2026年8月4日火曜日

母親が食事を削る国で、緊縮を続けるな――高市政権は「高圧経済」で女性の貧困を断て


まとめ
  • 現在の景気は以前より改善しており、安倍・菅政権による大規模な財政出動も、その回復を支えた。しかし、長年のデフレで失われた貯蓄、職歴、健康、教育機会は、景気が一時的に良くなっただけでは戻らない。
  • 貧困を根本から減らすには、雇用が悪化しない限り一定のインフレを許容し、企業が労働者を奪い合うほど需要を強く保つ「高圧経済」が必要である。強い雇用環境こそ、若者、女性、非正規労働者の賃金と待遇を改善する。
  • 高市政権は、景気回復を理由に減税や積極財政を後退させてはならない。国債発行を当然の前提として、国民の手取りを増やし、供給力と国家資産を形成し、その成果を最も弱い立場の女性にまで届けるべきである。
2026年4月、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、フードバンクを利用する低所得のひとり親家庭を対象とした調査結果を公表した。2026年2月18日から3月3日までに1818人から回答を得たもので、約半数が手取りベースで世帯年収200万円未満、約半数が非正規雇用だった。

前年に職場で賃上げがなかった人は約6割に上る。家賃や光熱費などの固定費を支払った後、食費や日用品費などに回せる金額が月3万円未満という家庭も約4割に達した。物価高への対応として最も多かったのは、保護者が自分の食事の量や回数を減らすことだった。

学校給食のない休日には、1日2食以下で過ごす子どもの割合が平日の約3倍に増える。グッドネーバーズ・ジャパンの2026年調査が映し出したのは、ぜいたくを諦めた家庭ではない。親が自分の食事を削っても、なお子どもの食事を十分に確保できない家庭である。

この調査は、同団体のフードバンク利用者を対象としたものであり、我が国のひとり親家庭全体を代表する統計ではない。しかし、支援を必要としている家庭で、現実に何が起きているのかを示す資料としては重い。ひとり親家庭の多くを女性が支えていることを考えれば、「貧困女子」という言葉の向こう側には、本人の食事を削りながら、子どもの暮らしを守ろうとする女性たちの姿がある。

彼女たちは、節約していないのではない。既に、削れるものを削り尽くしている。

問題は個人の生活態度ではない。長年にわたり賃金と雇用の改善を遅らせ、景気回復のたびに増税、歳出抑制、金融引き締めへ戻ろうとしてきた経済政策にある。若い女性の悲惨さだけを見世物のように並べても、貧困はなくならない。問うべきなのは、なぜ真面目に働く人が、食事、住居、教育、将来への備えを同時に確保できない経済になったのかということである。

1️⃣景気が回復しても、デフレが残した傷はすぐには消えない

現在の我が国の景気が、長期デフレの深刻な時期や、経済活動が大幅に制限されたコロナ禍より改善していることは認めなければならない。内閣府の月例経済報告は、2026年に入っても景気を「緩やかに回復している」と判断してきた。2026年5月の完全失業率は2.5%で、就業者数も前年同月より52万人増えている。総務省の労働力調査を見る限り、我が国が雇用崩壊を伴う深刻な不況に陥っているわけではない。

この回復には、安倍・菅政権がコロナ禍で実施した大規模な財政出動も寄与した。2020年度には、第1次、第2次、第3次補正予算が編成され、一般会計の歳出追加額は合計約73兆円に達した。政府の緊急経済対策を融資や民間支出を含む事業規模で見れば100兆円を大きく超えるが、国の一般会計から追加支出された金額とは区別しなければならない。財務省の2020年度予算資料でも、3度の補正予算が国会で成立した経過を確認できる。

支出の全てが効率的だったわけではない。給付の遅れ、制度の複雑さ、効果の薄い事業もあった。しかし、民間の売上げが急減し、企業が倒産や解雇を迫られていた時期に、政府まで支出を削っていれば、失業と廃業はさらに増えていた。政府が企業の資金繰りと家計を支えたことで、生産設備、取引関係、雇用関係が完全に破壊されず、その後の回復につながったのである。

ただし、景気が回復したからといって、貧困まで同時に消えるわけではない。景気とは、生産、雇用、消費、企業収益など、その時点における経済の「流れ」である。一方、貧困は現在の所得だけでなく、過去に失った貯蓄、積み上がった借金、途切れた職歴、損なわれた健康、失われた教育機会などが重なって形成される。


収入が数千円増えても、貯金を使い果たし、家賃や公共料金を滞納し、奨学金や借金の返済を抱えていれば、生活はすぐには立て直せない。長く非正規雇用に置かれた人が、景気回復と同時に正規雇用へ移れるわけでもない。病院への受診を先送りして健康を害していれば、働ける時間そのものが減る。子どもの食事や教育を削れば、その影響は次の世代にまで残る。

景気は現在の流れだが、貧困は過去から蓄積された傷でもある。その傷は、景気指標が数四半期上向いただけでは消えない。

さらに、我が国では長年にわたり、物価も賃金も上がらないデフレと低成長が続いた。商品が売れないから企業は値上げを避け、値上げできないから賃金を抑える。賃金が上がらないから家計は消費を控え、消費が増えないから企業は設備投資と採用を抑える。この悪循環が続いた結果、企業には「需要は増えない」、労働者には「賃金は上がらない」、家計には「将来は今より苦しくなる」という予想が染みついた。

こうした企業行動や社会慣行は、数年の景気回復では元に戻らない。経営者が今後も需要が増え続けると確信しなければ、設備投資や正規雇用を本格的に増やすことはない。労働者も、賃上げが一時的だと考えれば、将来不安から消費を増やせない。長年のデフレで形成された慎重な行動を変えるには、需要、雇用、賃金が継続して伸びる実績を積み重ねなければならない。

景気が少し良くなったからといって、ここで経済対策を打ち切れば、デフレで傷んだ構造は修復されない。それどころか、我が国は再び低賃金、低投資、低消費の均衡へ押し戻される。

2️⃣貧困を根絶するには、高圧経済を続けなければならない

景気が改善し、物価が上がり始めると、すぐに「経済対策はもう必要ない」「財政を引き締めろ」「金利を上げろ」という声が出る。しかし、デフレから抜け出しかけた段階で政策のブレーキを踏めば、企業は再び投資と採用を控え、家計は将来不安から消費を減らす。売上げが弱まったとき、最初に雇用や労働時間を削られるのは、非正規労働者、業務委託、若者、ひとり親、職歴に空白のある人々である。

必要なのは、景気回復の入口で政策を打ち切ることではない。賃金と雇用の改善が社会の隅々にまで届き、企業と家計の行動が変わるまで、強い需要を維持することである。

それが高圧経済である。

高圧経済とは、積極財政と適切な金融環境によって総需要を強く保ち、企業が恒常的な人手不足を感じるほど雇用を引き締める経済である。企業が労働者を選び放題の不況では、経験の少ない若者、子育て中の女性、長期間仕事から離れていた人、十分な技能を身につける機会を得られなかった人は採用されにくい。採用されても、低賃金や不安定な契約を受け入れざるを得ない。

ところが、人手不足が長く続けば、企業の側が変わらざるを得なくなる。人材を確保するために賃金を上げ、勤務条件を柔軟にし、未経験者を採用し、社内で技能を身につけさせる必要が生じる。非正規労働者を正規雇用へ転換し、育児や介護を抱える人も働ける制度を整えなければ、企業自身が人材を確保できなくなる。


米連邦準備制度理事会の研究である「Okun Revisited: Who Benefits Most from a Strong Economy」は、景気変動の影響が、雇用上不利な立場にある人々に強く表れることを示している。労働市場が既に強い状態からさらに改善すると、一部の不利な集団に追加的な恩恵が及び、女性についてはその効果が一定期間残る可能性も示唆された。

高圧経済は万能薬ではない。住宅、医療、生活保護、職業訓練、養育費確保などの個別政策も必要である。しかし、不況時に真っ先に職を失い、回復時には最後に採用される人々にとって、企業が労働者を奪い合う雇用環境は、最も強力な貧困対策となる。

若い女性の貧困を根絶したいのなら、女性を安価な労働力として企業が選別する経済から、女性がより高い賃金と安定した職場を選べる経済へ転換しなければならない。単発の給付や同情だけでは、労働市場における交渉力は変わらない。強い需要と人手不足を持続させ、雇用主と労働者の力関係そのものを変える必要がある。

無論、高圧経済を維持すれば、一定の物価上昇を伴う可能性がある。しかし、物価が上がったという理由だけで、直ちに財政と金融を引き締めるべきではない。見るべきなのは物価だけではなく、雇用、名目賃金、実質所得、設備投資、個人消費、供給力の動向である。

インフレを無制限に放置せよという話ではない。食料やエネルギーなどの生活必需品だけが急騰し、賃金が追いつかない状態は、低所得者ほど強く圧迫する。2026年6月の消費者物価指数は前年同月比1.7%上昇したが、品目ごとの負担は一様ではない。総務省統計局の物価統計を踏まえ、食料、エネルギー、家賃など、家計への影響を個別に見なければならない。

生活必需品の価格が上がる局面では、税負担の軽減、給付付き税額控除、エネルギー支援などで家計を守る必要がある。供給不足が原因なら、原発再稼働を含むエネルギー供給力の回復、農業、物流、住宅への投資によって、国内の供給力を再建すべきである。政府支出を単なる消費に終わらせず、将来の生産力と税収を生み出す国家資産の形成につなげることも欠かせない。

しかし、物価を抑えるために需要そのものを破壊し、企業の売上げを減らし、失業者を増やす方法を選んではならない。低所得者にとって恐ろしいのは、物価が多少上がることだけではない。仕事を失い、収入そのものが途絶えることである。雇用が強ければ、労働者はより良い職場へ移ることができ、企業も賃金と待遇を改善せざるを得ない。失業が増えれば、企業の立場が強くなり、労働者は再び低賃金と不安定雇用を受け入れざるを得なくなる。

したがって、雇用が悪化せず、賃金と所得が増え、物価上昇が制御不能になっていない限り、一定のインフレは許容すべきである。高圧経済の目的は、物価を上げること自体ではない。雇用を強くし、賃金を上げ、デフレで失われた投資、技能、労働機会、供給力を取り戻すことにある。

3️⃣高市経済政策に竿を差す者は、誰の暮らしを見ているのか

高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、不況時に一時的な給付を行うだけの政策ではない。長年のデフレによって弱った賃金、投資、雇用、消費の循環を立て直し、危機管理投資と成長投資によって、国民所得と我が国の供給力を引き上げる政策である。高市内閣の基本方針にも、戦略的な財政出動によって所得、消費、税収を増やす方針が明記されている。

2026年2月の衆院選で自民党は316議席を獲得した。高市総理は、その結果を「責任ある積極財政」などの政策転換をやり抜けという国民の後押しだと受け止める考えを示した。選挙後の高市総理記者会見で語られたこの認識は重い。316議席の全てが1つの政策への白紙委任を意味するわけではないが、従来路線からの転換を掲げた政権が、歴史的な支持を得たことは事実である。

だからこそ、高市政権は公約を実行しなければならない。減税によって国民の手取りを増やし、所得税を十分に納めていない低所得者には給付付き税額控除によって支援を届ける。国債発行を当然の前提として、エネルギー、食料、住宅、教育、科学技術、国土強靱化、防衛産業などに投資し、国内の供給力と国家資産を形成する。これは単なる「ばらまき」ではなく、民間の売上げ、設備投資、雇用、賃金を増やし、将来の税収基盤を強くする政策である。

ただし、食料品の消費税をめぐる現在の制度状況は、正確に区別する必要がある。高市政権は衆院選で、給付付き税額控除の導入までのつなぎとして、飲食料品の消費税率を2年間0%とする方針を掲げた。しかし、2026年6月の社会保障国民会議実務者会議では、議長案として、2027年4月から2年間は税率を1%とし、別途、所得に応じた給付を組み合わせて「実質ゼロ化」を図る案が示された。高市総理の6月17日の記者会見によれば、これは実務者会議の議長案であり、その時点で政府方針や法律として確定したものではない。

消費税率を最終的に変更するには、政府が税制改正法案を提出し、国会が法律として可決、成立させなければならない。社会保障国民会議やその実務者会議には、税率を直接決定する権限はない。会議は制度案を検討し、政府・与党や国会の政治過程に影響を与える機関である。この決定主体と影響主体を混同してはならない。

そのうえで言えば、選挙で掲げた0%を1%へ後退させ、「給付を合わせれば実質ゼロだ」と説明するだけでは、国民が受けた約束と同じとは言い難い。給付には対象の選別、所得把握、申請、支給時期などの問題がある。店頭で誰もが直ちに負担軽減を実感できる0%と、後日給付を組み合わせる制度は同一ではない。政府は国民に対し、制度の違いと、公約を変更するならその理由を明確に説明する責任がある。


それにもかかわらず、財政規律や財源論だけを振りかざし、減税を縮小し、財政出動を先送りし、ようやく始まった賃金と雇用の改善を止めようとする官僚や政治家がいる。無駄な支出を検証し、金利やインフレを監視することは当然である。しかし、財政指標を守ること自体が政治の最終目的ではない。財政は、国民生活を守り、供給力を強め、我が国を将来世代へ引き継ぐための手段である。

自分の食事を減らして子どもに食べさせる母親がいる。固定費を支払った後、月3万円未満で食費と日用品費を賄う家庭がある。長年のデフレと不安定雇用によって、貯蓄も、技能を身につける機会も、人生を立て直す時間も失った人々がいる。

その現実を放置しながら、高市政権の経済政策に竿を差し、減税と積極財政を骨抜きにしようとする。その姿は、私には時として悪魔のように見える。

もちろん、官僚や政治家が悪意だけで行動していると断定するつもりはない。しかし、国債残高や財政指標には過敏に反応しながら、食事を抜く母親や、明日の生活を心配する若者の苦痛には鈍感であるなら、その政策が生み出す結果は極めて冷酷である。本人が善意や責任を語っても、人間の暮らしより省庁の論理や帳簿を優先し、国民が貧困から抜け出す道を塞ぐなら、その結果から免責されることはない。

高市政権には、安倍・菅政権による財政出動が守った雇用と生産基盤を、一時的な回復で終わらせない責任がある。高圧経済を維持し、持続的な賃上げ、正規雇用の拡大、国内投資、供給力再建へつなげなければならない。景気回復の成果が、若者、女性、非正規労働者、ひとり親家庭に届く前にブレーキを踏むことは、政策転換を支持した国民への背信となる。

結語 若い女性に我慢を強いる国を、豊かな国とは呼ばない

現在の我が国の景気は、以前より改善している。安倍・菅政権の大規模な財政出動は、コロナ禍で企業と雇用が崩壊するのを防ぎ、その後の回復を可能にする基盤を残した。この事実を無視し、積極財政には何の効果もなかったかのように語るべきではない。

しかし、景気が良くなったからといって、貧困が消えたわけでもない。長年のデフレによって失われた貯蓄、積み上がった借金、途切れた職歴、損なわれた健康、諦めざるを得なかった教育や就職の機会は、景気指標が上向いただけでは元に戻らない。企業に染みついた投資への慎重姿勢も、家計に定着した将来不安も、数年の回復では消えない。

だからこそ、景気が回復し始めた今、政策を止めてはならない。ここで歳出を削り、増税し、金融を急速に引き締めれば、ようやく上がり始めた賃金と雇用は再び弱くなる。そのとき最初に仕事や労働時間を失うのは、非正規労働者、若者、ひとり親、そして雇用上弱い立場にある女性たちである。

我が国に必要なのは、景気の数字が少し良くなったところで満足することではない。企業が労働者を選ぶ経済から、労働者が企業を選べる経済へ転換するまで、需要を強く保つことである。企業が人材を確保するために賃金を上げ、待遇を改善し、未経験者を採用し、正規雇用へ転換しなければならない状況を続けることである。

それが高圧経済である。

雇用が悪化せず、賃金と所得が増え、物価が制御不能な状態に陥っていない限り、一定のインフレを許容する。国債発行を当然の前提として、政府が成長投資と危機管理投資を続ける。減税と給付付き税額控除によって国民の手取りを増やし、住宅、教育、食料、エネルギーへの投資によって、国民生活と我が国の供給力を同時に守る。

若い女性に、これ以上「節約しろ」「もっと働け」「我慢しろ」と説教してはならない。彼女たちは既に十分に節約し、十分に働き、十分に我慢している。変えるべきなのは彼女たちの生活態度ではない。長年にわたり、国民の手取り、安定した雇用、将来への希望を奪ってきた経済政策の方である。

貧困は、わずかな給付を時折配れば解決する問題ではない。経済全体を成長させ、完全雇用に近い状態を維持し、最も弱い立場の人にまで賃金と雇用の改善を届けて、初めて根絶への道が開かれる。

自分の食事を削って子どもに食べさせる女性がいる国を、豊かな国とは呼ばない。

高市政権は、景気回復を理由にブレーキを踏んではならない。高圧経済を続け、減税と積極財政の公約を実行し、その成果を最も弱い立場の女性にまで届けるべきである。

最後の1人が貧困から抜け出すまで、経済政策を止めてはならない。

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