、大統領選で親北派を利用したことがアダとなり、親北派から反発をくらい、朴槿恵のように短期で政権の座を追われるということも十分に考えられます。

文在寅政権が長続きすれば、北の工作員の扇動になどにより、親北に振れた韓国民の感情も徐々に落ち着き、まともになる可能性も大きいと思います。何しろ、北や中国の脅威は歴史は長く韓国民の記憶に刻まれているはずです。

いずれにせよ、いまのところは結論はいえませんが、私としては文在寅大統領が短期で失脚したときが、北に飲み込まれる危機がやってくるのではないかと思います。そうして、その確率は高いです。なぜなら、このブログにも以前から述べているように、文在寅氏の経済対策は全く意味がなく、韓国経済はこれからさらに苦しくなるだけだからです。苦しいどころが、今のままでは大多数が塗炭の苦しみに追いやられることになるはずです。

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2017年1月3日火曜日

ヴェネツィアの海が、支那の海になる日―【私の論評】権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚か?

ヴェネツィアの海が、支那の海になる日

ヴェネツィアの港が、インドやケニアを通る新しい通商ルート「海のシルクロード」の発着点だ。ギリシャのピレウス港のケースに続いて、支那の地中海に対する関心をあらためて裏付けている。

2012年に竣工した世界最大のコンテナ船「CMA CGM Marco Polo」。
支那〜欧州ルートで活躍が期待されている。
かつて何世紀もの間にわたり、アドリア海はセレニッシマ(訳注:ヴェネツィア共和国の称号。「晴朗きわまるところ」の意)の「湾」であった。長さは800km、イタリアの沿岸とバルカン半島沿岸の間の広さは平均150km。そこにはサン・マルコのライオン(訳注:ヴェネツィア共和国旗)の旗がはためく要塞が点在していた。ヴェネツィアの商船が香辛料や金属、織物といった中近東・極東との交易の果実を故郷に持ち帰る通路だったのだ。

その後、新大陸が発見され、彼らの夢は終わった。オランダや英国の商船はアジアの植民地沿いに航路を移し、支那への航路を短縮した。アドリア海の栄華は歴史上のものとなった。

しかし、今日、歴史は繰り返す。ヴェネツィアと支那を結ぶ、新しい「海のシルクロード」だ。支那の港から東南アジア、インド、ケニアを経由し、拡張されたばかりのスエズ運河を通って地中海に入りサン・マルコのライオンの下でその旅程を終える通称ルートのことだ。

OBOR
北京はアドリア海を研究している。「シルクロード経済ベルト」という壮大な名前を冠する野心的なインフラ政策の行程を完結させるためだ。報道などでは「一帯一路」と要約されているが、英語でいう「One belt, one road」から「OBOR」の略称が生まれた。

駐中イタリア大使のエットレ・セクィは、2016年11月にミラノで開催されたイタリア支那基金の「チャイナ・アワーズ」において、次のように説明している。「ここ数日、最も興味深いことが議論されています。それは、港に関するものです。支那人たちは、アドリア海の港湾システムに注目しています」

そこには資金が流れ込み始めている。ヴェネツィアのオフショア・オンショアの新しい港湾システムの計画は、イタリアと支那のコンソーシアム「4C3」に委ねられることになっている。

一方で、支那は地中海に関心をもっていることをすでに示している。2016年4月に国営の支那遠洋運輸集団(China Ocean Shipping Company。COSCOとしても知られる)はアテネの港、ピレウス港を3億6,800万ユーロで買収した(彼らはすでに3つの埠頭の1つを運営していた)。ツィプラス政権はほかの購入者を見つけられず、中国人のみがこの施設の譲渡に手を挙げたのだった。

アテネはOBORのルートを概観した地図上で大きく目立つ寄港地の一つであり、その近くにあるのがヴェネツィアだ。12月に辞意を表明したマッテオ・レンツィ政権のインフラ担当大臣、グラツィアーノ・デルリーオは、「(ヴェネツィア、トリエステ、ラヴェンナを含む)アドリア海奥部の港は、極東からやってくる輸送を引きつけるために、一つの統合されたシステムとして立候補しなければならない」と公に語っている。

6月、(トリエステが含まれる)フリウリ州当局は、国際物流フェアのために上海へと飛んだ。「トリエステはシルクロードのコース上にあります。そして、最近北京政府の推進している一帯一路のイニシアティヴは、支那の投資家たちがトリエステ港に対して新たな関心を抱くことにつながります」と、上海凱榮法律事務所の金玉来は語った。そして、ヴェネツィアも、天津港とマルゲーラ、浜海の工業地域(訳注:いずれもヴェネツィア、天津の地区)の間で姉妹都市提携を結んだ。

いま、北京はヨーロッパまで道を延長したがっている。例えば、重慶とデュースブルクを結ぶ鉄道による陸路、そして海路だ。後者のの場合、アドリア海を通過する。「検討は進んでいます」。前述のセクィは言う。「支那人によると、アドリア海は中欧ヨーロッパの国々へと向かう効果的な連絡路なのです」

*ブログ管理人注:上の記事で「支那」と表記されている部分は原文では「中国」となっています。(以下同じ)

【私の論評】権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚か?


「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、支那は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。

実際に、支那浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が1日、始まりました。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支那メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。

支那浙江省義烏の駅で、英ロンドンへの出発を待つ
国際定期貨物列車=2016年12月31日
運行距離は約1万2千キロ。新疆ウイグル自治区のアラシャンコウで通関し、カザフスタンやロシア、ポーランド、ドイツ、フランスなどを経由。英仏海峡トンネルを通って18日間でロンドンに到着する予定。貨物は衣類などが主でした。

運行会社の責任者によると、海上輸送に比べて輸送時間を1カ月近く短縮でき、コストは航空便の20%程度だといいます。浙江省は製造業が盛んで、義烏は日用雑貨の世界的な卸売市場としても知られいます。

支那は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。支那の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった支那自身の経済的な思惑も込められています

「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。

「一対一路」を言い出した習近平だが、その思惑は・・・・・
支那の高速鉄道は日本の新幹線の派生技術ですが、支那はなぜか「国産」技術に自信を強めており、(1)高速鉄道の技術や設備は支那が提供して建設 (2)運営には沿線国も参画 (3)石油・ガス、鉱物資源の資源国との間では、高速鉄道技術と資源を交換する、といった形で、支那版高速鉄道を大々的に輸出していく構えでした。

具体的には、(1)支那東北部からロシアを経由して欧州と結ぶ欧州アジア鉄道 (2)新疆から中央アジア諸国を横断してトルコにつながる中央アジア線 (3)支那南西部からインドシナ半島を縦貫する汎(はん)アジア線の3つの高速鉄道建設計画が策定された。

李克強首相は、外遊する度に、これらの高速鉄道計画を売り込んでいました。国内で「高速鉄道のセールスマン」と呼ばれていました。しかし、この売り込みも、惨憺たる失敗であることは、依然このブログにも掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
【恐怖の原発大陸支那】南シナ海の洋上で支那製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ―【私の論評】支那の原発輸出は頓挫するが、南シナ海浮体原発は甚大な危機!核兵器持ち込みも(゚д゚)!
バンドン郊外で開かれた高速鉄道の着工式典に出席したジョコ大統領(左から2人目)
と支那鉄道公司の盛光祖社長(中央)ら=1月21日、インドネシア
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、支那の高速鉄道の導入で、シンガポール、ベネゼエラ、タイ、米国など世界各地で頓挫している実体を掲載しました。この地域は、直接「一対一路」とは関係はないものの、それにしても、支那鉄道技術が未熟なことを露呈してしまいました。これでは、「一帯一路」の陸のシルクロードもうまくいくとは到底思えません。

さて、支那の鉄道技術水準の低さは別にして、この構想は控えめに言っても前途多難です。通過地帯の需要密度が低すぎて、金のかかる高速鉄道を採算に乗せるのは至難だからです。せいぜい需要密度が見込める区間で部分開通できるくらいが関の山、全線開通を無理に目指せば、投融資の不良債権化は必至です。

一昨年は支那が主導的に設立する新しい国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が大きな話題になりましたが、一昨年11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)では「シルクロード・ファンド」という耳新しい言葉が登場しました。この400億ドル規模の投資ファンドは、まさに「一帯一路」構想を推進するために設立される直接投資のファンドです。

北京はこの二つの機関に「一帯一路」事業の投資と融資を分担させるつもりだったのかもしれませんが、シルクロード・ファンドとAIIBの間で、利益の衝突や運営理念の衝突が起きることも懸念されました。

AIIBは多数国が参加する「国際金融機関」である以上、融資はアンタイド、援助事業にも国際競争入札が求められるはずでしたが、シルクロード・ファンドは支那単独で設立され、支那高速鉄道の調達を条件とする「ひも付き(タイド)」援助機関でした。

シルクロード・ファンドが出資し、AIIBが融資する形で同一事業に共同投融資を行うなら、AIIBのアンタイドは有名無実になり、支那産品のメーカーファイナンス(例:クルマのローン)を出す機関に成り下がってしまいます。それに、採算の取れない全線開通事業にAIIBが融資すると聞いたら、どこの国もAIIB参加の意欲が失せるのが当然です。

そのせいもあったのでしょうか、AIIBは昨年1月の段階で、開店休業状態でした。それについては、このブログにも以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
AIIB開業式典であいさつする習主席。懸念材料は消えないままだ=昨年1月
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、支那が主導するアジアインフラ銀行(AIIB)は昨年スタート早々、「開店休業」となりました。6月の予定だった最初の融資案件承認が「年内」へ大幅に遅れたからです。信用格付けを取得できない事態が尾を引いているとみられ、日米の参加を“懇願”するしかない状況でした。その後、どうなったかも、ほとんど報道されていないので、実質今も開店休業状態とみられます。

鉄鋼産業をはじめ、投資バブルがもたらした過剰設備に悩む支那の業界は、「一帯一路」事業が救世主になってくれることを夢見ていたのでしょうが、この夢はかなわなかったようです。元々安値受注では業界の苦境を救えないし、投資家であるシルクロード・ファンドが被援助国に支那産品を高値で調達するように求めれば、深刻な利益の衝突が起きたことでしょう。元々かなり無理があったのです。

これを言い出した、習近平はかなり厳しい状況におかれたものと思います。習近平は、数年前から腐敗撲滅運動という名を借りて、その実権力闘争を行っています。支那は3大グループで権力闘争をしています。胡錦涛派(共青団)の李克強氏、福建華僑(客家 はっか)を地盤とする太子党の習近平主席、上海閥と太子党の江沢民派の3つです。

習近平主席は、もともと江沢民の後ろ盾で主席になったのですが、主席就任後は江沢民と距離を置き、胡錦涛派と結託して、江沢民派を追い落としました。

その後、江沢民派という共通の敵を追い落とした習近平主席と胡錦涛派の李克強氏は次第に対立するようになりました。今は、習近平は江沢民派残党と胡錦涛派の両方を敵に回しています。主席就任以来最も政治的基盤がぜい弱な状態です。

こうした権力闘争の最中に、南シナ海での支那暴挙は、国際仲裁裁判所により全面的に否定されてしまいました。「一対一路」構想も、AIIBも頓挫状態です。

そんな最中に、安倍総理はハワイを訪問して、真珠湾で慰霊をし、それに動向した稲田防衛大臣はその直後に靖国神社を参拝をしています。


習近平政権が弱体化している時に、日本では対支那強硬派の稲田朋美氏が防衛大臣に就任し、そうしてとうとう参拝をしたのです。歴代の支那主席は日本の首相、主要閣僚の靖国神社参拝に反対し、押さえ込んできました。

支那においては、習近平主席は日本の閣僚も押さえ込めない弱い主席ということになったはずです。これは、習近平主席と対立する胡錦涛派、江沢民派にすれば、習近平を引きずり下ろす絶好のチャンスのはずです。他の閣僚や、安倍首相が参拝すれば、ますます半習近平派は勢いづくことでしょう。

しかし、ここで習近平も反撃に出ました。それは何かというと、空母遼寧の南シナ海への覇権です。支那の事情を知らない人にとっては、なぜ空母「遼寧」の南シナ海への派遣が、反撃になるのかと考えられるかもしれませんが、支那という国は、元々自国内部の都合で動く国です。この派遣も、国内での権力闘争の相手に対する示威行為の一環であると考えられます。

昨年12月24日、航行する支那の空母「遼寧」
国際的にも、国内的にも追い詰められた習近平は、苦肉の策として、これを実行したものと思われます。これを実行することにより、何か南シナ海での情勢に何か、支那にとって有利な面がでてくれば、習近平の立場は強まり、権力闘争には有利になります。

しかし、このブログでも以前示したとおり、空母「遼寧」はボロ船に過ぎず、戦術的にも、戦略的にもあまり意味はありません。八方塞がりになった習近平が窮余の一策として行ったものとみられます。

今のところ、反習近平派は、この様子を見守っているところなのだと思います。この派遣が特に何も影響がないと見定めれば、徹底的に習近平を追い詰めるでしょう。

そうなれば、習近平は窮鼠猫を噛むの諺どおりに、尖閣諸島占拠を目指すかもしれません。しかし、そうなったにしても、今の支那の人民解放軍には、日本の自衛隊に勝ち目は全くありません。米軍相手ならなおさらです。

そうなると、今年は権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚するか、失脚しないまでも、失脚への道筋が顕になる年になるかもしれません。

習近平が失脚して、後に誰が新たな主席になろうと、支那は軍事的にも、経済的にも手詰まりで、相当混乱することになることでしょう。

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2016年7月18日月曜日

「子供じみたやり方だ」 宮家邦彦氏が日中首脳会談での中国の“演出”を批判―【私の論評】このままだと、習近平は失脚し中国は過去の帝国と同じく崩壊する(゚д゚)!

「子供じみたやり方だ」 宮家邦彦氏が日中首脳会談での中国の“演出”を批判

宮家邦彦氏
「子供じみたやり方だ。中国は焦っている」。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は17日のフジテレビ系「新報道2001」で、15日にモンゴルで行われた日中首脳会談直前の中国側の対応を批判した。

会談は、南シナ海問題で仲裁裁判所が中国の主権を否定する裁定を出したことを受けて開催。番組によると、会場に着いた安倍晋三首相は中国の要求で部屋の外で待たされた。後から来た中国の李克強首相が先に入り、安倍首相を出迎える演出をした。

宮家氏は「(裁定で)中国は相当ダメージを受け、メンツも潰れた。取り繕っているが、このようなやり方をやる限り、孤立するだけだ」と指摘した。

【私の論評】このままだと、習近平は失脚し中国は過去の帝国と同じく崩壊する(゚д゚)!

上の記事に掲載されている「新報道2001」の動画(音声のみ)を以下に掲載します。


この動画、消去されることもありえるので、以下に番組内容を掲載しておきます。
モンゴル・ウランバートルで開かれたASEM(アジア欧州会議)首脳会議で、「安倍晋三」首相が中国の「李克強」首相と会談、フィリッピンが南シナ海における主権の主張は国連海洋法条約に違反するなどとして提訴した仲裁裁判で、九段線には歴史的権利も法的根拠もないと南シナ海における中国の主権を全面的に否定した裁決が出たことに、安倍総理が「法の下で紛争を平和的に解決することが述べたのに対し、李首相が「日本は騒ぎ立てたり干渉したりしてはいけない」と不満を表明したことに、 
「平井文夫」氏は、安倍総理が先に着いたのに外で待たされ、「李強克」氏が後から来て入った後に安倍総理を迎えた演出に、中国がこれでないと受け入れないと言ったのか日本が取り繕ったのか、怒って帰ってしまえは良いと語った。 
「宮家邦彦」氏は、子供じみたやり方で非常に焦っていると思うと、仲裁裁判所の判断は最終的なもので拘束力もあり、九段線は否定されたが中国にとっては否定できないもので相当ダメージを受け、面子も潰れ取りつくろってはいるものの相当焦っているが、今の中国のやり方を続ける限り利益を守れないということに気がつかないとどんどん孤立するだけだと、南シナ海も東シナ海も日本の周りを同じ一つの海で、海のルールを守らない人たちに我々が何をするべきかは明らかで、G7でやっていかなければならないと語った。 
アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏がもし大統領になれば、寧ろ中国は歓迎するのではないかと、最近は少しまともになっているが過去の発言のままであれば、アメリカの政策は内向きになり海外的に干渉しなくなりロシアにしても中国にしても歓迎するのではないかと語った。 
引用:新報道2001(2016年7月17日)
須田哲夫(フジテレビキャスター、大島由香里(フジテレビアナウンサー)、 平井文夫(フジテレビ上席解説委員)、片山善博(慶應義塾大学教授、元鳥取県知事)、猪瀬直樹(元東京都知事)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)、下重暁子(作家) 
確かに、これはあまりに子供じみたやり口です。 そうして、この子じみた対応等の原因としては、私は以前アメリカの戦略家であるルトワック氏が語っていたことを思い出してしまいました。

それに関して、掲載したこのブログの記事を以下に掲載します。
【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!
尊師の兵法書
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、漢民族の思い込みに関する部分を以下に掲載します。
漢民族は自らを「偉大なる戦略家である」と思い込んでいる。孫子の兵法を生んだ民族の末裔(まつえい)であるとの自負が誤解の原因かもしれない。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問、E・ルトワク氏は、戦略家であるどころか「古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎない」と酷評する。実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックだけが生きている。 
その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。 
国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。 
中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を含む札束外交で歓心を買おうとしても、従属を強要する意図が見えれば中国への警戒心はむしろ高まろう。ASEAN首脳が米西海岸サニーランズでオバマ大統領との会談に応じたのも、対中ヘッジ(備え)になってくれると考えるからだ。
今回の、 安倍総理が先に着いたのに外で待たされ、「李強克」氏が後から来て入った後に安倍総理を迎えた、宮家氏にいわせると「こどもじみた演出」も実は、孫氏の兵法書なども書かれてある戦略なのかもしれません。
E・ルトワック氏
しかし、これも結局のところ、E・ルトワク氏が言うように、戦略であるどころか、古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎず、実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックの一つに過ぎないのです。

結局いくら、演出をしてみたところで、仲裁裁判所の裁定が変わるわけでも、安倍総理の考えを翻すことや、南シナ海の周辺のASEAN諸国などの考えを翻すこともできないのです。

結局、この子供じみた行為は、内向きの中国の本性を表したものといえます。現在の中国は、習近平が主導する「腐敗撲滅運動」という名の、激烈な権力闘争の最中にあります。この子供じみた行為は、権力闘争の道具の一つなのでしょう。権力闘争に勝つためには、習近平派であろうが、反習近平派であろうが、とにかく自らの統治の正当性を強力に訴える必要があります。

李克強が安倍総理を待たせるという行為は、中国内部で李克強が統治の正当性があることをアピールする狙いがあったのだと思います。安倍総理が待っているところに、李克強が入っていくということでは駄目だったのだと思います。李克強は、安倍総理の面子を立てた姿をアピールしたかったのでしょう。

これをアピールしているから、会談がうまくいけば、それは李克強の手柄になるし、会談がうまくいかなくても、面子を立ててもらっても李克強に楯突く日本国安倍首相ということを強調したかったのでしょう。こんなことにも気をもむ、李克強です。

確かに、宮家氏が語るように「仲裁裁判所の裁定により中国は相当ダメージを受け、メンツも潰れた」のでしょう。李克強はこれ以上、メンツが潰れないように、最大限の努力をしたつもりなのでしょう。

会談を前に、握手する安倍首相(左)と中国の李克強首相=15日、ウランバートル
しかし、このようなことをして、仮に国内にアピールできたとしても、国際関係には何の影響も及ぼすことはありません。

中国は、国内での統治の正当性の主張の仕方が、中国以外の他国に対しても、効くものと勘違いしているようです。

お世辞にも、優秀とはいえない、軍事力をちらつかせたにしても、それは国内の人民に対しては効き目があるかもしれませんが、他国に対してはかえって、敵愾心を強化させるだけになります。国際関係では、そんなことをするよりは、国際法を遵守し、その範囲の中で自己主張をしていくというやり方でなければ、通用しません。

そのことを忘れて、対外関係も中国国内と同じように進めようとする中国に明日はありません。外交でも、国際関係でも、失敗続きの習近平は、近いうち国内でも、統治の正当性を疑われ、権力闘争に負けて、退くことになるでしょう。

それでも、中国は南シナ海での暴虐を繰り返すことでしょう。そうなれば、国際社会から完璧に孤立することになります。

国際社会から孤立した中国は、この地域に過去に栄えて、衰亡した多くの大帝国の二の轍を踏むことになります。現在の中国は、過去の孫子の兵法などを学ぶのではなく、過去にいくどとなく、この地域に設立された大帝国がその後、消滅し、その後前の帝国などとは全く関係なく、分断された次の帝国をつくりだすということを繰り返してきた過去の中国の歴史を反省すべぎてす。

なぜ、大帝国は崩壊したのか、中国人は真摯に反省すべきです。その反省がない限り、いずれ現在の中国も、過去の大帝国と同じように滅ぶだけです。

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2015年3月9日月曜日

王毅外相がまたも日本に「反省が足りない」などと強硬発言―【私の論評】王毅外相失脚間近か? いや、これが中国幹部の日常だ! 自己保身のためには、自国人民や他国のことなどはなから眼中になし(゚д゚)!

王毅外相がまたも日本に「反省が足りない」などと強硬発言

王毅は降格か左遷のおそれあり、反日強硬派のポーズは党内の生き残りを賭けて


王毅外相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

2015年3月8日、全人代最終日に記者会見に臨んだ王毅外相は、日本に対して「日本は70年前に戦争に負けた。胸に手を当てて誠実に反省しているのか」などと、強硬な姿勢を崩さなかった。
これはNHK北京総局の記者(中国人)の質問「軍事パレードに日本の首相も招待をするのか」に答えたおり、「誠意ある国はどこでも招待する」としたもの。

しかし多くの問題がつきまとう。

第一に王毅外相の発言が中国国内の政治において、どれほどの重みを持つのか。王は党内序列が低く、先輩格の楊潔チ前外相(現在国務委員)にはるかに及ばず、しかも次の党大会で国務委員になれないだろうと言われる。つまり彼が何を言おうと報道する価値は低いのである。

王発言は党内上位に向けての胡麻すり発言でしかないからだ。

第二に最近、王毅の周囲に起きている血みどろの政争である。

失脚直前の令計画が党内理論誌『求是』に論文を書いて、16カ所も「習近平への忠誠が重要だ」などと胡麻をすっていたように、日本通の王毅は、それゆえにこそ党内の空気を読んで強い反日を示す政治的理由がある。

馬継生の逮捕を伝える中国のサイト

先週も或る北京の事情通と話し込んだ折、王毅の微妙な立ち位置に関してのインサイダー情報を得た。王が日本駐在大使のおり、右腕として仕え、日本のマスコミの中国報道をウォッチしていた馬継生が夫人とともに『重大な規律違反』として拘束された。馬は日本勤務のあと外交部報道副部長からアイスランド大使に転任していたが、スパイ容疑を問われたという。

湯本淵

また王毅が日本大使赴任中に公使参事官だった湯本淵も、14年秋に失脚したほか、中国外交部では数人がスパイ容疑として姿を消している。習近平は王毅を嫌っているという情報も飛び交っている。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)3月9日(月曜日)弐
   通巻第4483号 

【私の論評】王毅外相失脚間近? これが中国幹部の日常だ! 自己保身のためには、自国人民や他国のことなどはなから眼中になし(゚д゚)!

本日は、王毅をめぐるツイートが多いです。代表的なものをあげてみましょう。

王毅は、さらに日本メデイアに向けて以下のような矛盾した発言をしています。
中国外相「仲むつまじくあるべき」 日中関係改善に言及 
朝日新聞デジタル 2014年3月9日01時35分 
 中国の王毅外相が8日、北京で内外メディア向けに記者会見した。中国の原則的な立場を繰り返す一方で「中日は隣国であり、本来は仲むつまじくあるべきだ」と述べ、関係改善が必要との認識を示した。 
 王氏が昨年3月に外相に就任して以後、公式な記者会見の場で日中関係について考えを述べたのは初めて。中国の強い立場を示しつつも、抑制的な言葉の中に局面打開に向けた思いをにじませた。 
 安倍晋三首相らの靖国神社参拝や歴史認識について、「最近の日本の指導者の一連の言動が中日友好の基礎を壊した」と改めて批判。その一方で、関係悪化は「両国民の利益にならない」とも指摘した。 
 安倍首相が1月、日中関係を第1次大戦前の英独関係になぞらえた問題を念頭に、2014年は(第1次大戦が始まった)1914年ではないし、(日清戦争が始まった)1894年でもない」と強調。当時とは時代背景も国際環境も異なるとの見解示した。

王氏は2004~07年に駐日大使を務めた中国政府切っての知日派。昨年3月の相就任時には、日本で日中関係改善への役割に期待を寄せる声が上がった。

日中関係筋によると、12年末、北京に着任した木寺昌人・駐中国大使が最初に面会を申し込んだ中国要人も王氏だった。しかし、王氏は応じず、面会が実現したのは昨年末。安倍首相の靖国参拝への抗議の際だった。関係筋によると、木寺氏を呼びつけた王氏は「こんなことで、初めて面会するなんて残念です」と漏らしたという。

中国で対日感情が悪化する中、「知日派」の看板が王氏にとっては足かせになり、言動も慎重にならざるを得ない。日中外交筋も「王氏に頼ることを控えている」と話す。
中国外相「歴史と領土、妥協の余地なし」 日中関係で 
朝日新聞 デジタル 2014年3月8日13時13分

中国の王毅外相が8日、悪化している日中関係について、「歴史と領土の問題では妥協の余地はない」と主張した。「過去をまじめに清算し、約束を翻すようなことをやめれば、行き詰まりを脱することができる」とも述べ、日本側に関係改善へ向けた対応を求めた。

全国人民代表大会(全人代)にあたって記者会見した。王氏は「中日は隣国で、本来は仲むつまじくあるべきだ。現在の局面は我々も見たくない。両国人民の利益にもならない」とする一方、「このところの日本の指導者の一連の言動が、中日関係の基礎を壊した」と批判した。(北京)
以上のツイートや、新聞報道などみていると、ブログ冒頭の宮崎氏のメルマガ記事の王毅の降格か左遷のおそれがあるのは確かなようです。

しかし、別な角度からみれば、これは中国共産党中央政府の幹部の日常なのです。日々いつ降格、左遷されたり、場合によっては失脚させられたり、それどころか、命を奪われる危険があります。

だからいつも、上や派閥の動きに敏感で、人民や他国のことなど眼中になく、自分の都合で動いたり、発言するのが当たり前になっているのです。そうして、自己保身のために、対日強硬論をはいてみたりと、日々大忙しです。

今回の王毅の行動や発言がクローズアップされたのは、王毅の失脚が近いからだけかもしれません。根底には、幹部の自己保身にあけくる日常という現実があるのです。

そうして、これは何も中国共産党中央政府だけではなく、地方政府内部でも同じことですし、さらに地方政府の中国共産党中央政府に対する保身という事実もあります。

中国の経済統計が信用できないということが言われていますが、それは、地方政府から中央政府に対する統計数値の報告がそもそも、出鱈目であるからです。地方政府の幹部は、自己保身のため中央政府に対して、GDPの数字など、水増しして報告するからです。

そうして、その結果として、石平氏が語るように、中国中央政府の幹部は、あたかも現役の泥棒が、普通の人に対し「盗みはするな」と諭したかのような発言をするのです。そうして、中華人民共和国は、まさに「厚顔無恥」の代名詞ともなっているわけです。

そうして、厚顔無恥な中国は、沖縄にも様々な情報戦をしかけています。その結果として以下動画のようなことが起こってしまうわけです。


この動画について、石平氏は以下のようなツイートをしています。
沖縄でこのような情報戦を仕掛けることにより、中国の狡猾な官僚どもは、自己保身をはかっているわけです。

自己保身をはかるため、中国国内だけで様々な行動を繰り返したり、発言することは一向に構わないです。

しかし、日本で、上記の動画のような行動を誘発させたり、尖閣諸島周辺で示威行動をしてみたり、南シナ海の人工島を弁護してみたりなど、他国まで巻き込んで実行するなど、これは到底ゆるされるものではありません。

このような「厚顔無恥」に対処するためにも、日本でも「スパイ防止法」を制定して、中華官僚の保身のための、日本国内における中国による工作活動を停止させるべきです。このようなことは、はやめに芽を摘んでおかないと、中華官僚の自己保身の延長線上で尖閣、沖縄などへの侵略ということにもなりかねません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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