- 能登半島地震の復興が、従来の復興に比較して遅れている。
- 野口健氏が「東京と現地の温度差」を指摘し、被災者に「見捨てられた」感があると訴えている
- 復旧・復興に補正予算ではなく予備費を使っているのが問題である。
- 過去の地震では発生から1カ月程度で補正予算が組まれているのに対し、今回は予備費対応となっている。
- 財務省が「コスト」の観点から十分な検討が必要としており、復興への消極的姿勢は問題である。
野口健氏 |
2023年1月に石川県能登半島で発生した地震からの復興が大きく遅れているとの指摘が相次いでいる。被災地で復興支援活動に従事するアルピニストの野口健氏は、東京と現地の状況にかい離があり、被災者から「見捨てられた」との危機感の声が上がっていると訴えている。
一方、過去の大規模災害では、発生からおよそ1カ月程度で補正予算が組まれ、迅速な財政支援が行われてきた実績がある。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震などの例が挙げられる。しかし今回の能登半島地震については、補正予算を編成せずに、予備費からの支出での対応にとどまっている。
予備費は、予算編成時に想定していない緊急の事態に機動的に対応するための予算だが、支出規模に制限があり、手続きも煩雑であるため、大規模な復興財源としては不向きである。
さらに、財務省の財政制度等審議会の分科会では、人口減少地域での復興事業について、将来の需要減少や維持管理コストを考慮すべきだとの意見が出された。これに対し、石川県の馳浩知事は「上から目線」と不快感を示し、政府に対し1カ月以内の大規模補正予算編成を求めていた。
このように、被災地では復興の遅れが危惧される中、政府の支援策が補正予算の編成を見送り、予備費対応にとどまっていることに、批判が集中している状況にある。
まとめ
- 通常の予算編成プロセスや補正予算編成は、制度化された手続きのため、予備費利用に比べて時間的ロスが少ない。
- 通常予算は各省庁の予算要求を受け、関係者間の調整を経て政府案がまとめられ、国会審議を経て成立する。補正予算も同様のプロセスを経る。
- 一方、予備費利用には所管省庁から財務省への要求、財務省の審査・調整、閣議決定などの手続きが必要で、時間がかかる。
- 大規模な復旧・復興事業に予備費を活用すると、継続的で十分な財源確保が困難になるおそれがある。
- そのため、大規模災害からの復興では、早期の補正予算編成による十分な財源確保が重要である。
通常の予算編成プロセスや補正予算編成では、予備費利用に比べて時間的なロスは少ないです。通常予算は、各省庁からの予算要求を受けて、関係者間での調整を経て政府予算案がまとめられます。
与党との事前折衝も行われた上で、国会に提出され審議を経て成立します。補正予算でも同様に、必要な財源を追加的に計上する際に、政府内での調整や国会審議を経る必要がありますが、いずれも制度化された手続きであるため、一定の期間を要するものの比較的スムーズに進行します。
一方、予備費の利用には、所管省庁から財務省への要求、財務省での審査・調整、閣議決定といった手続きが必要となります。予備費は緊急時の機動的な予算活用が想定されているものの、実際には審査に時間を要する側面があります。大規模な復旧・復興事業に予備費を活用する場合、継続的かつ十分な財源を速やかに確保することが困難となるおそれがあります。
茶谷財務次官 |
通常予算や補正予算の編成プロセスは制度化されているため、審議に所定の期間はかかるもののその後の実行に関しては時間的ロスは少なくなります。一方、予備費利用では手続きの煩雑さから、復旧・復興対応に遅れが生じかねません。このため、大規模災害からの復興では、早期の補正予算編成による十分な財源確保が重要とされているのです。
能登半島地震への対応も、本来は予備費でなく、補正予算を組むべきだつたのです。
能登半島地震への対応のため、補正予算を組むべきことは、以前このブログでも主張したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
能登半島地震から2カ月 "最大震度5弱程度以上"は10分の1に 引き続き地震活動に注意 気象庁―【私の論評】補正予算なしで大丈夫なのか?過去の教訓を忘れて今頃「政倫審」を開催する与野党の無責任
行方不明者を捜索する航空自衛隊の災害救助犬とハンドラー |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、本来補正予算を組む審議をすべきだった時期に国会では何をしていたかといえば、例の政治倫理審査会です。これを開催したとしても、政治資金規正法のプロ中のプロともいえる検察ですら、ほんの一部を除いて立憲を見送ったのですから、これでめぼしい成果をあげられることは最初から望み薄でした。
にもかかわらず、野党は予算成立を人質にとり、予算成立を人質にとり、最初から疑惑が晴れず、本来単なるみそぎやガス抜き、倫理を問われた議員の弁明の場に過ぎない政倫審を開催を要求し、岸田政権にマイナスイメージをつけることに奔走していました。
予算成立を人質にとるくらいですから、補正予算の審議などできるはずがありません。
国民のことを真っ先に考えるなら、政治倫理審査会など後回しにしても、自民は自ら補正予算の審議をすべきでした。野党不在でも立案し速やかに可決すべきでした。
通常、新年度予算案は1月に国会に提出され、3月中旬頃までに成立する運びとなります。一方、補正予算案については、必要が生じた時点で随時編成し、国会に提出することができます。
1月1日に能登半島地震が発生した後、政府が機動的に補正予算案を編成し、本予算審議に先立って国会に提出すれば、迅速な復旧・復興対策予算の確保が可能だったはずです。
過去の例を見ても、大規模災害発生後、概ね1カ月程度で補正予算が編成・国会で成立しています。今国会でも本予算よりも先に補正予算を優先することは制度上可能でした。
しかし、実際には本予算編成に補正予算編成を優先せず、当初は予備費による対応に終始したことが、復興の遅れにつながているわけです。本来であれば、災害対策の緊急性から、迅速な補正予算編成が求められたところでした。
野党も同じです。政府が補正予算を組まないことを批判して、組ませるように促すべきでした。これをもっとも大きな争点とすべきでした。
そもそも、地震などの甚大な被害があったときには、与野党一致で、地震対策にあたるべきです。政治倫理審査会など後回しにするか、そこまでしなくても、並行審議をして、予算・補正予算を迅速に成立させ、その後本格的に政治倫理審査を行うなどのことをすべきでした。
私は、政治倫理審査会を開催すべきではなかったと主張しているわけではありません。ただ、災害復旧・復興という緊急事態においては、その重要性を判断し、優先順位を付けるべきであったと主張しているのであり、そうしなかった、与野党を無責任と批判したのです。
国会 |
この観点は、ほとんどの人が指摘していませんが、重要な観点だと思います。一昨日には愛媛県と高知県で震度6弱を観測する地震があったばかりです。3月2日には、千葉県南部で最大震度4の地震が発生しています。千葉県ではこの地震が発生する前の2月以降18回の地震観測されまていました。首都圏における大地震の潜在的なリスクが指摘されています。
今後地震に限らず、洪水などの自然災害も発生する可能性は大です。であれば、やはり大規模な補正予算を組むべきでょう。その財源は、無論国債とすべきです。これを東日本大震災の復興税のように、増税で賄うとすれば、現世代にだけ負担が発生し、不公平極まりないものになってしまうからです。
考えてみてもください。日本はもともと自然災害の多い国です。これが発生するたびに増税したとしたら、とんてもないことになります。長期国債で賄えば、現世代と将来世代との間で負担を公平に分担することができます。これは、国債の課税平準化機能と知られているマクロ経済上の理論です。
増税だけでこれを賄えば、現世代は疲弊し続け、その結果日本は毀損され、将来世代に毀損した日本を引き継がせることになります。
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