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2019年3月21日木曜日

対中経済減速…10月消費増税に「黄信号」 田中秀臣氏「政策に大胆さ欠け手詰まり感」―【私の論評】増税すれば新たな怪物商品が登場し、日本はデフレスパイラルの底に沈む(゚д゚)!

対中経済減速…10月消費増税に「黄信号」 田中秀臣氏「政策に大胆さ欠け手詰まり感」

日本の主要貿易港の東京港。中国経済減速の影響が、対中輸出の減少に表れた

  今年10月に予定される消費税率の引き上げに、「黄信号」がともり始めた。対中経済の減速が顕在化し、国内景気も落ち込み局面に入ったようなのだ。米中貿易戦争は終止する気配がなく、英国の欧州連合(EU)からの離脱も不透明感が増す。安倍晋三首相は来月の新年度突入後、「増税見送り」を判断するのか。

 財務省が18日に発表した2月の貿易統計(速報)で、日本から中国への輸出額は前年同月比5・5%増加し、1兆円の大台に乗せた。

 だが、これは中国の経済活動が鈍る旧正月(春節)の時期が、今年は10日ほど早まり、早めに操業を休止する工場が増えた反動が大きいようだ。

 1~2月の合計でみると、前年同期の水準を6・3%も下回っている。

 2月のアジア全体(中国含む)への輸出は1・8%減の3兆3141億円と、4カ月連続マイナスになった。
 「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「中国との取引縮小は、世界経済悪化の象徴だ。間違いなく日本経済の足を引っ張っている。中国の経済政策は大胆さに欠け、手詰まり感があるために、今後どうなるのか、懸念材料だ」と指摘する。

 日本政府が発表する数字も悪くなっている。

 経済産業省が2月末に発表した1月の「鉱工業生産指数速報値」(2015年=100、季節調整済み)は100・8で、前月比で3・7%下げた。業種別では、全15業種のうち12業種が前月を下回っていた。

 内閣府が7日に発表した1月の景気動向指数は3カ月連続で悪化した。景気判断も「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げた。

 8%から10%への増税前に家計を温めるべきだが、この先、景気がさらに悪化したところで増税となれば、日本経済には大打撃になる。

 前出の田中教授は「政府や日銀には『日本経済はそれでも緩やかに成長している』との基本シナリオがあるが、間違いだ。幅広く分析すれば、14年に消費税率を8%へ引き上げた時よりも、今秋の増税で景気の落ち込みがより大きくなる可能性がある。国際情勢の不透明感もある。とても10%に上げるのは無理だ」と語った。

【私の論評】増税すれば新たな怪物商品が登場し、日本はデフレスパイラルの底に沈む(゚д゚)!

上記で、10%に増税することは無理な理由が述べられていましたが、これ以外にも今回の増税はかなり厳しい理由があります。それは、購買者の心理的要因です。

次の消費税増税は税率が10%へと2ポイント引き上げられるから、増税幅だけを見ると前回(5%→8%)より小さいです。経済学は『人間は合理的だ』という仮説に立っていますから、今回の消費増税の影響は前回より小さくなると予想することになりがちです。“2ポイントくらいたいしたことはない”というわけです。

しかし、心理学は『人間は合理的でない』という前提に立ちます。だから消費税率が3%や8%時には税額が計算しにくく、税負担をあまり考えない人も一定数いる一方、税率10%だと計算は簡単だから、誰もが“こんなに税金が高いのか”と買い控えるようになると予想できます。

今までは3%とか8%を明確に計算しながら買物をしていた人がどのくらいいたでしょうか。人間の行動に「複雑と思われる計算は簡単に諦めてしまうこと」があります。消費税そのものより明確に提示される配送料をより負荷や損失と感じる人の方が多いように思えます。

それが今度は10%という計算のしやすさから「消費増税」自体への警戒感がより強まりはしないかという点を指摘しておきたいです。

現在、多くのディスカウント衣料品チェーン店の多くで採用されている税抜き表記があります。これは税負担をイメージさせず、安さを強調しやすいテクニックとして広がっています。

衣料品の税抜き表記の事例

この総額表示義務に関する特別処置法は2021年3月末日までは有効なので、今回の増税についての影響は少ないと予想します。だいたい総額表記と税抜き表記が市場で混在していること自体、とてもフェアとは思えないですが、そこも商魂と捉えられてしまうのでしょうか。いずれにしても増税感をイメージさせない施策、取り組みが望まれるところです。

もし、10%になれば、1,000円の買い物をしたら100円の消費税、1000万円の買い物をしたら、100万円の消費税です。1億円の買い物なら、1000万円です。これは、購買心理が萎縮するのは当然です。

消費税アップの場合、言うまでもなく基準値は以前の価格です。そうして、1000円の商品Aと2000円の商品Bを考えると、当然ながらBの方が消費税アップによる値上がり幅の方が大きいです。そして人は支払い(≒手持ちのお金が減ること)が基本的に大嫌いです。

このときAとBが代替可能であれば、値上がり幅が小さいAを、すなわち低価格商品を買いたくなるのは当然の心理です。つまり消費税アップは必然的に、同じ商品カテゴリーの中で、低価格商品シフトを誘引することになるのです。

例えば、発泡酒・第三のビールと消費税とは決して無関係ではありません。実は発泡酒の歴史は意外に古くて1950・60年代には複数ブランドが販売されていたのですが、日本人が豊かになるにつれて、高価だが美味しいビールが好まれるようになり、いつしか発泡酒は市場から姿を消してしまいました。

それが1989年に、消費税が導入された直後から量販店間でビール価格の低価格競争が激化し、その流れを受けて1994年に発泡酒が発売され、さらに安い第三のビールも登場して、今やそれらの市場は本家のビールをはるかに凌ぐほどに成長しています。まさに、消費税が低価格の発泡酒を墓場から蘇らせた、と言っても過言ではないのです。

また、導入以降の消費税は数度にわたって引き上げられてきましたが、その間に牛丼やハンバーガーの低価格競争や、低価格ファストファッションや100円ショップの台頭などに代表される低価格志向が次々と起きて、日本経済はデフレからなかなか抜け出せないでいます。


それどころか、スーパー等では200円台のお弁当が売り出されるようになりました。これが最初にテレビで報道されたときは、私自身もかなり驚きました。デフレも極まったと恐怖心すら感じました。

そして歴史は繰り返すのです。2019年の消費税アップの際にも、消費者の低価格商品へのシフトは間違いなく起きるはずです。メーカー、流通を問わず、低価格志向への対応が待ったなし、です。そしてデフレ脱却はまた遠のくことになりそうです。

そうして、今回の増税により、発泡酒や200円お弁当の他にどのような怪物商品がてでくるのか、予想もつきません。

しかも、毎度の低価格商品シフトだけでも悩ましいのに、今回は酒類を除く飲食料品と定期購読新聞だけに日本初の軽減税率が適応されることで、新種の大問題が起きそうです。



例えば、マクドナルドや吉野家などの場合、店内で食べれば外食として10%(2%価格アップ)、テイクアウトすれば8%(価格据え置き)の消費税が適応され、一物二価となります。

「テイクアウト用として安く購入してこっそりと店内飲食」というズルイ抜け道はひとまず考えないこととすると、現在店内飲食している多くの客は、消費税アップ後はどういう行動を取るでしょうか。
わざわざ認知的不協和の法則を持ち出すほどもないが、以下の3タイプの消費行動に別れるでしょう。ー
①価格アップを不本意ながら受け入れて、これまで通り店内飲食 
②価格アップが嫌なので、仕方なくテイクアウト 
③価格アップかテイクアウトかの葛藤を避けるために、その店舗に行くこと自体を止める
実は飲食店にとっては①も②も、それに前述の抜け道「テイクアウト→店内飲食」も同じことです。後から行政に納める消費税額の違いだけであって、飲食店の実質的売上には関係ないです。

その意味では、飲食店にとって問題になるのは③のケースだけですが、私はそういう人が少なからず出てくるのではないかと思います。
と言うのも、当初は結構な人が「テイクアウト→店内飲食」をちゃっかりと選択するような気がするのですが、ルールを厳守する日本人の気質を考慮すると、彼らの大多数が後ろめたいとか恥ずかしく感じるはずで、やがては否応なく③を選択するようになる、と推察できるからです。

また、①と②を選んだ人にとっても、決して後味がよいわけではないです。①ではまるでボラレタような悔しさを、②では店から追い出されたような雪辱感を覚えて顧客価値が下がり、やがては来店しなくなる危惧もあります。ファストフード業界にとって、軽減税率はさぞや頭の痛い問題でしょう。

1989年に税率3%で導入された消費税は、1997年に5%、2014年に8%と7~8年の期間で逐次引き上げられてきました。今回は当初10%への引き上げを2015年に予定していたものを、2度に渡る景気判断(景気弾力条項の規定より)から先送りして、来年に施行されるといった経緯をたどりました。

前回の「8%増税」後、3年間で家計の実質消費が1か月あたり平均2万8000円(年間約34万円)も落ち込み、実質賃金は4%以上ダウンしました。高成長路線に乗ったかに見えた日本経済はあっという間にマイナス成長に転じました。

2020年オリンピックに向けてひた走る日本経済に向かってとんだ冷や水になりかねません。これに向けての対策は、簡単です、増税などしないということです。

増税は、景気が加熱し、インフレになりそうなときに実施すれば良いのです。デフレから抜けきっていないときするものではありません。

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2018年11月28日水曜日

今も残る「ロスジェネ」の苦境…正社員比率や賃金に世代格差 90年代の政策は非難に値する―【私の論評】本当の愛国者は、子どもは私達の未来であることを片時も忘れない(゚д゚)!




 このところ雇用は急速に改善しているが、デフレやバブル崩壊後の不況で、「就職氷河期世代」と呼ばれた1970年~82年ごろに生まれた人たちの雇用や給与なども改善しているのか。そして、個別の政策的な手当は必要なのだろうか。

 池井戸潤氏の経済小説には、「バブル世代」の半沢直樹と「ロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)」の森山雅弘が登場する。そこではロスジェネは厳しい就職戦線を勝ち抜いてきたので、有能な社員として描かれている。

 ただし、就職できなかった人の物語はほとんどないのではないか。筆者の知っているロスジェネには、就職に苦労して非正規の渡りを繰り返して現在に至っている人もいる。

 一般的な人は、日本企業に正規社員で採用されると、当初の給料は低いが、40歳ごろにはそこその水準に上昇することが多い。ところが前述のロスジェネのように最初の就職に失敗すると、この賃金上昇カーブの恩恵を受けられない。

 40代になると、中途採用を受け入れる企業も少ない。一般的な日本企業では、50代前半で賃金はピークになるので、40代は人件費コスト高なのだ。

 ロスジェネの後には、「ゆとり世代」がくる。2002年から10年に改訂されるまでの学習指導要領に基づく「ゆとり教育」を受けた1987~2004年生まれを指す。

 ゆとり世代の前半部分は、リーマン・ショックと民主党時代の雇用政策の無策を受けて、就職はやはり困難だった。しかし、アベノミクスの雇用環境の改善から、かなり救済されている。この点で、ロスジェネとは好対照だ。

 労働力調査で各年齢階級の正社員比率をみると、25~34歳は17年が74・16%で、18年(9月まで)が74・97%。35~44歳が71・45%と71・11%、45~54歳が67・73%と67・81%だ。

 ロスジェネにあたる35~44歳では正社員比率が低下しているが、その前後の世代は上昇しているという状況だ。たしかに、ロスジェネは苦しい。

 次に賃金構造基本統計をもとに各年令階級の正社員賃金をみると、25~34歳は16年が26万2100円、17年が26万2700円、35~44歳は32万9000円と32万8100円、45~54歳が38万9900円と38万6300円だった。25~34歳は上昇しているがが、35~44歳と45~54歳は低下している。ここでも、ロスジェネは苦しい。

 一方で、データを見る限り、他の年齢階級と顕著な差があるわけではないことも分かる。となると、個別の政策的な手当が必要かというと、疑問である。ロスジェネの実例を挙げて苦境をリポートすることは難しくないが、それが統計データとしてひどい格差とはいいがたいからだ。

 とはいえ、1990年代の就職困難な状況を招いたマクロ経済政策の不在、特に引き締め基調の金融政策は、十分に非難するに値する。雇用の確保は政府として当然の責務だと筆者は考えているからだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】本当の愛国者は、子どもは私達の未来であることを片時も忘れない(゚д゚)!

ロスジェネについては、上記の高橋洋一氏の記事ではあまり説明していないので、ここでその意味や特徴等について掲載しておきます。

ロスジェネ」は「ロスト・ジェネレーション」の略です。つまり失われた世代という意味になります。

この「ロスジェネ世代」にあてはまるのはバブル崩壊後から約10年間の期間に就職活動をした人たちのことです。つまり、1970年~1982年頃に生まれた世代がそう呼ばれているのです。年齢でいうと、現在48歳〜36歳くらいです。


「バブル景気」と呼ばれた好景気の急激な後退が起こったのが1980年代後半になります。それまで高騰し続けていた株価や地価が下落に転じたのです。

そもそもバブルが崩壊する前に日本がバブル景気に入ったのには円安を武器に輸出産業で大幅な黒字をあげるのに対し、自国の製品が売れず大幅な貿易赤字に陥っていた米国が円高に誘導するべくプラザ合意を締結したことにありました。

プラザ合意によって1ドルが約250円から1年後には約150円まで円高が進んだのです。輸出産業にとって大きな打撃となり一時的な不況に日本はみまわれました。

この状況を打破するために当時、日銀が行ったのが金融緩和政策で、企業にお金を貸し出す時の金利を下げたのです。企業はこぞってお金を借り、株や土地に投資するようになりました。当時は「土地を買えば必ず儲かる」といういわゆる土地神話が信じられており、不動産をみんなが欲しがりました。結果、不動産価格は上昇し続けたのです。

また、金利が安いうちに買っておこうという考えから株価も高騰します。消費が活発なこの状態がバブル景気です。ただし、この頃土地や株などの資産価格は上昇していましたが、一般物価はさほどでもなく、インフレとはいえない状況でした。

ところが、日銀の官僚があまりに馬鹿で、統計のまともな見方すら理解せず、このバブル景気は一般物価を下げないと収まりがつかないと信じ込み、あろうことか金融引き締めに走ります。

また、この時期にど愚かな財務官僚も、経済統計などまともにみることができずに、何かと緊縮財政に走りました。

そのため、金利が上がったことでお金が借りづらくなり不動産は買い手がつかなくなり、株価も急速に下がっていきました。

多額の資金を借り入れていた企業が続々倒産し、不良債権の山となり銀行の経営すら危うくなりますした。一般社会にもボーナス減少、リストラなどの影響を及ぼし急激に景気は後退しました。これが「バブル崩壊」です。

このような状態であれば、通常ならば財務省は積極財政、日銀は金融緩和をするのが正しい対応ですが、なぜか日銀と財務省の無能官僚どもは、緊縮財政、金融引締めにあけくれました。

この誤謬も数年ですめば良かったのですが、それ以降日本はデフレ状況に陥り、愚かな官僚どもは、本来なすべきことをなさず、緊縮、引き締めを20年にもわたって繰り広げ「失われた20年」と呼ばれる長い経済停滞の時代に突入しました。中でも、バブル崩壊から10年間は特に景気が悪く、企業における新入社員の採用意欲も下がりました。

この就職氷河期という厳しいタイミングで就職活動をすることとなった人たちが「ロスジェネ世代」なのです。

バブル崩壊後の不景気の最中に就職活動をしたロスジェネ世代の正社員には他の世代にはない特徴があるとされています。

まずは、仕事に対する姿勢についてです。当時の社会的な背景から厳しい戦いになることを分かった上で就職活動に臨んだ彼らはより専門的な知識であるとかスキルといった自分の強みになるものを身に着けることに対して一生懸命である傾向があります。

仕事にありつけることの難しさを知っているからか、仕事に対してとても前向きな人が多いのです。指示に対しても忠実な世代であると言われています。

もちろん個人差はありますが、考え方にも特徴があります。バブル世代という浮ついた雰囲気が一変する瞬間を目の当たりにしてきたロスジェネ世代には将来を悲観的に考えてしまう傾向が強いようです。

将来への不安から収入を貯蓄に多く回す人が多いのもその考え方によるものであると言えるでしょう。結婚に消極的な人が増えたのもロスジェネ世代以降です。

考え方についてはネガティブな印象が強いようですが、一方でロスジェネ世代は優秀な人材が多い世代でもあります。非正規雇用で働き続けなければならなくなった人も少なくないタイミングで正規採用を勝ち抜いたという事実はその実力の高さを証明していると言うことも可能です。

また、希望する企業よりもワンランク落として就職活動をした人が多いのも優秀な人材が多いと感じさせる要因の1つと言えます。

これらの事からロスジェネ世代は、考え方はやや慎重すぎることがあるのですが、仕事に熱く、スキルも確かな人が多い世代と考えられます。

ただし、これはあくまで正社員として雇用された人たちのことです。普通に大学を卒業して、普通に就職活動をしてもなかなか正社員になれなかった人が多いというのもこの世代の特徴です。

しかし、以上は私の感覚のようなものです。実際に数字はどうなっているのか、確認してみます。これには、田中秀臣氏の以下の記事が大いに参考になります。
雇用大崩壊を経験した「ロスジェネ」はあれからどうなったか
田中秀臣氏


この記事から下に一部を引用します。
 非正規雇用の増加とそれに伴う経済格差拡大の「象徴」としてロスジェネ世代が取り上げられることを、今日でもしばしば見かける。40代の給与減少の報道もその関連で行われたのかもしれない。

 だが、10年前に比べると、ロスジェネ世代の雇用状況はかなり改善している。失業率の低下はすでに説明した通りだ。ここでは正規雇用者数と非正規雇用者数の変化をみてみよう。

 まず、筆者が『雇用大崩壊』を出版した2009年、ロスジェネ世代の雇用状況をみると、男性の正規雇用は599万人、非正規は90万人だった。女性の正規は303万人、非正規は219万人であった
 ロスジェネ世代は、今やだいたい35歳から44歳になっている。この世代を2018年4月と5月の平均値で考えると、男性の正規は649万人で、09年に比べて50万人増加し、非正規は24万人減少して66万人になっている。一方、女性の正規は290万人で、09年に比べて13万人減少し、非正規は88万人増加して306万人となっている。

 女性の非正規雇用の大幅増加は、主婦層がアルバイトやパートなどを始めたことで、求職意欲喪失者層から非正規層に流入したことが主因だろう。この場合、家計の所得補助となる可能性が大きく、世帯的にはむしろ所得の安定に寄与する。それゆえ、非正規の増加がそのまま所得の不安定化をもたらすと考えるのは間違いである。

 さらに注目すべきなのは、ロスジェネ世代で正規雇用が10年前に比べ、男女合計で31万人増、率でいうと3・3%大きく増加したことだ。増加に伴って、男性の非正規雇用も大幅に減少し、10年前と比べて約27%減少している。

 この正規雇用の増加により、いわゆる「ニューカマー効果」を生み出すだろう。非正規層や求職意欲喪失者層にいた人たちが正規層に入っても、そこで同じ世代の人たちが従来手にしていた待遇と同レベルのものを得ることは難しいだろう。要するに、給与が抑えられる可能性が大きいのである。この雇用改善と平均賃金の低下の関係性をニューカマー効果という。

 ただし、経済の安定化が継続すれば、やがて平均賃金も上昇していくことを注意しなくてはいけない。このニューカマー効果が、冒頭で言及した40歳代の給与が5年前と低下した可能性を、ある程度は説明できているかもしれない。いずれにせよ、ロスジェネ世代の雇用環境は大幅に改善していることだけは確かなのである。

 それでは、ロスジェネ世代の象徴といわれた経済格差はどうだろうか。経済格差を示す指標である「ジニ係数」をみてみると、2009年と比べれば、世帯主が40歳代の世帯でも、30歳から49歳までの世代でも低下している。つまり、経済格差は改善しているのである。

 これがさらに継続しているかどうかは今後の調査をみなければいけない。だが、拙著でも言明したが、ロスジェネ世代による経済格差が雇用改善とともに縮小するのは大いにあり得る事態である。
 もちろんロスジェネ世代が生み出されたのはこの世代の人たちのせいではない。すでに指摘したように、政府と日銀の責任である。そして、さらなる改善もこの二つの政策に大きく依存しているのである。 
 また、ロスジェネ世代が、マクロ経済政策だけでは改善できないほど生涯所得が落ち込んだり、所得の落ち込みが将来の年金など社会保障の劣化を招くとしたら、今まさに積極的な社会保障政策を先行してこのロスジェネ世代に活用することも必要だろう。あくまで、まだ議論されている最中だが、ロスジェネ限定のベーシックインカム(最低所得保障)の早期導入も考えられるのではないか。
今後、雇用が改善されていくという時期に、入管法が改正されました。これによって、どの程度ロスジェネ世代に影響がでるか未知数なところがあります。

いずれにしても、ロズジェネの障害所得が落ち込んだり、所得の落ち込みにより、将来大きな影響があると予測される場合は、やはり田中秀臣氏が主張するように、抜本的な手を打つ必要があるでしょう。

無論、資金的手当だけではなく、雇用のミスマッチの是正策も実施すべきです。人は、経済的に満たされればそれで満足というわけではありません。尊厳というものがあります。それは、働いて人の役に立っているという実感がなけば、なかなか満たせるものではありません。

今後弊害がでてきたとき、これをそのまま放置しておけば、ロスジェネだけの問題ではなく、他の年齢層の人々も大きな悪影響を及ぼすことは必至です。

それに、高橋洋一氏が語るように、確保は政府として当然の責務であり、雇用面で著しく不利益を被った層への救済もそうであると思います。ある世代だけが、著しく不利益を被るということは許されることではありません。

最後に、以前このブログにも掲載した。ルトワックの言葉を掲載します。これまでで述べたこととはちょっと趣が違いますが、日本にとって大切なメッセージでもあると思います。
私は日本の右派の人々に問いたい。あなたが真の愛国者かどうかは、チャイルドケアを支持するかどうかでわかる。民族主義者は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子どもたちであることを知っているのだ。
愛国者は国とってもっとも大事なのが子どもたちであることを知っている

全くそのとおりだと思います。無論国旗を大事するなと言っているわけではありません。子どもとは、私達の未来であるということを言っているのです。それも、間近な未来なのです。たとえ、どのような仕事をしていたとしても、何に興味があろうと、政治信条がどのようなものであれ、子どもたちにとって良い国、社会をつくることこそが、私達大人の最大の任務なのです。 

もう、すでに起こってしまったことは、消すことはできません。そのため、ロスジェネ世代の人たちが、マクロ経済の改善だけでは生涯賃金において他世代よりもかなり低くなるということでもあれば、何らかの形で埋め合わせをすべきです。

そうして、現在の子どもたちが、大人にになって就職する頃には、「就職氷河期」などがあってはならないです。そのようなことをなくすのが、私達大人の責務です。それは、無論経済面はもちろん、安全保障面でも、尊厳の面についても、私達のせいで将来の子どもたちの住む社会が毀損されることがあってはならないのです。

そのために、私たちは日々働いているのだということを片時も忘れるべきではないのです。それを大半の人が忘れたとき、国の衰退、衰亡が始まるのです。

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2018年7月31日火曜日

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ―【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ

高橋洋一 日本の解き方

日銀は31日の金融政策決定会合で、「0%程度」としている長期金利の
誘導目標の柔軟化を正式決定した。一定の金利上昇を容認する。写真は
記者会見する黒田東彦総裁=同日午後、日銀本店

日銀は30、31日の金融決定政策会合で、「金融政策を柔軟化する」「緩和長期化が金融機関に与える副作用の対策を検討する」などと報じられた。マスコミ報道で「副作用」といっても、「市場機能の低下」「金融機関経営に及ぼす影響」など抽象的な表現しか出てこないことがほとんどだ。

 「金融機関経営に及ぼす影響」とは、マイナス金利になっていることで、この運用金利では調達金利との利ざやが小さく、金融機関は儲からないということだ。

 「市場機能の低下」と、もっともらしいことをいうが、これも金融機関の儲けがなくなると、金融資本市場がうまく回らないという市場関係者の思い込み(自己保身)に過ぎない。

 実際には、日銀が金融機関から「この金利水準では儲からないから何とかしてくれ」と常日頃、愚痴を聞かされているので、それを「副作用」と表現しているだけだ。「市場機能の低下」は付け足しでしかないのだが、日銀としては金融機関のために金融政策を行うとは言えない建前があるので、市場機能の問題を前面に出して「副作用」を説明してきた。こうした複雑な背景があるので、一般の人には日銀が何を言っているのか理解できないだろう。

 日銀が金融機関を重視するのは、金融政策を行う主体であるとともに、金融機関の監督という準行政的な機能もあるからだ。前者をマネタリー、後者をプルーデンスという。

 実は、日銀内の仕事としてはマネタリーの部分はごくわずかで、多くは「銀行の中の銀行」として金融機関との各種取引を通じたプルーデンスである。プルーデンスは「日銀官僚」が天下るときにも有用であるため、日銀マンの行動に金融機関重視がビルトインされているとみたほうがいい。

 筆者は役人時代、プルーデンスは金融庁に任せればいいという考え方であったが、日銀はプルーデンス重視だった。銀行の収益悪化は、人工知能(AI)対応が遅れたという構造的な側面もあり、必ずしも低金利だけが原因とはいえない。

 プルーデンス重視が、マネタリーに悪影響を与えては本末転倒だ。マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。

 報道では副作用対策で日銀内に温度差というが、日銀プロパーはプルーデンスばかり見ているので、外部から日銀に来た人とプロパーの間でマネタリーに対する意見の差があるだけではないか。日銀は「副作用」という言葉で金融機関を支援するのはやめたほうがいい。

 現在でも、日銀は金融機関向けの当座預金に付利している。金融機関による一般事業者向けの当座預金は、臨時金利調整法により無利息であるにもかかわらずだ。日銀の付利により、金融機関は2000億円ほどの小遣いをもらっていることになる。これは、政府特権である通貨発行益の一部を金融機関に移転していることであり、国会での議論が必要だ。いずれにしても、日銀はマネタリーに特化すべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀は、本日の金融決定政策会合の結果を受けて以下の文章を公表しています。以下にその文書のリンクを掲載します。
強力な金融緩和継続のための枠組み強化
この日銀公表文を全部読むと、消費増税もあり物価が上がりそうにないから金利引き上げを(準備)するというふうに見えます。しかしこれでは、ロジックが真逆です。日銀の金融機関擁護の金利引き上げと増税擁護の姿勢を変えなければ、これからも物価がこれからも上がりそうもありません。

物価が上がったから、金利を引き上げるというのが当たり前でというか、これが常道です。日銀は、これからも常道を踏まないつもりなのでしょうか。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。日銀はプルーデンスではなく、マネタリーに特化すべきとしています。

この日銀は、プルーデンスに注力するあまり、過去においてはマネタリーで大失敗をしています。

GDPの伸び率がゼロだった「失われた20年」

日本はバブル崩壊後、長らくデフレに悩まされ、経済成長率も他の先進国と比して著しく低く「一人負けの状態」が続き、また失業率も高く「失われた20年」とも呼ばれてきました。その要因は何であったかといえば、結論からいえば、バブルという羹に懲りてデフレを長引かせた日銀の誤りによるものです。

①日本のバブル期は、一般的に1987(昭和62)年から1990(平成2)年までを言います。
 この間の経済指標は 経済成長率(実質)が4~5%、失業率が2~2.7%、インフレ率が0.5~3.3%とまったく問題ないレベルであり、「失業する人も少ないし、給与も上がり、みんながハッピー」の「理想的な経済」でした。

東京株式市場は1989年12月29日に3万8916円という過去最高値を付けた

②一方、資産価格である株や土地の価格だけが異常に上昇しました。

バブルとは、「資産価格の上昇」と定義できます。株価は89年末がピーク、地価はタイムラグがあり91年頃がピークとなりました。

③インフレ率が上がらず、株や土地という資産価格だけが上がる場合は、金融政策で見ると何か別の理由があると考えられます。

④その頃、証券会社は税制の抜け穴を利用した「財テク」の営業を行い、株価が異常に上昇していました

当時、大蔵省証券局は、証券会社が損失補填する財テクを営業自粛(事実上の禁止措置)させる大蔵省証券局通達を89年12月26日に出しました。これにより、その年の大納会で3万8915円となった株価は、1990年の終わりにかけて2万3000円くらいまでに下がりました

⑤他方、1990年3月に大蔵省銀行局長通達「土地関連融資の抑制について」が出されました。

これは、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える措置(いわゆる総量規制)でした。これにより地価は、その後、下落しました。

上記の④と⑤によりバブルは沈静化していきました。ところが、一方で日本銀行が同じ時期に金融引き締めをしてしまったのです。

今から考えれば、これがバブル処理における最大の失敗でした。この致命的な間違いにわってバブルの後遺症が大きくなったのです。そもそもバブルの原因は金融緩和ではありませんでした。

だから、バブルつぶしのために金融引き締めすることが正しかったはずもありません。資産バブルを生んだ原因は、法の不備を突いた営業特金や土地転がしなどによる資産売買の回転率の高さでしたが、日銀は原因分析を間違え、利上げという策を実施してしまったのです。

日銀は物価の番人ですが、物価に株や土地の資産価格は含まれていません。本来、日銀は消費者物価指数のような一般物価を眺めながら対策を講じていれば良いのですが、株価の値上がりが自分たちの金融緩和のせいだと思ってしまったのです。
ここで公定歩合と日銀の金融引き締めの経緯を辿ってみます。

公定歩合は、1980(昭和55)年8月に日銀が9%から8.25%に引き下げて以来、87年2月に3%から2.5%に引き下げるまで10回にわたり引き下げられました。これは、多分に大蔵省の要請(実態は指示に近い)によるものです。

しかし日銀は、バブル当時の1989年5月に公定歩合を2.5%から3.25%に引き上げ、同年10月も引き上げました。さらに、バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏が同年12月に日銀総裁となり、就任直後の12月に引き上げ、さらに90年3月にも引き上げました。バブルがほぼ沈静化した8月にも引き上げ、公定歩合は6%となりました。

バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏

一般物価ではなく、株や土地の値上がりに対しては、日銀ではなく大蔵省や国土庁(現・国土交通省)がまず対応すべきものです。少なくとも、90年8月の利上げは不要だったと言わざるを得ないですが、さらに大きな問題は91年7月に6%から5.5%に下げるまでに時間がかかったことです。

下げのタイミングが遅れると、その後の引き下げは後追いとなって景気が回復に寄与することはありません。このように大蔵省との対抗心から、バブル期に日銀は金融引き締めという間違った金融政策をしました。このような経緯から、かつては大蔵省は金融緩和が好き、日銀は金融引き締めが好き、という本当にバカげた話が語られるようになってしまいいました。

過去にこのような大失敗をした日銀です。銀行に泣付かれてまたまた、マネタリーを間違えるということもなきにしもあらずです。マネタリーは雇用と物価、特に物価の上昇・下降速度をみていれば、間違いようがありません。少なくとも上記のような、とりかえしのつかない「失われた20年」を招いてしまうようなことはあり得ません。

にもかかわらず、日銀は、間違えってしまったのですから、いかに日銀のマネタリーの部分に、プルーデンスの部分が大きく影響していたかを示すものです。

二兎を追う者は一兎も得ずという諺もあります。もともとの日銀官僚は、まともに数字も読めず、20年間も金融政策を間違えてきたのですから、日銀にはそういう体質が深く染み付いていると考えるべきです。政治家や国民がぼんやりしていると、日銀はまた「失われた20年」どころか、「失われた40年」を招いてしまうかもしれません。

これから、ふたたび誤った金融政策が行われないためにも何とかして、日銀を金融政策に集中させ、過去の間違いを繰り返させるべきではありません。

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2017年10月25日水曜日

絶望的な立憲民主党の政策 経済でリベラルのお株奪われ「反安倍」しかない情けなさ―【私の論評】国会対策は「モリカケ」だけ!次の選挙では姿を消す(゚д゚)!



衆院選で公示前から大きく議席を伸ばした立憲民主党だが、今後、政権交代にも耐えうる提言型の新しい野党になれるのか。それとも旧態依然とした左派政党に過ぎないのだろうか。

 最近、左派系の新聞では立憲民主党と共産党を含めて「左派・リベラル」と称している。

 だが、「リベラル」は、もともと「自由主義」からきている言葉であり、右の保守、左の共産主義・社会主義の中間・中道の政治スタンスを指す。経済政策でみると、雇用重視、市場重視、社会福祉に力点を置いている。人権重視で非宗教でもある。

 ソ連の崩壊後、左の共産主義・社会主義は中国を残して世界中でほぼ消えかかっている。そこで、そうした勢力の逃げ場として「リベラル」が台頭してきた。これは日本も同じで、いまや世界的にも珍しい名称である「共産党」は、政権批判で何とか生き延びているが、「社会党」の名称は消えた。左派系新聞も居場所がなくなりつつあるなか、「左派・リベラル」という言葉で、なんとか「左」を残したいのだろう。

 立憲民主党は「リベラル」を標榜(ひょうぼう)しており、絶滅種である左の共産主義・社会主義を目指しているわけではないだろう。ただし、問題は立憲民主党の主張する政策が、世界基準の「リベラル」に値するかどうかだ。

 まず、外交・安全保障で集団的自衛権を否定するのでは絶望的だ。そもそも世界的には集団的自衛権は当たり前のことなので、左でも右でも主張する。これを否定すると、どこか別世界の人とみられてしまう。

内政では、人権擁護、身分差別反対、環境重視ではそれなりの特色を出せるだろう。しかし、経済政策において、社会福祉はまだいいとしても、雇用重視、市場重視になると心許ない。さらに憲法改正では対案が出せないのは情けない。

 日本では、安倍晋三政権が、経済政策や憲法改正で「リベラル」のお株を完全に奪っている。本コラムで繰り返して述べてきたが、金融緩和政策を使って雇用を伸ばすのは、世界的にはリベラルの政策である。安倍政権は、日本の政治では初めてそれを使って目覚ましい成果を出してしまった。その勢いで、市場重視、社会福祉でも矢継ぎ早に政策を出しており、立憲民主党(や民進党)は後れをとってしまった。

 アベノミクスを超える金融緩和を訴えるなどして対抗すればいいものを、「反アベノミクス」と言ってしまったので、立憲民主党は経済政策でリベラル色を出せなくなっている。

 憲法改正でも、今回の第9条に第3項を加えて自衛隊を合憲化するというのは、本来のリベラル、立憲主義の立場から出るべき意見だ。実際、枝野幸男代表や民進党の前原誠司代表はそうした主張をしたこともある。それも、安倍政権に先んじられてしまった。今では、「安倍政権での憲法改正に反対」と、ここでも「反安倍」しか言えない情けなさだ。

 経済政策論争ができないので、「モリカケ」に走らざるをえないのが、立憲民主党だろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】国会対策は「モリカケ」だけ!次の選挙では姿を消す(゚д゚)!

上記の高橋洋一の主張は概ね賛成です。今回、希望の党、無所属、立憲民主党と3つの形で、立候補した旧民進党議員のうち、希望の党から奈良一区から立候補した馬渕澄夫氏は今回落選しました。

ブログ冒頭の高橋洋一氏が「アベノミクスを超える金融緩和を訴えるなどして対抗すればいいものを」としているのですが、旧民主党の衆議院議員の中で、これができるのはおそらく馬淵澄夫議員だけだったと考えられます。

敗戦の弁を述べる希望の党の馬淵澄夫氏 =23日午前
他にも、金融政策を理解している衆議院議員もいるようではありますが、アベノミクスを超える金融緩和を訴えることができるのは、馬淵氏以外には存在しないでしょう。

実は、旧民進党には参議院にも馬渕氏に匹敵するような議員が存在していました。金子洋一氏です。しかし、彼も昨年の参院選で落選しています。

金子洋一氏
金子洋一氏は、今回の衆院選の直前に自身のブロクで「私が野党の党首ならこんな経済政策を掲げます」という記事を掲載していました。

この内容は、ここでは詳細は説明しませんが、かなりまともな内容であり、確かにこの政策を掲げれば、経済対策としては十分に与党に対抗できるものですし、実際このような政策が運用されれば、日本経済もかなり良くなるであろうと思える内容です。

このブログで、金子氏は、「マクロ経済政策に関心がある政党がありましたら、いくらでも政策作りのお手伝いをいたします。どうぞご連絡ください。公認をよこせなどとは絶対に申しません(笑)」と述べています。

馬淵氏と金子氏に共通するのは、マクロ経済の理解です。政府・日銀が行う経済対策は、マクロ経済的な政策です。政府・日銀の行う経済対策は、家計や企業の実施するような経済対策とは当然違います。これをしっかり、理解して政策提言にまでまとめられるのは、旧民進党の中ではこの二人しか存在しないです。

昨年から、今年にかけて旧民進党勢は、この二人の貴重な人材を活用しなかったばかりか、結局議員ですらなくしてしまっているわけですから、この二人のことを人材としても認識していなかったのでしょう。

民進党の議員のほとんどは、幹部を含めて本当にマクロ経済音痴です。枝野氏など金利をあげると経済が良くなるなどという奇妙奇天烈、摩訶不思議な理論を信奉しています。

2008年の朝まで生テレビで、高橋洋一氏が当時のデフレ対策に関連して「財政政策による景気刺激は1回限りで借金が残るだけであり金融政策を優先した方が良い」という趣旨の発言をしたところ、枝野氏は「財政政策に効果がないのは同意だが、金融緩和はバブルを生むだけだ。それより、銀行の預金金利を上げるべき」と発言しました。

高橋洋一氏も呆れて「今、テレビで流れちゃったけど、見た人はかなりびっくりしてると思う。預金金利を上げて景気回復するなんてことはありえない。こういう発言が出るようじゃ民主党はまだまだだ」と語っていました。

朝まで生テレビで「量的緩和」効果を理解せず、「利上げで景気回復」という珍説を披露する枝野氏
この枝野氏の奇妙奇天烈な理論の源流を正すと、仙谷由人氏のようです。そうして、千谷氏の経済ブレーンは、エコノミストの中前忠氏とコンサルタントの篠原令氏の2人でした。誰が、枝野氏に利上げが景気回復につながると教えたのか知りませんが、いずにせよ、教えた人はかなりのマクロ経済音痴です。

前原氏も枝野氏に負けず劣らず、マクロ経済音痴です。2013年1月13日の報道2001で「デフレ原因は人口減、円高原因は震災によるサプライチェーンの寸断」だと発言していました。

デフレ人口減説は、一時かなり流行りましたが、その後まともな識者が、それを完全否定したたため、最近では影を潜めました。震災直後の円高の要因は、震災により復興などで、円の需要が高まっているにもかかわらず、当時の日銀が金融緩和をしなかったためです。

枝野、前原氏に限らず、旧民進党の議員はほとんどがマクロ経済音痴で、まともな経済対策を提言することはできません。

となると、これから野党の再編がおこり、希望の党に合流して当選した議員が立憲民進党に合流したり、旧民進党の無所属で出馬し当選した議員が、立憲民主党に合流したりしても、誰もまともな経済政策を提言できませんから、立憲民主党がまともな経済対策を提言することは不可能ということです。

それでも、本来ならば、馬淵氏と金子氏を経済ブレーンとみて、その提言を聴くなり、参考にするなどということはできるはずですが、枝野氏はそれもしないでしょう。

それどころか、枝野氏は純化路線に走り、立憲民主党以外の旧民主党の議員を全く受け入れないか、受け入れるにしても自分の考えに近い人たちしか受け入れないと考えられます。

日本維新の会の遠藤敬国対委員長は25日、立憲民主党が同日に開催を呼びかけた野党国対委員長会談に招かれなかったとして「『排除の論理』だ。野党筆頭としてどうなのか」と述べ、立憲民主党の対応に強い不快感を示しています。希望の党も呼ばれていません。


希望の党の小池百合子代表(東京都知事)の「排除の論理」に反発して結成された立憲民主党は、衆院選でも「分断と排除の政治が行われ、立憲主義が壊されている」(枝野幸男代表)と訴えていました。

遠藤氏は「(小池氏と)同じことをしているのではないか。『自分たちと同じ考え方でなければだめだ』というのは、ちょっと違う」と語りました。

京都のお蕎麦屋さんのメニューから
いずれにしても、まともな経済対策も語れず、安全保障も外交も与党に及ばず、結局高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で語ったように、「モリカケ」に走らざるを得なくなるでしょう。そればかりでは、飽きられるのでまたスキャンダルを追いかけることになります。しかし、そのような話と、何でも反対という姿勢を続ければ、立憲民主党は弱体化します。そうなると、立憲民主党も旧民進党のように崩壊するしかなくなります。

次の選挙の頃には、姿を消しているか、有名無実になるしかないです。

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2017年4月9日日曜日

トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持―【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!

トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持
共和党も民主党も幅広く賛同の意を表明

米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。米海軍提供(4月7日撮影・公開)
「ドナルド・トランプ氏は初めて米国大統領になった」――トランプ大統領が実行したシリアの空軍基地攻撃に対して、民主党系の評論家がこんな賞賛の言葉を送った。

 共和党も民主党も支持
 4月4日、トランプ大統領がシリア政府軍の化学兵器使用への制裁として、59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリアのシャイラト空軍基地への攻撃を断行した。

 この攻撃は米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている。トランプ氏の施策が両党側からこれだけ支持されるのは、1月に大統領に就任して以来初めてである。この展開を機に、トランプ政権に対する一般の評価にも変化が起きるかもしれない。

 CNNテレビの国際問題評論家ファリード・ザカリア氏は4月7日の番組で、トランプ政権が実施したシリア攻撃について、「ドナルド・トランプ氏は就任以来78日目にして初めてアメリカ合衆国大統領となった」「トランプ氏は国際的な基準やルールを明確に述べ、世界の中で正義を行使する米国の役割を語った」と述べ、攻撃に賛成した。

ファリード・ザカリア氏 写真はブログ管理人挿入以下同じ
 ザカリア氏は民主党系リベラル派のベテラン記者である。これまではトランプ氏の言動や政策を選挙期間から厳しく批判してきた。だが今回は、国際法規に違反する化学兵器を使用したシリアへの武力行使を、「米国の大統領らしい行い」だと称讃した。

 「この攻撃は必要だった」とルビオ議員

 今回の米軍によるシリアの基地攻撃は、国際的には賛否が交錯している。自由民主主義陣営の各国は一様に同意を表明した。だが、シリアのアサド政権を支持するロシアは激しく反発し、米ロ両大国の対決という状況を生み出しつつある。当のアサド政権は化学兵器の使用を否定しており、米国の攻撃は国際法違反の侵略だと非難する。

 だが米国の国政レベルでは圧倒的に賛成の意見が多い。

 共和党側では、昨年の大統領選の共和党予備選でトランプ氏と激しく争ったマルコ・ルビオ上院議員が、「この攻撃はアサド政権軍の化学兵器の戦力を抑える重要な一歩であり、必要だった」と言明した。

マルコ・ルビオ上院議員
 同じ共和党のべテラン上院議員、ジョン・マケイン氏とリンゼイ・グラハム氏も、「トランプ大統領がオバマ前政権とは異なり、アサド政権の無法に対して断固たる軍事行動をとったことは賞賛されるべきである。米国民一般からも支持されるべきだ」と連名で声明を発表した。

 下院議長のポール・ライアン議員(共和党)もトランプ大統領の今回の実力行使を「適切であり、正統な行動だ」と評価した。

 クリントン氏も賛意を表明
 意外なことに、これまでトランプ氏の諸政策を徹底して非難してきた議会の民主党議員たちからも今回のシリア攻撃は支持されている。

 たとえば上院の民主党院内総務のチャック・シューマー議員は、「アサド大統領が憎むべき残虐行為を働いたことに代償を払わせるという意味で、今回の攻撃は正しい」と述べた。また、下院の民主党院内総務のナンシー・ペロシ議員は「この攻撃はアサド政権の化学兵器使用に対する順当な対応だ」とする声明を発表した。

 さらにトランプ氏と大統領の座を争ったヒラリー・クリントン氏も「アサド大統領の長年の残虐行為に対して、もっと早くこの種の軍事行動をとるべきだった」と述べた。

ヒラリー・クリントン氏
 CNNテレビのインタビューに応じたクリントン氏はシリア攻撃への賛意を表明しただけでなく、この種の武力行使を今後もアサド政権に対して続けていくべきだと語った。「容易な決断ではなかっただろう」として、トランプ氏への理解も示している。

 もちろん全員が賛同しているわけではなく、民主党議員のなかには、トランプ大統領の今回の措置が議会の承認を得なかったことや、国際法との整合性を明確にしていないことなどを批判する動きもある。

 だが全体としては、民主、共和両党からの圧倒的な支持が目立つ。就任以来、トランプ大統領が実施したさまざまな政策や措置の中で、今回のシリア空軍基地攻撃は最も多くの支持を集める結果となったようだ。

【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!

このブログには、以前から米国のメディアはリベラル・左派が90%を占めており、保守派は10%しかありません。

それは事実です。米国の場合は、特に新聞はひどく、大手新聞は100%がリベラル・左派が占めているという具合です。

そのため、保守派の声はかき消されてまるでなきがごとくであるということを掲載してきました。

しかし、それは日本も同じような状況にあります。日本の場合、産経新聞が保守派であるというのが、唯一米国よりは多少ましかもしれないという程度です。

しかし、今回のブログ冒頭の記事をみると、リベラル・左派が90%占める、メディアも今回のシリア攻撃を支持していますし、ヒラリー・クリントンをはじめとする民主党の議員も多くがこれを支持しています。

この有様は、日本とは大違いです。日本の場合は、野党は安倍政権のやることには何でも反対します。

この違いはいったい、どこから来るのでしょうか。それはやはり、米国と日本の政治体制の違いからくるものだと思います。

米国では、日本とは異なり二大政党制が根付いています。そうして、長年二大政党制が続いたことから、政治の継続性の原則も貫かれているようです。


政治の継続性の原則とは、たとえ政権交代があったにしても、旧政権の政策が60〜70%が引き継がれ、新政権は残り30%〜40%で新政権らしさを出すということで、政治的混乱を防ぐというものです。

これは、当然といえば当然のことです。米国のように共和党と民主党の二大政党制だと、政権交代することも頻繁にあります。その場合、政権交代するたびに180度、政策が異なるようなことがあれば、それによる混乱はとてつもないことになります。

また、二大政党制によって政権交代をすることが普通にある米国においては、政権交代された側の政権の閣僚や主要な地位についていた議員などは、その政党の考え方に近いシンクタンクに入ります。そこでシンクタンクの研究員などともに政策の研究を行い、シャドーキャビネットを築きます。

そうして、自分たちは米国という国や社会をどうしたいのかという理想をみつめつつ、具体的な政策の立案を行い目的・目標を定めて、政権に返り咲く時を待ちます。

日本のように、野党に下野すると、単なる議員で、党組織に属しているだけということではありません。そうして、下野していてもいずれ時が来て、また政権与党になったときも、シンクタンクが政権与党の政策立案などをサポートします。これは、実際に重責を担う人たちと一緒研究をした研究員などが、与党の政策立案などをサポートすることになるので、政策運営もかなり実行しやすいです。

このように政治的混乱をさけるため、政治の継続性の原則が貫かれているのです。無論、これは不文律のようなもので、法的な裏付けなどがあるわけではありません。

そうして、米国には強固な三権分立制が敷かれています。これと、政治の継続性の原則があいまって、政権交代がなされたとしても、新大統領がそれまでの政策と180度転換するような政策を行うとしても、それはなかなか容易なことではありません。


だからこそ、トランプ大統領はオバマケアの改廃を目指す立法の議会への提出を断念したのです。やはり、オバマケアの抜本的な改変は、オバマ大統領の時代の政策を180度転換するようなもので、民主党はもとより、共和党の中にも反対する議員が大勢でて、断念せざるを得なかったのです。

しかし、一方今回のトランプ大統領のシリア攻撃に関しては、野党である民主党やメデイアも支持しています。これは、民主党が政権与党だったとしてもシリア攻撃を実行したであろうという意思表示であります。これによって、米国民も共和党政権であろうと、民主党政権であろと、今回のシリア攻撃は実行したであろうことを知り、これが米国のコアな政策なのだと理解することになります。

しかし、日本の場合現在の安倍自民党政権の政策には、野党は何から何まで反対です。もともと、どう頑張っても政権与党にはなり得ない共産党が、何から何まで反対するというのはわかりますが、かつて民主党として政権与党だった現在の民進党がとにかく何から何まで反対というのは全く理解に苦しみます。

国会で、何から何まで反対する野党の姿勢に批判をした安倍総理大臣
私は、現在の日本のいわゆるリベラル左派は、民進党やメディアや知識人も含め、自分たちは日本という国や社会をどうしたいのかという理想も持たずに、単に「政権や権力と戦うのが自分たちの使命」であると思い込み続けてきたため、まともにものが考えられなくなり、「政権や権力」と戦うこと自体が目的、目標になってしまい、無限地獄に陥って堕落しているのだと思います。

そもそも、自分たち国や社会をどうしたいのかという理想がなければ、目的も定まらず、したがって目標も定められず、目標に沿った行動もできずに、ただただ日々を無為に過ごしているだけということに彼らは気づいていないのです。

このようなリベラル・左派のどん詰まり状況に閉塞感を感じ、リベラル・左派から離れる人も結構います。最近では、民進党の長島昭久元防衛副大臣が7日、離党する意向を固めたことがわかっています。「党執行部が進める共産党との共闘路線は容認できず、国民の理解も得られない」として、10日に離党届けを党本部に提出して記者会見する予定です。当面無所属で活動する予定だといいます。

現在の民進党であれば、このように将来に絶望する人たちもこれから出てくると思います。民進党はこのままだと限界的な存在から脱却することができず、ますます劣勢になるだけです。

民進党は、今回のトランプ大統領のシリア攻撃に対して、なぜ民主党やメディアが支持したのか真剣にその背景を学び、今後の国会での自らのありかたを真摯に考えるべきです。

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2016年7月13日水曜日

完勝の安倍首相、今こそ「お金バラマキ」政策を実行すべきである…財政悪化せず―【私の論評】ヘリマネは、新しい概念でもなんでもない!2014年4月以前のアベノミクスに原点復帰すること(゚д゚)!

完勝の安倍首相、今こそ「お金バラマキ」政策を実行すべきである…財政悪化せず

2016参院選で改選過半数を獲得し、喜ぶ安倍晋三首相
アベノミクスの是非が問われた参院選は、自民・公明の与党が勝った。獲得議席は自民56、公明14、民進32、共産6、おおさか維新7、共産はやや期待外れ。そして、改憲に賛成する4党の議席数が参議院の3分の2を超えた。

野党がダメなのは、アベノミクスの第一の矢である金融政策をわかっていないところに根本原因がある。金融政策として重要なのは雇用政策だというのは、世界標準である。欧州の左派政党が最も重視する政策であるが、日本の左派政党はここがわからない。理解できていない人ばかりが日本の左派政党の幹部になっている。

もちろん民進党のなかにも、金融政策が雇用政策であることをよくわかっている人もいる。金子洋一氏である。彼は元内閣府官僚であり、国際経験も豊かなエコノミストだ。左派政党に必要な希有な人材を、今回の選挙で失ってしまった。ますます民進党が復活する可能性は少なくなったにちがいない。

安倍晋三政権は早速動き出した。安倍首相は12日、参院選で訴えた経済対策の準備に入るよう石原伸晃経済再生担当相に指示した。財源を心配するマスコミ報道もあるが、実はヘリコプターマネーの手法を使うと、それほど心配することもない。欧州などでヘリコプターマネーをめぐる議論が浮上しているが、これは中央銀行がカネを刷ってヘリコプターから人々にばらまくようなものだ。

ただし、実際にこれを行うのは難しい。「いつどこにヘリコプターがお金を撒くのか教えてほしい」というジョークすらある。現在のように中央銀行と政府が役割分担している世界では、中央銀行が新発国債を直接引き受けることで財政赤字を賄うことを指す場合が多い。

このアイデアはかつてノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏によって論じられ、2003年にベン・バーナンキ氏(当時FRB<米連邦準備制度理事会>理事、その後同議長)によって再び取り上げられたものである。

バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済再生のためのアドバイスとして取り上げたのだが、具体的には国民への給付金支給や企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債の買い入れることを提案している。中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばら撒かれることになる。その意味で、バーナンキ氏の日本経済に対する提案はヘリコプターマネーというわけだ。

  財政赤字悪化を伴わない

この方法は、実質的な政府の債務残高を増加させないし、家計・企業は減税に伴う将来の増税懸念がないというメリットがあるため消費が増加する。金融政策と財政政策は名目消費を押し上げ、それが一般物価を押し上げる。

もちろん、この政策は国債の貨幣化であり、過度に行えばインフレを招くだけであるが、デフレによって悩まされているのであれば、経済回復を促進することになる。しかも先進国ではインフレ目標という歯止めもあるので、インフレが過度に加熱しコントロールできなくなる恐れもない。

もっとも日本では、政府が国債発行によって補正予算をつくるとともに、日銀が国債買いオペによって量的緩和を行えばいい。今の国内GDPギャップが10兆円程度であることを考慮すれば、20兆円の国債発行による補正予算と同額の量的緩和であれば、今後の経済を活性化するはずだ。

しかも、ひどいインフレにもなりにくい。この財政政策と金融政策の合わせ技は、実質的な債務残高の増加にならず、財政赤字悪化にならない。日銀保有国債については、利払い費や償還負担が発生しないからだ。この方法は、インフレ率が低い時には弊害がないのがいい。

(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】ヘリマネは、新しい概念でもなんでもない!2014年4月以前のアベノミクスに原点復帰すること(゚д゚)!

ヘリコプターマネーについては、上の記事でも解説していましたが、再度説明します。 

ヘリコプターマネーは、ノーベル経済学賞受賞の米経済学者、ミルトン・フリードマン氏(故人)が1969年に提唱しました。中央銀行はお札を刷って市中銀行に供給します。デフレ圧力が強いと、カネは銀行から家計や企業に細々としか流れないのでデフレが慢性化します。そこで中央銀行資金を政府財政に回せば迅速に家計や企業に行き渡らせられるので景気がよくなる-というもので、ヘリコプターからカネを大量に散布する寓話(ぐうわ)に例えました。バーナンキ前FRB議長はフリードマン氏の弟子でもあります。

ミルトン・フリードマン氏ー
安倍晋三首相周辺で、「ヘリコプターマネー」政策の導入が検討課題に浮上してきたようです。

前内閣官房参与の本田悦朗駐スイス大使が最近、首相に「今がヘリマネーに踏み切るチャンスだ」と進言しました。

首相は本田氏らの勧めに応じて12日に官邸でバーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長と会談。菅義偉官房長官は記者会見で、ヘリマネーに関して「特段の言及があったとは承知していない」と述べましたた。一方で、バーナンキ氏が「金融緩和の手段はいろいろ存在する」と指摘したことを明らかにしました。

バーナンキ前FRB議長
バーナンキ氏は、2008年のリーマン・ショックでは、ただちにドル資金の大量発行に踏み切り、金融恐慌を終わらせ、米景気を回復させた実績を持ちます。

8%増税により、デフレ傾向で消費が萎縮する中で金融緩和しても、民間の借り入れ意欲は乏しいです。日銀は今年2月にマイナス金利政策を導入したのですが円高は止まりません。財政を活用しない限り、アベノミクスは効果を発揮できそうにありません。

ヘリコプターマネーには、異論も多いです。日銀が財政資金を直接賄うようだと財政規律がないと市場にみられ、円や国債への信認が失われる恐れがあるとするものです。しかしながら、国債の金利がかなり低い現状で、しかも円高傾向が止まらない現状であれば、そうした心配はほとんどあてはまりません。

黒田東彦日銀総裁も消極的ですが、日銀が金融機関保有の国債を買い上げる現行方式で、もヘリマネーと言って良いものです。アベノミクスの第一と第二を真面目にやればヘリコプターマネーです。つまり、2014年4月の前までアベノミクスは、ヘリマネと同意語と言っても良いです。ただし、2014年4月からは、消費税増税という緊縮財政をしてしまったということで、ヘリマネではなくなってしまいました。

黒田東彦日銀総裁
いまさらヘリマネというのは、従来のアベノミクスを真面目にやれということであって、決して新しい政策ではないということに注意すべきです。

日銀は市場で買い取った国債を再売却せず、インフレが加速しないかぎり半永久的に保有するようにします。そうなると、政府の債務増加分は日銀の資産増加で相殺されるので、政府の債務は実質的に増えません。

そうして、インフレ率が一定程度上昇すれば、日銀は国債購入を打ち切り、政府が消費税率を引き上げるようにすれば、財政規律にも沿うことになります。

上記のことを理解できない、エコノミストや、野党の政治家や、マスコミなどが、ヘリマネなどというと、またまた頓珍漢で奇妙奇天烈なことを言い出し、財政破綻するとか、国債が暴落するとか騒ぎ出すことも十分考えられるので、菅義偉官房長官は記者会見で、ヘリマネーに関して「特段の言及があったとは承知していない」と述べたのは、そうした誤解によって国民が惑わされることを避けるためであると考えられます。

このようなこともあるので、政府としては、馬鹿で経済が理解できないエコノミストや、野党の政治家、マスコミなど騒がせないようにするため、アベノミクスの金融緩和を再度しっかりするということで、「ヘリマネ」などということば使わないほうが良いでしょう。

ヘリマネは結局最初のアベノミクスの第一の矢と、第二の矢を真面目にやるということ

この言葉を使うのは、マクロ経済を正しく理解できる人たちの間だけで、馬鹿で愚かで、自分が経済を理解できていないことすら自覚していない人たちに邪魔されないようにすべきです。

そうして、実際に大成功し誰の目にもうまくいったと認識されたときに、「ヘリコプターマネー」という言葉を大々的に流布して、浸透させ、次に「ヘリコプターマネー」を実行しなければならない時がきたときに、やりやすいようにすべきと思います。

しかし、それでも、経済を理解できないエコノミストや、野党の政治家、マスコミなどの人たちは、理解できないかもしれません。彼らは、それを理解しないまま、棺桶に片足を突っ込むことになると思います。その時には、時代遅れの旧い人ということで、影響力も何もなくなったただのボケ老人として見られることになると思います。

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2014年6月13日金曜日

【村上尚己氏ツイート】 日銀の政策についてイミフな論評をする人って多い―【私の論評】またぞろ懲りないイミフレ(゚д゚)!?意味不明の経済論評をしてますた(゚д゚)!

【村上尚己氏ツイート】 日銀の政策についてイミフな論評をする人って多い

【私の論評】またぞろ懲りないイミフレ(゚д゚)!?意味不明の経済論評をしてますた(゚д゚)!

サプタイトルに、イミフレというわけのわからない言葉を掲載しましたが、これは意味不明と、インフレの両方の言葉からの合成語。私の独自の合成語です。

定義としては、日銀のインフレ政策について、意味不明なことを言う人自身および、その内容のことです。村上氏のイミフの後にレをつけてみたということです。

イミフレ。全く、村上氏の言う通りです。現状では、日銀の想定通りに、景気回復しつつありインフレ率も上昇しているから、日銀は、金融政策政策維持しているだけです。

これに対して、村上氏が語っているように、「緩和できないジレンマ」などと論評する人がいます。意味不明もはなはだしいです。これは、日銀は追加緩和するとか、年初に意味不明なことを言っていたエコノミストらの予想が外れただけで、彼らはその事実を糊塗するためにこのようなことを言っているのだと思います。




その代表的なもののURLを以下に掲載します。

日銀が追加緩和できないジレンマ

これは、金融アナリストの久保田 博幸氏が書いているものですが、もっともらしく書いていますが、確かにほとんど意味不明です。


久保田博幸氏 

これは、病気でいえば、医師が病気の原因がある程度特定できたため、それに対して医師が飲み薬や点滴を処方し、半年程度はこの治療を続けることにして治療を開始し、継続していたら、様々な検査結果は回復の状況を示しているにも関わらず、患者は1ヶ月目くらいで、病気が完治しないからといって、薬の量を増やせとか、この治療は効き目がないと言っているのと同じようなものです。

だから、村上氏も意味不明と言っているのです。私も、まったくそう思います。金融緩和政策も、短期間に成果が出るものではありません。たとえ今年増税しなかったとしても、デフレから緩やかなインフレになるまでは、最初から短くても2年とか、3年くらいはかかるであろうことがわかっています。

その間には、良い影響として株価が上がる、円安傾向になるなどのことは最初からわかっていたことです。これは、薬でいえばバイアグラのようなものです。バイアグラは最初は心臓の薬として開発されたものです。しかし、他の副作用として男性機能の回復などがありました。

悪い影響としては物価があがっても、しばらくは賃金は上がらないだとかの副作用があるのは最初からわかっていたことです。賃金が上がるにしても、パート・アルバイトから上がり、次に正社員、その後に幹部や役員などという順番で回復していくということは経済学上の常識といっても良い程の自明の理です。これが理解できなけば、最初から金融政策など語るべきではありません。というより、語る資格がありません。

もともと、株価を上げることが金融緩和の目的ではありません。株価の上昇は単なる副産物にすぎません。また、金融緩和は、物価が上がっても、賃金が上がらな状態することを目的としているわけでもありません。それは一時的に生じた悪影響であり、やがて賃金も追いつきます。

悪影響があるからといって、それが致命的にならなければ、金融緩和を続けるべぎてす。それは、先ほどの病気の例でいえば、薬や点滴などによる副作用があったとしても、それが致命的になったり、新たな病気を併発するというのでなければ、治療は継続すべきであるということです。

まさに、日銀の金融緩和はこのような状況にあるので、政策維持をしているだけなのです。

金融緩和に関しては、実際に実施する前から、その有効性に対して疑義を表明する人がいました。その代表的なものは、池田信夫氏です。その代表的なものを以下に掲載します。

超金融緩和のジレンマ

この記事は、昨年の3月時点の記事であり、日銀人事で黒田総裁などが決まったばかりで、まだ金融緩和は実施していない頃のものです。

池田信夫氏

ちなみに、この記事で、池田氏がデフレの原因について述べている部分を以下に掲載します。
最大の問題は「日本のデフレは貨幣的現象か」という点だが、著者の答は「最大の原因は賃下げや交易条件の悪化などの実物的現象だ」ということである。特に製造業の業績悪化で生じた余剰労働力がサービス業に移り、その大部分が非正規雇用に切り替えられたため、サービス業の平均賃金(特に医療・福祉)が2000年代で2割近く下がった。これに引っ張られて、製造業も含めて単純労働全体の賃金が下がる生産性格差デフレが起こっている。 
もう一つの原因は、輸出産業の国際競争力がなくなったことだ。スマートフォンのような付加価値の高い市場で負け続け、コモディタイズした半導体や液晶を赤字輸出したため、半導体・電子部品の交易条件はこの10年で40%も悪化した。つまり輸出品価格が輸入品に対して4割も下がったわけで、これは為替レートとは別問題である。「日銀がエルピーダをつぶした」などという老経済学者は、IT産業の激烈な国際競争を知らないのだ。
この池田氏の見解、まだ金融緩和をする前の段階のものですから、まだ上記の久保田氏の記事よりはましかもしれません。実際に金融緩和をする前に池田氏は、このようなことを述べているのですが、久保田氏は金融緩和して1年以上もたち、それらの効果がまだ多くの国民には広がっていないものの、明らかに数値上では予想通りの経過をたどっているのに、「緩和できないジレンマ」などと書いているからです。

ただし、池田氏も問題です。池田氏がこの記事を書いた時点では、15年間もデフレが継続しているにもかかわらず、本格的な金融緩和は一度も実施したことがなかったのですから、金融政策に問題ありと捉えるのが普通です。しかし、池田氏はどこまでも、金融緩和は効き目がないなどと主張していました。

そもそも、インフレは日本語では、通貨膨張、デフレは日本語訳では、通貨収縮です。インフレ、デフレは、純然たる貨幣現象であり、それ以外の意味はありません。デフレは、貨幣現象です。にもかかわらず、池田氏は「日本のデフレは貨幣的現象」ではないとしています。

ここに根本的な誤りがあります。賃下げや交易条件の悪化は、大部分はデフレが原因であって、賃下げや交易条件の悪化したからデフレになったのではありません。順番が逆です。デフレになれば、雇用情勢が悪化して賃金が下がるのはあたり前です。

デフレ(通貨収縮)であれば、日本でいえば、円が足りない状況ですから、当然国内でも海外でも縁は不足がちなので、円高傾向になるのがあたり前のど真ん中です。円が高くなれば、交易条件が悪化するのはあたり前です。交易条件が悪くなったからデフレになったのではありません。

結局、池田氏は、原因と結果を取り違えています。久保田氏に関しては、意味不明です。

さて、今年は4月に増税をしました。その影響はまだあまり出ていようには見えません。しかし、だからといって、増税には影響なしとすぐには言い切れません。それは、前回の増税でもそうでした。増税直後は、さほど影響がないようにも見えましたが、1年後から景気がかなり落ち込み、完璧にデフレになりました。

今後、数ヶ月間、多くのイミフレ連中は、増税の影響はないと言い触れ回り、来年の10%増税も影響はあまりないと言い触れ回ることでしよう。白痴議員から、マスコミから、イミフレどもが大合唱して、10%増税の空気を醸成しようとするでしよう。しかし、それはイミフレの虚言にすぎません。増税すれば、景気は落ち込みます。病気でいえば、血圧が高いから、低くなるような薬を点滴しているのに、同時に昇圧剤(血圧をあげる薬)を点滴しているようなものです。このような有り様では、患者の血圧はなかなか下がりません。

このような、虚言には騙されないようにすべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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