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2018年6月21日木曜日

ごまかし正恩氏にトランプ氏激怒 中国で「段階的非核化」主張、中朝へ制裁強めるか―【私の論評】いずれに転んでも、金正恩はトランプの対中国戦略の駒として利用される(゚д゚)!

ごまかし正恩氏にトランプ氏激怒 中国で「段階的非核化」主張、中朝へ制裁強めるか

中国メディアは、習主席が平壌に戻る前の金委員長と19日に続いて再び会談し、
昼食をともにする様子を報じた 写真はブログ管理人挿入 い 

 中国の習近平国家主席と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がまた、「北朝鮮の非核化」でごまかしを図っている。19日に3度目となる首脳会談を行い、正恩氏は「段階的な非核化」を主張したのだ。「米中貿易戦争」が指摘されるなか、ドナルド・トランプ大統領が激怒するのは必至とみられ、両国への制裁を強める可能性もありそうだ。


 中国国営新華社通信などによると、正恩氏は、米朝首脳会談(12日)の合意を段階的に履行すれば、「朝鮮半島の非核化は新たな重大な局面を切り開くことになる」と述べた。非核化の進展ごとに制裁解除などの見返りが得られる「段階的措置」を訴えたかたちで、習氏は正恩氏の訪中を「高く評価する」と語った。

 トランプ政権は「北朝鮮が完全に非核化したことを示すまで制裁を解除することはない」(マイク・ポンペオ国務長官)との立場を堅持している。今回の習-正恩会談は米国を牽制(けんせい)していることが明白といえる。

 中朝の「裏切り」に対し、トランプ政権は断固たる姿勢を貫いてきた。

 中国・大連で5月7、8日に行われた2回目の中朝首脳会談後、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と語った。

 「正恩氏直結の女」とも呼ばれる北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が同月24日に、マイク・ペンス副大統領を罵倒し、「核戦争」に言及する談話を発表した後には、米朝首脳会談を打ち切る書簡を送りつけた。これに狼狽(ろうばい)した北朝鮮は再び米国にすり寄り、米朝首脳会談にこぎつけた。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官

 当然、米国は北朝鮮の動向を監視している。

 河野太郎外相が17日にテレビ番組で明かしたように、非核化をめぐってトランプ米政権は、核や生物兵器、化学兵器、ミサイルなど47項目をリストアップしている。

 ポンペオ氏は18日の講演で、非核化の手順などについて話し合うため、「遠すぎない将来」に再訪朝する意向を示した。

 北朝鮮との協議で、中朝両国の後ろ向きな態度が明らかになった場合、米国はどう出るのか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「トランプ氏は、今月の日米首脳会談後の記者会見で『北朝鮮に対し、300以上の追加制裁を用意している』と話している。中国に対しては、大手銀行への金融制裁にまだ踏み込んでいない。そうしたカードを振りかざしつつ、中国と北朝鮮に対し、『本当の非核化をやれ』と圧力をかけていくのではないか」と話した。

【私の論評】いずれに転んでも、金正恩はトランプの対中国戦略の駒として利用される(゚д゚)!

三度目の中朝首脳会談は、金正恩が平城に戻る前の19日開催されたというのですから驚きです。米朝首脳会談の後、ほとんど間髪をおかずに中朝首脳会談を開催するということは、金正恩は中国もないがしろにはしないことを表明したものであり、今後正恩は米中を同時に相手にする二股外交を展開することを表明したも同じです。

私自身は、このブログで、何度か米朝首脳会談の開催直後(半年以内)に中朝首脳会談が開催されることになれば、トランプ氏は北を見限るだろうと予測していました。そのため、これだけ早い時期に三度目の中朝首脳会会談が開催されたことに、正直驚いています。

私自身は、中朝会談をすぐに開催するかしないかが、金正恩にとっての踏み絵になるのではないかと考えていたくらいです。すぐに開催しなければ、トランプ大統領は正恩が、米国の対中国戦略の駒になることを意思表明したものとみなし、北の存続を許容するだろうとみていたのです。

その逆に、すぐに首脳会談を開催すれば、トランプ大統領は北を見限るであろと考えていました。

なぜそのように考えたかといえば、トランプ大統領が一時、米朝会談の中止を宣言したときの経緯からです。

トランプ米大統領は先月24日、シンガポールで6月12日に予定されていた、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との「米朝首脳会談」を中止する意向を明らかにしました。北朝鮮が、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、「朝鮮半島の非核化」を目指す姿勢を示した直後の発表でした。

これに慌てた金正恩は韓国の文在寅大統領と急遽、板門店で首脳会談を行い、米朝首脳会談開催への「確固たる意志」を表明し、決裂回避に動き始めました。トランプ大統領はツイッターで、自身で表明した首脳会談の中止から一転して、今度は開催に前向きな姿勢を示しました。

結局、米朝首脳会談は当初の予定通り、シンガポールで6月12日に開催されました。私は、突如首脳会談中止を表明し、相手が慌てたところで「やっぱりやろう」と揺さぶったトランプ大統領に、「ディールの達人」の恐ろしさを見ました。そして、金委員長は、完全に逃げ場を失い、「袋小路」に追い込まれました。

「ディールの達人」トランプ大統領

トランプ大統領は「朝鮮半島の完全な非核化の実現」を一歩も譲らないでしょう。また、拉致問題の解決なども、日韓(実質的に日本)に北の支援を任せたことからも、拉致問題の解決に関しても一歩も譲らないでしょう。

日本としても、拉致問題が解決しなければ、北朝鮮に援助するなどは一部の野党は賛成するかもしれませんが、与党はもとより、国民の大多数の感情が許さないでしょう。

今後、北朝鮮が再度何らかの声明を発表したり、行動を起こして、「核の全面放棄に積極的な姿勢」を示さなければ、北朝鮮に対し、300以上の追加制裁措置が実行されることになるでしょう。その中には、当然米韓演習の再開も含まれているでしょう。

トランプ大統領は18日、2000億ドル規模の中国製品に対し10%の追加関税を課すと警告。500億ドル相当の中国製品に対する米国の関税発表を受けて中国が同規模の報復関税を決めたことへの対抗措置だと説明しました。これに対し中国も、米国は「極度の圧力や脅し」をかけていると非難し、「質的かつ量的な」措置で反撃すると表明しました。

トランプ大統領は、2000億ドルの中国製品に対する関税に対抗して中国が再び報復措置を発表すれば、米国はさらに2000億ドルの中国製品に関税をかけるとも警告。これまでに総額4500億ドル規模の中国製品に対して関税適用を警告したことになり、中国の対米輸出額5000億ドル強の大部分がターゲットになった形です。


ナバロ通商製造政策局長は、貿易戦争では中国のほうが失うものが大きいとの見方を示しました。私もそう思います。

同氏は記者団との電話会見で「中国はトランプ大統領の強い決意を過小評価していた可能性がある」とし、「(米国からの)輸入を幾分拡大するだけで、米国の知的財産権や技術を盗むことをわれわれが容認すると思ったなら誤算だ」と述ました。

これを「はったり」とか「ディールの一部」と見る向きもあるようですが、金正恩が中国寄りの、中途半端な姿勢を見せたことから、今後の米朝の実務者協議で、北が「段階的な非核化」を主張した場合、米国は北にはさらなる制裁の強化、中国には貿易戦争に加えて金融制裁に踏み切ることになるでしょう。

北が「段階的非核化」にこだわりつづけるなら、トランプ大統領はこれを好機ととらえ、金正恩の約束の反故とそれを高く評価する習近平を徹底的に非難しつつ、それを理由に中朝制裁に踏み切るでしょう。それでも、金正恩が翻意をしなければ、軍事的オプションも行使し、中国に対して最大限の圧力をかけるでしょう。

いずれに転んでも、金正恩は、トランプ大統領の対中国戦略の駒として利用されるのです。中米両国を手玉にとるつもりだった、金正恩はとんでもない人物を敵に回してしまったと後に後悔するでしょう。いや、後悔する暇(いとま)もないかもしれません。

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2017年12月31日日曜日

【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!



 国連安全保障理事会は先週末、11月末に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に対する新たな制裁を決議した。石油精製製品の対北輸出上限を年間50万バレルに引き下げることが主な内容だ。

 本欄は国連安保理が8月に決めた上限枠200万バレルは中国の2016年の対北供給量に匹敵することから制裁効果に疑問を呈してきたが、トランプ政権も同じ見方を持っていたのだろう。今後の問題は、中国の習近平政権がきちんと履行するかどうかだ。

 米政府は中国などの対北石油製品輸出は年間450万バレルと推定し、今回の決議でその9割が削減されるという。50万バレルまで削減するためには、ロシアや中東など中国以外からの石油製品の対北積み出しルートを全面封鎖するのに加えて、中国も16年比で4分の1以下まで出荷量を抑えるしかなくなる。

 北朝鮮と国境を挟んで陸ルートで結ばれている中国からは闇取引で石油製品が高い価格で供給されてきたが、これからは習政権がそうした裏ルートを厳しく取り締まらない限り、米国から対中制裁を受ける恐れがある。

 中国は核実験やミサイル発射を繰り返す北に対し、今年春までは貿易を拡大してきた。国連制裁そのものが「大甘」だったからだ。グラフは中国の対北石油製品輸出と、北の最大の外貨獲得源である石炭の対北輸入の推移である。一目瞭然、オバマ米政権までは北京の対応はまさに馬耳東風といったところだった。

対中強硬策をちらつかせるトランプ政権になって、ようやく中国が重い腰を上げ、米国が示す厳しい対北制裁決議案に難色を示しながらも、緩い内容の制裁案にすることで妥協してきた。8月には北の石炭と鉄鉱石・鉄鋼製品輸出禁止に同意し、9月には米国案を骨抜きにしたうえで原油と石油製品の対北輸出規制に応じた。

 グラフは中国側が発表する税関統計が基本になっており、闇ルートは含まれないが、正式ルート上は中国の対北石油製品輸出、石炭輸入とも、3月頃から急減傾向にある。米フロリダでの米中首脳会談を機に、中国側の対北政策が徐々に変化したことをうかがわせる。

 トランプ大統領は習氏に対し、大統領選で公約していた対中高関税の適用を棚上げする見返りに対北朝鮮政策での対米協力を強く求める一方で、国連制裁破りの中国企業や地方金融機関に対し、制裁を科してきた。口先だけで、ほとんど対中制裁しなかったオバマ前政権と違って、トランプ政権は強硬策を辞さない態度を鮮明にしている。

 年明けの焦点は中朝国境の緊迫化だ。北がさらに核実験・ミサイル発射を繰り返すようだと、トランプ氏は石油製品に続き原油の対北供給禁輸を習氏に強く迫るだろう。習氏がそれに応じない場合や、制裁の抜け穴封じをしないときは、トランプ氏は中国の国有大手商業銀行への金融制裁カードを切るだろう。追い込まれるのは金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記ばかりではない。習氏もそうだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】習近平が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!

中国は、米国のトランプ大統領の言うことを最後には絶対に受け入れることになります。それには、主に2つの理由があります。まず一つは、中国は米国と絶対に戦争できなということがあります。二つ目は、米国が実質的に世界の金融を支配しているということです。

一つ目の中国は米国と絶対に戦争ができない理由は明らかです。軍事力では、中国は米国の足元にも及ばないということがあります。

米国のあらゆる軍事情報からも、中国が米国と戦争する能力を持っていないことは明白です。

米海軍は、中国が南沙諸島付近で軍事的な挑発行動を行った場合、米海軍のイージス艦から発射するクルージングミサイル1発で人工島を木っ端みじんにするでしょう。

米海軍イージス艦
中国が本土の海南島にある海軍基地から潜水艦を送り込もうとすれば、米国がフィリピン海溝に展開しているロサンゼルス型原子力攻撃潜水艦の餌食になるだけです。

中国は、「空軍部隊を南沙諸島に進出させる」と言っています。しかし、グアム島と沖縄に配備された米空軍のステルス性戦闘爆撃機F22数機が管制機E3Cの制御のもと迎撃を行えば、中国空軍の航空機が数十機、束になってかかっても撃ち落とされます。

中国は、「尖閣諸島は自国の領土である」と主張し、東シナ海に防空識別圏と称する不法な空域をもうけて外国の航空機の進入を阻止すると主張しました。しかし、米軍はほぼ毎日、B2爆撃機と新型B52をグアム島から発進させ、防空識別圏の上空をこともなげに往復していました。

中国が、米国の空母を西太平洋から追い出すために開発した「空母キラー」と称するクルージングミサイルDF21も速度が遅く、米国のイージス艦が容易に撃墜できることが判明しました。

DF21
DF21はマッハ10で米軍は撃ち落とせないなどと喧伝されていましたが、実際には大気圏突入後の着弾場所の最終調整として最終段階で減速する必要があり、米艦隊側の迎撃が困難となるマッハ10での空母突入等を行えるわけではありません。最終段階で減速するというのであれば、マッハ10のミサイルなど日米ともに開発可能です。

ロシアから買い入れて改造し、鳴り物入りで登場させた空母「遼寧」は、南シナ海で試運転を一回しただけで、エンジン主軸が壊れて使い物にならなくなりました。その後何とか改修したようですが、未だに中国の工業力では、空母を動かす二十数万馬力のエンジンを製造できないのです。

日本では、最近護衛艦「いずも」を空母化する話もでていますが、中国は「いずも」のような護衛艦をつくる能力もないのです。

護衛艦「いずも」
中国が、米国と戦争すると騒ぎたてても単なる宣伝に過ぎません。米国のマスコミ同様、日本のメディアも中国政府の誇大な発表を鵜呑みにして、そのまま伝える悪習を早くやめるべきです。

次に、米国が実質的に世界の金融を支配していることも、中国にとってはかなりの脅威です。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

米国の金融街 ウォール・ストリート
米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。

それに、中国の米国債保有は6月に5カ月連続で増加し、外国勢で首位の座を取り戻したようです。米財務省が15日発表した6月の対米証券投資動向によると、中国の米国債保有額は1兆1500億ドル(約127兆円)で、前月比で443億ドル増加。日本は1兆900億ドルで、5月に比べて205億ドル減少しました。日本は昨年10月に外国勢の米国債保有で中国を抜いて首位となっていました。

これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。

そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。

その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。

以上の2点からいって、中国は米国の要求をいずれ聴くしかなくなります。

今年も今日を残すのみとなりました。本年中はお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。

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2017年9月12日火曜日

米朝緊迫の中…日本が独自制裁、朝鮮総連“強制解体”検討 加藤健代表「幹部をがんじがらめに」―【私の論評】暴走の段階に合わせて制裁を強めよ(゚д゚)!

米朝緊迫の中…日本が独自制裁、朝鮮総連“強制解体”検討 加藤健代表「幹部をがんじがらめに」


 北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を、国際社会が追い詰めつつある。「6回目の核実験」強行などを受け、米国主導で国連安全保障理事会は11日、制裁決議を全会一致で採択した。原油輸出や石油精製品の供給に上限を設けるなど、石油の規制に初めて踏み込んだ。体制の存立に関わる「石油禁輸」を軸に、「正恩氏の個人資産凍結・渡航禁止」まで盛り込んだ原案は、最終案から外れた。米朝間のつばぜり合いが活発化するなか、専門家は、日本独自で実施可能な制裁として、「朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)の破産申し立て」を提案する。 

 「北朝鮮の最近の挑発的で(地域を)不安定化させる行動と、米国民や世界の人々を守るために米国が取る措置について話し合う」

 ドナルド・トランプ米大統領は9日、首都ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで開いた閣議の冒頭、こう語った。ホワイトハウスが明らかにした。

 フランスメディアは、トランプ氏が同日、エマニュエル・マクロン仏大統領と電話会談し、北朝鮮に対し、断固とした対応を取る必要性で一致したと伝えている。

 米国が11日の制裁決議案採決に向け、着々と準備を進めるなか、北朝鮮は猛反発を見せた。

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省は11日に声明を発表し、「国連安保理を盗用して、史上最悪の『制裁決議』をでっち上げようとヒステリックに策動している」と米国を批判。さらに、「世界は、われわれが米国が想像もできない強力な行動措置を連続的に講じて白昼強盗である米国をいかに治めるかをはっきり見ることになるであろう」と報復を匂わせた。

 米国に対する北朝鮮の狂乱ぶりは、11日の採決を目指す「最強制裁決議案」の厳しさを示していた。

 原案では、北朝鮮への原油、石油精製品、天然ガス液などの供給や販売、移転を禁じていた。さらに、有力な外貨獲得源である繊維製品の全面禁輸、北朝鮮が海外に派遣している労働者の雇用や賃金支払いの禁止も含まれていたのだ。

 正恩氏個人にもメスを入れるべく、制裁案では、渡航禁止や資産凍結の対象に正恩氏が入っており、団体には国営の高麗航空や朝鮮労働党中央軍事委員会、朝鮮人民軍が入っていた。

 朝鮮半島情勢に詳しい麗澤大の西岡力客員教授は「厳しく実行すれば、かなりの効果があり、正恩氏の秘密資金を扱う『朝鮮労働党39号室』を含めた宮廷経済が機能停止に陥る可能性がある」と指摘していた。

朝鮮労働党39号室
 最強制裁の実施に向けては、北朝鮮に融和的なロシアと中国の反対で見送られた。ただ、これ以上、北朝鮮を放置すれば「核・ミサイル」開発は最終段階に入り、狂気の独裁者が「悪魔の兵器」を握りかねないということもあって、原油輸出や石油精製品の供給に上限を設けるなどでロシアと中国の賛成を取り付けた形だ。

 米国の「核の傘」は効力を大きく失い、日本は北朝鮮から理不尽な要求を突き付けられる可能性があるのだ。日本も手をこまねいてはいられない。北朝鮮の暴走を阻止する手立てはないのか。

 北朝鮮の不正行為を告発している「アジア調査機構」の加藤健代表は「日本単独で実行可能な制裁がある。朝鮮総連への破産申し立てだ」と語った。

 朝鮮総連は、北朝鮮を支持する在日朝鮮人組織として、1955年に発足した。東京都千代田区富士見に中央本部を置き、北朝鮮と国交のない日本で事実上の「大使館」とされている。

 一方、さまざまな対日工作や事件にかかわってきたとされ、破壊活動防止法に基づく調査対象団体となっている。北朝鮮本国に多額の不正送金を行い、「核・ミサイル」開発にも寄与した。

朝鮮総連の入居するビル
 その朝鮮総連は債務約627億円の大半を整理回収機構(RCC)に返済しなかった。東京地裁は先月2日、利息も含めて約910億円の支払いを命じている。それだけ多額の債務がありながら、朝鮮総連は競売された中央本部ビルに「賃借」という形で入居を続けている。

 加藤氏は「朝鮮総連の破産手続きをすることで、破産法に基づき、不自然な金の流れについて説明を拒絶したり、嘘をいったりすると罪になる。総連幹部をがんじがらめにできる」と指摘する。現在、RCCに「朝鮮総連の破産申し立て」を行うよう、政府に要望書を提出する準備を進めている。

 北朝鮮が、水爆を含む核兵器を持てば、中東諸国やテロリストにも拡散する危険性がある。東アジアだけでなく、世界の平和と安定にとって「最悪の事態」といえる。

 前出の西岡氏は「独裁者は『自分の命が危うい』と思ったとき以外は譲歩しない。まずは最高レベルの経済制裁を突き付け、それでも正恩氏が『核・ミサイル』開発をやめなければ、米国主導で『斬首作戦』を含む北朝鮮攻撃を準備する。そうすれば、核・ミサイルや、拉致問題に関する実質的な話し合いをできる可能性がある」と話している。

 北朝鮮の恫喝(どうかつ)に怯んで「核保有を認めよ」「経済援助せよ」などという声もある。肉親も殺害する独裁者に自ら譲歩することは、国や世界を売るような行為ではないのか。

【私の論評】暴走の段階に合わせて制裁を強めよ(゚д゚)!

朝鮮総連、正式名称は「在日本朝鮮人総聯合会(ざいにほんちょうせんじんそうれんごうかい)」は、朝鮮民主主義人民共和国を支持する在日朝鮮人のうち、「主体 (チュチェ) 思想」を指導的指針としてすべての活動、運動を展開しているとする人々で構成される団体です。

1945年(昭和20年)結成の在日朝鮮人連盟がGHQによって「暴力主義的団体」として解散させられた後、新たに設立された在日朝鮮統一民主戦線を経て1955年に設立。略称は朝鮮総聯(ちょうせんそうれん、チョソンチョンニョン、조선총련)で一般にこの名称で呼ばれることが多いです。報道などでは朝鮮総連とも表記されます。最高責任者は、2012年より許宗萬中央常任委員会議長が務めています。

許宗萬
法人格がない「権利能力なき社団」。朝鮮総連中央議長を始めとする数名の幹部は北朝鮮の代議員(国会議員)を兼任しています。過去に複数の元構成員が土台人となって北朝鮮問題に関与し、祖国防衛隊事件文世光事件を引き起こした歴史的経緯から、公安調査庁から破壊活動防止法に基づく調査対象団体に指定されています。

文世光事件は1974年8月15日に大韓民国(韓国)大統領・朴正煕夫人
の陸英修が在日韓国人の文世光によって射殺された事件
以下に、朝鮮総連の組織や活動について簡単に触れておきます。

北朝鮮の労働中央党(以下・党中央)には対南担当秘書が置かれ、その支配下に、
一、社会文化部(対南連絡部) 
二、統一戦線部 
三、対外情報調査部 
四、作戦部 
五、人民武力部、偵察部
が配置されています。

この中の「二、統一戦線部」は、もとの対外連絡部で、77年に金日成の指令により新設された、合法、非合法両面の活動を担当する部署です。在日朝鮮総連連合会(以下・総連)は、この部の第七課の所属ですが、貢献度は極めて優れているため、統一戦線部の直接指導が通常となっています。

現在のこの部の関心は、対南浸透より、日本からの資金調達に傾いています。総連の不正送金が行われるようになったのはその為でした。

この統一戦線部には、祖国平和統一委員会、祖国統一民主主義戦線(祖国戦線)、韓国民主民族戦線(民民戦)、朝鮮統一汎民族連合(汎民連)など、計七つの外郭団体があります。これらの外郭団体の中で特筆すべきなのは、民民戦でしょう。

民民戦は唯一韓国国内にあるとされる組織です。北朝鮮国内では、この民民戦は韓国国民により自主的に組織されたと宣伝されていますが、実態は韓国内に地下党を建設する目的で作られた北朝鮮の非合法組織です。韓国内にこの地下党を建設するに当たっては、日本にある北朝鮮の非公開組織が人的にも資金面でも側面支援を行いました。

このように朝鮮総連は明らかに北朝鮮の対日本工作組織です。


そうして、この朝鮮総連の本部ビルは平成26年3月、競売にかけられましたが、約22億円で高松市の不動産業「マルナカホールディングス」が落札しました。それが2015年に入り、山形県酒田市の不動産会社「グリーンフォーリスト」に約44億円で転売する契約が1月28日付で結ばれました。この契約には、四国で不動産業を営み、マルナカの前社長とも親しい山内俊夫元参院議員が仲介しました。自民党に所属していた元政治家が介在したことから、当時政府関与の見方が浮上しました。

菅義偉官房長官は、転売の話が明らかになった同年1月23日の記者会見で、こうした見方を払拭するかのように、本部ビルをめぐる動きについて「裁判所による競売手続きを経て、マルナカホールディングスに移転した。後は民間のことだから、それ以降について政府として承知していない」と関与を否定しました。外務省や情報機関関係者も異口同音に否定していました。

競売問題は、破綻処理で多額の公的資金が投じられた在日朝鮮人系信用組合の不良債権問題が根底にありました。競売は朝鮮総連に対する約627億円の債権を引き継いだ整理回収機構が申し立てたもので、政府が朝鮮総連の継続使用に少しでも手助けしたことが発覚すれば国民の反発を招くのは避けられないです。

競売問題は、野田佳彦政権が拉致問題解決に向けた日朝協議を進めるため、競売回避をめぐり朝鮮総連と秘密裏に協議したことがありました。しかし、24年12月の衆院選で民主党は敗北、政権は安倍晋三政権になったことで白紙に戻っていました。

結局、日本政府の関与の有無とは無関係に朝鮮総連が本部ビルを継続使用することで、北朝鮮が訴え続けてきた要求は実現したことになりました。

日朝協議は、「夏の終わりから秋の初め」で合意していた平成14年の拉致被害者に関する初回報告がほごにされそのままになっています。日本政府は、あくまで「民間の取り引き」によってでも朝鮮総連が本部ビルを継続使用できることで新たな交渉の糸口を探ることもできると踏んでいるようです。

これでは、朝鮮総連の既得権益が単に維持されただけで、北朝鮮が新たな利益を得ることにはならないので、拉致問題にプラス材料にはならないでしょう。

債務者や、債務者をバックにした業者が競売物件を買い戻す行為は「その資力があれば弁済に充てるべきだ」として民事執行法で禁じられています。しかし、落札後に転売された同一物件を継続して使用することを想定した規定はなく、継続使用は、いわば法律の抜け穴をつく「脱法ケース」だったといえます。

本来、血税を使った不良債権問題で、債務者が立ち退かずに入居し続けることに国民の理解が得られるはずもありません。しかも、その債務者が、北朝鮮の対日本工作組織なのですから、なおおさら理解など得られるはずもありません。

いずれにせよ、朝鮮総連が本部ビルに居座ることができることになったことで、日本政府は拉致問題を前進させるしかない状況に追い込まれましたが、その後現在に至るまで何も進展しませんでした。

このような状況にある朝鮮総連をそのまま放置して、本部ビルに居座らせておく必要などないはずです。

朝鮮総連のことを朝鮮大使館などと発言する人々もいます。これを受け大使館と認めましょう。認めた上で北朝鮮とは国交が無いので大使館は置けません。お引取いただくべきです。

さらに、戦争になると、通常敵国にいる公使(大使)らは国外退去となります。大体は開戦前に本国から帰国命令が出ます。そのため、大使に帰国命令が出るとその直後に開戦することもありえると受け取られます。

第二次大戦中、ずっと中立だったトルコが連合軍の圧力で1945年1月にドイツ、日本に形ばかりの宣戦布告するのですが、この時日本公使らは国外退去を命じられました。

既に日本の敗戦の色濃く、世界中が連合に参加していた時でしたので東西南北四面楚歌状態の日本人には行き場も無ければ帰国する術もありませんでした。

パニックになった日本大使館内で職員の妻が自殺するという事件も発生しました。また領事館員が身分を隠してトルコ国内に潜伏するも進退窮まり夫婦で自害して果てるという事件もありました。

トルコは形ばかりの連合参加で一兵も動かさず日本と積極的に敵対しようと言う意思も無かったにもこのようなことになってしまいました。総連の職員は、こういうことになっても、このときの日本人のような過酷な運命をたどることはないでしょう。何しろ日本国内には彼らを助ける人間も大勢います。おそらく、中国を経由して北朝鮮に帰国することも容易でしょう。

ブログ冒頭に記事で、加藤氏は、「朝鮮総連の破産手続きをすることで、破産法に基づき、不自然な金の流れについて説明を拒絶したり、嘘をいったりすると罪になる。総連幹部をがんじがらめにできる」と指摘していますが、朝鮮総連を大使館とみなして、総連職員を全員国外退去にすべきではないでしょうか。

その他にも、このブログで述べたように、日本が敵基地攻撃能力を持ち実際に攻撃できる準備を整えたり、核シェリングをすることも検討すべきです。

そうして、これらの手段を体系的に準備し、北朝鮮の暴走の程度にあわせて、制裁の度合いを強めるようにしていくべきです。職員の退去も最初は、幹部だけ、次は中間幹部、その次は初級幹部、その次は全員と段階を踏むべきです。北朝鮮が暴走すれば、北朝鮮は何も得ることはできず、ますます制裁が厳しくなるだけであることを悟らせるべきです。

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2017年5月7日日曜日

北朝鮮への武器輸送支援、67歳邦人野放し ミグ21戦闘機や大量ロケット弾…国内法整備追いつかず、制裁「本気度」問われる政府―【私の論評】憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化したつけがまわってきた(゚д゚)!

北朝鮮への武器輸送支援、67歳邦人野放し ミグ21戦闘機や大量ロケット弾…国内法整備追いつかず、制裁「本気度」問われる政府

 核・弾道ミサイルの開発に絡み、北朝鮮が求める巨額の外貨や物資、技術者の移動阻止が世界的課題となる中、日本の対北制裁への取り組みについて専門家から厳しい見方が出ている。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが、北朝鮮の制裁違反を繰り返し幇助(ほうじょ)したと断じた企業の日本人経営者の男(67)についても、国内法の未整備もあり制裁措置は取られていない。安保理決議には法的拘束力がある。違反を放置すれば日本の対北制裁への“本気度”を疑われかねない。(加藤達也)


 2013年7月、パナマ政府によって北朝鮮貨物船「チョンチョンガン」が拿捕(だほ)された事件が契機となり、北朝鮮海運事業に関与する香港企業が浮上した。

パナマで拿捕された北朝鮮貨物船「チョンチョンガン」 
 拿捕された船舶は北朝鮮の海運大手「オーシャン・マリタイム・マネジメント(OMM)」(本社・平壌)の所有で、キューバから北朝鮮へ向けミグ21戦闘機の胴体など大量の武器を運搬していた。

「中核的存在だった」

 調査の過程で、OMMと密接に連携する香港企業の経営者である日本人の男の存在が判明。一方、専門家パネルは安保理決議違反で14年7月、OMMを制裁対象に指定し、船舶の移動も禁じた。ところが、香港企業が複数の船舶をOMMに代わって運航、制裁は骨抜きになっていた。

 パネルは香港企業が同年12月、貨物船「グレート・ホープ」を中国から北朝鮮に移動させた事例などをつかみ、制裁違反に加担したとして香港企業を制裁対象に追加した。

 パネル報告書などによると、男は1990年代、OMMの前身の頃から北朝鮮の海運に関与。事実上のOMM東京事務所の所在地と同じ東京・新橋駅前の雑居ビルの一室に海運会社を登記していた。少なくとも香港で北朝鮮のフロント企業11社を運営し、中国人と協力して多数の船舶を動員。「海運分野で北朝鮮の制裁違反を手助けするネットワークの中核的存在だった」(海事関係者)

 ネットワークは制裁で身動きが取れない北朝鮮海運のため船舶を融通し、武器輸送などで暗躍。昨年8月、エジプトで大量の携行式ロケット弾が押収された事件にも関与していた。

法整備が追いつかず

 香港企業を経営していた日本人の男について、パネル報告書は実名を記載。日本政府関係者によると、男は現在、活動を休止しているとみられる。ただ、日本政府が安保理制裁決議違反だとして制裁や法的措置を科した形跡は見られない。

 対北安保理決議(1718、2094)は制裁違反を行った個人に対して、渡航禁止措置を科すことを加盟国に義務づける。

 ただ、日本政府は現在、在日外国人の核・ミサイル技術者や一部の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部らについて訪朝後の再入国を認めないとの措置にとどまっている。国内法の整備などが追いついておらず、今後も類似事例で制裁を科すことは困難な状況だ。

 元パネル委員の古川勝久氏は「日本は取り組みが遅れている」と指摘した上で、「国連制裁は複雑化し、専門的な技術や法的知識を要する。米国や英国のように日本政府内にも制裁専門の組織が必要だ」と話した。


文世光事件 残した教訓

 重大な犯罪に関与した北朝鮮協力者に対する捜査や取り締まり、制裁について、これまでにも日本の姿勢が消極的だと指摘されたことはあった。韓国で1974年8月15日に起きた朴正煕大統領暗殺未遂(文世光)事件は代表例といえる。

 在日本韓国居留民団(当時)の団員で大阪市出身の文世光元死刑囚=当時(22)=は73年11月、朝鮮総連の大阪地方幹部の男にそそのかされ、資金提供や射撃訓練などを受けて朴大統領暗殺を決意した。

 文元死刑囚は74年5月、大阪停泊中の北朝鮮船「万景峰号」内で思想教育を受け、7月には大阪府警の交番から実弾入りの拳銃を盗み出し、8月に渡韓。日本統治からの独立を祝う式典壇上にいた朴大統領を銃撃したが失敗し、近くの陸英修夫人を射殺した。

朴正煕大統領暗殺未遂事件
 韓国当局は、朝鮮総連(北朝鮮側)の差し金で首脳殺害を企てたテロ事件とみて、日本国内での背後関係解明も視野に捜査。朝鮮総連の指令や支援のもとに行われた犯行と断定し、「対韓国テロの拠点」である朝鮮総連への捜査や、文元死刑囚を犯行に仕向けた男の身柄引き渡しを要請した。

 一方で日本側は、初動で文元死刑囚の渡航に協力した日本人女性を逮捕したものの、朝鮮総連の関与などについて解明できないまま捜査を終結させた。共犯とみられた男の身柄引き渡しにも応じなかった。

 朴大統領は「日本は赤化工作の基地だ」と指弾。日本政府の姿勢に不満を抱いた韓国民が在韓国日本大使館に乱入するなど、日韓関係は国交正常化後、最悪の状況となった。

 事件について、北朝鮮の対日工作に詳しい西岡力麗澤大客員教授は「日本がテロの基地になっていたことを示す事例だ」とし、「北朝鮮のテロに対して日韓がともに戦う体制が構築できず、結果として70年代後半に多くの日本人が北朝鮮に拉致されたといえる。テロと戦わないと必ず新たなテロが起きるという教訓を残した事件だ」と総括している。


【用語解説】国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネル

 安保理制裁委の下で対北朝鮮制裁決議違反を調べる組織。北朝鮮の核実験を受けて2009年に設置され、定員は8人。調査は国連憲章7条により加盟国への法的拘束力がある安保理決議に基づいており、加盟国は調査への協力義務がある。調査結果は毎年、報告書にまとめられ、決議案にも勧告する。

【私の論評】憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化したつけがまわってきた(゚д゚)!

北朝鮮の武器輸出に関しても、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会で制裁違反を調べる専門家パネルがまとめた最新報告書の概要が2月8日に発表されています。

この報告書では、エジプトに昨年寄港した船舶から大量の北朝鮮製武器が見つかり、同国の弾薬類の押収量としては過去最多だとしています。北朝鮮が制裁逃れの手法を駆使して大規模な武器取引を続けている実態が浮き彫りとなりました。

最終目的地や具体的な押収量は明らかになっていません。北朝鮮による武器輸出は過去の安保理制裁決議で全面禁止されているのですが、核・ミサイル開発の資金源の一つとなっている可能性が高いです。

複数の外交筋によると、船舶から押収された武器には携行式ロケット弾なども含まれていました。エジプト政府関係者は、こうした武器が隠されていたコンテナの最終目的地はエジプトではなく、取引にも関与していないと主張しているといいます。

エジプトのほか、北朝鮮と軍事協力してきたシリアやアフリカに向けられたものだった可能性もあります。北朝鮮の武器取引を巡っては2009年、バンコクの空港に着陸した貨物機から携行式地対空ミサイルや対戦車ロケット砲など総重量約35トンが押収された例があります。

2009年12月、バンコクのドンムアン空港で、大量の北朝鮮製武器を積んでいるのが見つかった貨物機
共同通信が入手した報告書の要約は、北朝鮮による制裁逃れの手法が「より巧みになっており、規模や範囲も増している」と指摘しました。北朝鮮の制裁対象団体や銀行は海外の代理人を使って活動を続けており、世界有数の金融センターを通じて送金するなど国際的な銀行システムへのアクセスも維持しているとしました。

原則として取引を禁じられた石炭などの鉱物資源の輸出も続けています。

北朝鮮は昨年2回の核実験を強行、弾道ミサイル発射を繰り返し、安保理は2度にわたる決議採択で制裁を強化したのですが、専門家パネルは「制裁履行が不十分で一貫性がない」と指摘、加盟国の「政治的意思」が欠けていると厳しく批判しました。

北に対する制裁は、結局のところあまり効果が無いようです。

以上のように闇ルートで北朝鮮の武器が世界中に販売されたり、北朝鮮が求める巨額の外貨や物資、技術者の移動がなされている実体を見ると、危惧されるのは、テロリストへの武器の流出です。

テロリストばかりではなく、工作活動に従事する各国の諜報機関も、非合法な武器の調達のため、実は北朝鮮を便利に利用しているのではないでしょうか。

北朝鮮が核開発を強力に推進している現実を見れば、現在の脅威は深刻です。北朝鮮の核兵器がテロリストの手に渡る可能性さえあります。
ISなどと協力し、北朝鮮が表に姿を現さず核テロを起こすこともあながちないともいえません。

とすれば北朝鮮は、既に東京でもワシントンでも、或いはモスクワや北京さえも、テログループにより核爆弾で吹き飛ばす能力を保持しているといえなくもありません。そのような計画がないとしても、少なくとも、そうした潜在能力を秘めているのは確かです。

これは、世界の安全保障に対する深刻な脅威です。日本国内にはなぜか、親北系組織が多いです。朝鮮総連、朝鮮学校、朝鮮出身者によるパチンコ等を一掃すべきです。北朝鮮の工作組織が、日本を活動拠点の一つにするのは、何としても阻止しなければなりません。

北朝鮮の制裁違反を繰り返し幇助(ほうじょ)した企業の日本人経営者の男(67)についても、国内法の未整備もあり制裁措置は取られていません。このままだと、北朝鮮の日本への脅威を自ら真似ていしまっているというこの事実が、日本にとって有害であるばかりではなく、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねません。

これらを排除することは、現在の日本国憲法の枠組みでも十分にできるはずです。

先日は、このブログで憲法典が変われば何もかもがすぐに変わると思い込むのファンタジーに過ぎないことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。 
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では自衛隊のトイレットペーパーが自前であることや、陸自の国内のフアーストエイドキットがあまりにもお粗末なこと、陸自の自衛官の実弾訓練が米国の軍楽隊以下であることなどを例にとって、これらの事柄は憲法典を変えなくても十分できるはずのものなのに、できていないことを批判しました。

そうして、憲法典が変わればすべてが変わる単純に思い込むことはファンタジーに過ぎないことを主張しました。

本日は、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねない状況であることを指摘しましたが、この事実からしても、現憲法下でもできるはずの、北朝鮮への制裁が法整備の不十分でできない現状からみても、やはり憲法典が変わればすべてが変わると思い込むのはファンタジーに過ぎないことが良く理解できます。

世の中には憲法典のないまともな法治国家も存在します。それはイギリスです。


グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、通称はイギリス)における憲法とは、議会決議や裁判所の判例、国際条約、慣習等のうち、国家の性格を規定するものの集合体です。憲法典が存在しないことは、憲法が存在しないことを意味するわけではないのです。

憲法典としては制定されていないため、不文憲法または不成典憲法であるといわれています。憲法を構成する大部分は成文法(憲法的法規、law of the constitution)であり、議会によって改正・改革が行われる軟性憲法であるのですが、慣習に基づき、伝統的に憲法を構成するとされる法典が、その他の法律のようにむやみに改廃されることはありません。

成文法の他、様々な慣習法(憲法的習律、conventions of the constitution)に基づく権力(国王など)の権能の制限、貴族の権限及び儀礼の様式なども、「イギリスの憲法」を構成する要素に含まれています。

議会主権を基礎とすることから、通常の手続に従って議会が法律を制定することにより、憲法的事項を制定、変更することが可能です。

そうして、憲法典のないイギリスでは、イギリスという国の成り立ちや、国柄、法典制定の過程で論議されて生まれてきた国家に関する基本的考え方を憲法としているのです。

この考え方からすれば、憲法典の文字面を多少変えたからといって、すぐに何もかもが急に変わるというわけではないことがご理解いただけるものと思います。

もし日本国憲法に「人間の命は永遠である」と書いた途端に日本人が不死身になったり、そこまでいかなくても日本人の多くが長寿にはならないということです。

日本の対北制裁への取り組みについて、真剣に考えれば、日本という国の成り立ちや国柄、その他日本国に関する基本的な考え方も議論されなければならないはずです。そのようなことを真剣に考えてこなかったのが今までの日本です。

だからこそ今日北朝鮮への制裁が十分にできないどころか、世界から日本が北朝鮮の隠れた支援国と見做されてしまいかねない状況を招いてしまっているのです。これは、与党にも野党にも重大な責任があります。

憲法論議を憲法典の字面の改変程度に矮小化して、議論してきたつけがまわってきたのです。

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2017年1月19日木曜日

アパホテル批判で愛国心あおる支那 国家としての制裁82・9%支持というアンケート結果も―【私の論評】不可避の隘路に直面した習近平(゚д゚)!

アパホテル批判で愛国心あおる支那 国家としての制裁82・9%支持というアンケート結果も

アパホテルの各室に置かれてある書籍 今回支那が問題にしたのは右側の書籍

 ■党大会控え活発化

 【支那総局】「南京大虐殺」「慰安婦の強制連行」を否定する書籍を客室に備えたとして支那外務省が日本のアパホテルを批判した問題で、支那国内ではホテルを運営するアパグループへの反発が高まっている。一方、日本国内では「本を撤去しない」としたホテル側の姿勢に賛同する声が多く寄せられている。

 アパホテルの客室におかれた書籍をめぐり、支那外務省の報道官が日本国内の言論に対して異例の批判に踏み切った。今秋に5年に1度の中国共産党大会を控え、国内では歴史問題を前面に出した愛国キャンペーンで党や指導部の求心力を高めようとする兆しもある。

 これまで支那外務省は日本の靖国神社について「戦争を美化している」と決めつけながらも、一般国民の参拝には反対しない立場を示すなど、歴史問題に関しては政府や政治家と国民の間で一定の線引きをしてきた。

 この問題をめぐっては中国共産党機関紙、人民日報系でタカ派の論調で知られる環球時報が連日報道し、外務省報道官のコメントも同紙の記者の質問に答えたものだ。

 同紙が17日、ネット上で「支那による国家としてのアパグループ制裁を支持するか」とのアンケートを実施したところ、3万3千人以上が参加し、うち82・9%が支持を表明したという。

 支那では海外への旅行者も多い27日からの春節休暇を前に、複数の予約サイトでアパホテルの予約ができなくなっている。同サイト「携程」では18日現在、アパホテルを検索しても表示されない状態だ。(北京 西見由章)

                   ◇

 東京都内にあるアパホテルは「システムエラーにより、数日前から(宿泊予約などの)Webサイトへアクセスができなくなっている。原因は不明。復旧のメドは立っていない」と話している。

【用語解説】「本当の日本の歴史 理論近現代史学II」

 書籍のタイトルは「本当の日本の歴史 理論近現代史学II」。元谷外志雄代表が「藤誠志」のペンネームで月刊誌「Apple Town」に連載している社会時評エッセーをまとめたもので、英訳も付いている。

 書籍では南京大虐殺について、「(日本軍の)攻略時の南京の人口が20万人、一カ月後の人口が25万人という記録から考えても、あり得ない」などと否定。さらに上海大学教授の指摘を引用し、「いわゆる南京大虐殺の被害者名簿というものは、ただの一人分も存在していない」と記している。

【私の論評】不可避の隘路に直面した習近平(゚д゚)!

APAホテルに上記のような書籍が置かれているのは、特に保守界隈では10年以上前から常識です。何しろAPAグループはいわば、保守論客としての田母神俊雄氏の生みの親です。

2008年10月31日、田母神氏は、アパグループ主催の第1回『「真の近現代史観」懸賞論文』に応募した「日本は侵略国家であったのか」が最優秀藤誠志賞を受賞しています。ところが、同論文が政府見解と異なる主張であるとして問題視され、航空幕僚長の職を解かれ航空幕僚監部付となりました。同日付で「航空幕僚長たる空将」でなくなったことにより、一般の空将と同様の60歳定年が適用され6ヶ月の定年延長が発令され、定年延長が11月3日までとされ、同日をもって定年退職しました。

田母神俊雄氏
いままでAPAホテルに何万、何十万人という外国人が泊まってきたはずです。しかも、ご丁寧に元谷外志雄氏(APA総帥)の英訳も掲載して室内に置いていた南京虐殺否定の小冊子は、10年以上にわたってつい最近まで何の問題にもなりませんでした。

しかし、今になってなぜ、問題になり、支那外務省の報道官が日本国内の言論に対して異例の批判に踏み切ったのでしょうか。これは本当に不思議です。

本日は、その背景について、私の思うところを掲載したいと思います。

まずは、最近の支那共産党の状況についてふりかえっておきます。それについては、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載しておきます。
南シナ海で横暴の支那に米空母で鉄槌か 演習実施で牽制―【私の論評】トランプ新大統領による対支那強硬策で習近平失脚は確実(゚д゚)!
カールビンソン
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に現状の中国共産党、その中でも権力闘争に関するる部分を引用します。
習近平にとっては、オバマが大統領だったときの米国は、かなり御しやすかったと思います。支那という国は、ほとんどが自国内部の都合で動く国です。外交も自国内部の都合にかなり左右されます。というより、最初に自国の都合があって、その後に外交があるというとんでもない国です。

オバマが大統領だったときは、習近平はまず支那国内を優先して、国内対応を中心として動いていたものと思います。習近平にとっては、オバマは国内の習近平反対派の、胡錦涛派(共青団)の李克強氏、上海閥と太子党の江沢民派のほうが、余程大きな存在だったに違いありません。
胡錦濤(左)と江沢民(右)
オバマ大統領は、習近平にとっては、胡錦濤や江沢民のほうが余程大きな存在であったに違いありません。

しかし、トランプ氏が大統領になれば、胡錦濤や江沢民よりも、トランプ氏のほうがはるかに大きな存在になるに違いありません。

今までは、習近平は、中国国内の胡錦濤派と江沢民派と腐敗撲滅運動という名の下での権力闘争を繰り広げて、時折米国対応をしていれば、比較的楽に権力闘争を戦えたのですが、トランプ大統領になれば、そのようなわけにはいかなくなります。

そうして、反習近平派はここぞとばかり、権力闘争を強めてくるに違いありません。習近平としては、今までは2つの派閥にプラスアルファ程度で戦ってこられたのが、派閥が3つに増え、しかも増えた派閥が、それまでの派閥よりはるかに強力になったというような状況になります。
さて、このような状況に追い込まれた習近平です。トランプ氏の対中国攻勢は今までにはない強力なものになりそうです。

これについては、石平氏の論評が参考になります。石兵氏の論評のリンクを以下に掲載します。
「黒船」トランプが支那・習近平政権に仕掛ける、3つの最終戦争
石平氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に要約を掲載します。

中国に3つの戦いを挑むトランプ新大統領
習近平政権を襲うトランプ政権という「黒船」 3つの戦い…負ければ政権崩壊も中国の習近平政権にとって2017年は文字通り、内憂外患の年となりそうだ。 
トランプ氏は日本の安倍晋三首相と親しく会談して同盟関係を固めた一方、ロシアのプーチン大統領やフィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談し、オバマ政権下で悪化した両国との関係の改善に乗り出した。見方によっては、それらの挙動はすべて、来るべき「中国との対決のための布石と理解できよう。 
そして昨年12月初旬、トランプ氏は米国外交の長年のタブーを破って台湾の蔡英文総統との電話会談を敢行し、中国の「一つの中国の原則」へ挑戦状をたたき付けた。対中外交戦の外堀を周到に埋めたトランプ氏はいきなり北京の急所をついて本丸へと攻め込もうとする構えを見せたのである。 
人事面では、トランプ氏は新設の国家通商会議委員長と米通商代表部代表のそれぞれに、対中強硬派の面々を任命して対中国貿易戦の準備を整えた一方、国防長官のポストには強硬派軍人のマティス元中央軍司令官を起用した。南シナ海での中国の軍事拡大を断固として封じ込める姿勢を示したのである。  
一方の習近平政権は、情勢の激変に心の準備も戦略上の布陣もできていないまま、退路のない「背水の陣」を強いられる羽目になっている。 
貿易戦争の展開によって中国の対米貿易が大きく後退すれば、輸出こそが命綱の中国経済は深刻な打撃を受け、既に危険水域にある経済の衰退にさらなる拍車をかけることとなろう。 
そして南シナ海では、今まで「有言不実行」のオバマ政権の生ぬるさを幸いに中国の軍事拡大がやすやすと進んできたが、トランプ政権と米海軍が中国の封じ込めに本気になって当たれば、習政権の拡大戦略は頓挫し立ち往生してしまう可能性も十分にあろう。 
習政権にとって政治的リスクが最も高いのは台湾問題への対処だ。ニクソン訪中以来、対米外交を含めた中国外交の土台は台湾というれっきとした国を国として認めない虚構の上に成り立っている。 
結局、トランプ政権が仕掛けてくる「貿易戦争」「南シナ海の対決」、そして「台湾問題の争点化」という3つの戦いに、習政権は今後、いや応なく応戦していくしかない。 
習近平は、トランプ新大統領と「貿易戦争」「南シナ海の対決」そうして、「台湾問題の争点化」という3つの戦いに応戦しなければならないのです。

そうして、国内では上記に加えて尖閣問題の未解決、AIIBの有名無実化、一帯一路構想の事実上の頓挫などによって、これから経済が短期に回復する見込みもなく、軍事的にもめぼしい成果をあげることもできず、まさに、習近平としては何をどうして良いのかわからないような状況に陥っています。

そうして、ブログ冒頭の記事にもある通り、今秋には、5年に1度の中国共産党大会を控えています。習近平としては、わらにもすがる思いで、権力闘争に利用できるものは何でも利用して自らの立場を有利にしようと躍起になっていることでしょう。

その中には、通常の神経からすると理解に苦しむものがあります。その一つが、アパホテルの客室におかれた書籍をめぐり、支那外務省の報道官が日本国内の言論に対して異例の批判並びに環球時報によるアンケートです。

日本の一民間企業の経営者の書籍に関して、このようなことをするというのは本当に異常としか言いようがありません。

これと同程度もしく、それを上回るような異常事態もありました。それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平総書記 共産党員に1.5万字の「習語」書き写し指令―【私の論評】司馬遷を妄用しないと統治の正当性を保てない断末魔の習近平(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、習近平政権の最近の異常ぶりを掲載しました。

それは、以下の二点です。

まず第一に、習近平総書記の最側近で、中国共産党内では事実上のナンバー2といえる王岐山・中央紀律検査委員会書記長が、2015年4月23日習近平総書記の母校・清華大学での講演のため訪中したフランシス・フクヤマSAIS(ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院)教授、青木昌彦スタンフォード大学名誉教授らと面会し、習近平政治について、以下のように講釈したというのです。
 「中国において皇帝というのは、『天子』と呼ばれる神なのだ。中国はいまでも神が統治するから、司法は必ず、中国共産党の指導のもとに行動しなければならない。 
 各国の最高法である憲法は、人間の手によって書かれた紙きれにすぎない。だから憲法が定める最高権力者の大統領は、神ではない。また、日本には天皇がいて、英国には女王がいるが、天皇も女王も神ではない。神がいるのは中国だけだ」 
 王書記は、大胆不敵にも「習近平=神」論をブチ上げたのである。
これは、支那古代の歴史家司馬遷の歴史観そのままです。そうして、習近平総書記に対する神格化は、2016年になって本格化しました。2月28日、習近平総書記は党中央弁公庁を通して、「両学一做」(党章・習近平講話を学習し、党員として合格する)運動を、8779万共産党員に向けて発布したのです。

これは、約1.5万字ある党章と、あまたの習近平講話を、全党員が年末までに手書きで書き写すという指令でした。かつて毛沢東が「毛沢東語録」によって国民を洗脳したように、「習語」(習近平語録)で洗脳し始めたのです。

トランプ氏が新大統領となる前の、昨年のオバマ政権の末期の時期に、習近平政権は、これだけのことをしなければならないくらいにタガが緩んでいてどうしようもないような状態になっていたことです。

そうして、今年習近平はトランプ氏の仕掛ける貿易戦争」「南シナ海の対決」、「台湾問題の争点化」という3つの戦いに挑まなければならないのです。

こう考えると、習近平の焦りは手に取るように理解できると思います。だからこそ、通常ならあり得ない日本の一民間企業に過ぎないアパホテルを批判するというような、とんでもない行動に出たのです。そうして、これは何も偶発的に起こったことではなく、すべて習近平が企んだやらせでしょう。

まさに、今習近平は、不可避の隘路に直面しているのです。今年は、習近平が失脚するか、少なくとも失脚への道筋が明らかにになることでしょう。

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