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2017年5月20日土曜日

「9条は危険」米国大手紙が日本に憲法改正を促す―【私の論評】WSJの主張も利用し国内でまともな憲法論議を(゚д゚)!


フィリピン海を航行する米海軍原子力空母カールビンソン(手前)と海自護衛艦2隻
「日本の憲法9条は同盟国との集団防衛を阻止するため、日本にとって危険となりつつある」――。

 米国の大手新聞が最近の社説で日本の憲法9条を取り上げ、日本自身の防衛にとって危険だと断じ、改正を促した。

 このところ米国では、日米同盟の片務性という観点から日本の現行憲法への批判が出てきていた。そうした状況の中で、この社説は論点を憲法9条に絞り、現行の制約のままでは日本が中国や北朝鮮の軍事脅威に対処できなくなるから危険だとして改正を訴えた。

   「日本の憲法改正の論議は遅すぎた」
「ウォール・ストリート・ジャーナル」(5月8日付)は「日本の憲法の賭け」と題する社説を掲載した。

 ニューヨークを拠点とする同紙は米国で最大の発行部数を誇り、全米規模の販売網を持つ。インターネット版の読者数も新聞サイトとしては全米でトップを走っている。政治的には共和党寄り、保守志向とされるが、トランプ政権に批判的な論評も多く、政権側からたびたび非難を浴びてきた。

 5月8日付同紙の社説は、まず、安倍首相が最近、現行憲法を2020年までに改正したいと言明したことを取り上げ、「日本憲法は新しい現実に適合させるために刷新する必要があるという点で、安倍首相の改正への動きは正しい」と賛同する。そのうえで以下のような主張を述べていた。

・戦後の米国にとって日本に対する大きな懸念は、日本の軍国主義の復活を防ぐことだった。米軍の日本占領期に、ダグラス・マッカサー司令官の幕僚たちによって草案が作られた日本の新憲法は、9条で戦争を放棄し、軍隊の保有や「武力による威嚇または武力の行使」を禁じている。

・これらの禁止事項は、日本が民主主義国家となった以上、もう不要となった。だが、日本は米国の安全保障の傘下に避難していることに満足してきた。

・憲法9条は、もはや日本にとって危険になりつつある。なぜなら憲法9条の制約は、日本の同盟諸国との集団自衛を阻止するからだ。

・自衛隊は、日本が外部から直接的に攻撃された場合にのみ自衛を許されるという条項によって正当化されてきた。だが、今や北朝鮮の核兵器が日本や世界に対する脅威となった。中国も軍事力の行使範囲を拡大している。日本は自国が直接的に攻撃を受けていない状態でも、米国などとの共同の軍事行動に参加できる攻撃能力を持つ軍隊が必要となったのだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの社説は以上のように述べ、経済改革のための諸課題が後回しになる政治リスクがあるとしながらも、「日本の憲法改正の論議は今や遅すぎたくらいであり、その議論は日本にとって極めて健全である」と強調していた。

   明らかに変わってきた米国の態度

 日本が同盟相手である米国とともに集団的防衛活動に加われない問題については、トランプ大統領も大統領選中から「今の日米同盟では、日本が攻撃されたときに米国は助けるが、米国が攻撃されても日本は助けない」などと発言し、繰り返し批判してきた。

 民主党側からも同様の声が上がっている。今年2月、下院外交委員会のアジア太平洋小委員会の同党側筆頭メンバーのブラッド・シャーマン議員は、「米国は日本の尖閣諸島を守る必要はない。なぜなら日本は同盟相手の米国が攻撃されても助けようとはせず、憲法の制約をその口実にするからだ」と述べ、日本の憲法の制約を「不公正」だと非難した。

 このように米国では最近になって、日本の憲法9条の規定が日本の集団防衛活動を阻み、日米同盟を一方的にしているという批判が広まってきた。

 これまで、憲法9条の規定が日本の防衛にとって、さらには日米同盟の機能にとって「危険」な障害になっていると断じる意見はほとんどみられなかった。だがここに来て、ウォール・ストリート・ジャーナルが社説で日本の憲法9条を正面から取り上げて「危険だ」と断定したことは、米国の日米同盟や日本の防衛努力に対する態度が根本から変わってきたことの反映だと言えそうだ。

【私の論評】WSJの主張も利用し国内でまともな憲法論議を(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事のように、米国では憲法9条の規定が日本の防衛にとって、さらには日米同盟の機能にとって「危険」な障害となっているという意見がみられるようになったのは当然といえば当然です。

しかし、私としては、現行の日本憲法典の字面を変えるという改正は絶対に望ましいことではないと思います。このような継ぎ接ぎではなく、全面改訂というか新憲法制定が望ましいことだと思います。

これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。
【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始―【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!

詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、憲法改正はGHQによってわずか1週間程度で草案された日本国憲法はそもそも土台が狂っており、日本国憲法の字面を変えるだけでは、まともな憲法はできないことを主張しました。
そうして、まともな憲法をつくるなら一度帝国憲法に立ち返ってそこから、新たな憲法をつくるということをしなければ、まともな憲法など永遠にできないと主張しました。 
以下に日本国憲法と帝国憲法の比較を示した表を掲載します。
大日本帝国憲法と日本国憲法の相違点
以上の表は、第日本国帝国憲法について若干の間違いはありますが、それにしても、この表からですら、そもそも日本国憲法は日本人のために作られたものではないことがはっきりわかります。 
さらに、大日本国帝国憲法制定時の世界水準で考えると、大日本帝国憲法は世界の他の先進国と比較して、かなり民主的でありあらゆる点で斬新で進んだものであったことは確かです。 
ただし、制定された時代は日本国憲法より遥かに古く、現状には即していない部分も多々あります。しかし、それでも日本という国ができときの経緯やその後培われた日本国の国柄を反映したものです。日本国憲法にはそのような内容は皆無です。 
だからこそ、本来の憲法論議をしようとした場合、日本国憲法の条文の字面を変えただけではまともな憲法にはならないのです。 
しかし、まともな憲法論議をするということになれば、少なくとも5年〜10年の時が必要です。そうなると、緊急を要する事柄に対しては、対応できないということも十分考えられます。
大日本帝国憲法制定の中心となった伊藤博文公
たとえば、自衛隊がそうです。自衛隊がすでに存在して、自衛隊員の方々が、場合によっては命の危険にさらされながら、我が国、我が国民を守ろうとしているときに、自衛隊は違憲だとか、法律違反ということにでもなれば、これこそ自衛隊員の方々に失礼なことであるし、自衛隊の方々の士気をくじくことになります。

そうして、教育の無償化も最近の日本の若者の姿をみれば、緊急を要する課題です。現在の若い世代は、将来の日本を担うわけですが、その若い世代がまともな教育も受けられないということにでもなれば、日本の将来は危ういです。

だから、このような緊急を要する、課題を克服するためには、日本国憲法典の字面を部分的変えるということもやむを得ないところがあります。

しかし、かつて伊藤博文が中心として10年もの年月をかけて、日本の国柄などを反映した憲法を草案しその後世界の伍することができたように、これからの日本の運命を左右する新たな憲法も、そのくらいの時間と手間が必要になるのはいうまでもありません。

安倍首相はまずは日本国憲法の部分改正をした上で、残り全任期をまともな憲法論議が日本でできるように雰囲気を醸成し、それだけではなく将来日本国憲法は完璧に葬り去り、新たな日本人による日本人のための憲法づくりができるように努力していただきたいものと思います。

戦後70年にもわたって、日本国憲法典の一字一句も変えることすらできなかったわけですから、憲法典に手が加えられたとしたら、それはそれで画期的なことです。 
安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の始まりに過ぎないのです。これを契機にいずれまともな憲法を制定するための、偉大な一里塚とすべきなのです。
確かに、ウォール・ストリート・ジャーナルが主張するように、九条二項改正が急務だと思いますが、公明党の賛成を得られるとは思えず、かつ左翼とマスコミが猛反対し、国民投票で勝てるかどうか定かではありません。

であるならばまずはデフレ脱却に全力を傾け、現役世代の経済状態を改善することで安倍政権への支持を固めつつ、防衛費増加や領域警備法制定など現行憲法の枠内でできることに取り組むべきだと思います。

とはいいながら、「憲法改正という実績を作っておきたい」という意見もあります。その場合、「憲法改正は与野党の合意に基づいて行われた」という先例づくりを重視すべきです。

具体的には民主党やマスコミも反対できない改正、例えば「第七条の四 国会議員の総選挙」の「総」という誤植の削除に取り組む方法があります。この誤植すらながきにわたって変えることができなかったというくらい、日本では憲法改正はタブーだったのです。

私は憲法改正を切望しています。そのための理論的な準備と、国民的な支持が必要です。
そして、憲法改正のためには、衆議院または参議院法制局がその準備にあたるわけですが、そのお粗末な現実をどこまで皆さん、理解されているのでしょうか。

参議院と衆議院には、それぞれに法制局という機関があり、議員立法の作業のためのサポートを行っているのですが、参議院の法制局の職員は75名、衆議院の法制局の職員は84名しかいません。議員総数と比較すれば、その数の少なさが際立ちます。

しかも、法制局の職員は、各省庁からの出向職員です。これでは、独立した立法機関としての満足な立法活動が出来ません。

内閣にも法制局があるが、ここには36名の職員がいて、ホームページでは、職員名簿も公開されています。

一件少ないように見えるますが、法律案の原案作成は、各省庁の何万という職員で行っているわけですから、国会議員の環境とは桁違いです。

法律を作ったり変えたりするのが、国会議員の仕事だというのに、これはあまりにもお粗末です。議案の乱発を抑えるための方策なのかも知れないですが、国会議員には、選挙区の得票に象徴される国民の支持があるのであり、国民の信託を得ているのです。国会議員が立法をしやすいように、もっと手厚いサポートをするべきです。

そうして、何よりも、防衛費を国際標準のGDP2%にすることもできず、尖閣などの警備に海上自衛隊が平時から当たる任務を付与する領域警備法も制定することができない現状で、とても憲法九条改正などは困難だという認識です。

とにかく、高校生のサッカーチームがいきなりワールドカップに出場することなんて無理です。まずは経済を回復し、若者が将来に希望をもてるようにしていくことです。

そして、憲法九条改正のためには、憲法改正派の国会議員が全体の三分の二を占めるよう、地元議員を懸命に支えるとともに、九条改正を推進する憲法の専門家をせめて百人ぐらいは生み出すことです。残念ながら、現在の日本の憲法学者では全く役にたちません。本当に悔しいですが、こちらの陣営は、圧倒的に力不足です。

しかし、米国のウォールストリートジャーナルですら、「憲法9条は、もはや日本にとって危険になりつつある」と指摘するくらいに世界は変わっているのも事実です。

このような動きを利用して、日本でもまともな憲法論議をすすめていくべきです。

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2017年5月12日金曜日

2018年末ダブル選シナリオも… 安倍首相の改憲発言、財政条項は意図的に排除か ―【私の論評】安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の最初の偉大な一里塚(゚д゚)!

2018年末ダブル選シナリオも… 安倍首相の改憲発言、財政条項は意図的に排除か 

憲法改正を訴える会合に寄せられた安倍首相
のビデオメッセージ=3日、東京都千代田区
 安倍晋三首相は「2020年の憲法改正の施行」を打ち出した。改憲(施行)のスケジュールが明かされたのは画期的なことだ。

 16年7月の参院選で、衆参ともに改憲勢力が3分の2超になっていることを考えると、今の時期に安倍首相が改憲スケジュールを示したということは、18年12月までの衆院の任期で、解散と衆院選より前に憲法改正の発議をする可能性が高いということだろう。

 改憲スケジュールの中で国会発議の可能性を考えると、(1)17年秋の臨時国会(2)18年の通常国会(3)18年秋の臨時国会-と3回ある。

 国会発議の後に国民投票が実施されるが、憲法改正では発議から180日以内というのが常識になっている。国民投票と衆院選が同日の方が与党有利になるだろうから、18年12月の衆院任期前に日取りを選べる(1)17年秋の臨時国会または(2)18年の通常国会での発議の可能性が高いだろう。

 18年12月は、衆院任期終了とともに天皇陛下のご譲位も予定されている。このときに、憲法改正の国民投票と衆院選のダブルをぶつけてくるというのが、今の段階での第1シナリオではないだろうか。となると、(2)18年の通常国会後半での発議が第1候補になる。

 もちろん、情勢次第では、衆院選の後に改憲スケジュールをこなすこともありえる。この場合には、今年中に解散と衆院選(まさに改憲選挙)を行い、(1)17年秋の臨時国会で発議という手順になるのが第2シナリオだろう。

 改憲の内容について安倍首相は、9条に自衛隊に関する条文を追加する意向を示している。「自衛隊は合憲」とする民進党と、「違憲」とする共産党は股裂き状態になり、選挙協力に支障が出ないのか、政治的には興味深い。

 安倍首相は教育無償化も改正の項目として例示した。民進党と共産党は、ともに「中身としては賛成だが、憲法改正には反対」という国民には分かりにくい行動になる。

 「憲法改正なしでも教育無償化は可能だ」と主張しても、「時の政権の意向に左右されずにしっかり国の基本となるから、憲法改正した方がいい」と反論されてしまうだろう。そうなると、民進党と共産党は苦しい。

 しかも、「自衛隊合憲」と「教育無償化」で改憲勢力は一致できる。国政選挙を考えると、「自民党、公明党、日本維新の会」対「民進党、共産党」という対立図式となり、「自公維」に有利に働くだろう。

 ちなみに「財政規律条項」については、民進党の蓮舫代表や自民党の一部が必要だと主張しており、両党で差別化できない。そもそも財政規律条項を憲法改正で入れると、緊縮財政の傾向がさらに強まり、日本経済にとっては害悪である。

 この点を考慮し、安倍首相は自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか。

 なお、国民投票法では、発議は個別発議なので、憲法全体を示す必要はない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の最初の偉大な一里塚(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事には掲載されていませんでしたが、安倍首相自身にとって非常に重要なのはやはり、自民党総裁3選です。2期6年の任期が切れる2018年9月には総裁選が実施されるのですが、3月5日の自民党定期党大会で総裁任期が「連続3期9年」に延長されることを受けて、首相が出馬すれば3選は確実というのが現時点での常識ともいえると思います。
総裁任期延長を伝えたAbemaTV
そうなれば首相にとって第1次と合わせた「9年8か月の史上最長政権」という金字塔も現実味を帯びることになります。その場合の首相の任期満了は2021年9月で、次回も含めて2回以上の解散断行のチャンスが出てくることにもなる。

そうして、安倍首相にとって遠いゴールを見据えての解散戦略の中核となるのは「在任中に成し遂げたい」と明言した憲法改正の実現です。昨年7月の参院選での与党圧勝でいわゆる「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超え、数の上では衆参両院での憲法改正発議が可能な状況となりましたた。

このため、首相は衆参両院の憲法審査会での改憲条項の早期絞り込みに強い期待を表明し、二階幹事長も「今国会での発議」にまで言及していました。

ただ、昨年秋にスタートした憲法審査会での各党協議は、憲法問題も絡む天皇陛下の「生前退位」をめぐる与野党協議が先行しているため、改正が必要な条文などの詰めの協議は秋の臨時国会以降になると思われます。

こうなると、秋の臨時国会で与野党協議が進み、2018年の通常国会の早い段階で憲法改正の発議にこぎつけ、夏に改憲国民投票を実施するのがベストと考えられます。

7月2日の都議選を理由に通常国会の大幅延長は想定されていないため、政府・与党は9月末か10月初めには臨時国会を召集する考えのようです。その場合、首相が臨時国会での解散断行に「色気」を示せば、与野党の改憲協議は停滞し、18年春の国会による改憲発議も絶望的となります。

しかも、自民党の全国情勢調査などでは「次回衆院選では自民党が30~50議席減」(自民選対)との予測もあり、解散断行によって衆院の改憲勢力は3分の2を割り込み、早期改憲発議自体が困難になる可能性もあります。となれば、首相が今秋もしくは年末解散を見送って、「衆参3分の2」を維持したまま来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"として浮上してくるのではないかと考えられます。

首相は1月5日夕の時事通信グループの新年互礼会の挨拶で解散について「今年は全く考えていないとはっきり申し上げておきたい」と発言しました。居合わせた二階幹事長や山口那津男公明党代表ら政府与党幹部の表情は変わらなかったのですが、同夜に首相周辺が「首相から『今年ではなく、今月の言い間違いだった』と聞いた」と解説したことで新聞各紙は「首相、年内解散を否定」とは報道せず、「首相が言い間違い」とする囲み記事でお茶を濁していました。

時事通信グループの新年互礼会で挨拶する安倍首相
ただ、永田町では「解散時期について首相が言い間違うはずがない。思わず本音が漏れただけ。軌道修正は自民党議員が安心して選挙活動をなまけないようにするため」(自民長老)と解説する向きが多いようです。

政府・与党内には来年の解散について「追い込まれ解散になりかねない」との危惧もあります。しかし、内閣支持率が6割前後をキープし、自民党支持率も4割前後という状況が続けば、任期満了が迫っても安倍政権が追い込まれることはないのも事実です。もちろんトランプ政権の暴走やアベノミクスの失速といった政局運営の不安要素は少なくないのですが、"安倍1強"が続いていれば、あえて解散せずに過去1回しかない任期満了選挙も有力な選択肢といえます。

やはり、来夏の改憲国民投票に合わせての解散・衆院選という「ダブル選」日程が"本命"ということになりそうです。

いずれにせよ、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事では「自衛隊合憲と教育無償化を改正事項に掲げることで、財政規律条項を憲法改正の俎上から意図的に落としたのではないか」としていますこれについては、現状を考えた場合緊急を要するものであると思います。

先日はいわゆる一部保守層による無責任な憲法改正論議について批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【参院予算委】安倍晋三首相が民進党に改憲案提出を要求 蓮舫代表は答えず… 首相批判に終始―【私の論評】土台が狂った日本国憲法典の字面を変えてもまともな憲法はできない(゚д゚)!

詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、憲法改正はGHQによってわずか1週間程度で草案された日本国憲法はそもそも土台が狂っており、日本国憲法の字面を変えるだけでは、まともな憲法はできないことを主張しました。

そうして、まともな憲法をつくるなら一度帝国憲法に立ち返ってそこから、新たな憲法をつくるということをしなければ、まともな憲法など永遠にできないと主張しました。

以下に日本国憲法と帝国憲法の比較を示した表を掲載します。

大日本帝国憲法と日本国憲法の相違点
以上の表は、第日本国帝国憲法について若干の間違いはありますが、それにしても、この表からですら、そもそも日本国憲法は日本人のために作られたものではないことがはっきりわかります。

さらに、大日本国帝国憲法制定時の世界水準で考えると、大日本帝国憲法は世界の他の先進国と比較して、かなり民主的でありあらゆる点で斬新で進んだものであったことは確かです。

ただし、制定された時代は日本国憲法より遥かに古く、現状には即していない部分も多々あります。しかし、それでも日本という国ができときの経緯やその後培われた日本国の国柄を反映したものです。日本国憲法にはそのような内容は皆無です。

だからこそ、本来の憲法論議をしようとした場合、日本国憲法の条文の字面を変えただけではまともな憲法にはならないのです。

しかし、まともな憲法論議をするということになれば、少なくとも5年〜10年の時が必要です。そうなると、緊急を要する事柄に対しては、対応できないということも十分考えられます。

大日本帝国憲法制定の中心となった伊藤博文公
たとえば、自衛隊がそうです。自衛隊がすでに存在して、自衛隊員の方々が、場合によっては命の危険にさらされながら、我が国、我が国民を守ろうとしているときに、自衛隊は違憲だとか、法律違反ということにでもなれば、これこそ自衛隊員の方々に失礼なことであるし、自衛隊の方々の士気をくじくことになります。

そうして、教育の無償化も最近の日本の若者の姿をみれば、緊急を要する課題です。現在の若い世代は、将来の日本を担うわけですが、その若い世代がまともな教育も受けられないということにでもなれば、日本の将来は危ういです。

だから、このような緊急を要する、課題を克服するためには、日本国憲法典の字面を部分的変えるということもやむを得ないところがあります。

しかし、かつて伊藤博文が中心として10年もの年月をかけて、日本の国柄などを反映した憲法を草案しその後世界の伍することができたように、これからの日本の運命を左右する新たな憲法も、そのくらいの時間と手間が必要になるのはいうまでもありません。

安倍首相はまずは日本国憲法の部分改正をした上で、残り全任期をまともな憲法論議が日本でできるように雰囲気を醸成し、それだけではなく将来日本国憲法は完璧に葬り去り、新たな日本人による日本人のための憲法づくりができるように努力していただきたいものと思います。

戦後70年にもわたって、日本国憲法典の一字一句も変えることすらできなかったわけですから、憲法典に手が加えられたとしたら、それはそれで画期的なことです。

安倍首相による憲法改正は、まともな憲法論議の始まりに過ぎないのです。これを契機にいずれまともな憲法を制定するための、偉大な一里塚とすべきなのです。

【関連記事】

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【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?

米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?

三島由紀夫「平和憲法は偽善。憲法は、日本人に死ねと言っている」 TBSが未公開テープの一部を公開・放送―【私の論評】人は自分のためだけに生きられるほど強くはない(゚д゚)!


2017年5月3日水曜日

【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!




 ご来場の皆さま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。

 憲法施行70年の節目の年に、「第19回公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもって、およろこびを申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で、精力的に活動されている皆さまに、心から敬意を表します。

 憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が総理・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができました。しかし、憲法はたった一字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。

 憲法を改正するか否かは、最終的には、国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。

 次なる70年に向かって日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、わが国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。

 憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない。その時期に来ていると思います。

 わが党、自由民主党は、未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における具体的な議論をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。

 例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命がけで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く。その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、いまなお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。

 私は、少なくとも私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考えます。

 もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けてしっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。

 教育の問題。子供たちこそ、わが国の未来であり、憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる「1億総活躍社会」を実現する上で、教育が果たすべき役割は極めて大きい。

 世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子供たちが、それぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。

 70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに戦後の発展の大きな原動力となりました。

 70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子供たちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは、個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会、経済の発展に、確実につながっていくものであります。

 これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。

 私は、かねがね、半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました。かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました。その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。

 2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切り拓いていきたいと考えています。

 本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命を、しっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。

 最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、皆さま方、「民間憲法臨調」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。

 憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう。

【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

自民党安倍政権は憲法改正を目指しています。私自身は進駐軍軍に銃剣を突きつけられて、与えられたような憲法はいずれ改正すべきだとは、考えています。

現憲法の制定手続きが正当であり、合法的というならば、ナイフを突きつけてセックスを強要することも強姦ではなく、合意の上の行為となります。このようなことは、文明社会で許されるものではありません。

このような「強姦憲法」を不磨の大典かのごとく崇め奉っているいる日本のマスコミ、リベラル・左派、左翼の皆様は、強姦を是とするのでしょうか?
 
その一方で、保守改憲論者の言動をみていると不安になります。自衛隊を巡る法整備やら、予算の問題やらなにやらの諸問題が憲法それも憲法典(文書に書かれた憲法)を改正すればたちどころに解消するかのようなことを主張しています。

しかし、憲法(典)改正は魔法の杖ではありません。憲法を変えなくとも、法律や予算を変えるだけでも可能なことも多々あります。

かつての有事法、国民保護法の制定でも一部それが、実現しました。さらには、2015年には、集団的自衛権を含む安保法制が国会を通りました。ですが、彼らは憲法改正をしなくてもできる、地道な法改正や予算の増額などを主張することはあまりなく、とにかく憲法を変えればすべては劇的に解決するとファンタジーを主張しているようです。

さらには、現行憲法でさえ憲法の解釈を変えればできることはいくらでもあります。実際、このブログでも憲法9条の解釈を変更すれば、自衛隊は違憲ではなくなるし、防衛戦争も可能になることを主張したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?
佐々木惣一
以下に、佐々木惣一氏の憲法9条に関する考えを簡単にまとめた部分のみ引用します。
法によれば、国家は、戦力、武力による威嚇及び武力の行使については国際紛争を解決する手段としてではなく、自衛などの国際紛争を解決する手段以外では、日本国が戦争をし、武力による威嚇をし、武力を行使することを禁じているのではない。 
交戦権については、「第一項は戦争するという事実上の行動に関する規定であり、第二項は、戦争に関する意思の活用に関する規定である」として、国際紛争を解決する手段としての戦争をする意思を活用することを表現している。そのためこの交戦権も自衛権を放棄していることではない。 
この佐々木による解釈は純粋な法理論のモノであり、現実の政策とは分けて考えるべきであり、どんなに憲法解釈が純法理的にすばらしくても、現実に平和が維持されないでは意味をなさない。
そうして、この考えは、他国の憲法を検討すれば、正しいことがわかります。憲法・比較憲法学を専門とする西修氏によると、現行の憲法典182のうち、なんらかの平和主義条項を有する憲法典のある国は、 150カ国もあり、これは全体の82%超です。

なかには、核兵器や生物兵器、化学兵器を持たないことを明記したり、外国の軍事基地を設けないことなど、日本よりももっと徹底した平和主義条項を持つ国があるのです。

世界には、日本のように平和憲法を持ちながら、防衛軍などの名称で軍隊を保有し、自衛のためであれば、戦争することを是とする国も多数存在するのです。であれば、日本も憲法解釈を変えることによって、自衛戦争を可能にすることもできるはずです。

しかし、まずは憲法解釈を変えるとか、予算や法律を整備することにはあまり熱心でなく、とにかく憲法典の条文を変えれば、それで事が足りると無邪気に信じる護憲派もおおいです。

しかし、現状の憲法を変えなくても、できることはあるのです。たとえば、陸上自衛隊には2012年までファーストエイドキットもまともにありませんでした。その後採用されたキットも国内用と国外用(PKO用)があり、特に国内用は包帯と止血帯しか入っていません。これは現代の軍隊ではありえないお粗末さです。

ここで陸自の「個人携行救急品」の海外用(国内用は3アイテム)と米陸軍の「IFAK(Improved First Aid Kit) II」の構成品の違いを検証します。

IFAK IIは従来のIFAKよりも収納力を増やし、個人用アイテム整備の効率化や経済化を図ることを改良の主眼にしており、「米陸軍が専用に装備するアイテム」「米陸軍全員に使用法を習熟させるべきアイテム」として選定した12品目を「基準アイテム」として常備しています。

そしてこれを全員に支給しておき、静脈路確保用留置針、留置針固定用テープ、胸腔減圧用脱気針などの病院であればどこでも備蓄しているアイテムは必要の都度調達し、最大18品目まで補完することで、携行品数に柔軟性を付与するようになっています。

これは管理することが難しく、使用期限のある医療資材を効率的に整備すると共に教育が不十分な兵士が誤用するケースを防ぐ目的もあるといいます。IFAK IIの構成品は12品ではなくその最低基準アイテムが今は12個ということです。

以下に図表で説明します。


以下に自衛隊の個人傾向衛生品の詳細を掲載します。驚くべきことがわかります。


国際活動等の装備としては8つのアイテムがあるのですが、平素の装備(国内用)は3つのアイテムしかありません。何と救急品袋、止血帯、救急包帯だけです。震災のときなど、米軍をもうならせるほどの展開能力をみせたほどの、底力を見せつけた陸上自衛隊ですが、普段の個人傾向のファースト・エイドはこのようなお粗末さです。

東日本大震災の時も、個人が携行したのはこのような貧弱な装備だったと思います。無論、他の装備は別に持たせたのでしょうが、それにしてもあまりに貧弱です。

これは、ほんの一例ですが、現在の自衛隊の置かれて立場を象徴的に現していると思います。他にも自衛隊装備の貧弱さをあらわすものがあります。

たとえば、トイレットペーパーです。全国の自衛隊駐屯地でトイレットペーパーは2ロール目から自腹です。


上の写真は、陸上自衛隊駐屯地のトイレのものです。 悲しいのですが、これが現状なのです。これでは、緊急時に対処できません。常に有事に備えるのが自衛隊のはずです。憲法改正も、有事法制も必要ですが、もっと切迫した有事にも備えて欲しいです。 自衛官自身が有事に常に備えてトイレットペーパーを携行せよという事なのでしょうか?

さらには、射撃訓練をするために予算を削られている陸上自衛官は、平均して年間200発も射撃訓練をしていないそうです。これはアメリカ軍楽隊以下の水準です。

以上のようなことは、他にもいくらでもあります。代表的な例をあげただけです。これに対処するにはどうしたら良いのでしょうか。それは、無論のこと予算を多くすることです。

これらのことは憲法を変えないとできないことなのでしょうか。

訓練費も定足数も、同じ話です。これらを充足するためには、憲法どころか、法律の改正すらいらないです。

必要なものを必要と主張すればよいのです。堂々と財務省主計局に予算請求すればよいのです。しかし、防衛省自衛隊関係者の前では、予算の話はタブーなのです。どこの省庁も、もはや錦の御旗と化している「財政健全化」を持ち出されたら、予算支出の増額を言いにくくなるのですが、官界では最弱小官庁の防衛省自衛隊は主計局の前では蛇に睨まれた蛙に等しいのです。

安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。

トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。

これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。

しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。

防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。

平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。

憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。

世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。

できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。

彼らは沖縄の戦略的な重要性を知っており、米軍が撤退しないことも知っています。仮に撤退しても自衛隊が代わりにその隙間を埋めることを知っています。しかし、憲法典が代わると、途端に日本は侵略戦争を開始し、国内では憲兵隊が個人の自由を著しく制限するようになるというファンタジーを信奉しているようです。

沖縄の基地反対運動
右も左も、手間がかかり、地味な改革には見向きもせず、簡単には実現しもそうもないことを実現しようと、大きなスローガンを掲げて、声を張り上げているほうが楽だし、楽しいし、金が儲かるのでしょう。民進党などの野党にもそのような傾向があります。

やっていることや主張は少なからずプロ市民や観念に凝り固まった非現実的な左翼と大同小異です。こういう手合いに限って自衛隊を美化礼賛し、自衛隊は常に正しい、という無謬論を唱えます。

防衛省、自衛隊に問題があるとするならばそれは憲法が悪いからだと、問題を矮小化してしまいます。このようなことで、本当に憲法が改正できるのでしょうか。いろいろなできることをやった上で、これ以上変えるためには憲法を変えるしかないと主張するのが筋なのではないでしょうか。

このように、無邪気に憲法が変わればすべてが変わると、主張する単純な人たちが憲法を変えようと主張することは極めて危険です。憲法典が変われば、すべてが変わると考えるのは、ファンタジーに過ぎません。

憲法改正ももちろん大事でしょうが、我々はもっと地道な努力をすべきです。ブログ冒頭の、安倍総理のビデオメッセージは確かに、立派です。しかし、安倍総理が憲法を改正するにしても、その前にできることをしなければ、無意味になってしまいます。

憲法典が改正されたとしても、自衛隊のトイレットペーパーの個人負担や、ファーストエイドキットがまともになったり、射撃訓練がまともにできるようならなければ、何も変わらないのです。

安倍総理には、これらの地道な努力を重ねていった上で、最終的に憲法を改正するという道を歩んでいただきたいです。

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2017年3月4日土曜日

米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?

米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声

与野党のベテラン議員が「日米同盟の片務性」を批判


米国・ワシントンD.C.の国会議事堂。米国議会で日米同盟の片務性を批判する声が高まってきた
 米国のトランプ政権は日米同盟の堅持と尖閣諸島の共同防衛を確約している。その一方でこのほど、民主党の有力議員が米国議会で“日本は憲法を改正しない限り米国の公正な同盟パートナーにはなれない”“現状では米国は尖閣を防衛すべきではない”という主張を表明した。

 日本側の憲法が原因とされる日米同盟の片務性は、これまで米国側から陰に陽に批判されてきた。だが、これほど真正面からの提起も珍しい。日本側としても真剣に受け止めざるをえない主張だろう。

中国の無法な膨張が議題に

 2月28日、トランプ大統領による議会両院合同会議での初演説の数時間前に、米国議会下院外交委員会の「アジア太平洋小委員会」が公聴会を開いた。アジア太平洋小委員会は、日本や中国などアジア・太平洋地域の諸課題を審議している。

 新政権下では第1回となるこの公聴会は「中国の海洋突出を抑える」という名称がつけられていた。南シナ海と東シナ海における中国の無法な膨張を米国はどう抑えるべきかが審議の主題だった。

 委員会は、テッド・ヨホ議員(共和党)を議長に、共和、民主両党の議員たちがメンバーとして並び、シンクタンクなどから証人として招いた3人の専門家の見解を聞きながら議論を進めていくという方式である。

 私は、南シナ海や東シナ海での中国の横暴で威嚇的な行動をトランプ政権下の新議会がどう捉えているのかが分かるのではないかと期待して、出かけていった。

2人のベテラン議員が日本の現憲法を問題視

 公聴会ではまず議長のヨホ議員が、中国の南シナ海での人工島造成や軍事基地建設を膨張主義だとして非難し、中国による東シナ海での日本の尖閣諸島領域への侵入も米国の同盟国である日本への不当な軍事圧力だと糾弾した。

 そのうえで同議員は、オバマ政権下の米国のこれまでの対応が中国をまったく抑えられなかったと指摘し、日本などの同盟国と連帯して対中抑止態勢を構築することを提唱した。その前提には、トランプ政権が日米で尖閣を共同防衛する意思を表明していることがもちろん含まれていた。

 ところがこの委員長発言の直後、民主党を代表して発言したブラッド・シャーマン議員が驚くほど強硬な語調で日本を批判したのである。

ブラッド・シャーマン民主党議員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「トランプ政権が日本の施政下にある尖閣諸島の防衛を約束したことには反対する」

 中国の海洋進出を非難する前にトランプ新政権の対日安保政策に反対を唱える発言に、私は驚かされた。シャーマン議員はさらにショッキングな発言を続けた。

「日本は憲法上の制約を口実に、米国の安全保障のためにほとんど何もしていない。それなのに米国が日本の無人島の防衛を膨大な費用と人命とをかけて引き受けるのは、理屈に合わない。日本側はこの不均衡を自国の憲法のせいにするが、『では、憲法を変えよう』とは誰も言わない」

 「2001年の9.11同時多発テロ事件で米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦した。だが、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する政治家が1人でもいただろうか」

 シャーマン議員は公聴会の満場に向けてそんな疑問を発すると同時に、日本やアジアに詳しい専門家の証人たちにも同じ質問をぶつけた。

 シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選11回のベテランである。民主党内でもかなりのリベラル派として知られる。そんなベテラン議員が、日米同盟が正常に機能するためには日本の憲法改正が必要だと主張しているのである。

 シャーマン議員の主張の言葉を継いだのが共和党の古参のデーナ・ローラーバッカー議員だ。ローラバッカー議員もカリフォルニア州選出で当選13回である。中国に対して厳しい構えをとることで知られ、国務長官候補として名前が挙がったこともあった。同議員は次のように発言した。

デーナ・ローラーバッカー議員
「確かに日本の憲法が日米同盟の公正な機能を阻んでいる。だが、安倍晋三首相は憲法改正も含めて日本の防衛を強化し、同盟を均等にしようと努めている。それに、アジアで中国に軍事的に対抗する際、本当に頼りになるのはまず日本なのだ」

 ローラバッカー議員もやはり日本の現行憲法が日米同盟の双務性を阻み、本来の機能を抑えていると認めている。

 両議員に共通するのは、日本の現憲法が日米同盟を歪めているので、改正した方がよい、という認識である。特にシャーマン議員は、米国の尖閣防衛誓約を日本の憲法改正と交換条件にすべきと述べているのにも等しい。

日本の防衛費抑制も批判

 証人たちが発言する段階になっても、シャーマン議員は再び「日本の防衛努力の不足」を指摘した。そして、防衛費の対GDP比も持ち出してきた。

  「米国などが国際的な紛争を防いで平和を保とうと努力する一方で、日本は血も汗も流さない。憲法のせいにするわけだ。日本の防衛費はGDPの1%以下だ。米国は3.5%、NATO加盟諸国は最低2%にするという合意がある」

 そのうえでシャーマン議員は「日本が防衛費をGDPの1%以内に抑えているのは、やはり憲法上の制約のためなのか」と証人たちに質問をぶつけていた。

 トランプ氏は選挙期間中に日米同盟の片務性を批判していたが、先日の日米首脳会談における友好的な対応から、日本側には安心感が生まれたようだ。だが、議会ではこのように民主党と共和党のベテラン議員が揃って日本非難を打ち出している。米国の超党派の議員から、日本の現憲法や防衛費に対する批判が表面に出てきたという現実は深刻に受けとめねばならないだろう。

【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?

米国はご存知のように、大統領制の国です。日本では、米国の大統領は強力な権限を持っていると考えている人が多いようで、トランプ氏の行動や発言に振り回される人も多いようです。

米国は日本と異なり共和制の国です。共和制とは君主制と対になる言葉で、君主ではない人物が国家元首となる制度のことを指します。米国は共和制でかつ民主主義の国ですから、国家元首は民主的な手続きによって選ばれることになります。こうして選ばれたリーダーが合衆国大統領です。ちなみに日本や英国は君主制で、かつ民主主義の国ですから、国家元首である君主に実質的な権限はなく、選挙で選ばれた首相が権力を行使する形になります。

トランプ大統領
大統領を国家元首とする国の中には、大統領は国を代表するだけで、行政府の長としての実質的な権力は持たせない国と、名実ともに行政府の長としてすべての権限を大統領に与える国に分かれます。大統領が名誉職的な存在となっている国としてはドイツが有名ですが、米国の場合、行政権のほぼすべてが大統領に集中しています。したがって、米国の大統領はまさに絶大な権力を握っていることになります。

では米国の大統領は、あらゆる権力を行使できる万能のリーダーなのかというとそうではありません。米国は、厳格な三権分立制度を採用しており、行政、立法、司法の権限が完全に分離しています。行政府の長である大統領は選挙によって国民から選ばれますから、議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できます。しかし、立法に関する権限は一切持っておらず、大統領は議会が作った法律に従って行政権を行使するしかありません(拒否権を発動することは可能)。

これに対して日本や英国は議院内閣制を採用しており、首相は国会議員の中から選ばれ、内閣は国会に対して責任を負っています。日本の場合には毎年の予算について、行政府が予算案を提出し、議会はそれを審議するという立場ですが、米国の場合、行政府に予算の提出権はありません。大統領は予算教書という形で要望を議会に告げるだけで、実際の予算に関する権限は議会が握っています。

また、戦争を遂行する権利も実は大統領は保有していません。米国の大統領は軍隊の最高指揮官ですが、宣戦布告を行う権利は議会に付与されており、大統領が戦争を遂行するには、議会からの「授権」が必要です。このように米国では、三権分立が明確になされてまいす。

残念なことに、我が国では小学校から大学まで、三権分立が近代法治国家に共通する普遍的な憲法上の原理」であるかのように教えています。それは間違った常識です。

三権分立とは、モンテスキューというフランスの哲学者が、ジョージ3世(在位1760~1820年)時代のイギリスを「おお、三権分立だ、すばらしい!」と勘違いして発明してしまった概念です。

モンテスキュー
本人は「発見」したと思い込んでいましたが、それはモンテスキューの頭の中で作り上げられた妄想に過ぎませんでした。

三権分立をまともに実行してしまっている国は、世界の文明国の中でアメリカ合衆国ただ1国です。そうして、いつまでたってもモンテスキューの母国でもあるフランスを含む、他の文明国がアメリカの真似をしないのは、三権分立が欠陥制度だからです。

そうして、アメリカ大統領は「世界“最弱”の権力者」とも言われています。アメリカ大統領が最弱、特に平時には最弱であることは世界の比較憲法学の常識です。ただし、議会が戦争をすることを受け入れた場合には、戦争を遂行するために権限が大統領に集中するようになっています。

そのため、日本などでは多くの人が戦争時の米国大統領のように、平時でも大統領に強力な権限が集中していると考えるのだと思います。でも現実は違います。米国大統領は、平時には世界で最弱の権力者なのです。ただし、これは米国自体の国力などとは別問題です。あくまで、米国の大統領は、他国と権力者と比較すれば、相対的に権力が弱いということです。

だから、日本の憲法改正に関する議論でも、トランプ大統領の発言よりも、米国議会の動きのほうが、影響は大きいのです。これを理解してないと、このブログ冒頭の記事の内容も良く理解できないかもしれません。

さて、米国議会での日本の憲法改正論議については、今から6年ほど前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?
1946年(昭和21)2月13日、外相官邸で行われた日米会談の席で、政府の
「憲法改正要綱」は、あまりに保守的内容であるとして拒否され、GHQ起草の
案(マッカーサー草案)が提示された。この草案は、GHQ民政局部内で
極秘裏に起草されたもので、主権在民・象徴天皇制戦争放棄などを
規定していたため、政府側に大きな衝撃を与えた。 
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部分のみ引用します。
米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。 
この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。 
日本の憲法を改正するか否かはあくまで日本独自の判断によるというのが正論である。だが、日本の防衛が米国という同盟パートナーに大幅に依存し、しかも日本の憲法がかつて米国側により起草されたという事実を見れば、どうしても米国の意向が重視されてきた側面は否めない。 
つまり、日本で改憲を考えるに当たっては、米国が改憲に賛成なのか、反対なのかが、どうしても大きなカギとなってきたのである。
・・・・・・・・〈中略 〉・・・・・・・・
今後の世界は、しばらくは、米国、日本、中国、EU、ロシアという5カ国のバランス・オブ・パワーで成り立ち、平和を維持していく体制になります。そうでなければ、世界の平和は維持できません。この体制を築かなければ、いずれバランスが崩れて、また、大きな戦争が勃発するかもしれません。これが、厳しい世界の現実です。この現実には、憲法9条など、何の意味も持ちません。 
上の記事は、まさしく、アメリカ議会がその事実に気づいたことの査証であるととらえるべきです。さて、この現実に、日本政府は、そうして日本国民はどのように対処するのでしょうか? 
憲法を改正して、パランス・オブ・パワーの一角を担う覚悟がなけば、いずれ選択できる道は二つしかありません。それは、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になることです。いますぐ、ということはないでしょうが、今後10年以内には、おそらくどちらかの道を選ばざるをえない状況に追い込まれます。あなたは、どの道を選びますか?

しかし、私達としても、当然のこととして、どらの道も選びたくはありません。であれば、憲法を改正して、バランス・オブ・パワーの一角を担うしかありません。
日本が米国の要請よって、憲法を変えるなどということになれば、日本としてもただ変更するというのではなく、当然のことながら、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらかなった頃の関係に近いものに戻すことを条件とすべきです。

このようなことをいうと、そんなことは全く不可能と思われるかもしれませんが、私はそうでもないと考えます。なぜなら、米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えているからです。

そもそも、ルーズベルトが全体主義のソ連と手を組んだことが間違いの始まりだったとしています。こういう米国保守本流の考え方からすれば、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらなかった頃の関係に戻すという考えは受け入れやすいかもしれません。

スターリン(左)とルーズベルト(右)
ただし、大東亜戦争前と現在とでは国際情勢が違いますから、全くその頃と同じということてはできません。しかし、日本としてはまずは国連の常任理事国入りは当然の前提条件とすべきです。

そうして、日本が自主防衛をするようになってにしても、日米の同盟関係は維持するという条件も前提条件とすべきでしょう。そうして、日米同盟の双務性を堅持すことも条件とすることは当然のことです。

その上でなら、米国による要請も受け入れて良いと思います。ただし、自分の国を自分で守ること、すなわち防衛戦争をできるようにすることや実際にすること自体は、米国とは関係なく、本来独立国としては、当然のことです。これができないというのは、日本は未だ独立国ではないという証です。

ただし、米国議会の日本に対して憲法改正圧力は、日本にとって憲法改正にはずみをつけるということから、日本政府は大いに利用すべきものと思います。

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2015年12月17日木曜日

「ダブル選」大予測 自公の圧勝、野党は壊滅…おおさか維新協力なら憲法改正も ―【私の論評】与党圧勝の真の背景はこれだ(゚д゚)!


安倍首相(左)は、憲政史上3度目の衆参ダブル選挙に踏み切るのか。
民主党の岡田克也代表(右)は、「一強自民」にどう立ち向かうのか

 来年夏の参院選が、衆院選との「ダブル選」になる可能性が出てきた。実現すれば1986年以来、30年ぶりとなるが、注目の結果はどうなりそうか。選挙予測に定評のある政治評論家の浅川博忠氏にシミュレーションを依頼したところ、自民、公明与党が衆院で3分の2以上を確保し、参院でも3分の2に迫るという結果が出た。安倍晋三政権と気脈を通じる「おおさか維新の会」が自公両党に協力すれば、参院でも3分の2を超え、いよいよ憲法改正も視野に入ってきそうだ。

 「参院選では32の1人区が主戦場で、必然的に『与党』対『野党』の構図となる。参院選が単独で行われれば、野党共闘が進みやすい。だが、小選挙区が295と数が多く、各党が激しく戦う衆院選とのダブルとなれば、野党は共闘しづらい。ダブル選は構造的に与党に有利となる」

 浅川氏は、参院選単独とダブル選の違いについて、こう語った。

 衆参ダブル選の環境が整いつつある。

 自公両党は2017年4月の消費税10%への引き上げの際、食料品全般を軽減税率の対象にすることで合意した。安倍首相は自民党内の反対論を封じ込め、公明党の主張を受け入れた。ダブル選に否定的な友党を懐柔する狙いを感じさせる。

 一方の野党共闘は、ほぼ足踏みしている。共産党主導の「国民連合政府」構想も、民主党と維新の党の新党構想も、党内外の抵抗感が根強い。

 浅川氏も「安倍首相が、ダブル選を仕掛ける可能性が高まっている。政党支持率でも『自民党1強』、自民党内でも『安倍1強』というダブル1強体制で選挙に臨むのではないか」という。

 注目のシミュレーションは別表の通りだ。


政権を選択する衆院選では、自民党が現有議席(衆院議長含む)を15議席も上回る圧勝となった。2014年の前回選挙で取りこぼした選挙区で巻き返し、比例代表でも堅調な伸びを見せた。

 支持母体が強固な公明党は現有維持で、与党で342議席に達し、3分の2を優に超えた。

 浅川氏は「自公圧勝の流れは明白だ。ダブル選後、安倍首相は中曽根康弘元首相のように総裁任期の延長を勝ち取り、20年東京五輪を首相として迎えるだろう」と語った。

 対照的に野党は壊滅状態だ。岡田克也代表率いる民主党は現有議席より8議席減となり、維新の党も3議席減となった。

 浅川氏は「民主党と維新の党が合併したとしても、効果は限定的だ。両党は野党でありながら、『いかに議席を減らさないようにするか』という守りの選挙を強いられる。展望がない」との見方を示す。

 野党で唯一、気を吐くのは共産党で、「地方選の結果が軒並み好調だ。安倍政権に対するブレーキ役とみられている」(浅川氏)。




 「良識の府」を選ぶ、参院選はどうか。

 自民党は改選議席を大きく上回る69議席で、公明党は1議席上乗せした。非改選を含めれば、自民、公明両党だけで155議席を確保し、3分の2(162議席)に限りなく近づいた。

 野党は厳しい。

 民主党は、改選議席の半分も確保できない。浅川氏は「1人区で全敗し、複数区でも取りこぼしが出てくる。連合もかつてのようには動かない」と分析する。

 自公両党の議席に、安倍首相と波長が合う大阪市の橋下徹市長が立ち上げた、おおさか維新の会(10議席)を加えれば、参院でも3分の2を上回り、憲法改正が目前に迫ってくる。

橋下徹氏

橋下氏は、軽減税率をめぐる与党合意が確実となった10日、安倍政権を「凄すぎる」と絶賛し、「これで完全に憲法改正のプロセスは詰んだ」とツイッターに書き込んだ。12日の会合でも「来夏の参院選が勝負。自民、公明、おおさか維新で3分の2を獲得して憲法改正を目指す」と語ったと報じられた。後任代表となった大阪府の松井一郎知事も、参院選の争点に憲法改正を掲げるという。

 浅川氏は「安倍首相は『憲法改正のために政治家になった』と言っても過言ではない。男子の本懐を実現するため、安倍首相はダブル選後、おおさか維新の会を連立政権入りさせ、橋下氏を閣僚に起用する選択肢もある」と予想した。

 過去2回のダブル選でもみられた「自民党圧勝」「野党惨敗」だが、安倍首相の決断のカギは何か。野党に逆転の秘策はないのか。

 浅川氏は「決断の前提は、直前の景気の状態と、50%前後の内閣支持率だろう」「このシミュレーションに『消費増税の先送り』『橋下氏の衆院選出馬』という要素が加われば、与党とおおさか維新の会がさらに議席を伸ばす可能性がある」といい、「野党としては、来年の通常国会でメリハリの効いた経済政策の『対案』を示し、政権担当能力をアピールすれば流れは少しは変わる」と語った。

【私の論評】与党圧勝の真の背景はこれだ(゚д゚)!

選挙予測に定評のある政治評論家の浅川博忠氏
上記の淺川氏のシミレーション、残念ながら結果だけが示され、どうして上記のようなものになったのか、説明がないのが残念です。

そこで、どうして淺川氏がこのような結果を出したのか、私なりに推理してみたいと思います。

まずは、民主党をはじめとする野党の大部分が、安保法制に大反対したことがあげられます。ここで過去を振り返ると、60年代安保、70年代安保で国会前でデモをした人々は、確かにかなりの人数でしたが、それでも国民のごく一部ということには変わりありませんでした。

特に学生のデモなどは、当時は大学生の数は少なく、 同世代の人々のうち大学生は30%未満であり、今から比較すると、エリート層であるこことは間違いなく、それらのデモを同世代の大多数の人は、苦々しく見ていたという記録が残っているくらいです。

そうして、これらの熱狂的デモは結局実を結ぶことはなく、安保法案は成立しました。そうして、自民党政権も継続しました。

その後、1990年代には、PKO法案が国会で審議されたときは、すでに学生の数も従来よりはかなり増えて、もはやエリート層ともいえなくなっていましたが、学生も含めた大きなデモが繰り返されました。

ところが、その直後の選挙では、社会党が凋落して、その後解党の憂き目を見ました。2000年代当初には、安保は大きな争点とはなりませんでした。

その間隙を縫うように、民主党が政権交代をし、三年間民主党政権が続きましたが、その後安倍自民党にとって変わられました。

安保が大きな論点となっていないとき、まさに民主党政権が成立しました。その後、2012年の選挙で安倍自民党が大勝利して、また自民党政権に戻りました。

以上のように、安保関連で与野党が悶着を起こした直後の選挙では、野党は衰退する傾向がみられます。

ご存知のように、今年の夏は、安保法案をめぐって、与野党が国会で長期間にわたり大バトルを繰り広げました。野党は、「戦争法案」などとレッテル貼りをし、それに新聞や、テレビなどが尻馬にのって、連日「戦争法案反対」のデモなどが報道されました。

テレビ・新聞の大攻勢により、多くの人がこれに引きずられ、いっとき安倍政権の支持率は落ちましたが、現在安倍政権の支持率はまたあがりはじめています。これは、テレビや新聞の報道により、安倍政権不支持になった人たちが、安保法案反対の熱狂が冷めたあと、今回の安保法案のが決して戦争法案ではないこと、ほとんど全部の野党は単に反対するだけで、対案出すこともなく、無責任であったことに気づきつつあるのだと思います。

上記のように国会で安保が大きな争点になったあとには、かつて社会党が解党の憂き目にあったのは、実は日本では安保は非常に安易に争点にしやすいということがあると思います。野党に能力がないため、社会や経済を良くするための政策論議をすることができないため、自分たちの正当性を主張するため、安易な安保に安易な姿勢で取り組み、その安易な姿勢を見透かされ、その後選挙で大敗するというのが、過去の図式だったのではないかと思います。

そうして、来年の選挙でも、それが繰り返されるのだと思います。実際、最大野党の民主党は、何らまともな政策を打ち出していません。こんなことは、すぐに国民に見透かされてしまいます。だからこそ、選挙になれば大敗することになると、淺川氏は踏んでいるのだと思います。

もう一つ、大きいのは、安倍総理が最近二回も財務省に大勝しているという事実があります。その前に、財務省のあり方を振り返っておきます。財務省は旧大蔵省のときから、役所の中の役所として、大きな権力を持ち、まるで政治集団でもあるかのような振る舞いをしてきました。

結局、予算が当たらなければ、いくら良い政策を提案をしても、政府も、政治家も、財務省以外の省庁も何もできません。その予算の大元を握っていたのが、旧大蔵省であり、現在の財務省です。ご存知のように、旧大蔵省は、日銀と財務省に分離されましたが、それでも財務省は何かと日銀に対して権力を振るっていました。

そうして、その絶大な権力は、大蔵省から財務省にも引き継がれ、本来財務省は、政府の一下部機関に過ぎないにもかかわらず、税金の配賦に大きな影響力持っているため、政治家や他省庁に対しても大きな圧力で権勢をふるってきました。

そうして、財務省益再優先で、政治に深く関与してきました。一番最近では、平成13年度における8%大増税キャンペーンです。このとき、財務省は、多くの政治家はもとより、他省庁、有識者、マスコミに対してあたかも政治集団のように振る舞い、あるゆる手段を講じて圧力をかけ、安倍総理の本意を翻して、8%増税を決めざるを得ない状況に追い込み、とうとう8%増税が実行されてしまいしまた。

その後8%増税が導入され、多くの識者が語っていたように、その影響は軽微なものではなく、昨年はマイナス成長になり、今年も第一四半期はマイナス、第二四半期も速報値でマイナス、実測値でかろうじてわずかのプラスという状況で推移しています。

8%増税が大失敗なのは明らかなのに、財務省は10%増税を最初の予定どおり実施するため、再度増税大キャンペーンをはじめました。そうして、日本においては、過去においてはあからさまに旧大蔵省や、財務省に逆らった総理大臣はかつていなかったので、財務省はそのまま、増税に踏み切れると踏んでいました。

しかし、見事に番狂わせか生じました。そうです。昨年の暮れ近くになって、安倍総理は、衆院の解散総選挙を決断し、「1 0%増税の見送り」も公約として、総選挙を実施し、大勝利を収めました。

安倍総理の解散表明に対してマスコミは「大義なき解散」と
ネガティブキャンペーンを張った。青山繁晴氏はこのマスコミの動きに注意を促したし

安倍総理は、初めて財務省の意向に従わず、財務省の目論見を粉砕した日本初の総理大臣になったのです。これは、財務省にとっては、青天の霹靂であり、財務省の初めての大敗北です。

安倍総理の財務省に対する戦いはこれだけではありません、つい最近では、軽減税率を巡るバトルで、財務省を完膚なきまでに打ち負かしてしまいました。

これについては、最近このブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
軽減税率をめぐる攻防ではっきりした財務省主税局の「没落」―【私の論評】財務省の大惨敗によって、さらに10%増税は遠のいた(゚д゚)!
攻防の第1幕は安倍官邸の「谷垣」不信から始まった
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、軽減税率をめぐる政府・与党内の攻防が、首相・安倍晋三、官房長官・菅義偉による官邸の勝利に終わったことを掲載しました。そうして、それは財務省の完膚なきまでの大惨敗であることを検証しました。

これで、安倍総理は財務省に対して、二勝一敗という勝率になったということです。しかも、今回の軽減税率のバトルでは、選挙という伝家の宝刀を使わなくても完勝しました。

この意味するところは、安倍総理に対して財務省が束になって、挑んだにしても負けるかもしれないということです。今回の軽減税率も日本の政治においては、画期的な意味があると思います。

本来、政治主導であれば、財務省などが政治グループのように各方面に圧力をかけるのは間違いですが、日本では財務省の官僚の力が強く、官僚主導になっていたのですが、その一角が崩れたということです。

次の選挙では、安倍総理が、10%増税見送りを公約にして、衆参両院同時選挙に挑み、大勝利すれば、財務省を完膚なきまでに、打ち負かすことができます。

財務省に打ち勝つことができるということは、日本では政治の世界では、敵なしということです。現状の無能な野党では、財務省にはほとんど歯が立ちません。野党に全く歯がたたない野党に、打ち勝つことができる安倍総理は、次の選挙で衆参同時選挙で、大勝するのは間違いないと思います。

こんなことを掲載すると、「安倍一強」などと批判をする人もいるかもしれません。しかし、それは見立て違いです。まずは、時の政権が財務省よりも権力が強いのは、政治主導という立場からいえば、当然のことです。今までがおかしかったのです。

それに、財務省に全く歯が立たない野党も情けないです。特に、民主党などは、政権与党だったとき、財務省に歯が立たないどころか、手のひらで弄ばれただけです。他の野党も、そうです。財務省に正面きつて、意義を唱えるようでなければ、安倍政権にも歯がたたないのは当然のことです。安倍自民党が強いのではなく、野党が弱すぎるのです。

その後に、安倍総理は、財務省解体に挑むことになると思います。さらに、日銀法改正に挑むことでしょう。その後に、憲法改正にも挑戦すると思います。

まずは、経済をどうにかしなければ、国民は納得しないと思います。経済がまともになれば、憲法改正はかなりやりやすくなると思います。

まさに、財務省を完膚なきまでの敗北に追い込んだ、安倍総理に怖いものなしということで、来年の衆参同時選挙に安倍総理は間違いなく大勝利を収めることでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年8月15日金曜日

終戦の詔勅 (玉音放送)―【私の論評】憲法改正を議論し考える上で、戦後の日本の始まりを規定した「玉音放送」こそ最も参照すべきものであるべきだ(゚д゚)!

終戦の詔勅 (玉音放送)



終戦の詔勅原文
朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ 

抑々帝国臣民ノ康寧ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々惜カサル所曩ニ米英二国ニ宣戦セル所以モ亦実ニ帝国ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他国ノ主権ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戦已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海将兵ノ勇戦朕カ百僚有司ノ励精朕カ一億衆庶ノ奉公各々最善ヲ尽セルニ拘ラス戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ残虐ナル爆弾ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所真ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戦ヲ継続セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ心霊ニ謝セムヤ是レ朕カ帝国政府ヲシテ共同宣言ニ応セシムルニ至レル所以ナリ 

朕ハ帝国ト共ニ終始東亜ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ対シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝国臣民ニシテ戦陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内為ニ裂ク且戦傷ヲ負イ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ惟フニ今後帝国ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス

朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ乱リ為ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク挙国一家子孫相伝ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ体セヨ

【私の論評】憲法改正を議論し考える上で、戦後の日本の始まりを規定した「玉音放送」こそ最も参照すべきものであるべきだ(゚д゚)!

本日8月15日は69回目の終戦記念日。69年前の正午、昭和天皇の玉音放送によって当時の国民は終戦を知りました。玉音放送というと、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」のくだりが有名だが、その続きまで覚えている人は多くないでしょう。

玉音放送は、終戦の日が近づくとテレビなどでも断片的に、流されたりしますし、テレビドラマや、映画などでも流されることがあります。

私自身も、このブログは長きにわたって運営してきましたが、今思い返すとこの玉音放送そのもを掲載したことは一度ありません。

玉音放送は、1945年8月14日に発布され、昭和天皇が録音。翌15日正午にラジオで放送されました。

本日の終戦記念日にあたって、玉音放送の現代語訳を紹介させていただきます。

御署名原本「大東亜戦争終結ノ詔書」 の一頁目


終戦の詔勅現代語訳
世界の情勢と日本の現状を深く考えた結果、緊急の方法でこの事態を収拾したい。忠実なあなた方臣民に告ぐ。

私は、「共同宣言を受け入れる旨をアメリカ、イギリス、中国、ソビエトの4カ国に伝えよ」と政府に指示した。

日本臣民が平穏無事に暮らし、全世界が栄え、その喜びを共有することは歴代天皇が遺した教えで、私も常に心に持ち続けてきた。アメリカとイギリスに宣戦布告した理由も、日本の自立と東アジアの安定を願うからであり、他国の主権や領土を侵すようなことは、もともと私の思うところではない。

だが戦争は4年も続き、陸海将兵の勇敢な戦いぶりも、多くの官僚の努力も、一億臣民の奉公も、それぞれが最善を尽くしたが戦況はよくならず、世界情勢もまた日本に有利ではない。その上、敵は新たに、残虐な爆弾を使用して多くの罪のない人を殺し、被害の及ぶ範囲を測ることもできない。このまま戦争を続ければ、日本民族の滅亡を招くだけでなく、人類の文明も破壊してしまうだろう。

そんなことになってしまえば、どうやって私は多くの臣民を守り、歴代天皇の霊に謝罪すればよいのか。これが、私が政府に共同宣言に応じるように命じた理由だ。

私は、東アジアの解放のために日本に協力した友好国に対して、遺憾の意を表せざるを得ない。戦地で命を失った者、職場で命を失った者、思いがけず命を落とした者、またその遺族のことを考えると、身も心も引き裂かれる思いだ。戦争で傷を負い、被害にあって家や仕事を失った者の生活についても、とても心配だ。

これから日本はとてつもない苦難を受けるだろう。臣民のみんなが思うところも私はよくわかっている。けれども私は、時の運にも導かれ、耐えられないことにも耐え、我慢できないことにも我慢し、今後の未来のために平和への道を開いていきたい。

私はここに国体を守ることができ、忠実な臣民の真心を信じ、常に臣民とともにある。感情の赴くままに問題を起こしたり、仲間同士で排斥したり、時局を混乱させたりして、道を外し、世界からの信用を失うことは、私が最も戒めたいことだ。

国がひとつとなって家族のように団結し、日本の不滅を信じ、責任は重く、道は遠いことを心に留め、総力を将来の建設のために傾け、道義を大切にし、固くその考えを守り、国体の本質を奮い立たせ、世界の流れから遅れないようにしなさい。

あなた方臣民は、これらが私の意志だと思い、実現してほしい。

戦前の天皇陛下は、何世紀も権威の中心として実権を持たず、その連続性が重視されており、伝統的に直接国政に関わることはありませんでした。これは、現在もそうですが、戦前もそうでした。しかしながら、昭和天皇陛下が、危急存亡の日本の方向性について決定的な決断をしたのが、この終戦の詔勅でありました。これにより戦争が終結し、戦後が始まったといえます。

玉音放送を聞いているグアム島の日本兵捕虜
(1945年8月15日 撮影: Marion Doss)


そして、この詔勅に書かれている言葉や考えは、ポツダム宣言受諾による占領前に表明されたものであり、まさに日本そして日本人のものであるといえます。

であれば、この玉音放送は、日本の戦後、現在そして今後を考える上で、その土台とすべきものといえます。

現在の憲法改正論議は、日本国憲法が、時代や社会の変化との食い違いが生まれ、その制定過程においてアメリカから「押し付けられたものである」などという理由から起こっています。

すでに、自民党の日本国憲法改正草案(2012年4月)、産経新聞の「国民の憲法」要綱(2013年4月)、評論家の東浩紀らのゲンロン憲法委員会による「新日本国憲法ゲンロン草案」(2012年7月)、民主党の憲法9条の改正案(2013年9月)などさまざまな改正案が作成されています。

しかしながら、私は憲法改正を議論し考える上で、戦後の日本の始まりを規定した「玉音放送」こそ最も参照すべきものであるべきだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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