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2018年11月28日水曜日

今も残る「ロスジェネ」の苦境…正社員比率や賃金に世代格差 90年代の政策は非難に値する―【私の論評】本当の愛国者は、子どもは私達の未来であることを片時も忘れない(゚д゚)!




 このところ雇用は急速に改善しているが、デフレやバブル崩壊後の不況で、「就職氷河期世代」と呼ばれた1970年~82年ごろに生まれた人たちの雇用や給与なども改善しているのか。そして、個別の政策的な手当は必要なのだろうか。

 池井戸潤氏の経済小説には、「バブル世代」の半沢直樹と「ロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)」の森山雅弘が登場する。そこではロスジェネは厳しい就職戦線を勝ち抜いてきたので、有能な社員として描かれている。

 ただし、就職できなかった人の物語はほとんどないのではないか。筆者の知っているロスジェネには、就職に苦労して非正規の渡りを繰り返して現在に至っている人もいる。

 一般的な人は、日本企業に正規社員で採用されると、当初の給料は低いが、40歳ごろにはそこその水準に上昇することが多い。ところが前述のロスジェネのように最初の就職に失敗すると、この賃金上昇カーブの恩恵を受けられない。

 40代になると、中途採用を受け入れる企業も少ない。一般的な日本企業では、50代前半で賃金はピークになるので、40代は人件費コスト高なのだ。

 ロスジェネの後には、「ゆとり世代」がくる。2002年から10年に改訂されるまでの学習指導要領に基づく「ゆとり教育」を受けた1987~2004年生まれを指す。

 ゆとり世代の前半部分は、リーマン・ショックと民主党時代の雇用政策の無策を受けて、就職はやはり困難だった。しかし、アベノミクスの雇用環境の改善から、かなり救済されている。この点で、ロスジェネとは好対照だ。

 労働力調査で各年齢階級の正社員比率をみると、25~34歳は17年が74・16%で、18年(9月まで)が74・97%。35~44歳が71・45%と71・11%、45~54歳が67・73%と67・81%だ。

 ロスジェネにあたる35~44歳では正社員比率が低下しているが、その前後の世代は上昇しているという状況だ。たしかに、ロスジェネは苦しい。

 次に賃金構造基本統計をもとに各年令階級の正社員賃金をみると、25~34歳は16年が26万2100円、17年が26万2700円、35~44歳は32万9000円と32万8100円、45~54歳が38万9900円と38万6300円だった。25~34歳は上昇しているがが、35~44歳と45~54歳は低下している。ここでも、ロスジェネは苦しい。

 一方で、データを見る限り、他の年齢階級と顕著な差があるわけではないことも分かる。となると、個別の政策的な手当が必要かというと、疑問である。ロスジェネの実例を挙げて苦境をリポートすることは難しくないが、それが統計データとしてひどい格差とはいいがたいからだ。

 とはいえ、1990年代の就職困難な状況を招いたマクロ経済政策の不在、特に引き締め基調の金融政策は、十分に非難するに値する。雇用の確保は政府として当然の責務だと筆者は考えているからだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】本当の愛国者は、子どもは私達の未来であることを片時も忘れない(゚д゚)!

ロスジェネについては、上記の高橋洋一氏の記事ではあまり説明していないので、ここでその意味や特徴等について掲載しておきます。

ロスジェネ」は「ロスト・ジェネレーション」の略です。つまり失われた世代という意味になります。

この「ロスジェネ世代」にあてはまるのはバブル崩壊後から約10年間の期間に就職活動をした人たちのことです。つまり、1970年~1982年頃に生まれた世代がそう呼ばれているのです。年齢でいうと、現在48歳〜36歳くらいです。


「バブル景気」と呼ばれた好景気の急激な後退が起こったのが1980年代後半になります。それまで高騰し続けていた株価や地価が下落に転じたのです。

そもそもバブルが崩壊する前に日本がバブル景気に入ったのには円安を武器に輸出産業で大幅な黒字をあげるのに対し、自国の製品が売れず大幅な貿易赤字に陥っていた米国が円高に誘導するべくプラザ合意を締結したことにありました。

プラザ合意によって1ドルが約250円から1年後には約150円まで円高が進んだのです。輸出産業にとって大きな打撃となり一時的な不況に日本はみまわれました。

この状況を打破するために当時、日銀が行ったのが金融緩和政策で、企業にお金を貸し出す時の金利を下げたのです。企業はこぞってお金を借り、株や土地に投資するようになりました。当時は「土地を買えば必ず儲かる」といういわゆる土地神話が信じられており、不動産をみんなが欲しがりました。結果、不動産価格は上昇し続けたのです。

また、金利が安いうちに買っておこうという考えから株価も高騰します。消費が活発なこの状態がバブル景気です。ただし、この頃土地や株などの資産価格は上昇していましたが、一般物価はさほどでもなく、インフレとはいえない状況でした。

ところが、日銀の官僚があまりに馬鹿で、統計のまともな見方すら理解せず、このバブル景気は一般物価を下げないと収まりがつかないと信じ込み、あろうことか金融引き締めに走ります。

また、この時期にど愚かな財務官僚も、経済統計などまともにみることができずに、何かと緊縮財政に走りました。

そのため、金利が上がったことでお金が借りづらくなり不動産は買い手がつかなくなり、株価も急速に下がっていきました。

多額の資金を借り入れていた企業が続々倒産し、不良債権の山となり銀行の経営すら危うくなりますした。一般社会にもボーナス減少、リストラなどの影響を及ぼし急激に景気は後退しました。これが「バブル崩壊」です。

このような状態であれば、通常ならば財務省は積極財政、日銀は金融緩和をするのが正しい対応ですが、なぜか日銀と財務省の無能官僚どもは、緊縮財政、金融引締めにあけくれました。

この誤謬も数年ですめば良かったのですが、それ以降日本はデフレ状況に陥り、愚かな官僚どもは、本来なすべきことをなさず、緊縮、引き締めを20年にもわたって繰り広げ「失われた20年」と呼ばれる長い経済停滞の時代に突入しました。中でも、バブル崩壊から10年間は特に景気が悪く、企業における新入社員の採用意欲も下がりました。

この就職氷河期という厳しいタイミングで就職活動をすることとなった人たちが「ロスジェネ世代」なのです。

バブル崩壊後の不景気の最中に就職活動をしたロスジェネ世代の正社員には他の世代にはない特徴があるとされています。

まずは、仕事に対する姿勢についてです。当時の社会的な背景から厳しい戦いになることを分かった上で就職活動に臨んだ彼らはより専門的な知識であるとかスキルといった自分の強みになるものを身に着けることに対して一生懸命である傾向があります。

仕事にありつけることの難しさを知っているからか、仕事に対してとても前向きな人が多いのです。指示に対しても忠実な世代であると言われています。

もちろん個人差はありますが、考え方にも特徴があります。バブル世代という浮ついた雰囲気が一変する瞬間を目の当たりにしてきたロスジェネ世代には将来を悲観的に考えてしまう傾向が強いようです。

将来への不安から収入を貯蓄に多く回す人が多いのもその考え方によるものであると言えるでしょう。結婚に消極的な人が増えたのもロスジェネ世代以降です。

考え方についてはネガティブな印象が強いようですが、一方でロスジェネ世代は優秀な人材が多い世代でもあります。非正規雇用で働き続けなければならなくなった人も少なくないタイミングで正規採用を勝ち抜いたという事実はその実力の高さを証明していると言うことも可能です。

また、希望する企業よりもワンランク落として就職活動をした人が多いのも優秀な人材が多いと感じさせる要因の1つと言えます。

これらの事からロスジェネ世代は、考え方はやや慎重すぎることがあるのですが、仕事に熱く、スキルも確かな人が多い世代と考えられます。

ただし、これはあくまで正社員として雇用された人たちのことです。普通に大学を卒業して、普通に就職活動をしてもなかなか正社員になれなかった人が多いというのもこの世代の特徴です。

しかし、以上は私の感覚のようなものです。実際に数字はどうなっているのか、確認してみます。これには、田中秀臣氏の以下の記事が大いに参考になります。
雇用大崩壊を経験した「ロスジェネ」はあれからどうなったか
田中秀臣氏


この記事から下に一部を引用します。
 非正規雇用の増加とそれに伴う経済格差拡大の「象徴」としてロスジェネ世代が取り上げられることを、今日でもしばしば見かける。40代の給与減少の報道もその関連で行われたのかもしれない。

 だが、10年前に比べると、ロスジェネ世代の雇用状況はかなり改善している。失業率の低下はすでに説明した通りだ。ここでは正規雇用者数と非正規雇用者数の変化をみてみよう。

 まず、筆者が『雇用大崩壊』を出版した2009年、ロスジェネ世代の雇用状況をみると、男性の正規雇用は599万人、非正規は90万人だった。女性の正規は303万人、非正規は219万人であった
 ロスジェネ世代は、今やだいたい35歳から44歳になっている。この世代を2018年4月と5月の平均値で考えると、男性の正規は649万人で、09年に比べて50万人増加し、非正規は24万人減少して66万人になっている。一方、女性の正規は290万人で、09年に比べて13万人減少し、非正規は88万人増加して306万人となっている。

 女性の非正規雇用の大幅増加は、主婦層がアルバイトやパートなどを始めたことで、求職意欲喪失者層から非正規層に流入したことが主因だろう。この場合、家計の所得補助となる可能性が大きく、世帯的にはむしろ所得の安定に寄与する。それゆえ、非正規の増加がそのまま所得の不安定化をもたらすと考えるのは間違いである。

 さらに注目すべきなのは、ロスジェネ世代で正規雇用が10年前に比べ、男女合計で31万人増、率でいうと3・3%大きく増加したことだ。増加に伴って、男性の非正規雇用も大幅に減少し、10年前と比べて約27%減少している。

 この正規雇用の増加により、いわゆる「ニューカマー効果」を生み出すだろう。非正規層や求職意欲喪失者層にいた人たちが正規層に入っても、そこで同じ世代の人たちが従来手にしていた待遇と同レベルのものを得ることは難しいだろう。要するに、給与が抑えられる可能性が大きいのである。この雇用改善と平均賃金の低下の関係性をニューカマー効果という。

 ただし、経済の安定化が継続すれば、やがて平均賃金も上昇していくことを注意しなくてはいけない。このニューカマー効果が、冒頭で言及した40歳代の給与が5年前と低下した可能性を、ある程度は説明できているかもしれない。いずれにせよ、ロスジェネ世代の雇用環境は大幅に改善していることだけは確かなのである。

 それでは、ロスジェネ世代の象徴といわれた経済格差はどうだろうか。経済格差を示す指標である「ジニ係数」をみてみると、2009年と比べれば、世帯主が40歳代の世帯でも、30歳から49歳までの世代でも低下している。つまり、経済格差は改善しているのである。

 これがさらに継続しているかどうかは今後の調査をみなければいけない。だが、拙著でも言明したが、ロスジェネ世代による経済格差が雇用改善とともに縮小するのは大いにあり得る事態である。
 もちろんロスジェネ世代が生み出されたのはこの世代の人たちのせいではない。すでに指摘したように、政府と日銀の責任である。そして、さらなる改善もこの二つの政策に大きく依存しているのである。 
 また、ロスジェネ世代が、マクロ経済政策だけでは改善できないほど生涯所得が落ち込んだり、所得の落ち込みが将来の年金など社会保障の劣化を招くとしたら、今まさに積極的な社会保障政策を先行してこのロスジェネ世代に活用することも必要だろう。あくまで、まだ議論されている最中だが、ロスジェネ限定のベーシックインカム(最低所得保障)の早期導入も考えられるのではないか。
今後、雇用が改善されていくという時期に、入管法が改正されました。これによって、どの程度ロスジェネ世代に影響がでるか未知数なところがあります。

いずれにしても、ロズジェネの障害所得が落ち込んだり、所得の落ち込みにより、将来大きな影響があると予測される場合は、やはり田中秀臣氏が主張するように、抜本的な手を打つ必要があるでしょう。

無論、資金的手当だけではなく、雇用のミスマッチの是正策も実施すべきです。人は、経済的に満たされればそれで満足というわけではありません。尊厳というものがあります。それは、働いて人の役に立っているという実感がなけば、なかなか満たせるものではありません。

今後弊害がでてきたとき、これをそのまま放置しておけば、ロスジェネだけの問題ではなく、他の年齢層の人々も大きな悪影響を及ぼすことは必至です。

それに、高橋洋一氏が語るように、確保は政府として当然の責務であり、雇用面で著しく不利益を被った層への救済もそうであると思います。ある世代だけが、著しく不利益を被るということは許されることではありません。

最後に、以前このブログにも掲載した。ルトワックの言葉を掲載します。これまでで述べたこととはちょっと趣が違いますが、日本にとって大切なメッセージでもあると思います。
私は日本の右派の人々に問いたい。あなたが真の愛国者かどうかは、チャイルドケアを支持するかどうかでわかる。民族主義者は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子どもたちであることを知っているのだ。
愛国者は国とってもっとも大事なのが子どもたちであることを知っている

全くそのとおりだと思います。無論国旗を大事するなと言っているわけではありません。子どもとは、私達の未来であるということを言っているのです。それも、間近な未来なのです。たとえ、どのような仕事をしていたとしても、何に興味があろうと、政治信条がどのようなものであれ、子どもたちにとって良い国、社会をつくることこそが、私達大人の最大の任務なのです。 

もう、すでに起こってしまったことは、消すことはできません。そのため、ロスジェネ世代の人たちが、マクロ経済の改善だけでは生涯賃金において他世代よりもかなり低くなるということでもあれば、何らかの形で埋め合わせをすべきです。

そうして、現在の子どもたちが、大人にになって就職する頃には、「就職氷河期」などがあってはならないです。そのようなことをなくすのが、私達大人の責務です。それは、無論経済面はもちろん、安全保障面でも、尊厳の面についても、私達のせいで将来の子どもたちの住む社会が毀損されることがあってはならないのです。

そのために、私たちは日々働いているのだということを片時も忘れるべきではないのです。それを大半の人が忘れたとき、国の衰退、衰亡が始まるのです。

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2017年7月4日火曜日

都議選惨敗、安倍首相に残された道は「消費減税」しかない―【私の論評】子どもや孫の世代が途端の苦しみに塗れるようなことにしたくないなら?


田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授)

 東京都議選は都民ファーストの会の圧勝と、自民党の歴史的大敗北に終わった。公明党、共産党は選挙前の議席数から増やし、民進党も選挙前の議席が少ないとはいえ健闘した。自民党への逆風が猛烈だったぶん、批判の受け皿として都民ファーストが大きく勝った。

候補者の名前が並ぶボードを背に開票を待つ自民党の
下村博文都連会長=7月2日、東京・永田町の党本部
政治的には、都民ファーストの大勝よりも、自民党の惨敗の方が重要だと思う。国政への影響が避けられないからだ。いくつかその影響を考えることができる。あくまで予測の域をでないのだが、いまの政治状況を前提にすれば、年内の衆議院解散は無理だろう。2018年12月の任期満了に近くなるかもしれない。もっとも、1980年代から現在まで3年を超えての解散が多いので、それほど不思議ではない。ひょっとしたらこれはすでに織り込み済みかもしれない。ここまでの大敗北はさすがに自民党も予測はしていなかったろうが。

 国政に与える影響で興味の焦点は、安倍晋三政権の持続可能性についてである。あくまで都議選でしかないことが注意すべきところだが、今後いままで以上にマスコミの安倍批判が加速することは間違いない。都議選の有権者が東京都民だけにもかかわらず、それを世論と等値して、国民から不信任を食らったと煽(あお)るかもしれない。

 もちろん煽らなくても、今回の都議選大敗により、世論調査で内閣支持率がさらに低下し、自民党の支持率も急減する可能性はある。ただその場合、国政には都議選で受け皿となった都民ファーストがないし、また野党も受け皿にはなれない。つまり支持率の低下はほぼ無党派層の増加に吸収される可能性が大きい。この現象がみられるとすれば、都議選の大敗北は、安倍政権への世論の逆風が全国的に吹いたままだということを意味するだろう。

 この潜在的な逆風が、安倍政権をレームダック(死に体)化するだろうか。ここでのレームダック化は、安倍首相が現状のアベノミクスなど基本政策を実施することが難しくなる状況、あるいは転換を迫られる状況としたい。当面はその可能性は低いと思われる。

 ただし、党内の政治闘争は以前よりも格段に顕在化するだろう。そのキーワードは、やはり消費税を含めた「増税主義」である。2017年度の政府の基本的な経済政策の見立てを描いた「骨太の方針」には、19年10月に予定されている消費増税の記述が姿を消した。また20年度のプライマリーバランス黒字化の目標もトーンが下がったとの識者たちの評価もある。

 おそらくそのような「評価」をうけてのことだろう。石破茂前地方創生担当相は、消費税を必ず上げることが国債の価値を安定化させていること、またプライマリーバランスの20年度の黒字化目標を捨てることも「変えたら終わりだ」とマスコミのインタビューに答えている。今回の都議選大敗に際しても、石破氏は即時に事実上の政権批判を展開していて、党内野党たる意欲は十分のようである。

日本記者クラブの改憲で「こども保険」の構想について説明する小泉進次郎議員=6月1日
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
また財務省OBの野田毅前党税制調査会長を代表発起人とし、財政再建という名の「増税主義者の牙城」といえる勉強会もすでに発足している。またその他にも反リフレ政策と増税主義を支持する有力政治家は多く、小泉進次郎氏、石原伸晃経済再生相ら数えればきりがないくらいである。また金融緩和政策への理解はまったく不透明だが(たぶんなさそうだが)、消費増税に反対し、公共事業推進を唱える自民党内の勉強会も発足している。

 これらの動きが今後ますます勢いを増すのではないだろうか。もっとも安倍政権への世論の批判は、筆者からみれば実体がないのだが、森友学園や加計学園問題、続出した議員不祥事などいくつかに対してである。そもそもアベノミクスに対して世論が否定的な評価を与えたわけではない。それでも自民党も野党も含めて、アベノミクスに代わる経済政策はほぼすべて増税主義か、反リフレ政策(金融緩和政策の否定)か、その両方である。

 もちろん世論が、アベノミクスの成果を評価しても、それを脇において安倍政権にノーをつきつける可能性はある。アベノミクスの中核は、リフレ政策(大胆な金融緩和政策)である。現在の政治状況では、いまも書いたが安倍政権が終わればリフレ政策もほぼ終焉(しゅうえん)を迎える。日本銀行の政策は、政策決定会合での多数決によって決まる仕組みだ。日銀にはリフレ政策を熱心に支持する政策委員たちがいるにはいるが過半数ではない。政府のスタンスが劇的に変化すると、それに応じていままでの前言を撤回して真逆の政策スタンスを採用する可能性はある。

 そもそも、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいない。次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずだが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯するだろう。このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのである。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということだ。

 もちろん日銀人事だけの問題ではない。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はない。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要がある。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのだ。

 さて、安倍首相もこのまま党内闘争に巻き込まれ、守勢に立たされるのだろうか。それとも攻勢に出るのだろうか。そのきっかけは大胆な内閣改造や、より強化された経済政策を行うことにあるだろう。後者は18年夏頃までのインフレ目標の達成や、教育・社会保障の充実などが挙げられるが、端的には減税が考えられる。何より国民にとって目に見える成果をもたらす政策パッケージが必要だ。それこそ筆者がたびたび指摘しているように消費減税がもっともわかりやすい。

 実際に、消費増税が行われた14年以降、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできる。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずだ。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらしている、ともいえる。

 いまも書いたように、さらなるアベノミクスの拡大には実現の余地はある。ただ、それを行うだけの政治力が安倍首相にまだ残っているだろうか。そこが最大の注目点だろう。

【私の論評】子どもや孫の世代が途端の苦しみに塗れるようなことにしたくないなら?

昨日のこのブログの記事では、都議選敗退で国政に影響はなく、首相憲法改正まっしぐらに突き進み、長期政権になるであろうことを掲載しました。これは、かなり楽観的なシナリオです。

しかし、一方で、ブロク冒頭の田中秀臣氏の記事のように、悲観的な側面もあるわけです。この悲観的な側面が現実となれば、安倍政権は悲願である憲法改正を何とか成就させ、その後は政権が崩壊、金融緩和から金融引締めに転じ、雇用状況の改善も元通りになり、増税延期も中止され、それこそこのブログに一昨日掲載したように、マスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるという最悪のシナリオも考えられます。

こうなると、日本は数十年後には先進国から、発展途上国におちるということも十分考えられます。近代以降、先進国から発展途上国になった国はアルゼンチン一国のみです。その逆に発展途上国から先進国になった国は日本だけです。例外は一つもありません。中国や韓国も先進国にはなりきれていません。日本もアルゼンチンのようになる可能性も十分あります。

日本人にもあの哀愁の帯びたアルゼンチンタンゴを踊る日がやってくるのか?
昨日のブログは以下のように締めくくっています。
もし民進党が大きな力を持てば、当然のことながら、自民党内にもこれに脅威を感じて、安倍おろしなどの風も吹きかねませんが、この状況だと、少なくとも自民党内の安倍政権反対派がさほど大きな力を持つということは考えにくいです。 
さらに、昨日にも述べたように、小池百合子氏は、積極財政にはあまり関心がないので、やはり小池氏を中心とする勢力も国政にはあまり大きな影響を及ぼすには至らないこととが予想できます。 
そうなると、安倍政権が初心にもどり、さらなる量的金融緩和を実施したり、大規模な積極財政に踏み切れば、経済が安定し、国民の支持も増え、憲法改正はかなりやりやすくなると考えられるとともに、安倍政権が長期政権になる可能性も開けてくることになります。
確かに、安倍政権が初心にもどり、さらなる量的緩和を実施したり、大規模な積極財政に踏み切れば、経済は安定するのは必定です。そうなれば、憲法改正はかなりやりやすくなり、安倍政権が長期政権になる可能性も開けてきます。

しかし、積極財政とはいっても、過去のように追加補正予算数兆というのでは、国民も納得しないでしょう。少なくとも10兆円以上の補正予算とし、さらに8%増税で失敗したのは明らかですから、田中秀臣氏が主張するように、これを5%に戻すことができれば、無党派層の多くも安倍政権を支持することになり、民進党をはじめとする野党が支持率をあげることができない現状では、安倍政権は安泰です。

さて、5%減税については、このブログでも何度か掲載したことがあります。その最新のもののリンクを以下に掲載します。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!
この記事の元記事である、安達誠司が述べるところによれば、日本の実質GDP成長率が韓国以下のままなのは、詳細はこの記事をごらいただくものとして、一言でいえば、以下の背景によるものです。

多くの国民が、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったからです。そして、この流れは現在も継続中ということです。

上の消費性向の低下の推移のグラフをみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であることがわかり、この推論を裏付けているようにみえます。

そうして、【私の論評】において、私は、この多くの国民のマインドを変えるには、消費税の5%への減税が必要であることを主張しました。

私としてとしては、都議会選挙は別にして、経済の現状を考えた場合、多くの国民のマインドを変えるためには、このくらいドラスティックなことをする必要があるように思えたのです。

しかし、都議選において歴史的な大敗を喫した現在では、なおのこと5%減税をすべきと言う結論になります。

一方金融緩和の現状についても、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「ポスト安倍」も問題だらけだ! 財務省や日銀の言い分信じて財政や雇用理論を間違える人―【私の論評】今のままでは再びデフレスパイラルの無間地獄にまっしぐら(゚д゚)!
過去の日本の失業率をみると(97以降はデフレ下にあため参考にはならない)、構造的失業率は
2%台半ばくらいであると推定できる。実際過去には失業率が3%が超えると問題であるとされた

詳細は、この記事をご覧いただくものとしして、現在の金融政策の状況を一言で述べると以下のような状況です。
「賃上げが進まない理由は単に構造失業率を、日銀が本当は2%台半ばであるものを3%台半ばであると間違っただけ」、日銀からさらに量的金融緩和をすれば、失業率は2%半ばにまでさらに下がるはずなのに、日銀は量的金融緩和をしないので、失業率が高含みのまま推移しているので、人手不足でも賃金があまりあがらないという状況が続いているのです。
誰にでもわかるように、賃金を上げるためには、現在のようにマイナス金利による質的金融緩和だけではなく、さらなる量的緩和が必要なのです。物価目標2%を未だに達成できないのも、さらなる量的緩和を実行しないからであるのは、明らかです。

以上のことから、都議選で大敗したしないは別にして、やはり現在の安倍政権の喫緊の課題は、消費税を5%に戻すこと、2%物価目標を達成するためにも、さらなる量的金融緩和を行うことです。

そうして、これを実行するだけの、政治力が安倍首相にまだ残っているかどうかという話になりますが、安倍総理一人に頑張っていただく以外に方法ないのでしょうか。

私は、あると思います。

日本では昔から集票力のある圧力団体が自分たちの利益のためにロビー活動しています。選挙のときにも自前で用意した組織内議員を送り込んでいます。つまり圧力団体の発言は政治家や政党も無視できない影響力を持っています。これは強固な組織や票をもっている圧力団体だからこそできることなのです。

また以前にデモも活発に行われましたが、これはたとえば「参加している人と一緒に行動する連帯感」「人前で行動を起こすことの開放感」「目立つことをしていることの高揚感」などといったデモに参加している人たちの内面を大きく変える事柄であっても、対外的なこと(政治や社会など)を変える力にはなりませんでした。

私は「必ず選挙に行って投票しなければならない」とか、「困っている人はみんなロビイングすべき」といったことはまったく言うつもりはありません。

しかし、「選挙で投票する」、「選挙に立候補する」ことを圧力団体が行えば、当然のことながら「圧力団体」が望む方向へと政治は動いていきます。

もちろん「選挙に立候補する」ことはハードルが高いかもしれません。では、「ロビイング」のほうはどうでしょうか?

「ロビイング」のことについては知らない人たちがたくさんいます。これでは「ロビイング」を既にやっている人たちが望む方向へと政治は動いてしまいます。

「参加する/参加しない」を選択するのは個々人の自由ですが、「知っている/知らない」で損得をしてしまうことは不公平だと思います。私はこれから「ロビイング」のことをたくさんの人たちに知ってもらい、そのうえで「ロビイングする/ロビイングしない」を選択できる社会に変えていきたいと考えています。

そして『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)はロビイングが誰でもできるものだと主張する、いわばロビイングのマニュアル書です。私は、この書籍を参考にして、ロビイングやってみたいと思っています。皆さんも、是非参考にしてみて下さい。

とにかく、たとえ憲法改正ができたにしても、日本が再びデフレ・スパイラルのどん底に沈み、マスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代が来て、私達の子どもや孫の世代が塗炭の苦しみに塗れることだけは避けたいものです。

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2014年6月1日日曜日

「子どもが生まれたら10人に1人、離婚したら半分以上が貧困になる時代を生きる」―【私の論評】ちょっと待ってくれ、貧困の大きな原因の一つとして、個々人の努力や社会制度の問題の前にデフレがあるのでは(゚д゚)!

「子どもが生まれたら10人に1人、離婚したら半分以上が貧困になる時代を生きる」



NPO法人3keysは、行政の子育て支援や教育の分野を担っている部署の民間バージョンだと思ってもらえたらわかりやすいかもしれません。

具体的には、格差の下にいる子どもたちでも十分な学習環境や進学保障がされるように、ボランティアの家庭教師の養成・派遣をしたり、大学や企業などに働きかけて奨学金や、進学指導の無償サービスの提供などを整えてきたり、弁護士などと連携して親などに頼れない子どもたちの法律相談や権利保障をしたり、企業や他NPOと連携して自立に必要なスキルや資格取得のサポートをしてきました。

さらには民間から社会に対して警鐘を鳴らしたり、市民の意見を集約して発信たりすることで、今支援をしている子どもたちを超えて、社会のシステム・デザイン自体がよくなることを川上の支援として行っています。変わらなければいけないのは子どもたちではなく、支援を必要としている子どもたちを生んでしまう社会構造という考え方なのです。

丸5年、子どもたちに関わる仕事をしてきて感じるのは、日本は子育てに関わる家庭の負担が、金銭的にも精神的にもとても高いということ。普段関わっている子どもたちは、貧困家庭、一人親家庭など、家庭だけでは子どもを育てられず、行政支援や公的支援がないと子どもの健全な育成が明らかに厳しい家庭の子どもたちで、虐待や育児放棄で親と暮らしていない境遇にまでなった子どもたちも少なくありません。

地域社会がなくなり、子育てにおける親の負荷が重くなってきた中で、助けてくれる人が周りにいなかったり、経済的にベビーシッター等を利用できなかったり、早期出産などで子育てのことがわからずまわりに教えてくれる人がいなければ、ストレスや過労で子どもをたたいてしまったり、鬱等の精神疾患などで子どもを育てられなくなってしまう家庭も増えてきました。平成2年から23年の20年間で、虐待相談件数は60倍いう異常な推移を遂げているのです。

児童相談所が対応した児童虐待相談件数の推移

こうした世の中の変化に公的支援や社会保障が追いついていかないと、生活の最低ラインを維持できない家庭が増えていきます。そしてこれだけ多様化してきている今、それを行政だけに丸投げしても、行政はもう既に手一杯状態で、一般市民の私たちが力を合わせて解決していかないといけないくらい深刻になっているのです。その証拠に日本は生活保護の捕捉率(必要数に対する受給率)はわずか5分の1と世界的に低い数字なのです。日本は行政制度はとても整っている先進国だと思いますが、それでも完全ではない。行政制度だけに頼ると、生活保護を必要としている人の8割は1人で頑張らなくてはいけないのです。

私はまだ結婚も出産も経験していませんが、子どもに対する環境や公的支援が充実することは、即ち自分や自分の子どもにかえってくると思っているからこそ、「いつか親になるかもしれない」という当事者意識を持ち続けて仕事ができているとも感じています。

そして、日本には40000人程度の子どもたちが親元ではなく、行政の保護下で児童養護施設などに暮らしているような時代なのです。それに家庭の密室化が進んでいる中で発見されていない数の方が多く、この数字は氷山の一角とも言われているのが現状です。


しかし、そこまで極端な状況にならずしても、どの家庭でもよっぽど裕福でない限りは近しい状況に陥る可能性はとても高いということです。両親と子どものみの世帯の10人に1人は貧困、そして母子家庭の66%が貧困家庭となっているのが今の日本。子どもが生まれた後、離婚やパートナーとの死別などで、1人で子どもを育てる状況になると女性の場合、1/2以上が貧困になる。それに今や3組に1組が離婚すると言われているので、決して他人事ではありません。

森山誉恵さん

これまでは子ども目線で社会問題を語ることが多かったのですが、今回の連載では、自分自身が親になるという観点で、いかに危機感を抱いているのか、どんな状況に置かれていて、今からできることは何かについて、未来の親目線で書いていけたらと思っています。国の制度が整っても、それを十分に知り活用したり、自分なりに工夫していかなければいけません。そして自分に余裕がでてはじめて、ボランティア活動や、助け合いができる余裕が生まれます。さらに民間での助け合いが活発になってこそ、自分の回りの環境だけでなく社会全体の動きが見え、投票率や政治への関心が高まります。そして、共助が活性化されてこそ、行政も資源を行政にしかできないことに集中投下していくことができるのです。この循環を良くしていくためにも、この連載では、仕事の中で知ったり感じた、現在の子育てを取り巻く行政制度や民間の動き、そして個人としてできることについて伝えていけたらと思っています。

特にこれから親になるかもしれない、私と同じ世代の人たちにとって学びのある連載になれればと思っています。

森山誉恵(もりやま・たかえ)

上の記事は要約記事です。元の記事をご覧になりたいかたはこちらから(゚д゚)!

【私の論評】ちょっと待ってくれ、児童虐待の背景ともなっている子どもの貧困の大きな原因として、個々人の努力や社会制度の問題以前にデフレがあるのでは(゚д゚)!

上の記事に関して、アライアンス・バーンスタイン マーケットストラテジスト(兼エコノミスト)の村上尚己氏が以下のようなツイートをしています。
私もこの考えに同意します。ブログ冒頭の記事のタイトルは、今は「子どもが生まれたら10人に1人、離婚したら半分以上が貧困になる時代」であり、それが児童虐待件数が増えた背景にもなっており、そのような時代となった原因はデフレだからです。

これは、本当にそうなのか、まともに検証しようと思えばかなり難しいことですが、私はデフレがかなり大きな影響を与えていることは間違いなことと思います。

こんなポスターをいつの間にか多く見かけるようになったが・・・・・

これに関しては、自殺者数についても同じようなことがいえます。

これに関しては、2009年当時のこのブログでも紹介したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 デフレは死に至る病―社会改革が一番の近道だ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で田村秀男氏は、デフレの悲惨さを訴えていました。その部分を以下に掲載します。
 ヒトの体に例えるなら、デフレ低体温症である。物価上昇率2、3%程度が続くのは平熱で、経済活動は活発である。体温が平熱より1度低くなると免疫能力が衰え、がん細胞が勢いづく。死に至る病なのに自覚することがなく、何となく日ごろは元気がないだけである。 
 デフレがどれだけ、世の中を暗くするのか。自殺者数、倒産件数とデフレの統計をグラフにして重ね合わせてみた。自殺者が急増したのは消費税増税で消費が一挙に冷え込んだ1998年である。翌年からデフレが始まり、自殺者数は高止まりし、毎年三万数千人にも上る。デフレ指数に比べ、企業倒産件数と自殺者数の関連度は低い。景気は事実、2001年から多少なりとも回復していたのに、デフレは続き、暗い世相が広がるばかりだ。


デフレと自殺の関係に関しては、田村氏だけではなく、多くの経済学者や識者も指摘しているところです。その中には、日銀副総裁の岩田規久男も含まれます。完璧にデフレになった途端、自殺者が2万人台から3万二台に増え、他にあまりその原因が見当たらないというのであれば、やはりデフレが大きな影響を与えているとみて間違いないと思います。

これと同じく、「子どもが生まれたら10人に1人、離婚したら半分以上が貧困になる時代」になっている一番大きな原因は、デフレです。だから、このような時代の根本原因を作り出しているのはデフレであり、平成2年から23年の20年間で、虐待相談件数は60倍いう異常な推移を遂げる背景ともなっていると思います。他に、根本的な原因はないと思います。

そもそも、この期間は犯罪件数など、平成14年を最高としてその後は一環して減っています。


とすれば、平成14年度以降も、虐待件数が増え続けているということは、いわゆる犯罪動機と児童虐待は特に相関関係が見られないということですから、やはりデフレが大きな背景になっているのではないかと考えられます。

もし他に、児童虐待の件数が増えていることと関係するような変化をあったことをご存知の方は、お知らせ下さい。

しかし、このような考えはなかなか受け入れられないようです。たとえば、自殺者数に関しても、私がデフレと自殺者数の関係について、ツイートしたところ、ある方から「絶対に信じません」という返信があったことがあります。

田村氏や、岩田氏の見解を伝えても、それでも「絶対に信じない」というコメントが帰ってくるばかりでした。これは、自殺者数の増加と、デフレとの関係などマスコミなども全く報道せす、識者もほとんど言及しないということにも問題があると思います。

おそらく、児童虐待とデフレに関しても結びつかない人が多いと思います。さらに、児童虐待と日銀の金融政策とが結びつかない人も多いと思います。しかし、このような問題は貧困によるものがかなり多いですし、貧困問題といえば、雇用の問題が大きいですし、雇用の問題といえば、日銀の金融政策は多いにからんできます。

アメリカでは、雇用問題というと、雇用が悪化すれば、まずは糾弾されるのが中央銀行(FRB)です。それだけ、中央銀行の金融政策は雇用に密接に結びついていることが産業界や、多くの国民にも理解されています。しかし、日本ではまだまだです。

デフレは、通常の経済循環である、好景気と不景気の繰り返しの減少を完璧に逸脱した、とんでもない現象です。デフレを不景気と同程度に認識するのは完璧な誤りです。

私自身も、上記の田村氏の見解をブログに掲載したときには、デフレをあまり深刻にとらえていませんでした。だから、この記事でも、私自身は、社会変革が重要であると述べています。それも、西欧型のNPOを日本でもとりいれるべきことを強調しました。

確かに社会変革は重要です。しかし、社会変革するにしても、デフレの最中に実施しようにも無理です。社会変革によって何かを変えれば、また何かの問題が起こります。デフレが解消しない限り、モグラ叩きになるだけです。

それに、デフレはブラック企業を増やし、大企業などもブラック的にならざるを得なくしてしまいます。本当に、個々人にとっても、産業界にとっても何も良いことは一つもありません。

デフレは、ブラック企業の温床でもある

それだけデフレは深刻なのです。子どもが貧困の影響をまともに受けやすい社会は、改革しなければなりません。しかし、だからといって、社会の仕組みをかえるだけでは、どうにもならないということです。まずはデフレ解消が最優先課題です。水道の元栓が壊れているときに、漏れた水をかき出したにしても限界があります。やはり、根本原因である元栓の壊れを修理し、元栓を閉めるのが、本筋です。

だからといって、このブログ冒頭の記事を書かれた森山誉恵(もりやま・たかえ)の実施されていることを否定するつもりは全くありません。このようなことにより、社会を変えるということは実施すべきです。しかも、その立場にいる人は、経済環境にかかわらず、その場で努力されるべきと思います。一人でも、二人でも助けられたらそれは素晴らしいことです。

しかし、同時に私たちはデフレから脱却しなければ、本当の根本原因は解消しないということを認識すべきと思います。現在日本に貧困、雇用、児童虐待などの大きな問題が10個あったとして、デフレが解消できれば、5~6個は自動的に解消できます。

あと5個から4個はデフレが解消しても解消されないでしょう。しかし、デフレが解消すれば、社会変革などをすることによれば、解消できる可能性は高まります。しかし、デフレが解消されなければ、この10個の問題は全く解消されません。何かをやれば、何かが駄目になるという具合で、モグラたたきになります。それだけ、デフレとは恐ろしいことなのです。

また、こうしたNPOや、雇用も問題を扱う人も、貧困問題や貧困にからむ児童虐待問題を減らすためには、まずはデフレを克服しなければどうしようもないことを理解していただいて、それを訴えてもらいたいです。

デフレを解消したからといって、貧困問題や児童虐待が完全になくなるのかといえば、そんなことはありません。しかし、デフレが解消されれば、他に何もしなくても、全部なくなりはしませんが、確実に貧困問題や児童虐待問題はかなり減るでしょう。これは断言できます。

その上で、上記のようなNPOが行動すれば、まずはデフレのときよりも解消しやすくなり、さらに多くの児童虐待問題が解消されると思います。しかし、デフレを解消しなかった場合、いくらNPOが一生懸命努力したとしても、児童虐待問題を相当減らすなどということはできず、誰かを助けても次から次へと児童虐待問題が大量に発生して、モグラ叩きのようになることでしよう。

デフレ解消はマクロ政策であり、上記のようなNPOが活躍できるような施策はミクロ政策といえると思います。いくらミクロ政策を推進したとしても、マクロ政策であるデフレ解消がなされなければ、ミクロ政策だでは限界があるということです。

上の記事では、森山誉恵(もりやま・たかえ)さんは、残念ながら、貧困問題とデフレの関係については掲載していません。連載ものの記事ですから、いずれどこかにこれからでてでくるのかもしれませんが、デフレを収束させることが、これらの問題を解消する大きな第一歩となることを訴えて欲しいものです。こういう現場の最前線にいる方が、訴えれば世間の見方も変わると思います。そうしたことが、世論を盛り上げ、デフレ解消のきっかけづくりにもなるものと思います。

しかし、現実には4月から増税され、せっかくの昨年からの異次元の包括的金融緩和の効果を薄めています。このままだと、デフレからは脱却するのが遅れるのははっきりしています。

民間エコノミストなどは、増税されたばかりの現状をみて、あまり影響はないようだと語っていますが、そんなことはありません。高橋洋一氏もこの状況に警告を発しています。
一刻も早く減税と給付金を 消費増税が景気にブレーキ―【私の論評】今の状況を理解できず、声高に景気対策として効率の悪い公共工事の増加を叫ぶ輩は馬鹿かスパイ!今はあたり前のど真ん中で減税・給付金政策が一番(゚д゚)!
詳細は、この記事をごらんいただものとして、高橋洋一氏は今のままでは、必ず景気は落ち込むことを懸念しています。その部分のみ以下にコピペさせていただきます。
この1年間で、経済指標はかなり良くなってきた。実質国内総生産(GDP)は、515兆円(2012年10~12月期)から、528兆円(13年10~12月期)へと増加し、失業率は4・3%(12年12月)から3・6%(14年3月)へと低下した。 
物価上昇率(消費者物価総合指数)は、マイナス0・1%(12年12月)からプラス1・6%(14年3月)へとデフレ脱却したといってもいいところまできた。 
しかし、これからが大変だ。いうまでもなく、4月1日から消費税増税が実施されたからだ。これまでの経済運営は「金融緩和あり、増税なし」だったので合格点であるが、4月以降は金融緩和というアクセルと増税というブレーキを同時に踏んだ状態になる。しかも、増税は「景気が本格的に良くなる前」なのでまずい。 
金融政策や財政政策の効果を分析した「マンデル=フレミング理論」からも、十分な金融緩和が実施されていれば、財政政策は効果があるという結果が導き出される。つまり、財政政策の一種である増税による消費減少は、波及効果をもって実体経済の有効需要を減少させるわけだ。 
景気を良くするためには、金融緩和では効果が出るまでラグ(ずれ)があるので、手遅れだ。即効性の強い財政政策、しかも制約の少ない減税・給付金政策を主力とする必要がある。そのために、一刻も早い補正予算の編成が望まれる。
とにかく、今の時期の増税はデフレから脱却するためには本当に不味いことであり、とんでもないことです。それに、高橋洋一氏は、最近過去の1997年の増税のときも、最初の1年間くらいはあまり影響はなく、1年くらい経過してからかなり景気が落ち込んだことを指摘しています。

今年の秋あたりに、10%増税が決まり、来年の4月から増税されてしまえば、デフレからの脱却は当面目処がつかなくなってしまいます。

こんなことを考えると、児童虐待相談件数は当面減りそうもありません。そうして、ここまで掲載すると、今の時期の増税と児童虐待の増加も密接な関係があることもご理解いただけるものと思います。

デフレの状況での増税、それも来年10%増税されてしまえば、また自殺者が増え、貧困問題も児童虐待も増える一方になると思いまます。

こんなことは、まともな識者であれば、理解していることです、そんなこともあってか、日銀岩田総裁の最近の発言を高橋洋一氏が、論評しています。その記事のURLを以下に掲載させていただきます。
岩田日銀副総裁

詳細は、これもこの記事をご覧いただくものとして、高橋洋一氏はこの記事で以下のような結論を述べています。
 岩田副総裁は、なぜデマンド・プルを強調したのだろうか。日銀はこれまで需要を喚起して、頑張ってきたのは事実だ。しかし、今後は潜在成長力、つまり供給を上げていかなければ、金融政策でも限界が来る。そのために、政府の規制緩和の取り組みが重要だというのは、一般論としては否定できない。 
 もちろん、岩田副総裁はそうも主張したかったのだろうが、4月からの消費税増税による需要の減少についても言いたいことがあったのではないか。つまり、2013年度は、日銀はデマンド・プルになるようにやってきたし、政府も有効需要創出に頑張った。しかし、今14年度、日銀は引き続き頑張っているが、政府の消費税増税によって需要減になっている。 
 副総裁の立場では消費税のことを言いにくい。そこで、デマンド・プルを持ち出し、消費税増税でマイナス効果になれば、政府に財政政策で需要を補ってほしいというメッセージではないか。
財政政策としてもできることはたくさんあります。ここで、特に今の日本で筆頭にあげられるのは、公共工事です。しかし、このブログでも掲載してきたように、現在は公共工事の供給制約があり、あまり効果はありません。であれば、高橋洋一氏の語るように規制緩和の取り組みをすれば、需要をたかめることができますし、高橋洋一氏も以前指摘したように、減税、給付などの方法もあります。

とにかく、増税による需要減を最低限に抑えなければ、またぞろ、自殺者が増えたり、貧困問題が深刻になるばかりです。

様々な現場の第一線で働く人々も、物やサービスが売れないことや、貧困問題、雇用の問題などその根本原因はデフレであり、そのデフレからの脱却を妨げているのが増税であることを理解して、自分の担当正面の根本原因を認識し、それを訴えるようにしていただければ、世論も動き、政治の世界も動くかもしれません。

デフレを放置されても、増税されても大人しい子羊のように何も反論しなければ、いずれ私たちは、失われた20年ではなく、失われた100年を甘受しなければならなくなるかもしれません。そんな、希望のない社会を未来の子孫たちに残すわけにはいきません。私たちは、少なくとも個々人が努力すれば、幸せをつかむことが可能であるような社会を残していくべぎてす。

省益最優先の財務省は、10%増税の屁理屈を星の数ほど考えだして、またぞろ増税大キャンペーンを行い、必死で政治家やマスコミを操作すると思います。

しかし私は、現在の日本では、大きな世論に真っ向から反対できるマスコミも、政治家もいないと思います。だからこそ、様々な手段を講じて、デフレ推進派はマスコミに印象操作などをさせているのだと思います。マスコミだって、デフレが継続し、消費者が耐え切れなくなって、新聞など購読しなくなったり、テレビのCMをみても何も反応しなくなれば、自分たちも危ないということを認識すべぎてす。

本来は、新旧、上下、左右関係なく、デフレは全日本人の共通の敵であると思います。まずは、多く人々が、自分たちの周りの閉塞感の根本原因の大きなものの一つがデフレであることに目覚めるときだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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