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2017年6月13日火曜日

「ポスト安倍」も問題だらけだ! 財務省や日銀の言い分信じて財政や雇用理論を間違える人―【私の論評】今のままでは再びデフレスパイラルの無間地獄にまっしぐら(゚д゚)!

「ポスト安倍」も問題だらけだ! 財務省や日銀の言い分信じて財政や雇用理論を間違える人

「人手不足なのに賃上げが進まないのは謎だ」と主張したり、財政危機を強調したりする人は相変わらず多い。本コラムの読者であれば間違っていることがわかるだろう。こうした人たちはなぜ間違えるのか。

 人手不足でも賃金が上がらないことをテーマにした書籍も出ている。労働経済学や経営学、社会学、マクロ経済、国際経済の専門家や、厚生労働省、総務省統計局、日銀のエコノミストなど20人以上が書いているというので読んでみたが驚いた。

 誰一人として、構造失業率(いくら金融緩和してもそれ以上下げられず、インフレ率だけが高くなる失業率の水準)を論じていないのだ。そして、無意識なのだろうが、既に完全雇用が達成されているという前提で論が進められている。


22名の馬鹿が、現代日本の労働市場の構造に関する驚きの
無知をさらけ出した書籍 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 ちまたのエコノミストでも。「賃上げが進まない理由は経済学で解明できない」という人もいるが、単に構造失業率を間違っただけだ。構造失業率を「4%台だ」と公言した人もいる。

 本コラムの読者であれば筆者が試算した構造失業率が2%台半ばであることをご存じだろう。構造失業率を自分で計算できない人に限って、日銀が「3%台半ば」と言っていたのをうのみにする。そうした意味で、かつての日銀は罪作りである。

 さすがに、最近の日銀はこの誤りに気がついてきたので、徐々にトーンダウンしている。そのうち「2%台半ば」と修正するだろう。

 次に「財政危機」である。これを強調する人は単に財務省シンパであるか、財務省の言うことをうのみにする人たちだ。財務省は、バランスシート(貸借対照表)の右側の「負債」だけを強調するが、財政を分析するには、日銀を含めた統合政府で、左側の「資産」も見る必要がある。そうすれば、日本に財政問題はほとんどないことが分かる。これは、最近来日したノーベル賞学者のシムズ教授やスティグリッツ教授も述べていることだ。

 財務省の意見を妄信してきた人の中には、「シムズ氏やスティグリッツ氏が間違っている」と豪語する人もいる。もしそうなら、ノーベル賞学者を論破して世界的な脚光を浴びるだろう。

 これまで財務省の言いなりになってきた人はいまさら意見を変えられないのだろう。もし変えたら自分の否定になってしまうからだ。

 このように、日銀と財務省がこれまで行ってきたキャンペーンの負の弊害が出ているのだが、まだ日銀のほうがましだといえる。「リフレ派」が審議委員に登用されるなど、誤った意見を変えようとしている。

 一方、財務省にはそうした気配が全く感じられない。財政再建に関する誤解のほうが広く流布しており、その是正は容易ではない。マスコミは特にひどく、財政危機が前提として話が進められる。

 安倍晋三政権はそれを信じていないことがただ一つの救いだが、残念なことに「ポスト安倍」は財政危機を妄信している人ばかりだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今のままでは再びデフレスパイラルの無間地獄にまっしぐら(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が指摘しているように、「賃上げが進まない理由は単に構造失業率を、本当は2%台半ばであるものを3%台半ばであると間違っただけ」、日銀からさらに量的金融緩和をすれば、失業率は2%半ばにまでさらに下がるはずなのに、日銀は量的金融緩和をしないので、失業率が高含みのまま推移しているので、人手不足でも賃金があまりあがらないという状況が続いているのです。

それにしても、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という書籍を執筆した労働経済学や経営学、社会学、マクロ経済、国際経済の専門家や、厚生労働省、総務省統計局、日銀のエコノミストなど20人以上は、この構造的失業について理解していないようですから、以下にそれを解説します。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。

過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。

過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

以上から、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと私は考えます。そうして、このくらいのことは、高校の経済社会の教科書にも掲載されている程度の内容です。

ただこの数値自体には私は、それほどこだわっていません。これは、政策判断するときのひとつの目安にしかすぎないものです。ただいずれにせよ日銀の3%台との見方は高すぎです。

実際には構造的失業と思われていた部分でも循環的要因に反応するところがあります。そのため金融政策で考えたときは、やはり期待インフレ率と実際のインフレ率を目安にしなくてはいけないです。2.7%が真の構造的失業の水準か否かはそれで判断できます。

物価目標も未だ達成できないのですから、これはどう考えてみても、未だ失業率は、構造的失業率には達していないとみるべきです。日銀は、すぐにでもさらなる量的緩和を実施すべきです。

それにしても、書評では、労働経済学や経営学、社会学、マクロ経済、国際経済の専門家や、厚生労働省、総務省統計局、日銀のエコノミストなど22名の気鋭といわれる人々が、高校の政治社会で教えられていることも理解しないで論評するというのですから、全く本当に困ったものです。この状況では、ほとんどの政治家が金融政策について無知なのも無理はないのかもしれません。

「財政危機」に関しても、日本政府は、そのような状況には全くないことは、このブログで何度も掲載してきました。そもそも、政府の資産(日本政府は、世界で最も巨大な資産を持っている)も考慮し、統合政府ベース(政府と日銀の連結決算ベース)で財政を考えた場合、日本政府は借金まみれどころか、今年からは確実に金貸しに転じています。

それについては、何度もこのブログに掲載しています。その代表的なものを以下に掲載します。
「国の借金」巡るホラー話 財務分析すれば怖くない―【私の論評】鳥越より悪質な都市伝説が現実になる新手の辛坊らの発言には気をつけろ(゚д゚)!
詳細は、この記事を御覧ください。この記事より、統合政府の債務の推移のグラフを以下に掲載します。
以下は統合政府純債務残高の推移を示したものです。

このグラフから日銀の金融緩和政策の国債の買い入れによって、純債務残高が、2014年度でも政府純債務GDP比は35%まで減少していたことがわかります。 
さらに、下のグラフは、統合政府の債務残高の予測まで含めた推移を示したものです。

日銀が国債を買えば買うほど統合政府の政府純債務は減ります。 
日銀の年80兆円の国債買い入れペースだと、2017年度には純債務から、純資産になるため、財政再建は完璧に終了することになります。実質的には、2016年度中に終了するか、2016年半ばを過ぎている現在もうすでに終了したと言っても良いくらいです。 
蓮舫氏は無論このようなことも理解していないのでしょう。実質財政再建が完了した問つても良いこの時期に、さらなる増税など全く必要ありません。 
増税すれば、我が国の60%占める個人消費の低迷を招き、GDPの伸びが阻害され、かえって税収が減ることになるだけです。
 このグラフの元となった、統合政府の債務の計算方法(ブログ管理人自らが計算)など、リンク先をご覧いただければ、わかります。興味のある人は是非ご覧になって下さい。高橋洋一氏なども同じような計算をしています。

そうして、これに関しては、ブログ冒頭の高橋洋一氏が指摘するように、財政再建に関する誤解がまかりとおっていて、政治家の多くが日本政府は借金まみれであると信じ込んでいます。だから、増税するのが当然であると思い込んでいます。そうして、その背後には無論財務省が存在します。

実際、先日もこのブログに掲載したように、自民党の野田毅氏と村上誠一郎氏が16日に立ち上げた「アベノミクス批判」の勉強会は、財務官僚が裏から手をまわしてつくらせたものだとみられています。

この勉強会の真の目的は、公約通り安倍首相に消費税増税を実施させることでしょう。驚いたのは、自民党議員が約60人も参加したことです。野田さんも村上さんも、一匹狼のような存在で、自分で人を集めるようなタイプではないし、あの2人が声をかけても簡単には人が集まらないはずです。60人も集まったのは、財務省が裏で動いたからだと考えられます。




マクロ経済に関しては、民進党は馬淵議員と、昨年の夏の参議院選で落選した金子洋一氏のみがまともに理解しているのみで、あとはほとんどの議員が理解していません。民進党が政権をとれば、日本はすぐにでもデフレに逆戻りです。

ところが、残念ながら自民党の議員の大部分もマクロ経済音痴であり、構造的失業率は無論のこと、日本政府は莫大な借金をかかえていて、増税をしないととんでもないことになるという財務省の作り話を信じています。信じていないのは、安倍総理とその側近のわずかな人たちだけです。

こうなると、確かに高橋洋一氏の主張するように、「ポスト安倍」は財政危機を盲信している人だけになり、そのような人が総理大臣になれば、日本はまたデフレに舞い戻ることになります。何のことはない、今のままだと、まかり間違って民進党が与党になろうと、自民党が与党になろうと、デフレに舞い戻ることは必定なのです。

それは、お隣の韓国をみれば良くわかります。朴槿恵大統領のときから、雇用がかなり悪化していたのに、朴槿恵元大統領は金融緩和政策を採用することはありませんでした。さらに、文在寅新大統領も全く金融緩和をする兆しがありません。積極財政もしないようです。このままだと、韓国経済はますます落ち込むことになります。そうなると、文在寅政権も長くは続きません。

文在寅新大統領の経済・雇用関連関連政策金融緩和策・積極財政などの景気循環的
な対策は一切含まれていない。このままではデフレスパイラに突入するのは必定
日本のほとんどの政治家も、韓国の文在寅大統領をはじめとする政治家もも、回復しつつある日本の経済と、さらに悪化しつつある韓国経済の差異は、どこにあるのか全く気づいていないようです。その、差異は日本は不十分といいながらも、金融緩和を実施しており、韓国はしていないということです。

日本では、若者雇用がここ数十年で最高となり、韓国は最悪になっている真の要因はここにあるのです。

今のままでは、「ポスト安倍」の日本も韓国と同じようなことになります。自民党もマクロ経済音痴が総理大臣になれば、デフレに舞い戻り、若者はまた最悪の就活に悩まされることになります。また麻生政権以前の政権のように短命政権が続くことになります。そうして、終いには、いずれかの政党に政権交代されることになります。

政権交代した政党も、まともなマクロ経済政策を実行しなければ、デフレから抜け出すことができず、短期政権となります。そうして、何度政権交代をしても、まともなマクロ経済政策を実行しなければ、50年後くらいには日本は先進国ではなくなっているかもしれません。

かつては、先進国だった、アルゼンチンのように発展途上国になるかもしれません。

そうなってからでは遅いです。ポスト安倍を狙うような人は、最低限財務省のキャンペーンに踊らされないように、マクロ経済を勉強しなくても良いですから、マクロ経済対策の方向性だけは間違わないようにすべきです。

若手の政治家らは、ある程度は勉強して、正しいマクロ経済政策を実行できるようにすべきです。そうすれば、有力な次期総理大臣候補になれます。なにしろ、現状では小泉進次郎議員を筆頭に、若手議員もほとんどがマクロ経済音痴です。

そうして、安倍総理は「ポスト安倍」も視野に入れて、マクロ経済政策を理解する若手を育てていただきたいものです。

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2016年11月22日火曜日

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ

グラフ、写真、図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 今年7~9月期の国内総生産(GDP)1次速報値は、実質季節調整値で前期比0・54%増、年率換算で2・2%増となった。3四半期連続のプラスで、その水準もなかなかのものだ。ただし、その中身をみると喜べない。

 GDPを構成する主要項目別にみると、7~9月期の実質季節調整値で民間消費が前期比0・1%増、民間住宅が2・3%増、民間企業設備が0・03%増、政府最終消費が0・4%増、公的資本形成が0・7%減、輸出が2・0%増、輸入(控除)が0・6%減だった。

 住宅と輸出が伸びたのはよかったが、消費は微増、設備投資は横ばい、政府投資はマイナス、輸入もマイナスと今一歩だ。景気という観点では、消費と設備投資が伸びてこそ、ちゃんと成長しているといえるわけで、現状は不十分だ。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。(注:太字としたのはブログ管理人)

 政府投資も16年度当初予算などを前倒し執行した4~6月期の反動が出て、マイナスになった。内需が弱い反映として輸入のマイナスもある。

 その中で、住宅は、住宅ローン金利の低下が購入を促した形だ。金融機関はマイナス金利に猛反対しているが、内需を増加させるということが示された。

 輸出が増えたのは、GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費等に支えられたものだ。

 以上のように、個々の項目を見ると、日本の景気が良くなっていると胸を張るのは難しい。

 それにもまして、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数だ。消費者物価と卸売物価を合わせたような性質で、その推移によってデフレ脱却しているかどうかの判断基準にもなる。


 四半期デフレーターの前年同期比をみると、1年前の15年7~9月期からの推移は、1・7%、1・5%、0・9%、0・7%と徐々に低下し、ついには今期は0・1%低下とマイナスになってしまった。

 国内需要デフレーターも1年前からマイナス圏に落ち込んでいる。この数字は1995年頃から、マイナスになっており、これがデフレ転落を示すともいわれていた。

 第2次安倍晋三政権誕生後の2013年当初から急速に上昇し、14年からはプラス圏内で推移していたが、今期は13年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。つまり、一時デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレ突入の瀬戸際になっているのだ。

 原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格下落によって輸入デフレーターが低下するため、逆にGDPデフレーターの上昇要因となるからだ。

 雇用は相変わらず好調だが、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要な状況である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

高橋洋一氏のブログ冒頭の記事において、やはり太字にした部分は、重要です。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。

消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。

増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。

この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。

平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。


名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。

さらに、あまりにも長く続いたデフレの悪影響で貯蓄率も減っています。以下にそのグラフを掲載します。


これだけ、貯蓄ゼロの世帯が増えると、元々消費を控えているのに、増税されれば、当然のことながら、これらの世帯の人たちは、将来不安で一層消費を控えるようになるでしょう。

上の高橋洋一氏の指摘と、このような統計資料を合わせて考えてみると、どう考えても財政政策として、増税をしたのは全くの間違いです。財政政策として実施するなら、まずは増税などせずに、給付金対策をするとか、あるいは減税などをすべきでした。

8%増税は全くの間違いで、これを放置しておけば、景気は良くなりません。日銀による金融緩和によって、雇用はかなり改善しましたが、これも今のままではいずれ悪くなる可能性もあります。

やはり、高橋洋一氏が上記で指摘したように、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要です。それも、貯蓄ゼロの世帯を減らすには、中途半端な政策では成就できないでしょう。

日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。

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2013年1月5日土曜日

新春特別番組 維新・改革の正体を語る(SakurasoTV)−【私の論評】今後の私たちは、新自由主義の呪縛から逃れ、真性保守主義の立場を貫くべき!!

新春特別番組 維新・改革の正体を語る(SakurasoTV)

 

 

戦後のめざましい復興と力強い発展を支え続けた我が国の経済成長が、10年以上にも亘って停滞しているのは何故なのか?「リセット」「ぶっ壊す」「改革」という胡散臭い理念こそが「日本弱体化」の元凶であることを、大局的な視点から、具体的な事例とともに明らかにしていきます。

出演:

宍戸俊太郎(筑波大学名誉教授・国際大学名誉教授)

藤井聡(京都大学大学院教授)

聞き手:水島総(日本文化チャンネル桜代表)

【私の論評】今後の私たちは、新自由主義の呪縛から逃れ、真性保守主義の立場を貫くべき!!

本年の新春の動画では、この動画がもっとも見応えがあったし、テレビ番組などは、見るべき価値のあるものは、ほとんどありませんでしたので、本日は、この動画を掲載することにしました。

今の日本の惨憺たる有様は、デフレのときに緊縮財政と、金融引き締めをやるという前代未聞k
政策をとったことが原因であることは、あまりにもはっきりしすぎていますが、この動画ではどうしてこのような政策をとるようになってしまったのかというところで、特に財政政策についてあますところなく解説されているのが凄いです。特に、番組で提示されていた、「日本をダメにした六つの勢力」 というフリップは、この問題の要因を的確に示していました。そのフリップを下に掲示させていただきます。


このブログでは、過去に日本の長く続くデフレの原因は、緊縮財政と金融引き締めによるものであることは、何回も掲載してきました。特に昨年は、日銀による金融引き締めを糾弾してきました。緊縮財政に関しては、昨年はあまり掲載はしませんでしたが、これもデフレの大きな要因であることに変わりはありません。そのため、今年は、財政政策についても積極的に掲載していくつもりです。この記事は、その第一弾です。

それにしても、これだけの勢力が正論を捻じくりまわし、日本をデフレスパイラルの奈落に落とし込んでしまったということを:決して忘れてはならないと思います。そうして、その勢力は、今でも生き残っていて、安部自民党政権に対して高い障壁となってたちはだかっています。しかし、安倍政権は、デフレ脱却を公約にあげて選挙で勝ったわけですから、これらの勢力にも成仏していただかなければならないと思います。

私は、この中でも、特にたちが悪いのが、「新自由主義経済イデオロギー」だと思います。官僚主義とか、アメリカの日本弱体化、社会主義陣営による「対日工作」などは、過去から連綿として続けられているものであり、多くの人がかなりその悪弊を理解しやすいと思います。


しかし、「新自由主義」は、「新」と銘打っているため、一見新しいくて魅力的に映るところがあります。実際私も随分前には、その恐ろしさを知らず、魅力的に感じたときもあります。学生の頃は、丁度フリードマンの理論を解説するテレビをみて、このような考え方もあるのかと、なにやら消化不良のような感覚はあったものの、妙に納得したことを覚えています。しかし、どうにも馴染めない考え方でした。ちなみに、以下に新自由主義についてwikipediaから引用させていただきます。
新自由主義の思想は、個人の自由と尊厳を守るために、私的所有、法の支配、自由市場、自由貿易のような経済的自由が必要であり、このような自由に支えられた社会はより多くの個人を幸福にすると主張し、福祉政策は全体主義に繋がるとして批判する。
統治様式は、国家行政が官僚によって計画的に社会を統治するのではなく、市場原理や民間企業の経営方法を行政に導入することで効率的で質の高い公共サービスの提供を目指す、ニュー・パブリック・マネジメント(NMP)と言われるような方法をとり、社会全体に市場原理を適用する。
政策は、主に経済に関する規制緩和、商業・産業の自由化、国営企業の民営化という三つの原理が含まれ、大企業や高額所得者の減税、社会保障の削減、インフレ抑制を目指す金利政策、小さな政府、労働運動の抑制、経済のグローバル化といった政策が組み合わされる。1960年代から70年代の経済停滞と政府の財政悪化はこれらの政策が解決するとされ、多くの国で政策に取り入れられた 。
ミルトン・フリードマン

新自由主義を主張した主な学者・評論家にはミルトン・フリードマン、ジョージ・スティグラー、ゲーリー・ベッカー、ジェームズ・M・ブキャナンなどがいる。また新自由主義に基づく諸政策を実行した主な政治家にはロナルド・レーガン、マーガレット・サッチャー、中曽根康弘、などがいる。
新自由主義は冷戦に勝利をもたらした思想として世界中に広まり、1992年頃に思想的に全盛期を迎えたが、労働者に対する「自己責任」という責任転嫁は、格差社会を拡大したとの批判もあり、また、チリにおけるシカゴ学派の功績は事実と大きく異なると主張しているジョセフ・E・スティグリッツは新自由主義的な政策で国民経済が回復した国は存在しないと主張している。
韓国ではIMF管制下で新自由主義路線をとった金大中政権下で20万人以上もの人々が失業し、事実上「刑死」(=失業による自殺)に追い込まれた者も多い。その後を受けた盧武鉉政権では「左派新自由主義」の名の下に格差の解消に取り組んだが、根本的な政策転換はなされないまま格差がさらに広がる結果となり、経済が回復しても正規雇用が増えずに非正規雇用が増加する「両極化」が大きな社会問題となった。
2008年に発足した李明博政権は、法人税減税と規制緩和を中心とした新自由主義政策を実施している。
20世紀末の西ヨーロッパでは、新自由主義の台頭を受け、イギリス労働党のトニー・ブレアが唱え、公正と公共サービスの復興を訴える第三の道に代表される中道左派政党を含む政権が台頭した。ユーロ同入前夜である97年の時点で、イギリス、フランス、イタリアといったEUを構成する主要三ヶ国に加え、スウェーデン、ポルトガル、ギリシャを含めた6ヶ国が与党となっていた。
日本では元京都大学准教授の中野剛志が新自由主義はインフレ対策であり、バブル崩壊後の新自由主義的な構造改革はデフレの克服に貢献しなかったどころか、デフレの原因ですらあったとしているほか、著書などで批判もしている。
多くの人はすでに、共産主義のイデオロギーに関しては、信じる人は誰もいないでしょうが、新自由主義に関してはかなりの人がいまだに魅力的に感じているようです。特にいわゆる、古いタイプの経営者には、魅力的に映るようです。自由競争とか、グローバリズムとか、何やらとにかく「自由」という言葉の響きが良いです。しかし、現実はそうではありません。

新自由主義は、アメリカでも混乱と疲弊を招いただけ

グローバリズムに関しては、すでにEUで実験済みですが、なかなかうまくはいっていないのは明らかです。それに、ブッシュ時代のアメリカでは、とんでもないほど、貧富の格差が拡大いしました。そうして、過去の20年間のデフレが新自由主義の過ちを如実に示していると思います。

自由とは何か?

しかし、多くの人々がこの自由という言葉履き違えているのではないかと思います。これに関しては、あの経営学の大家であるドラッカー氏が1930年代の著書「産業人の未来」で警告を発しています。それを以下に引用させていただきます。
自由とは楽しいものではない。それは幸福のことではない。安定のことでもない。平和や進歩のことでもない。科学や芸術が栄える状態のことでもない。清廉かつ善意の政府のことでもなければ、より多くの国民のためのより大きな福祉でもない。とはいえ、自由はその本質からして、それらのものすべて、あるいはそれらのもののいくつかが価値とするものと相容れないということではない。もちろん両者は相容れないこともありうるし、事実相容れないことがある。
 自由の本質は別のところにある。自由とは責任を伴う選択である。自由とは権利というよりもむしろ義務である。真の自由とは、あるものからの自由ではない。それでは特権にすぎない。自由とは、何かを行うか行わないかの選択、ある方法で行うかの選択、ある信条を信奉するか逆の信条を信奉するかの選択である。
 自由とは解放ではない。責任である。楽しいどころか一人の人間にとって重い負担である。
ーP138
自由とは気安いものではない!!


これが、本当の意味での自由です。新自由主義をイデオロギーとする人々は、この意味での自由を理解しているのかどうかはなはだ疑問です。

さらに、保守ということも根本的に理解されていないと思います。保守とは、右派とか、右翼ということでも、左派や、左翼でないということとも違います。ましてや、ノスタルジーや、守旧派でもありません。ましてや、財政政策はこう、金融政策はこう、軍事はこうなどと、線引きや、枠を決めるような、保守の考え方の類型などありません。

合衆国憲法第5条

これに関しては、ドラッカーが、1700年代のイギリスと、アメリカの真性保守主義についてやはりドラッカー氏が「産業人の未来」でアメリカの憲法などに関連して述べています。これなど、本当に現在の日本の人々にも役に立つ論考だと思いますので、少し長いですが、以下にコピペさせていただきます。
■理念と方法
1776年と1787年のアメリカとイギリスの保守主義は、同じ理念に立っていただけではなかった。自由のもとにおいて機能する社会を実現するために採用した方法も、同じだった。いずれも同じ方法を重視し、それを同じように扱い、同じように使った。
われわれにとっては、二つの保守反革命がとった「方法」は、その拠って立つ「理念」と同じように、あるいはそれ以上に重要な意味をもつ。今日多くの政治家と政治思想家が、「理念こそすべてであって、方法など問題ではない」としている。だが、これは政治と政治行動の本質の理解において、1776年の世代ならば決して犯したことのない基本的な間違いである。
 彼ら1776年の世代は、実現のための制度的な裏付けのない理念は、理念のない制度と同じように、政治的に無意味なだけでなく、むしろ社会秩序にとって有害であることを知っていた。彼らにとって、方法は理念と同じように重要だった。事実、彼らは理念だけでなく、その方法においても正しかったがゆえに、成功したのだった。
■第一の柱 - 未来志向
つまるところ、彼らのとった方法は三つの柱からなっていた。
 第一に保守主義にたちながらも、過去の復活を行いもしなかったし、行おうともしなかった。過去を理想化することをしなかった。現在についても幻想を抱くことをしなかった。彼らは、「社会は不断に変化している」ことを知っていた。
 彼らは、自らの使命が、「過去の理念にたって新しい社会を組み立てることである」とは考えなかった。すでに起こったことを元に戻すことも考えなかった。建国の父たちは、過去の復活を断固拒否したがゆえに、過激派として扱われ、その保守主義の本質を理解されなかった。
 たしかに彼らの社会観は急進的だった。きわめて急進的だった。彼らは「すでに消滅した社会秩序が、いまだに機能しうる」とは考えなかった。過去の復活に夢をかけたり、社会的、政治的な伝統に縛られることはなかった。
 事実、バークとルソーを見るならば、よく指摘されるように驚くほど似ていることがわかる。そして多くの人々が、バークとルソーが、現実についての同じ評価を基盤としながら、まったく反対の政治的立場にたったことに驚く。しかし真の保守主義は、現実については、真の革命主義につねに同意する。反動主義や進歩主義とは異なり、彼らは、いずれも、政治と社会の本質を理解しているからである。彼らが対立するのは理念についてだけである。一方は、自由を生み出し、自由を守る。他方は、自由をなくす。保守主義は、事実について現実的であることにおいては、決して保守的ではない。
 1776年と1787年の世代が、保守主義の真髄を示しているのは、まさに過去の復活を目指さなかったところにある。過去の復活の試みこそ、革命と同じように暴力的であって、絶対主義である。アメリカの建国の父たちとイギリスの保守主義は、過去のための保守主義ではなく、現在と未来のための保守主義だった。
 彼らは当時の社会状況がすでに商業社会になっているにもかかわらず、社会制度は商業化前のそれであることを認識していた。彼らが目指したものは、この事実からスタートし、自由のもとにおいて機能する商業社会を発展させることだった。彼らは過去の問題ではなく、未来の問題を解こうとした。過去の革命ではなく、未来の革命に勝とうとした。
■第二の柱 - 問題不完全解決志向
彼らがとった方法の第二の特徴は、青写真や万能薬を信じなかったことにあった。
 彼らは大きな理念をもっていた。その理念については一歩も譲らなかった。しかし彼らは、機能する制度、問題を解決することのできる制度は何でも受け入れた。実に彼らは、ほとんどあらゆる制度が、ほとんどあらゆる種類の目標を実現できることを知っていた。
 彼らが固執したのは基本的な理念についてだけだった。日常の政治についてはおそろしく現実的だった。理想的な制度や完全な制度をつくろうとはしなかった。具体的な解決策の詳細には矛盾があって平気だった。彼らが求めたものは、目前の仕事のための解決策だった。それらのものは、たんに彼らの理念に合っていればよかった。
 (しかしアメリカについては、「建国の父たちは、青写真として合衆国憲法をつくったではないか」との反論がありうる。だがあの憲法の素晴らしさは、「何を定めたか」にあったのではない。「何を定めることを控えたか」にある。それは、いくつかの基本理念を定め、いくつかの制度を定め、いくつかの簡単な手続きを定めただけだった。
  フィラデルフィア会議(憲法制定会議)は憲法に人権条項を入れることさえ控えた。条項そのものに反対だったためではなく、後世を縛りたくないためだった。事実、後日憲法修正として採択された人権条項でさえ、基本的にはきわめて消極的な性格のものであって、「何をしてはならないか」を定めたにすぎなかった。
 建国の父たちがとった方法と、そのもたらした成功の典型が、北西部開拓条例だった。
  この条例は、その後の西部開拓の法的基盤となり、准州の組織化と州資格取得のための手引きとなった。しかるにそれは、あくまでも緊急の解決を要する現実の問題について、臨時の法的措置を講じたものにすぎなかった。条例の制定者は、その後四半世紀にわたって開拓地で起こるであろうことについて、いかなる青写真も持っていなかった。いかなる予測を行ったわけでもなかった。彼らが行ったことは、大きな理念に反することのないいくつかの制度を断片的につくることだけだった。
  この方法の素晴らしさは、1776年の世代が「何を見、何を見ることができなかったか」を知ることによって明らかとなる。当時、時代を見ることにかけては、右に出る者のない洞察力と実務能力を持つ人間が少なくとも3人いた。
トーマス・ジェファーソン
  そのうち、1800年にいたってなお、一世紀をかけずして大陸中に白人を定住させることになる西部開拓の姿をおぼろげながらも予見することのできたのは、ジェファーソン一人だった。彼の政治思想は、ミシシッピー上流の広大な地域に50年後に生まれることになる大農場地帯についての、このかすかなビジョンに基づいていた。しかしその彼でさえ、自らのビジョンを実現することになるものが鉄道だったにもかかわらず、やがて到来するはずの産業化の波を予見することはできなかった。
  他方、ハミルトンのほうは、産業化の波を予見していた。産業にかかわるビジョンをもっていたのは、彼の世代およびその次の世代で彼一人だけだった。しかし、彼にとってのアメリカは、東海岸沿いの貿易都市と、アパラチア山脈を限界とするその後背地だけからなるものだった。
  もう一人のバークは、イギリスにとって、未来の繁栄が貿易にかかっていることを認識していた。しかし彼は、その貿易の基盤となるものが産業であろうことも、その犠牲となるものが農業であろうことも認識していなかった。
  フィラデルフィアに集まった憲法制定者たちのうち、誰一人として、その後40年を経ずして奴隷制度が大問題となり、彼らのつくりあげた国が重大な危機に直面することになろうとは予見できなかった。誰もが、奴隷制度はその必然の死をあっけなく迎えるものと信じていた。
  要するに、まさに起ころうとしていた変革について、その兆しさえ予見した者はほとんどいなかったし、その全容を予見した者など一人もいなかった。しかし、フィラデルフィアに集まった者たちは、その先見性において並みはずれて劣っていた人々ではなく、並みはずれて優れた人々だった)。
■第三の柱 - 実証現実志向
保守反革命がとった第三の方法は、バークが実証志向と呼んだものである。もちろん、これは「伝統の神聖」などとは関係がない。バーク自身、役に立たなくなった伝統や前例は容赦なく切り捨てていた。実証志向とは、人間の不完全さに対処するための政治的な方法である。
 それはたんに、「人間は、未来を予見することはできない」とするだけである。人間は、自らの未来を知りえない。人間が知り、理解することができるのは、年月をかけた今日ここにある現実の社会だけである。したがって人間は、理想の社会ではなく、現実の社会と政治を、自らの社会的、政治的行動の基盤としなければならない。
 人間は完全な制度を発明することはできない。理想的な仕事のための理想的な道具を発明しようとしても無駄である。なじみの道具を使ったほうがはるかに懸命である。なじみの道具ならば、それがどのように使えるか、何ができるか、できないか、いかに使うべきか、どこまで頼りになるかが分かっている。われわれは、新しい道具については何も知らない。すでにわれわれは、完全な道具というふれこみのものよりも、完全でもなければ、期待もしていない、なじみのもののほうが役に立つことを知っている。
 実証志向とは、「人間が不完全な存在である」とする考えの表れである。同時にそれは、「日々の営みの結果もたらされるものが社会である」との認識の表れである。この認識の有無が、政治家を一流と二流に分ける。
 しかも、それは経済の原理にも沿う。すなわち、より複雑、高価、特別なものよりも、より単純、安価、一般的なものを選択すべきことを教える。それは、絶対理性に対するものとしての常識であって、華々しさに対するものとしての堅実さである。それは、地道ではあっても、頼りがいのあるものを使うことである。
 この点に関しては、さすがのイギリス人バークも、アメリカの建国の父たちにはかなわなかった。彼らが植民地行政において、いかに実証済みの頼りになるもの、過去の経験やおなじみの道具に頼っていたかは、すでに膨大な研究の結果、明らかにされている。
エドマンド・バーク
 しかもそれらの研究の少なからざるものは、あの憲法制定者たちが「いかに独創性のない人々だったか」を暴露することを意図して行われていた。もちろんそのような見方は、1788年のアメリカが、「憲法制定会議の参加者の優れた頭脳によって生み出された」とする、これまでの見方と同じように間違いである。実際には、あの緊張と危機の時代にあって、新奇な制度を避けた「用心深さ」こそ、彼ら建国の父たちの英知を示すものであって、後世が感謝すべきものである。
 彼らは、自分たちがすでに手にしているものしか使えないことを知っていた。彼らは、未来がつねに過去の延長線上にあり、政治家の役割は、政治の永久運動や永久静止の秘密を探し出すことではなく、完全ならざる過去のうち、「何をよりよき未来のために延長させるか」を決めることであることを知っていた。
少し長くなってしまいましたが、敢えて引用させていただきました。私は、自分は保守派であると思っています。しかし、その意味はもちろん、上記のようドラッカーの語っていた、真性保守の意味での保守です。

これからの日本は、安部自民党政権の樹立を契機に、新自由主義などの呪縛から解き放たれて、真性保守的な考え方で現実路線を歩み、まずは先日も述べたように、デフレ克服を一里塚として、未来志向で進んていくべきものと思います。そうして、過去20年間のような過ちは今後二度と起こすべきではないです。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?


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2012年12月7日金曜日

2012-12-06 ニコ動・安倍晋三元総理がリフレ派に転向した訳―【私の論評】安倍総裁の主張する財政・金融政策は、強い日本をつくり最終的に「戦後レジームからの脱却」を目指すものだ!!

2012-12-06 ニコ動・安倍晋三元総理がリフレ派に転向した訳

自民党安倍総裁の財政・金融政策には、自民党内でも異論があり本当に賛成しているのは1/4くらい?
12月2日に自民党安倍総裁が演壇に立ち、安倍氏がリフレ政策に転向した経緯と、現在の持論を展開している様子がニコニコ動画に掲載されていて、大変興味深いものがありました。 今朝の日経でも次の衆議院選挙で自公で過半数を取る勢いとも言われていますので、次期首相最有力の安倍総裁の考え方に耳を傾けてみましょう。
ここで私たちはどういう主張をしているかといえば、自民党の山本幸三さんという元財務省の人が主張していたことなんですね。 それを私は聴いていて、これは暴論だなと思っていたんですね。 実は私も誰も相手にしていなかったんです。 これは日銀の言うことの方が正しいのかな、と思ってきたんです。それがぱっとある時、必ずしもそうではなくて、山本さんの言うことの方が正しいのかなと。 
 私はこの分野(マクロ経済)は全然勉強をしてきたわけではないんですが、最近急にこれ(マクロ経済)についてお話を聴く機会を得ながら久しぶりに勉強したんですがね、今こそ山本氏の言う方がいいんじゃないか、と思ったら、国際的には、山本さんの言う方が主流なんですね。 
 先般もエール大学の浜田教授がやって来まして、…、「(リフレ政策を)堂々と主張してください」と言われました。 つまり我々が主張していることは、まずは現下のデフレを脱却しなければいけない。
このつづきは、ニコニコ動画から!!

【私の論評】安倍総裁の主張する財政・金融政策は、強い日本をつくり最終的に「戦後レジームからの脱却」を目指すものだ!!

この動画、もともとはChannelAjer(チャンネルアジャー)に掲載されたものの一部のようです。これは、1年ほど前の、もののようで、私自身も、見過ごしたものです。そうして、全部で7つくらいの動画があり、そのトップの動画を以下に掲載しておきます。そうして、1年前ですから、まだ安倍総裁になっていない頃の動画です。上のニコニコ動画は、この動画のうち、財政・金融政策に関して述べているものを再度、ニコニコ動画に投稿されたものです。以下に、YouTubeからそのトップ動画を掲載します。



最近このブログでは、安部自民党の応援する内容のものが多いです。それは、上の安部総裁の主張に全面的に賛成だからです。しかし、私自身は、安部総裁を前から支持してきたわけではありません。特に総理だった時代には、このブログでもほとんどとりあげたことはありませんでした。

確かに当時の安倍総理が主張する「戦後レジーム」からの脱脚は、絶対に必要だとは思っていました。今でもその考えに変わりはありません。しかし、そのために何をするかという点で、目ぼしいのは、教育に関するものでしたが、特に経済・金融対策は、その当時には何ら目ぼしいものはなく、これで本当にできるのだろうかと非常に疑問でした。しかし、安部総裁、総理辞任から5年間でずい分勉強されたようです。この財政・金融政策であれば、まずは、経済を回復させて、日本を強くすることができ、本当に「戦後レジーム」からの脱脚ができそうです。だからこそ、このブログでも、最近とみに安部総裁のことをとりあげているのです。

さて、上の動画では、 話言葉でもあり、安部総裁の主張が明確に伝わりにくいところもあると思いますし、要点をさっと知りたい人もいると思いましたので以下に若干補いつつ安部総裁の目指す、リフレ派に転向したきっかけなどの部分は省き、安倍総裁の財政・金融政策に関わる根幹部分のみを掲載させていただきます。
リーマン・ショック後の各国の対応を見ると、まずアメリカは貨幣の発行量をリーマン・ショック前の2007年の2.5倍にしている。イギリスは3倍に増やしている。中国は、4倍にしている。日本は1.1倍程度だった。日本銀行はなぜか、過去20年間本格的な金融緩和は、実施したことがなく、他国と比較すると、引き締め傾向で推移してきた。このようなことを続ければ、世界金融市場で、円の需要は増し円高になるのが、当然の帰結である。また、デフレからも20年間脱却できないのも当然のことである。他国がマネタリーベースを増やしているのに、日本だけそうではなく、本来はほとんど影響を受けるはずのなかった日本が、リーマンショックの被害が世界で最も長引いたのも当然の帰結である。
日本は、金融緩和をしなかったため、震源地のアメリカよりも、
リーマン・ショックからの回復が立ち遅れた
そこで、デフレから本格的に脱却するためにはマネタリーベース(日銀が市中銀行に供給するお金のこと)を拡大しなければならない。震災対策を奇貨として15兆円から20兆円政府が国債を発行し、これを基本的には全量日銀に買いオペ(市中銀行から買う)してもらう。本来は、日銀直接引き受けの方が効果は大きいし、他国では当たり前に行われていることであるが、なぜか日本ではこれは各界の抵抗が大きいため、次善の策として、新発国債は金利も低く、今でも市場で十分吸収できる状況にあるので、日銀に全部買いオペで買って貰う。さらに、デフレから脱却を強力に推進するため、さらに15兆円から20兆円新たにお札を刷ってもらうということにする。
これは復興のために、直ちに建設などの投資に向かうので、お金は政府などを経由することなく、直ちに市中に出回ることになる。これにより、間違いなく円安そしてインフレに誘導されるわけだ。しかし、過度のインフレにはならないように、インフレにはある程度の目安をつけておく必要がある。これは本来財務省と日本銀行が相談して決めることなのだろうが、他国の共通認識としては、本来は(CPI)4(%)が良いと言われているが、4%という目標を掲げると、日本では、インフレを嫌う人々も多く、2%から3%として抵抗なく受け入れてもらえるようにし、これを上回った場合には直ちに日本銀行がインフレ是正を目指して金融引き締めを行う。政府が緊縮財政を行うという方向に持っていくのが望ましい。
インフレ・ターゲットの設定は、かつての自民党では疑問視されていた
安部総裁が、以上のような主張すると総裁の、総理大臣時代や官房長官時代の財務省の秘書官が直ちにやってきて提示した、資料によると、総裁が国債を日銀が、全部買い取りすべきだという話が出たとたんに国債の金利があがったことを示すものであったという。要するに官僚は、安部総裁が、上記のような発言をしたことにより、金利が上昇し、国債の信用が落ちたというのである。しかし、このような現象は、マネーゲームの世界の事象であり、金融業界は、上記のような総裁の発言を利用して国債金利を上下させて利益を得ようとするのが当然のことである。
では、麻生政権の時に15兆円、大量の国債を発行した。あの時は、金利は、1%以下の0.9%になった。ところが、財務官僚などは、下がった時には何も言わず、上がった時にだけそれを大きく拡大した提示する。(注:国債の金利があがるということは、それだけの金利をつけなければならない程度に国債の信用が落ちたということ。国債の金利が下がったということは、それだけ金利をつけずとも売れるということで、信用度があがったということ)
麻生総理は、大規模な財政出動を行ったが、日銀の金融緩和はなかったこのとき、
金融緩和も同時に行えば、日本は、今頃デフレから脱却できていたかもしれない
論理的には国債を日本銀行が全部買い取る買いオペをしようとしているのだから、特に国債の信用が落ちて暴落するようなことはあり得ない。それよりも、日銀がもう本当に国債をいっさい買い取れないという事態におちいった場合こそ暴落が起きる筈である。だから、日銀は、現段階では、十分買いとれるし、全部買い取ったとしても、それによって、国債の信用は落ちるということはあり得ない。
安部総裁は、現在でも日本銀行は月に1.8兆円位の買いオペを実施していることも例に出している。今回の買いオペは、それをかなり増やすだけのことであるともしている。日銀は、買いオペをリーマン・ショックより前は1.4兆円だったものを、今では1.8兆円に増やしている。しかし、金利が特に上昇したということはない。だから国債金利の上昇を恐れる必要はないと認識している。
いずれにしても、日本銀行は紙とインクで(紙幣を)刷る。20円で1万円を刷ることにより、9,980円貨幣発行費(益)が出る。貨幣発行費については基本的には政府に納付するため、これは政府が紙幣を発行するというのと同じと考えて良い。これは余り政治家が言うと、円の信任を傷つけるケースもあるので、これを余り強調することは控えるが、このような仕組みになっているので、これが、すぐに孫子の代にツケを残すということにはならない。それよりも、紙幣を増やすことでも、デフレを解消すべきである。
現在日本は、20年間もデフレに悩んでいる。安倍政権の時に財政赤字が、あと6兆円で解消できるまでになっていた。しかし、あの時もデフレであった。あの時に、もし(実質)成長率1%にインフレ率2%が乗れば、名目は3%の成長率になっていたはずであり、恐らくその段階で税収は60兆を越えて財政赤字が性解消された可能性が十分ある。2007年から8年には、解消されていたに違いない。
日本が、世界第二の経済大国出会った時代は40年にも及ぶ
この10年間、もし日本経済がデフレから脱却していて、2.3%のインフレ率に1%の(実質)成長を乗せて、もし4%の名目成長をしていれば、日本のGDPは600兆円から700兆円となっていたはずである。これは、断然中国より大きかったはずである。そういう状況になっていれば税収がかなり増えていたはずである。
我々はまずデフレから脱却し、経済を成長させ、税収をあげていかなければならない。そうして、安定的に成長した段階では、将来の年金・医療や介護(費用)、これに対応するための消費税増税というものを考えなければいけないことは確かである。しかし、そのためにも、今は震災対応や、デフレ脱却に活用すべきである。デフレ解消の前に、増税すれば、さらなるデフレスパイラルに落ち込むことになり、税収は増えないことは、以前の5%への消費税増税によっても、増税前の税収の水準を一度も上まったことがないことが雄弁に物語っている。
以上のような、安部総裁の財政・金融政策はデフレ脱却ための方策としては、かなりまともであり、期待できます。上記で、補足するとすれば、不景気なときにマネタリーベースを増やせば、ハイパーインフレになるとする意見もありますが、これはあてはまらないことが、はっきりしてきたことくらいです。

ジャパニーズ・ドリームが描ける未来は来るのか?
上の写真は、杉本彩さんの写真集の表紙
事実、アメリカは、QE1、QE2そうして、現在は、QE3という大幅な金融緩和を過去三度にわたって行ってきたが、物価は安定しています。ハイパーインフレなどからは、程遠いです。イギリスは、2010年に大幅な付加価値税増税を実施した直後から、特に若年層の雇用がかなり悪化したため、これに対処すべく、2011年にイングランド銀行(イギリスの中央銀行)がかなりの増刷を行い、金融緩和を行い、インフレ率が上昇し、一時4%を超えた時期がありました。これは、不景気なときにマネタリーベースを増やすと、ハイパーインフレになるという論者の有力な根拠となってきましたが、そうなることはなく、今年に入ってから、2%台になり、落ち着いています。

すでに、今回の衆議院選挙では、自公は圧勝しそうな勢いです。これで安部政権が誕生すれば、景気が上向く可能性はかなり高いです。さらに、来夏の参議院選挙で、自民が振るわず、自公維体制ができあがるとか、ねじれ国会になるとかの不測の事態になることなく、安部自民が圧勝でき、上記の財政・金融政策がそのまま実行されるようになれば、景気はかなり上向くことが予想できます。そうなった場合、多くの企業の業績回復や、新興企業がたくさん躍りでてくることになると考えられます。素晴らしいことです。そうして、国民は、景気が良くなっても、かつてのバブルのときのように浮かれることなく、安部総裁の本当の改革は、「戦後レジーム」からの脱脚であることを知り、その方向性でさらに頑張り、新しい日本を創ることに邁進しようではありませんか?私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?





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