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2015年12月29日火曜日

2016年、円高に転じるリスクは低下している 金融緩和継続 日銀の補完措置―【私の論評】財務省敗退?来年以降の日本経済は10%増税さえ見送られれば、悪いことなしだ(゚д゚)!


村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

来年のドル円見通しは円高派と円安派に分かれている。
日銀が金融緩和継続の方向を示したことで、どう動くのか
12月18日に日本銀行から、予想外の量的金融緩和に関する補完措置が発表された。これは、声明文あるいは黒田総裁の記者会見でも明らかになったように、従来の量的金融緩和政策の補完措置として位置付けられ、政策目標であるベースマネーの増加幅が維持されているという意味では、景気・インフレ率に働きかける追加金融緩和ではない。

マイナーとはいえ予想外の政策変更であり、かつ上場投資信託(ETF)の買取り拡大がメニューとして入ったことで追加金融緩和に踏み出したかのような報じられ方をしたため、発表当日、金融市場は乱高下した。ただ、追加のETF買取り措置は、日銀が保有する株式売却に備えた対応であり、株式需給への影響はほぼ中立であることが理解されたこともあり、最終的に金融市場は株安・円高で反応した。

市場がネガティブに反応を示した理由の一つは、「ぬか喜び」に終わったことに加えて、今回の補完措置に対して「日銀の金融緩和が限界に近づいている」ことを示唆しているという見方がある。「購入国債の年限変更なしに、国債買入れによるベースマネー拡大が難しくなっている」という解釈だ。ただ、日銀による国債購入に限界が近づいているとする議論について、説得力がある見解を筆者は聞いたことがない。たとえば「出口に伴うコスト」が大きい故に限界という議論は、何らかの理由で量的金融緩和を強化したくないだけの理屈にしか筆者には聞こえない。

■株式購入の政策メニューには疑問

実際には黒田総裁などの発言を踏まえると、長期国債買入れ拡大などの追加的な量的金融緩和は常に念頭にあるし、そして18日の対応は、大規模な国債購入を継続することに備えて必要な措置を講じた意味合いが大きいだろう。当社を含め市場の一部では、2016年前半にも日銀による量的金融緩和のテーパリング(縮小)が意識され、それが円高要因になるシナリオが警戒されていた。こうした疑念をぬぐうために、補完措置を講じることで金融緩和強化の方向性をあえて示したのかもしれない。

発表当日の株式市場などの初期反応は芳しくなかったが、実際に債券市場では10年満期ゾーン以降の長期金利が低下するなど、補完措置によってQQEの効果は狙いどおりに強まったと言える。

ただ、今回の政策メニューには、筆者が首をかしげざるをえないメニューも入っている。それは、3000億円の規模で、JPX日経400や新たなETFの購入を通じて、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を支援するという政策メニューである。

中央銀行による株式購入について評価はさまざまだが、脱デフレ・マクロ安定化政策の手段として肯定されうるという見解が多い。ただ「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」がETF購入を通じて選別されるかという実務上の問題に加えて、個別企業に対する選別する領域に中央銀行が関与するデメリットは小さくないのではないか。脱デフレの後押しと成長率を高めるために、これまでの政策枠組みを粘り強く続けることが必要だと思われる。

こうした問題点を除いて考えると、日銀による補完措置に対する筆者の評価が妥当なら、日銀の政策転換を理由に2016年に円高に転じるリスク可能性が低下した、と推論できる。

2016年にドル円に対する市場の見通しは、円高派と円安派に分かれている。3年続いた円安ももう続かないという経験則が、円高予想の理由になっている側面もあるだろう。ただ、2016年にはFRBが緩やかながらも継続的な利上げを目指し、一方で日銀が国債購入など金融緩和を継続する政策の方向性の違いを踏まえれば、当面円高に向かう可能性は低いだろう。当社では2016年央までは、120-125円のレンジで推移するとみている。

■経常収支がドル円に与える影響はほとんどない
日銀の政策スタンス変更はドル円のトレンドを変える重要な要因だが、2016年の円高シナリオを唱える見解の中には、筆者には説得力に乏しい議論が散見される。一つは、貿易赤字縮小(あるいは経常収支黒字拡大)が円高をもたらすという説である。

ただ実際に、貿易収支の変化→ドル円の変化という因果関係が作用し、資本移動が活発な先進国通貨であるドル円は動くのだろうか。2005年以降は経常収支黒字が拡大する中で円安が続いたし、2011年の東日本大震災で貿易赤字に転じた後も超円高が続いた。これらを踏まえれば、経常収支などの変化がドル円に影響した形跡はほぼないし、また貿易収支がラグを伴って為替レートに影響するメカニズムは納得しがたい。1990年代に貿易収支が日米で政治問題化しドル円相場を左右したが、経済的なロジックが働いたというよりも、当時は経済現象を超越した政治要因が市場参加者の期待を決定したということだろう。

過去10年余りの例を挙げると、2006年の日銀の利上げ開始以降円安に歯止めがかかり、2012年末以降の日銀の政策大転換への期待で超円高修正が始まった。つまり、ドル円の方向には、経常収支の動きはほとんど関係なく、日米の金融政策スタンスがより大きく影響する。2013年の日銀の金融政策の大転換が、超円高修正や脱デフレの始まりと冷静に認識できない論者は、古典的な説明変数である貿易収支などの変化によってドル円相場のすう勢を論じていると筆者は考えている。

【私の論評】来年は財政再建実質完了!日本経済は10%増税さえ見送られば、悪いことなしだ(゚д゚)!

村上 尚己 氏
民間には様々な経済アナリストがいますが、ブログ冒頭の元記事を書いている村上尚己氏は、そのなかでもまともなことを言う一人です。民間経済アナリストというと、特に2013年日銀が金融緩和に転じてから、予想を外しまくる人がほとんどなのですが、この方の予測はいつもあたっています。

他のアナリストがせいぜい半年からひどい場合は、2〜3ヶ月以内のことで判断し、しかもマクロ経済を無視したような、予測をする人が多いですが、この方の場合は、長期にわたる分析で、その背景にはマクロ経済的な知見があります。

そういうことから、このブログでもこの方の記事は何度か取り上げさせていただいています。そうして、来年はこの方の言うとおり、円安傾向が維持されることでしょう。きちんと論理的な道筋をたてて予測していますので、まずは間違いないでしょう。

さて、来年のこととなると、このブログにも度々登場する、高橋洋一氏も興味深い予測をしています。それについては、以下の高橋洋一「ニュースの深層」というコラム記事をご覧になってください。

い。

「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう! この国のバランスシートを徹底分析

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より、まずは以下に「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソであることを示す部分を引用します。
借金1000兆円というが、政府内にある(ブログ管理人注以下同じ:金融)資産を考慮すれば500兆円。政府の関係会社(日銀を含む)も考慮して連結してみると200兆円になる。これは先進国と比較してもたいした数字ではない。
これは、全くのこの通りであり、このブログにも過去に何度か掲載してきたことです。ちなみに、政府と政府の関係会社をも含めたものを「統合政府」と呼びます。政府の金融資産を考慮し、さらに統合政府としての連結決算をしてみると正味の政府の借金200兆円です。

300兆円というと、私達個人からすれば、目もくらむような天文学的な金額ですが、それでも日本のGDPそのものが巨大であるため、この200兆円がGDP(約500兆円)に占める割合は、40%です。

確かに、実数だけみると、多額の借金があるように思えますが、それにしても、この水準だと他の先進国の水準とあまり変わりありません。これをもって、日本政府の借金だけが過大でどうにもならない水準とはいえません。

さて、次に2016年に財政再建がほぼ終了してしまうという事実について、以下に引用します。
■今の国債市場は「品不足」状態 
2016年度の国債発行計画(http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdf)を見ると、総発行額162.2兆円、その内訳は市中消化分152.2兆円、個人向け販売分2兆円、日銀乗換8兆円である。 
要するに、今の国債市場は、国債の品不足なのだ。カレンダーベース市中発行額は147兆円であるが、短国25兆円を除くと、122兆円しかない。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円。となると、市中消化分は、最終的にはほぼ日銀が買い尽くすことになる。 
民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得ない。これは日本経済にとっては望ましいことだ。と同時に、市中には実質的に国債が出回らないので、これは財政再建ができたのと同じ効果になる。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金となって財政負担なしになる。償還も乗換をすればいいので、償還負担もない。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債はないに等しいというわけだ。 
こういう状態で国債金利はどうなるだろうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落なんてあり得ない。なにしろ必ず日銀が買うのだから。 
こうした見方から見れば、2016年度予算(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2016/seifuan28/01.pdf)の国債費23.6兆円の計上には笑えてしまう。23.6兆円は、債務償還費13.7兆円、利払費9.9兆円に分けられる。 
諸外国では減債基金は存在しない。借金するのに、その償還のために基金を設けてさらに借金するのは不合理だからだ。なので、先進国では債務償還費は計上しない。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味となり、償還分は借換債を発行すればいいからだ。 
利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%という。市中分がほぼなく国債は品不足なのに、そんなに高い金利になるはずない。実は、この高い積算金利は、予算の空積(架空計上)であり、年度の後半になると、そんなに金利が高くならないので、不用が出る。それを補正予算の財源にするのだ。
■マスコミはいつまで財務省のポチでいるのか
このような空積は過去から行われていたが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省にとって好都合なのだ。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大になっている。 
こうしたからくりは、予算資料をもらって、それを記事にするので手一杯のマスコミには決してわからないだろうから、今コラムで書いておく。 
いずれにしても、政府と日銀を連結したバランスシートというストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、ともに日本の財政は、財務省やそのポチになっているマスコミ・学者が言うほどには悪くないことがわかるだろう。 
にもかかわらず、日本の財政は大変だ、財政再建が急務、それには増税というワンパターンの報道ばかりである。軽減税率のアメをもらったからといって、財務省のポチになるのはもうやめにしてほしい。
金融緩和をすると、ハイパーインフレになるとか、国債が暴落するなどという識者もいましたが、そんなことにはなりませんでしたし、国債に至っては、短期国債の金利が一時マイナスになったこともありました。金利がマイナスということは、どういうことかおわかりでしょう。国債を買おうと思ったら、国債に利子がついてくるのでなく、買う方が売る方に利子分を払わなければならないということです。それだけ、短期国債が、市場で品薄になったということです。

さて、こうしてみてくると、日本経済は10%増税さえなければ、来年以降悪くなることはなさそうです。

それにしても、 本当にマスコミや、いわゆる識者などいつまで、財務省のポチであり続けるのでしょうか。

もう日本の政界においては、すでに財務省は敗残者であり、官邸から追撃戦を受けるひ弱な対象でしかありません。それは、先日もこのブログに掲載したばかりです。

増税など全くする必要性がないことと、安倍政権の支持率が戻りつつあること、財務省が軽減税率との攻防で官邸に完敗した事実からみて、来年の参院選は衆院も解散し、衆参同時選挙になる可能性がかなり高まってきました。

そうして、この衆参両院の選挙で安倍自民党が「10%増税見送り」も公約として、大勝利した場合、財務省は完敗します。財務省にとっては、それこそ、日本が大東亜戦争に負けたのに匹敵するような大敗北です。

財務省側では、敗北した場合、誰が玉音放送をするのでしょうか。やはり、財務次官でしょうか?

その後には、日本の政治主導がはじまると思いますが、マスコミや識者などは、それでも財務省のポチであり続けるのでしょうか。期を見るに敏な人は、もうそろそろ財務省には見切りをつけていることでしょう。

それにしても、そんな人が、今更政府の借金は軽微とか、増税する必要なしなどと語りだしても、耳を傾ける人はいないかもしれません。

経済政策に関しては、マクロ経済も踏まえたまともなことで論議をするべきであって、いかに過去の財務省の権力が強かったからといって、財務省のポチをするようなマスコミや識者は信用がおけません。

それにしても、来年以降は日本経済は少なくとも悪いことなしということは言えそうです。もし、10%増税が決まっても、実際に増税されるのは、17年からなので、来年にはあまり大きな悪影響は及ぼすことはありません。

しかし、10%増税を強行すれば、17年以降は経済がかなり悪化するのは必至です。しかし、10%増税を経済が回復して、過熱気味になったときに実行するという条件つきで、延期した場合、来年以降の日本経済は、しばらく悪くなるということはないと思います。

これには、無論のこと、日銀がその金融政策の姿勢を現状と大きく変えさえしなければという条件はともないますが・・・。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年12月11日金曜日

GPIF年金8兆円損失 総活躍どころか「1億総下流」のアベノリスク―【私の論評】マスコミはGPIFのリスクを重箱の隅を突くように報道するくらいなら、特別会計の埋蔵金について報道せよ(゚д゚)!

GPIF年金8兆円損失 総活躍どころか「1億総下流」のアベノリスク

GPIFを成長戦略に使いたい安倍首相と塩崎厚労相

年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、約8兆円の損失を出したことを11月末、発表した。

昨年から市場関係者の間で「安倍政権はPKOをやっているのでは」とささやかれていた。PKOとは1990年代にあった、政府主導で株を買い支えるプライス・キーピング・オペレーション(PKO)、つまり官製相場のことだ。

GPIFで株価を吊り上げるカラクリは、いたってシンプルだ。GPIFが国内株への投資比率を1%上げれば、単純計算で1兆3500億円の資金が市場に流れ込む。東証1部の1日の売買代金は2兆~3兆円程度だから、その影響がいかに大きいかがわかる。さらに、昨年から市場では不可思議な現象が起こっている。

東証では、株式売買の6割以上を占める海外投資家の動向が、株価に大きな影響を与える。昨年はじめごろから、海外投資家の売りが続くと、それに反して国内の信託銀行が買いに入った。これが何度も繰り返されている。

市場関係者が目を疑ったのは、今年8月に入ってからの信託銀行の動きだ。上海株価の暴落を受けて、海外投資家の売り越しが続いたが、この期間になぜか買い越しを続けていたのが信託銀行だった。経済ジャーナリストの磯山友幸氏は言う。

「株価が下落している中で、信託銀行を介してGPIFが株を買い支えたのではないか。官製相場は、いつか必ずしっぺ返しがくる。海外投資家の信頼を失い、国内市場から引き揚げられかねない」

政府がGPIFの資金で狙っているのは、株価の吊り上げだけではない。

安倍政権は、企業に対して設備投資の拡大と賃上げを繰り返し要求しているが、政府内にはGPIFを利用して企業に圧力をかけるべきとの意見もある。

安倍首相も出席した、政府の経済財政諮問会議でも、そんなやりとりがあった。民間議員であるサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が、GPIFが運用委託している機関投資家に、株主として企業経営に介入することを提案。内部留保の多い企業に、

<3年以内に設備投資するのか賃上げするのか、どうするか決めさせる>(11月27日議事要旨)

という。埼玉学園大の相沢幸悦教授(金融政策)は、驚きを隠せない。


「賃金や設備投資は、企業にとって重要な意思決定で、政府が指図してはいけない。それが、安倍政権はGPIFを使って、株価浮揚という目的を達成しようとしている。来年夏には参院選があるので、今後はゆうちょ銀行やかんぽ生命の資産なども政治利用されるのではないか」

人為的に作られた相場は、いつか必ず滅びる――。これがマーケットの鉄則だ。今年1月、政府はリーマンショックが再来した場合、GPIFが受ける損失の試算結果を公表した。その額はなんと、26.2兆円。実際にリーマンショックのあった08年度の損失額は9.3兆円だったので、約2.8倍に膨らむことになる。これにより年金基金の2割以上が消える。

「株式は高値で売って底値で買うのが基本。しかし、GPIFは資産が巨大すぎて、売りに転じたら国内市場が暴落する。危機の時にも枠がいっぱいなら、機動的な対応ができない。海外の投資家は、それを見越して容赦なく日本株を売り浴びせてくるでしょう」(経済評論家の斎藤満氏)

また、政府は今年10月から格付けが「ダブルB」以下の高リスクな外国債券にも投資できるようにした。これらは「ジャンク債」とも呼ばれ、財政不安に苦しむギリシャ国債も含まれる。こんなリスクは許されるのか。民主党の山井和則衆院議員は言う。

「年金基金は、国民が積み立てたお金を政府が預かっているだけ。だからこそ、安定的な運用が求められる。ハイリスクに運用するのであれば、国民にきちんとした説明をしなければならない。ところが、安倍政権は国会が閉じている時に、審議会の議論だけで変更してしまったのです」

では、ハイリスクな運用をやめ、元のように国内株式の投資比率を10%前後に戻せばいいのかというと、そう簡単な話でもない。野党の幹部は戦々恐々としている。

「安倍首相の退陣後に政権を取っても、国内株への投資比率を下げることは、市場への影響が大きすぎてできない。まともな経済政策に戻すと官製相場が崩壊して、日本発の世界金融危機がおこりかねない」

前出の山井衆院議員は、今のアベノミクスを1912年に沈没した豪華客船「タイタニック」に例える。

「氷山に衝突することがわかっていても、舵を切って避けることができない。安倍首相のやっていることは、とんでもない時限爆弾を抱えることなのです」

一時的な株高に沸いても、いつか現実に戻される日はやって来る。自民党内からも異論が出ている。村上誠一郎衆院議員はこう話す。

「アベノミクスは金融緩和で円安誘導し、財政出動で景気回復を目指したが、経済成長に結びつかなかった。本来であれば、その反省と総括をしなければならない。ところが、GPIFによる運用やさらなる金融緩和で人為的に株価を上げて、経済政策がうまくいっていると国民に思わせようとしている。しかし、これではいずれ財政と金融が同時に大変になる時が来る」

そのとき、日本人の老後の生活を支えるはずの年金が消える。総活躍どころか、やがて「1億総下流」へ転落する日が来るかもしれない。

(本誌・西岡千史、永野原梨香、長倉克枝)

週刊朝日  2015年12月18日号より抜粋

【私の論評】マスコミはGPIFのリスクを重箱の隅を突くように報道するくらいなら、特別会計の埋蔵金について報道せよ(゚д゚)!

上の記事は、週刊朝日のものですが、他にもGPIFのリスクを指摘する記事もあります。さて、GPIFはそんなにリスクが高いものなのでしょうか。私自身は、それほどでもないと思っています。上の週刊朝日の記事は、リスクを煽りすぎていると思います。

その根拠としては、私自身で説明するよりも、『週間闇株新聞』というサイトが非常にわかりやすく解説していたので、その記事を以下に引用します。


「7兆円の運用損」は、何の問題もない! 
闇株新聞がGPIFの運用成績を精査 
国債から株式へのシフトはひとまず成功
昨年秋にポートフォリオを「国債中心から株式での積極運用へ」と大転換したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用成果を検証! 
■7-9月期は7兆8899億円ものマイナスだったが… 
 11月30日に発表されたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2015年7~9月期運用収益は7兆8899億円ものマイナスになっていました。さっそく「年金が危ない」などとする報道もありましたが、あまり目くじらを立てる必要もなさそうです。 
 確かに2015年7~9月期の期間収益率は運用資産比5.59%ものマイナスですが(年率換算ではありません!)、これは2015年8~9月の世界の株式が大きく下落したためです。10月以降の世界の株式市場は大きく回復していますから、2015年10~12月期の運用成績はいくらなんでも回復しているでしょう。 
 そもそも年金運用は超長期の運用なので、短期的な相場変動に一喜一憂する必要はありません。相場が上昇時でも下落時でも指標(インデックス)に大きく見劣る運用でなければ一応は合格です。指標を上回る運用などハナからアテにしないことです。 
■ポートフォリオの大転換は見事なタイミングだった 


 GPIFは昨年(2014年)10月31日付で、厚生労働大臣の認可を受けた「中期計画の変更について」というリリースを出していました。その主な内容は基本ポートフォリオの大幅な変更でした。その内訳は以下の通りです。 
・国内債券60%(上下8%)→35%(上下10%)大幅減
・国内株式12%(上下6%)→25%(上下9%)大幅増
・外国債券11%(上下5%)→15%(上下4%)やや増
・外国株式12%(上下5%)→25%(上下8%)大幅増 
 ところで、このリリースが出された2014年10月31日は、いわゆる「黒田バズーカ2」(日銀の追加量的緩和)が発表された日です。ご存じの通り、そこから日経平均は急上昇し、円安が加速していったのでした。 
 追加量的緩和で株高・円安にしてGPIFの運用成果を向上させようとしたのか、あるいは逆にGPIFの資金を使って一層の株高・円安にしようと考えたのかはわかりませんが、とにかく「見事に連携を取っていた」ことになります。 
 これには「よくやっていたじゃないか!」と少し感心しています。2012年12月に安倍政権が発足して急激に円安・株高が進んだ局面では、ジョージ・ソロスらヘッジファンドに収益機会を提供しただけだったことを考えれば、大変な進歩です。 
■GPIFの運用成果を詳しくチェック! 
 運用方針が変更される直前(2014年9月末)の国内株式の運用残高は23兆8635億円、年金積立金全体に占める構成割合は17.79%でした。9月末の株価は日経平均1万6173円/TOPIX1326.29ポイントでしたが、10月17日に日経平均1万4532円/TOPIX1177.22ポイントの安値を付けています。 
 運用方針の変更は株価的にも絶好のタイミングだったのです。 
 次に、四半期毎に収益額(運用資金の増減ではなく純粋の運用成果だけです)と期末のTOPIXを比べてみます。 
 この1年間の国内株式の収益合計は2兆1022億円で、その間のTOPIXは1326.26から1411.16まで6.4%上昇、2014年10月17日の安値からだと19.9%も上昇しています。 
 2015年9月末の国内株式の運用残高がなぜか記載されておらず、年金積立金全体に占める比率が21.35%とだけ記載されています。 
 同時点の運用資産額は135兆1087億円ですが、年金積立額はこれより3~5%多いはずです。とすれば、国内株式の運用総額はだいたい29兆7000億円~30兆3000億円だったと見積もることができます。 
結論:GPIFの積極運用への変更は「成功」 
 2014年9月末~2015年9月末の国内株式の収益額合計は2兆2011億円で運用資産は6兆1365億円も増えています。ということは、GPIFはこの1年間に国内株式を約4兆円買い増していたことになります。 
 仮に2014年9月末時点の国内株式運用残高23兆8635億円をそのまま1年間維持していたとすれば、運用収益はTOPIXの上昇幅(+6.4%)と同じとして、1兆5272億円のプラスです。 
 つまり、この1年間で4億円買い増したことで収益額は6000億円ほど多くなったことになり、買い増した4兆円も15%の収益を上げていたことがわかります。 
 以上から、追加量的緩和とタイミングを合わせたGPIFの積極運用への変更は、とりあえず「成功」だったと言えるでしょう。
以上のように、GPIFの運用は、とりあえずは「成功」と見て良いようです。ただし、「とりあえず」という言葉通り、 そもそもそもそも年金運用は超長期の運用なので、短期的な相場変動に一喜一憂する必要性など全くありません。

株式運用というと、日本人は忌避感が強く、単なる個人の博打のように考えてしまう人も大勢います。確かに、一般の個人が株式運用するのは、博打に近いものがあります。しかし同じ個人でも、最低1億円以上の資金を株式に運用できる人であれば、博打とは言えないと思います。なぜなら、この程度の資金を運用できるのであれば、分散投資をすることにより、リスクを回避することが可能になるからです。

しかし、上の朝日新聞の記事はこのことを無視して、GPIFの株式運用をまるで、個人の博打のように危険なものとしています。

以上のようなことから、ブログ冒頭の週刊朝日の記事は、話半分に読んでおくべきでしょう。

それにしても、この週刊朝日の記事に限らず、マスコミはなぜか、経済特にマクロ経済に関しては頓珍漢、奇妙奇天烈な報道ばかりします。そうして、とにかく煽り報道をするのが常です。

極めつけは、国の借金国民一人あたり、1000万円超というものです。これに関しては、最近でもこのブログに掲載し、その間違いを指摘したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
税収上ぶれで国庫収支改善 「国の借金」1054兆円だが資産も653兆円―【私の論評】日本国借金まみれ説は、財務省と追従者が築く馬鹿の壁(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、国には国民一人あたり1000万円の借金があるなどというのは、全くの間違いであり、国民一人あたり政府に1000万円の金を貸し付けているというのが真実です。

そもそも、国の借金=政府の借金ではなく、日本政府は確かに多大な借金をしていますが、日本国は借金どころか、世界で一番お金を貸し付けている国です。

そうして、政府の借金(負債)とはいっても、日本の政府は世界で一番金融資産を持つ政府であり、この資産と負債を相殺すると、日本政府の借金は確かに実額は巨大ですが、GDP比で比較すると、他の先進国と比較してさほど多くもありません。

日本政府は世界で一番金融資産を持つ政府なのですが、ではそれはどこにあるかといえば、そのほとんどが、財務省により特別会計に計上されています。

この特別会計には、様々なものがありますが、以下に3つの特別会計を説明します。

まず、国債整理基金特別会計です。一般会計又は特別会計からの繰入資金等を財源として公債、借入金等の償還及び利子等の支払いを行う経理を一般会計と区分するために設置された特別会計です。定率繰入れ等の形で一般会計から資金を繰り入れ、普通国債等の将来の償還財源として備える「減債基金」の役割もあります。

この「減債基金」は、先進国で日本しかありません。他の先進国では昔はありましたが、公債市場が大きくなって整備されると償還財源はその都度借換債で調達するので、「減債基金」はなくなったのです。そういえば、民間会社で社債の「減債基金」もありません。将来の借金償還のために、さらに借金をする必要がないわけです。

この観点から見ると、2015年度予算の11.6兆円の定率繰入は過大な計上で、不要です。
また、利払費が9.7兆円です。しかし、この積算金利は1.8%と過大です。おそらく2兆円くらいは過大計上になつています。

次に労働保険特別会計。労災保険と雇用保険を経理するために設置された特別会計です。労災保険は、業務上の事由等による労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするための保険給付及び被災労働者の社会復帰の促進等を図るための社会復帰促進等事業を行うもの、雇用保険は、労働者の失業中の生活の安定、再就職の促進等を図るための失業等給付及び雇用機会の増大等を図るための雇用保険二事業を行うものです。

2013年度の労働保険特別会計財務書類をみると、雇用勘定のバランスシートで7.1兆円の資産負債差額があります。いわゆる埋蔵金です。これは、高めの雇用保険料にもかかわらず失業保険給付が少ないために生じたものです。これは、国民に還元すべきでしょう。

最後に、外国為替資金特別会計。政府が行う外国為替等の売買に関し、その円滑かつ機動的な運営を確保するため外国為替資金が設置されるとともに、その運営に伴って生じる外国為替等の売買、運用収入等の状況が区分経理するために設置された特別会計です。

外為資金として127.9兆円(2013.3末)。このうち外貨債権は103兆円(証券は99.5兆円、貸付3.5兆円)です。ちなみに、外貨証券の満期は1年以下1割、1年超5年以下6割、5年超3割)となっています。一方、外貨負債はありません。ということは、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスである。ざっくりみると、外為資金での円安による評価益は20兆円程度ありそうです。

この3つの特別会計だけでも、10兆円もの特にすぐに必要とも思えないようなお金が財務省によって積み上げられています。

この特別会計余分なもの全部とはいいませんが、少なくとも10兆円くらいは国民に還元すべきものと思います。こんなに金があるんですから、そもそも増税など必要ありません。1

10兆円というと、現在日本にはデフレギャップが10兆円ほどあるいわれています。これを元手に補正予算を組めば、10兆円で様々な対策が実行でき、日本は完璧にデフレから脱却して、緩やかなインフレに一直線に飛躍することができ、実体経済もかなり良くなります。そうなれば、増税しなくても、経済成長によって、景気が良くなり税収も増えます。

GPIFのリスクを重箱の隅をつつくように報道するくらいなら、マスコミは以上のようなことを報道すべきものと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年10月20日火曜日

【中国GDP発表】偽りのGDP異様に巨大化 乖離した“成長率”こそリスク―【私の論評】日本のリスクは中国の経済破綻よりも、増税リスクのほうがはるかに大きい(゚д゚)!


李克強指数ではかなりの下げが見られる中国経済

 中国政府は7~9月期の実質経済成長率を6・9%と発表した。経済教科書からすれば、この成長率水準は好景気そのものだが、経済実体を示す各種のデータはマイナス成長を指し示し、世界の専門家の大半が中国GDPを信用しない。米国に次ぐ経済規模を裏付けるはずの数値が偽装同然というのだ。

 実は、中国のGDP統計は党幹部ですら信用していなかった。李克強首相は遼寧省の党書記時代の2007年、米国の駐中国大使に向かって、「GDPは人為的操作が加えられるが、鉄道貨物輸送量は運賃収入を基にしているので、ごまかしがきかない」と打ち明けたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」によって暴露されている。

 李氏は鉄道貨物のほか銀行融資、電力使用量も参考にしていると語ったことから、最近では英国のコンサルタント会社などがこれら3つの経済指標をもとに「李克強指数」を作成して、現実に近い成長率を推計している。

 グラフは鉄道貨物輸送量と輸入動向をGDP伸び率と対比した。12年後半以降、鉄道貨物と輸入はともに伸びが鈍化し続け、14年初めから急激に落ち込んでいる。

 中国GDPの伸び率は経済の実勢ではなく、党の政治意思で決まる。中国は毎年秋に党中央が翌年の経済成長率を決めて政府に提示し、その年の3月に開かれる全国人民代表大会が政府案を採択する。全国各地の党書記は目標値通りの成長率を党中央に報告する。達成できないと出世に関わるので、「人為的」な成長率が生まれやすい。

 もちろん、党中央は成長目標達成のプログラムを考える。手っ取り早いのはGDPの最大項目である固定資産投資で、08年9月のリーマン・ショック後は不動産開発投資に資金を集中投入させて2ケタ成長を実現したが、12年には不動産バブルが崩壊して、投資主導型成長モデルはついえた。投資がだめなら、個人消費を増やすしかない。そこで習近平政権は株価をつり上げ、株式ブームを演出したが、この6月に上海市場が暴落した。

 現実には需要が減退しているのに、国有企業などが党指令通り生産を増やすなら、過剰生産、過剰在庫が膨れ上がる。その多くは投棄され、燃やされる。大気や水の汚染、工場爆発と環境破壊が止まらないはずである。

 党中央が高い成長率を決め、需要を無視して投資、生産の増加を指令する。民間主導の市場経済とは似て非なる中国式経済が異様に巨大化する。世界の市場を混乱させ、地球環境問題を深刻化させている。経済実体から大きく乖離した虚偽の成長率が今や世界にとってのリスクなのだ。

【私の論評】日本のリスクは中国の経済破綻よりも、増税リスクのほうがはるかに大きい(゚д゚)!

李克強指数を元にすると、中国のGDPの真の値はどの程度であるのかを以下に掲載しておきます。残念ながら、最新のものは手に入らなかったのですが、2001年〜2013年の推計値は入手できましたので、以下に掲載します。


これは、当時精華大学准教授のパトリック・ショバネック氏の推計です。赤の線が李克強指数で、青の線がいわゆる「本当の」成長率です。

これをご覧いただけるとおわかりのように、2013年当時の成長率は2%ということです。この推計が正しいものとすれば、13年当時と比較すると、本年はかなり経済が落ち込んでいますから、おそらくはマイナス成長になっていると考えるのが妥当でしょう。

実際、そのようになっているということをブログ冒頭の記事は主張しているわけです。これは、本当に妥当なものと思います。中国政府が発表した、6.9%はファンタジーに過ぎないです。

さて、このような中国の経済の落ち込み具合が話題になると、すぐにでてくるのが、日本経済危機論です。

実際、中国の7~9月期国内総生産(GDP)の発表を10月19日(月)が近づい今月16日には、ロイター通信が、金融市場の一部では中国発の「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」が警戒されているとの報道をしていました。28年前の10月19日は、米株式市場が20%超も急落し、世界的な株価暴落を引き起こしたブラックマンデーのまさにその日でした。

米国の景気が落ち込めば、日本も落ち込みリーマン・ショックの再来となるかもしれないと心配する人も大勢います。

しかし、実際には、本日に至るもアメリカの株価がブラック・マンデーのように下落したなどという報道はなされていません。

しかし、私の見方はたとえ中国の景気がかなり落ち込んだととしても、全く日本に影響はないということはないにしても、"本来"はその影響は軽微だということです。

そもそも、日本におけるリーマン・ショックなどファンタジーです。それに関しては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
景気減速に中国政府は焦りと弱音 日中関係改善へ共産党幹部の姿勢に変化―【私の論評】日銀がまともになった今中国がどうなっても、日本には影響は少ない!そんなことより、日本は一刻もはやくデフレからの脱却を急げ(゚д゚)!
景気刺激策は取らないと強調する李克強首相

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、リーマン・ショックに関する記述のみ以下にコピペさせていただきます。
しかし、多くの人は大きな見逃しをしています。本当は、当時の経済財政担当相がリーマンショックを「蜂がさした程度」と表現したことは正しかったかもしれません。ただ一つ、ある一つの条件さえ満たしていれば・・・・・・・・・・。 
その条件とは、日本銀行による金融政策です。リーマン・ショック後直接影響を大きく受けた国などの中央銀行は、景気を素早く回復させるため大金融緩和を行いました。しかし、日本銀行は、日本国内がデフレ・円高傾向にありしかも他国が大金融緩和を行ったにも関わらず、頑なに金融引締め政策を行いました。 
本来はリーマン・ショックなど日本にとっては「蜂の一刺し」に過ぎなかったものを日銀が金融緩和政策をしなかったために、さらなる超円高、さらなるデフレの深刻化を真似いてしまい、結果として戦後の日本で最大級の経済危機になりました。
日銀はリーマン・ショック後も金融緩和をしなかった クリックすると拡大
リーマン・ショックはアメリカやEUにとって、サブプライムローンなどのつけを支払うという形で直接的に経済に悪影響を及ぼしました。しかし、日本の場合はサブプライムローンに関しては、ほんど関係がなかったにもかかわらず、他国中央銀行が大金融緩和をしたにもかかわらず、日本銀行が何もしなかったため、超円高・デフレの深刻化を招いてしまったというわけです。だから、日本においては、リーマンショックなどという呼び方は正しくありません。「日銀ショック」とでも呼ぶべきだったでしょう。

このように、私はリーマン・ショックそれも、こと日本におけるそれに関しては、本来サブプライムローンの影響など日本にはほんどとなく、本来は悪影響はあまりなかったはでした。日本においては、そんなことよりも、他国が大規模な金融緩和を行う中、日銀が何もしなかったことが、その後の日本経済に甚大な悪影響をおよばしました。

だから、日本経済は、酷い低迷からなかなか抜け出せなかったのです。まさに、「日銀大ショック」とも呼ぶべき、日銀の怠慢により、リーマン・ショックからの立ち直りが世界でも最も遅く、サブプライムローンの震源地であるアメリカや、それを大量に運用したEUよりも、被害が大きくなってしまったのです。

あのリーマン・ショックは、"本来"は日銀がまともな金融政策さえ行っていれば、あそこまで酷いことになるはずのないものでした。

これは、今回の中国の不況に関しても同じようなことがいえます。そもそも、このブログでも何度か掲載したように、日本から中国向けの輸出は、GDPの2%程度に過ぎません。そもそも、日本はGDPに占める輸出の割合は、15%程度に過ぎません。日本を貿易大国であるとのファンタジーを抱く人がいますが、それは明らかに間違いで、日本は内需大国です。

さらに、中国投資もかなり少なく、最近では中国投資は先細りですし、日本企業は中国投資は控えるどころか引きあげに転じています。撤退する企業も多いです。この程度ならば、 中国の経済の破綻は、"本来"はさほど影響はないと言って差し支えないです。

しかしながら、もしも中国不況が本格化し、今後も続くとなると、それなりの影響は必ずあります。それを克服するために、日本以外の他の多くの国々が積極財政や、金融緩和を実行することになったとします。

それでも、日銀はそのまま追加金融緩和を実施せず、財務省が10%増税を強行すれば、これはもう完璧に第二のリーマン・ショックになる可能性が大です。この場合"本来"中国の経済停滞は日本にとっては軽微であるにもかかわらず、日本の金融政策や、財政政策のまずさで本家本元の中国の景気が回復しない限り、なかなか回復できないことになります。

しかし日銀が追加金融緩和に転じ、財務省が増税をしないか、それどころか減税をした場合は、日本はデフレから完全脱却して、中国の経済停滞の影響は軽微どころか、中国の経済とは無関係に日本の経済は大成長します。

アメリカは、リーマン・ショックのときには、震源地であったにもかかわらず、すぐに大胆な金融緩和を踏み切ったため、日本よりはるかにはやく、リーマン・ショックから立ち直りました。EUもサブ・ブライム・ローンの影響をもろに受けたのですが、それでも日本よりははるかに立ち直りがはやかったでした。

現在の日銀は、少なくとも当時のように金融引き締め的な金融政策はとっていませんから、もし中国の経済停滞で日本が甚大な影響を被ることになるとすれば、それはほとんどが10%増税による国内需要の落ち込みによるものになることでしょう。

中国の経済の停滞は、構造的なものですから、現体制が崩壊しないかぎり、継続します。そうなると、日本は長期間にわたりとんでもない不況に見舞われることになり、失われた20年どころか、失われた40年にもなりかねません。

これは、私自身が、当時はリーマン・ショックの本当の原因は日銀ショックであったことを見抜けなかったことの反省の上にたった分析です。これが理解できたのは、リーマン・ショックの二三年後のことでした。今になって思い返すと、真にお恥ずかしい限りです。

日本のマスコミ、官僚、識者の中には媚中派が多いですから、以上のような見解を述べる人は、ほとんどいません。今後、財務省の10%増税によって、日本の景気が大規模落ち込んだ場合、こういう愚かな人々は「それみたことか、中国様が風邪をひくと、日本は肺炎になるんだ。日本はダメなんだ。中国様次第なんだ。思い知ったか!」というファンタジーを、したり顔で語り始めることになります。

そんな光景が、妙にリアルに頭に思い浮かびます。

そんなことにならないためにも、10%増税は絶対に阻止すべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている〜データが語る「第二のリーマン・ショック」―【私の論評】中国経済の悪化をだしに、日本の積極財政を推進せよ(゚д゚)!



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2014年9月15日月曜日

消費増税スキップしても実体経済に影響なし!リスクは「増税利権に群がる人々」のみ―【私の論評】まともな企業なら日々直面するトレードオフという考え方ができない官僚の単細胞頭が国民を苦しめる(゚д゚)!

消費増税スキップしても実体経済に影響なし!リスクは「増税利権に群がる人々」のみ

自民党の谷垣禎一幹事長は13日のテレビ東京の番組で消費税率10%への引き上げについて、予定通りとして、その理由を「(税率を)上げた時のリスクは、まだいろんな手で乗り越えられるが、上げない時のリスクは打つ手が難しい」と述べた。

一方、翌14日、安倍晋三首相は、NHKの番組で「経済は生きものだからニュートラルに考える」と述べ、増税するともしないとも言っていない。

3党合意同窓会ともいうべき当時の3党首+藤井氏は、財務省に完全に洗脳された人たちだ。その財務省の考え方をよく表しているものが財務省サイトにある。「財務大臣になって財政改革を進めよう」というゲームだ(→http://www.zaisei.mof.go.jp/game/yosansinario/)。

これは、中期財政計画(平成25年8月)における政府の財政健全化目標、つまり国・地方の基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すをゲームにしている。

このゲームはホントにバカバカしい。実際にやってみれば数分で飽きるだろう。

「目標達成まであと●●兆円」と出る。そこで、目標達成のための手段としては、社会保障などの歳出の増減と税制改革という歳入の増減だけだ。歳出を減少させると基礎的財政収支はほぼその分改善する。歳出を増加させるとその逆だ。また、増税するとその分歳入が増加し、基礎的財政収支はほぼその分改善する。減税はその逆だ。

こうした単純な足し算・引き算だけでこのゲームはできている。歳出現状維持で「大増税」、すべての歳出大幅カットだと「増減税なし」となり、目標達成になる。大増税せず、一部歳出カットでは目標達成できない。要するに、何が何でも増税が必要であるというシナリオだ。

目標が達成できないと、おどろおどろしい画面が出てきて、最後に「目標を達成することが出来ませんでした。行政サービスの停滞など、将来世代にさらなる負担を残すことになりました」というナレーションが出てくる。


「財務省ゲーム」のように単細胞思考な官僚たち

実際の財務官僚も、このゲームのような単細胞思考をしばしば行っている。

しかし、実際の世界は違う。増税すれば経済が停滞することもある。その場合、課税対象が小さくなり、実際の歳入(=税率×課税対象)は少なくなることもよくある。

この考え方を生かせば、増税と歳出カット以外に、金融政策で名目成長できれば目標達成もできるのに、財務省のゲームにはそれがないので面白くない。

増税は税率の引き上げは、一般社会で言えば、製品単価の引き上げに相当する。製品単価の引き上げは、売上数の減少を招くことがあるので、売上(=製品単価×売上数)の増加に結びつかないことを誰もが知っている。しかし、財務省の予算の世界ではその常識が通用しない。

要するに、財務省のゲームは、基礎的財政収支の改善のためには増税が必要と言いたいだけなのだが、それは予算の中の机上計算だけで通用するが、実際の社会では間違いだ。

では、実際の社会では、何が基礎的財政収支を決めるのだろうか。それは、過去のデータから数字が出ていて、1年前の名目経済成長率でほぼ決まる。これは、先週の本コラムに掲載しているものだが、また掲げておこう。



増税は経済成長を阻害するので、財政再建にとっては最善手でない。むしろ経済成長を鈍化させ、財政再建を遅らせるので悪手である。だから、筆者は、上記のデータとともに、増税しないで財政再建をほぼやり遂げた小泉政権の話をする(8月4日付コラム→「増税なき財政再建」は可能だ!政府にとって「不都合な事実」となっている小泉政権の実績)。

増税が財政再建に役立たないとすると、なぜ財務省は増税を言うのだろうか。それは、増税は財務官僚の「歳出権」を増大させるから、というのが筆者の仮説である(興味のある方は『財務省の逆襲 誰のための消費税増税だったのか』を参照)。

言ってみれば、増税は財務官僚の差配する金額を増やすからだ。この仮説で面白いほどに、いろいろな現象が説明できる。

例えば、多くの政治家は消費増税に賛成であるが、それは増税による予算のおこぼれにありつけるからだ。経済界も増税に賛成する人が多いが、それは法人税減税をバーターとして財務省が差し出すからだ。

学者、エコノミストが消費増税を賛成するのは、財務省に逆らわない方が、親元の金融機関が外為資金の運用を出来るなど商売上有利になるからだ。マスコミが消費増税を推奨するのは、リークネタをもらいたいほかに、新聞の軽減税率を財務省からもらいたいためだ。

なお、脱線するが、先週の本コラムで朝日新聞から原稿を掲載拒否されたことを書いた。その理由は、朝日新聞批判ではなく、新聞業界が軽減税率を求めていて、それを「浅ましい」と書いたからだと、あるマスコミの人がこっそりと教えてくれた。新聞業界の軽減税率批判はタブーだと。

消費増税の賛同者は、その恩恵にあずかれるというのがポイントだ。

増税スキップで名目成長率は高まる

そうした消費増税論者の常套句の中で、実体経済に影響がありそうなものとして、消費増税をスキップすると財政破綻を想起し「金利が上昇する」、というものがある。

正直言って、こうした発言を政治家が口にするのを聞くと、笑いを堪えるのが大変だ。何もわからず誰かに吹き込まれているからだ。マジメに答えれば、金利上昇つまり価格下落になるなら、先物売りで儲かるから是非やればいい、となる。マーケットではこんなに簡単に儲かる話はあり得ないから、この金利上昇は確実というのはデマの類いだ。政治家も「風説の流布」ということで、金融商品取引法で御用なんていうこともあり得るので、注意したほうがいい。

ただし、この種の与太話は、有名な経済学者にもある。東大に「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」がある(→こちら)。

さて、消費増税を先送りすると金利が本当に上昇するのだろうか。上昇すれば、どのくらいなのか。増税論者の言うように対処できない「暴騰」はあり得るだろうか。

この問題に答えるために、過去の金利データを見よう。財務省サイトに各年限の日々の時系列データという素晴らしいものがある(→こちら)。その中で10年を取り出すと以下の通りだ。


前回の消費増税の97年4月までは、金利水準も高く、比較的変動幅も大きい。97年増税後は、低金利で変動幅も少ない。

これは、1カ月内の金利変動で見ても確認できる。上のデータを分析すると、97年増税前は平均▲0.02、分散0.105、97年増税後は平均▲0.01、分散0.024。

これらを見る限り、増税しなかった時の方が金利の変動幅は少ない。ただし、これをもって増税スキップしても金利は上昇しないとはいえない。増税後はデフレで低金利だったからだ。

増税スキップした方が名目経済成長が高まり、財政再建のチャンスが大きくなり、逆に財政破綻の可能性は少なくなる。これは、小泉政権での実績等のデータを見ればわかる。

増税論者の主張する、「増税しないと財政破綻」や「財政規律の緩みから金利上昇」というロジックは、その方が破綻しているのだが、皮肉にも少しだけ正しい。

というのは、増税スキップしたら、適切な金融政策とともに、名目経済成長が高まるだろう。その一方、名目経済成長率は、名目金利と長い目で見れば同じ水準になるので、その意味で名目金利も高まるのだ。

これは、デフレ以前に、長期金利水準が高かったことに対応している。

もっとも、だからとって、長期金利が上昇して経済が苦境に陥るとはいえない。上に引用した過去の28年間程度のデータでも、上昇幅は1カ月で最大限1%程度だ。この程度の金利上昇であれば、金融機関も「想定内」なので、大きな被害は出ない。まして、一般経済にとって、名目経済成長が高いので、何も問題にはならない。

こう考えてみると、増税をスキップするリスクは、実体経済の話ではなく、増税利権に群がる人々を激怒させるという政治的なものだけになる。さあ、安倍政権はどうするのか。

この記事は要約です。詳細は、こちらから!


【私の論評】まともな社会人・企業人ならできるトレードオフという考え方ができない官僚の単細胞頭が国民を苦しめる(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、ごもっともで、ほとんど何も付け足す必要もないですが、タイトルに多難点があると思います。

個人的には、以下のようなタイトルが良かったのではないかと思います。

消費増税スキップすると実体経済に悪影響なしどころか好影響のみ!リスクは「増税利権に群がる人々」のみ

私は、ブログ記事を更新すると、その内容をすぐにツイートするのですが、ツイートするときのタイトルはこちらにしたいと思います。こちらのタイトルのほうが、高橋洋一氏の上の記事提言内容により、即していると思います。

上のタイトルのままだと、増税スキップのメリットは、実体経済に悪影響を与えないことのみであるようにも受け取られかねません。

このタイトル、高橋洋一氏がつけたものではなく、編集者がつけたものかも知れませんが、これでは誤解を招いてしまいそうてず。

結論は、まさしく「増税をスキップするリスクは、実体経済の話ではなく、増税利権に群がる人々を激怒させるという政治的なもの」ということで、私も大賛成です。本当にこのとおりです。

では、どうしてこうなってしまうのか、その背景を以下に掲載しようと思います。

結論から言ってしまうと、官僚や、政治家にトレードオフ的な考えができないということです。

それには、特に上の高橋氏の「増税は税率の引き上げは、一般社会で言えば、製品単価の引き上げに相当する。製品単価の引き上げは、売上数の減少を招くことがあるので、売上(=製品単価×売上数)の増加に結びつかないことを誰もが知っている。しかし、財務省の予算の世界ではその常識が通用しない」という文章に注目すべきです。

こんなのは一般人の常識中の常識です。儲けたいからといって、値段をあげれば、今度は商品が売れなくなる。だからといって、安くばかり売っていれば、売れるかもしれないが、今度は、ほとんど利益が出ないということてず。

この「値段」と「利益」ということは、事業をやっている人は特にですが、そうではない人もかなり理解しやすいことだと思います。言ってみれば、あたり前のど真ん中です。

この「利益」と「値段」のような関係をトレードオフといいます。トレードオフに関しては、このブログにも何度か掲載したことがありますので、その記事のURLを掲載します。
永田町に駆けめぐる首相「原発解散」の噂 自民党に警戒感―【私の論評】これで騙されれば、国民が悪い!!悪いのは菅さんではない!!
液状化被害で大きく変形した護岸を視察した当時の菅首相 

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、以下にトレードオフに関する事柄のみ転載させていただきます。

ちなみに、 トレードオフとは、何かを達成するために別の何かを犠牲にしなければならない関係のことを言います。いわゆる「あちら立てれば、こちらが立たぬ」に相当します。 たとえば、在庫管理にはトレードオフがつきまといます。製品の在庫を減らすと、顧客の需要に答えられず、販売機会を逃します。逆に、製品在庫を増やすと、売れ残りが生じ、無駄に保管場所をとったり、余計な費用がかかります。経営者は、このトレードオフの問題を解消しなければなりません。単純にものを考えていては、会社が潰れます。
トレードオフ、特に企業におけるトレードオフは、大体三つに分類できます。

1.長期と短期のトレードオフ
これは、企業においては、現在のことばかり考えていると、会社の未来がなくなるといこともあるし、逆に未来のことばかり考えていると現在が疎かになり、すぐにも潰れてしまうかもしれないということです。
2.全体と個のトレードオフ
会社全体のことだけ考えていば、特定の部署や、個人が疎かにされるおそれがあります。逆に、個人や特定の部署のことのみ考えていれば、会社全体にとって、マイナスのこともあります
3.売上と利益のトレードオフ
 上に述べた、在庫と顧客サービスとの間のトレード・オフの関係なども典型例です。
この他にも販売促進と利益というトレードオフの関係もあります。販売促進費をかなり大きくすれば、確かに商品はこれを大きくしないようりは、売れますが、あまり大きくしすぎるとその分利益がなくなります。
これらの三つのトレードオフですが、対処方法は共通しています。要するにその時々でバランスをとるということです。

これは、やさしいようでいて、難しいです。また、この三つのトレード・オフが密接に絡む場合があります。

たとえば、販売促進費と利益は、確かにトレードオフの関係にありますが、場合によっては意図的に販促費を多くして、利益を犠牲にする場合もあります。

その例として、新規顧客をはかるために、敢えて新規顧客開拓に販促費を多大にかけて、現在は、損をしても、将来には益を出すという考え方もあります。これは、経費というよりは、投資という考え方に近いです。

この時点で、「長期と短期」と「売上と利益」のトレード・オフが絡まっています。

そうして、これに加えて、たとえば、販売促進関係部署に当面他部署を犠牲にしても、販売促進関係部署に優先的に経費を割り当たり、人材を多くしたりするなどということも考えられます。そうなると、「全体と個」のトレードオフともなります。

そうして、重要なのはこれらのバランスを常にはかり続けるということです。

そうして、これは、会社全体の情報を俯瞰できる経営者が方向性を決めることが必要不可欠になるのは、いうまでもありません。

それ以下の部署は、経営者が定めた方向性の中で、バランスをとるということになると思います。

細かなことは、担当部署や、個人が実施するとしても、大きな方向性ということでは、経営陣がこれを正しく明示せずに担当部署や個人が勝ってに動けば、バランスは崩れ会社は窮地に陥ります。

そうして、その窮地に陥っているのがまさしく現在の日本です。

その窮地の正体は何かといえば、デフレです。特に金融政策に関して、日銀が金融引締めと、金融緩和に関してトレードオフという考え方ができず、何かとをいえば、金融引締めばかり繰り返してきたこがその理由です。

そうして、政治家もこの考えができず、長年デフレが放置されてきました。しかしながら、さすがに昨年の4月から日銀の体制も変わり、こうしたトレードオフに基づく金融政策がようやっとできるようになり、実際異次元の包括的金融緩和がなされるようになりました。

しかし、残念なから昨年の10月には増税が決定れ、4月から増税され、政府は想定などと語っていますか、その実かなりの落ち込みです。

これなども、トレードオフ的な考え方ができれば、こんなことは絶対にしなかったはすですし、来年の10%増税などとんでもないということになるはすです。

では、民間企業ではトレードオフ的な考え方ができて、官僚や政治家の多くがそのような考え方ができないのはなぜかといえば、それも簡単なことです。要するに責任がないからです。責任を問われることがないからです。

民間営利企業の場合は、会社全体での利益という明確な尺度がありますから、トレードオフ的な考えができずに、失敗すれば、それはすぐに明るみに出ます。そうして、何回も失敗すれば、降格なり、減給になり、明確に責任をとらされます。

残念ながら、今の官僚は権限ばかりで、そのような責任を追求されることがありません。政治家も残念ながら、トレードオフの考えができなくても何とか、選挙で当選することができます。

増税すれば、結局のところ、デフレ脱却から遠退き、税収が減り、財務省が再配できる資金も低下し、財務省の省益も失われ、増勢派政治家の利権も大幅に減少するのですが、結局彼らは、長期と短期のトレードオフを理解でききず、目先の利益にとらわれているだけです。

これを正すには、官僚には、はっきりと仕事に責任を負わせることが肝要です。増税の例などわかりやすいです。税収が増えれば、それも裏付けのあることで、税収があがれば賞を与え、さしたる理由もないのに減れば罰するということにすれば、無責任な財務官僚はいずれ排斥されます。

政治家については、無論有権者の責任です。

となると、有権者もトレードオフ的な考えができないと、選挙のときの判断もできないということになります。

しかし、有権者の場合は、官僚や政治家と違い、デフレということで、十分罰をくらっています。

次の選挙では、間違ってもトレードオフ的な考えのできない政治家には、投票すべきではありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年2月24日日曜日

中国が公式文書で「癌症村」の存在認める、環境保護省が化学品の汚染リスクで報告―【私の論評】社会の変革を後回しにしたつけが効いてきた中国、習近平はラストエンペラーになる!!

中国が公式文書で「癌症村」の存在認める、環境保護省が化学品の汚染リスクで報告


この動画は、中国癌症村のYouTubeの動画で最も再生回数が多いものです。

【上海=河崎真澄】中国環境保護省が地方当局に通達した文書で、がんなど重度の内臓疾患が集中的に起きる「癌(がん)症村」の存在を認めていたことが分かった。健康被害が地域で多発する問題はかねて指摘されてきたが、当局が公式に認めたのは初めてとみられる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・

中国紙、新京報などは沿岸部や内陸部の工業地帯を中心に、少なくとも国内200カ所以上で「癌症村」があると伝えている。

環境汚 染による健康被害が社会問題化し、住民らの反発が政府に向かうのは必至で、同省は遅まきながら対策を取る姿勢を示した。通達では、危険な化学物質を扱う企 業の管理強化や、危険度に応じた化学品の流通過程の把握を地方当局に指示した。また、2008年から11年までの4年間に通報された環境汚染が568件あ り、うち約半数の287件は有害な化学品による汚染とした。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】社会の変革を後回しにしたつけが効いてきた中国、習近平はラストエンペラーになる!!

癌症村で、腹が癌で肥大した女の子。排尿排便も困難であるとのこと

このブログでは、中国は社会変革をしないと先がないことを掲載し警鐘を鳴らしてきました。以下にその記事のURLを掲載します。

中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!

 詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、このブログでは、日本銀行による円高政策が、中国を一見利しているように見えながら、その実、これが麻薬のように中国政府に作用し、社会構造が立ち遅れていても経済だけは伸びるという異常な状況を生み出したことに対して警鐘をならました。以下に、核心部分のみ掲載させていだきます。
本来まともな資本主義体制には、まともな社会構造が必要不可欠であり、少なくとも他の資本主義体制の先進国では、社会構造を変えてきました。無論では、日本をはじめとする、他の国々の社会が問題がないかといえば、そのようなことはありません。まだまだ、理想的ではなく、理想を追求すべきです。しかし、中国では理想を追求するどころか、多くの高級官僚やエリートですら、このようなことをそもそも理解していません。だから、古い社会構造のままの環境で、サラリーマンが市場に本気に対応しようとしても、そもそも、限界があるのです。だから、ますます、ストレスが高まるのです。

社会構造そのものを変えないと、まともな資本主義体制は、体裁だけでも整えることすらできません。しかし、これを変えなければ中国の経済の回復はありえません。しかし、中国政府はこれを変えることは、本気では考えてはいないようです。これは、今までも、日銀の支援があったし、これからもあるであろうという希望的観測があるからだと思います。

しかし、このようなことが長続ききするはずはありません。日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。

やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
上記では、社会構造の変革などという言葉を使いましたが、その意味に関してはあまり詳細には掲載してきませんでした。自分ではわかっていたので、あまり気にもせず、社会変革という言葉をつかったのですが、結局どういうことかといえば、先進国の当たり前の社会に近づけるということです。

癌症村で癌になった2歳の子供

日本も含めた、いわゆる先進国が先進国たる所以は、経済だけではなく、社会がある程度まともということもあります。日本だって、社会が立ち遅れていた時期はありました。しかし、特に明治以降特に大正時代以降には、日本は世界水準でみても、軍事力だけではなく、社会的にもある程度まともになり、先進国の仲間入りができていました。当時の大日本帝国憲法も、他の先進国と比較しても、まともな憲法でした。だからこそ、世界の他の国々も日本を先進国と認めたのです。

ところが、中国といえば、経済だけは発展したものの、社会構造は日本でいえば、江戸時代レベルです。いたるところに、社会の歪が生まれ、建国以来毎年平均2万件もの暴動が起きていて、最近はますます増えているという全くの異常状況です。中国の社会構造が遅れているというのは、どういいうことかといえば、上の記事にも出てているように、たとえば、眼症村が多く存在するということです。以下に、Google Mapで公開されている癌症村の分布図を掲載します。


上記の地図では、数十箇所なのですが、200箇所以上もあるというのですから、驚きです。中国の人口は、日本の十倍ですから、公正を期するため、日本にあてはめると、20箇所以上ということです。それにしても、多いです。日本にも、過去には公害問題が酷い場合もありましたが、最近の大気汚染の酷さと、この癌症村も酷いものです。日本でも、アスベストによる癌の疑いとか、印刷会社での癌の疑いなどが報道されたことがありますが、あくまで、限定された局地的なものであり、一つ村すべてが癌の発生率が高いなどということは、聴いたことがありません。

癌症村で、癌を患い手術を受けた老人


いかに、中国の環境対策が遅れているかを物語っています。この環境対策の遅れを許容してきたということが、社会構造の遅延を如実に示しているということです。

このような社会構造の遅れをいつまでも人民が許容するはずがありません。 癌症村の問題は、以前から指摘されていました。何も、最近突然ふってわいたものではありません。たとえば、2007年時点でも、以下のような報道がなされていました。

中国陝西省:「癌村」、化学汚染で 村民4割が死亡

詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、2007年といえば、北京オリンピツクの前の年であり、その頃の中国といえば、大発展をとげ、もう少しで日本を抜き世界第二の経済大国になると言われていた時期で、日本ではマスコミが中国の大発展を喧伝していた時期です。しかし、日本のマスコミは、こうしたネガティブな事柄については報道せず、とにかく中国幻想がまかりとおっていて、とにかく中国ビジネスはこれからどんどん伸びるということで、日本企業の中国進出を煽りまくっていました。そうした企業が、今になって撤退が困難であることに気づき慌てていることはこのブログの過去の記事にも掲載しました。

このような実体は、無論いくら中国政府が報道統制をしても、ネット上では知られており、この社会の遅れはいかんともしがたいとされ、習近平はラスト・エンペラーになるとも噂されています。ラスト・エンペラーとは、無論、現代中国共産党中央政府の最後の主席になるであろうという意味です。

習近平は周囲に「権力や名声は花のように移ろいやすい。政権とは薄情なもの。政治とは残酷なものである」と語ったといわれています。世の無情を体験的に知り尽くした言葉だと思います。天国から地獄へ、地獄から天国へ、人生とは有為転変とどまることがありません。そして世間の評価も移ろいやすいものです。この人生の機微を知り、絶望し、開き直った、ニヒリスト習近平は現実の政治をいかなるものと考えているのでしょうか。

ラスト・エンペラー習近平

絶対的価値観に絶望した男(ニヒリスト)が共産主義と心中してラスト・エンペラーになって死ぬと想定することはできないでしょう。同時に、共産主義を全否定して「全く異なる政治システムを立ち上げること」にも抵抗を感じるはずです。汚れた世間であっても生きておればそれなりに心にシミが付着するし、絆もできます。貸し借り関係もできまなす。「時の流れに身を任せ自在に生きる」という話も、言うは易く行うは難しです。

さて、このままでは、中国はまったなしです。このまま社会を放置しておけば、いずれ内乱が起こり、中国共産党中央政府の明日はないでしょう。社会変革をすれば、中国共産党中央政府が、そのまま存続することはなく、まったく別物になるしかありません。そうして、習近平は、時間稼ぎのために、これからも、人民の目をそらすため、反日政策を更に強化せざるをえません。日本側がどうしようにも、中国のこの体制が変わらない限り、日中間系は悪化する一方です。いずれにせよ、10年以内に結論を出さざるをえない状況に中国共産党中央政府が追い込まれていることは間違いありません。そう思うのは、私だけでしょうか? 皆さんは、どう思われますか?

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