安倍首相(左)は、憲政史上3度目の衆参ダブル選挙に踏み切るのか。 民主党の岡田克也代表(右)は、「一強自民」にどう立ち向かうのか |
来年夏の参院選が、衆院選との「ダブル選」になる可能性が出てきた。実現すれば1986年以来、30年ぶりとなるが、注目の結果はどうなりそうか。選挙予測に定評のある政治評論家の浅川博忠氏にシミュレーションを依頼したところ、自民、公明与党が衆院で3分の2以上を確保し、参院でも3分の2に迫るという結果が出た。安倍晋三政権と気脈を通じる「おおさか維新の会」が自公両党に協力すれば、参院でも3分の2を超え、いよいよ憲法改正も視野に入ってきそうだ。
「参院選では32の1人区が主戦場で、必然的に『与党』対『野党』の構図となる。参院選が単独で行われれば、野党共闘が進みやすい。だが、小選挙区が295と数が多く、各党が激しく戦う衆院選とのダブルとなれば、野党は共闘しづらい。ダブル選は構造的に与党に有利となる」
浅川氏は、参院選単独とダブル選の違いについて、こう語った。
衆参ダブル選の環境が整いつつある。
自公両党は2017年4月の消費税10%への引き上げの際、食料品全般を軽減税率の対象にすることで合意した。安倍首相は自民党内の反対論を封じ込め、公明党の主張を受け入れた。ダブル選に否定的な友党を懐柔する狙いを感じさせる。
一方の野党共闘は、ほぼ足踏みしている。共産党主導の「国民連合政府」構想も、民主党と維新の党の新党構想も、党内外の抵抗感が根強い。
浅川氏も「安倍首相が、ダブル選を仕掛ける可能性が高まっている。政党支持率でも『自民党1強』、自民党内でも『安倍1強』というダブル1強体制で選挙に臨むのではないか」という。
注目のシミュレーションは別表の通りだ。
政権を選択する衆院選では、自民党が現有議席(衆院議長含む)を15議席も上回る圧勝となった。2014年の前回選挙で取りこぼした選挙区で巻き返し、比例代表でも堅調な伸びを見せた。
支持母体が強固な公明党は現有維持で、与党で342議席に達し、3分の2を優に超えた。
浅川氏は「自公圧勝の流れは明白だ。ダブル選後、安倍首相は中曽根康弘元首相のように総裁任期の延長を勝ち取り、20年東京五輪を首相として迎えるだろう」と語った。
対照的に野党は壊滅状態だ。岡田克也代表率いる民主党は現有議席より8議席減となり、維新の党も3議席減となった。
浅川氏は「民主党と維新の党が合併したとしても、効果は限定的だ。両党は野党でありながら、『いかに議席を減らさないようにするか』という守りの選挙を強いられる。展望がない」との見方を示す。
野党で唯一、気を吐くのは共産党で、「地方選の結果が軒並み好調だ。安倍政権に対するブレーキ役とみられている」(浅川氏)。
「良識の府」を選ぶ、参院選はどうか。
自民党は改選議席を大きく上回る69議席で、公明党は1議席上乗せした。非改選を含めれば、自民、公明両党だけで155議席を確保し、3分の2(162議席)に限りなく近づいた。
野党は厳しい。
民主党は、改選議席の半分も確保できない。浅川氏は「1人区で全敗し、複数区でも取りこぼしが出てくる。連合もかつてのようには動かない」と分析する。
自公両党の議席に、安倍首相と波長が合う大阪市の橋下徹市長が立ち上げた、おおさか維新の会(10議席)を加えれば、参院でも3分の2を上回り、憲法改正が目前に迫ってくる。
橋下徹氏 |
浅川氏は「安倍首相は『憲法改正のために政治家になった』と言っても過言ではない。男子の本懐を実現するため、安倍首相はダブル選後、おおさか維新の会を連立政権入りさせ、橋下氏を閣僚に起用する選択肢もある」と予想した。
過去2回のダブル選でもみられた「自民党圧勝」「野党惨敗」だが、安倍首相の決断のカギは何か。野党に逆転の秘策はないのか。
浅川氏は「決断の前提は、直前の景気の状態と、50%前後の内閣支持率だろう」「このシミュレーションに『消費増税の先送り』『橋下氏の衆院選出馬』という要素が加われば、与党とおおさか維新の会がさらに議席を伸ばす可能性がある」といい、「野党としては、来年の通常国会でメリハリの効いた経済政策の『対案』を示し、政権担当能力をアピールすれば流れは少しは変わる」と語った。
【私の論評】与党圧勝の真の背景はこれだ(゚д゚)!
選挙予測に定評のある政治評論家の浅川博忠氏 |
上記の淺川氏のシミレーション、残念ながら結果だけが示され、どうして上記のようなものになったのか、説明がないのが残念です。
そこで、どうして淺川氏がこのような結果を出したのか、私なりに推理してみたいと思います。
まずは、民主党をはじめとする野党の大部分が、安保法制に大反対したことがあげられます。ここで過去を振り返ると、60年代安保、70年代安保で国会前でデモをした人々は、確かにかなりの人数でしたが、それでも国民のごく一部ということには変わりありませんでした。
特に学生のデモなどは、当時は大学生の数は少なく、 同世代の人々のうち大学生は30%未満であり、今から比較すると、エリート層であるこことは間違いなく、それらのデモを同世代の大多数の人は、苦々しく見ていたという記録が残っているくらいです。
そうして、これらの熱狂的デモは結局実を結ぶことはなく、安保法案は成立しました。そうして、自民党政権も継続しました。
その後、1990年代には、PKO法案が国会で審議されたときは、すでに学生の数も従来よりはかなり増えて、もはやエリート層ともいえなくなっていましたが、学生も含めた大きなデモが繰り返されました。
ところが、その直後の選挙では、社会党が凋落して、その後解党の憂き目を見ました。2000年代当初には、安保は大きな争点とはなりませんでした。
その間隙を縫うように、民主党が政権交代をし、三年間民主党政権が続きましたが、その後安倍自民党にとって変わられました。
安保が大きな論点となっていないとき、まさに民主党政権が成立しました。その後、2012年の選挙で安倍自民党が大勝利して、また自民党政権に戻りました。
以上のように、安保関連で与野党が悶着を起こした直後の選挙では、野党は衰退する傾向がみられます。
ご存知のように、今年の夏は、安保法案をめぐって、与野党が国会で長期間にわたり大バトルを繰り広げました。野党は、「戦争法案」などとレッテル貼りをし、それに新聞や、テレビなどが尻馬にのって、連日「戦争法案反対」のデモなどが報道されました。
テレビ・新聞の大攻勢により、多くの人がこれに引きずられ、いっとき安倍政権の支持率は落ちましたが、現在安倍政権の支持率はまたあがりはじめています。これは、テレビや新聞の報道により、安倍政権不支持になった人たちが、安保法案反対の熱狂が冷めたあと、今回の安保法案のが決して戦争法案ではないこと、ほとんど全部の野党は単に反対するだけで、対案出すこともなく、無責任であったことに気づきつつあるのだと思います。
上記のように国会で安保が大きな争点になったあとには、かつて社会党が解党の憂き目にあったのは、実は日本では安保は非常に安易に争点にしやすいということがあると思います。野党に能力がないため、社会や経済を良くするための政策論議をすることができないため、自分たちの正当性を主張するため、安易な安保に安易な姿勢で取り組み、その安易な姿勢を見透かされ、その後選挙で大敗するというのが、過去の図式だったのではないかと思います。
そうして、来年の選挙でも、それが繰り返されるのだと思います。実際、最大野党の民主党は、何らまともな政策を打ち出していません。こんなことは、すぐに国民に見透かされてしまいます。だからこそ、選挙になれば大敗することになると、淺川氏は踏んでいるのだと思います。
もう一つ、大きいのは、安倍総理が最近二回も財務省に大勝しているという事実があります。その前に、財務省のあり方を振り返っておきます。財務省は旧大蔵省のときから、役所の中の役所として、大きな権力を持ち、まるで政治集団でもあるかのような振る舞いをしてきました。
結局、予算が当たらなければ、いくら良い政策を提案をしても、政府も、政治家も、財務省以外の省庁も何もできません。その予算の大元を握っていたのが、旧大蔵省であり、現在の財務省です。ご存知のように、旧大蔵省は、日銀と財務省に分離されましたが、それでも財務省は何かと日銀に対して権力を振るっていました。
そうして、その絶大な権力は、大蔵省から財務省にも引き継がれ、本来財務省は、政府の一下部機関に過ぎないにもかかわらず、税金の配賦に大きな影響力持っているため、政治家や他省庁に対しても大きな圧力で権勢をふるってきました。
そうして、財務省益再優先で、政治に深く関与してきました。一番最近では、平成13年度における8%大増税キャンペーンです。このとき、財務省は、多くの政治家はもとより、他省庁、有識者、マスコミに対してあたかも政治集団のように振る舞い、あるゆる手段を講じて圧力をかけ、安倍総理の本意を翻して、8%増税を決めざるを得ない状況に追い込み、とうとう8%増税が実行されてしまいしまた。
その後8%増税が導入され、多くの識者が語っていたように、その影響は軽微なものではなく、昨年はマイナス成長になり、今年も第一四半期はマイナス、第二四半期も速報値でマイナス、実測値でかろうじてわずかのプラスという状況で推移しています。
8%増税が大失敗なのは明らかなのに、財務省は10%増税を最初の予定どおり実施するため、再度増税大キャンペーンをはじめました。そうして、日本においては、過去においてはあからさまに旧大蔵省や、財務省に逆らった総理大臣はかつていなかったので、財務省はそのまま、増税に踏み切れると踏んでいました。
しかし、見事に番狂わせか生じました。そうです。昨年の暮れ近くになって、安倍総理は、衆院の解散総選挙を決断し、「1 0%増税の見送り」も公約として、総選挙を実施し、大勝利を収めました。
安倍総理の解散表明に対してマスコミは「大義なき解散」と ネガティブキャンペーンを張った。青山繁晴氏はこのマスコミの動きに注意を促したし |
安倍総理は、初めて財務省の意向に従わず、財務省の目論見を粉砕した日本初の総理大臣になったのです。これは、財務省にとっては、青天の霹靂であり、財務省の初めての大敗北です。
安倍総理の財務省に対する戦いはこれだけではありません、つい最近では、軽減税率を巡るバトルで、財務省を完膚なきまでに打ち負かしてしまいました。
これについては、最近このブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
軽減税率をめぐる攻防ではっきりした財務省主税局の「没落」―【私の論評】財務省の大惨敗によって、さらに10%増税は遠のいた(゚д゚)!
攻防の第1幕は安倍官邸の「谷垣」不信から始まった |
これで、安倍総理は財務省に対して、二勝一敗という勝率になったということです。しかも、今回の軽減税率のバトルでは、選挙という伝家の宝刀を使わなくても完勝しました。
この意味するところは、安倍総理に対して財務省が束になって、挑んだにしても負けるかもしれないということです。今回の軽減税率も日本の政治においては、画期的な意味があると思います。
本来、政治主導であれば、財務省などが政治グループのように各方面に圧力をかけるのは間違いですが、日本では財務省の官僚の力が強く、官僚主導になっていたのですが、その一角が崩れたということです。
次の選挙では、安倍総理が、10%増税見送りを公約にして、衆参両院同時選挙に挑み、大勝利すれば、財務省を完膚なきまでに、打ち負かすことができます。
財務省に打ち勝つことができるということは、日本では政治の世界では、敵なしということです。現状の無能な野党では、財務省にはほとんど歯が立ちません。野党に全く歯がたたない野党に、打ち勝つことができる安倍総理は、次の選挙で衆参同時選挙で、大勝するのは間違いないと思います。
こんなことを掲載すると、「安倍一強」などと批判をする人もいるかもしれません。しかし、それは見立て違いです。まずは、時の政権が財務省よりも権力が強いのは、政治主導という立場からいえば、当然のことです。今までがおかしかったのです。
それに、財務省に全く歯が立たない野党も情けないです。特に、民主党などは、政権与党だったとき、財務省に歯が立たないどころか、手のひらで弄ばれただけです。他の野党も、そうです。財務省に正面きつて、意義を唱えるようでなければ、安倍政権にも歯がたたないのは当然のことです。安倍自民党が強いのではなく、野党が弱すぎるのです。
その後に、安倍総理は、財務省解体に挑むことになると思います。さらに、日銀法改正に挑むことでしょう。その後に、憲法改正にも挑戦すると思います。
まずは、経済をどうにかしなければ、国民は納得しないと思います。経済がまともになれば、憲法改正はかなりやりやすくなると思います。
まさに、財務省を完膚なきまでの敗北に追い込んだ、安倍総理に怖いものなしということで、来年の衆参同時選挙に安倍総理は間違いなく大勝利を収めることでしょう。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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