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2019年5月2日木曜日

【日本の解き方】令和にデフレ脱却できるのか…最大の課題は消費税と財務省! 健全な経済感覚を持つべきだ―【私の論評】安倍総理はなぜ財務省に面と向かって逆らえないのか?

【日本の解き方】令和にデフレ脱却できるのか…最大の課題は消費税と財務省! 健全な経済感覚を持つべきだ




 「令和」の時代を迎えた。平成から持ち越したデフレから完全脱却はできるのか。平成の時代に大蔵省から改編した財務省という組織は、どうあるべきなのか。

 平成時代の財務省は年々ひどくなっていった。1989年4月の消費税3%創設はまだよかった。同時に物品税を廃止しているので実質的にあまり増税にならなかった。導入のタイミングも、景気はまだ悪くなかったので、ダメージは少なかった。

 97年4月の5%への消費増税はひどかった。これは政権運営に不慣れな村山富市政権を利用して、大蔵省(当時)の強い意向で導入された。そして、この増税は、平成のデフレ経済を決定的にし、景気は後退した。しかし、大蔵省は景気が後退したことこそ認めたものの、原因は消費増税ではなく、アジア危機のせいであると説明し、今日に至っている。

 14年4月の8%への消費増税はさらにひどいものだった。これも政権運営に不慣れだった民主党政権時代に導入した。民主党政権は当初、消費増税しないと公約していたが、財務省はこれを覆して野田佳彦政権時代に消費増税法案を成立させた。

 景気判断でもひどいことをした。景気判断の基礎資料である内閣府の景気動向指数をみると、消費増税によって景気後退になったのは素人目にも分かるはずだが、財務省はいまだに景気後退を認めていない。消費増税以外の原因を見つけられないので、景気後退そのものを認めないという戦術とも考えられる。

 こうした話は公の場で議論されることはまずない。というのは、財務省は消費増税シンパを各方面に作っているからだ。

 一つは財界である。消費増税は社会保障のためだと財務省は説明している。社会保障財源が問題ならば、本来であれば社会保険料を引き上げるのが筋だ。しかし、社会保険料は労使折半なので、引き上げると経営者側の負担も出てくる。そこで、財界は社会保険料の引き上げには消極的になる傾向が強い。そこで財務省は、法人税減税という「おまけ」をつけて、財界を籠絡した形だ。

 次に学会である。政府審議会委員への登用、その後は企業の非常勤社外役員への推薦などで、学者に便益を与えている。

 最後はマスコミだ。新聞への軽減税率はこれほど分かりやすいアメはない。日刊新聞紙法による現経営陣の擁護、新聞再販での保護などのほか、各種のリーク情報提供もあり、大半のマスコミは財務省をまともに批判できない。

 財界、学会、マスコミが財務省の庇護(ひご)者となるなかで、10月の消費増税を予定通りに実施するつもりだ。

 令和の時代にデフレ脱却できるかどうかの鍵は、消費増税をするかどうかにかかっている。これは日本経済最大の課題だ。

 そこでは、財務省が健全なマクロ経済感覚を持つかどうかにかかっている。財務省は、平成時代の景気判断や消費税に関する説明について猛省し、財政状況や社会保障状況、マクロ経済状況も、予断なく国民に説明しないといけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理はなぜ財務省に面と向かって逆らえないのか?

なぜ冒頭の記事のようなことがわかっていながら、安倍総理など財務省に逆らえないのでしょうか。それは、財務省は、政治家にとって恐ろしい存在だからです。それは安倍総理とて例外ではありません。

安倍総理はデフレ脱却への期待感から高い支持率を得てきましたが、消費税の10%への再引き上げでさらに景気が悪化すれば、支持率が急落する危険が高いことを感じているはずです。インターネット番組に出演した萩生田氏は、今年10月に予定される消費税増税を凍結する可能性にふれ、おまけに衆院解散の可能性すらにおわせました。

政治家の誰もが、まるで判を押したように、「財政再建のためには消費税増税が必要です」などという、わかりきったウソを述べます。政治家だけではありません。マスコミもそうです。

高橋洋一(元大蔵官僚)のような、気骨のある人間だけが、ネット上で財務省のウソを暴き立てているのです。ただし、高橋洋一氏は、元大蔵官僚だったので、大蔵省のすみからすみまで、裏の裏まで知っています。さらには、まだ表に出していない隠し玉もあると思います。

財務官僚が高橋洋一氏が目障りになった場合には、何らかの報復をする可能性もありますが、隠し玉があるかもしれないということで、大きな報復は受けないですんでいるという面もあると思います。

それにしても、財務省を怒らせると、いったい何がそんなに恐ろしいのでしょうか。財務省の意向に簡単に逆らえないのは、国民より財務官僚の信頼を失うことのほうが怖いからかもしれません。安倍首相は12年前の第1次政権でその怖さを身をもって経験しました。

当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組みました。ところが、半年経たないうちにその威勢は消し飛びました。

閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなったのです。そうなると内閣はひとたまりもないです。

官邸は閣議の際に大臣たちが総理に挨拶もしない“学級崩壊”状態に陥りました。あの時のトラウマがあるから、安倍総理は政権に返り咲くと政府系金融機関のトップに財務省OBの天下りを認めることで7年前の償いをせざるをえなかったようです。

12年前安倍第一次内閣は崩壊

やはり12年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させました。その人事でさらなる窮地に陥ったのです。

財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島氏に交代してもらう方針で話がついていました。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだのです。

財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのです。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられたのです。

最近の事例では、獣医学部新設のときの文科省の抵抗をみれば、わかりやすいでしょう。あの事件の実態は、獣医学部新設を渋る文科省に対し、官邸主導で押しまくって認可させたという、ただそれだ出来事です。

これに怒った文科省は、腐敗官僚の前川を筆頭に、マスコミに嘘を垂れ流し、安倍内閣打倒に燃えるマスゴミがこれを最大限に利用して、ウソ記事のキャンペーンを大々的に行ったのです。

腐敗官僚前川

ただし、文科省とマスゴミのウソを見抜く人が結構いたため、安倍内閣の支持率はほぼ330~40%を保ち、選挙にも圧勝して、文科省とマスゴミの企みは脆くも崩れました。

しかし、安倍首相は、あのとき冷や汗をかいたに違いありません。三流の弱小官庁で知られる文科省ですら、あのくらいの抵抗し、猛然と牙をむくのだ。これが最強官庁の財務省なら、どうなるか、想像に難くないです。

現在ではすっかり忘れ去られてしまったようになりましたが、以前、テレ朝の女性記者が財務官僚のセクハラ発言を音声データにとって、週刊誌にタレこんだという事件が起こりました。

あのとき、マスゴミでは財務官僚のセクハラ発言ばかりに焦点が当たっていたようですが、実は問題の本質はそこにはありません。

あの問題の本質は、女性記者を介してマスコミに情報をリークしていたのが、財務省の主計局長だったということです。なんと、財務省の中枢が、安倍内閣のディすりネタをマスゴミに売り渡していたのです。

財務省は、政治の裏の裏まで知り尽くしています。ネタはいくらでもあります。ときの内閣が意に従わないと、ちょっとしたスキャンダルをリークして、内閣を窮地に陥れるくらいのことは平気でするのです。

こういうときの、省庁とマスコミのスクラムは固いようです。省庁と全マスコミが束になってかかられたら、これに対抗できる内閣など、そうはないでしょう。

安倍内閣は、いったんは見事にこれを凌いだのですが、そう何度も同じようなリスクを冒すつもりはないでしょう。

これは別に安倍首相に限った話ではなく、与野党を問わず、他の政治家も同様です。財務省の意向に逆らいそれが財務省に不利になりそうであると財務官僚がみなせば、個人に対してもそのようなことをするようです。だから、エコノミストなどの識者もなかなか財務省の意向に逆らえないのです。

だから、誰もが「増税反対」などというようなことは、口をつぐんでしまうのです。野党は増税には反対しているようではありますが、それは財務省からみれば、何の障害にもならないので、無視しているだけです。そもそも、野党のほとんどが、国民生活や経済理論などとは無関係に、倒閣の一環として増税反対を利用しているだけです。

上の記事で、「令和の時代にデフレ脱却できるかどうかの鍵は、消費増税をするかどうかにかかっている。これは日本経済最大の課題だ。そこでは、財務省が健全なマクロ経済感覚を持つかどうかにかかっている」としていますが、私自身は財務省が健全なマクロ経済感覚を持つことはできないと思います。

安倍総理としては、直前まで「増税凍結」などおくびにもださずに、時期がくれば、「増税凍結」を選挙の公約として、参院選もしくはこのブログで以前から掲載しているように衆参同時選挙を戦うと思います。そうして、勝利すれば、さすがに財務省もこれには抗えないでしょう。安倍総理は実際過去には、二度この手で、増税を延期してきました。三度目の正直も大いにあり得ると思います。

しかし、これには財務省ま様々なキャンペーンで対抗してくるでしょう。では、どうしたら良いのかということになりますが、財務省に直接働きかけるということは難しいです。ただし、直接質問して、その矛盾をつくということはできるとは思います。実際に、「質問者2」というハンドルネームの人がそれを実行しています。

ただし、それにはある程度経済的な知識が必要ですし、時間にある程度余裕がないとなかなかできません。それは、できる人がやれば良いと思います。

それ以外にも多くの人ができることがあります。それは、新聞などのメディアを購読しないことです。テレビなども、見ないことです。それによって、マスコミの力を弱めるのです。さらに、財務省やメディアが間違った報道をした場合、その間違いを晒すのです。

田中秀臣氏 本人のtwitterより

自力で晒すことができない場合は、高橋洋一氏や田中秀臣氏などのまともな経済学者等の考えをSNSなどで拡散するのです。彼らは、財務省がトンデモないことを発表すると、すぐにそれに対する批判をSNS等で展開しています。これを意図して意識して拡散するのは、造作もないことです。

これは、すでに多く行われているのですが、これは効き目があります。実際「もりかけ」も先程の述べたテレ朝の女性記者のタレコミも、結局は安倍内閣を窮地に陥れることはできませんでした。これには、SNSが大きな役割を果たしていると思います。

私は、このようなことが、SNSのない数十年前に起こっていた場合、かなり深刻な問題になったのではないかと思います。

なるべく多くの人が、SNSなどで拡散すれば、財務省もマスコミもなかなか動きがとれなくなると思います。

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2018年12月30日日曜日

官僚不祥事を斬る 高橋洋一嘉悦大教授「官僚は合理性を武器に」―【私の論評】国民本位の合理的な考えでなく省益本位で仕事をする財務省は排除せよ(゚д゚)!

官僚不祥事を斬る 高橋洋一嘉悦大教授「官僚は合理性を武器に」

厚労省、財務省,法務省の看板(左から)

平成30年は官僚の不祥事やミスが多かった。「官僚の劣化」という人がいるけど、世界からみたらもともとそんなに優秀ではない。事務仕事だけやっていればよいのだから。たまたま噴出しただけではないか。

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)は、とんでもない話だ。佐川宣寿前国税庁長官が、自分の答弁に合わせるために改竄を主導した。佐川氏は懲戒免職にすべきだった。停職3カ月相当の懲戒処分なんて軽すぎる。

 2月にこの問題が報じられたときに決裁文書を読んでしっかり答弁していたら改竄する必要がなかった。これが佐川氏の「チョンボ」。財務省近畿財務局は、土地を入札にかけていれば何の問題もなかった。問題の土地と道路を挟んで隣接する同規模の元国有地を大阪府豊中市が実質負担2千万円で購入していたので、このぐらいで売れたはずだ。こちらは近畿財務局の「チョンボ」だ。

 財務省では、福田淳一前事務次官はテレビ朝日の女性記者へのセクハラ発言で辞任した。あれは仕事とは別の失敗だ。福田氏は地頭もよく、官僚としては優秀だった。

佐川宣寿前国税庁長官と福田淳一前事務次官

 「働き方改革」は、厚生労働省による裁量労働制に関する調査で異常値が相次いで見つかり、政府が法案から裁量労働制の対象拡大を削除する事態に追い込まれた。そもそも、裁量労働をしている人は、仕事時間が明確に分からない。私も裁量労働だが、外でふらふらして情報収集している時間も仕事といえば仕事だが、そうでないともいえる。知人は朝起きてから寝るまで仕事の時間と答えたそうだ。

 統計では、そうした数値は「外れ値」といってカウントしないというルールがある。統計を分かっていない。率直にいうと、官僚に文系が多すぎる。データの専門家が役所にほとんどいないんだよ。野党のほうがそういうことをよく分かっていて、政府を責めた。戦術的に野党が勝ったという話だ。

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け在留資格を創設する改正出入国管理法は、拙速すぎた。中身は詰まっていない。世界の例では総量制限などをきちんと法律に書き込むが、日本は政省令だ。審議の中で法務省で失踪技能実習生の調査をめぐる集計ミスなどもあった。法務省はゆっくりだけど、きっちりやる役所だ。せかされたらこうなるのは目に見えていた。将来、混乱が起きるだろう。

 外国人材の受け入れは2月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相の指示が出てキックオフとなり、6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針)に「来年4月」と盛り込まれた。秋の臨時国会で法改正が行われた。法務省は「骨太」が決まる前に、ちゃんとした制度を作るには「来年4月では無理だ」と説明すべきだった。「来年度」とすれば何の問題もなかった。自分たちの力を過信したのか。

 官邸の力が強いから逆らえないという指摘もあるようだが、関係ない。「政」は合理性に弱い。平成17年に小泉純一郎元首相が郵政民営化の施行を「2カ月遅らせろ」と指示したことがあった。郵政選挙の空白期間が2カ月だったからだ。私は「半年ごとのシステムしか構築していないから無理だ」と説明したら、小泉氏は「えっ」といって、あっさりと受け入れた。合理性とはこういうものだ。

 確かに安倍政権が長いから「政」が「官」に比べて強い。だが、こういうときこそ官僚は合理性を武器にすべきだ。合理的に説明する人材を人事で飛ばすわけがない。排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ。(沢田大典)

【私の論評】国民本位の合理的な考えでなく省益本位で仕事をする財務省は排除せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事ては、「こういうときこそ官僚は合理性を武器にすべきだ。合理的に説明する人材を人事で飛ばすわけがない。排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ」と締めくくっていますが、確かにそうです。

官僚が合理的に、特に数字を用いて合理的に説明できれば、排除されることなどありえないです。ただし、例外もあります。その例外とは、官僚や役所が合理的な考えで仕事をしていないときです。この場合はどう考えても合理的説明ができません。

それは実際に事例があります。それについては以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?
 

この記事は、今月の27日のものです。元記事は高橋洋一氏が書いています。この記事には、高橋洋一氏が、上司に日本の財政赤字はさほど深刻でいないことを説明したところ、とんでもない答えがかえってきたことを掲載しています。その部分のみ少し長いですが、引用します。
 本コラムでは、政府の財政について、負債だけではなく、資産も含めたバランスシートで考えなければいけないと、何度も書いてきた。筆者は20年以上もこのことを繰り返してきた。「統合政府論」というファイナンス論の基礎でもある。 
 この考え方をもとに、大蔵省(現財務省)勤務時代に、単体のみならず連結ベース政府のバランスシートを作成した。それをみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。 
 国の徴税権と日銀保有国債を政府の資産と考えれば、資産が負債を上回っていることも分かった。この財政の本質は、現在まで変わっていない。
 また資産といっても、一般に考えられている土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度だ。大半は売却容易な金融資産で、政府関係機関への出資・貸付金などだ。
 その当時、筆者は上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(日本の財政)はそれほど悪くないことを伝え、もし借金を返済する必要があるのであれば、まずは資産を売却すればいいと言った。
 それに対し上司から、「それでは天下りができなくなってしまう。資産は温存し、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた体験もいろいろなところで話してきた。
 ちなみに、日銀を含めた連結ベース、つまりいわゆる統合政府のバランスシートに着目するのは、その純資産額が政府の破綻確率に密接に関係するからだ。
 これもファイナンス論のイロハである。IMF(国際通貨基金)も、統合政府の純資産に着目して、日本では実質的に負債はないといっている。
 純資産額の対GDP比率は、その国のクレジット・デフォルト・スワップ・レートと大いに関連する。それは破綻確率に直結するからだが、日本の破綻確率は今後5年以内で1%にも満たない。
 この確率は、多くの人には認識できないほどの低さであり、日本の財政の破綻確率は、無視しても差しつかえないほどである。
この文書から、高橋洋一氏の上司は「天下りをするために、資産は温存し、増税で借金を返す」と発言したわけです。

これは、高橋洋一氏きが大蔵省(現在の財務省)に在籍していたときの話であり、この話は当時の大蔵省や現在の財務省では、通じる話かもしれませんが、政治家や一般国民には通じる話ではありません。

一国の財政は、国民生活が円滑に進むようにすべきであって、財務省(大蔵省)の官僚の天下りのために実施されるべきではありません。

しかし、大蔵省、そうして現在の財務省は、現実に天下り先を確保するために、増税や緊縮財政を続けているわけです。その典型的なものは、来年10月の消費税の10%へのひきあげです。財務省は、日本国民にとって合理的な考えでなく省益本位で仕事をしているのです。

このために財務省は、増税のために様々な論拠をあげるのですが、それらはことごとく合理性に欠けています。

このように財政に関して、財務官僚や財務省は合理的な考えで仕事をしていません。そのため、財務省は財政に関して合理的な説明ができません。

財務官僚の説明する財政に関する話は、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)において、佐川宣寿前国税庁長官が、自分の答弁に合わせるために改竄を主導したのと同じように、ことごとく非合理的です。



ただし、財務省は、税務権力、特に強制的な財務調査権を持っているため他省庁や、政治家、あらゆる民間組織、個人に対して、強力なパワーを発揮できます。税務権力は軍事力、警察権力と並んで、国家権力の典型です。

この財務省が財政に関して非合理的なことを語っても、政治家もマスコミも、民間組織も個人もそ非合理性を強く非難したり、追求したりしないのです。

こうした国家権力はいうまでもなく強力で、政治学や社会学では軍事力や警察権力はしばしば「暴力装置」と呼ばれます。学問の世界では税務権力は暴力装置から外されることが多いですが、実質的には含まれていると考えるのが妥当だと思います。この税務権力に政権・政治家は怯え、メディアや財界も事を荒立てないようにするのです。

荒立てないだけなら、まだしも、財務省の緊縮財政の根拠についてそれを補強するような論説をする恥知らずのマスコミや識者も大勢存在する始末です。これらに籠絡されて、増税すべきと頭から信じ込む政治家も多数存在します。

そのため、財務省のどう考えても、経済的に非合理な財政に関する考え方、たとえば消費税の増税なども、多くの国民は、正しいものと信じ込んでしまうわけです。ただし、この非合理性に関しては、以前よりは多くの識者が暴露するようになってきたので、徐々にこれを信じなくなってきてはいます。

冒頭の記事では、「(官僚が)排除されるとすれば、合理的に説明する能力が足りていないだけだ」と語っていますが、財務省という官庁そのものが、財政に関して合理的説明ができないのですから、この状態がいつまでも続くなら財務省を排除するしなくなります。

すなわち、財務省の解体です。ただし、このブログでも何度か掲載したように、財務省という官庁は単純に分解すると他省庁を植民する習性があるので、いくつかに分解した上で、それぞれを他省庁の下部組織として組み入れるのが適当です。

他の文科省などの組織も、自らの仕事に関して合理的な説明ができない官僚や、組織自体も、その状態が続き治る見込みがないなら排除すべきです。

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2018年6月14日木曜日

日本に巣食う寄生虫を駆除する方法とは?『財務省を解体せよ!』で高橋洋一氏が指摘する「官僚とマスコミの利害関係」―【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!


高橋洋一・嘉悦大学教授の著書『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

高橋洋一・嘉悦大学教授の新作『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)は、題名からして剛速球だ。そしてそれはズドンと日本の本当の問題に気付いている人たちの心に響く。

 その昔、ある高名な評論家が、私に「日本を本当に支配しているのが誰かがわかった」とつぶやいたことがある。それは正確にいえば「誰」ではなく、組織であり、またそこに群がる人たちのことでもある。もちろんそれは財務省のことであった。

 最近の財務省のトップによるセクハラ疑惑とその辞任劇、そして理財局と近畿財務局という組織そのものが関与した文書改ざん問題、さらに今も懲りずに繰り返す「財政危機」というフェイク(嘘デタラメ)を利用した増税の宣伝工作。よく政治家の方が財務省よりも優位であり、財務省よりも政治家の責任が重く、財務省は悪くない、というデタラメな話がある。高橋氏の新著を読めば、財務省は歴代政権でさえも、消費増税や自分たちの政策を利用するひとつの道具でしかないことがよくわかるだろう。まさに財務省は日本国に巣食う最悪の寄生虫である。

 高橋氏によれば、財務省が増税を目指すのは自分達の利益になるからである。つまり予算編成権などでさらに権力をふるえる余地が生まれるからだ。この国民の血税を利用して、財務省官僚たちは、自らの虚飾に満ちた「権限」を強化していく。例えば、最近では、東京金融取引所のトップに旧大蔵省(現在の財務省)出身者が五代続いて就任する。完全なる「天下り」というか財務省の植民地である。しかもこの人物の経歴をみると日銀理事と金融庁幹部も歴任している。

東京金融取引所社長に木下信行氏 5代連続で大蔵OB

 90年代後半の大蔵省スキャンダルという不祥事で、当時の大蔵省は社会の批判を浴び、その権限から金融監督行政の権限を奪われ、それは金融庁となって財務省から「独立」した。また日本銀行も法律が改正され、これも政治つまりは財務省の権限から隔絶できるような地位を与えられた。しかし20年近く経過して金融庁、日本銀行ともに人事面を含めて財務省とのつながりは最強化され、再び植民地化している。

 ちなみに旧大蔵省、財務省ともにそこに務める人間の知的レベルをあまりにも世間は髙く評価しすぎである。偏差値や公務員試験での合格と、その後に官僚たちの行う行政のパフォーマンスはまったく因果関係はない。例えば財務省が主導する「財政危機」を理由にした緊縮増税路線が、日本を20年にも停滞させたのは自明である。まだこの単純な事実を理解できない人は、心の中に「小さな財務省」でも巣食っているのだろう。

■マスコミが財務省が擁護する理由とは?

 高橋氏の指摘にもあるが、日本のマスコミの「スクープ」のほとんどが官僚発のリークである。その意味で、マスコミと官僚たちは利害関係者である。特にいまのような時期では、「消費増税しても対策はばっちり」とか「消費増税しても景気はそんなに悪くならない」というマスコミと財務省のコラボが大展開中である。増税志向の政治家たち、とくにポスト安倍を狙う政治家たちもまたこのような増税脳とでもいうべきスタンスである。財政状況は、あくまでも民間の経済活動の結果でよくもわるくもなる。つまり我々が働くことで実現するのだ。財務省の目論見にしたがうのではない。この基本的なことさえも財務省は理解していない。その実例は高橋氏の著作に実に豊富だ。

 このような財務省の「おごり」をどうすべきか。高橋氏は長年、歳入庁を設置して、税金と年金など社会保険料の徴取を統合的に行う機関にすべきだと主張している。私も賛成だ。これにより国税庁という財務省の植民地であり、また税の調査権限という政治家さえも恐れる権力を財務省からとりあげることになる。ただし歳入庁には財務省に一年でもいた人は正規・非正規のポスト含めて一切ノータッチにすべきだろう。金融庁と日銀の経験がそれを教えている。また今回の文書改ざん問題をうけて、高橋氏は「公文書管理庁」の設置も提案している。それに日本銀行の目標を増税目的など財務省の思惑に左右されないように、雇用の最大化と物価の安定に寄与するよう改正すべきである。

 またこれは私見だが、トップがセクハラスキャンダルで辞任、そして組織の一部がまるごと関与した文書改ざんなど、財務省の体質は民間であればまさに「ブラック企業」そのものである。そんなところがぬけぬけと今年も国家公務員試験などで若い有能な人材を国家の権限として採用する。国民の厳しい視線をうけ、その体質改善も具体的でない今、今年の採用及びここしばらくの同省の採用は制限すべきである。それでは人材育成に弊害がでるという指摘があるだろう。なにを言っているのだろうか?「弊害」というペナルティを課すために行うべきなのだ。

それで仕事ができないなら、他の省庁の下部組織にでもなって人材を貸してもらえばいいだろう。だが、この財務省という「ブラック企業」は今日も健在で、「天下り」や増税指南に元気である。まさに国家の寄生虫そのものである。

経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣



上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。

【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!

財務省の所業は昔からひどいものがありますが、最近のものも掲載しておきます。

財務省は4日、『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する報告調査書』を公表しました。最近も企業の不祥事が相次いでおり、そういうときの対応として、危機管理ということが、叫ばれています。その鉄則は、早めに記者会見を開き、「第三者委員会を設けたのでその結論を待ちたい」として一種の時間稼ぎをすることです。しかし、財務省の対応はあまりにも遅すぎましたし、未だに不十分です。

最近では日本大学の「危険タックル問題」があり、大学の危機管理能力が問われたばかりです。問題の試合から1カ月近く経ってからようやく、第三者委員会を立ち上げたことについて、そのスピードが遅すぎるという非難が高まっていました。その間、記者会見も中途半端で、かえって火に油を注ぐ結果となりました。

財務省の場合は、第三者委委員会すら作っていません。前事務次官のセクハラ問題については、不徹底とはいえ弁護士事務所に依頼していました。今回の文書改竄問題では、そうしたこともなく、財務省名で調査報告書が作られたのみでした。これでは、外部に対する説得力は皆無です。

危機管理の観点では、第三者委の設置が遅くて非難された、日大と比べても、第三者委すら作らなかった財務省の有様はあまりにもお粗末です。

まともな組織なら、文書改竄が部内で分かった段階で第三者委を設置し、国会からの問い合わせと並行して第三者委による部内調査を行い、大阪地検が財務省関係者の不起訴処分を発表する日に合わせて中間報告を実施し、時機を見て最終報告をするくらいのことはするでしょう。

財務省の報告書の表紙

報告書の中身も疑問だらけです。例えば、7ページ目の注10に「未利用国有地の売払いは、公用・公共用の利用を優先する考え方を基本として、まず3カ月間、地方公共団体及び公益法人その他の事業者からの取得等要望の受付を行い、当該受付期間中に要望がない場合には、一般競争入札により売却することとされている」とありますが、公共用でも当初に一般競争入札しておけば、問題なしだったはずです。

25ページの注27は「本省理財局の国有財産審査室長は、『一元的な文書管理システム』において『文書5(特例承認)』の決裁文書の更新処理を行えば、元の決裁文書は上書き保存されて無くなるものと考えていたが、実際には、元々の文書もそのまま保存されていた」と書かれているのですが、これでは単に電子ファイルに関するる無知を晒しているだけです。

さらに、あれだけの文書改竄を行えば、たとえ刑法には問われなくとも、国家公務員法違反です。この場合、停職3月等ではなく懲戒免職相当です。そういう処分であれば、退職金は全て返納となり、国民もある程度納得したかもしれません。

そもそも、財務省は普段からリスクを意識して仕事をしているのでしょうか。おそらく、全く意識していなかったのでしょう。だからこそ、実際にリスクが生じたときに、手順も何もなく、慌てふためき、まともに対応できなかったのが実情なのでしょう。

民間企業等のリスクについて、経営学大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。

「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになる」(『創造する経営者』)

リスクには4つの種類がある。負うべきリスク、すなわち事業の本質に付随するリスク、負えるリスク、負えないリスク、負わないことによるリスクである。

ほとんどあらゆる産業に負うべきリスクがある。新薬には人体を傷つけるリスクがある。しかし、なおかつ製薬に携わるには負うべきリスクである。

多少の資金と労力を失うリスクは、負えるリスクです。失ったならば存続できないほどの資金がかかるのであれば、それは負えないリスクです。

事業に着手するに当たっては、成功を利用できるか、もたらされる機会を実現できるか、それとも誰かのために機会をつくるだけかを問わなければならない。

負わないことによるリスクの典型は、革新的な機会に伴うものである。その古典的な例が、第二次大戦直後のGEの原子力発電への進出である。専門家は原子力を経済的な電力源にできる可能性は低いと見ていた。しかしGEは発電機メーカーとして、万が一にも取り残されるというリスクを負うわけにはいかなかった。
「リスクの有無を行動の基盤としてはならない。リスクは行動に対する制約にすぎない」(『創造する経営者』)

ドラッカーが提唱した企業の4つのリスク

以上が、まともな民間企業のリスクについての考え方です。普段からこのように考えているからこそ、いざというときに特に「負うべきリスク」に関しては、リスク管理体制を普段から整え、迅速に対応できるようにしているのです。

さて、財務省の負うべきリスクとは何でしょうか。財務省や、マスコミ、経済学者が何をいおうが、それははっきりしています。それは財政政策に失敗することです。これこそが、財務省のリスクです。

ところが、当の財務省は財政政策の失敗をリスクとはみていません。過去20数年間財務省の財政政策は失敗続きでした。この度重なる失敗をしても、誰も責任をとったものはいません。

日銀も過去は金融引締め一辺倒で、失敗を繰り返してきましたが、2013年4月からは金融緩和策に転じて一部不十分なところがありながらも、現在まで継続しています。そのため、雇用状況はかなり良くなっています。しかし、財務省の場合は過去20数年間どころか、現在に至るまで、失敗続きです。

失敗の原因は明らかです。デフレの時期や、デフレからまだ完璧に抜けきっていない時期に、本来積極財政すべきところを増税等の緊縮財政を実行してきたことです。

そのため、日本経済は金融緩和の影響もあって、雇用は随分改善されそれによって若干経済にも良い影響を及ぼしている面もありますが、増税によって個人消費が落ち込み、未だに完璧にデフレから脱却しているとはいい難い状況ですし、GDPの伸び率は未だに韓国以下です。

これだけ失敗を続けてきたというのに、財務省の官僚は誰もマスコミや識者から非難されることもなく、また民間企業なら当然のごとく行われる、これらの失敗に対する降格、罷免、左遷、減給などの措置もありません。

病院や医師が患者の治療に何十年も失敗し続けてきたらどういうことなるでしょうか、病院は閉鎖され、医師は医師免許を剥奪されることもあり得ます。しかし、財務省はそうはなりませんでした。

これでは、財務省の官僚はリスクのことなど意識しなくなるのは当然のことです。リスクのことを意識せず、それに対する備えも何もしなければどういうことになるでしょうか。

民間企業でいえば、リスクを避けることにばかりとらわれ、リスクに向き合うことなく、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになってしまったのと同じです。

財務省の場合は本来のリスクに全く無頓着で気にもとめていなかったので、リスクというものに対する感受性やアンテナがすっかり失われしまったのです。

そのため、文書改ざんなどというリスクを平気でおかして、その挙句に、まともな対処もできず、佐川国税庁長官が自ら辞任ということになり、それでも未だリスクに対する備えがなく、次にはセクハラ問題で福田事務次官が自ら辞任ということになったのです。

まともにリスクを考えるような組織ならば、このようなことにはならなかったはすです。そもそも、このような問題など最初から起きなかったでしょう。

負うべきリスクについてまもに考えるどころか、それを無視して、憚らない財務省。民間企業の組織なら、とっくの昔に淘汰されてしまう組織です。それが淘汰されずに残ったため、今回のような不祥事が表面化してしまったのです。

このまま、財務省の組織がそのまま改革も改善もされないまま残れば、さらなる不祥事が起こり続けるでしょう。そうなる前に、ブログ冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するように、財務省は解体して、ただ解体しただけでは、長い年月をかけて他省庁を植民地化するという性癖があるので、他の省庁の下部組織とするべきです。

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2018年4月26日木曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 野党は審議拒否でなく法改正対応案を提出すべき―【私の論評】野党は本来政府の統治を監視し間違いがあれば正すべき存在(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 野党は審議拒否でなく法改正対応案を提出すべき

先日、あるラジオ番組に出演した。といっても、スタジオには行かずに、10分弱の携帯電話での出演なので、気楽に対応できる。

案件は、財務省の福田事務次官(当時)の辞任に関することだった。

野党6党合同ヒアリング

今の国会の惨状は見かねる

  まず、福田事務次官の退職金5300万円が高すぎないかというスタジオのコメンテーターからの問いかけだ。筆者は、その感想は人によって違うだろうが、退職金計算は法律によって決められていると答えた。筆者は高すぎるとの答えを期待されていたようだが、元官僚らしい事務的な答えにスタジオは意表を突かれたようだった。

  次に、今回のような不祥事に対して、何かすべきことはないかという問いだった。筆者は、20年前に「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」があって、そのときには、大蔵省解体といって、当時の大蔵省から金融行政部門が分離されたといった。

ノーパンしゃぶしゃぶで一躍有名になった「楼蘭(ローラン)」のパンフレット
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

   それに対し、そうした意見がなぜ今の財務省の内部から出てこないのかと聞かれた。そのコメントを聞いたとき、組織解体論はその組織から出てくるはずがないだろうと思ったが、ラジオでの答えは、そうした官僚組織の対応は法改正によって行うので、立法府である国会議員がやるべき仕事であるといった。その答えに、スタジオは納得していない雰囲気だったので、今の国会では、野党は(維新を除いて)審議拒否している。官僚の不祥事に文句をいうには、法改正案を提出して対応すべきといった。

   正直いって、ラジオ番組の雰囲気になじまなかったのかもしれないが、今の国会の惨状は見かねる。

野党6党合同ヒアリングは「パワハラ」か

    吉村洋文・大阪市長が24日午前の衆院厚労委に参考人として出席したが、野党6党は審議拒否で欠席した。先日も、国会で参考人を呼んでおきながら、野党6党は参加しなかったが、これは忙しい中で出席している参考人に失礼だろう。

吉村洋文・大阪市長

   野党6党は、麻生財務相の辞任などを要求して審議拒否なのだが、驚くべきは自らが共同提出した生活保護法改正案の審議も拒否している。これは、立法府の国会議員としての自己否定になる暴挙だ。

    国会議論を拒否しながら、野党6党合同ヒアリングを開き、そこに官僚を呼びだして、連日つるし上げている。

   そこに出席している官僚は、国会で政府参考人として答弁する局長レベルではなく、答弁できない課長レベルの人だ。当然のことながら、彼らが役所から与えられている発言権は極めて小さいので、同じ答弁を繰り返さざるをえない。野党6党は、相手の官僚が同じことを繰り返しまともな反論ができないことを知りながら、罵倒している。

   この光景はテレビでごく一部は報道されるが、ネット上では全体が流れている。全部を見たら、1時間ほどの野党議員による官僚への「パワハラ」に見えなくもない。

    財務省不祥事にはいいたいことが山ほどあるのは理解できる。財務省解体、消費増税ストップなど筆者もいろいろな意見がある。国会議員は、そうした意見を立法によって実現できる。

    国会での審議拒否ではなく、まともな法改正対応案を国会に提出して、国会議員としての職務をおこなうべきである。国会場外で答弁能力のない下っ端官僚を怒鳴るより、国会において対応法案を提示し大臣と議論して欲しい。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。

【私の論評】野党は本来、政府の統治を監視し間違いがあれば正すべき存在(゚д゚)!

この野党の審議拒否に関しては、テレビ報道でも批判されています。本日バイキングを見ていたら、さすがに野党の審議拒否に関しては否定的なコメントがなされていました。

さらに、驚くべきことに、野党の議員は午前中には、審議拒否をしながら、午後の園遊会にはちゃっかり参加している野党議員が大勢いたことが明らかになりました。

自民党の宇都隆史参議院議員のFacebookのコメントを以下に掲載しておきます。
春の園遊会、午前中までの土砂降りが嘘のように、晴れ間が見えました。両陛下の御健康と皇室の弥栄を祈念申し上げます。 
しかし、午前中の本会議も審議拒否、国会議員としての本分を放棄しているにもかかわらず、園遊会にはちゃっかり出て来て飲み食いする野党議員の数々…諸君、お天道様に恥ずかしくはないかい?

通常の神経なら、園遊会の参加は見合わせても国会の審議には出席するというのが常識だと思います。したがって、国会を審議拒否で出席しないというのなら、園遊会への参加も見送るべきでしょう。

もう野党議員は、次の選挙では当選するかどうかもわからないので、議員である間に議員として享受できる名誉、特に天皇陛下臨席の園遊会には何が何でも参加したいということでしょうか。

本来なら審議拒否などしないで、国会審議に参加した上で、園遊会にも参加すべきだったでしょう。

これは、常識を疑う行為ですが、そもそも野党の議員らは、政府や国会の役割など全く理解していないのではないでしょうか。

先日もこのブログに掲載したことですが、政府の仕事の本筋は日本という国の統治です。実行することは、本筋ではありません。これに関しては誰も否定できないでしょう。これを否定するような人は、そもそも政治を語る資格がありません。

しかし、「統治」とは一体何をすることなのかと、問われるとすぐに答えらない人もいるかもしれません。これは、社会の中であらゆる組織において実際に「統治」に関わる人の数が圧倒的に少数だからだと考えられます。それに、学校などでもまともには教えられていません。

一般的な辞書の定義だと統治とは、「特定の少数者が権力を背景として集団に一定の秩序を付与しようとすること。政治とほぼ同義に用いられることが多いですが、厳密に解すれば、統治は少数の治者と多数の被治者との分化を前提とし、治者が被治者を秩序づけることを意味するのに対して、政治は、少なくとも、対等者間の相互行為によって秩序が形成されることを理想としている」などと定義されています。

しかし、これでは「統治」の本質をあらわしていません。特に政府の役割としての「統治」をあらわしていません。この政府の役割としての「統治」については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事ご覧いただくものとして、この記事から政府の役割としての統治に関する部分のみを引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
"
野党はこの政府の役割である「日本国の統治」ということをほとんど理解していないのだと思います。だからこそ、高橋洋一氏が指摘するように「野党6党合同ヒアリングを開き、そこに官僚を呼びだして、連日つるし上げている。 そこに出席している官僚は、国会で政府参考人として答弁する局長レベルではなく、答弁できない課長レベルの人だ」のようなことをしているのです。

財務省の課長レベルの人は、あくまで実行をする部隊であって、統治とは直接関係ありません。本来政府の「決定と方向付け」に従い、実行をする人です。

ただし、財務省に問題がないとはいいません。しかし、その問題の本質は野党が批判する、文書書き換えやセクハラなどの問題ではありません。これは、実行に関する問題であって、統治に関する問題ではありません。だからといって、一切無視するなともいいませんが、これは明らかに本筋ではないのです。

財務省の問題の本質は、財務省が中途半端に「統治」をしていることです。特に財政に関して政府の決定に従うのではなく、「増税」の意思決定をしたり、「緊縮財政」の意思決定をして、それを実行しようとして官邸とバトルをしたり、マスコミや国会議員、識者などの働きかけるなどの明らかな越権行為があるということです。

日本などの民主的な国家においては、国の統治は選挙という民主的な手続きを経て議員となった人から構成される政府によって行われるべきものです。選挙という民主的な手続きを経ていることが、「統治の正当性」を保証するのです。

しかし、官僚は選挙を経てなるものではないので、統治の正当性はないのです。本来統治してはいけないのです。彼らが行うべきは統治ではなく、実行なのです。マックス・ウェバーが指摘していたように、官僚組織は、すでに決まったことを効率よく実行するための組織なのです。

財務省が実質的に財政の方向性を定めるような統治機能の一部を担い、統治と実行を両立させようとするがゆえに、統治能力が麻痺し、デフレの真っ只中において増税するなどの方針を定めるなど、まともな財政政策ができなくなるのです。

野党は、このような統治に関することを問題とするのでなく、実行レベルの問題ばかり追求し、政府を批判します。実行レベルの問題は、本筋ではありません。本来ならば、財務省が中途半端に統治をしている実体を批判すべきです。

そうして、それは国会の審議の場で、財務大臣や政府を相手に批判すべきなのです。そうして、批判するだけではなく、実際に財務省が中途半端な統治を行っていることにより、政府の統治に瑕疵(かし)が生じている実体を明らかにし、それを防ぐ手立てとしての法律の改定や新設を政策案とともに提案すべきなのです。

無論、政府も財務省から中途半端な「統治の機能」を取り上げるべきなのです。野党は、政府を批判するなら、実行レベルの事柄を批判するのではなく、財務省から「統治の機能」を取り上げることをしない政府と統治機能を堅持しようとする財務省の官僚を批判すべきなのです。

民主主義体制下の国会議員の仕事の本質は、政府が民主主義的な手続きにのっとり統治ができるようにするために、監視をしたり、瑕疵(かし)があればそれを正すために法律案を出したり、政策案を出すことです。野党は本来政府の統治能力の問題を批判し正すべき存在のはずです。

しかし、野党の議員を責めているだけでは、何の問題の解決にもなりません。実際、今の彼らの大部分は選挙に勝つための選挙互助会を求める烏合の衆に過ぎず、まともにものを考えられないようです。だから、頓珍漢な行動をとっていても自分たちは気づかないのです。

本当に必要なのは以前このブログにも掲載したことのある、立憲主義(ブログ管理人注:立憲民主党とは関係ありません。むしろ立憲民主党こそ、立憲主義から程遠い存在です)に基づいた政府の統治能力を強化する、政治システム改革なのです。これを実行しなければ、今日の日本の政治の問題はいつまでたっても解決することはなく、同じようなことが何度でも繰り返されることになります。

この問題は短期で解決できるものではないです。少なくとも、安倍政権には方向だけは定めていただきたいものです。

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2017年12月24日日曜日

高橋洋一が語る「北朝鮮問題は春までに開戦or北朝鮮のギブアップ」が不思議ではない2つの根拠―【私の論評】北の運命は日米中露の間では既成事実!後は実行するだけ(゚д゚)!

高橋洋一が語る「北朝鮮問題は春までに開戦or北朝鮮のギブアップ」が不思議ではない2つの根拠

日刊SPA!取材班


 すでに「アメリカによる攻撃のカウントダウンが始まっている」といわれる北朝鮮情勢。夏以降、毎月のようにミサイルが発射され、その飛距離が徐々に伸びている状況を見ると、さすがに「今回ばかりは、戦争も避けられないかも」と思ってしまう。しかし同時に、お隣の韓国がさほど気にしていないところを見ると「まぁ、いつものことか。大丈夫だろう」とも思える。

「米朝戦争は目前」と煽るマスコミもあるが、実際、戦争が起こるなんてことはあるのだろうか?

「開戦か北朝鮮のギブアップか、来年の春には、結果が出ているんじゃないでしょうか。個人的には、アメリカが北朝鮮を攻撃する確率が、きわめて高いと思っていますが」

 そう語るのは『朝鮮半島 終焉の舞台裏』の著者で、数量政策学者の高橋洋一氏だ。「ここまで条件が揃ってしまうと、そう言わざるを得ない」と続ける氏に、その根拠の内容を聞いてみた。

経済学者・高橋洋一氏
でっちあげてでもアメリカは北朝鮮を攻撃する

 その根拠の一つに「北朝鮮のミサイル開発が、急速に進展している」ことがあると高橋氏は語る。

 「11月に発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』は、米メディアの報道によると『大気圏への再突入に失敗し、途中で分解した』とのことでしたが、飛距離だけでいえば1万3000kmと、すでにニューヨークを射程内にとらえています。専門家の間では『1年以内に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の再突入技術は確立されるだろう』と言われていますが、今の開発スピードを考えれば、もっと早いかもしれません。

出所:北朝鮮発表
アメリカにしてみれば、当然、本国に届くミサイルが完成する前に、北朝鮮を叩かなければならないわけで、そうなると春くらいまでには攻撃をせざるを得ない。『核拡散を防ぐ』という大義名分もありますしね」

 やられる前にやる、というわけだ。しかし北朝鮮には、中国やロシアなど旧東側諸国がバックについている印象がある。たとえアメリカでも、そう簡単に手出しできないのではないだろうか?

 「たしかに中国やロシアにとって、対西側諸国の防波堤として、北朝鮮は重要な存在でしたが、もはや手に負えない存在になっています。今でこそ韓国や日本、アメリカに向けられているミサイルが、いつ自国に向けられるとも限りません。それに、戦火を逃れた武装難民が国内に流入すれば、それこそ厄介。特に陸続きの中国は、この状況は避けたいはず。

 過去に北朝鮮への制裁決議に中国やロシアが反対しなかったこと、残された追加制裁の内容が全面禁輸ぐらいしかないことを考えても、武力行使に反対する可能性は低いでしょう。また、仮に反対にあった場合でも、アメリカは国連を動かすことなく、単独でも行動に移すでしょう。なぜなら、アメリカは『そういう国』だからです」

 国際的な正当性を得るためには、国連決議がベストである。しかしこれには、中国やロシアを含む常任理事国の全会一致が必要となる。万が一、ロシアか中国が反対すれば「イラク戦争の時のように多国籍軍を結成し、何らかの口実を作ってでも北朝鮮を攻撃する」と高橋氏は続ける。

 「いい悪いは別として、冷酷な事実を見なければいけない。そもそもアメリカは事件をでっち上げてでも、戦争をする国。ベトナム戦争でのトンキン湾事件はその典型だし、イラク戦争における大量破壊兵器も事実ではありませんでした。特にトランプ大統領は、大統領就任直後に単独でシリアを攻撃するなど「オバマ時代の弱腰外交とは違う」というところを見せつけようとしています。北朝鮮が挑発を繰り返し、火に油を注ぐような行動をとれば、たとえ本国に届く核ミサイルが完成されなくても、アメリカは軍事オプションを行使するでしょう」

北朝鮮は約束破りの常習犯

 本国に届く核ミサイルができる前に、アメリカは北朝鮮を攻撃する。これは、わかった。しかし、そうなる前に対話によって解決はできないのだろうか?

 「たしかに、それが一番いいですね。でも、実際は難しいでしょう。というのも北朝鮮は、国際社会で何度も約束を反故にしてきたからです。最近だとオバマ時代に、核実験停止などの見返りに食糧を提供する約束(『2・29合意』)を反故にしたことがありました。今後もきっと同じことが起こる。そもそも北朝鮮には、国際社会の約束事を守る気なんて、これっぽっちもないんです」

出所:BBC、防衛省、各種資料など
 付き合えば、バカを見る。それが北朝鮮という国なわけだ。とはいえ、アメリカではなく、中国かロシアが話をすれば、なんとか話になるのでは?

 「それも無理でしょう。さっきお話したように、北朝鮮はもはや誰もコントロールできない国になっています。金正恩は中国の使者を門前払いだし、そもそも習近平主席は、金正恩に会ったことがない。ロシアにしても、首都からはるか東の揉め事が盛り上がってくれれば、国際社会の目がクリミア問題から離れてくれるので好都合なはず。あえて、半島情勢に口出しはしないでしょう。

 それと一応言っておくと、民族主義で有名な韓国の文在寅大統領も、大統領就任当初こそ、北朝鮮との対話に意欲的でしたけど、人道支援で国際社会から大ブーイングを受けたあとは、さすがに諦めたみたいです」

注視すべきは半島崩壊後の国際情勢

 北朝鮮という国、それを取り巻く周辺諸国の事情を考えると、米朝戦争は、もはや避けられないようだ。しかし、北朝鮮より警戒するべき国があると高橋氏は続ける。注視すべきは「米朝戦争ではなく、その後の半島情勢」だと言う。

 「世間では、北朝鮮のミサイル、それが引き金となる米朝戦争勃発が話題になっていますが、アメリカや中国をはじめとする当事国の間では、すでにポスト金正恩体制について、話し合いが行われているはずです。つまり、金正恩体制崩壊後、どの国が北朝鮮を統治するのか。そのことが今後、非常に重要になってきます。おそらくは、中国が傀儡政権を置き、統治することになるのでしょうが、朝鮮半島の半分を手に入れることにより、東アジアでの中国の力はますます大きくなるでしょう。

習近平
 10月の中国共産党大会で、党の規約に「習近平思想」を盛り込んだ習近平主席 習近平主席は党総書記に就いた直後、「中国の夢」というスローガンを掲げ、建国から100年にあたる2049年までに「社会主義の現代化した国家」を目指すとしています。これは、列強に半植民地化されたアヘン戦争以前の大国の地位を取り戻すことだと解釈できます。この中国に対し、日本はどう対応していくのか? 米朝戦争よりも、実はこのことが今後、大きな問題になってくると私は見ています」

 現在でも東シナ海問題で横暴な行動を繰り返す中国。10月の党大会で2期目を迎えた習近平主席は、その際「ポスト習近平」を指名せず、3期継続を目論んでいるといわれている。「中国の夢」は「周辺国の悪夢」に他ならない。なんとか阻止をしたいが、こちらもやはり対話では解決できないのだろうか?
<文/日刊SPA!取材班 協力/高橋洋一>

【高橋洋一】
嘉悦大学教授。1955年(昭和30年)、東京都生まれ。東京大学理学部数 学科・東京大学経済学部経済学科を卒業。博士(政策研究)。1980年(昭和55年)に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣参事官等を歴任した。第一次安倍内閣では経済政策のブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。12月24日に最新刊『朝鮮半島 終焉の舞台裏』が発売

【私の論評】北の運命は日米中露の中では既成事実!後は実行するだけ(゚д゚)!

現時点では、「北朝鮮問題は春までに開戦or北朝鮮のギブアップ」が不思議ではない2つの根拠の他にも、少なくとも2つは根拠があるものと思います。


一つは、拉致被害者の存在です。日本、韓国そうして数は少ないものの、米国にも拉致被害者が存在します。一人は、今年北朝鮮から米国に戻された後に死亡したオットー・ワームビア氏(22)、もう一人は2004年に中国で失踪し、北朝鮮に拉致された疑いが指摘されている米国人男性デービッド・スネドン氏です。

デービッド・スネドン氏
スネドン氏については、中国雲南省から国境を接するミャンマーに拉致されて平壌に移送され、その後現地の女性と結婚し「ユン・ボンス」と名乗っているとの情報を、昨年8月に「戦後拉北者被害家族連合会」の崔成龍理事長が北朝鮮内の消息筋から得たと明らかにしていました。

国民国家の重要な使命の一つとして「国民の生命・財産を守る」というものがあります。米国民の拉致被害者が存在していること、同盟国の日本と韓国の多くの国民が拉致被害者となっていることも、米国が北朝鮮に対して武力攻撃をする理由の一つなるでしょう。

もう一つは、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるように、「アメリカや中国をはじめとする当事国の間では、すでにポスト金正恩体制について、話し合いが行われているはず」ということです。

これについては、北朝鮮版ヤルタ会談ということで、このブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」―【私の論評】北朝鮮版「ヤルタ会談」のキーマンは安倍総理(゚д゚)!
詳細に関しては、この記事をご覧いただくものとして、以下に北朝鮮版「ヤルタ会談」に関係す部分を引用します。

北朝鮮問題に関しては、今年の末から、来年の前半あたりには必ず何らかの動きがあります。最悪の場合は、米国による爆撃などの武力行使があることでしょう。この場合、中国の参戦もあるかもしれません。あるいは、制裁に北朝鮮が折れて何らかの進展があるかもしれません。 
いずれになるにしても、間違いなく、来年前半あたりには必ず動きがあります。
安倍総理とトランプ大統領
その前に、11月に日米首脳会談、米中首脳会談があります。また、APECでの各国首脳会談には、ロシアも出てくるでしょう。それらの国際会議では、北朝鮮問題が話し合われるのは間違いありません。これらは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきものです。

「ヤルタ会談」とは無論のこと、第二次世界大戦終了直前の当時のアメリカ合衆国・イギリス・ソビエト連邦による首脳会談です。ソ連対日参戦、国際連合の設立について協議されたほか、ドイツおよび中部・東部ヨーロッパならびに極東における米ソの利害を調整することで、大戦後の国際レジームを規定したものです。これが、後に東西冷戦の端緒ともなりました。

こうした北朝鮮版ヤルタ会談ともいえる、会議において、安倍首相は大きな役割を果たす可能性が高まってきました。これらの会議では、北朝鮮が最終的に戦争に突入した場合と、制裁に屈した場合の両方について、協議が行われることでしょう。
いずれにしても、この重要な会議において、再び極東のレジームが定められることは間違いありません。そうして、この新たなレジームを定めるにあたり、経験の浅く、本土が北朝鮮からかなり離れている米国のトランプ大統領だけが、北朝鮮に国境を接している中国・ロシア首脳と会談をすすめるということになれば、米国にとっては不利な状況になります。
しかし、日米同盟の同盟国でもある、半島情勢に大きく左右される日本がこの会議に参加し大きな役割を果たせば、米国も中国やロシアと対等に話ができます。

そうして、この会議で最も重要なのは、「ヤルタ会談」のように、大戦後の国際レジームを規定が齟齬をきたして、後の東西冷戦を招いたようなことにならないようにすることです。

北朝鮮が戦争するか、しないで制裁に屈服した場合のいずれの場合でも、その後に再度北朝鮮が核武装をしたり、米中露による新たな冷戦が起きないようしなければならないのです。

そのためには、やはり日本がリーダーシップを発揮しなければ、とんでもないことになってしまいます。

まさしく、北朝鮮版「ヤルタ会談」においては、安倍総理はキーマンなのです。そうして、ヤルタ会談では日本を含む極東レジームも定められましたが、北朝鮮版「ヤルタ会談」では新しい極東レジームが定められることになります。

とすれば、極東レジームの日本の戦後レジームも崩壊することになります。これは、まさに安倍総理が取り組んできたことです。
もうすでに、「北朝鮮版ヤルタ会談」は終了しています。日米中露の間で、すでに北朝鮮の運命は決まっていることでしょう。それは、中露は米国が北攻撃を容認すること、さらには攻撃後の半島の新たな秩序に関してもこれらの国々の間で合意ができていて、その通りになることでしょう。

ただし、私はブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が主張しているように、「金正恩体制崩壊後、どの国が北朝鮮を統治するのか。そのことが今後、非常に重要になってきます。おそらくは、中国が傀儡政権を置き、統治することになるのでしょうが、朝鮮半島の半分を手に入れることにより、東アジアでの中国の力はますます大きくなるでしょう」ということにはならないと思います。

なぜなら、日米は当然中国のこの危険性を察知していることと、中国が北朝鮮に傀儡政権をつくることは、 中国にとっても実は危険なことだからです。

なぜ中国にとって危険なのかは、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【北朝鮮危機】朝鮮半島の最悪シナリオに備えよ 「中国が実質的に支配」なら日本は脅威を直接受けることに―【私の論評】中国が北実効支配なら習近平は寝首をかかれる(゚д゚)!
米中の「二大大国の覇権争い」で朝鮮半島の危機を考えたとき、日本はどう動くべきか
それが現実になるかならないかは別にして、習近平は現在の中国東北地方を拠点とする人民解放軍の北部戦区(旧瀋陽軍区)のクーデターが発生することを恐れています。北に進駐するのは、この北部戦区の人民解放軍であることが想定されます。

北部戦区の人民解放軍が北に進駐することは、習近平は極度に嫌うものと考えられます。

この記事から、それに関係する部分を以下に引用します。
この瀋陽軍区は特に中国人民解放軍の中でも、最精強を誇り、機動力にも優れています。 
朝鮮戦争(1950~53年休戦)の戦端が再び開かれる事態への備え+過去に戈を交えた旧ソ連(現ロシア)とも国境を接する領域を担任する旧瀋陽軍区には、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されています。 
大東亜戦争(1941~45年)以前に大日本帝國陸軍がこの地に関東軍を配置したのも、軍事的要衝だったからです。 
習国家主席は、北京より平壌と親しいとされる「瀋陽軍区」によるクーデターを極度に恐れているといわれています。「瀋陽軍区」高官の一族らは、鴨緑江をはさみ隣接する北朝鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘権を相当数保有しています。

これは、「瀋陽軍区」が密輸支援する武器+エネルギー+食糧+生活必需品や脱北者摘発の見返りです。北朝鮮の軍事パレードで登場するミサイルや戦車の一部も「瀋陽軍区」が貸している、と分析する関係者の話もあります。 
もっと恐ろしい「持ちつ持たれつ」関係は核・ミサイル製造です。中国人民解放軍の核管理は《旧・成都軍区=現・西部戦区》が担い「瀋陽軍区」ではありません。「瀋陽軍区」は核武装して、北京に対し権限強化を謀りたいのですが、北京が警戒し許さないのです。

ならば、核実験の原料や核製造技術を北朝鮮に流し、または北の各種技術者を「瀋陽軍区」内で教育・訓練し、「自前」の核戦力完成を目指すということも考えられます。 
実際、2016年、中国の公安当局は、瀋陽軍区→北部戦区の管轄・遼寧省を拠点にする女性実業家を逮捕しました。高濃度ウランを生み出す遠心分離機用の金属・酸化アルミニウムなど核開発関連物資や、戦車用バッテリーなど大量の通常兵器の関連部品を北朝鮮に密かに売りつけていたのです。戦略物資の(密輸)重油も押収されました。
このようなことから、私は北の現在の体制が崩壊した後は、習近平はそれを中国の傀儡政権にするというよりは、日米中露およびその他の国々の軍隊により組織される国連軍による分割統治のほうを望むのではないかと思います。

いずれにせよ、今回は北に民主的な政権が根付くようにすべきと思います。そうでないと、またこの地域が紛争の絶えない地域になり、新たな脅威の火種になるだけです。

また、この分割統治に日本が参加するかどうかは、未知数です。日本は、この分割統治にどのように臨むかが、これからの日本の試金石になると思います。

これを日本を拒めば、米国も中露も日本を韓国なみの国とみなすようになるでしょう。これに対して多少犠牲者がでることも厭わず参加すれば、米国は今後も同盟国として扱い、さらに日本に対する信頼を増すことでしょう。中露は、日本を侮れない存在として再認識することになるでしょう。具体的には、中国は尖閣奪取をためらうようになるかもしれません。露は北方領土問題を真面目に考えるようになるかもしれません。

いずれにせよ、このシナリオが成就するかどうかは別にして、すでに北の運命は日米中露の中では、既成事実として決まっていることでしょう。後は実行するだけなのです。今は適当な実行時期を模索している段階です。そうして、北朝鮮はその運命を変えることはできません。

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2017年4月13日木曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ「森友」問題で露呈した 「官僚の裁量で文書管理」の罠―【私の論評】最初からバレバレの財務省キャリア官僚の嘘八百はこれだけではない(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ「森友」問題で露呈した 「官僚の裁量で文書管理」の罠

森友学園問題は終わりつつあるが、そこで仰天発言がでてきた。筆者は、本コラムにおいて財務省官僚に裁量を与えすぎて入札にしなかったり、文書の保存をしなかったりしたのが問題の本質といってきた(2017年2月23日配信3月7日配信3月23日配信)。最後になって、財務省がついに馬脚を現した。

財務省の佐川宣寿・理財局長は、4月3日の衆院決算行政監視委員会で、「パソコン上のデータもですね、短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、そういう意味では、パソコン上にも残っていないということでございます」と答弁した。

財務省の佐川宣寿・理財局長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 どこに発注したのか

この非常識発言に対して、ネット上では直ちに「ありえない」という反論がでてきた。少しでもシステムを経験した人であれば、このようなシステムは運用コストの割が合わないことを知っているだろう。HDD(ハードディスク)の容量に制限があれば、いっぱいになった段階で古いものに上書きしていくだけだ。これは、HDDへのテレビ録画を見れば素人でもわかる話だ。

HDD上で自動的に消去するシステムを作ることはできるが、そんな間抜けなシステムを設計する気になれないのはすぐ分かる。そこで、財務官僚が自らプログラムすることはできないので、誰かに発注したはずであるので、どこに発注したのかを聞けばいいと、筆者はツイートした。

そうこうしているうちに、4月10日になって、ようやくそうしたシステムが存在しないことを財務省の情報管理室が認めた、と朝日新聞が報じた(データは上書きされるが、上書きされてもデータはシステム上に残り、「復元できる可能性を否定できないという」)。だとすれば、国会で虚偽の答弁をしていたわけだ。

それにしても、財務省の文系官僚の無能さがはっきりと出てしまった。筆者は大学で数学専攻であり、若いときにはプログラム経験もある。官僚時代に、幹部がパソコン操作を人には表だって聞けず、筆者はしばしば幹部室に呼ばれて内々に聞かれた。そのとき「ウィンドウズをひらいて下さい」と言ったら、本当に窓を開けられたのには驚いた、など冗談のような話は尽きない。

 なかったはずの文書が「いろいろと出てくるはずだ」

前の本コラムでも指摘したが、そんな官僚に文書保存規則を任せている。そこがおかしいのだ。

この文書保存には、いろいろな経緯がある。筆者が第1次安倍政権の時、国家公務員改革が企画されている。そのときの基本法では、文書保存義務が書かれている。しかし、その基本法を骨抜きにしたい官僚たちは、福田政権になると、基本法の代わりに文書管理法を制定した。文書管理法では、法令上は文書保管義務が書かれていたが、その実施は官僚の裁量で決められる政令や各省規則に委ねて、骨抜きにした。

民主党への政権交代後、官僚たちは政権運営に不得手な民主党下で、文書管理法の政令や各省規則を作った。そこで、今回のように文書を廃棄したとしても、「法令に基づき、適切に処理」となるわけだ。

もっとも、これからは、なかったはずの文書がいろいろと出てくるはずだ。森友学園問題は、いろいろな刑事事件(告発を受理)、民事事件になっている。そこで、財務省も関係者になってくるが、そのとき資料がないでは済まないのだ。今の役所の文書は電子化され、職員のPCやサーバー上で記録されており、各種のメールも含め、いろいろなところにある。職員は仕事上、紙のファイルも持っている。裁判ともなれば、必死にかき集めてくるので、なかったはずのファイルが出てくる。財務省の嘘が後でバレてくるだろう。

++ 高橋洋一

【私の論評】最初からバレバレの財務省キャリア官僚の嘘八百はこれだけではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏記事でも指摘しているように、「パソコン上のデータもですね、短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、そういう意味では、パソコン上にも残っていないということでございます」という発言は、私も当初からかなり胡散臭いと思っていました。というより、普段事務などでパソコンを扱い慣れている方は、ほとんどの人がそう思ったに違いありません。

何しろ最近のコンピュータのハードディスクの記憶容量は、テラバイトというものも珍しくないほど、大容量化しています。これだと、音楽や、動画を保存するというのであれば、容量不足になってしまうということも考えられますが、文書や画像程度のものであれば、かなりのものが保存できます。

それに最近では、クラウドという手法もあります。このような時代に、10年以内の文書が自動的に消えるなどということはありえないです。一昔前のように、メモリも記憶容量も極度に少なかった場合にはあり得なくもないとは思いますが、この発言は時代錯誤と言っても良いものだったと思います。

時代錯誤といえば、私はある地方都市の保健所のパンフレットを読んでいて驚いたことがあります。結構前のことでしたが、それでも確実に10年以内のことです。あまりのことに驚いたの良く覚えています。おそらくは、10年くらい前(ひよっとすると10年を切っていたかもしれません)だったと思います。それはその保健所の使用しているシステムに関するものでした。細かいことは忘れましたが、何とその保健所では未だにオフコンなるものが使わていたのです。

そうして、記憶媒体は何と8インチフロッピーでした。システムの概念図を見ると、ハードディスクもあるようですが、その容量はたかだか数十メガバイトでした。フロッピーディスクは補助記憶装置として使われていました。

そうして、この実体を知って、いかに地方の保健所などでは、業務のほとんどがルーチン業務で占められているのか、理解できました。おそらくこのシステム数十年前に、優れたSEが開発したのでしょう。そうして、数十年たっても、保健所の業務はほとんど同じなので、そのまま継承され使われてきたのでしょう。だからこそ、生き残ったのだと思います。

そうして、思い立ったのが、この補助記憶装置と言う存在です。仮に財務省が古いパソコンを用いていたとしても、このような補助記憶装置を用いれば、文書などいくらでも保存できるはずです。さらに、補助記憶装置を使わなったにしても、プリントはできたはずです。

財務省でもこのような古いコンピュータを使っているとは思えません。しかし、世界には古いシステムを未だに使い続けているところもあります。

それは、たとえば米軍です。米国防総省によると初期のフロッピーディスク規格となる8インチフロッピーディスクが未だに現役なのは、大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、空中給油・支援機など一連の核兵器を運用、調整する指揮統制系統だとしており、現場では今から40年前に発売された1976年「IBMシリーズ/1」や当時普及し始めていた8インチフロッピーディスクが運用に用いられているといいます。

弾道ミサイル発射管制センターで撮影された写真。8インチフロッピーディスクが使用されている
その理由について米国防総省報道官は「簡単に言えば現在も機能しているため」とし、「老朽化が懸念されていることから2017年末までにフロッピーディスク・ドライブをSDカードリーダーに置き換える予定だ」と説明しているそうです。

さすがに財務省では、ここまで古いコンピュータを使うということはありえないでしょう。それに財務省がこのような古いシステムを使ってはいないというれっきとした証拠もあります。それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
女性官僚、働き方に物申す 財務省でも改革始動
自宅から職場のパソコンにアクセスして仕事する財務省の中西佳子さん(東京都内)
この記事は、2014年7月5日のものです。以下に一部を引用します。
 男職場の印象の強い財務省でも、女性たちの声を受けて働き方改善が始まっている。 
 午前2時。財務省関税局業務課の中西佳子課長補佐(36)は夜泣きする長女(2)をあやした後、パソコンを開いてメールを確認する。セキュリティーを保つ機器を使って自宅から省内ネットワークに接続する在宅業務を育休から職場復帰した昨年秋から取り入れている。「翌朝、前日の流れを理解した上で業務を始められるのは大きい」 
 「夫は単身赴任中。平日はお互いの母が長女の面倒をみてくれるが、土日は娘と2人のことも。「週末に登庁しなくて済む。娘の顔をゆっくり見られるのもうれしい」

 女性官僚の要望に応え、木下康司前事務次官(7月4日付で退任)の声かけで昨年9月、在宅業務のための機器を希望者全員に配布。全職員の4割、課長以上の7割弱が活用している。
 このようなシステムを全職員の4割に、課長以上の7割が利用しているというのですから、どう考えてみても、最初から財務省が古いシステムを用いているというわけもなく、佐川宣寿・理財局長のあの発言は最初から嘘であることがバレバレだったわけです。

ひよっとすると、佐川氏ほとんど日常はパソコンなど用いないIT音痴なのかもしれません。別に官僚でも地位の上の人は、日々パソコンを直接使う必要はありません。パソコンは事務職員に操作させ、自らはパソコンから出てくる資料をみて、判断すれば良いわけです。むしろ、ある一定以上の職位の人は、パソコンを日々いじくるのは仕事ではありません。

しかし、社会一般常識としてのコンピュータ・サイエンスの基礎ぐらいは知ってはおくべきです。それを知らなかったからこそ、この件の発言をしてしまったのでしょう。

そうして、なぜこのようなことを長々と書いてきたかといえば、衆院決算行政監視委員会においてこんな単純に見え透いた嘘をつく財務省なのですから、当然のことながら、他にも嘘があるとみなすのが当然のことであるということです。

そうして、エリートといわれる財務省の高級官僚が、現在では社会一般常識となっているコンピュータ・サイエンスの基礎を知らないということは、他の社会常識にも欠けている可能性が十分にあるということです。

そうして、それは可能性どころか、"国の借金1000兆円であり、増税しなければ社会保障費などが増大して大変ことになるという大嘘"を平気で、政治家、他省庁の官僚、マスコミなどに言い触れ回っていることからみて、それは事実であるとみるべきです。

そもそも、デフレの真っ最中や、デフレから脱却しきっていないうちに増税するというのは、経済政策としては悪手の悪手であるということは、疑いのない事実であり、マクロ経済の標準的な教科書にはそのようなことは絶対に書かれていません。8%増税も大失敗であったことが今では明らかになっています。

それに、財務省の官僚は、一般には東大卒で高学歴とみなされていますが、実はそうではありません。彼らの多くは東大卒ですが、経済学部出身者はほとんどいません、法学部出身者が多いです。さらには、大学院卒もあまりいません。大学院で経済学を専門に学んできたものはほとんどいません。

言い方が悪いですが、世界の他の国の財務省の高級官僚などと比較すると、低学歴なのです。そうして、残念ながら社会常識にかけています。だからこそ、性懲りもなくいつまでも増税キャンペーンをやり続けるのです。彼らの頭にあるのは、国民生活は二の次で、省益最優先で、出世の階段を上り詰めて、その後はどこかに天下り、贅沢三昧のハッピーライフ送ることなのです。

ただし無論これは、高級官僚に関してです。財務省には無論、そうではない人も大勢働いています。私は、これらの人々を批判する気は毛頭ないです。批判しているのはいわゆるキャリア官僚です。それも、将来事務次官になる可能性のあるキャリア官僚です。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏はなかったはずの文書が出て来る可能性を指摘しています。今回の森友問題に限らず、政治家たるものは、財務省の過去の文書を検索して、分析し、財務省の旧悪を露見させるべきです。私は、これこそ、政治家が挑戦すべき事柄であると思います。

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2016年1月31日日曜日

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか



日銀は29日、金融機関から預かっている当座預金にマイナス金利を導入する新たな金融緩和策に踏み切り、さらに今後も金利のマイナス幅を拡大する可能性を示唆しました。これを受けて長期金利は過去最低まで急激に下がりましたが、金利の低下が投資や消費の増加につながるかどうか、今後、新たな金融緩和の効果が問われます。

日銀は、金融機関から預かっている当座預金の一部に来月半ばからマイナス金利を導入する、新たな金融緩和策に踏み切ることを決めました。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の政策のねらいについて「金利全体により強い下押し圧力を加えていく。2%の物価目標をできるだけ早く実現するため導入を決めた」と述べ、世の中の金利全般を一段と下げることで、投資や消費を活発化させることが期待できるとしました。

これを受けて、東京債券市場では29日、長期金利が一時、0.09%と過去最低の水準まで急激に下がり、金利はひとまず、日銀のねらいどおりの反応を示したほか、円安と株高も進みました。

ただ、金利が下がっても企業や個人の資金の需要が高まらなければ、金融機関からの貸し出しなども増えず、投資や消費の増加につながらないおそれもあります。日銀は必要があればマイナス金利の幅を拡大する可能性も示唆していますが、金利の低下を経済の活性化につなげ、日銀が目標とする2%の物価上昇率を達成できるかどうか、新たな金融緩和策の効果が問われることになります。

【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

今回のゼロ金利について、予め予言をしている人がいました。それは、あの高橋洋一氏です。その予言を掲載した動画を以下に掲載します。


マイナス金利の件は45分あたりから

 この動画は1月28日に収録されたものです。高橋氏としては、29日に日銀が重大発表があるとの発表をした時点で、ゼロ金利はあり得ることとして、この動画の緊急特番ということになったのだと思います。

この動画の中でも、今回の黒田総裁が、マイナス金利を導入しなければ、まともな中央銀行総裁とはいえないということを語っていました。そうして、今回実際にゼロ金利政策を宣言したわけですから、黒田総裁はまともだということです。このあたりのことについては、詳細は上の動画をご覧ください。

このゼロ金利政策、マスコミの経済記者などには意味が良くわからないようです。識者のなかにもとんでない解説をする人がいるので、そんなことに皆さんが幻惑されないように、以下にいくつかの査証(エビデンス)を掲載させていただきます。

そもそも、日銀がマイナス金利政策を宣言する前から、もう日本は実質的にマイナス金利政策をとっているといっても過言ではありませんでした。

すでに、日本銀行は、マイナス金利政策を発表する前からゼロ金利政策を放棄してマイナス金利政策を採用してしまっていました(これって、英文法でいえば過去完了)。その査証を以下に掲載します。


さて、上は、財務省が発表している国債金利情報をグラフにしたものです。昨年の12月の半ば頃から残存期間1年の国債の利回りはマイナスになってしまっていたのです。瞬間的にマイナスになったというのではないのです。それ以来マイナスが継続しまっていたのです。

そして、昨年12月13日には、5年物新発国債の落札利回りがゼロとなったとも報じられてしまっていました。10年物国債にしても、利回りは0.26%まで低下してしまっていました。

国債の利回りがマイナスになるその原因は、日本銀行が市中金融機関から国債を買い入れる場合に、額面以上の価格で購入しているからです。日銀が額面以上の価格で国債を購入すれば、落札利回りはマイナスになります。つまり、市中金融機関は、国債を担保に日銀からマイナス金利でお金を借りてしまっていたのです。

今や市中金融機関は、ゼロ金利どころかマイナス金利で日銀からお金を借りることができる時代に突入しているのです。では、何故そのようなことを日銀はするのでしょうか。

そうでもしなければ、日銀が目標に掲げた国債の買い入れが達成できないからです。そうなると日銀の掲げた物価目標を達成できなくなるからです。

さて、すでに国債のマイナス金利政策を実行している、日銀がさらに今回マイナス金利政策を発表したのにはどんな背景があり、それが日本経済にどのような影響を及ぼすのか以下に解説します。

日銀には銀行の預金口座である「日銀当座預金」があります。この「日銀当座預金」にはこれまで0.1%の金利がついていたのですが、預金の一部にマイナス0.1%の金利、つまり手数料がとられるようになるのです。

日銀はアベノミクス開始以降、銀行などの金融機関から大量の国債を購入していますが、その国債の購入代金は銀行の預金口座である「日銀当座預金」に振り込まれます。しかし、「日銀当座預金」に0.1%の金利がついたままでは、銀行は振り込まれたお金を企業の貸出しにまわすことなく、そのまま放っておくことが考えられます。



しかし、今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すとか、株式投資をするようになることが考えられます。これがマイナス金利導入の狙いです。

しかし、ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。

その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。


ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。

これは、高橋洋一氏が動画で指摘していたように、正しい措置であり、黒田日銀総裁は、まともな中央銀行総裁であることが示されたといえると思います。

しかし、だからといって、日本経済は安泰だというわけでもありません。先日も、指摘したように、この先中国経済はしばらくかなり停滞します。アメリカの利上げによって新興国の経済が大ダメージを受けてしまう可能性も大きいです。

さらに、原油安が資源国の経済を直撃しています。また、中東の地政学的リスクも増大しています。これらが日本の経済にどのような悪影響を与えるのか、全く予断を許さない状態です。今後リーマン級の大打撃が日本を再度襲う可能性があります。 

今後の、不測の事態に備えるためにも、日本政府は早急に2016年度の補正予算を組み、金融緩和を拡大して、財政金融両面でさらなる景気対策を施さなければなりません。

10%増税などやっている場合ではありません。まずは、景気回復、デフレ完全脱却が今の日本にとっては最優先課題です。安倍政権にはECBのように政策の優先順位を間違えないようにして欲しいです。もし、10%増税など予定通りに実行してしまえば、ECBの優先順位の誤りどころの話ではありません。

ECBが優先順位を間違えて、マイナス金利政策をやっても、効果が出ないだけで、それ自体が経済に甚大な悪影響を及ぼすわけではありません。しかし、デフレ完全脱却前の、増税は甚大な悪影響を及ぼすのは必定です。そんなことは、私達は8%増税の大失敗ですでに学んでいるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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